【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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正月休みを使って何とか完成!
この先はどうなることやら……(・_・;)
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第13話 女神と王の意地?

エルロード国での外交が終わって暫く経ったある日、ボクはアクセルの冒険者ギルドでグリフォン討伐のクエストを請けて、住処である岩山を登ってる。

グリフォン討伐はマンティコア討伐と同じ「塩漬けクエスト」の1つ。

マンティコア同様に、強すぎるせいで誰も請けたがらないクエストだからね。

とはいえ、ボクとしてはマンティコアよりやりやすいかもと思ってる。

ボクの記憶が正しければ、グリフォンはライオンより4~8倍も大きくて大の馬嫌い。

だけど動きが鈍くて、獲物を逃がしちゃうことも多いらしい。

ついでに言うと、グリフォンの中には人の手で飼いならされたものがいて、財宝なんかを守ってることもある。

ボクが以前見た「空想動物図鑑」にはこう書いてあったけど、この世界のグリフォンはどうかな?

というわけで、グリフォンが棲んでるらしい大穴に到着。

 

『グァルルルルルルルルアッ!!』

 

どことなく鳥っぽく聞こえなくもない声の主は、勿論グリフォン。

大穴から上半身だけ乗り出してる。

 

『ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!ガッ!』

 

さっきとは違う鳴き声だ。

あれって威嚇…なのかな?

でも討伐依頼が出てる以上、倒すよりほかない。

さてと、まずはどうしようかな……?

 

「『レーザーカービィ』!」

 

そう言えば、このコピー能力使うのも久しぶりだな。

作戦も決まったし、早速始めよう。

 

「発射!」

 

ボクは単発レーザーを、飛び掛かってきたグリフォンの左翼に撃ち込んだ。

本来はこれで飛べなくするのが目的だったんだけど……レーザーの熱量が思ったより多かったらしくて、そのまま翼から火の手が!

グリフォンはあっという間に火だるまになっちゃって、崖から転げ落ちて見えなくなった。

……久しぶりだってことで、少し張り切りすぎたかな?

取り敢えず大穴の奥を探索してみることに。

穴の中はこれぞ迷路!って感じで上下左右に入り組んでる。

入り口に割と近い部屋にはグリフォンが暮らしてた痕跡があるんだけど、奥の方はまるで手付かず。

もしかしたら…とかいう淡い期待を寄せながら

 

「『ライトカービィ』!」

 

コピー能力を発動して探索を続ける。

この能力が無いと真っ暗で何も見えないし…。

とここで、ボクはふと思い出す。

盗賊スキルの「宝感知」!

そうだよ、これさえあれば宝物があるかどうか分かるじゃん!

早速使ってみると…見つけた。

入り組んだ洞窟の一番奥に反応がある。

ここから遠いせいなのか、反応が凄く小さいぞ。

まいっか、それにしてもコピー能力を使いつつ魔法やスキルが使えるのは便利だね。

ボクは反応を頼りに洞窟を進む。

それにつれて「宝感知」の反応はどんどん大きくなり、やがてコピー能力のとは別の光が見えてきた。

そんな光輝く部屋の中は…………これでもかというほどの宝物が詰め込まれてる!

 

「……流石にここまでいっぱいあるとは思わなかった。まぁ取り敢えず運び出そう」

 

ということで一旦お腹の中に収めようと思ったんだけど…その瞬間、背後に何か違和感を感じ取った。

何だろうと思って振り返ったら、ボクの剣からまたしても青い光が漏れ出してる。

引き抜いて適当にかざしてみると……宝の山の中でも一番大きな山の方へ向けた時に強く光ることが分かった。

すると突然、その山がブルブルと震え出し、金貨が十数枚くらい崩れ落ちる。

何が起きてるのかも分からずに見つめていると、その宝の山を押しのけて何かが飛び出してきた。

見ればそれは……盾だ。

真ん丸な盾が宙に浮いてる。

 

「あれって…神器なのかな?」

 

もしそうなら回収する必要が出てくるけど…。

と思ったら、急に盾がボク目掛けて飛んできた!

 

「んぐっ!?」

 

しかもこの盾、ボクの口に入ろうとしてる!?

もしかして、コピーしろってこと?

だけどそんなことして、クリス(エリス様)がどう思うか……

なんて考えてる間に盾はボクのお腹に収まっちゃった。

…もうこうなったら仕方ない、クリス(エリス様)にはありのままを伝えよう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

取り敢えず残った宝物をお腹に収めてギルドに戻ってくると、運が良いのか悪いのか、クリス(エリス様)が他の冒険者と酒を酌み交わしてる。

まだ昼前なのにお酒って……まぁこの際どうでもいいか。

クリス(エリス様)が1人になるのを待ってから声をかけた。

 

「クリス、ちょっと来てくれないかな?」

「あ、カービィじゃん!どうしたのさ急に」

「いいから早く!時間は掛けないから!」

 

ボクはクリス(エリス様)の手を引いて人気の無い裏路地へ。

 

「それで、ここで一体何する気なわけ?」

「まずはこれを見て欲しいんだ『ガーディアンカービィ』!」

「うおっ何!?新しいコピー能力?」

「そうだけどさクリス、この盾に見覚えはない?」

「へ?」

 

ボクに言われて、クリス(エリス様)はボクの盾を凝視。

するとあっという間に目を見開き、額から冷や汗が染み出す。

 

「こ…これはまさか…!」

「そうだよ、何時だったかガンバさんの武器屋でキミが教えてくれた『聖盾イージス』。もっとも今は、ボクの一部なわけだけど…あぁ、勘違いしないでね。この能力はボクの意思で手に入れたわけじゃないから」

「いやいやちょっと待ってください!一気に色々言われ過ぎて、話が全く見えないんですけど!?」

「…分かったよ、順を追って全部説明するから!」

 

ボクはクリス(エリス様)に、グリフォン討伐から新能力を得るまでの道筋を全て説明した。

 

「…つまりイージスは、自分からカービィさんの口の中に飛び込んできたと?」

「だからそう言ったじゃん!」

「………仕方ありません。コピー能力と化した以上回収は不可能ですから、この件に関しては諦めます。但し」

「但し?」

「これから貴方には、私の神器回収を手伝ってもらいます!」

「は?何で?」

「天界のルールによれば『神器の所持は1人1つまで』と決められています。事情はどうあれ、今の貴方はそのルールに違反しているのです!とはいえコピー能力と化したものは回収できないので、ボランティアとしての神器回収と引き換えに、今回の件はこれ以上追求しないものとします!」

「何それ?じゃあもし他の神器が、イージスと同じようにボクにコピーされることを望んだりしたらどうする気なの?」

「そうなる前に全部回収してみせます!!」

「………………………………」

 

何かもう面倒くさくなったので、ボクは考えるのを止めた。

まぁ回収自体はそんなに難しくもないだろうからね。

クリス(エリス様)の話じゃ、神器を不正所持してるのは基本的に貴族階級の人達らしいけど。

神器回収が楽になると思って嬉しかったのか、ボクが「エンジェル」を発動したことに気付かないクリス(エリス様)。

 

「よ~し、それじゃあこれからは堂々と盗賊団を名乗れるね!」

「何を勘違いしておられるのです?」

「……え?」

「ボクは盗賊まがいの行為などおこなうつもりは毛頭ございません。あしからず」

「ちょっと!?それじゃどうやって…」

「決まっているじゃありませんか。エリス様の命令のもとに、回収活動を行います。それに際してエリス様には、ボクが正式に回収活動していることを証明する証書か何かを用意して頂きたい」

「しょ、証明!?」

「それとエリス様には、アクセルのエリス教会で神父を務める方に、ボクが回収した神器を持ってくる旨を伝えておいてください」

「あ、あの、いきなりそんな」

「お言葉ですが、ボクの方もアナタの盗賊行為に目を瞑っている身なんですよ。やってくれますね……?」

「わ、分かりましたよ!何とかしてみます!その代わり、ちゃんと神器回収してくださいね!」

「ボクを『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』の親玉と一緒にしないで頂きたい。アナタからの正式な『ご命令』とあれば、断ったりは致しませんとも…」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そんな訳で、ボクはエリス様から「神器不正所持・不正使用取締役」という身分の証書を貰って早速活動することに。

その前にギルドに討伐完了の報告と報酬の50万エリスを受け取り昼食をとった。

宝物の換金は後回しっと。

辿り着いたのは、何処とも分からない街の貴族の屋敷の前。

証書と一緒に特別特典として貰った「『エスパー』を発動しなくても同様のテレポートが使える力」と「『神器感知』スキル」のおかげだ。

神器そのものは「宝感知」スキルに反応するけど、「神器感知」スキルは神器のみを探知できる優れもの。

ついでに回収予定の神器のリストも貰ったから、間違えることは無いだろう。

ボクは早速、屋敷の主の部屋へテレポート。

主である貴族は数人の兵士に囲まれていた。

 

「な、何だ貴様は!?何処から入ってきた!?」

 

突然のことで混乱する貴族に対し、ボクは証書を見せる。

 

「『神器不正所持・不正使用取締役』カービィです。女神エリス様の命令により、不正に所持又は使用されている神器の回収を行っております!」

「と、取締役だと!?」

「この屋敷には、不正所持されている神器が御座いますので、宝物庫を拝見させて頂きます!」

「ふ、ふざけるな!おいお前達、この無法者を捕らえろ!!」

 

ボクを捕まえようと向かってくる兵士達。

それをボクは、「セイクリッド・ライトニングブレア」で沈黙させる。

勿論威力は絞ってあるから命に別状はないよ。

 

「貴様…自分が何をしたか分かっているのか!?」

「それはこちらのセリフです。先ほども申し上げた通り、これは女神エリス様の命令です。それを妨害したということはすなわち、アナタはエリス様に歯向かったということ!この件はキッチリと、エリス様に報告させて頂きます!」

 

その後もボクは、向かってくる兵士達を蹴散らしながら宝物庫に辿り着き、扉を開ける。

エリス様から貰ったスキルを駆使して宝の山を掻き分けると、光沢のある茶色い杖を見つけた。

リストに目を通すと…うん、回収対象の神器で間違いない。

他に神器が無いことを確認すると、ボクはペンでリストにチェックを入れる。

そして開けっ放しの扉の先に誰もいないことを確かめて、ボクはバニルの力を使い、神器を通じて持ち主である貴族のことを探った。

……怪しげな繋がりは特に無いし、神器も他には持ってないらしい。

能力を「エンジェル」に変更し終えた時、先ほどの貴族が兵士をかき集めて宝物庫に入って来る。

 

「ああっ!そ、それは…」

「不正所持の神器、確かに回収させて頂きました。では失礼致します」

 

そう言ってボクはアクセルまで一気にテレポート。

一旦神器を口の中に収めると、今度は王都へ。

応接間の扉を開けると、そこでは何時かみたくアイリスとセナが何か話し合っていた。

 

「あ、カービィさん!どうしたんですかその姿は?それに、今回は何の連絡も受けておりませんけど…」

「ええ、これまでとは別の用事が御座いまして」

「別の用事?」

「そうです!女神エリス様の命令により『神器不正所持・不正使用取締役』として、この城で不正に所持されている神器を回収するために参りました!」

 

証書を見せながらそう言うと、2人はキョトンとした顔でこっちを見続ける。

まぁ分かってたことだけど、いきなりこんなことを言われても困るよねそりゃ。

そのうちアイリスが我に返って口を開く。

 

「か、カービィさん…取り敢えず話は分かりました。しかし、神器が不正に所持されているというのは、少なくとも私としては全く身に覚えが…」

「今もアナタが首から下げているじゃありませんか!」

「首から……っというとまさか、このネックレスですか!?」

「はい。アイリス王女、そのネックレスは誰から頂いたものですか?」

「え?…あ、お、お兄様が私に…」

「やはりそうですか。そのネックレスは、アルダープがアナタの兄ジャティス王子に贈った『身に付けた者の心と体を入れ替える神器』です!」

「心と…体を…」

「入れ替える!?」

「大方、アルダープはその神器でジャティス王子と入れ替わり、この国を自分のものにしようとしたのでしょう…ボクがあの時、マクスウェルの件を解決していなかったら一体どうなっていたことか」

「な、何てこと…………」

 

アイリスは絶句した。

何しろ、自分の身にこんな災いが降りかかろうとしていたなんて全く知らなかったんだから。

ボクだって、このことを知ったのはエルロード国へ外交に行った時だもん。

最初にアイリスのことを探った時より少し深い所まで探ろうと力を込めたせいで、偶然にもすぐ近くにいたアイリスのより深い所まで把握する結果となったわけ。

いわゆる「怪我の功名」ってやつだね。

ボクはアイリスに向かって右手を差し出す。

 

「お分かりいただけましたか?神器というものは使い方を間違えれば、取り返しのつかない大惨事を招くこともあるのです!ですから一刻も早く、その神器をこちらに引き渡して頂きたい!」

「は、はい……!」

「ちょっとお待ちください!!」

 

アイリスがネックレスを渡そうとしたその時、セナが大声で待ったをかけ、眼鏡を直して一呼吸置いてから再び喋り出した。

 

「…事情は把握いたしました。ですがカービィさん…貴方の仰ることに関しては、正当性を証明するものが何一つありません故、検察官として…いや、法を司る身としてはその辺のこと」

「セナさん!!先ほども申し上げたはずですよ、これはエリス様の命令であると!!それとも何ですか!?この場にエリス様を呼び出して直に証言させろとでも言うつもりですか!?」

「っ………そうではありません。私が言いたいのは、多少でも何かしら正当性を示す根拠がなければ、貴方自身の今後の活動に支障が出るということです。ですから、せめてあなたの言動に嘘偽りが無いことだけでも証明した方が良いですよ!」

「それで、一体どうなさるつもりなんですかねぇ?」

「この世には『嘘を見抜く魔道具』というものがありまして、それを使えばあなたに嘘が無いかどうか、直ぐにでも判明します」

「ほほう、それは面白い。では……おぉ、時計がありましたな。それではあの時計の長い針が一番上に来るまでに、その魔道具とやらを用意して頂こう」

「えええええ!?あ、あと5分も無いじゃないですか!そんな無茶な」

「こちらも時間が無いんですよ!!夕刻までにあと1つ、回収せねばならない神器があるのです!!もし出来なければ命令違反になりますから、もし用意できないならその神器だけ回収後、証明とやらはアクセルのエリス教会までお預けということで!!」

 

そこまで言うと、ボクはネックレスを取って再度アクセルへ。

もう1つの神器も何とか回収し終え、ボクは真っ直ぐエリス教会へ向かう。

教会の前では神父役のプリーストに加えてアイリスとセナ、そしてアイリスの護衛と思われる兵士達が立っていた。

第一声は神父さん。

 

「……どうやら、務めを果たせたようですね」

「ええ、勿論です」

 

他の皆が静観する中、ボクは教会に入っていく。

実を言うとボク自身、教会の中って初めて見るんだけど…何となくどうすればいいのか分かるんだよね。

これもエリス様が影でアシストしてるのかな?

それはともかく、一旦収めた神器を出しつつ廊下を進んで行き、礼拝堂に入る。

この辺まで来ると、後はアシスト抜きでも何となく分かる。

目の前には祭壇と思しきものが見える…あそこに運べばいいんだよね?

静まり返った礼拝堂を音もなく歩き、祭壇の前まで来た時ボクは頭を下げて静かに言った。

 

「エリス様…神の使いの名のもとに、偽りの者達より預かりし神器を、御身に捧げんことを…ここに誓います」

 

…まぁこれ、言ったというより「勝手に口から出た」といった方が正しいのかな?

別にこんなやり取りすることはエリス様から言われてないわけだし。

間もなくして、エリス様が降臨したことを肌で感じ取る。

 

(…顔を見せてください)

 

ボクは静かに顔を上げ、そして神器を差し出す。

 

(おや、1つ多いようですね)

「ええ、ボクの後ろに居られるアイリス王女が身に付けていた品です。リストに記載されているものと一致しましたので」

 

ボクが手渡したリストに、エリス様は注意深く目を通す。

 

(…なるほど、『身に付けた者の心と体を入れ替える神器』ですか)

「はい。この街の元領主アルダープが、彼女の兄であるジャティス王子に贈ったもののようです」

(できれば、見間違いであってほしかったです。この神器だけは……)

 

エリス様は悔しさをにじませながら項垂れていたけど、すぐに顔を起こしてアイリス王女に視線を送る。

一瞬戸惑ったアイリスだけど、すぐに姿勢を正してエリス様と向き合う。

その姿はまるで、歴戦を生き抜いた兵士みたいだった。

 

(…ベルゼルグ王国第1王女にしてドラゴンナイト、アイリス)

「は、はい!」

(今日、貴方が体験したことを、大衆にありのまま伝えてください。同時に、冒険者以外の者が神器を所持することは不当であり、そのようなものは速やかに返還することを呼びかけて頂きたい)

「分かりました!」

 

何の迷いもない即答……もしかして、最初からこうなることを予想してたのかな?

次にエリス様はセナの方を向く。

 

(さて……セナ検察官、何か質問はありますか?)

「………………………………いいえ」

 

セナの答えを聞いたエリス様は、神器を手に取るとボクにリストを返した。

 

(そちらで管理してくださいな。これからも、頼みましたよ)

「仰せのままに……あぁ、それとアイリス王女」

「な、何でしょうか?」

「黄金竜の世話、ちゃんとやっていますか?」

「勿論してますよ、ご飯だって私が直々に運んでますから!」

 

そしてエリス様は、神器と共に天界へと帰還。

同時にボクは元の姿に戻って一息つく。

 

「あ~終わった終わった!慣れないことはするもんじゃないね…」

「あれ?カービィさんが急にいつもの感じに……!?」

「左様です王女様。先ほどまでの彼は言わば、エリス様の使いの者として務めを果たす為の仮の姿にすぎません。これが自然なのですよ」

「そうだよアイリス。最初に会った時にも言ったじゃないか、堅苦しいのは性に合わないって」

 

ボクと神父さんの言葉を聞いて納得したのか、アイリスはそれ以上何も言わなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日になると早速アイリスはエリス様の言葉通り、皆に向けて自分の身に起ころうとしていた災難について語り、冒険者以外の者が所持する神器をエリス教会へ引き渡すことを訴えた。

このことは冒険者新聞も大々的に報道。

当然だけどボクの活動について、ゆんゆん達が知るところとなったわけ。

 

「カービィさん!こ、これ…本当なんですか?」

「ん?……ああ、これね。つい昨日やったところ」

「こ、こいつぅ!何故言ってくれなかったんだ!!私だってエリス教徒なんだぞ!!」

「ダクネスは単に会いたいってだけじゃないか!こっちは仕事でやってるんだよ!」

「ぐうぅぅぅぅぅぅ………!」

 

ダクネスはその後も執拗に詰め寄って来たけど、結局はどれも自分も会いたいって願望を叶えたいだけなんだよね。

全く……エリス様が願いの叶え方を全力で間違えた……そのしわ寄せが本格的にこっちへ流れて来てるよ。

取り敢えずこの手のアプローチを受け流しつつ、ボクは暫くの間自堕落に過ごすことを決めた。

まぁこめっこの魔法修行のためにスキルポーションを調達したり、実戦経験を積ませたりといったことは普通にしてるけど。

そして今までずっと館で雑用に精を出してきたベルとミル、そしてミュイを労うために、コックカワサキが勤める王都のレストランで食事したりとか。

王都でもウッドエルフは珍しい存在なことに変わりないらしく、双子のベルとミルを一目見ようと人だかりができたりしたわけ。

ついでにミュイの里帰りも兼ねて、数日ほど港町ドックに滞在したりもしたな。

そんな生活を続けてたある日のこと、王都の兵士がボクを呼びにやってきた。

 

「今朝方、“プププランドの王”を名乗る者が王城にやってきまして、アイリス王女があなたの助言を得たいと…」

「そう……遂にこの時が来たんだね」

「そう言えばカービィさん、プププランドにも王様がいるんでしたよね」

「うん。まぁ兎に角、皆で行こう!」

 

というわけで、お城の前まで一気にテレポート!

するとそこには、ゆんゆん達でも一発で分かる異常事態が…。

お城へ続く1本道の両サイドを挟むように、ボクと同じような背格好の「ワドルディ」達が並んでたんだから、そりゃそうだよね。

 

「か、カービィさん……ここに沢山並んでいるのは一体!?」

「『ワドルディ』だよ。お城を守る兵士兼雑用係って感じなんだ」

「そ、そうですか…」

「まぁ色々言いたいことはあるんだろうけどさ、取り敢えずボク達も早く行こう!」

 

パーティメンバーを急かしつつ応接間に入ると、そこにいたのは…………その場に力なくうずくまる「バンダナワドルディ」と「ケケ」、頭を抱えてる「ポピー」、そして………メモ帳と鉛筆を持ったまま、全身真っ白で固まってる「デデデ大王」。

 

「………うわぁ…」

 

ボクの口からはこれ以上、何も出てこなかった……。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「いや~とにもかくにも久しぶりだな、カービィ!」

「そうだね~何だかんだで、大王の顔見てなかったな…あそう言えば、コックカワサキに会わなくていいの?ずっと留守にしてたはずだけど」

「それは問題ない。料理できる奴なら他にもいるし、お前は気付いてなかったんだろうが、時々部下を派遣して作らせたりもしていたぞ」

「そうなんだ…」

「カービィさん、この人がプププランドの王様ですか?」

「そう、『デデデ大王』って言うんだ」

 

ボクがゆんゆん達に小声で解説していると、我に返ったポピーが自己紹介する。

他2名はまだ立ち直れてない様子。

 

「皆さん初めまして。私はポピーブロスSr、大王さまの側近です。えーと……そこにいる彼は、衛兵隊長の『バンダナワドルディ』、そして箒を持った猫耳の彼女は掃除婦兼伝令担当の『ケケ』です」

「うむ…わざわざ済まない」

「いえいえ、こちらとしてもまさかここまで違うとは思わなかったもので…」

「『ここまで違う』?」

「はい、この国は本当に風変りです。特に自由の制限が酷過ぎますね」

「こちらからすれば、少々自由過ぎる気がしてなりませんが……それに、彼も王様としてプププランドに君臨しているという割には少々気まま過ぎるような……」

 

アイリスが投げかける疑問に、デデデ大王は胸を張って答える。

 

「フン!プププランドは、ホーリツなどという制限が無くとも平和な国!だから王様も自由奔放で丁度いいんじゃい!」

「そうですね大王さま。やっぱり平和が一番です」

 

ポピーが合の手を入れ、いつの間にか立ち直ってたバンダナワドルディとケケは大きく頷く。

でも他の皆はまだ信じられないらしい。

そんな様子を気にも留めず、デデデ大王が再び口を開いた。

 

「そうだカービィ、どうせだからここらで一戦やらせてくれよ」

「えぇ~…またやる気なの?」

「おっと、勘違いするな!お前の力はもう嫌というほど分かってるからな。お前とじゃなく、お前とつるんでいるそいつ等とだ!」

「「「「!!??」」」」

「…ゆんゆん達と!?」

「そうだとも!こっちには今、俺様を含めて4人、お前の仲間も4人だからな。丁度いいだろう」

「…まぁ、別にいいけど」

 

というわけで、皆揃って平原まで移動。

魔王軍との激戦が繰り広げられる例の平原ね。

でもって組み合わせだけど………

デデデ大王VSダクネス

ポピーブロスSrVSめぐみん

バンダナワドルディVSゆんゆん

ケケVSアクア

という感じ。

どうやらデデデ大王は、ボクが思った以上にパーティメンバーのことを調べ回ってたらしい。

特にダクネスと戦うことを選択してるあたり、自分と同じパワーファイターだってことは少なくとも把握してるはず。

な~んて考えてる間に全員配置についたみたい。

 

「よし、それじゃ開始の合図はカービィに頼もうか」

「へ?ボクに?」

「ああそうだ。何かしら音を出せればいいぞ」

「う~んそうだな。それじゃ………これにしよう『ベルカービィ』!」

「な、何ですかそれは!?大きな…鈴?」

「そうだよ。この音で始めるからね!」

 

それを聞いて、大王側もゆんゆん達も互いに睨み合う。

ボクは高くジャンプして………

 

「そ~れ!」

『ジャァリイイイィィィィィンン……!!』

 

大きな鈴の音と共に、戦いは始まった。

最初に耳に届いたのは爆発音。

見れば、ポピーがめぐみん目掛けて爆弾を投げつけ、めぐみんの周りでは引っ切り無しに爆発が起きる。

 

「ほらほら、何時まで逃げるつもりだい?自称『最強の魔法使い』の名が泣くよ!?」

「自称は余計です!!ていうかこんな大量の爆弾を何処に隠し持っていたんですか!?」

「持ってるんじゃなくて、能力で爆弾を作り出してるだけだよ!よし、この際だから2個同時に!!」

「更に増やしますかこのタイミングで!?うわああああああ…………!!」

 

呪文の詠唱どころじゃないねこれは……まぁそれがポピー側の作戦なんだろうけど。

魔法は呪文の詠唱をすることで威力を高めるものだから、引っ切り無しに攻撃されたら勿論そんなこと出来やしない。

しかもポピーはめぐみんとの距離を……大体5~10mくらいに維持してるように見える。

あと気になるのは、時々大きく前にジャンプしてることだ。

爆裂魔法の威力は半径10m前後だから、この状況でポピー目掛けて爆裂魔法を放つと、間違いなくめぐみんも巻き込まれる。

仮に中心をポピーからズラして撃ったとしても、ほぼ間違いなく爆風を食らうことになるだろうし、加えて問題になるのはポピーのジャンプ力。

助走を付けてるとはいえ、5mくらい跳んでるように見える。

これに自分の爆弾の爆風をうまく利用すれば、もう少し距離を稼げるかもしれない。

そうなると、めぐみんが確実にポピーを爆発に巻き込むためには、めぐみん自身に爆発のダメージが及ぶか及ばないかのギリギリの地点に魔法を撃ち込む必要が出て来る。

でもこれは危険すぎる賭けだよどう考えても。

どっちにしたって爆裂魔法を使っちゃったら、めぐみんはその時点で戦闘不能。

もしポピーが爆発に巻き込まれなかったら……もうポピーの負けようが無い!

というかそもそも、そんなに正確な場所目掛けて爆裂魔法を撃ち込む技術が、めぐみんにあるのかどうかすら怪しい。

となると…………もう後は運任せだね。

一方ゆんゆんはというと

 

『ビシュッビシュッビシュッビシュシュッ!』

「ちょっまっあぶなっ!さっきからどんだけ槍を投げてるんですか!?『インフェルノ』!!」

『ブルル~~~ン!』

「だからズルいですよ!!何で槍を振り回しただけで空が飛べるんですか!?」

 

あっちもあっちで苦労してるみたい。

何しろバンダナワドルディはプププランド一の槍使いだ。

特に連続攻撃はお手の物。

今回は槍投げ「ワドスピアスロー」と、飛行技「ワドコプター」からの「月おとし」というコンボ技をメインに攻め立てている。

そんな中、ゆんゆんの「ファイヤーボール」を「ワド百れつスピア」で全部弾き返したのは正直言って圧巻の一言に尽きる。

皆ボクのパーティメンバー対策として色々修行してきたんだろうけど、それでもあの技は簡単に成功するわけがない。

………あ、例外もあったね。

 

「えいっ!えいっ!えいっ!」

「いだっ!痛いってば!飛ぶなんて卑怯よ!!」

 

アクアはまともな攻撃手段なんて持ってないから、あのケケにさえ遅れを取る始末。

この世界において空を飛べるのが珍しいと言っても、逆に言えばケケには“空を飛ぶ以外の才能は無い”と言っても過言じゃないから。

さて、肝心のデデデ大王はどうだろう?

 

『ドッゴオオオォォォォォォォォン!!』

「ぐうぅぅぅぅぅぅ………!」

 

……うん、両方ともいつも通りだね。

デデデ大王はいつものようにハンマーを振るう。

因みにあのハンマー、最近になって知ったことだけど小型ジェットが仕込んであって、それを使って威力アップしてるんだとか。

ダクネスはダクネスで例のマゾ精神が騒いだのか、デデデ大王の打撃を嬉々として受けに行ってる。

……ボクとしてはできれば、そっちはいつも通りじゃなくして欲しいんだけどな。

 

「グワッハッハッハッハ!どうした、さっきから全然攻撃してこないじゃないか!」

「ふん、折角目の前に私が求めし“巨大な一撃”を放つ武器があるのだぞ。食らわないわけにいくものか!!」

「っ………生で見せられると、本当に気色が悪いなコイツは」

「ええ、彼女を初めて見た人は皆そう思うでしょう……」

 

ボクの隣で様子を見ていたアイリスが呆れ気味にそう言う。

するとデデデ大王が突然不敵に笑った。

 

「ふふふ、そう言うことならこっちにも考えがあるぞ!」

 

ふと足元を見れば、星が3つ転がってる。

と思った途端、そこから出現したのは黒い砲台………みたいな見た目の「シャッツォ」だ。

 

「な、何だそれは!?」

「グワ~ッハッハッハッハ!驚いたか?このハンマーはただの武器ではない。このように部下を呼び出すこともできるのだ!さあ『シャッツォ』、やってしまえ!!」

『ドオォ~ン!!』『ドカァン!!』『ズドォ~ン!!』

 

デデデ大王の命令を受けて、シャッツォ達が一斉砲撃。

あっという間に黒煙がダクネスを覆い隠した。

するとここで、アイリスが焦った様子でボクの手を引く。

 

「ちょ、ちょっとカービィさん!いいんですか、あんなことして!?」

「いいも何も、あれ一応デデデ大王の持ち技だし、別にいいんじゃない?それにホラ、王様だし」

「だ、だとしても流石に…」

 

アイリスが言い切る前に黒煙が晴れて、ダクネスが姿を現す。

結構ボロボロになってるけど、顔はいつも通りって感じ……。

 

「…おい、もう終わりなのか!?手加減の必要はないぞ、どんどん撃ち込んでこい!」

「ハッ、この欲しがりめ!だったらコイツをくれてやる!」

 

そう言ってデデデ大王は地面をハンマーで3回叩き、またあの星を出現させる。

そこから現れたのは……「ボンバー」!?

 

「こ、今度は何だ!?」

「フフフ、こいつらは『ボンバー』と言ってな、自爆技を持っている」

「何ぃ!?何だその素敵仕様は!」

 

バニルの時みたいなのを期待してか、ダクネスが目を輝かせる。

すると突然、ボンバー達が明後日の方向に向かって走り出す。

 

「お、おい!何処に行く!?」

「ハッハッハ、ほれほれ~早く追いかけないと何処へも知らぬ遠い所へ行ってしまうぞ?」

 

それを聞いたダクネスは、何も言わず一目散にボンバー達を追いかけ、そのまま見えなくなった。

残ったのはデデデ大王だけ。

 

「……あの~、カービィさん…こ、これは結局どっちが勝ったことになるんでしょうか?」

「決まってるじゃんアイリス。ダクネスは自分から試合放棄したんだから、デデデ大王の勝ちでいいでしょ?」

「そういうことじゃ、グワ~ッハッハッハッハ!!」

「いやいやいや待ってくださいよ!そもそもこんな勝ち方は…」

「分かってないねぇお前さん、勝負ってのはな、勝たなきゃ意味がないのだよ!グワ~ッハッハッハッハ!」

 

デデデ大王はふんぞり返って大笑い。

これもボクにとってはよく見る光景だ。

さてと、他はどんな状況かなっと…

 

「…………ぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

『ズドオオオオォォォォォォン!!』

 

大きな叫び声をあげながら地面に落ちたのはアクア。

上を見ればそこにはケケが。

するとケケは急降下して箒の先端をアクアの服の襟に引っ掛けたかと思えば、そのままアクアを持ち上げて上昇し始めた。

なるほど…箒で叩く作戦から、上から落とす作戦に変更したわけね。

それじゃゆんゆんとめぐみんは?

 

『ガキイン!ガキガキン!ガキイイイィィィン!!』

 

ゆんゆんは今もバンダナワドルディをやり合ってる……けど、何かおかしい。

そうだよ、ゆんゆんはさっきから魔法を使ってない!

ひょっとして魔力切れ?

だよね、そうじゃなきゃ相手との距離が開いた時に突進なんかせず魔法で攻撃するだろうし。

魔力がなくなっても攻撃を続けられるのは、あの時買った杖に埋め込まれてる「オールマイティアタッカー」のおかげだろう。

するとボクの耳に、徐々に大きくなる爆発音が聞こえた。

音のする方を見れば、相変わらずポピーに追い回されるめぐみんが。

でも…さっきとは様子が違う。

何か覚悟を決めたような顔してるぞ。

しかもあの爆弾の雨の中で、呪文の詠唱を始めてるし。

ポピーもそれに気付いてるのか、顔から最初の時みたいな余裕は消えて、何かを目測で測ってるみたい。

間違いなく、回避のタイミングを把握しようとしてるな。

それにしてもめぐみん、この短時間の間に何があったんだろう。

引っ切り無しに攻撃されてる中で呪文の詠唱をするだけでも凄いのに、よく見れば目を瞑ってる。

まさか…この状況の中で、思いがけず回避方法を学んだとか?

まぁ理由はともかく、それが今のめぐみんにとって吉と出てるみたいだから良しとしよう。

問題は……爆裂魔法をどうするかだ。

ポピーは既に回避のための準備を整えてるわけだし、上手くいくかな?

 

「そんなに仲間が大事か?ええ?」

 

デデデ大王がボクの隣でこう言ってきた。

 

「…そりゃまぁ、できれば勝ってほしいよ」

「『できれば』か…以前のお前からは考えられん言葉が出たな?」

「そう?」

「ああ、前のお前だったらこんな時『頑張れ~絶対負けるな~』みたいなことを喉が嗄れるまで叫び続けたと思うぞ」

「そこまでやる?」

「ああ、絶対やるとも!賭けてもいいぞ!」

 

そこまで自信たっぷりに言うほどかな………まいいや。

めぐみんの詠唱はとっくに終わってる。

後はどのタイミングで撃つか………。

すると、めぐみんが不意に後ろを向いたかと思えば

 

「『エクスプロージョン』!!!」

 

直後に放たれた爆裂魔法。

爆発そのものではないものの、やっぱり爆風に巻き込まれることは避けられず、めぐみんは盛大に吹き飛ばされた。

仮に吹き飛ばされなくても、最早魔力切れで立ち上がることすらできないだろう。

するとここで、爆炎の中からポピーが飛び出してきた。

どうやら爆発そのものに巻き込まれることだけは避けられたらしい。

結構な火傷を負ったみたいだけど、まだ十分に動ける。

ポピーは歩いてめぐみんに近付き……

 

「それじゃ…トドメの一発!」

 

問答無用で爆弾を投げつけた。

気が付けばケケの方も決着がついたらしい。

残すはゆんゆんだけか…。

今も肉弾戦(?)は続いてるけど、ここにきて体力差が浮き彫りになり、徐々にバンダナワドルディが押し始めた。

怒涛の突きで攻めまくるバンダナワドルディと、防戦一方のゆんゆん。

もう何か結果が見えてきたんだけど、折角だから最後まで諦めずに頑張ってほしいよね。

……そう言えば、ダクネスは何処まで行っちゃったんだろう?

全然帰ってくる気配が無い。

と思ったら、遠くで爆発したような音がボクの耳に届いた。

音がした方を見ると、森の遥か先から黒煙が立ち上ってるのが見える。

ボンバーが自爆したのかな?

だとしたら一体どれだけ遠くまで逃げてたんだよボンバー達…。

ていうかこれ、ちゃんと帰ってこれるのか?

バニルの力で調べてみると、案の定迷子になってたダクネス。

 

「ダクネスったら…何も周りが見えなくなるほど熱中しなくてもいいのに」

「ハッ、今はどうだか知らんが、以前のお前の食べ物に関する執着と大して変わらんぞ」

「そう?」

「じゃあお前、見知らぬ森で迷子になったらどうする?」

「その場で焼き肉焼いてくれれば匂いで駆け付けられるかも!」

「やっぱり変わらないな……」

 

そうこうしてるうちに、バンダナワドルディの方も結果が出たらしい。

…取り敢えずまぁ、大王軍の完全勝利…みたいな?

取り敢えずダクネスを拾って、皆を回復しなきゃ。

 

「あ、そうそう。デデデ大王はこの後どうするの?プププランドに帰る?」

「ん?そうだな…取り敢えずもう暫く滞在しようか。久しぶりにカワサキの顔も見てみよう。料理の腕が上がってるといいのだがなぁ」

「料理の腕はどうだか知らないけど、今も元気にやってると思うよ」

 

とまぁこんな感じのやり取りをした後、ボクは皆を拾って王都をあとにした。

それにしても皆、分かりやすすぎってくらいに落胆してたね。

ボクは全然気にしてなかったんだけど。

特にゆんゆんは、どういう訳かボクに対して終始申し訳なさそうな視線を送ってたんだよね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日、そういえばコックカワサキが働くレストランで「例のサービス」をまだ使ったことがない…ってことに気付いたボク。

取り敢えず前日の塩漬けクエストで討伐したグリフォンの丸焦げ死体を回収してから、ゆんゆん達を含む全員で王都のレストランに向かう。

というか、パーティメンバーとそれ以外の仲間が一緒に行動するのって今回が初めてだ。

ボクは口の中からグリフォンを出すと、レストランに入って声を張り上げた。

 

「すみませ~ん!例のサービス利用したいので、コックカワサキお願いしま~す!!」

 

例のサービスとは勿論、以前ボクが提案した「本来食材にならないモンスターの亡骸限定で料理に加工するサービス1回お1人様につき2千エリス」のことだよ。

運良く全員座れそうな席が空いてたので、ゆんゆん達に席取りを指示して待ってたら、カワサキが慣れた感じで人ごみをすり抜けつつやってきた。

 

「はいはいお待ちど~う…おっや、カービィじゃないか~!」

「数日ぶりだね。いや実は、あのサービスを未だ利用してないことに気付いてさ、今出来る?」

「勿論だよ~。で、材料はこれでいいのかな?これ何?」

「ああ、分かり辛いけどグリフォンだよ。アクセルの塩漬けクエストで討伐したんだ。で、「レーザー」で倒したはいいんだけど威力間違えちゃって……丸焦げだけど、大丈夫かな…」

「な~に、これくらい問題ないよ。それじゃ早速…」

 

そう言うとカワサキは大鍋を出現させて、フライパンをお玉で連打。

グリフォンが鍋に吸い込まれたのを確認すると、鍋をゆんゆん達のもとまで運ぶ。

そして煮込み、かき回し終わると……

 

「ほ~い、いっちょあがり!!」

 

7、8皿の料理が飛び出してきた。

どれもボリューミーなものばかり。

 

「…う~ん、これならこっちをゆんゆん達にあげた方が良いね。じゃあボクはいつものラージバーグをお願い」

「はいよ~!」

 

カワサキは素早くメモ帳に注文を書き込むと、足早に厨房へ向かって行く。

…いや普通に即答してたけど、今の注文って明らかにサービス内容から外れてるよね?

だって「1人様につき2千エリス」なのにボク以外全員のを賄っちゃってるんだもん。

でもま、カワサキ自身は楽しんでやってるみたいだし、取り敢えず問題は無いかな?

ということで、全員揃っての大昼食会(?)は無事終了。

午後はポーション調達のついでにガンバさんの武器屋へ。

 

「ところでカービィさん、何故またこの武器屋へ?以前一通り買ったはずでは…」

「何言ってるの、ゆんゆん?こめっこの分がまだじゃないか」

「こ、こめっこの分!?」

「そうだよ、こめっこにも1つくらい何か買ってあげようと思って」

「いやちょっと待ってくださいよ!妹はまだ5歳ですから、仮に相性の良いものがあったとしても体格的には合わないと思いますよ?」

「分かってるよそれくらい!学校を卒業したらすぐ冒険に出かけられるようにする為の備えだよ。こめっこ、キミはどうしたい?」

「ん?どうしたいって?」

「得意なところを伸ばしたい?それとも苦手を克服したい?」

「う~ん……なら苦手をなくしたい!特に雷のを!」

 

とこめっこが言うので、早速ガンバさんに相談することに。

ガンバさんは瞑想でもするかのように暫く考えると、店の奥から何やら引っ張り出してきた。

てっきり杖を持ってくるものだと思ってたんだけど……どう見てもあれは杖じゃない。

金属製の長い“棒”だ。

そして先の方はハンマーになってるぞ。

柄の長いハンマー…と思いきや、よく見るとハンマーのその先……棒の先端が鋭く尖ってる。

まるで槍とハンマーを無理矢理くっ付けたような見た目の武器だった。

 

「ガンバさん、これは?」

「これは『トールロッド』と申しまして、近接武器としても魔法の杖としても機能する優れものです。尚且つ、魔法であれば雷属性魔法の効果上昇が特に抜きん出ております」

「『効果上昇』って…具体的にどういうこと?」

「要するに魔法発動時の威力と器用さをアップさせるということです。雷属性魔法は単体の敵を倒すのに向いていますが、特性上直撃地点が気まぐれだったりするもので……つまりは、得意不得意の差が大きく出てしまうわけです」

 

なるほど、雷属性魔法にはそんな欠点があったのか。

 

「それともう1つ問題があるとすれば……そこのお嬢ちゃんが扱うには少し大きすぎるということですかね」

「それは問題無いよ。これはあくまで、こめっこが卒業した時のお祝いの品にするつもりだから。それに、『雷属性魔法の効果上昇が特に抜きん出てる』ってことは、他の魔法も一応強化はしてくれるんでしょ?」

「はい、多少ですが爆裂魔法の類も強化できますよ」

「なるほどね~。で、これはいくらなの?」

「5億エリスです」

「5億か……あそうそう、話は変わるけどガンバさん、以前ボクが買った腕輪に関して質問があるんだけど」

「はい、何でしょう?」

「あの腕輪ってさ、ボクより腕が太かったり細かったりする人の場合はどうする感じなの?」

「太かったり細かったり……?ああ、それは問題ありませんよ。身に付けた瞬間からその人の腕に合った太さに変化しますので」

「あ、そうなんだ。じゃあ、この腕輪も頂戴」

「ありがとうございます!」

 

これで合計20億エリスか。

手持ちにはまだ余裕があるし、皆の意見も聞いておこう。

 

「それで、皆はどう?何か欲しいものってある?」

「あ~、私達のことなら構いませんよ。だってカービィさん、以前に良すぎるものを買ってくれたじゃないですか」

「そうね、新しく欲しいものは無いわね……取り敢えずこの鬱陶しい鎖だけどうにかして欲しいってのはあるんだけど!」

「………ってアクアは言ってるんだけど、ガンバさん?」

「さぁてねぇ、取り外しできるように設計した覚えは無いのでどうにも……」

「それじゃ予定通り、次は日用品店に行こう。ミュイ達は何か欲しいものある?」

「え?ああ、そうですね。取り敢えず皆さんの歯ブラシが大分消耗していますから、そろそろ新しいのを買った方が良いと思います」

「そうそう、食器とかも今の大所帯用が無いし!」

「お客様用も買わないと!」

 

こめっこ用の装備を買った後、日用品店へ向かう道中は常にベルとミルのキーキー声と、アクアの抗議の声が聞こえてきた。

ベルが言ってた“大所帯用”に、大きさやら形状やらデザインやらが全く同じお皿やフォークスプーン、お客様用にちょっと豪華な見た目のティーセット、各色違いの歯ブラシなどなど、ボクが思ったより揃えるべきものが多いみたい。

とはいえ、ボクのお腹の中に収めれば大抵は問題なく運べるわけで。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

館での生活に問題が無くなって数日経ったある日、ボクが1人で散歩しているとクリス(エリス様)が駆け寄ってきた。

 

「ねぇカービィ、ちょっといいかな」

「何?」

「実は、ちょっと協力してもらいたいことが…」

 

そう言って1枚の紙を差し出してくるクリス(エリス様)。

それによると、アクセルの近郊に住む「アンダイン」とかいう名前の貴族が神器を不正所持してるらしい。

でもって今回はクリス(エリス様)も同行するみたい。

でもどうやって?

ボクはいつも通りにするつもりなんだけど……。

 

「あ、方法に関しては大丈夫。もうこっちで考えてあるから」

「どうするの?」

「まず、様子見がてらにあたしが先に入って、合図したら合流するって感じで」

「合図って…具体的にどんな?」

「別に聞かなくたって大丈夫!すぐ分かるから」

「…?で、神器の隠し場所は分かってるの?」

「それは君にも一任してもらうつもりだよ」

「…………結局ボク任せなのか」

「いやいや勘違いしないでほしいな!さっき『君にも一任してもらう』って言ったでしょ!?あたしの方で事前に調査して場所は特定してあるけど、万が一間違ってたら困るじゃん?だから念のため、キミにも確かめて欲しいの!」

「ハァ…まいっか。それで、アンダインの屋敷って何処?」

 

クリス(エリス様)の案内で向かった先には…なるほど、綺麗で大きな屋敷があるぞ。

と言っても……ボク達が住んでる館より若干小さいような…。

まぁ、普通の貴族は大体こんな感じなんだろう。

早速クリス(エリス様)は盗賊スキルを駆使して屋敷に入り込んだ。

ボクは何時でも入れるように「エンジェル」の状態で待機中。

今回も今回とて「神器感知」による結果は、宝物庫にあり。

今更だけど、扱いが少し雑な気もする。

神器はそこらの宝物より高価だろうし、普通の宝物とは別の場所で、他より守りを厳重にするとかしないのかな?

そうこうしてるうちに……何やら変な感じがした。

何というかこう…見えない誰かに呼ばれたような感じ……。

ひょっとして今のが合図?

取り敢えず屋敷の主の部屋にテレポート。

 

「うおぉ!な、何者だ一体!?」

「『神器不正所持・不正使用取締役』カービィです。女神エリス様の命令により、不正に所持又は使用されている神器の回収を行っております!この屋敷の宝物庫に不正所持の神器の存在を確認しましたので、中を改めさせて頂きます!」

 

そう言ってボクは宝物庫へ歩を進める。

その後ろから……

 

「誰か!!何でもいいからアイツを止めてくれ!!」

 

面倒くさそうな声が聞こえてきた。

と言っても、やることは変わらないんだけどね。

途中何やかんやあったけど、無事に宝物庫へたどり着き、クリス(エリス様)とも合流。

 

「よかった、合図が通じたみたいだね。で、今回回収するのはあれだよ!」

「ほう………『聖鎧アイギス』ですか」

 

リストによれば、アイギスはこの世で最も頑強な鎧であり、魔法やスキルが無効、しかも装着者がダメージを負うと自動で回復させるとのこと。

何より驚いたのは、この鎧が「自力で動き回れる」という点だ。

なるほど、だから鎖で固定されてるのか。

取り敢えずこれをどうにかして外そう。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

光の斬撃一発で鎖が外れた。

するとアイギスは、支えがなくなった銅像みたいに大きな音をたてながら倒れ込む。

崩れ落ちずにそのまま倒れたあたり、鎧全体が1つに合体してるらしい。

そう間もなくしてアイギスはゆっくりと起き上がり、周りを見渡し始める。

 

《う~……えーと何だ、お前が俺を自由にしたのか?》

 

こりゃまた驚き、ランディアと同じように喋れるのか。

 

「その通り、ボクは『神器不正所持・不正使用取締役』のカービィという者だ。女神エリス様の命令により、キミを回収すべくやってきた!」

《女神エリスだって!?………なるほど、つまり俺は天界に帰れるってことか?》

「まさにその通り」

《ほう、ならすぐにでも送り返してくれ…………と言いたいところなんだが、その前に1つお願いしたいことが》

「?」

《つまりだな……俺には夢があるんだ。どうせ使われるなら、俺好みの女性に着て欲しいとな!》

「……は?」

《だから頼む!俺の長年の夢だったんだ!好みの女と共に過ごしたいんだ1日でいいから!いや、この際半日でもいいから、俺の願いを叶えてくれ!!じゃないと俺……俺とても帰る気になれないんだ!!》

 

こんな感じの心の叫びを言うだけ言って土下座するアイギス。

クリス(エリス様)は予想外のことで頭が回らなくなってるみたいだし…さてどうしようか。

 

「……まず気になったことがあるんだけどね、キミは装着者に合わせて大きさ形を変えることはできるかい?」

《へ?い、いや…それは無理だ》

「となると、キミを着れる女性は相当限られるということだ。ん~~……今のところ、キミに合いそうな体型の女性は2人しか知らないな」

《おお、本当か!?》

「……ハッ!ちょ、ちょっと待った!何で条件をのむ前提で話が進んでるの!?」

《黙れやペチャパイに用はねぇ、引っ込んでろ!》

 

ようやくクリス(エリス様)が正気に戻ったと思いきや、すかさず罵声を浴びせるアイギス。

……今更だけど、ボク1人の方がよかったんじゃないかな?

取り敢えず話を進めよう。

 

「で、その2人なんだけど……1人は『ダスティネス・フォード・ララティーナ』。ダスティネス家の生まれで、父親の人並外れた強靭な体と、母親の高い各種耐性を受け継いでる」

《マジかよ、まるで戦うためだけに生まれたような奴だな》

「もう1人はクレア……フルネームは『クレア・シンフォニア』…だったか…。詳しいことは把握できていないが、アイリス王女の護衛であるからして、それなりには…」

《ほほう、王女様の護衛か。俺のこの見た目とも合いそうな…》

「…とはいえ、クレアは現在“とある事件”の影響で立場が危うくなっておりますから、やたらと近づくのは問題アリでしょう」

《そ、そうなのか?となるとそのダス…なんとかしか候補がいないってことだな》

「ダスティネス・フォード・ララティーナです!」

《そんな大声出さなくてもいいだろうよ。そもそも一発でそんな長ったらしい名前を覚えられる方がおかしいだろ………あ、そうだ!》

 

アイギスが何やら思いついたらしい。

……………でも何だろう?

さっきからお腹の辺りに違和感があるぞ。

エリス様と通じてるせい?それとも能力的なもの?

 

《俺の方でも探してみよう!ひょっとしたらもっといい女見つかるかも!!》

「待ちなさい!勝手に動き回られては困りますな!」

《離してくれよ!どうせやるなら自分でも後腐れない結果を残したいんだ!!》

 

引き留めようと掴んだボクの手を振りほどいて、外へ出ようとするアイギス。

すると、またしてもお腹の違和感が……今度は猛烈な勢いで込み上げてきた。

と思った次の瞬間………!

 

『ヴイイィィィィィン!』

《うおっ、な、何だ!?》

 

突如、半透明の真ん丸な“壁”がアイギスの行く手に立ち塞がった。

……いや、アレは壁じゃない…イージス?

間違いない、「聖盾イージス」だ!

でも一体どうして…あ、そういえばリストに書いてたな。

イージスとアイギスは元々2点セットだったらしい。

ということは、イージスはそういった関係に反応したってことなのかな?

アイギスは何とか出ようとして、叩いたり体当たりしたりと大暴れ。

そうこうしてるうちに“半透明のイージス”は、四方の壁・床・天井を全て封鎖し、アイギスは何処からも出られなくなった。

 

《こ、これは……まさか、『聖盾イージス』!?ど、どういうことだ!?》

「故あって、今のイージスはボクが管理しているのでね。イージスとしても、これ以上勝手に動き回るのは控えなさいと言いたいのでしょう」

《……………………くっ》

 

さっきまで逃げようと必死だったのが嘘のように、アイギスは納得できなさそうながらも大人しくなった。

これも2点セットだったせいなのかな?

 

「…どうやら、貴方がイージスを手に入れたことは幸運だったようですね」

「ええ、確かに…」

《おいちょっと待て!そいつ、さっきと口調が違わねぇか!?》

 

どうやらもう隠す気は無いらしい。

クリス(エリス様)は白い光と共に正体を明かした。

 

《っ……!こ、これは………まさかあんた、え、エリス……女神エリスなのか!?》

(如何にも、その通りです)

「全くエリス様は…そのような感じで最初から振舞っておけば、苦労しなかったというのに……」

(た、確かにそうだったかもしれません。しかしその……アレですよ!何も苦労せずにいたら、それはそれで問題でしょ?)

「…そういうことにしときましょう。ハァ」

 

明らかにとってつけた感じの言い分を受け流してる間も、アイギスはエリス様の方を向いたまま棒立ち状態。

ついでに何か、頭部が若干赤くなってるような……。

ボクがそんなことを考えてる間にも、エリス様は話を進めていく。

まぁ、話って言うほど長くもなかったけど。

 

(では聖鎧アイギス、彼の提示した条件で構いませんね?)

《……は、はひ…》

 

心ここにあらずって感じの返事だけど、本当に大丈夫なのかな?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

とにもかくにも、ボクはアイギスを連れてダスティネス家の屋敷へ。

今の時間帯なら、ちょうど剣術の訓練が一区切りつく頃だしね。

屋敷に到着すると、タイミングよくダクネスが出てきた。

 

「お、カービィじゃないか!……ん?どうしたんだそのやたら神々しい感じのよろ」

《うおおおおおおおおおおキタアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!!!!》

「!!?」

 

アイギスは変なガッツポーズで叫んだかと思えば、いきなりダクネスに抱き着いた。

何してんだか……。

当たり前のようにダクネスのバカ力で引き剥がされたアイギスは、何が起きたのか理解できないらしくその場をうろちょろ。

 

「…なぁカービィ、あれは一体何なんだ?どう見ても鎧が動いているようにしか見えないんだが」

「まさにその通りだよ、ダクネス。『聖鎧アイギス』と言って、意思を持つ鎧なんだ。れっきとした神器だよ」

「意思を持つ鎧だと!?神器にはそんなものまであるのか………それで、何故お前はその神器を連れてきたんだ?」

《あ~、実はその~…》

「この神器は天界に返されることになってるんだけど、その際に交換条件を出してきたんだよ」

「条件?」

「うん。今日1日だけ、『自分をちゃんと着こなせる体格で、尚且つ自分好みの女性』に着てほしいらしい」

《そうそう!それだ!》

 

とは言ってみたけど……やっぱりそうだよね。

いきなりこんなことを言われても困るよね。

難色を隠し切れてないダクネスは、暫く考えてから口を開く。

 

「…普通の鎧だったら別に構わないが、自力で動ける鎧となると………なぁカービィ…身に着けた瞬間、私の意思とは関係なく動き回るなんてことにはならないだろうか?そこだけが心配なんだが…」

 

あ、受け入れる気はあるのか。

ボクはダクネスの疑問に応えるべく、エリス様から渡されたリストに目を凝らす。

 

「そうだな~……リストを見る限り、それも可能そうだけど…」

《いやいや大丈夫っすよ!どうせ今日1日だけなんだ。大事に扱ってくれるなら、ただの鎧としておとなしくしますって。だからお願いします》

 

再び土下座したアイギス。

結局のところダクネスの心配事は拭いきれなかったけど、ボクの説得もあって、取り敢えず引き受けてくれることに。

でもボクはこの時、気付いていなかったんだ。

アイギスの「大事に扱ってくれるなら」という言葉の意味を。

聖鎧アイギスは魔法やスキルを受け付けず、装着者がダメージを受けると勝手に回復してくれる等といった凄い能力を持ってるんだけど…意思を持ってるというのが仇になった。

というのも、アイギス自身が“痛みを感じる”ことができ、唯一無効化できない物理的な攻撃を受けると、本人曰く「相当痛い」らしい。

それで最初の持ち主である冒険者のもとから逃げ出し、色んな所を転々としてたんだって。

ということは、前衛職「クルセイダー」で尚且つ“究極のマゾヒスト”でもあるダクネスのもとに渡ったりしたら…………この先は何となく分かる。

自分が一番嫌いな使われ方をこれでもかというほどされたアイギスは、逃げるようにエリス様と一緒に天界へ帰りましたとさ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「………おいウォルバク、分かっているだろうな?」

「ええ、分かってるわよ。兎に角ヤバいってことはね」

「それだけじゃない。あの計画は彼女主導なのだ。失敗は許されんぞ!」

「それはそうよね。でも私だって、今の持ち場からは簡単に離れられないわよ。なのにどうして私に言うのかしら?」

「言わなくても分かるだろうが!」

「…ま、そうよね……は~ぁ」

「何だ?何が不満だ?」

「不満じゃないわよ、ただね…」

「何だ?言いたいことがあるなら言ってみろ」

「………今更だけど、天界からお誘いが来てるのよ。もう1度やり直さないかって…」

「本当に今更だな……で、当然だろうが答えは?」

「フッ、今やるべきことを全うするわ。当たり前でしょ?」

「うむ、それでいい!」

「ふふ……(今は、ね)」




次回予告
神器回収にて大役を果たしたカービィ。
そんな彼のもとに現れたセレナという名の少女。
アークプリーストである彼女には何故だか怪しい影が!
そして魔王軍の恐ろしい計画が始動する!!
次回「秘密捜査大作戦」

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