【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を! 作:Mk-5
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ
「……本当にすみません。いくら固形物が口にできないほどだからと言っても、ここまでして頂けるなんて」
「いやいや、これは流石にさ…ね?」
今ボクが何をしてるかと言ったら、ウィズに食料を幾らか届けに来たんだ。
何しろウィズが開いてるお店の商品ときたら、値段がやけに高かったり、利点で補いきれないほどの欠点(というか欠陥?)があったりと、ボクから見たって誰も買いそうにないと思えるものばかりが並んでるわけ。
炸裂魔法が込められたジャイアントトードの餌っぽい見た目の「カエル殺し」・魔力を込めると使用者の恥ずかしい過去を投影する「仲良くなる水晶」・呪縛魔法と泥沼魔法を、使用した本人にまで影響が及ぶほど効果上昇させるポーション・麻痺の範囲が無条件で広くなり、発動させた本人も巻き込まれる「麻痺の効果拡大スクロール」・暗いところでは読めない「ライティング魔法のスクロール」・着けた本人の願いがかなうまで外れず、しかも日ごとに締まっていく「願いがかなうチョーカー」……………一体誰が買うんだって話だよね。
特に「カエル殺し」なんて1つ20万エリス…ジャイアントトードの討伐報酬的に絶対赤字だよこれじゃ。
こんなんでよく今まで破産しなかったなと思ったけど、その辺はどうやら冒険者としての討伐報酬でやりくりしてるらしい。
とはいえ、いつ見てもお客さんが誰もいない状況をほっとくこともできず、今回こうして食べ物を仕送りしてるわけよ。
「うう、カービィさんの優しさが辛いです…!」
「辛いのはボクだって同じだよ。毎日こんな状態じゃさ……兎に角、お店続けたいならやり方を変えないと」
「や、やり方を変える?」
「そうだよ。例えば街の冒険者達にアンケートをとってさ、それで欲しがってる人が一番多い物が売れ筋になるだろうから、それを仕入れて売ればいいんじゃない?」
「なるほど、それはいい考えですね!…あ~でも、みなさんが協力してくれますかね?」
「そんなの、協力してくれるまで地道に頑張るしかないよ。まぁ簡単じゃないだろうけど…」
「うう…」
「おっといけない、そろそろ戻らなくちゃ!」
「え、もう行っちゃうんですか?もっと色々聞きたかったのに…」
「そうは言ってもさ、今日は王都で『グランドスラム・コロッセオ』があるんだよ。今年も呼ばれてるんだ」
「あ、そういえばそんなのありましたね……」
「それじゃ、続きはまた今度ね!」
「は、はい」
というわけで、うちに帰って早速準備に取り掛かる。
まぁ前回がアレだったせいか、ボクが戦うのは一番最後だけなんだけどね。
今回も皆揃って観戦するらしい。
これで2回目の“全員”参加となるわけだ。
因みに以前、グリフォン討伐した時に見つけた宝石類だけど、皆には内緒でコッソリ換金しておいたんだ。
流石にあの額を聞いたら、ボクのパーティにいる“邪神界の女帝”が足を引っ張りそうだしね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
それはともかく、皆の支度が整ったのを確認し終わったので、早速王都へテレポート。
会場周辺の賑わいは去年より増してるみたい。
いたるところで子供達が競技の真似事をしたりチャンバラごっこをやってたりと大騒ぎ。
大道芸人も少なからず見受けられるし(残念ながら例のマジシャンの姿は見られなかった)、中には露店を開く武器屋さんまでいる。
出店のバリエーションも大幅に増え、中にはテーブルや椅子が並べられてチョットした食事スペースが設けられてる店もあるほど。
どうせだからということで、予め場所取りしてから皆それぞれ好きな店で食べたいものを買って、それらをテーブルいっぱいに広げて早めの夕食会を開いた。
焼きそばにチョコバナナ、焼きトウモロコシにわた飴……プププランドのお祭りとほとんど変わりないんだよね。
まぁバナナが川を泳ぐとか、そういう違いはあるけど………。
それにしても、この催し物は意外と人気あるんだな。
ボクはてっきり、あの時の戦いのせいで参加者が減るんじゃないかとも思ったんだけど…。
まいっか、取り敢えず食べ終わったら競技場の座席を探さないと。
因みに座席は、混雑が予想されるとかで今回から予約制になってる。
王都でしか予約券を扱ってないってのが不便なところだけど、それでも無いよりマシだよね絶対。
番号札片手にやっとこさ予約席を見つけたゆんゆん達と別れ、ボクは参加者用の控室に向かう。
参加者は全員、戦う前に冒険者カードを観客に提示しないといけないわけだけど、ボクだけは最後の戦いの時まで提示しなくていいらしい。
まぁボクにとってはどうでもいいんだけど………やっぱり退屈だな~。
とは言ったものの、口からボードゲームを引っ張り出して遊んでたら、いつの間にか決勝戦まで済んじゃったみたい。
どうしてこんなにも時間の流れが変わるんだろうか。
ボードゲームを片付けて、ボクは闘技場へ向かった。
…ふ~ん、今回の相手はいかにも歴戦の勇者って感じがする。
職業は確か「ルーンナイト」…ソードマスターとアークウィザードのハーフみたいな職業だったはず。
それにクルセイダーとアークウィザード、アークプリーストと思しき人もいる。
「さ~て皆さん、これまでの戦いは前回にも増して激しく、そして長いものとなりました。そんな戦いもこれで最後です!さぁ、ここまで勝ち抜いてきたパーティの相手をするのは勿論彼しかいない!謎に満ちた異郷の地『プププランド』出身。状況に応じて様々な姿と能力を発揮する『コピー能力』を駆使して戦う伝説の戦士、カービィの登場です!!」
ボクが出てきた途端、割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こる。
それに応えるべく笑顔で大きく両手を振ってみたら、歓声と拍手が一気に1.5倍くらい跳ね上がった。
完全に恒例行事となったうえに大人気ってのが誰にだって分かる…そんな状態だこりゃ。
そんな中、ボクと対戦予定のパーティだけは冷めてる……というより、緊張してるだけかな?
「ではカービィさん、冒険者カードを台座に置いてください!」
「あ、忘れてた。ホイっと!」
以前と同じように冒険者カードを台座に置くと、内容が投影された瞬間に会場中で驚きを含んだ叫び声が轟いた。
予想外のボリュームに思わず耳を塞いだけど、それでも結構な音量が出てる。
「何と何と、レベルはちょうど20!前回大会から倍以上も伸びている!しかも、ベルディアに加えて新たに3人の魔王軍幹部を討伐したようだ!いやはや、何という快進撃!!」
また実況役の人が変なことを言い始めたけど、いつものことなんだろうし、今は試合に集中っと。
あそうだ、その前に………
「ねぇねぇ、始める前にちょっといいかな?」
「おっとここで、カービィさんから何かあるようです!」
「実はボク、つい最近新しいコピー能力を手に入れたんだ。それで今回それを試したいと思ってて、それに際して1つ条件を出したいと思うんだ。それは『新しいコピー能力以外使わない』ってやつなんだけど…」
「な、なな何とぉ!!これは条件というより“ハンディキャップ宣言”だ!果たしてどんな能力なのでしょう?そして対戦相手はどう立ち向かうのか!これは目が離せません!」
そうこうしてるうちに試案が始まったので、ボクは早速能力を発動!
「『ガーディアンカービィ』!」
「おお!?これはまた珍しい!盾を装備しているぞ!それでは武器は……おや、武器を持っていない!?もしや、防御一点張りで行くつもりなのか!?」
「別にいいじゃん!“防御は最大の攻撃なり”って聞いたことない?」
「いや、聞いたことありませんが……っとここで、相手パーティのルーンナイトが動き出したぞ!」
見れば、ルーンナイトが連続で「斬撃飛ばし」を放ってくる。
なるほど、様子見の遠距離攻撃か。
「ホイッ!ホイッ!ホイっと!」
「これは素晴らしい!自分に当たりそうな攻撃だけを無駄なく、そして完璧に防いでいる!いや、よく見ると相手方の攻撃が盾に当たった瞬間に消滅しているようにも見えますが………」
確かに傍から見たらそうだろうね。
ついでに言うと、ボクはさっきから“1度も”“自力で”攻撃を防いではいないんだよね。
これが、このコピー能力の凄い点「当たりそうな攻撃を勝手に防ぐ」ってわけ。
だから攻撃が当たりそうになると、盾の付いた腕が勝手に動くんだ。
その後も、クルセイダーの力任せな斬撃、その陰からアークウィザードが魔法を放ち、そしてルーンナイトが魔法と斬撃飛ばしを織り交ぜた連続攻撃。
それらを漏らすことなく、当たりそうなものだけ防ぎ切った。
しかも何の苦も無く、ね。
そのせいか、相手パーティだけが疲労感漂いまくってる状態に。
流石のアークプリーストも“疲労の回復”だけは無理らしく、呆然と立ち尽くしてるし。
「さあ、勝負はいよいよ大詰めを迎えたか!?対戦相手のパーティが、プリーストを除く全員に疲労の色が浮かんでいる一方、カービィさんの方は全く疲れている様子が見られない!もしや、こうして相手を疲れさせる作戦なのか!?」
「そんなわけないじゃん!さて…そろそろ、攻めようかな?もう十分だろうし…」
「おや、ここで攻撃宣言です!しかしながら、攻めるための武器は無い!果たしてどうやって攻めるつもりなのか!?」
「あのさ、さっき『攻撃が盾に当たった瞬間に消滅してる』とか言ってたけど、それは違うよ。正しくは『食らう予定だったダメージを吸収した』のさ!」
「『ダメージを吸収』!?一体何のために!?」
「さっきも言ったじゃないか“防御は最大の攻撃なり”って。つまり、ダメージを吸収して……撃ち返すのさ!『リバースシュート』!!」
『チュドオオオオォォォォォォォォォォォォォォンンン……!!!!!』
盾の中心から放たれた、金色がかった白い破壊光線。
その速さに相手は全く対応できず、大爆発に飲み込まれた。
煙が晴れると、そこには倒れたパーティが。
ルーンナイトとクルセイダーは何とか立ち上がるも、他の2人はもうダメみたい。
ボクが言うことじゃないかもだけど、今日一番散々な目に合ってるのって間違いなくプリーストの人だよね。
だって何の役にも立てなかったんだもん…。
「な……何ということでしょう!!今の光線が今まで相手から受けたダメージなのだとすれば、まさに攻防一体の盾だ!!」
「……さぁ、ボクが受ける予定だったダメージ…まとめて返させてもらうよ!おっとそうだ、どうせだからこれも試そう!観客席の皆は見ない方が身のためだよ!『ストーン・パワー』!!」
さっきの光線が盾の目の前で静止。
風船のように膨らんだかと思えば、それはやがて形を作った。
そう、「メデューサの首」を!
両目から放たれた光線を浴び、まともに見入った2人はたちまち石化しましたとさ。
会場が静まり返る中、ボクは説明する。
「…ボクはこの神器『聖盾イージス』に関してこんな伝説を、本で読んだことがあるんだ。その昔、『メデューサ』って名前の女性型モンスターがいたらしい。金の翼と毒蛇の髪を持ち、アイコンタクト1発で相手を石に変える能力を持つ…そんなモンスターが。でもその石化能力は、討伐されて首だけになっても健在だった。そこである人が、その首をイージスに組み込むことを提案。以来イージスは、見る者全てを石に変える“石化の盾”と化したのさ。今の技は、ボクの中にあるイージスのイメージを具現化したものってわけ」
そう言い終った後でふと顔を上げてみると……石化した2人の先……そこにいた観客の多くが、同じ様に石化してた。
今思えば、さっきの静寂ってこのせい…だったりする?
「ありゃりゃ…………(汗)」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
取り敢えず能力を消したら石化した人達が元通りになったので一安心。
優勝賞品は前回と同じく「レジェンドスキルポーション」…これはアイリスが飼ってる黄金竜のものかな?
それはともかく、こめっこが飲むべきだろうと思ったボクは、ポーションをお腹の中に収めて皆と合流した。
「……お前というやつは…またしても危険な能力を…!」
「今更何言ってるの、ダクネス?危険かどうかなんて使い方次第でしょ?」
「これはそういう問題じゃ…」
「こめっこ、はいこれ。レジェンドスキルポーションだよ」
「え?くれるの?」
「ボクは初期ポイントで大抵のものを習得済みだからね。今は伸び盛りのこめっこが一番ポイント必要だと思ってさ」
「ありがとうカービィ兄ちゃん!」
そう言って嬉しそうにポーションを飲むこめっこ。
懐からチラッと出てる冒険者カードに目をやると、スキルポイントがどんどん増えてるのが分かる。
なるほど、飲んだら一気に増えるって感じじゃなく、飲んだ分だけ増えていく感じなのか。
相変わらず「伝説」と名がつくだけあって、スキルポイントが大変なことに。
それを見たこめっこは、もっと大変そうな顔になった。
「え…ええええぇぇぇぇぇ!?どれだけ増えてんの!?」
「大丈夫だよこめっこ、これは夢でも幻でもないから!」
ボクがそう言った瞬間、こめっこがボクに抱き付いてきた。
まぁ今までが今までだったとはいえ、随分懐かれちゃったな。
おかげでめぐみんからは目の敵でも見るみたいな視線をもらっちゃったし…。
とはいえ、めぐみんのことだって別に放っぽってるわけじゃないよ。
爆裂散歩には時折付き合ってるし……アクアが同行できない時にね。
何しろアクアの浄化能力は相変わらず悪い意味で強力だから、お酒を水にしちゃって弁償のためにバイトするって流れは割とよくあるんだ。
これもまたアクセルの風物詩に加わったね間違いなく。
でもって、こめっこの魔法修行だけど…次は思い切って「爆発魔法」を教えようと思うんだ。
爆裂魔法ほど威力はないにしても、その分魔力消費は少ないから割と扱いやすいんじゃないかな?
こめっこ本人は「爆裂魔法じゃなければ何でもいい」とのことだったので、早速試してみることに。
「『バースト』!!」
ボク自身、この魔法は「クラッシュ」に付け加える形でしか使ったことがないからあまり気にしてなかったけど………どうやらこれも「カースド・ライトニング」と同じく、正確な場所に撃ち込むのが難しいらしい。
それに、いくら爆裂魔法より魔力消費が少ないと言っても、やっぱり相当魔力が必要な魔法。
こめっこの場合は、1日3発が限度みたい。
まぁそれでも、爆裂魔法より使える機会は多いだろうから、これも地道にやってりゃ何とかなるでしょ。
ボクはこめっこを、そう言って励ましながら一緒に試行錯誤した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
暫く経ったある日、ボクが何気なく冒険者ギルドに足を運ぶと、受付のお姉さんに呼び止められた。
「どうしたの?」
「カービィさん、実はあなたにどうしても会いたいという人がおりまして…」
そう言ってお姉さんは、後ろに隠れていた女の子を紹介してきた。
…どことなく神官みたいな見た目をしてるけど、プリーストなのかな?
でも………………………………。
「は、はじめまして!あたしはセレナっていいます…」
「……あっうん。よろしくねセレナ。それで、何でボクに会いたがってたわけ?」
「決まってるじゃないですか!あたし、カービィさんと一緒に冒険したいんです!」
「なるほど、でも大丈夫なの?ボクのパーティ、皆上位職だけど…」
「ああ、その辺はご心配なく。あたし、アークプリーストなんで」
「キミも上位職か。ちょっと待ってて、皆を呼んでくるから」
………出会った時に感じたあの違和感。
魔王軍幹部ウォルバクの時と全く同じものだ。
いや、それよりも幾らか弱い。
ということは、セレナは邪神と何らかの関係を持ってるってことになる。
念のために「フォーメーション・バニル」で調べてみたら……物凄いことが分かっちゃった!
とはいえ…彼女の目的が目的なだけあって、無暗に喋ると面倒くさいことになりかねないぞ。
……仕方ない、今は普通に接することにしよう。
というわけで、普通にゆんゆん達を呼んできた。
「……というわけで、この子がセレナだよ」
「ほほう、こいつが2人目のアークプリーストか!」
「ちょっと待ちなさいよ!私というものがありながら、何でもう1人アークプリーストを増やすのよ!?」
「だってしょうがないじゃん。アクア時々モンスター討伐に参加できない時あるでしょ?そう言う時のための補充要員も必要なんだよそろそろ…」
「カービィさんの言う通りです。それに、単純に回復要員が2人になるって、結構頼もしくないですか?」
「そ、それはそうかもしれないけど……」
「まぁ取り敢えず、アークプリーストとしての実力がどれくらいなのか見ないとね。まずは回復あたりからにしようか。この街でも怪我する人は少なくないしね」
「あ~なるほど…分かりました。私がどれ程優れたアークプリーストか、とくとご覧あれ!」
と、やたらハイテンションで飛び出していったセレナ。
“一応”ボク達が見てる限りじゃ、まともだね。
ハイテンションぶりがアクアと被ってる気がするけど…まいっか。
大して重要じゃないからね、“あのこと”に比べたら。
セレナの姿が見えなくなったのを確認した後、ボクはパーティメンバーを招き寄せて小声で話し始める。
と言っても、洞察力が高いゆんゆんだけは何となく察したみたいだけどね。
(カービィさん…やっぱりあの人、怪しい人ですか?)
(うん、バニルの力で確認してみたらね……まずあの子の本当の名前は『セレスディナ』って言うんだけど…)
(名前を偽っていたのか!?それで、何者なんだ?)
(魔王軍幹部だよ)
『まお』
(シ~!……声が大きいよ)
(それよりカービィ、分かってたなら何で倒さなかったのよ!?)
(何言ってるのアクア!彼女は今まさに“良い子のフリ”をしてる最中よ。そんな時にそんなことしたら、間違いなくこっちが悪者扱いされるじゃない!だからカービィさんは、ワザと倒さなかったの!)
(そういうこと。しかも結構厄介なスキルを持ってるみたいだし…)
(どんなスキルですか?)
(まずは『デス』、そのまんま相手に死を与えるスキルだね)
(それって、ベルディアの『死の宣告』みたいなものですか?)
(いや、あれは期限を決められるけど、セレスディナの方はその場で死を与えるってだけさ。あともう1つは『傀儡』…とにかく生きてようが死んでようが誰でも意のままに操れるっていうスキルだよ。しかも死んでるのを操ってる場合、原理上アンデッドじゃないわけだから対アンデッド魔法は効かないよ)
(うっそ…!マジで!?)
(うん。それと普通の人を操るには“貸しを作る”って条件が必要らしい)
(貸しを作る……ってちょっと待てカービィ!それじゃ奴に回復してもらった冒険者とかは全員“借りができた”ってことになるんじゃないのか!?)
(かもね…)
(『かもね』じゃないですって!それってかなりマズいでしょ!?)
(でもだからって、このままいきなり討伐しようとしたら余計にマズイことになるよ。死体を操り出したりしたらさ……)
(あ、そうですね……となると一体どうすれば…)
(取り敢えず今はいつも通りに振舞おう。まずは今夜あたりに捕まえてから…)
(どうやって捕まえるんです?)
(まかしといて、ボクに考えがあるから)
というわけで、セレナは今日1日はこのままにしておくことに決まった。
ボクの方はちょっと下準備を。
まずウィズの店で、商売方法(※ボクが知ってる限りで売れそうなやり方)を教えるのと引き換えに「あるスキル」を教えてもらった。
王都のレストランへ行くための「テレポート」伝授はまた今度にするとして、他にも色々と準備を進めていく。
何も知らないセレナ(セレスディナ)は、その後も傷ついた冒険者を見つけては治療し、順調に街での人気を集め始めた。
多分人柄の良さも影響してるんだろうね多分。
でも夕方になる頃には………
「…やっぱ無理。もう限界」
「まだ早いってば」
パーティの中で一番セレナ(セレスディナ)をよく思ってないアクアが今にも飛び出しそうになる。
「い~え、もう耐えられない!何でアイツにばっかり人が群がるのよ!!私だって同じようなこと今までやってきたのに!!」
「それは親しみやすいからでしょ?ホラ、あそこの冒険者達も言ってるよ『優しいし、細かいところまで気を配ってくれる』ってさ。無愛想で図々しくて適当なキミとは……ハッキリ言って正反対なんだもん」
「うがあああああああああああああ!!!」
アクアが発狂しかけてる丁度その時、一通りの治療を終えたセレナ(セレスディナ)が帰ってきたもんだから、アクアが猛ダッシュでギルドを飛び出し、その後は大喧嘩に発展。
お互い一歩も譲らない状態が続いたので、ボクはアクアを殴って気絶させてからセレナ(セレスディナ)に取り敢えず謝って、それで一旦は終結した。
自宅に戻って夕食をとっていると、不意にセレナ(セレスディナ)がボクと相部屋にしてほしいと言ってきた。
「…どうしたのいきなり?」
「…あ、や、す、すみません、ここで言うのは場違いでしたね。で、でも誤解しないでください。私はただ…カービィさんのことをもっとよく知りたいんです!」
……もっともらしいことを言ってるけど、察するに意地でも貸しを作りたいってことだろう。
考えてみれば、ボクは8人の魔王軍幹部のうち既に半分を討伐しちゃってるわけだし、それだけ警戒されてもしょうがないか……。
それに、ボクとしてもその方が都合良いしね。
その後は入浴から寝る準備までさっさと終わらせて、セレナ(セレスディナ)より先に眠りについた。
“ある魔法”を付与した状態の「スリープ」でね…要はこれも作戦のうちってわけ。
後は成功を祈るばかり……まぁ、コッソリちょむすけで試したから大丈夫だとは思うけど………。
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結果はまさしく大成功!
起きてみれば、セレナ(セレスディナ)はボクが予め用意しといた簡易ベッドにはいなくて、ボクのベッドに倒れこむように眠ってた。
しかも手には何故か料理用の包丁が!
真相を探ってみれば、セレナ(セレスディナ)はなかなか貸しを作れないことにしびれを切らしたようで、実力行使に乗り出そうとしたらしい。
しかも自分が疑われないようにね。
そのために皆が寝静まってからキッチンまで包丁を取に行き、それでボクを殺そうとしてたわけ。
こうしとけば真っ先に疑われるのはミュイだし、セレナ(セレスディナ)自身は今まで皆に優しくしてきたから尚更疑われづらい……。
だけど、ボクだって何も対策をとってこなかったわけじゃないもんね!
セレナ(セレスディナ)と別れてからも色々準備してきたんだから…まぁそれは一旦置いといて……。
まずボクは予め、コピー能力に「スリープ」という眠りの魔法を付与したんだ。
これにより、ボクのいびきが聞こえる範囲にいる人は否応なしに眠っちゃうってわけ。
ついでに………
『バタン』
「…どうやら成功したようですね」
「うん」
今入ってきたのはアクセルの警察官。
昨日の入浴時にこっそり抜け出して、協力してくれるように頼み込んでたんだ。
加えて、「嘘を見抜く魔道具」も貸してくれることになってる。
皆を起こして軽く朝食をとった後、まだぐっすり寝込んでるセレナ(セレスディナ)を警察署まで連れて行き、取調室の椅子に「バインド」で縛り付け、「フォーメーション・バニル」を発動して軽く下準備をしたら机に魔道具をセッティング。
あとはセレナ(セレスディナ)を起こすだけ……。
「ほらセレナ、いつまで寝てるのさ!」
「………ん……う~……あ、あれ?私………って……っ…ちょっと待ってどういうこと!?」
「おはようセレナ。おっと、これは偽名だったね。それじゃ改めて…おはよう、魔王軍幹部セレスディナ」
「!!!…………そ、その仮面は……くっ…!」
全てを理解したセレスディナは悔しそうに顔を歪める。
「…教えてもらおうかしら、何時から気付いていたの?」
「初めから…ウォルバクと同じ“邪神の力”がキミの周りにもあったからね。確か名前はレジーナ…でよかったっけ?」
「……そうよ」
「それで怪しく思ってバニルの力を使ってみたら…キミが魔王軍幹部だって分かったのさ」
「なるほど……」
結構素直に答えてくれるな。
まぁ「嘘を見抜く魔道具」が手元にあるわけだし、当然と言えば当然か……。
でも、それにしたって少し落ち着きすぎな気がするんだけど………あ、そういうことね。
「でもねカービィ、私が今までにどれだけの“貸し”を作ってきたと思う?今の状態でもそれを使えば」
「ちょっとちょっと、仮にもキミ魔王軍幹部でしょ?仲間のスキルくらい、覚えてないの?」
「は?」
「『カースド・ダークネス』だよ!色んな呪いをかけられるアレ!」
「色んな呪い……ってまさか!?」
「そういうこと。バニルの呪いの力で、キミのスキルは既に封じてあるんだ」
「じょ、冗談でしょ!?そんなことって…」
「冗談でも夢でも幻でもないよ……あ、そうだ!どうせだから、あのスキルも試してみよう」
「ち、ちょちょ、ちょっと待って今度は何する気なのこれ以上私に何を」
「えいっ!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……………!!!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
………暫く続けてみたけど、未だに“納得のいく結果”が出てない。
何だって今回こんなに調子が悪いんだろう?
いくら効果がランダムなスキルといっても、ここまで出ないなんてことがある?
ボク自身もの凄く運が良いのに……もしかして、エルロード国のカジノで使いすぎたとか?
いやそれはないな、だって運使う機会があったのはポーカーの最初の手札ぐらいだもん。
そんなことを考えてるうちに、騒ぎを聞きつけたゆんゆん達が警官と一緒に入ってきた。
「カービィさん!一体何ですか、さっきから聞こえてくる叫び声は……って」
「お、おいカービィ!!お前そいつに何をしたんだ!?これじゃただの拷問だろう!!」
「拷問って…勘違いしないでよダクネス。単にスキルの調子が悪いってだけ!」
「調子が悪いと言いますけどカービィ、一体どんなスキルの調子が悪かったらこんな悲惨なことになるんですか?」
「リッチーのスキル『不死王の手』だよ。相手に触れることで毒・麻痺・昏睡・魔法封じ・レベルドレイン、この5つの状態異常どれかをランダムで相手に与えるってやつさ。あ、因みに直接触るだけじゃなくて、剣などを通して間接的に触ってもいいらしい。それでボクはレベルドレインを掛けたくて何度も試してるんだけど…何故かレベルドレインだけ出なくて…」
「なるほど……それでこんなに顔色悪くしてぐったりしているわけか」
「うん」
因みにこのスキルはつい最近…というか昨日ウィズの店で手に入れたものだよ。
「因みにですけど、何回くらい試したんですか?」
「12回」
『じゅっ!?』
「なのに全然うまくいかなくて…」
「は、はあ………」
「ん~~、もしかして何かコツみたいなのがあるのかな?」
「コツ?」
「例えば触り方が違うとか…」
「っ…カービィ!言い方!言い方をもう少し考えなさいよ!」
「…は?」
アクアの最後の言葉がよく分からなかったけど、取り敢えず実践してみることに。
今回は今までより慎重に、そ~っと手を触れてみる。
「…そんなことで何か変わると、本気で思っているのか?」
「ものは試しだよ。こういう意外なところに答えがあったりするか……ん?」
……なんか今までと違う感じがする。
さっきまではボクがスキルを使うたびに悲鳴があがってたのに…今回はそれが一切ない。
ってことはもしかして…?
ボクは恐る恐るセレスディナの懐から冒険者カードを取り出して確認してみた。
レベルは……1だ。
「お、上手くいったみたい。レベルドレイン、成功だ!」
「何ぃ!?」
「ま…まさか本当に触れ方に問題があった!?」
「いやいや偶然だと思うぞ」
「まぁ何はともあれ無事に済んだわけだし、ここからは普通の取り調べだね」
「は?何でよ、今のうちにもう少し何か探ってみたりとかしないの?」
「まだそこまで深入りするのは早いと思うの……」
そんなわけで、ボク達は警官の取り調べを部屋の外から聞くことに。
セレスディナは取り調べ中ずっと、魂が抜けちゃったみたいに無表情で淡々と質問に答えていく。
多分「不死王の手」のせいだろうね。
ただ………内容そのものは喜ばしいものじゃなかった。
何とセレスディナは本気でアクセルを攻めるつもりはなかったらしい。
自分はあくまで囮……ボクをアクセルに釘付けするのが目的だって。
となると本当は何処を攻めるつもりなのかってことだけど……それは紅魔の里。
しかも魔王軍を率いているのは………魔王の娘だって!
とうとう今までにないほどの強敵出現!?
ゆんゆんとめぐみんは話を聞いた瞬間、分かりやすく凍り付いてた。
でも立ち止まってるわけにはいかない。
ボクは2人を無理矢理引っ張りながら自宅に戻り、早速準備を始めた。
…………そんな時だった…「アイツ」がふらりとやってきたのは。
次回予告
遂に魔王の娘までが動き出し、混沌とした戦いに身を投じなければならなくなったカービィ達。
そんな中、カービィにとって更に悩ましい事態が!?
それは魔王の娘に関する忠告をしてきた意外な人物によるものだった。
果たしてカービィは、この異常事態にどう立ち向かうのか!
次回「悪党達の謳歌」