【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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何とか今年中に投稿できました!
恐らく来年以降は更に投稿期間が延びると思いますので、その時は気長に待って頂きたい。
あと現在、風邪がぶり返して辛いです( ;∀;)
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第12話 魔王軍スパイと王子の秘密

雪解けが始まって、春の訪れが日に日に近づくある日のこと……。

ボクとゆんゆん、アクア、ダクネス、そしてベルとミルは、冒険者ギルド近くで落ち合った。

 

「どう?見つかった?」

「いいえ、見つかりません」

「こっちにもいなかったわよ」

「こちらも手掛かりゼロだ」

「「こっちもよ!」」

 

皆して何を探してるのかと言えば……それは、めぐみん。

というのも、めぐみんったら

 

こめっこは将来大物になる、そう感じていました。

カービィが一緒なら確実でしょう。

何せあなたのことを実の兄のように慕っているんですから。

そんなこめっこの成長を妨げるわけにはいきません。

私は、ここを去ろうと思います。

決して探さないでください。

そして、こめっことちょむすけを、どうかよろしくお願いします。

 

な~んて書置き残していなくなっちゃうんだもん。

当のこめっこはというと、「前もこんな感じで出ていったから」って相変わらずのドライな反応……。

それでも見捨てるわけにはいかないから、ボク達はアクセル中を探した。

ウィズの店は勿論…あまり気は進まなかったけど、めぐみんと親しい間柄だったアクシズ教会の責任者「セシリー」にも話を聞いてみた(ところてんスライム1週間分)。

でも収穫はなし。

アクセルには、もういないのかな?

 

「そうだ!カービィさん、バニルの力を使えば何か分かるんじゃないですか?」

「あ、それもそうだね確かに。それじゃ早速『フォーメーション・バニル』!」

 

で、探ってみたんだけど………めぐみんのことを知るより先に、別の情報が舞い込んできました。

 

「ブゥッ!?」

「えど、どうしたんですか!?急に吹き出して」

「ごめん。めぐみんとは別のことが先に分かっちゃってさ」

「別のこと?」

「うん。例の魔王軍がまた王都を攻撃するらしいんだ。今回も今回とで大規模だから、近いうちに…というかもうすぐボク達が招集されることになるよ」

「何だって!?くそっ、よりによってこんな時に…!」

「こういう時だからじゃない?向こうはボクのこと一番に警戒してるみたいだし、雪解け間もない時ならイケると踏んだんじゃないかな?で、肝心のめぐみんだけど…アルカンレティアに向かったみたいだよ」

「あ、アルカンレティア…ですか!?」

「うん。アクア、転送屋のおじさんに声かけるの忘れたね?」

「あ゛っ!!」

 

皆がアクアに突き刺すような視線を送るのをなだめ、取り敢えず招集がかかるまでギルドで待機することに決めたわけ。

 

「カービィさん、待機はいいんですけど、めぐみんはどうするんです?」

「そうだな~……よし、あの手でいこう!ちょっと待ってて」

 

そう言ってボクは銀行から1億エリス引き出し、それを受付のお姉さんに預けてから「あること」を頼む。

手早く仕上げられた1枚の紙に目を通し、大きく頷いてから席に戻った。

 

「お帰りなさい。何ですか、その紙は?」

「ん?めぐみんの指名手配書」

『指名手配書ォ!!??』

 

直後にダクネスが、強引に紙を奪い取ってから読み上げる。

 

「なになに?『めぐみん(改行)爆裂魔法と引き換えに人としての理性を失ったと巷ではもっぱら噂の危険な少女(改行)彼女を生け捕りにしてアクセルの冒険者ギルドまで連れてくるべし(改行)賞金1億エリス』」

『1億エリスぅ!!??』

「そう。お姉さんにはこれの増刷をお願いしたから、招集が来るまでには間に合うと思うよ」

「いやいや待てって!そもそも人探しでいいじゃないか、何故指名手配する必要があるんだ!?それに内容も酷く書き過ぎじゃないか!?」

「内容のことをボクに言われても困るよ。それはギルドの職員の人が書いたんだから。それに、人探しより指名手配にした方が何となくカッコよくない?雰囲気的に」

「知らん!兎に角、これはいくら何でも酷すぎだ!」

「そう?じゃ多数決取ろうよ」

「た、多数決?」

「この内容が的を射てると思う人!」

『は~~~~~~い!!』

 

ボクはビックリ。

何と、ボクの話を聞いていたギルドの冒険者達及び職員の人達が全員手を挙げたんだから。

勿論受付のお姉さんもね。

因みにパーティメンバーでは、ダクネスとアクアを除く全員が挙手した。

…やっぱり「3匹の迷惑者」は気が合うみたいだね。

 

「というわけで、『3匹の迷惑者』メンバー以外、満場一致で内容はこのまま!」

「…まだその呼び方は続いていたのか」

「だって現に気が合ってるじゃん」

 

ボクがそう言うと、2人はお互いに顔をそむけた。

そしてこのタイミングで

 

「カービィさ~ん、増刷が終わりました~!」

 

お姉さんに呼ばれたので、ボクは手早く受け取って皆のもとに戻る。

 

「よし、それじゃ早速アルカンレティアに送ろう」

「あ、アルカンレティアに!?」

「だってさ、めぐみんはアルカンレティアにいるんだよ?だったらアルカンレティアの住人に協力してもらった方が良いじゃん。これだけお金出るなら、『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』はすぐ食い付くでしょ!」

「ちょっと!?」

「それで、今から配りに行くんですか?」

「うん。セシリーさんに頼んでね」

「へ?何故そんな間接的なことを??」

「だって招集かかるまでそんなに時間無いし、同じアクシズ教徒なら説得力違うじゃない。ほら、ランディアの一件もあるし…」

「あ~」

「それにセシリーさんも『テレポート』使えるみたいだから大丈夫だよ。おっと、急がなきゃ!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ということでボクはギルドを飛び出してセシリーさんのもとへ。

 

「セシリーさん、書いてはあることだけど念のために釘を刺しとくね。爆裂魔法は相当厄介だから、下手に取り押さえようなんてしたら最悪の場合、爆裂魔法で犠牲者が出るかも分からない。その辺のこともちゃ~んと伝えて!ついでに言っとくけど、生け捕りで頼むよ。もし傷1つでも付けたら、賞金は出ないからね!」

「フフフ、分かってますよ。我らアクシズ教団の真の力をお見せする時!さあ、いざ行かん!!」

 

そう言ってセシリーはアルカンレティアへ向かったけど……大丈夫かな?

取り敢えずめぐみんはアクシズ教徒に任せ、ボクは王都からの招集に備えてギルドに戻った。

するとその直後

 

「カービィさん!たった今、王都から緊急招集の依頼が!!」

 

お姉さんが大慌てでボク達の方に駆けてきた。

皆の顔が引き締まる。

 

「よ~し皆、準備はいいね?」

 

全員が大きく頷いたのを確認し、ロボボアーマーを呼んでから「テレポート」で王都へ。

 

「それでカービィさん、作戦とかはどうするんです?」

「もう考えてあるよ!だからロボボアーマーを連れてきたの。それで作戦だけど、ゆんゆん達は他の冒険者達と一緒に正面から迎え撃って。アクアも回復担当として、サボっちゃダメだよ?」

「そんな念押ししなくてもいいじゃない!どうせ誰かさんに呪われてる身ですからね~!」

「それはそうとカービィ、お前はどうするんだ?」

「ボクは後ろから攻めるよ。ロボボアーマーを使って」

 

ボクは再度乗り込んで準備する。

 

「『ホイールモード』!」

 

まずはロボボアーマーを変形させて、

 

「『ハイパーレールキャノン』!」

 

ボクも能力を選択!

 

「なるほど…大群相手なら有用だな、そのコピー能力は」

「そういうこと。それじゃ頼んだよ!『テレポート』!」

 

移動自体は成功したけど…位置を確認してなかったから魔王軍よりかなり後ろになっちゃった。

偶然にも、そう遠くない所に小高い丘を見つけたので、そこまで移動。

王都へ進撃する魔王軍を見渡して、指揮官役のモンスター達を探す。

見渡してみて分かったんだけど、今回の襲撃には空を飛べるモンスターが参加してない。

たまたま集まらなかったのかな?

兎に角、パワーチャージを済ませて指揮官達に照準を合わせる。

ただ、山を吹き飛ばす威力を考えると、指揮官だけ狙うのはエネルギーの無駄遣いになりそう。

なので、真横に薙ぎ払う感じで発射しようと考えた。

 

「ファイア!!」

『チュドドドドドドドドドドドオオオオオオオオォォォォォォォォ……………!!』

 

狙い通り、指揮官を含む魔王軍の後方部隊は全滅。

その後はエンジンをふかして魔王軍に突撃。

幾つかコピー能力を使って冒険者達と挟み撃ちを敢行した。

そして、史上初の魔王軍全滅という大快挙となったわけ。

冒険者達は初快挙に大騒ぎだったけど、ボク達は重要な話があるってことで、再びアイリスのもとに呼ばれた。

アクセルの例に漏れず、ここにもボクの石像がいっぱい。

秋から冬の間に作ったのかな?

だとしても作りすぎのような…って思うくらい、ところ狭しと石像が置かれてる。

何だったら以前から置かれてる骨董品より目立ってるよ。

ランディアとロボボアーマーの像に限っては、どうやって運び込んだのかも分からないくらいデカい。

特にロボボアーマーなんて、ノーマルとホイール、パラソル、そしてそれらの上にハルバードモードがでっかく陣取るというアンバランスそうな見た目。

まぁそれは置いといて、応接間で待っていたアイリスは相当深刻そうな顔してるんだよね。

 

「どうしたの、アイリス?」

「…実は今回、折り入ってカービィさんに頼みたいことがあるんです」

「頼みたいこと?」

「はい。と言いますのも、我がベルゼルグ王国の隣にあるエルロード国には、私の許婚である王子がいるのですが……」

「あ、許婚がいたんだ」

「ええ、それで2週間後にエルロード国へ向かうことが決まっているんですけど、ここから馬車で10日ほどかかるのです。ですので、その…」

「もしかして、護衛して欲しいみたいな?」

「そうです!」

「そうですってさ~……アイリスには王族専用スキルがあるんだし、護衛なんて要らないんじゃないの?」

「そ、そうかもしれませんけども、万が一にも…という場合は常に考えておかないといけません。ですから伝説の戦士であるカービィさんに是非とも護衛をお願いしたいのです。あ、ついでと言っては何ですが……可能であればその…『ハルバード』もお貸しして頂けないかと」

「え、ロボボアーマーも!?」

「はい、どうかお願いします~!!」

 

土下座してまで用意して欲しいの!?

でもボクはちょっと憂鬱な気分。

 

「いや別に貸してもいいんだけどさ……ホントにいいの?ボクが言うのも何だけど、結構目立つよアレ」

「確かにそうですね。カービィの顔が嫌でも先頭に来ますし」

「いやそれ以前にアイリス王女、カービィは確かに伝説の戦士と呼ばれるほどの強者ではありますが、あくまで冒険者。王族の者が冒険者から移動手段を借りたとなれば、隣国との関係にキズがつくかもしれませんよ?少なくとも『一冒険者からの拝借抜きにはろくに使者も寄こせないほどベルセルク王国はひっ迫している』ぐらいのことは言われるかと…」

「いやいやお隣さん同士のキズより、ダクネスの場合は自分の家のキズについて考えるべきだと思うよ?」

「言われなくても分かってる!!というか、このタイミングでそんな話題を振るな!!」

「ボクだって本当は振りたくないよ!でもキミん家の現状を知ってる身からしたら、ちょくちょく話を振って確認とらないと不安でしょうがないんだよ。冗談抜きで!」

「うぐぐ…………」

「まぁそれはともかく、仮に持ってくにしたって『ハルバードモード』は無理だよ。例えばそうだな~、ノーマル状態のロボボアーマーを旅行用備品って名目で馬車に積むなら…ギリギリ大丈夫かな?あ、勿論中が見えないようにしたうえでね」

「なるほど、それなら確かに怪しまれないかもね」

「というわけでアイリス、もしロボボアーマーが必要ならアレが乗っても壊れないくらい頑丈で大きな馬車を用意してくれる?」

「わ、分かりました!早速手配してみます!ああそれと…出発時間はまだ決まっておりませんので、決まり次第お伝えします」

「分かったよ」

 

というわけでお開きとなり、ボク達はアクセルに戻った。

明日には宴があるけど、めぐみんに関する近況報告は受けとかないと。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

流石に帰って早々良いニュースが聞けるわけもなかったけど、取り敢えずその日中にめぐみんは捕まり、アクシズ教徒達によってロープでがんじがらめの状態でアクセルに連行されてきたわけ。

で、アクシズ教徒に1億エリスを渡して帰らせた後に、皆で協力して縄を解きにかかる。

かなり時間がかかったのはさておき、めぐみんの服がかなりボロボロだけど、中級魔法の総攻撃でも受けたのかな?

 

「……カービィ…あなたのせいですよ。まさかアクシズ教徒に囲まれた挙句、中級魔法による遠距離包囲総攻撃を食らうとは夢にも思いませんでした。それもそうと…これ文面酷すぎますよ!!何ですか『爆裂魔法と引き換えに人としての理性を失った』って!?これ誰が言ってたんですか!!それに大体、こっちはただ家出しただけなのに何故“捜索願”をすっ飛ばして“指名手配書”をばら撒いたんですかねぇ!?全く信じられませんよ!!」

「いやいやボクに言わせれば、『爆裂制限の呪い』のことをすっかり忘れてふらつく方がよっぽど信じられないよ…」

「うぐっ………!」

「それに、いくら素質があるって言っても、こめっこはまだ5歳なんだよ?いくら実力で引け目を感じたとしても、キミはこめっこの実の姉じゃないか!血のつながったきょうだ…じゃなかった姉妹なんだから、せめて“いざって時には体を張って、妹を守る”ぐらいのことはしなよ!!」

「……………」

 

言葉が出てこないめぐみんのもとに、いつの間にかこめっこがやって来て、肩をポンと叩いて一言。

 

「しなよ」

 

あまり事の重大さに気付いてない、無邪気なオウム返し。

それでも、後ろめたさがあるめぐみんにとっては相当なダメージになったらしい。

同時に偶然だろうけど、これが割と良い薬になったみたいで、翌日からめぐみんは何かとこめっこに気を配るようになった。

一応エルロード国の件をめぐみんにも話しといて、その日はお開きとなった。

しかし次の日、何の前触れもなく王都の騎士達がボク達のもとにやって来たのにはビックリ。

 

「約10年ぶりにクーロンズヒュドラが復活しようとしています!応援を願いたい!!」

「は?え?何、クーロンズヒュドラって!?」

 

騎士達に急かされながら説明を聞いた。

クーロンズヒュドラ

アクセルの街近くの山の湖に棲む巨大な8本首のヒュドラ。

分類上は下級なドラゴンの亜種にあたるけど、その戦闘力は極めて高く、王都の騎士団の力では弱らせて眠りにつかせるのが精一杯。

普段は湖の底で10年単位で眠って大地から魔力を吸収・貯蔵し、充分な魔力を得ると山を出て人里などで暴れ回るらしい。

因みに特徴でもある長い首は、千切れても魔力を使って再生させることができるため、倒すには魔力が尽きるまで攻撃し続ける必要があるとのこと。

最後の方の説明を聞いた直後、ボクはいいことを思いついた。

 

「あ、そうだ!」

「ん?どうした、カービィ?」

「めぐみん、よかったじゃん。新しい爆裂散歩の場所が見つかったんだよ?」

「へ!?」

「『へ!?』じゃないよ!クーロンズヒュドラの魔力が尽きるまでは毎日、湖へ爆裂散歩に行けるんだってば!」

「あ……そう言えば確かにそうですね!」

「いやいやちょっと待ってくださいよカービィさん!!本当にそれでいいんですか?相手はドラゴンの仲間なんですよ!?」

「まぁ大丈夫でしょ。ドラゴンの中でも下のクラスってことなんだし、攻撃力が高いってだけで防御力は大したことないんじゃない?」

「そ、それはそうかもしれませんけど……」

「兎に角、まずは真相を確かめよう。取り敢えず皆で爆裂魔法がどの程度通じるか見るんだ。爆裂散歩に関しては、それを見てから決めよう」

 

というわけでクーロンズヒュドラが棲む湖まで直行。

現時点ではきれいな水をたたえた大きな湖ってイメージなんだよね。

鳥のさえずりも聞こえるし、とてもドラゴンが棲んでるようには見えない。

とここで、めぐみんがハッとなってボクに話しかけてきた。

 

「そうですよ。カービィ、私いいこと思いつきました。いくら再生できるといっても、我が爆裂魔法で全ての首を吹き飛ばせれば、万事解決なのでは?」

「残念だけどそれは無理だよめぐみん。ボクの記憶が正しければ、ヒュドラの首って必ず1つは『不死の首』だから全部は吹き飛ばせないよ」

「え゛っ!?」

「何ぃ、不死の首だと!?それは本当なのか!?」

「少なくともボクはそう聞いてるよ。ついでに言うと、ってかこれは種類にもよるんだけど、ヒュドラの首って“斬り落とすごとに増える”場合もあるらしいから注意してね」

「「「「斬り落とすごとに増える!?」」」」

「うん。首を斬り落とせば魔力で再生するんだろうけどさ、1本の首から1本再生するならまだしも、種類によっては2本も3本も再生することがあるらしいんだ。その場合、最終的に首が100本くらいになったりして…」

「うっわ~、想像したくない」

「だから取り敢えず、それを含めて確かめようって言ってるのボクは!」

「…やっぱりお前は、相も変わらず慎重だな」

「は?いきなり何、ダクネス?」

「いやなに…普通の奴はな、お前くらいの実力があるとなれば多少はそれにあぐらをかいて無鉄砲になりがちだ。でもカービィの場合はそれが無い。敵と戦う時には基本的に、まず予め予備知識レベルでもいいから何かしらの情報を得る、もしくは実際の戦闘で奥手に回ることで相手を見極めようとする。今回もそれと似たようなものだ。最初のうちは単に楽天的なだけかと思いきや、話を進めていくうちに、実は予備知識を基にかなり緻密な作戦を練っていたってことなんだからな」

「そう?ボクはただ、どうするのが一番良いのかってことを考えてるだけなんだけど……」

 

そうこう言ってるうちに湖の中心で何かが湧き立ち始め、騎士達に緊張が走る。

ボクは爆裂魔法の使用許可をして、めぐみんは何時でも撃てるように呪文の詠唱を開始した。

そして詠唱が丁度終わる頃、湖からクーロンズヒュドラが姿を現した。

全身が黄金色の鱗で覆われ、聞いた通りの8本首。

そしてドラゴンらしく背中に翼がある。

ボク達は皆隠れてるから、てっきりこのまま街の方へ飛んでいくのかと思ったけど…強大な魔力を感じ取ったのか、めぐみんの隠れてる方に注意が向く。

 

「『エクスプロージョン』!!」

 

しかしその瞬間、めぐみんが爆裂魔法を放った。

クーロンズヒュドラの頭周辺で大爆発が起こり、翼にまで大きな被害が及ぶ。

…けどボクの予想通り、クーロンズヒュドラには「不死の首」があり、それだけは全くの無傷だった。

とはいえ、甚大な被害であることには変わりない。

クーロンズヒュドラは弱々しい雄叫びの後で湖に消えていきましたとさ。

 

「やったぞ!クーロンズヒュドラが沈んでった!!」

 

騎士の1人が叫ぶ。

ボクはすかさず「フォーメーション・バニル」で現状を確認。

 

「う~ん…やっぱり『不死の首』があるせいで死んでないなこりゃ。とはいえ相当ダメージ負ったみたいだから、完全回復するには丸1日かかるね」

「ということは、爆裂散歩は問題ないってことですか、カービィさん?」

「勿論」

「おお、そうだ!爆裂魔法と聞いて思い出した」

「ん、何?」

「カービィ、さっき聞き損ねたんだが…何故今回はそこまでめぐみんの爆裂散歩にこだわっているんだ?」

「ああ、そのこと?いや実はね、近いうちに『玄武』が現れるって噂を聞き込んでさ」

「何、玄武だと!?」

「そう。で、さっきバニルの力で確認してみたら、3日後には現れるみたいなんだ」

「3日後に!?なるほど、それでか…」

 

玄武とは、鉱脈の地下に棲息する巨大な亀の神獣のことで、10年に一度、甲羅干しのために地上に出てくる。

貴重な鉱石なんかを餌にしてるから、その背中の甲羅には老廃物として希少な鉱石がこびりついてるんだよね。

しかも性格は温厚で怒らないから、冒険者達から「宝島」と呼ばれ、現れた時には近くの冒険者達が総出で発掘作業に取り掛かる……まぁ、キャベツ収穫の上位版みたいなものかな?

でも注意しないといけないのは「鉱石モドキ」って言う、鉱石に擬態するモンスターが紛れ込んでる事もあるってこと。

だから発掘作業は時に命懸け。

因みに甲羅干しに現れる理由としては害虫などを駆除する為ってのが有力だけど、冒険者達に鉱石を発掘させて甲羅を掃除する為っていう説もある。

まぁ兎に角、クーロンズヒュドラはめぐみんとアクアに任せて、ボク達は鉱石採掘のための準備に取り掛かった。

とはいえ、ボクの場合はロボボアーマーを使うか「ストーン・ニードル」にするかの2択だからな…。

でもロボボアーマーだと力加減を間違えて玄武を傷付けちゃうかもしれないし、かといって「ストーン・ニードル」だと鉱石モドキへの対応に不安が残る。

とここでボクは「あること」を閃いた。

早速行動に移し、プププランドからとある人物を連れてきた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ごめんね、メンテナンス日じゃないのに呼び出しちゃって」

「いえいえ、ワタクシは一向に構いませんわ。最近は仕事があまりに順調すぎてマンネリ気味でしたので、偶にはこういった急務がないと気が引き締まりませんもの」

 

ピンク色のロングヘアーにサファイアブルーの目、黄色い手袋をした両腕が胴体から分離してるという出で立ちの彼女は、スージーこと「スザンナ・ファミリア・ハルトマン」。

かつてプププランドを機械化しようとした巨大企業「ハルトマンワークスカンパニー」の元社長秘書であり、後で知ったんだけど社長である「ゲインズ・インカム・ハルトマン」の実の娘なんだって!

まぁ当の社長は…色々あってその辺の記憶が完全に飛んじゃってたわけだけど……。

で父親がマザーコンピューター「星の夢」とともに消滅した後にも色々あって、結局はプププランドに永住することを決めた。

それからは今まで以上に努力を重ね、最終的には持ち前の優秀さとアイスクリーム好きを生かして、プププランド一のアイス製造会社「PII プププ・アイス・インダストリーズ」を立ち上げて代表取締役会長の地位にまで昇りつめたんだから凄いよねホントに。

そしてロボボアーマーに精通してるから、実は半年に1回くらいのペースでこっちの世界にやって来てはロボボアーマーの定期検査をしてくれてるんだ。

因みに、副業で機械修理を請け負ったり、機械製造会社を営んだりしてるらしい。

で今回彼女を呼んだのは、ほかでもないロボボアーマーの改修依頼のため。

自動追尾に加えて“自動警護”の機能を追加して欲しかったんだ。

上手くいけば、ボクが採掘中に鉱石モドキが襲ってきても、ロボボアーマーが勝手に倒してくれる。

ボクはスージーにプランを説明した。

 

「…とまぁこんな感じなんだけど、明後日までに何とかできるかな?」

「勿論ですわ!全てはワタクシにお任せを!!1日あれば十分ですわ!」

「それは良かった。今日は時間的に中途半端だし…取り敢えず計画だけ練ってさ、今夜の宴に来ない?」

「へ?宴…ですか?」

「うん。昨日の魔王軍襲撃の時はロボボアーマーが役に立ったし、折角だからスージーも1度くらい参加してみたら?夕食代が浮くと思うよ?」

「いやそんな…ワタクシはただ整備しているだけですわよ!?これを駆って活躍しているのはアナタですから、ワタクシが参加するのはチョット……」

「そう言えば確か、今夜の宴はデザートにアイスが出るって話だっ」

「アイスゥゥゥゥゥウウウウウ!!??」

 

アイスというワードを聞いた途端、スージーが両眼を輝かせて迫ってきた。

 

「是非是非参加させてください!今日はまだワタクシ、アイスにありつけていませんの!お願いです!お願いですからワタクシにアイスを~~~!!」

「わ、分かったからちょっと落ち着いてよ!!」

 

聞いての通り、スージーはアイスが好きすぎて1日1個は必ずアイスクリームを食べないと気が済まない。

当然、夏も冬も関係無くね。

これはもう禁断症状の類じゃない?

スージーの食い付きぶりを見て、ボクは改めて食に絶対こだわらないと心に誓った。

そう間もなくして出発の時、ボクはその場の思い付き(という体)で「ホイールモード」のロボボアーマーに乗ったまま王都近くにテレポートって感じのことを提案。

偶にはゴージャスな雰囲気を楽しみたいって理由(半分本当)で何とか皆の同意を得ることに成功し、こめっこを含めた全員が搭乗。

因みにスージーはロボボアーマーの後ろにへばり付いてるんだよね。

別にここまでスージーの存在を隠す必要は無いんだけど、何となくサプライズ的な感じで登場した方が良いような気がしたのと、1度でいいからスパイチックなことをやってみたかったというスージー自身の希望による結果こうなったわけ。

しかも自前で、ロボボアーマーと同系色のマントを用意してカモフラージュする徹底ぶり。

確かに車体後方は、門番の人から丸見えになっちゃうな…。

夕闇迫る時間帯に助けられ、お城まで凱旋する間も誰1人としてスージーの存在に気付かなかった。

まぁ勿論、凱旋自体も皆の視線をスージーから遠ざける為なんだけどね。

そしてお城に着くと、彼女はしれっと迷彩(?)を脱ぎ、何食わぬ顔で入城。

今回の宴は…言ってしまえば“半立食パーティ”みたいなもの。

立っても良いし座っても良い、自由度の高いパーティだ。

ボクは大皿に盛れるだけ料理を盛って口に運び、スージーもひとまずは普通に料理を楽しむ。

 

「…心なしか、少しずつ自由度が上がってる気がするな」

「というと?この世界におけるパーティ、はこんな感じではないのですか?」

「うん、最初の時は完全な立食パーティだったもん」

「そうなんですか…っておおおおお!!」

 

食べ終わったスージーが一目散に走る…というより高速移動する。

向かう先にあったのは、勿論山のように積まれたアイス。

イヤいくら何でも作り過ぎじゃない?

何か種類も多いみたいだし……。

ボクが再び大皿いっぱいに料理を盛ったのとほぼ同じタイミングで、お洒落なガラス製の大皿いっぱいにアイスを盛りつけたスージーが戻ってきた。

しかもジュースまで持ってきてるし。

 

「…まさか1度でそんなに盛るなんて」

「あら、アナタだって同じようなものですわよ?それにワタクシ、別腹の方が大きいですから」

「……まぁいいや。それよりスージー、例の件はどうする予定なの?」

「ああ、そのことなんですがね…」

 

ボクとスージーは周りを気にしながらも、ロボボアーマー改修のプランを固めていく。

その間もスージーはアイスを食べ続ける…大方、話し合ってる感じを少しでも消そうとしてるんだろうけど、顔が真剣そのものだからあまり効果が無いような……。

話し合いが一通り終わった頃、ふと前を見れば恐る恐る近寄ってくるアイリスの姿があった。

あの様子から察するに、ボク達に気付いてはいたけど真剣な顔で話し合ってたからなかなか話を切り出せなかった…って感じかな?

 

「あ、あの~……カービィさん、そ、そちらの方は一体?」

「…これは申し遅れました、アイリス王女。ワタクシはスージーと申しまして、ロボボアーマーの整備点検を行っておりますの」

「な、何と!あのロボボアーマーを整備なさっている方ですか!?…考えてみれば確かに、ロボボアーマーは機械なわけですから、定期的に整備する必要がありますね…」

「そういうことだよアイリス。半年に1度くらい、プププランドから来てもらってるの」

 

と言うのが早いか、ゆんゆん達が集まってきた。

まるで示し合わせたみたいに。

でもまぁ、ダクネスの一言で納得はいったんだけどね。

 

「おいカービィ!一体これはどういうことなんだ!?ロボボアーマーを整備してる奴がいるなんて聞いてないぞ」

「そりゃ言ってないからね。ていうか皆も気付いてたんだ…」

「彼の言う通りです。ワタクシはロボボアーマーを整備する為だけにこちらへ来ているだけのこと。別にアナタ方がワタクシのことを知る必要は特に無いと思いますわよ?」

「いやいや仮にそうだとしても、何だったんですかさっきの怪しげな話し合いは!?まさかロボボアーマーを使って何やら人には言えないことを…」

「何でボクがアルダープじみたことしなきゃいけないわけ?」

「まさにその通り。彼がその気なら、そんな回りくどいことをする必要性がありませんわ。力を持って一気に叩き潰せば済むことです。ワタクシは単に、メンテナンスに際して伝えるべきことがあったのでそれを話していただけですわ。あ、アイスもう少し貰ってきますわね」

 

そう言ってスージーはアイスを取りに行った。

とここで、全員がハッとなる。

珍しく第一声はアクアから。

 

「ちょ、ちょっとカービィ…アイツ確か、さっきも大皿にアイスたっぷり盛ってなかったっけ?」

「うん、盛ってたね」

「それで何でアイスおかわりできるのよ!ありえないでしょ!!」

「スージーはそれくらいアイスが大好きなの!1日1個は必ず食べないと気が済まない性質だし、今日にいたってはアイスにありつけてなかったらしいから…」

「なるほど、彼女をこの宴に呼んだのはそういう理由からか…にしても食べ過ぎじゃないか?」

「別にいいでしょそれくらい…何せスージーは“別腹の方が大きい”らしいし」

 

そうこうしてるうちに、スージーがまたもやアイスを山盛りにして戻ってきた。

しかも若干だけどさっきより大盛りで…。

その後スージーは、ロボボアーマーの機能の話を中心に周りの冒険者達と会話したり、シェフ達にアイス作りについてのアドバイスをしたりと、それなりに注目されたわけ。

あ、因みにそのシェフの中にはコックカワサキも混じってたんだよね。

流石にアイリス王女お墨付きになるだけのことはある。

また“例のサービス”による繁盛が未だに衰えをみせないようで、今も定期的に仕送りしてくれるんだ。

あとボクは、いつもの如くブーム冷めあがらない大道芸を披露して1日を終えた。

こめっことミュイ用のお土産にアイスを幾らか貰ってね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日はスージーがロボボアーマーの改修作業してる間、こめっこの魔法修行に付き合うことに。

冬将軍戦で使った「インフェルノ」の制御も安定し、今は「カースド・クリスタルプリズン」を練習中。

…それにしても、「カースド・ライトニング」は結構時間がかかったのに、どうして「インフェルノ」は早々と習得できたんだろう?

ゆんゆん曰く「普通に個人差で炎属性魔法が得意なだけ」ってことだけど、それにしても得意不得意の差が大きすぎるような気が……。

まいっか、万全の状態で入学できるに越したことはないだろうし、上手くいけば「爆発魔法」も覚えられるかもね。

それはともかく、ロボボアーマーの改修は夕方には終わり、夕食前に試運転。

スージーが機転を利かせて鉱石採掘のアシストができるようにしたらしいから、そっちも試さないとね。

偶然見つけた古い鉱山跡(閉鎖理由は不明)に、武器や防具の材料となる鉱石「アダマンタイト」がまだ大分残ってたので、ここで動作テストすることに。

ボクとの距離をどの程度空けるか、どれくらいの範囲でモンスターを迎撃するか、そしてどんな感じで採掘すればいいのか、そういうことは実際にやってみないと分からない。

結局試行錯誤は翌日まで続けられ、夕方になる頃にやっとこさ満足いく結果を得ることに成功。

スージーと抱き合って喜んだ。

そして、遂に採掘決行の日がやって来た!

皆ツルハシ片手に鉱石採取用(?)の袋を腰に下げ、アクアに至っては何時かの土木作業着。

いつ見ても普段着より似合ってるように見えるんだけど、着てる本人が“服の話題を振るな”的なオーラを纏ってるし、それでへそを曲げられてもあとが大変なので触れないでおいた。

因みにめぐみんは同行してないよ。

その前にクーロンズヒュドラ相手の爆裂散歩でダウンしてるから。

そしてボクはロボボアーマーの最終調整。

 

「『カッターモード』!」

 

採掘と言っても亀の甲羅から鉱石を削り出すだけだから、パーツ的に丸鋸が一番向いてると思うんだよね。

後はコンパネを操作して、スージーが追加してくれたモードを選択。

取り敢えず、目的地に向かうまでの間は自動追尾モードと変わらない。

本番は玄武が来てからね…。

で到着してみると、既に噂を聞き付けた冒険者達が玄武の棲む洞窟に集結してた。

ツルハシやシャベルを持ってる中に、洞窟の中に入るのではと思ったのか、ランタンを持参してる人もいる。

けどそんな心配は無用。

大きな地響きをたてて、玄武が洞窟から姿を現す。

本来の玄武って尻尾が蛇の頭なんだけど、この世界における玄武は単なる大きな亀。

その甲羅には大量の鉱石がこびり付いてる。

 

「『ストーン・ニードル』!」

 

他の冒険者達が一斉に甲羅に群がるのをよそに、ボクはミックスコピーを発動して甲羅の頂上に登る。

ロボボアーマーもそれに追従し、大きくジャンプしてボクの近くに着地。

事前の調査で上部にある鉱石ほど価値が高いことを知ってたので、早速ドリルを回して採掘開始!

 

『ドガガガガガガガガガガ………!!』

『ウイイイィィィィィィンン…』『ギイイィィィィィィィィィィンン!!』

 

ロボボアーマーも丸鋸を上手に使って鉱石を引っぺがしていく。

鉱石モドキはロボボアーマーが全部倒してくれるから、ボクは存分採掘作業に集中できた。

ふと下を見てみれば、他の冒険者達が鉱石モドキに悪戦苦闘してるみたい。

上に登ろうとしても鉱石モドキが叩き落としにかかるから、皆ボクのいる所まで到達できないでいる。

それはゆんゆん達も同じであり、こびり付いてる鉱石が多い分鉱石モドキも沢山いるみたい。

でも何とかアクアが採掘(土木作業の掘削事業?)ゆんゆんが鉱石モドキ退治といった具合に役割分担して、良い感じに作業を進めてる。

その傍らで鉱石モドキの集中攻撃を嬉々として受けるダクネス。

…ホント何しに来たの??

結局、最上部の鉱石は全部ボクとロボボアーマーが回収しちゃった。

っとそう言えば、回収した鉱石をどうするのかまでは把握してなかったな。

聞けば、玄武が現れた日には別の街から宝石鑑定士ならぬ“鉱石鑑定士”と言う職についてる人をギルドに呼んで、その人に換金額をはじき出してもらうらしい。

冒険者達がかわるがわる回収した鉱石を換金してもらう中、ボクの番がやって来たので口の中に収めてた鉱石を全部目の前に出した。

大量なのに加えて最高品質のマナタイト等の貴重な鉱石や、何とコロナタイトの原石まで紛れ込んでいたらしく、結果的に総換金額は5億エリス弱。

因みにゆんゆん達はというと、例によってアクアの不運が祟って低品質な鉱石ばかりだったため、それなりの量を回収したのに稼ぎはビリッケツだったとさ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それから数日後、王都の騎士達が再びやって来た。

彼等曰く、アイリスの命令でロボボアーマーの大きさ重さを測りに来たらしい。

大きさはいいとして…重さはどうやって図るつもりなんだろう?

ボクの疑問をよそに、騎士達は鉄製の定規みたいな道具でロボボアーマーの大きさを測定する。

というかよく見たらあの定規……やっぱり長さが変化してる!

要するにあれもれっきとした魔道具ってことか…。

そして肝心の重さだけど……騎士達は何やら大きな金属板のようなものを持ち出して来て、ロボボアーマーをその上に乗せて欲しいと言ってきた。

言われるままに乗せてみると、目の前に数字が浮かび上がった!

なるほどね、これはいわゆる体重計みたいなものだったのか。

で、一通り調べ終わった騎士達は急ぎ足で帰っていく。

専用馬車の用意の為だろうね多分…。

あそうそう、帰り際に朝10時出発とか言ってたな。

取り敢えず皆には伝えたけど、まだ出発日まで1週間以上残ってるんだよね。

その間ボクは街の子供達と遊んだり、こめっこの魔法練習に付き合ったりして過ごした。

そしてその間に、めぐみんがとうとうクーロンズヒュドラの討伐に成功。

ボク主導で、ギルドにてちょっとした宴を開いた。

勿論こめっこも参加し、この時ばかりは素直に姉であるめぐみんを称賛していた。

そしていよいよ出発の時。

今回はダイレクトに、ロボボアーマーをお城の前にテレポートさせてショートカット。

そのすぐ隣には既にロボボアーマー専用と思しき大きな馬車が待機してる。

でもって、それを引くのは他より大きな馬……ってただの馬じゃない!!

だって足が8本もあるんだもん。

 

「へ~、スレイプニルに引かせるのか…」

『スレイプニル?』

「あれ、皆気付いてないの?ホラ見てよあの馬、足が8本あるじゃん」

「…あ!本当に8本ある!こんな馬がいるなんて……!」

「確か普通の馬の倍以上のスピードで走れるんだとか」

「その通りですカービィさん」

 

声がする方を振り向けば、そこには青い鎧を着込んだアイリスの姿があった。

背中には例の「エクスカリバー」を背負い、表情も若干凛々しい感じに見える。

 

「…やっぱりボク、必要なのかな?」

「そんなこと言わないでくださいよ。私の身にもしものことがあれば大変なんですから…」

「それにさアイリス、この馬車…ロボボアーマーがギリギリ乗れるか乗れないかって雰囲気がしてるんだけど…本当に大丈夫?ちょっとした衝撃ですぐ壊れたりしない?」

「そんなに不安がらないでくださいよ!外見は別として、この馬車はロボボアーマー2体分の重さにも耐えられるように設計された特別製ですから、大丈夫ですって!」

「……ならいいけど」

 

不安を拭い切れないまま、ボクはロボボアーマーを操作して馬車に乗せ込む。

取り敢えず今のところ、不安を煽るようなギシギシいう音をたててるのは乗せ込む際に使った木製スロープだけなので、まぁ大丈夫なのかな?

ボクは1つ前の馬車に、ゆんゆん達と一緒に乗り込む。

すると何故か、アイリスまで同乗してきた。

 

「えちょっ、何でアイリスも乗ってるわけ!?」

「何でって、カービィさんは私の護衛なんですから、同じ馬車に乗っていなければ無意味じゃないですか」

「いやそうだとしても、クレアとか他の護衛の人達はどうしたの?」

「ああ、クレアは留守を任されておりますから。それに、カービィさんが教えてくれた例の件は既に城中に知れ渡っております故、上層部の話し合いの結果、彼女は暫く私の身辺警護から外されることになったのです」

『あ~……』

「加えて上層部の方々も、カービィさんのことを心底信頼しているみたいですしね。ですがそれでも1人くらいは付けた方が良いとのことで、彼女に同行してもらっているのです」

「彼女って……うわあ!!い、何時の間に乗ってたの!?」

 

とにもかくにも、知らないうちに黒いローブを着た人が乗り込んでたもんだからビックリ。

 

「…王女様のすぐ後について乗りました」

「あ、そうだったの…全然気付かなかった」

「…そう言われるだろうとは思っていましたよ。影が薄いことはとうに知っていますから」

「……何かゴメン。で、キミは誰なの?」

「レインと申します。アイリス様の教育係兼護衛をしております」

「そうなんだ…ま、これから暫く、よろしくね!」

「こちらこそよろしくお願いします」

 

そう言ってボクとレインさんは握手を交わし、間もなく騎士達が乗る先頭の馬車を筆頭に3台の馬車が動き出した。

流石はスレイプニル、歩く速度も普通の馬より断然早い。

まるで小走りしてるみたいに感じるよ。

 

「あ、そうだ。レインさん、スレイプニルだとエルロード国まで何日ぐらいで着けるの?」

「大体4、5日くらいかと」

「なるほどね。普通の馬なら10日かかるらしいし、この速さならそれくらいか」

 

因みにこれから向かうエルロードは、別名「カジノ大国」とも呼ばれる。

商業が盛んらしくて、お金と暇を持て余した人達が日夜賭け事に勤しんでるらしい。

ボクは今まで、いわゆる“ギャンブル”の類に縁が無かったから、ちょっとだけ興味があるんだよね。

だけどそれを考えると、その国の王子様って……大丈夫なのかな?

アイリス本人も、許婚がいることを手紙が来るまで全く知らなかったらしいし。

な~んて考えてたら、途端に馬車が急停止。

 

「モンスターが出たぞおおおお!!」

 

1人の騎士が叫んだのを皮切りに、皆一斉に馬車から飛び出す。

目の前には見たこともないモンスターがいっぱい。

今のことろ正面にしかいないっぽいけど、早いとこ片付けないと取り囲まれそうだ。

 

「『ウルトラソード』!」

 

巨大剣を持って最前線に飛び出す。

繰り出すのは勿論、あの王族専用スキルさ!

 

「「『エクステリオン』!!」」

 

……?

見ればモンスター目掛けて飛ぶ「2つの」光り輝く斬撃。

そして右を向けばいつの間にか、アイリスまで最前線に出てるし。

 

「…アイリス、いつの間に?」

「いえ、私ずっと、カービィさんと並走していましたよ?」

「ブッ!?」

「うふふ、私達って意外と気が合うんですかね」

「いやいやいや、そういう問題じゃないよ!キミに万が一のことが無いようにキミの護衛やってるんだからさ、キミが最前線に来ちゃダメでしょ!?」

「た、確かにそうですけど……でも私、今まで誰かに守られてばかりだったんです。だから…だから私は、今日くらい誰かの役に立ちたかった!ただそれだけなんです!!…………あの…カービィさん?」

「……………………」

「あ、あの……すみませんでした。もうこれ以上出過ぎたことはしませんから、そんな目で見ないでください…」

「…あのさ、アイリス。こんなこと言っても何も始まらないかもだけど、ちょっと言わせてくれる?ボク今までさ、一部のパーティメンバーの…その~……お世話…って言うのかな?兎に角そういったことを今まで散々やってきてさ、でもって今ようやくそれが落ち着いてきたんだよね。……だからさ、その~…できればこれ以上……ね…?」

「分かりました!分かりましたから!本当にもうこれ以上は自重しますからその目は止めてください相当傷つくので!!」

 

アイリスが見事な土下座(?)をした後、ボクの「戻ろうか…」の一言で皆すごすごと馬車に戻った。

そしてアイリスは、戻って即レインさんから説教を食らうことに。

再び出発した馬車の中は気まずい感じになったみたいだけど、ボクはそれどころじゃなかった。

さっきのやり取りで心が疲れたのか、座った途端に全身の力が抜けちゃったんだよね。

それも喋る気力すら出ないほどに。

アイリスが罪滅ぼしとばかりにボクを気遣ってくれたけど、暫く動くことすらままならず、その後のモンスター討伐には参加できなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

結局まともに動ける程度に回復したのは夕方の、それも陽が落ちる直前のこと。

皆は野営の準備で忙しいんだろうけど、それ以前に皆傷だらけ。

ゆんゆん達も例外じゃない。

だけど、アクアがいるのにどうして?

 

「皆さ~ん、カービィさんが回復しました~」

 

アイリスの声に皆反応はしてるんだけど……何というかその~…軽く絶望したみたいな顔してるんだよね。

一番に声をかけてきたのはゆんゆんだった。

 

「あ、カービィさん…よかった、元に戻ったんですね」

「心配かけてゴメンね。ところでさ、何で皆ボロボロなの?アクアに回復してもらわなかったの?」

「そんなことはありません。皆、アクアからの回復や支援等を受けつつ戦っていました。でも、敵があまりに膨大で強力だったので、結局十分に回復が行き渡らなかったんです…」

「そうだったんだ。ボ~っとなっちゃったせいで全然分からなかった……ところで肝心のアクアは何処?」

「あそこです」

 

ゆんゆんが指さす先には、野営用のテントの骨組みに寄りかかった状態でぐったりと座り込んでるアクアがいた。

魔力切れしたのか、一切動かない。

なのでアクアに代わってボクが皆の回復をやったわけ。

魔力有り余ってるし。

やがて1人の騎士がアクアを救護用のテントに運び、他の騎士達が手早くテントを完成させる。

そして本部っぽい感じの大きなテントにてボクとアイリスは、ダクネス、レインさん、そして騎士団の団長と思しき人達を交えて今後の予定について話し合う。

と言っても、ボクは基本的に聞くだけなんだけどね。

ダクネスも疲れてるのか、終始聞きっぱなしだったのでボクは声をかけてみた。

 

「ねえダクネス、今日の戦果はどうだったの?攻撃ちゃんと当たった?」

「フン、誰かさんのせいで未だに剣を持たせてくれなかったお陰か、拳は普通に当たるぞ……」

「よかった………」

 

まぁそんな感じで取り敢えず一通り終わった後、ボクはゆんゆん達と合流して夕食を済ませ、そのまま寝ることに。

ボクを気遣ってか、ゆんゆんが添い寝してきた。

 

「………うふふ」

「?何で笑ってるの?」

「えっ、いやその…私達が総出でやり合ってようやく倒せた規模の敵を、カービィさんとアイリス王女はものの一撃で仕留めたんですから……やっぱり2人は私達とは別格ですよね」

「………」

 

何の意図があってそんなことを言ったのかは分からないけど、取り敢えず翌日以降は特に大きな問題も無く、出発から4日後の昼前にはエルロード国が見えてきた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

バニルの力で幾らか得た情報によれば、あの国をベルゼルグ王国に資金援助できるほど豊かにしたのは、王子じゃなくてその補佐役(?)である“宰相”のお陰らしい。

当の王子様は、陰で“バカ王子”と呼ばれる始末。

ついでにあの国は見栄っ張りなところがあるらしく、そこらを行き交う人達の大半は見せかけのためにそこらをただ歩き回ってるだけみたい。

まぁそれはともかく、無事にエルロード国に到着…はいいけど、ここでボクは結構重大なことに気付く。

だって、アイリスがそのまま馬車から降りようとしてるんだもん。

 

「ちょ、ちょっと待ってよアイリス!」

「は、はい。何ですかカービィさん?」

「何ですかじゃないよ!キミ王女様なんでしょ!?何でそのまま降りようとしてるのさ!こういう場合ってあんまり騒がれないように、変装して身分を隠したりするもんじゃないの!?」

「…あ………た、確かにそうですね」

「そうですね、じゃないよもう……。ほら、レインさんもドン引きしてるし」

「す、すみません……」

「しょうがないなぁもう…ほら、これでも使って」

 

そう言ってボクは口の中からフード付きの黒いローブを出してアイリスに手渡す。

それを見て、レインさんが一言。

 

「…話には聞いていましたけど、本当に便利な口ですね」

「まぁね。適当に何か身を隠せそうな衣服って感じで出してみたら、たまたまこれが出てきたってだけなんだけどさ。ほらアイリス、早く着て」

「あ、はい……」

 

言われるままにアイリスはローブを身につけ、フードを被って馬車を下りた。

ボクは降りるついでに現在位置をテレポート欄に登録。

 

「…大丈夫そうだね。イイ感じのボロさだから、パッと見“通りすがりの旅人”みたいに見えるよ」

「そ、そうですか?」

「うん。それで、この後はどうするの?聞かされてないんだけど」

「そう言えば確かに…え~この後はですね、宿泊先の宿に直行することになっています」

「そっか~。じゃあさ、宿に着いて昼ごはん食べ終わったらちょっと出掛けてもいい?今までカジノとか無縁だったから、ちょっと見てみたいんだ」

「おいおいカービィ、初めてのことに興味を持つのは別に構わないが、今回はあくまでアイリス王女の護衛任務を帯びて来ているんだ。遊べるお金なんて用意してな」

「これで足りる?」

 

ボクは口の中からアタッシュケースを2つ出した。

1億エリスずつの計2億エリス。

見た途端、ゆんゆん達は固まってたね。

 

「そ、そんな大金をお腹の中に!?」

「とても信じられませんね…一体どうやったら、あなたの中にそんな大金が入るんです?」

「全くアイリスもレインさんも、今更何?入るから入れてる、ただそれだけのことじゃないか。それでどうなの?これだけあれば足りるの?」

「そ、それはもう…十分ですよ」

「よかった。それじゃあ、早いとこ今日の宿に行こうよ。こんな所にずっと居たら流石に目立つし…」

 

というわけで、人目を気にしつつ無事に宿に到着。

結構な大所帯でも泊まれるのが嫌でも分かるほどに、豪華で広々としたエントランスホール。

1泊いくらするんだろう?

受付の人との話が済んだら、今度は1階に併設されているこれまた高級そうなレストランで食事することに。

……思うんだけど高級レストランの料理って、値段の割に量が少ない気がするんだよね。

ボクは値段とかどうでもいいから、兎に角たくさん食べたい。

するとビックリ、この世界に来てからよく食べてるラージバーグがメニューに載ってたんだ!

何か色々と飾り付けられてるけど、迷わずこれを注文。

ゆんゆん達から相変わらずだな的な視線が来てる気がするけど、関係ない。

アイリスや騎士団長達が見てる中、ラージバーグを何皿もおかわりしてたらダクネスが耳打ちしてきた。

 

「おい、流石に食べ過ぎだぞ。いくら経費で食べられるからといっても限度がだな…」

「ケイヒって?もしかして今、このラージバーグがタダで食べられるってこと?だってお腹空いてるんだもん」

「いやだとしても、今日ぐらいは遠慮してくれ。頼むから」

「やだ。こういう時ぐらいしかお腹いっぱい食べられないんだから、こういう時こそ遠慮したくないのボクは」

 

その後もダクネスが何か言ってたみたいだけど、ボクは終始無視してラージバーグを追加注文&一気食い。

満足してデザートを食べ終わった時、ゆんゆんとアイリス及び「2人の迷惑者」を除く全員がポカンとしてた。

まぁ厳密に言うとアイリスは明らかに苦笑いだったんだけどね。

で、お会計が済むとアイリス達は部屋に向かい、ボクはゆんゆん・めぐみん・アクアと一緒にカジノ行きを決め込んだ。

それにしても何でアクアまで…と思ったけど、大方「無駄遣いできない呪い」のことを忘れてるだけだろうね。

受付の人に良さげなカジノの場所を聞いてからいざ出掛けよう……としたら、何時の間にレインさんがボクのすぐそばに佇んでる。

 

「レインさん、どうしてここに?」

「それは勿論、あなた達が行き過ぎた行動に出ないようにするためです」

「あ、そう…」

 

ま確かに、アクアとか暴走しかねなさそうだしね…。

でもってカジノへ向かう道中、気付いたことが2つある。

1つは、王都に負けず劣らず出店が多いこと。

見栄っ張りなことを考えたら、当たり前か…。

2つ目は、やたらとこう…宮殿みたいな建物が多いってこと。

レインさん曰く、あの手の建物は全部カジノらしい。

流石はカジノ大国だね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして今ボク達が向かってるのは、その中でも最大規模のカジノ。

遠くからでも分かるくらいの大きさを誇ってる上に、真っ暗闇でも見えそうなほど真っ白な外壁。

王都のお城の時も思ったんだけど、一体どうやって掃除してるんだろう?

そんなことを考えてるうちに入り口が見えてきたので、ボクは格好を変えることにした。

 

「『マジックカービィ』!」

「!?ど、どうしたんですかカービィさん。いきなりコピー能力使って…」

「どうもこうも、こっちの方がカジノに行くって感じの格好に見えるでしょ?」

「いやいやシルクハットだけじゃないですか」

「それはしょうがないよ。だってボクの体型に合う服なんて無いんだもん!」

「そう言えばそうでした。すみません……」

 

それに何より、こういう所では“イカサマ”ってのがよくあるらしいからね。

このコピー能力ならそれが見抜けると思うんだ。

で、特に何の問題も無く入れたわけだけど……宮殿的な見た目とは裏腹に、中はボクが想像した通りのカジノって感じの内装になってる。

スロットマシンも置かれてるけど、あれどうやって動かしてるんだろう?

多分この世界のことだから、細かい部分は魔法でどうにかしてるのかな?

それはともかく、色々考えた結果、まずはポーカーからやってみることに。

取り敢えず100万エリスをチップに換えてテーブルへ。

スタッフの人が親切に椅子の高さを調節してくれた。

同じテーブルにいる他2人のプレイヤーから珍しがられたけどそれは置いといて、いよいよプレイ。

ディーラーさんがトランプをシャッフルして配っていく様子を、ボクはじっくりと観察……。

配り終わった手札を見てみると、ダイヤの3・8・Q・K・A…“フラッシュ”だ。

出来れば“ストレートフラッシュ”にしたいけど、ダイヤの10とJが必要になる。

順番はボクが一番最後だから2人のやり方をまず見よう。

2人が1万エリス分のチップをテーブルの中央付近に置いたので、ボクもまねて1万エリス置いた。

まずはボクの向かいにいる、ガタイが良くてスーツと帽子が白、顔にキズ、顎髭と眼帯があるワルそうな人。

3枚交換するみたい。

スペードの10、ハートの2、そして…ダイヤのJ!

アレ欲しいけど…取れるんだっけ?

次はボクの左前、灰色のスーツを着て丸眼鏡をした頭良さそうな人。

2枚交換で…ダイヤの2と10。

1枚は山札から、もう1枚は捨て札からスペードの10。

捨て札から取れるのか。

そしてこの時「レイズ」を宣言して掛け金を2万に。

そしてボクの番、ダイヤの3と8を捨てて、あの2枚を貰う。

ついでにボクも「レイズ」を宣言して掛け金を3万にした。

すると次のワルそうな人が機嫌悪そうに溜息をつく。

…察するにボクがルールうろ覚えで、知らずに掛け金を吊り上げたとか思ってるのかな?

クラブの7を捨てて、ボクが捨てたダイヤの8手に取る。

そして「コール」を宣言し、掛け金をボクと同じ3万に。

一方、頭良さそうな人はカード交換をせずに「レイズ」を宣言。

掛け金が4万に増えた。

ボクは取り敢えずこのままで。

 

「…何もしないなら、このまま手札を見せ合うことになるよ。大丈夫かい?」

 

ディーラーさんが小声でそう言ってくれた。

ま、最初から大勝負に出る必要は無いだろうし、あくまで単なる遊びだからね。

ボクが小さく頷くと、ディーラーさんは手札の提示を指示。

 

「フルハウス(♠6♥6♣6♠8♦8)」

 

ワルそうな人の手札だ。

 

「フォー・カード(♠9♥9♦9♣9♠10)」

 

頭良さそうな人は、眼鏡をクイッとしながら勝ちを確信したような顔をしてる。

そしてボクの番。

ボクは何も言わずに手札を広げた…ロイヤルストレートフラッシュ(♦10♦J♦Q♦K♦A)。

プレイヤー2人が目を見開く中、ディーラーさんは感心したような目で見てるのがハッキリと分かった。

あの動きから見て……明らかだね。

 

「…3番プレイヤーの勝ち」

「やった~!」

 

ボクが素直に喜んでいると、ワルそうな人は機嫌悪そうに顔を背け、頭良さそうな人は小さく拍手した。

その後は最初ほど良い手は出なかったものの、気を抜かなかったおかげか大して損失はナシ。

でもやっぱし…今の状況は明らかに偶然じゃない。

ワルそうな人とディーラーさんが……ね。

そして最終局面(?)

頭良さそうな人が10万、ボクが15万、ワルそうな人に取られてる。

ワルそうな人は分かりやすくニヤけてるけど、ちょくちょくディーラーさんをチラ見してる時点でもう“ヤッてる”こと確実だよ。

というわけで、ボクは一計を案じた。

ディーラーさんが手札の提示を指示する。

まずワルそうな人の手札から。

 

「ストレートフラッシュ(♥4♥5♥6♥7♥8)」

 

勝ちを確信したかのように顔を緩める。

 

「ツーペア(♣2♥2♠9♦9♠3)」

 

頭良さそうな人は項垂れる。

そして最後はボクの番…。

 

「ストレートフラッシュ(♥4♥5♥6♥7♥8)」

 

そう。ワルそうな人と全く同じ手札。

 

「お、おいちょっと待て!一体これはどういうことだ!?お前」

「どうもこうも、キミが一番知ってることじゃないか」

「ハァ!?何を言ってるんだ貴様は!」

「しらばっくれても無駄だよ。ホラ」

 

そう言ってボクはひらりとワルそうな人の所まで移動すると、ステッキで素早くスーツの下をガサゴソ。

すると案の定、5枚のカードが落ちてきた。

頭良さそうな人は眼鏡の向こうの目を丸くしてる。

 

「こ、これは…!?」

「これが、この人が本来持ってたカードだよ。隙を見て素早くこっちのカードとすり替えたんだね」

「お、お前…どうしてそれが!?」

「大方『手品師スキル』でも使ったんでしょ?ボクもマジシャンだからね、その程度のトリックならすぐに分かるよ」

「て、テメェ……馬鹿にしやがって!もう許さ」

『ザクッ!』

 

ワルそうな人が殴りかかろうとした瞬間、シルクハットに1枚のトランプが突き刺さった。

まぁ、刺したのはボクなんだけど。

よくあるトランプ投げ…みたいなやつ?

アレ相当難しいんだってね。

ボクはワルそうな人を少しの間睨みつけ…

 

「ハアアアァァァァ………!」

『シュババババ!!』

 

さらに追加で10枚くらい投げつけて、タキシードのジャケットを引っぺがしてみせた。

流石にそのまま床や壁に突き刺さるまではいかなかったけど。

 

「ヒイイイィィィィィィィィ………!!」

「「…お見事!」」

 

ワルそうな人はそのまま逃走し、頭良さそうな人とディーラーさんは少し間を置いてから拍手。

その後ボクはディーラーさんの方を向いて一言。

 

「いやいやディーラーさんの方だって、あれはお見事だったと思うよ?」

「……は?」

「さっき逃げたワルそうな人の方に良い手札が来るように、素早く配るカードを選別するあの早業。結構見ものだったもん」

「っ…、やはり気付かれていましたか」

「そりゃそうだよ。だって王都でも似たようなの披露してたじゃん」

「……!」

 

そう、実はこのディーラーさん、王都でボクにマジックを披露してたあのマジシャンだったのさ。

まさかエルロード国出身だったとは……。

この人はこの人でボクがこんなところまで来るとは思ってなかったらしく、他人のそら似だと思ってたんだって。

ふと見れば、ワルそうな人がアタッシュケースを置きっぱなしだ。

ディーラーさんが中身を確認してみると、1億エリス入ってる。

 

「…それでは、こちらとカービィさんで山分けしましょう」

「え、いいの?」

「はい。あの方は日頃からトラブルばかり起こしていて、近々出禁にしようかと検討されていたものですから。さっきも良さげな札を回せと圧力をかけられましたし、まぁ今までの迷惑代ということで」

「…まぁ、それでいいならいいけどさ」

 

頭良さそうな人は取られた分だけ回収すると、早々に席をあとにしていた。

ボクはというと、取られた分の15万だけは残そうと思って5000万だけ受け取ったんだけど、ディーラーさんから逆恨みのもとになる可能性があるからということで半ば無理やり15万も手渡された。

本当に良かったのかな…?

ま、過ぎたことをとやかく言っても仕方ない。

次はそうだな……よし、ルーレットにしよう!

早速向かってみると、1つだけ空席があったのでそこに座ることに。

向かいの席では、ワインレッドの服を着て真っ赤な蝶ネクタイをした男の人が賭けをしてる最中だった。

顔を見る限り…何となく自慢話と長話が好きそうな感じがする。

次にルーレットに視線を移してみたんだけど…思ったより回転が速い。

ずっと見てたら目が回りそうなほど。

ルーレットを回すディーラーさんは女性だけど、あれってそんなに回しやすいのかな?

向かいの人が賭け終わり、ディーラーさんの視線がボクの方に向いたのを確認してから、ボクはディーラーさんに声をかける。

 

「あの~ディーラーさん、ちょっと1つお願いがあるんだけど、いいかな?」

「は、はい。何でしょう?」

「その~、悪いんだけどさ…ボクが賭けてる間だけでいいから…これ、回さないでやってほしいんだ」

「ま、回さないで…ですか!?」

「うん。さっきから見てたんだけど、ちょっと目が回りそうでさ…」

「おやおや、これで目を回すのかい君は。そんなんでよくルーレットなんてしようと思ったねぇ」

 

向かいの人が胡散臭い口調でそう言ってきた。

本当に見た目通りだなこの人は……。

まぁどうでもいいんだけど。

実をいうとルーレットを回さないことを提案したのは、目を回したくないってのは勿論あるんだけど、もう1つ理由があるんだよね。

それはともかく、ディーラーさんの方もボクの要求をすんなり受け入れてくれたので一安心。

取り敢えず最初は大損こかないようにしよう。

ディーラーさんがボールを転がす直前から、ボクはある一点を凝視する。

そこをボールが通過した瞬間、ボクは野生の勘で19~36に1万エリス分のチップ賭けた。

これはアウトサイドベット…って呼び方だっけ?

まぁ兎に角、そんな賭け方したの。

 

「…ちぇっ」

 

大分外れちゃった。

ま、最初だししょうがないか。

そう思ってたら向かいの人が声をかけてくる。

 

「おやおや~、そんな調子で大丈夫かい?ま、無一文にならないよう頑張ってね~♪」

「…別にいいじゃん、ただの遊びなんだから。ボクに言わせりゃ、ただの遊びに熱を入れ過ぎてる人の方がどうかしてるよ。子供達と一緒に昔やってた遊びに付きあうとかいう場合ならいざ知らず」

「………んま、まぁそうかもねアハハ」

 

ボクの言ったことが予想外だったのか、向かいの人は明らかに動揺してる。

…まぁ気にせず、続き続きっと。

その後も外しまくりはしたけど、段々コツをつかんできた。

そして少しずつ当たり始める。

でもボクは気を緩めず、ある一点とボールが入った場所を念入りに何度も確認する。

結果として外した分を取り戻す頃には大方、準備万端になった。

ここからはインサイドベットの6目賭けに変更。

賭け金も10万にして、これでプラス50万。

今度はこの50万を10万ずつ、5目に賭けてプラス300万。

どうせだからということで、更に5目賭けで60万ずつ…プラス1800万。

そして450万ずつの4目賭けに変更して、プラス1億4400万。

3600万ずつ4目賭け……プラス11億5200万。

ここまで来ると、なんだか少し怖くなってきた。

 

「……じゃあボク、これで最後にするよ」

 

そう言ってボクは賭けた………1億ずつ、3目に。

その結果は……当たり前のように大成功。

プラス33億で、合計が41億5200万に…!

自分で儲けといてアレだけど……どういうことなの?

ボクが呆然としていると、向かいの人がガタッと大きな音を立てて立ち上がった。

 

「き…君っ!い、一体何をしたんだ!?」

「…へ?いや、普通に賭けてっただけだよ」

「バカな!普通に賭けただけでこんな儲けになってたまるか!!」

「いやいや、だからボクもびっくりしてんの……自分でもまだ信じられないもん」

「それじゃあ何かい、君は持ち前の強運か何かで儲けたとでも言うのかね!?」

「…かもしれない」

 

そう言ってボクは冒険者カードの幸運の欄を指さす。

それを見たワインレッドの服の人とディーラーさんが仰天。

 

「な、なんて幸運………!!これならあるいは…」

「し、信じられない!こんなステータスの奴が存在するなんて……!」

 

2人がそんなことを言ってる間に、ボクは深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

大分落ち着いたところで、ワインレッドの服の人がボクに迫ってきた。

 

「なあ君、頼むよ!今度は違う賭けでもう1度見せてくれ!本当に運だけなのか、自分の目で確かめたいんだ!」

「…って急に言われても、どうしたら……」

 

すると今度は、さっきポーカーで逃げ出したワルそうな人が走ってきた。

上着は着直したみたいだけど、トランプが刺さった跡が残ってる。

 

「テメェ、こんなとこに居やがったのか!俺の5000万、とっとと返しやがれ!!」

 

な~んて怒鳴ってるところに、ゆんゆん達が合流。

というより、少し距離を置いて様子を伺ってる。

ゆんゆんはソワソワしていて、めぐみんは無表情で静観。

アクアは全身焦げてて、さも面白そうに傍観してる。

 

「何で返す必要があるわけ?ディーラーさんが言ってたよ、キミが日常的にイカサマやったり他のディーラーさんにイカサマを強要したり。それがどれだけ迷惑なことか分かってるの!?そりゃあ迷惑代の1つでも貰わなきゃ割が合わないよ!さっきだってイカサマを見抜いたら逆ギレしたし」

「うるせぇ!!何でもいいから返せ俺の5000万!!」

「さ~て、どうしようかな……」

 

ふと見れば、隠し部屋っぽいつくりの部屋のドアが開いていて、そこにターンテーブルが見える。

料理を運ぶカートらしきものも見えるぞ。

多分ちょっとした休憩スペースだな。

ここでボクは閃いた!

 

「そうだ!それじゃ2人とも、ちょっとあの部屋に来てよ」

「「へ?」」

「ディーラーさん!ちょっとあの部屋、使わせてもらうね。それと悪いんだけど、お湯を幾らか貰えないかな?」

「わ、分かりました。少々お待ちを……」

 

ゆんゆん達も手招きで呼び寄せて、早速準備に取り掛かる。

まず口から12個のティーセット、それにポットと茶葉に、角砂糖もね。

 

「それじゃレインさん、カップに紅茶を入れてくれないかな?」

「へあっ!?な、何故私が?」

「だって、ボクより紅茶入れるの上手そうだから」

「…別に構いませんけど、それより何でまた、12個もカップがあるんです?」

「それは後で分かるよ!」

 

ボクが椅子を3つ用意し、2人に座るよう指示してる間、レインさんは渋々だけど紅茶を入れてくれた。

勿論砂糖もね。

これがミソなんだ実は。

そして入れ終わった紅茶を、お盆に乗せて運んでくるレインさん。

 

「で、この後はどうすれば?」

「このテーブルの上に並べていって。なるべく等間隔でお願い」

 

レインさんは溜息交じりで、ターンテーブルの上に紅茶を並べる。

 

「あの~カービィさん、一体何が始まるんでしょうか?」

「見てれば分かるよ、ゆんゆん」

「それで、私達はいつまで突っ立っていればいいのですか?」

「全てが済むまで、そのまま待ってて」

 

そう言ってボクは、12のカップが並べられたターンテーブルを回す。

 

「さあ、好きなのを飲んで。冷めないうちに」

 

最初は首を傾げてた2人だけど、取り敢えず言われるまま飲んでみることに。

 

「…ほう、なかなかいい味だな」

「…確かに」

「あ、言っとくけどこれらの紅茶のうち、2つだけ毒入りが混じってるから気を付けてね~」

 

言った途端、2人は盛大に噴き出した。

まぁ当然だよね。

 

「ふ、ふざけんな!!もう飲んじまったじゃねぇかこのピンク玉!!」

「お、皆毒入りは飲んでないみたいだね。ラッキー」

「何がラッキーよ!あんた何て恐ろしいことを!!」

「というかカービィさん、一体どうやって特定の紅茶だけに毒を!?」

「レインさん…紅茶入れる時、おかしなところはなかった?」

「………ま、まさか!?」

「うん。そのまさかだよ」

「れ、レインさん!何があったんですか?」

「じ、実は…紅茶を入れた後に、角砂糖も一緒に入れたんですよ。その中に…2つだけ、色の黒い角砂糖があったんです」

「その通り!それこそ、ボクが特別にブレンドして作った毒入り角砂糖だよ。だけど紅茶に溶けちゃえば色は消えるし、匂いも味もしなくなる。要するに、最後まで毒入り紅茶を飲まなかった人が勝ちってわけ。名付けて『滅亡ルーレット』!」

「め、滅亡…ルーレット…!」

「ま、逆に言えば先に毒でどうにかなった方が負けってことだね」

「わざわざ逆に言わないで下さいよ!いやそれ以前に、これカービィに有利すぎるのでは!?」

「は?ボクに有利って?」

「いやだって、カービィは毒で死ぬタチじゃないでしょう!例の『ポイズンカービィ』とやらに変身するだけで!」

「そうだよ。だからボクの場合、『ポイズンカービィ』になった時点で負けってわけ。勿論その時には、2人で1億5000万エリス山分けしていいよ!」

「「それは本当(です)か!?」」

「勿論!」

 

1人7500万貰えると聞いて、ボク以外の2人は目を血走らせ、ゆんゆん達の目は手遅れなものを見る目となった。

とはいえ冷静に考えれば早い話、この賭けは“自分の中の大切なもの”を賭けに出してるようなもの。

アクアにも言われたけど、自分ながら恐ろしいこと考え付いちゃったな……。

間もなく2人もそれを理解したのか、まるで何かに祈るような表情になってるんだよね。

再び回るターンテーブル。

取る順番は決めてなかったけど、暗黙のルールで時計回りに決まったみたい。

ワインレッドの服の人、ワルそうな人、そしてボクだ。

そして2杯目を口に運ぶ。

すると突如、ワルそうな人が痙攣をおこし始めた。

体中が青紫色に染まり、狂ったかのように踊り出す。

 

「フィッシュがチップスでフィッシュッシュ~♪」

「え…な、何?」

「ちょ、ちょっと待って。これってめぐみん……」

「ええ、王都での“アレ”…に似てますね……」

 

そうだよ…めぐみんの言う通り。

王都にてコックカワサキが作ってたフィッシュアンドチップス。

アレを再現したものが入ってたんだ。

まぁ勿論、ギャンブラー2人はこのことを知らないわけだけど。

 

「な、何だ一体!?何が起こっているんだ!?」

「はい1人脱落ね。さ~続けるよ~!」

 

いちいち説明するのめんどくさいし、話したら話したで面倒くさい結果になりそうだったから無理矢理でも続けないと。

結局ワインレッドの服の人も、4杯目で毒入りに当たってしまいましたとさ。

 

「ウッホホオオオオオウ!あの馬車を追え!あの犬も追え!それと荷車だ!そして黒い雲もだ!部隊を追うんだ!俺について来い!」

 

反応から分かる通り、2人がそれぞれ飲んだのは違う種類の毒なんだよね。

それにしても、自分でやったとはいえ「ポイズン」でこんな事ができるなんて今まで知らなかったよ。

まぁそれはともかく…

 

「じゃ、この勝負ボクの勝ちだね♪」

「「勝ちだね♪、じゃない!!」」

「あんた自分が何したか分かってるの!?あの2人はもうじき、あんた特製の毒で死ぬことになるのよ!」

「は?死ぬだって??……ゆんゆん、ボクそんなこと一言でも言った?」

「へ?あい、いえ…言ってません。よ、要するに私の予想通りだったわけ…ですかね」

「予想通り?」

「あ…『ポンッ』つまりこういうことですか、カービィは最初から誰も殺すつもりなんてなかったってことなんですよね、ゆんゆん!?」

「多分そうだと思う。現にカービィさん、毒の話題の際には『どうにかなる』としか言ってなかったし…」

「そりゃそうさ。流石にそんなシャレにならないことはしないよボク」

「いやこの状況だって十分シャレにならないでしょ!はた迷惑じゃない!!」

「何言ってるのさ!そっちだって今まで散々他人のお金を無駄遣いしようとしたり、ところかまわず爆破して迷惑を振り撒いたりしてたじゃないか!偶にはボクにも八茶けさせてよ!!ただでさえキミ達が好き勝手するせいで、こっちは心の余裕が少ないのに!!」

 

そこまで言って、ようやく2人が押し黙った。

その後何故かどんよりした空気のまま沈黙が続いたので、ボクはアクアに話題を振る。

さっきから気になってたし。

 

「ところでアクア、何でキミついて来たの?『無駄遣いできない呪い』かかったままなのに……いやまぁ、その格好から想像はつくけどさ…」

「ええそうよ!あんたの呪いのせいで思いっきり黒焦げよ!だからめぐみんに代わってもらったの。“お金に困ってる人に恵んであげる”って形なら通るんじゃないかってね。うん、我ながら見事な作戦だったわ!」

「……で、結果は?」

「…………………………………………」

「…見事に全て溶けました」

「うわあああああああああん!!!」

「それで、カービィさんの方は?」

「ボクはその…アクアとは逆の意味でとんでもないことに…」

「つまり、大儲けってことですか?一体どれくらい…」

 

ボクは大きく深呼吸してから4人を手招きし、小声で額をつぶやいた。

 

「「「「よっ………!!??」」」」

「シッ!!」

 

大声を出そうとした4人を、ボクは直前で制止する。

 

「大きな声で言わないでよ!」

「嫌でも出したくなりますよ、何ですか42億と200万エリスって!一体どうやったらそんなに巻き上げられるんですか!?」

「巻き上げるも何も…気が付いたらこんなになってた」

「き、気が付いたらって…」

「ま兎に角、これ以上長居してたら余計目立つし、今日はもう帰ろうよ」

「そ、そうですね……」

 

というわけで、手に入れたお金をお腹に収め、ボク達はさっさと宿に戻った。

帰り際にカジノの奥から「2度と来ないでほしい」とか聞こえたけど、まぁ当然か……。

とはいえ、強力な武器やアイテムはどれも億越えの値段するから、これだけあっても完全には金欠の不安を拭えないのが現状。

現にボクの腕輪だって15億エリス必要だし…。

宿に戻ったボク達は、夕食と入浴を済ませたら部屋へ直行。

因みに部屋はアイリスが泊まってる部屋の隣だよ。

まぁ護衛なんだから当たり前だけど…。

それはともかく、部屋に戻ったボクは即行でベッドに飛び込んだ。

何しろ明日は、レヴィ王子が住んでるお城に行かなくちゃいけないからね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

夜は何事もなく過ぎ、現在ボク達はレヴィ王子のもとへ向かってる最中。

といっても、今日は本格的な話し合いがあるわけじゃなく、単なる歓迎の晩餐会みたいなものらしい。

たかだか話し合いするだけに、こんなに色々手順踏まないといけないなんて…冗談抜きで面倒くさいな。

でもこれが王族にとって普通だって言うなら、まぁ仕方ないか…。

というわけで、無事にお城まで辿り着いたのはいいけど……門が閉まったままだ。

というか…明らかに王都のお城より確実に大きいよねこれ。

 

「ねぇアイリス、これ一体どういうことなの?門が閉まったままだし、誰もいない…」

「準備に…時間が掛かっているんでしょうか?」

「いやそれにしたって変だよ。だってアイリスの所はちゃんと衛兵さんが見回ってるじゃん。せめて門の前くらいには居たって良いはずだよ。そうすればボク達が来たことはすぐ分かるはずだし」

「い、言われてみれば確かにおかしいですね…」

「全く、不用心というか抜けてるというか」

 

と言ったところで、出てこないものは仕方ない。

ボクは馬車のへりに座ってアイリスとお喋りすることに。

アイリス曰く、お父さんとお兄さんは現在、魔王軍との戦いの最前線に身を置いているらしい。

エルロード国に関しても、王様と女王様が他の国へ出掛けてるためにレヴィ王子が出迎えるとのこと。

またエルロード国は、日夜魔王軍と戦ってるベルゼルグ王国に資金援助をしてるらしく、今回はその資金援助の続行をお願いしに行くんだそうな。

それ以外は基本的にボクが適当に口から出したものに関する話で盛り上がった。

でもって1時間くらい経ち、ボードゲームの話題に入ったところで、ようやくレヴィ王子が出てきた。

といっても姿を現したのは門じゃなくて、その上にある…多分自室のベランダみたいなとこ。

その後ろには、護衛と思しき人が2人いる。

 

「おい何なんだ、さっきから騒がしいと思ったら!これだから野蛮な田舎者とは付き合いたくなかったん……ってそこ!何やってるんだ一体!?」

「ん?何って…ボードゲームのルール説明」

「はぁ!?お前ら神聖な城の前で、そんなくだらないことしていたのか!そん」

「うるさいな!そっちがなかなか出てこないから、こうして暇つぶししてたんだよ!!」

「な、何ぃ!?」

 

ダクネスを筆頭に、アクアとめぐみんを除く全員が顔面蒼白でボクを止めようと迫って来たけど、ボクが一睨みしたら皆押し黙った。

……そんなに凄い顔だったのかな?

まぁそんなこと今はどうでもいい。

 

「どうせ知らないだろうから教えてあげるよ、レヴィ王子!コッチはね、かれこれ1時間近く待ってたんだよ、ここで、この場所で!少なくとも、この門の前に1人くらい門番役の人を置いておけばその人が連絡してくれるだろうから、こんなに城の外で長居する必要は無かったんだよ!!それなのにこのお城には、門番どころか警備兵すらいないなんて…不用心なのか単なる間抜けなのかは知らないけど、兎に角何もかもがなってないよ!おまけにさっきから聞いてれば、口をついて出てくる言葉といったら、どれも教養のかけらも無い発言ばっかり!これじゃあ巷で『バカ王子』と噂されてもしょうがないよ全く!!」

「おぉ、そこまでバッサリ行きますか」

「バッサリ行き過ぎだカービィ!!お、お前という奴は…言うにしてももう少し物腰柔らかくできないのか!?」

「ハァ!?何言ってんのさダクネス、できるわけないだろう!!」

「!!??」

「ボクみたいな一般庶民ならいざ知らず、王族なら人の上に立つ存在として教養と礼儀作法をわきまえて手しかるべきじゃないか!なのにあの『バカ王子』の発言には教養のキの字もありゃしない!!あんなのが人の上に立ってるなんてどうかしてるよ間違いなふぎゅっ…………!!?」

 

ボクの口を塞いだのは、意外にもアイリスだった。

アイリスの顔は少し青ざめてたけど、後は私に任せて的なことを目で訴えてたからボクは一旦黙ることに。

で、ボクが静かになったのを確認したアイリスは大きく深呼吸すると、勇気を奮い立たせるようにレヴィ王子の方を向く。

そう言えばアイリス、こういう…いわゆる外交は初めての体験だって言ってたけど、大丈夫なのかな?

 

「お、お初にお目にかかりますレヴィ王子。私はベルゼルグの第一王女、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・アイリスと申します。この度、貴方様にお目に掛るべく参上いたしました。無事お目に掛れて光栄です。そして私の護衛が出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありません…」

「全くだ!おかげで危うく心がへし折れるかと思ったぞ!というか、俺の許婚ってお前だったのか!?へっ、ベルゼルグ王国の奴らは野蛮な戦闘民族みたいな連中ばっかだって聞いてたんだけどなぁ、何だそのほっそい体は?野蛮どころか、ろくに飯も食ってなさそうじゃないか。拍子抜けとはまさにこのことだな!」

「へっあ、あすっすみません……。あそ、それとキチンと1日3食、食べてます……」

「それに連れてる護衛だってバカに少ないじゃないか。そこのゴツそうな金髪とその隣のセミロングは別として、残る貧乳とちんちくりんは論外だ!毎度資金援助を求めてくるだけあって、金払い悪いんだなオイ!」

 

…それ完全に見た目で判断してるじゃん。

ホントにこの国大丈夫なのかな?

あとレインさんが注目されてないし…。

影が薄いせいで気付いてないのかな?

 

「ああ、それとその丸い生き物は何なんだよ!?そいつ何だって初っ端から悪口しか言わないんだ!?」

「勘違いしないでくださいレヴィ王子。カービィ様は悪口を言っているのではありません、心からの本音を語っているだけなのです!」 

「こ、心からの本音?」

「はい。カービィ様は私が出会った中で一番…いえ、もしかすると世界一なのではないかと思えるほどに裏表のない性格をしています。それ故に嘘をついたりしませんし、誰に対してもダメなものはダメとハッキリ言う。それが、カービィ様なのです!」

「か、カービィ!?」

 

ボクの名前を聞いた瞬間、それまでアイリスと向き合ってたレヴィ王子が護衛2人の方を向き、何か話し始めた。

けどボクはつい最近「読唇術」スキルを手に入れたんだよね。

なんでも、唇の動きから相手が何を喋ってるのか分かる…って感じのスキルらしい。

まぁそれはともかく、それを使って3人の会話を聞いてみることに。

 

(なぁオイ、カービィって確か…)

(そうです、これまでに4人の魔王軍幹部を葬り、幾度となく襲撃してきた魔王軍を“ほぼ全滅”という形で撃退したという『伝説の戦士』でしょう…)

(確かに、噂通りの丸いピンク色の身体…間違いございません)

(オイオイ、だとしたらちょいとマズいんじゃないか?もしこれ以上刺激して怒らせでもしたら、何しでかすか分かったもんじゃないぞ!)

(お気持ちは分かりますが、落ち着いてください。こういう時だからこそ、弱気に出てはダメなのですよ)

(左様、今こそ王族としての威厳を示す時ですぞ!)

 

王族としての威厳って……今までの言動から考えたらどう取り繕ったって手遅れだと思うけど?

って考えてたら、ボクのお腹が大きな音をたてる。

今までそっぽ向いてヒソヒソ話してた3人も、ボクの腹の虫に反応してこっちを向いた。

 

「おい何だ、今の音は!?」

「お腹すいた」

「ったく、少しは静かにできないのか!それとも何か、ベルゼルグの連中は話声だけじゃなく腹の虫も騒々しいのか!?」

「そんなことより、何時までボク達を外で待たせるつもりなの?こういう場合って、中に招き入れてから待たせるのが礼儀なんじゃないの?」

「うるさい奴だな、こっちは重大なこ」

「ゴ(ヴイイィィィン)ハ(ガチャッ)ン(キュオオオオォォォンン……)!!!」

 

…一瞬我を忘れたボクは、気が付くと「ハイパーレールキャノン」を発動させていた。

一旦止めようかとも思ったけど、何時また空腹で我を忘れるか分からなかったから取り敢えずこのまま続行することに。

一番に止めに入ったのは勿論、ボクの隣にいたアイリス。

 

「ま、ま、お待ちくださいカービィ様!空腹でご機嫌斜めなのは分かりましたけど、いくら何でもレヴィ王子を城ごと消し飛ばそうとするのは止めてくださああああい!!」

 

アイリスの叫び声と…アイリスに引っ張られてバランスを崩した直後にボクの左腕から放たれたピンク色の極太光線が、お城を掠めて空を切り、雲に大穴を空けたその様子を見て、3人は全てを察したのか見事な土下座からの滑らかな開門。

すぐに待合室へ案内される。

その道中、まだありつけないことを知って空腹に喘ぐボクは、またしても冷静でいられなくなった。

 

「…めぐみん、そう言えば今日って…まだ爆裂魔法使ってないよね?」

「え?いきなり何を言い出すんですか?確かに使ってませんけど…」

「なら…宣言するよ。爆裂魔法を『許可する』ってね……」

「お?……………………フッ、了解です」

 

一瞬訳が分からなかった様子のめぐみんだけど、ボクの意図を理解したのか悪そうな顔でOKしてきた。

そして部屋に着きソファーに座った瞬間から呪文の詠唱を始める。

 

「ちょ…ちょっとめぐみん、何してるの!?」

「何って…魔法の準備ですが?」

「準備って…!」

「ちょっとお待ちを!まさかそれは、爆裂魔法では!?」

「そうですよ。リーダーから使用許可が下りましたので」

「な、何でそんな…」

「何でってゆんゆん、少し考えれば分かることじゃないですか。ズバリ、カービィ自身が同じようなことをした場合必ず止められるからです!ついでに私自身、例の貧乳発言にカチンと来ましたので嬉々として受けました何か問題でも?」

 

ここぞとばかりに目を紅く輝かせるめぐみんに対して、レヴィ王子他2名は顔から血の気が引いてるし。

 

(なあ、あの紅い目って…)

(間違いございません…類稀な魔法の才能と破綻した理性で有名な紅魔族です)

(こ、これは本格的にマズイ気が…)

『クウウゥゥゥゥゥゥゥ……』

 

ボクのお腹から、明らかにボクの腹の虫とは違う音が聞こえてきたので、そろそろ明かすことに決めた。

ボクが大きく口を開けると、そこから……

 

「こめっこもお腹すいた~」

「「「「こめっこ!!??」」」」

「……おい、何故我が妹が口の中にいるのか説明してもらおうか」

「仕方ないじゃん。こめっこがどうしても一緒に行きたいって聞かないから、安全のために隠れてもらってたの!」

「姉ちゃん達だけズルい!こめっこだって冒険したいのにぃ!」

「いやズルいとかそういう問題じゃなくてですね…」

「それよりお腹すいた!!」

 

こめっこも空腹に喘いでるらしく、目をひときわ紅く輝かせてレヴィ王子達を睨む。

…そう言えば、こめっこが目を紅くしてるのって初めて見るな。

ボクはついでだからということで、ゆんゆんにアイコンタクトする。

最初は躊躇してたけど、ボクの現状を見て渋々了承し、ゆんゆんも目を紅く輝かせ始めた。

 

「…まぁ見ての通りです。今ここには空腹で限界の近い方が2人いますので、なるべく急いでもらえますか?特にカービィさんは限界が来たら、恐らく私達のことを非常食扱いし始める可能性が高いので。こめっこも5歳ですから、特に食に関しては歯止めが聞かない性質です。何するか分かりませんよ?あ、因みに私も彼女達と同じ紅魔族です」

「ねーねー取り敢えずさ、そこにいる男丸焼きにしてもいい?折角『インフェルノ』使えるようになったから~」

 

そう言って本気で「インフェルノ」を放とうとするこめっこ。

流石のレヴィ王子も5歳のこめっこには毒づくわけにもいかず、何とかなだめようと試みる。

するとここで待合室の扉が開いて、タキシード姿で初老な感じの男の人が入ってきた。

 

「皆様、晩餐会の準備が整いましたよ。料理が冷めないうちにどうぞ……え~…これはいかがいたしました?」

 

この人こそ、この国のお金の管理をしてる存在…王子の補佐役(?)である“宰相”ラグクラフト。

見た目何処にでもいそうな風貌だけど、今の部屋の状況を見てもあまり動揺を見せてない。

いや、それでもちょっと落ち着きすぎな気もするけど…今はいいや。

そしてラグクラフト宰相はボクの方を見ると、一瞬…ビックリしたようなギョッとしたような、兎に角そんな感じの顔をした。

 

「おお…これはこれは、伝説の戦士カービィ殿。お待たせして申し訳ない、早速ご案内いたしましょう…!」

 

そう言って急かすようにボク達を会場に案内する。

でもこめっこが…下手したらラグクラフト宰相を追い越すんじゃないかってペースで歩くもんだから、結果的に全員駆け足状態で会場入りした。

とはいえ、ボクが来ることは予想外だったらしい。

なにしろ焦った様子のラグクラフトさんが、料理長と思しき人に話しかけてるもん。

それから暫くして特大のラージバーグが運ばれてきた。

メインの料理を出すタイミングに無理言って合わせたんだな…というのが嫌でも伝わってくる。

だってさっきから皆慌ただしいもん。

でも結局、出された料理の半分以上をボクとこめっこで美味しく頂きました♪

風船みたいに膨らんだお腹をさすって満足そうなこめっこ。

ボクも同じく満足さ。

周りの皆がドン引きしてるけど、関係ないね。

待たせる方が悪いんだから。

そんなわけでこの日はこれで終わり。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日は朝から外交が始まった。

のはいいけど……

 

「お願いします!」

「無理です」

「そこをなんとか……!」

 

基本的にずっとこんな調子だよ…。

というより、そもそも外交ってこんな感じなんだっけ?

 

「いくら言っても無理なものは無理です!我が国の財政もひっ迫しているのですから。少なくとも、あなた方が見た街の活気からは想像できないでしょうけども……。昨夜の晩餐会とてそうです。仮にも一国の王女様をおもてなしするには少し貧相だとは思いませんでしたかな?カービィ殿を御もてなしする為、途中からシェフに無理を言って幾らか豪勢にしましたが、それまでは貧相だったはずです」

 

……な~んかさっきから違和感があると思ったら、そうだよ!

ラグクラフトさん、さっきから核心を突く発言を全くしてない。

具体的に収入がどのくらいあるとか、そういったことを一切言ってないんだ。

要するにこれって…単にお金を出し渋ってるだけなんじゃ?

よし、思い切って確認とってみようっと。

 

「いやそれ、単に食事“だけ”貧層にしただけじゃん!たかがそれだけで財政がひっ迫って…子供騙しもいいとこだよ全く!」

「!?ちょっ、カービィさん…」

「っ!聞き捨てなりませんなカービィ殿、あな」

「だってそうじゃん!昨日ボクはカジノに行って、結果的に42億とんで200万エリス稼いだんだよね。本当に財政がひっ迫してるなら、こんな大金支払えないどころか借りるツテすら無いはずだよ?違う?」

「…………!」

「よ、よよよ42億!?そ、それ本当なのですか!?」

「うん。何なら同行したレインさんに確認とってみれば?もしくはそのカジノに行って確認とってみるとか」

「はあ……」

「まぁ兎に角、実際には予算潤沢なんだし街の人は皆そのこと知ってるわけだし、それで堂々と出し渋りとか…ラグクラフトさん、少し大人気ないと思わないの?」

「お、大人気ないですと!?カービィ殿、先ほどから失礼が過ぎますよ!そのカジノがどうだか知りませんが、街の者は単に有頂天になっているだけです。彼らとて、いずれはこの国の実態を知ることになります」

「うっわ~…もうちょっとマシな誤魔化し方できないの?」

「できないの?」

 

声がした方に振り向けば、ソファーにちょこんと座ったこめっこが腕組みしながらラグクラフトさんを睨みつけてる。

それを見たボクはこめっこに近付くと……

 

「こめっこ、あんな大人になっちゃダメだよ?」

「なりたくないよ!!」

 

ボクの言葉に、こめっこはフンっと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。

これには流石のラグクラフトさんも言葉が出てこない様子。

ゆんゆん達はどうしていいのか分からず、複雑な顔してる。

アイリスは…結果的にボクの発言が助け舟になったからなのか、「ありがとう」って言いたげな目をしてる。

とここで、さっきから護衛2人とレヴィ王子が外交そっちのけで何か話し込んでるみたい。

ツッコもうかと思ったんだけど、このタイミングでラグクラフトさんが口を開いた。

そして意外にも、話しかけた相手はこめっこ。

 

「あ~えっとお嬢ちゃん…さっき合いの手を入れていたけど、君はその~…今までの話を分かっているのかな?」

 

この発言でバカにされたと思ったのか、こめっこは怒りを露わにして目を紅く輝かせ、今にも食って掛かりそうな勢いで怒鳴り散らす。

 

「分かってるに決まってるよ!!少なくともおじさんがケチんぼだってことくらい!カービィ兄ちゃんとは大違いだよ!兄ちゃんはお金持ちだし、一食で二百数十人前を平らげちゃう食いしん坊。なのにいつもは食べる量が物凄い少ないんだ。何でかって言ったら、いくらお金あっても食べ物買うお金減らさないと良い武器買えないし、こめっこの魔法修行のためのポーション買うお金だってなくなっちゃうから!!そうだよ、カービィ兄ちゃんは皆のためになるならお金は惜しまないんだ!ただ出し惜しみするだけのおじさんとは大違い!!」

 

ボロクソ言われてショック状態のラグクラフトさんをよそに、怒りが収まらないこめっこは矛先をレヴィ王子に向けた。

 

「あと分かってることは、そこにいる『バカおーじ』は話にならないってことだね!!」

「…は、はぁ!?な、何だこのガキ!?もう一度言ってみろ!!」

 

不意打ちで悪口を言われたレヴィ王子は慌てて応戦するけど……ハッキリ言って全然格好付いてない。

そして怒りに任せて容赦なく怒鳴り散らすこめっこ。

 

「だ~か~ら~、話にならないって言ったの!!こういう話し合いの時ってさ、普通はおーじ様がリーダーとしてやっていくもんじゃないの!?何でかんけー無さそうなことやってるわけ!?ってゆーか何か知らないけどお腹空いてきたから、その『バカおーじ』丸焼きにして食べてもいい?」

 

遂に物騒なことを言い始めたこめっこ。

そしてレヴィ王子に向けられた右手からは弱い炎が…!

するとここで、めぐみんが動き出す。

 

「お~っと、こめっこ。流石にそんな煮ても焼いても食えないものを食べようとするのは、姉としてどうかと思いますよ?仮に食べられたとしても高確率でバカがうつりますから止めましょう、ね?」

 

めぐみんの言葉に納得したのか、こめっこは一旦落ち着いたんだけど、まだレヴィ王子を睨んでる。

…そろそろボクも何か言った方が良いかな?

でないと余計に収拾がつかなくなりそうだし。

 

「ハァ…もういい加減分かったでしょ、レヴィ王子?5歳のこめっこでも十分には分からないなりに一生懸命聞いてるってのに、明らかに年上のキミが最初からマトモに話も聞かずに関係ない話してばっかり……キミは間違いなく王子の座につくべき人じゃないよ…」

「ケッ、何を言い出すかと思えば。そういうお前はどうなんだよ?」

「え?」

「俺が王子の座につくべきじゃないとか言っときながら、お前は冒険者としてやってけてるのかよ!?」

「冒険者としてって…少なくとも皆を引っ張ってるのはボクだよ」

「ほ~ん……よし、閃いたぞ!俺は面白いものが大好きだ。そこでだカービィ、明日からお前に試練を与えたいと思う。もしその試練をクリア出来たら、引き続き資金援助を約束しようじゃないか」

「試練?」

 

とここで、ラグクラフトさんがショック状態から回復。

 

「ちょっ、王子!勝手に話を進められては困ります!この国の政治に通じているのは私なんですから…」

「何言ってるの、ラグクラフトさん?政治に通じようがいまいが、そっち側で一番発言権が強いのはあくまで『王子』なんでしょ?」

「うぐっ…そ、それは…」

「ふふん、そういうことだ。よく分かってるじゃないかカービィ、少し見直したぞ。というわけでラグクラフト、こればっかりは口出ししないでもらおうか。あくまで『王子』である俺の意向だからな!」

「……………………!」

 

ラグクラフトさんが口ごもる中、不意にアイリスが手を「ポンッ」と叩いて口を開く。

 

「……そうですラグクラフト宰相!そもそもあなたは何故資金援助を断とうとしているのですか?元々我々は、我が方が武力支援、そちらが防衛費を互いに送り合う同盟関係のはずです!もし資金援助が滞り、その結果として我が方が敗北した暁には、あなた方の国が狙われることは確実ではありませんか!!」

「いいえ、それには及びません。我が国は魔王軍と敵対する必要がありません。何しろ、既に魔王軍との不可侵条約が結ばれておりましてな」

「条約!?ちょっと待って、仮にも“人類の敵”な魔王が不可侵条約なんかに応じたの!?」

「まぁ驚かれるのも無理はないでしょう。勿論簡単なことではありませんでした。私としても散々苦心しましたが、私のたゆまぬ努力のたまものか奇跡か、条約の締結に漕ぎ付けたというわけですはい……」

 

…何かそれっぽくまとめたけど、よく考えればやっぱりおかしい。

大体、長い間敵対関係だった魔王が、話し合いに応じるなんてことがあり得るのかな?

あのデストロイヤーだって、元々魔王軍を倒すための兵器なんだし……それだけ長い間敵同士だったのに今更話し合いに応じるって、ボクだったらとっくに諦めると思うけどな。

仮にその気があったとしても……。

でも、だからといってお金の出し惜しみするための言い訳とも思えない。

仮にそうだとしたら、アイリスの言う通り魔王軍の脅威にさらされることになるから危険すぎる。

となると…まさかこういうこと!?

推理小説とかで時々あるシチュエーション………“物語の重要人物が実は敵だった”ってパターン。

もしそれが正しければ、ラグクラフト宰相は魔王軍の仲間ってことになる。

いわゆるスパイってやつか。

よし、隙を見て「フォーメーション・バニル」で調べてみよう。

 

「…まぁ兎に角、ボクがその試練ってやつを達成出来たら資金援助を続けるってことでいいんだよね?」

「そういうことさ。但し、幾らかの制限を設けよう」

「制限?」

「ああ、ズバリ“お前1人で戦う”だ」

「…え?それだけでいいの?」

「あ?何だその反応!?お前今までそいつらと一緒に冒険者やってきたんだろ?急に1人になるってのに何だその薄い反応は!?」

「いやそんなこと言われても…ボクに言わせれば、今までそれが普通だったし」

『あ~…』

「お、おいお前ら!何だ今のは!?今のはどういう反応なんだよオイ!」

「ああ、いえ……カービィ様なら十分あり得ると思ったもので…」

「うむ、アイリス王女様の仰る通り。カービィはこれまでも、魔王軍幹部を含めた多くの強者達を、基本的に1人で倒してきた身だからな!」

「そうね、私達がカービィさんにしてきたことといったら、目的達成をちょっとだけ楽にする程度の補助だけだもの…」

「私としてはあまり認めたくありませんけど、今の私もといこのパーティが存在しているのも、ひとえにカービィあってのことでしょうから」

「こめっこもカービィ兄ちゃんに出会えなかったら、どうなってたか分かんな~い!」

「…ん~まぁそれはいいとして、条件はそれだけ?」

「…あ、ああ。それともう1つある。昨日俺に使おうとした『アレ』は使うな!俺の心がザラッとなるから!」

 

ザラッとってどういうことだろう…?

まぁいっか、兎に角そんな感じでこの日は終了。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日ボク達はお城からほど近い所にある、巨大な闘技場に案内された。

外側も内側も、見たまんまの古代風のつくりをしてる。

皆は観客席に、そしてボクはアリーナの中央まで来たわけだけど……

 

「ねぇねぇ、ボクはこの後どうすればいいわけ?」

「今からお前には我が国お抱えの騎士団と戦ってもらう。気の荒い奴らばかりだから気を付けな!」

 

レヴィ王子がそう言って間もなく、目の前の金属製格子戸が上にスライドして、奥の暗がりから騎士達が10人やってきた。

カジノ大国の騎士団だからどんなのかと思ってたけど、結構マトモ…っていうかベルゼルグ王国の騎士達よりゴツくない?

何か鼻息荒いし……。

皆ボクを見た途端、不満そうな顔でレヴィ王子の方を見る。

 

「オイオイお前達、相手を見た目で判断するんじゃない!そいつは既に魔王軍幹部を4人も葬った実績があるんだぞ!」

「うん、ついでにドラゴンスレイヤーもね」

 

そう言ってボクは何気なく冒険者カードの実績欄を指さす。

すると、それまで強面だった騎士達が急に青ざめ始める。

 

「おいおい、冗談だろ!?」

「マジで倒してんぞ、しかもエンシェントドラゴンって…!」

 

こんな事を皆言ってる。

どうやらあの騎士達から見ても、エンシェントドラゴンは脅威らしい。

よし、どうせだからもっと色々話してみよう。

 

「ついでに言うとさ、魔王軍にはでっかいゴーレムなんかもいたんだよね~。大体これくらいの大きさだよ『ストーン・ストーン』!」

 

何だかんだでこのコピー能力使うの久しぶりだな。

ボクはそのまま騎士達を見下ろす。

 

「ん?何を驚いてるの?実際にこれくらいの大きさあったよ。え~い!」

『どわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

 

ボクは単にその場でチョット地団駄踏んだだけなんだけど、踏み潰されると思ったのか騎士達は逃げ惑い始める。

いや、もしかしたら衝撃に驚いただけなのかも……。

まいっか、取り敢えず試合再開だ!

 

「待て~~!」

『ゴロゴロゴロゴロロロロロロロロ………』

「うわあああぁぁぁぁぁ来るなあああぁぁぁぁぁ!!」

 

とまぁこんな具合に、岩球みたいに転がったり

 

「と~う!」

『ドスウウゥゥゥゥゥゥン!!』

「だあああああああぁぁぁっぁぁぁあぁ……!!」

 

ヒップドロップをやったりしながら騎士達を追いかけてたわけ。

ふと上を見たら、レヴィ王子がアイリスに話しかけてるのが見えた。

 

「おう……これが噂の“コピー能力”ってやつなのか…!?」

「そうです。あ、因みに本物のゴーレムに比べればパワーも硬さも桁違いですけどね」

「確かに、アレは一方的だった……カービィがゴーレムを力で負かし且つ拳で打ち砕いていたというのに、ゴーレムの方はカービィを一切傷つけられなかったからな………」

「あ、そうそう!拳で思い出した、カービィ!あんたその姿じゃ小回り効かないんじゃない?エンシェントドラゴンの時に使ったアレに換えなさいよ!!」

「ん?ああ、アレね『ファイターカービィ』!」

 

いや別にボクはそこまで倒すことにこだわってたわけじゃないんだけど…でもアクアが珍しく知恵を絞ったんだし、折角だから乗っかってみよう。

 

「今度は何だ?元の大きさに戻ったと思いきや、何時の間に赤ハチマキなんかして」

「油断しちゃダメですよレヴィ王子。あれはかつてエンシェントドラゴン討伐の時、トドメを刺す前に発動させていたコピー能力です。あの拳から繰り出される打撃は、流石のエンシェントドラゴンでも防ぎきれません。現にアイツ、頭から血を流して悶絶してましたから、確実に頭蓋骨はひび割れてたはずです。それもレベルが2桁に達してない時ですからね」

 

めぐみんのその言葉を聞いたレヴィ王子から血の気が引き、ボクに詰め寄ろうとしてた騎士達に慌てて警告を発する。

 

「お、おいお前達、気を付けろ!今のソイツはエンシェントドラゴンの頭蓋骨を叩き割るほどのパワーがあるんだ!むやみに近づいたら殴り殺されるぞ!!」

 

そんなレヴィ王子の言葉を聞いて騎士達が戦々恐々となる中、ボクは気にせず素振りでウォーミングアップ。

そしてどっしり構えた。

 

「…そっちが来ないなら、こっちから行くだけさ!」

 

ボクがそう言って駆け出すと、さっきまで取り囲んでいた騎士達が一斉に距離を取り始める。

 

「『波動ショット』!」

 

なのでボクは騎士の1人を波動弾で転ばせた。

そして全速力で駆けより、大きくジャンプ!

 

「あっ、遂に出るわよ!エンシェントドラゴンの頭を叩き割ったあの技が!相手は死ぬ!!」

「『スパイクパンチ』!!」

 

全くアクアったら…先に解説するのやめてくれないかな。

おかげで今まさに殴ろうとしてた騎士に、ギリギリのところで躱されちゃったし。

 

『ドゴオオオオオォォォォォォォォンン!!』

『バギバギバギバキキキ……………』

 

そのせいもあってか、闘技場の床(というより地面?)はボクが殴った瞬間に1本の大きなひび割れができちゃったよ。

いや……それにしても規模が大きい…ような気が。

 

「……ありゃりゃ…ちょっと力入れすぎたかな?」

「いやいや入れすぎたとかの問題じゃないぞこれは!明らかに原型とどめないほどに叩き潰そうとしただろう!!」

「違うよ!これでも加減したつもりだよ。ただ今現在のレベルとかのことが頭から抜けてただけで…」

「そうだとしてもやりすぎですよカービィ様!せめて軽く叩く程度にとどめて頂けませんか?」

「そうは言うけど、実戦なんだから少しは力むもんでしょそおいっ!!」

 

やり取りしてるスキを突いて、背後から襲おうとしてた騎士の気配を察知したボクは、ノールックでアッパーカットを食らわせた。

食らった騎士は声も立てずに空高く飛んでっちゃった。

それも食らわせたボク自身が、目で追いきれないくらいの速さでね。

また力入れすぎたみたい…。

でもってその後はというと、もう完全に鬼ごっこ状態。

ボクがただ一方的に騎士達を追いかけるだけの展開なんだよね。

ふと上を見れば、さっきアッパーを食らわせた騎士が落ちてくる。

そこでボクは閃いた!

 

「よ~し、仕上げはこれにしよう『オーシャンカービィ』!」

「…こ、今度のは何なんだ?」

「あれは私も初めて見ます!確か港町ドックにて、海の有事を解決した褒美として、海の神ポセイドンより授かったという新たな能力です!より強力な水属性魔法を使えるんだとか……!」

「『セイクリッド・ハイネス・クリエイトウォーター』!!」

『ブシュウウウゥゥゥゥゥゥ』『ドドドドドドドドドド………』

 

突如割れた地面から大量の水が噴き出し、あっという間に闘技場が巨大プールに早変わり。

落ちてきた騎士は豪快な水しぶきと共にプールへダイブ。

 

「そ~れ!」

 

それを確認したボクは水を操って水竜巻を発生させる。

巻き込まれた騎士達はもみくちゃになりながら何か叫んでたみたいだけど、水竜巻の轟音のせいで全然聞き取れない。

しかも水の波紋でブレブレだから「読唇術」スキルでも何て言ってるか分からないし。

 

「カービィさ~ん!そろそろ止めてあげてくださ~い!このままじゃ全員溺れちゃいますから~!!」

「ん?ああ、そうだったそうだった!えいっ!」

 

ボクとしたことが、読唇術に気が行き過ぎてたよ。

ボクは慌てて水竜巻を消滅させた。

地面に落ちた騎士達はみ~んなグッタリしてる。

それを見てボクは、勝利宣言っぽく右手の鉾で地面を叩いた。

すると、それまで半分放心状態だったレヴィ王子が持ち直す。

けど……今までとは全然違った。

その時のレヴィ王子は………何というかその、“権力者の雰囲気”……みたいな何かを纏ったような、そんな感じのたたずまいだったわけ。

他に良い表現があるのかもだけど、ボクにはこれが限界。

兎に角、レヴィ王子はそんな出で立ちと顔つきでボクに言い放った。

 

「“伝説の戦士”カービィ、今宵の貴殿の戦いはまさに天晴れの一言に尽きる!これまでに魔王軍の襲撃を3度にもわたって退けたと聞く…その確かな実力を、この戦いにおいて文句無しの完全勝利、という形で遺憾なく発揮した!私としても、これ以上言うことは何もない!改めて言わせてもらおう、実に実に天晴れであった!!」

 

そういう振る舞いができるなら、初めからそうすればいいのに……いや待てよ。

本当に「バカ王子」と呼ばれるような存在なら、そもそもあんな振舞い方が急にできるのかな?

ボクにはとてもそうは思えない。

親から教育を施されたとしても、今まで散々バカやってきて急に態度を一変させるなんて芸当…よっぼど物覚えが良い人じゃない限り無理だと思う。

となると…今のレヴィ王子が本当の姿で、今までずっとバカのふりをしてたってことになる。

でも何のためだろう?

闘技場からお城に戻る間、ずっと考えてたけど分からないや。

よし、ラグクラフト宰相だけじゃなく、レヴィ王子のことも一緒に探ってみよう。

お城に到着し、レヴィ王子が改めてボクを称賛し終えた時、ボクは口を開いた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「それじゃ、資金援助は続けてくれるの?」

「まぁ、この時点でそうしてもよいのだが…」

「だが?」

「実はもう1つ問題を抱えておるのだよ、この国は。最大の脅威と言っても差し支えないほどの、な。だからこそ、ドラゴンスレイヤーの称号を持つカービィに頼みたいのだよ」

「…ってことは、次の試練ってドラゴン退治なの?」

「その通り」

「え~…それじゃあボクが行く必要無いじゃん!」

「…は?」

「は?じゃないよ。ボクは既にドラゴンスレイヤーの称号があるんだ。こういう場合、“腕はあるけどまだ称号を持ってない”人が行くべきじゃないか!例えばアイリスとか」

「へ?わ、私ですか!?」

「そうだよ。王族専用スキルのことは知ってるけどさ、アイリスの実力ってまだ分からないわけだし、こういう機会だってそうザラにあるわけじゃないでしょ?」

「そ、そうですけど……」

「因みにだけど、そのドラゴンってどんな感じのやつなの?」

「…黄金竜はその名の通り、全身が金色の鱗で覆われたドラゴン。金鉱山に住み着き、金塊を主食としているそうだ」

「金が主食!?変なの」

「まぁまぁ……」

「…一応言っておく。カービィが倒したというエンシェントドラゴンは、実力的にはドラゴンの中で3番目だ。2番目が黄金竜、そして最も強いのはレジェンドドラゴンと呼ばれる奴だ」

「ふ~ん。あそうそう、ドラゴンで思い出した!ねぇレヴィ王子、そのレジェンドドラゴンとテナガドラゴン、どっちの方が会える確率高いかな?」

「て、テナガドラゴン!?」

 

その名を聞いた瞬間、レヴィ王子が玉座から転げ落ちそうになった。

そう言えば、リアクションがどことなくイグニスさんと似てるような…。

 

「か、カービィ!お前まだ覚えていたのか!?」

「今更何言ってるの、ダクネス?ボクが食べ物のことを忘れると思う?」

「うぐっ…」

「ねぇねぇ、テナガドラゴンってなーに?」

 

ボクの背後からこめっこが質問してくる。

 

「名前の通り、ドラゴンの仲間だよ。滅多に出会えない希少種らしいんだ」

「へ~」

「で、結局どうなの?出会える可能性について」

「そんなもの、どうやったら分かると言う気だ!?こっちが知りたいね」

「まぁそうだよね。で、話を戻すけど、黄金竜について他に分かってることってある?」

「……噂程度でもいいと言うならもう1つあるぞ。ドラゴンの中にはごく稀にだが、長い年月を経て知性を蓄えるものがいる。そしてその黄金竜…どうやら言葉を話せるらしい」

「言葉を話せる!?ってことは相当頭いいってこと!?」

「だ、だろうな」

「な~んだ、だったら先に言ってよ!それならもっと適任なやつに心当たりあるのに~」

「適任?………それってもしかして、『ランディア』のことですか?」

「そうだよ」

「…なるほど、確かに名案ですカービィ様!」

「だな。『ランディア』が戦いたいヤツってのの条件にピッタリ合っているぞ、黄金竜は」

「待て待て待て!勝手に話を進めるな!一体何なんだその『ランディア』というのは!?」

 

あ、そういえばレヴィ王子は知らなかったね。

ボクが説明する前に、アイリスが口を開いた。

 

「ドラゴンの名前ですよ。カービィ様の旧友にしてライバルでもあります。彼は以前『ここらのドラゴンは力任せに暴れるだけで中身が無い。多少は弱くてもいいから知的そうな奴と戦わないと張り合いがない』などと仰ってましたから、彼の相手としては適任だと思います」

「…ほほう、なるほどな。このままカービィにやらせてもいいが、それだと芸が無い。それに、ドラゴン同士の戦いというものにも興味が湧いた。いいだろう、その提案、乗った!」

 

その時ラグクラフト宰相が何か言おうとしたみたいだけど、昨日王子に言われたことに加えて、こめっこが目を紅くして睨んでいるせいで言うタイミングを完全に失い俯いちゃってる。

更にラッキーなことに、レヴィ王子が護衛達に何か話し始めた。

チャンスは今しか無い!

そう思ったボクはすかさずバニルの力で2人に探りを入れる。

結果、衝撃の事実が分かった!

まぁラグクラフト宰相は予想通りだったんだけど、問題はレヴィ王子の方。

なんせ………………まぁ、それより今はドラゴン退治だ。

 

「どうせ今昼前だし、時間くれたらランディアをここに呼べると思うよ」

「何!?そんな短時間で呼べるのか!?」

「まぁ運が良ければ、だけどね。早速行ってくるよ!」

 

そう言ってボクは今までいた部屋をあとにし、誰もいないことを確認したうえでプププランドへ移動。

下準備したうえでハルドラボ火山に向かうと、いつも通りにランディアが佇んでいた。

ボクが黄金竜の話をした途端、ランディアは目の色を変えて是非戦わせてくれと言ってきた。

まぁ傷は大分癒えてるみたいだし、大丈夫…かな?

 

「おお、早かったなカービィ!」

「うん、まだお昼には大分早かったね…」

「それで、ランディアは何処です?」

「もうすぐ来るよ」

 

と言ってる間に、大きな羽ばたき音と着地の際の地響きと共にランディアが到着。

レヴィ王子を筆頭に全員がバルコニーへ。

 

「おお…………まさか4つ首とは……!!」

 

エルロード国側の人達が絶句する中、レヴィ王子だけは憧れの目でランディアを見つめる。

 

(…おい、何時までそうしているつもりだ。我は見世物ではないぞ!)

「っな、何だ今の声は!?一体何処から…」

「レヴィ王子、今のがランディアの声です。彼は喋れませんけれど、心に直接語りかけることができるのです」

「こ、心に直接だと!?」

 

…この時ボクははっきりと見た。

レヴィ王子より、その後ろにいるラグクラフト宰相の方がビックリしてるのをね。

と言っても、ランディアは心で話すことができるってだけで、“心が読める”わけじゃない。

加えて早く戦いたいこともあって、ランディアはラグクラフト宰相のことなんて気にしてないみたい。

ランディアはレヴィ王子を一睨み。

 

(おい、黄金竜は何処だ?)

「あ、ああ。奴が棲んでいるのは」

「それより、そろそろお昼だよ。ゴハンにしよう?」

(…うむ、それもそうか)

「あ、あの~カービィさん?」

「ん?どうしたの、ゆんゆん?」

「いやその、私達はいいとして…彼はどうする気なのかと…」

 

ゆんゆんがランディアを指さしながらそう言ったけど…ああ、なるほど。

ランディアのお昼をエルロード国側が負担することになるんじゃないかって思ったのか。

 

「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても。ランディアの分はボクの方で用意したから」

「呼びに行く途中で用意したんですか?」

「勿論!だって……ね?」

(ちまちま出されたのでは、食べた気がしない)

「というわけ」

「納得いきました…」

 

てなわけで、仲良く(?)昼食を済ませたボク達は黄金竜が棲む金鉱山へ向かうことに。

そこでボクは閃いた。

 

「そうだ、皆でランディアに付いて行こうよ!」

「へ?何をいきなり!?先回りでもするつもり!?」

「アクア、先回りも何も、まだ場所を聞いてないじゃん」

「あ、そうだったわね…」

「それはそうと、ランディアに付いて行く方法は?」

「そりゃ勿論、ランディアの背中に乗って」

『背中に乗って!!??』

「何でそんなに驚いてるの?ランディアはボクの友達なんだから、大丈夫だよ」

「いやそういうことじゃないんですよカービィ。そもそもどうやって乗るんですか?」

「ホラ見てよ。背中に等間隔に棘が並んでるでしょ?あの間を座席代わりにして跨ぐのさ。もしくはシンプルに棘につかまるとか」

「落ちたらどうするんですか!?」

「大丈夫だってば、何のためにランディアが4つ首だと思ってるの?」

「……………………」

(断っておくが、我を馬のように扱うんじゃないぞ。それと体に杭等を打ち込むのも断固拒否する)

「あ、それは問題ないよ。ダクネスはまだ剣を持つことが許可されてないから」

(お前が残っているじゃないか)

「ボクのは腕と一体化するタイプだから、そんな使い方はできないよ」

(そうか…)

 

ランディアの許可が下りたところで、アイリス、ボクと続いてパーティメンバー全員が背中に乗った。

レヴィ王子はバルコニーから望遠鏡で見物するんだって。

あ、こめっこだけはボクの口の中。

一番落ちやすそうだからね。

一応アイリスだけは、万が一にも落ちないようにボクが後ろから押す形で支えておく。

そんなボク達を気にかけてか、ランディアはいつもより静かに舞い上がった。

ボクと一緒に空中散歩した経験のあるアイリスだけど、ドラゴンに乗って飛ぶというのはまた新鮮なものらしく、目を輝かせながら乗り心地を楽しんでるみたい。

 

「…鎧姿のせいか、結構似合ってるね」

「え?何がですか?」

「ドラゴンに乗ってる感じがだよ!そう言えば、職業に『ドラゴンナイト』とかいうのがあったよね。アイリス、どうせだから『ドラゴンナイト』になってみたら?」

「わ、私が…ドラゴンナイト!?」

(カービィ、ドラゴンナイトとは何だ?)

「ボクも詳しくは知らないけど、ドラゴンに乗って、ドラゴンと共に戦う職業…みたいな感じかな?」

「いやいやいや待ってください!その職につくなら、ドラゴンと親しくないといけません。そもそもどうやったらドラゴンと親しく付き合えるんですか!?」

(そこまで難しくないと思うぞ…要は気の持ちようだ。基本はそちらから優しく接近する、これを守っていれば何時かは上手くいくだろう)

 

悩むアイリスをよそに、ランディアは気流にのって加速する。

途中心配になってちょくちょく後ろに気を配ってたんだけど、特に問題は無いみたい。

ランディアが静かに飛んでることもあって、ゆんゆん達はバランスを崩すことなく乗っている。

何度かめぐみんの帽子が飛ばされそうになったけど、杖とかはダクネスがしっかり持ってるし、まぁ大丈夫そうだね。

そうこうしてるうちに、ランディアは金鉱山近くの岩山に降り立った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(お前達はここで降りろ。あまり近いと巻き込まれてしまう)

「そ、そうですね。降りましょう!」

 

ランディアの攻撃の凄まじさを知ってるゆんゆん達は直ぐに降りたけど…

 

「ボクはもう少し近くで見てようかな?」

「あ、私も見たいです!」

「「「王女様!?」」」

「大丈夫だよ、安全はボクがちゃんと守るから」

 

そう言うのが早いか、ランディアは再び舞い上がった。

そして黄金竜が潜んでると思しき大穴の前で着地し、ボクとアイリスはランディアから滑り降りる。

 

「『カースド・スパーク・スパーク』!!」

 

忘れずに雷属性上級魔法を電磁シールドに施したところで、ランディアは大穴の真正面に陣取る。

そして火炎弾を放った。

爆発音と、岩が崩れる音が辺り一面に鳴り響き、遂に黄金竜が姿を現した。

レヴィ王子が言ってた通り、全身が金色の鱗で覆われてるぞ。

しかもアイリスの話じゃ角や鱗が非常に硬いため、最高品質の武器や防具が作れるし、その肉を食べればそれだけで大幅なレベルアップができるらしい。

ボクが何より驚いたのは、黄金竜の血液が例の「レジェンドスキルポーション」の材料になるってことだ。

 

「…っ、一体何処のどいつだ!私の住処を爆破したのは!?」

(目の前にいるだろう。というより、お前は一体何時まで寝ているつもりだったんだ?もう昼さえ過ぎているぞ!)

 

え?黄金竜、今までずっと寝てたの?

そう言えば微かに呼吸音みたいな音が聞こえてたけど、あれ寝息だったのか。

寝すぎでしょどう考えても。

 

「特にやることも無いから寝ていた、それだけだ!」

(そう言って1日中食って寝ての自堕落な生活か…)

「失礼な!最低限の運動くらいはしているぞ!」

(…まぁ、そういうことにしといてやろう)

「ぐっ……それより、貴様は一体何者だ!?何故頭が4つもある!?」

(我はランディア。ここに“頭のいい”強者がいると聞いて、やって来たのだ)

「頭のいい強者…だと!?」

(その通り。何しろそこらのドラゴン共ときたら、力任せに暴れるだけで知性など皆無。多少は弱くとも、知的そうな輩でなければ戦う意味など無い。そんな時、人語を話せる程度の知性を持つというお前のことを知ったわけだ)

「なるほど、要するに私と戦いたいわけか。ならその前に1つ答えろ。さっきから貴様は、どうやって私に語りかけているんだ?」

(お前の心に直に語りかけている。我はお前と違って、口で喋ることができんのでな)

「…まあいい、私とて黙ってくたばるわけにもいかない。いざ勝負!!」

 

そう言うなり、黄金竜はランディア目掛けて火炎を放つ。

なるほど、攻撃方法は他のドラゴンと同じなのか。

といってもランディアには効果無いけどね。

 

「な、何だと!?俺の炎を食らって…何ともない!?」

(当然だ。何千年もの間、火山の中で過ごしてきた我にとって、火炎など無意味)

「…………………………!!」

(我を倒したいのなら、これぐらいでないとな!)

『チュドドドドドドドドドドドドドドドド…!!』

 

ランディアが反撃を開始。

4つの口から火炎弾を連射すると、黄金竜はあっという間に爆炎と煙に飲まれて見えなくなった。

その後暫くは何の変化も見られない。

……まさか、今ので勝負がついたとか?

いや、多分それは無いね。

ランディアもそれが分かったのか、その場で錐揉み回転するとともに、体が白と虹色の光に包まれていく。

そして間もなく、黄金竜が雄叫びをあげて突っ込んできた。

冷静に考えてみると絶妙なタイミングだと思う。

もし相手が何の対策もしていなかった場合、「え…?」みたいな感じで一瞬気を緩めるだろう。

でもランディアにその手は通じない。

黄金竜の突撃とほぼ同時に「スパイラルドラゴン」を発動。

弾き返された黄金竜はそのまま岩壁に激突した。

 

(そんな姑息な手で我を倒せると思ったか、愚か者め)

「ぐ……チクショオオオオ!!」

 

黄金竜は怒りに任せて再び突進。

しかもさっきより明らかにスピードが上がってる。

まぁあっさり躱されたけどね。

 

(なんだ、動こうと思えば動けるんじゃないか。加減など必要無いぞ!『ウインドカッター』!)

 

不意に空へと舞いあがったランディアは、風の刃を放つ。

黄金竜にとっては大したダメージにならなかったけど、そこそこ深い切り傷が鱗に刻まれた。

今のを普通のドラゴンが食らったらどう違うんだろう?

 

「俺の自慢の鱗が…いやそれよりも、さっきから何なんだ貴様の攻撃は!おかしな刃を飛ばしたり炎が爆発したり、そんな攻撃は見たことがないぞ!!」

(フン、攻撃は手数が多いほど有利というものだからな。そういうお前はさっきから、炎と突撃くらいしかしていないが…まさか他の手段を知らないのか?)

「知らないも何も、俺達ドラゴンの攻撃の基本は炎!サンダードラゴンみたいな奴は別として、そもそも炎以外の手段など必要無いんだ!貴様のように、炎と風で攻撃するような奴など知らん!そう言う貴様は他にも攻撃手段を持つと言うのか!?」

(当たり前だ…とはいえ、火山で暮らしているせいか水や氷は相性が悪くてな。だが、雷は扱えるぞ!)

『ドバババババババババ!!!』

 

ランディアは全ての口と両目から雷撃を放った。

 

「ぐああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

(フフッ、金を普段からたっぷり食べているだけあって、雷がよく通るな!)

 

そう言ってランディアは上空から雷撃を浴びせ続ける。

とはいえ、ただ金を食べてるってだけだったらここまでのダメージにはならないと思う。

万が一雷が直撃した時、金属を身につけていればそっちに雷が引き寄せられて、体の中までは雷が通りにくくなるって聞いたことがあるし。

となれば黄金竜の場合、消化しきれてない金のせいで体の中に雷が通っちゃってるんだろう。

 

「ウオオオオオォォォォォォォ!!!」

 

突如、黄金竜が唸り声と共に空へ舞い上がり、それを見たランディアは雷撃を止めて迎え撃つ。

2頭のドラゴンは地上と空中で取っ組み合いを繰り返す。

といっても終始ランディアが優勢。

ランディアは腕こそ持ってないものの、頭が4つ。

実質的に腕が3本あるみたいな感じだしね。

黄金竜が掴みかかろうとすれば両サイドの頭が腕に噛みつき、一番前の頭が首に噛みつく。

引き剥がそうにも一番後ろの頭がそれを妨害。

黄金竜の傷はますます酷くなるばかりだ。

でもそんな中で、黄金竜が破れかぶれに放ったキックで互いの距離が開く結果に。

 

(…どうした。もう終わりか?)

「…………」

 

黄金竜にはもう、ランディアの挑発に言い返す気力すら残ってないらしい。

それを見たランディアは、突然ボクの方を向いた。

 

(カービィ、我に一撃入れてくれ)

「……え?どうしたのいきなり」

(いいからやってくれ!このどてっぱらに食らわせた光る斬撃をもう一度な!)

「あ、アレを!?」

(そうだ。注文を付けるならそう…この古傷と交差して十字になるようにしてくれ)

「…別にいいけど、何で十字?」

(その方がバランス良いだろう?)

「はあ…分かったよ『ウルトラソード』!」

 

アイリスが訳も分からずポカンとしてる中、ボクは電磁シールドを一旦消して力を溜めた。

 

「『エクステリオン』!!」

 

光輝く巨大な斬撃がランディアのどてっぱらに直撃。

ランディアは大きく後退し、お腹の傷は見事な十字に。

…これでいいのかな?

 

「な…何だ今の斬撃は!?あんなものを食らって貴様は…まだ立てるというのか!?」

(見れば分かるだろう……おや?…フッ、どうやらさっきの一撃のせいで古傷が開いたらしい)

 

見れば、ランディアのお腹の傷は真っ赤なバツ印と化し、一番前の頭からは口血が垂れてる。

その血をペッと吐き出すと、黄金竜に向き直る。

 

「ど、どういうことだ!?何故自分からそんな傷を負いに行ったんだ!?」

(今までの流れで気付かなかったのか?これは決闘だぞ)

 

キョトンとしてる黄金竜をよそに、ランディアは語り続ける。

 

(決闘は互いの命を懸けるものだ。両方生きている限り、何も終わらない)

 

ここまで聞いて話の意図を理解したのか、黄金竜の目つきが変わった。

再び闘志が燃え始めたのが、傍で見守るボク達にも感じ取れる。

ボクの口の中にいるこめっこも感じたのか、「お~…」と小声で呟いた。

何が何でも戦いたい…例え今くらい…命が危なくなるほどの大きなハンデを背負ってでも。

一度は決闘を受け入れた以上、ここまでされたらもう後には引けないよね。

黄金竜は大きく深呼吸すると、真っ直ぐランディアを睨み据える。

そして動き出した!

 

(さあ来い、お前の全力を見せてみろ!!)

 

黄金竜の突進を見るやランディアはニヤリと笑い、大きく翼を広げて迎え撃つ。

まるで「かかってこい!」と言わんばかりに。

そして突進は、ランディアのお腹の傷…それも交差した傷の中心に直撃。

ランディアは後退し、激痛で顔を歪ませながらも黄金竜を蹴り飛ばす。

 

(フフフ、いいぞいいぞ。それでいい!!)

 

今度はランディアが仕掛けた。

火炎弾と雷撃を乱れ撃ちしながら突っ込んでいく。

黄金竜は急上昇して躱したけど、ランディアはすれ違いざまに尻尾を黄金竜の足に絡め、そのまま地面に叩きつけた。

そのまま黄金竜を引きずり回すランディアだけど、黄金竜も黙っているはずはなく、この状況を利用して体を大きくエビ反りにしてランディアの背後を取る。

ランディアはそれに臆することなく錐揉み回転するけど、どんなに回転速度を上げようが岩に叩きつけようが、黄金竜は離れない。

 

(ほう、まだそんな力を残していたのか。見直したぞ)

「ほざけ!やっと掴んだ逆転のチャンスだぞ!逃してなるものか!!」

(ではこれならどうだ?)

「!!??」

 

突然ランディアが4体に分裂してそれぞれ別方向に飛び始めたんだから、流石の黄金竜も開いた口が塞がらない様子。

アイリスも思わず声をあげた。

 

「えええええ!?か、カービィさん!ランディアが、ランディアが!」

「そうだよ。ランディアは分身技も持ってるんだ」

「………流石はカービィさんのライバルですね!」

 

まぁ気持ちは分かるよ。

ボクからしたら当たり前のことだけど、この世界にいる人達からしたらランディアの能力はツッコミ所が多すぎる。

いちいち考えるのが面倒になるくらいには多いだろうね。

 

(『十字電撃』!)

 

な~んて考えてるうちに、分裂したランディアが黄金竜を上下左右から取り囲み、十字状に雷撃を放った。

何となくだけど、今のやり方の方が威力が高い気がするんだよね。

気のせいかもしれないけど、やっぱりランディアと言ったらコレ!だもん。

その後も黄金竜の周りを回転しながら雷撃を浴びせ続けるランディア。

頃合いを見計らって合体し、黄金竜を蹴り落とす。

再び地面に叩きつけられた黄金竜は、すぐさま立ち上がろうとしたけど手遅れだった。

ランディアが勢いよく黄金竜のお腹に着地し、同時に両腕と首を拘束。

残った後ろの頭は、口の中にエネルギーを溜め終わった様子。

 

「………くうっ…」

 

黄金竜は思わず目を背けた。

するとここで、ランディアが予想外のことを語り始める。

 

(…どうした?命が惜しいのか?)

「は?貴様こそどうした?『両方生きている限り、何も終わらない』とか言っておきながら、今更俺を殺すのに躊躇してるのか?」

(そんなことは聞いていない。お前は生きたいのか、生きたくないのか?)

「……何を今更、どうせ殺すことに変わりないだろう?」

(我のことなどどうでもいい。お前の本心はどっちなのだ?)

「………へ?」

(お前はどう思っているんだ、このまま生き続けるのを望むのか、はたまた死を望むのか)

「………………………………」

 

…何でランディアはこんなことを聞いてるんだろう。

一体何をする気なんだろう?

 

(さあ、お前はどっちなのだ?)

「………………………………………………………………たい」

(ん?よく聞こえんぞ)

「…………………………………………………生き……………たい…………………………………………………~~~~~~~生きたあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃ!!!!!」

 

その叫び声を聞いた瞬間、ランディアは微笑んだ。

ボクでさえ今まで見たことないほど、その笑顔は優しい…まるで見えない何かで包み込むような感じがする。

 

(…よかろう)

 

ランディアがそう言うと突然、後ろの頭が被ってる王冠から黄色い光線が放たれ、やがてそれは球状になって黄金竜を包み込む。

 

「な、何を……?」

(お前は、本当に心から守りたいと思うものを持っていない。だが、我にはそれがある。この冠には、『絶対の力』が宿っているのだ。我はそれを長年にわたって守ってきた。お前もどうせ生きるなら、我と同じように“守るべきもの”を持つべきだ)

「守るべき…もの?」

(左様。この金鉱山は人間共が先に見つけた場所。お前はそこを力で横取りした…それ故に、お前は半永久的に人間共の恨みを買い続けるだろう。今日限りで、そのようなことは止めろ。お前がここに住むことで、金鉱山は今まで以上に資源に恵まれた場所と化している。お前が人間達と共存する道を歩めば、今後お前にちょっかいを掛けようなどという人間はほぼいなくなるだろう)

「…ほう、今回のように眠りを邪魔されることは本当に無くなるのか?」

(すぐに、とはいかないだろうが…時がたてば周りの者達もいずれ理解するだろう。何事も、パッと変化するわけではないのだから。それにお前にその気があるか否かによっても大きく左右する)

「で、結局俺に何を守れと言う気だ?」

(勿論、お前の棲む鉱山と、それを利用する人間達を、だ)

「人間達を?」

(そうだ。彼等が劣勢に立たされれば、魔王やその配下達の手がお前の住処にも伸びて来よう。そうなれば間違いなく、今まで以上にのんびりできなくなる。そうなる前に人間達と和解し、彼らとそして、お前の住処を守るために魔王と戦うのだ)

「………なるほど、だがどうやって戦えばいい?俺は力任せに暴れることしか知らない」

(その通り、だからこそお前を管理できる存在が必要だ。そしてそいつは、今ここにいる)

 

そこまで聞いて、初めてボクはランディアが何を考えてたのか分かった!

そしてランディアとほぼ同時に、アイリスに視線を向ける。

 

「え……な、何ですか?」

「決まってるじゃん。キミが黄金竜の主人になるの!」

「………えええええ!?わ、私が!?」

(そうだ。魔王と最前線にて戦う国…その第1王女。これ以上ふさわしい存在はいないだろう)

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!仮にそうだとしても、そんなこと言われた私は一体どうすれば!?」

「そうだね~、まずはドラゴンスレイヤーの称号を手にするところからかな?」

(それが一番だな。ドラゴンを倒せる実力者の証拠であるからして、ドラゴンの管理者なら持っていて当然だろう)

「で、でも…そのためには手頃のドラゴンを」

(何を言っておるのだ?ここに1匹いるだろう?)

「……え…ま、まさか黄金竜を!?」

(ああ、契約を兼ねてな)

「おいちょっと待て貴様、話が全く見えないぞ!俺でドラゴンスレイヤーになることと契約と、どういう関係があるんだ!?」

(この娘がお前の管理者となるにあたっては、まず彼女の力を知らねばならない。その身をもってな…安心しろ、その為にこうして命を繋ぎ止めているのだ)

「命を……繋ぎ止める?」

(そうだ。この冠の力が及んでいる間、お前は討伐されようとも決して死ぬ事はない)

「へ~、その王冠ってそういう使い方ができるのか」

(その通り。さあアイリス王女よ、お前の力を見せてみろ)

「そ、そう言われても……」

「大丈夫だよアイリス、何も心配いらないから!」

 

ボクは電磁シールドを解除してアイリスの背中を思い切り押した。

つんのめりながらも前に出たアイリスは暫く迷ってたけど、遂に覚悟を決めたのか、目を閉じてゆっくりと剣を構える。

そして真っ直ぐ黄金竜を見た……まるで目に焼き付けるかのように。

 

「…すみません、一瞬で終わらせますから!」

 

アイリスは大きく一呼吸して剣を振りかぶり……

 

「『セイクリッド・エクスプロード』!!!」

 

黄金竜に斬りかかった。

エクスカリバーから放出されるエネルギー…アレは魔力なのかな?

兎に角そういう力により、切った直後に連鎖的な爆発が生じ、結果的に黄金竜の身体は真っ二つに裂けながら爆発した。

まるで高層ビルの爆破解体だよあれは。

でも、黄金竜は間違いなく生きてる。

自分で…自分の目で、今まさに真っ二つとなった自分の身体を凝視してる。

生きながら自分の身体が裂けるのを見るって、どんな感じだろう……想像したくないけど。

間もなくして、ランディアの(というより『マスタークラウン』の)力により黄金竜の身体が再生し始める。

まるで時間が巻き戻ってるみたいに、真っ二つになった身体がくっ付いていく。

そしてあっという間に元通り……いや、どういうわけか切った痕跡だけ残ってるけど、取り敢えず命を繋ぎ止める必要がなくなり、黄金竜を包んでいた光が消えた。

 

(…よし、これでいい)

「ちょっと待って!アイリス、念のために冒険者カードを!」

「あ、はい!」

 

恐る恐るカードを見ると、そこには黄金竜の名とドラゴンスレイヤーという文字が刻まれてる。

 

「やったねランディア!成功だよ!」

(そうか……)

「まさか、自分の身体が切られる様を自分で見る羽目になるとはな…」

(だがこれで、その娘の実力は分かったろう?)

「分かった!十分すぎるほどにな!!」

「…ん?あれ?」

 

ボクは傍に落ちてたものを拾い上げる。

…これって

 

「ねえ、これってキミの角じゃない?」

「何?……た、確かにこれは俺の……!」

(ふむ…どうやらさっきの斬撃で、角だけ我が力の外に放り出されたらしい。だが安心しろ、その角とやらは既に再生しているぞ)

「ほ、本当か!?」

「本当だよ!だってそうじゃなかったら、折れてるってすぐ分かるもん!」

「あ…そうか……」

「そ、それじゃあ……」

 

ボク達がやる取りする中で、突然意を決したように、アイリスは黄金竜へ歩み寄る。

 

「…刃をたてた後に言うことではないかもしれませんがその…私の…友達になって頂けますか?」

 

その瞬間、アイリス以外の全員が噴き出した。

だってそうだよ。

そこは普通に「仲間になってください」とかでいいじゃん。

それを友達って……。

アイリスも場違いな言い間違いしたことに気付いて顔が真っ赤になってる。

暫く笑いをこらえてたけど、黄金竜は呼吸を整えて一言。

 

「……もうどうにでもなれ」

 

今のは同意…ってことでいいのかな?

その時ボクはハッとなる。

 

「そうだ!一緒になるなら、黄金竜の新居を探さないと!」

 

この一言で全員ハッとなった。

ランディアもそこまで考えてなかったらしい。

ボクは直ぐに「フォーメーション・バニル」で王都周辺を探ってみる。

すると運よく、王都から北西の辺りに古い鉱山跡があり、そこに金鉱脈が残ってるということが分かった。

現時点では今の場所ほど住み心地は良くないみたいだけど、黄金竜は渋々ながら了承してくれたので一安心。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後はゆんゆん達を拾って、途中エルロード国の冒険者ギルドに討伐報告を済ませた。

今まで誰も討伐できなかったモンスターが討伐されたってことでギルド中が歓喜で溢れる結果に。

でも幸いなことに、あまりの喜びで皆周りが見えてなかったみたいなので、その隙にコッソリ抜け出して、無事にお城まで戻ってこれたわけ。

勿論これもバニルの力があったから出来たことだよ。

 

「それではレヴィ王子、これで資金援助を続けて頂けますね?」

「勿論だとも!もう何も文句は言うまい!!」

 

そんな中、やや気乗りしてない様子のラグクラフト宰相にボクは声をかける。

 

「ねえラグクラフトさん、このことを報告しに行かなくていいの?」

「報告ですと?王子は今まさにそこにいらっしゃるじゃありませんか」

「いや違うよ。王子じゃなくて、魔王にだよ」

「ま…!?」

 

魔王というワードが出た途端、皆の注目がこっちに移る。

 

「な、何を仰いますか!?確かに私は魔王側との同盟を結ぶのに尽力した身であって、そこまでのことをする必要など」

「誤魔化しても無駄だよ。この仮面に見覚えない?」

「…………………………っ!」

「気付いたみたいだね。そう、これは魔王軍幹部バニルのもの。だから今のボクには全部分かってるよ。ラグクラフト宰相…いや、魔王軍諜報部隊長ドッペルゲンガー!!」

「「「「「ドッペルゲンガー!!??」」」」」

「そう、彼は魔王軍のスパイなのさ!」

 

弁明しようとしたのか、それとも怒りに駆られてるだけなのかは知らないけど、ラグクラフトはボクの方へ向かって歩き出す。

その時だった!

 

『バリッ』『ズドン!!』

「ごほぁっ!?」

「お~っと、無駄な足掻きはよしたまえよラグクラフト君!」

 

レヴィ王子の背中から翼が出現し、それがラグクラフトの股間に直撃。

悶絶するラグクラフトとどや顔のレヴィ王子(?)

 

「れ、レヴィ王子から翼が!?」

「そんなバカな、レヴィ王子は人間のはずだぞ!?」

「というかあの翼は何ですか!?あんな翼は見たことがありません!!」

「要するに、今まで応対してたレヴィ王子は本人じゃないってことだよ!」

「ふふっそう言うことさカービィ!」

「うぐっ…!」

『ガシッ!』

「おいおい、逃げるなんてそりゃないぜ。これからが面白いのにさ!」

「ねぇ、そろそろ正体明かしたら?」

 

ボクは正体知ってるから尚更やる気失せそうになっちゃうし…。

 

「そうです!貴方は一体何者なんですか!?」

「ケケケケッ、知りたきゃ教えてやるよ!」

 

バリバリと皮が破れ落ち、その中から現れたのは………

 

「悪戯の王者となるべく、旅から旅へと日夜修行に励む極悪道化師、人呼んで『悪辣のマルク』とは俺様のことだ!!!」

「悪辣の…」

「マルク!?」

「やっぱりキミだったのか。ていうか『俺様』なんて似合わないよ」

「ケケケケッ、何事も形からって言うじゃないのサ!」

「そりゃそうかもしれないけど…ハァ」

「か、カービィさん。か、彼を知ってるんですか?」

「…ゆんゆん、マクスウェル討伐の時にボクが言ったこと覚えてる?『ボクが今まで戦ってきた奴らは、世界規模でとんでもない事をしでかした』って」

「……そう言えば、そんなことも言ってたような」

「マルクはそんな敵の1人だよ。ボクの故郷を自分のものにしようとしたんだ」

『ええええええええええ!!??』

「まさにその通りサ!まぁ結局のところ、カービィに阻止されちゃったけどサ!」

「それで、今度はこの国を自分のものにしようとしたわけ?」

「最初はそのつもりだったのサ」

「最初は?ってことは今は違うの?」

「勿論、だってこの国…いや、この世界は自分のものにしたところで全然面白くないと分かっちゃったからサ!でもそんな時、1つの答えが出たのサ。そう、魔王の方が悪戯し甲斐があるってことにサ!!だからレヴィ王子に成りすまして、魔王軍スパイを困らせまくってたってわけサ!」

「なるほどね~」

「お、おいカービィ!仮にもそいつはお前の故郷を危機に陥れた相手なんだろう?そんな簡単に信じていいのか?」

「大丈夫だよダクネス、全部真実だから!そうだよね?」

 

ボクが扉に向かって大声でそう言うと、その扉からレヴィ王子が出てくる。

 

「れ、レヴィ王子…!」

「そう、あっちが本物だよ。マルクはあくまで成り代わってたんじゃなくて影武者だったわけ」

「ああ、そいつが突然現れた時は正直ビックリしたよ。勿論、ラグクラフトが魔王軍スパイだと聞かされた時はもっとビックリしたけど…」

「ケケケケッ、まぁそういうことで、そろそろラグクラフトには消えてもらおうと思うのサ!」

「なっ……!」

「『カースド・ダークネス』!」

「どわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「おおう!?カービィ、一体何をしたのサ!?」

「別に大したことじゃないよ。ちょっと『逃げられない呪い』をかけただけ。だってキミ、意地でもこの場で倒すつもりなんでしょ?」

「そうサ!今度はこのラグクラフトに成りすまして、魔王に直接悪戯しに行くつもりなんだからサ!」

 

言った途端、凶器に満ちた表情になったマルク。

 

「な、何て顔をしてるんだ……!」

「この顔絶対危ない奴ですよね?間違いありませんよね!?」

「さーて、そろそろ始めるのサ!『アローアロー』!!」

「ギャアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!」

 

マルクはラグクラフトの真上に移動し、雷属性の矢を雨のように降らす。

ラグクラフトはスパイということもあってか、実質的な戦闘はそれほど得意じゃない。

そのせいで既に相当な重傷を負っちゃってる。

 

「ケケケケッ、思ったよりあっさり片付きそうなのサ!それじゃあ仕上げの『ブラックホール』!!」

 

マルクの身体が左右に分かれ、真ん中にブラックホールを発生!

マルクだけでも大丈夫だとは思うけど、念のためにっと。

 

「『ビッグバンカービィ』!」

 

ボクもマルクの逆側から全力の吸い込み!

ゆんゆん達が素早く対処してくれたおかげで、関係ないものを吸い込まずに済みそうだし、下弦の必要は無いね。

 

「ちょっとカービィ、どういうつもりなのサ!?」

「念には念を入れてるだけだよ!これなら絶対避けられない!!」

「うぐぁああああああああああ!!!!」

 

ラグクラフトは双方から吸われて今にもマルクみたいに真っ二つになりそう。

と思っていたら

 

「アアアアアアアアァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁ………………………………!!!!」

 

ボクの中に吸い込まれた。

…何か、ボクが“美味しいところだけ持って行った”みたいな感じになっちゃったな。

あ、レベルが丁度20になってる。

 

「ぐやじ~!またカービィに負けちゃったのサ!!」

「まぁいいじゃない。これから魔王に悪戯できるんだから」

「フンッ」

「ところでレヴィ王子、確認なんだけど資金援助の件は…」

「勿論続行だ。結果的にお前達をずっと騙していたわけだからな…その詫びも兼ねている。本当に済まなかった!」

「いえいえそんな…王子は正しいことをしただけですよ!謝る必要なんてありません。そうですね、折角ですから資金援助意外に1つ、個人的なお願いがあります。聞いて頂けますか?」

「ああ、いいぞ。俺にできる範囲のことなら何でもな!」

「では……」

 

アイリスは静かに右手を出す。

 

「…私とは許婚同士ではなく、友達として付き合わせてください!」

「!?そ、それだけでいいのか?」

「ええ、私はこれ以上のことを望みませんので」

「……言われずともそのつもりだ。何しろこの結婚話自体、親が勝手に決めたことだしな!」

 

こうしてアイリス王女とレヴィ王子はお互いに固く握手を交わし、これで正式にエルロード国との外交は終了。

その後は何事もなくベルゼルグ王国に帰ってこれた。

皆それぞれエルロード国の土産を買ったし、黄金竜は取り敢えず新居問題が解決して一安心。

ランディアはプププランドへと帰還。

そしてアイリスは……王都の冒険者ギルドにて正式に「ドラゴンナイト」の職についた。

“第1王女”改め“竜騎士”アイリスの誕生だ!




次回予告
大仕事が終わり、暇を持て余していたカービィのもとに現れた女盗賊。
神器回収の協力を交わした矢先、カービィに異変が!?
その異変は「ある神器」と関わりが。
更に王都にはアノ王様がやって来る。
果たしてパーティメンバーの運命や如何に!?
次回「女神と王の意地?」
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