【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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カービィが強力だからか、アクアが空気化してると感じ始める今日この頃…本人は自覚してるでしょうか?
因みに本日は伏線回収回…何話の伏線か分かりますかね?
4月以降は、書けるとしても日曜日くらいしか時間がとれないです…。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第16話 我儘と王と前線と

初夏のある日、ボクは自宅の一室で呆然と立ち尽くしていた。

今いるのはアクアの部屋。

なんだけど……今までとはちょっと違うんだよね。

何が違うかといえば………。

 

『ピヨピヨピヨ~』

「…えっと、アクア…何これ?」

「フフン、バレちゃあしょうがないわね。私が丹精込めて卵から孵したドラゴンよ!名前も考えてあるの。『キングスフォード・ゼルトマン』!略するなら『ゼル帝』ね」

 

……どっから見てもヒヨコにしか見えないんだけどな~。

ホントにこれがドラゴンの子供…所謂「ドラゴンパピー」なのかな?

ドラゴンなのに何で“パピー(子犬)”なのかとかは置いといて………詳しく話を聞いてみると、1ヶ月くらい前に旅の商人から卵を買ったらしい。

200万エリスしたんだとか。

そして今という今まで、皆に内緒で魔力を込めつつ温め続けてたんだとか。

因みに魔力を込めたのは、そうすることでドラゴンはより強くなるという言い伝えがあるとのこと。

まぁそれはともかく、普段何もかもいい加減なアクアが毎日欠かさず卵を温め続けたってのは意外だよね。

とはいえ………これ、どうしようかな?

温める時に魔力を込められただけあって、この子の周りからチョットだけ魔力を感じる。

それはいいとして……一応調べておくか。

 

「『フォーメーション・バニル』!」

「え…ちょっと、何する気!?」

「う~ん……アクア、やっぱりこれ只のヒヨコだよ」

「そうでしょうそうでしょう!将来立派なひよ……………ってえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」

「バニルの力で見通した結果だから、間違いないよ。完全に騙されたね」

「ちょっと待った!ウソでしょ!?ウソよね!?頼むからそう言ってよぉ!!」

 

今にも泣きそうな顔ですがりついてくるアクア。

でもこれは流石に……ね?

 

「残念だけど、本当にヒヨコだよ正真正銘の」

「そんなぁ………」

「あ、でも温める時に魔力込めたんだよね?もしかしたらその影響で何かしらの変化があるかも」

「ハッ、そ、そうよね!それならまだワンチャンあるわよね!?もしかしたら…」

「まぁ『コカトリス』とかにならなきゃ問題は無い…かな?」

「へ?こか…何て?」

「コカトリスだよ。蛇の王『バジリスク』と雄鶏の交配で生まれたと言われてる、ニワトリの身体と蛇の尻尾を持つモンスター。バジリスクみたいにアイコンタクト1発で相手を殺す能力は無いけど、石化能力はあるらしいし…」

「ちょちょちょ!そんな怖いことをサラッと言わないで!!」

「まぁ何にしても、取り敢えず皆にこのことを伝えないと。今更隠しとく必要も無いでしょ?」

 

というわけで、ゆんゆん達にゼル帝をお披露目してから、今後の扱い等について皆の意見を聞くことに。

一応ボクの見解も話しておいた。

 

「ふむ…まぁいいんじゃないか?今のところ何も異常は見られないんだろう?」

「そうですね。カービィの心配事も一理ありそうですが、少なくとも私はコカトリスなどという生き物のことは1度も聞いたことがありませんから、単なる空想上の生物の話ということでいいと思いますよ?」

「だと良いんだけどね……」

「大丈夫ですよカービィさん。少なくとも今はただのヒヨコですし、それに……」

「「ふわふわ~~」」

「ベルとミルが結構気に入ってるみたいですし」

 

ゆんゆんの言う通り、ベルとミルはよっぽどゼル帝が気に入ったのか、2人とも夢中でゼル帝に抱きついてる。

 

「ちょっとあんた達!そんなにギューギューやったらゼル帝が可哀想じゃない!ほら嫌そうな顔してるじゃないの!いい加減は慣れなさいってば!!」

 

いや締め付けてる感じはなかったけど?

それにゼル帝はむしろ気持ちよさそうだったよ?

ていうか今更かもしれないけど、ゼル帝の世話をアクアに任せっきりでいいのかな?

何かあることないこと吹き込まれて、おかしな方向に行っちゃったりしたらヤダな……。

 

「そうだ!だんだん暑くなってるしさ~、久しぶりにドックに行かない?こめっこも一緒に」

「「「へ!?」」」

「どっくって何?」

「ここらで唯1つの港町だよ。あそこから見える海はまさに絶景さ。こめっこは海って見たことないでしょ?」

「うん、見たい見たい!」

「「私達も~!」」

 

さっきまでアクアとやり合ってたベルとミルが食いついてきた。

どうやら「例の件」を引きずってるらしい……。

まぁそれはともかく、ゼル帝を引き合いに出して駄々をこねるアクアを何とかなだめ、満場一致でドックへ向かうことに。

因みにミュイは留守の間のゼル帝及びちょむすけの世話役を名乗り出た。

彼女曰く、里帰りは年1度のペースで十分らしい。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

前回、自宅で働き詰めのミュイ達を労っての旅行はお忍びで来たんだけど、今回は堂々と来たもんだから住人やギルドの冒険者達から結構熱烈な歓迎を受けた。

始めのうちは何故歓迎されてるのか分からない様子のこめっこだったけど、ゆんゆん達からボクがこの港町に残した功績や石像に関する説明を受けると、こめっこは納得するとともに目の輝きが増していった。

あそうそう、石像で思い出したんだけど…紅魔の里にボクが設置した紅魔族の起源に関するちょっとした展示ブース、アレは無事だったよ。

立地的に結構辺鄙な場所だったのが功を奏し、魔王軍が来なかったらしい。

それは置いといて、ここに来たからには海水浴を楽しまないとね!

というわけで、早速衣類販売店へ向かうことに。

といっても港町ドックでは、衣類販売店と武器屋が一緒くたになってるから、便利といえば便利なんだよね。

勿論、ボクが広めた水着も販売されてるよ。

中には軽装甲が施された水着もある。

海辺での討伐依頼に対応するためらしい。

こめっこが買ったのは、ちょっと暗めのピンクと黒のツートンカラーでスカート付きのワンピースタイプ。

そして……ベルとミルも、念願の水着を手に入れた。

何しろ彼女達ウッドエルフは凄く珍しい存在だから、この前来た時には置いてなかったんだよね、彼女達に合う水着。

だからその時、店の人にウッドエルフ用の水着も用意してって頼んだら……やっぱり頼んでみるもんだね。

ゆんゆんが持ってるのと似たタイプだけだけど、用意されてたんだ。

ラップタオルとセットで買い、備品も幾らか買い込んで準備完了っと。

 

「う~みだ♪うみだ~~♪」

 

よく分からない歌を歌いながら砂浜ではしゃぐこめっこ。

皆より先に波と戯れるベルとミル。

見れば、ボク達と同じように海水浴をしに来たと思われる人がちらほらいる。

ボクが伝えたビーチパラソルは結構役立ってるみたい。

だけど流石にビーチボールは上手く再現できなかったみたいだね。

近くにいた男の子達が使ってるボールは、一枚布をボール状にして特別な接着魔法みたいなので形を保ってる感じ。

他には、風船を分厚くしたようなゴムボール………種類的にはそれくらいのもの。

そもそも、ボクが持ってるみたいな“内側が透けて見える”って構造自体が難しいらしい。

まぁでも水にはちゃんと浮くみたいだし、問題は無いと思う。

あそうそう、上手くいってないと言えば缶詰もそうだ。

未だに出回ってるのを見たことが無いんだよね。

……まいっか、それはともかく今は海水浴を楽しもう!

 

「ブ~~~ッ!ペッペペッペ!」

 

な~んて思ってた矢先、どうやらこめっこが海水を飲んじゃったらしい。

あそっか…この世界の海は陸より危険だから、海の水がしょっぱいとかいうこともあまり知られてない感じか。

 

「ペッペッ、思ったより塩からい!!」

 

……いや、知識としては存在してたみたい。

こんな感じで暫く海水浴を楽しんだボク達。

すると突然、波を割ったような音とともに海面から大きな影が姿を見せる。

それは引きずるような音とともに浜辺へ上がってきた。

 

「「「「「……ジャイアントオクトパス!?」」」」」

 

そう…影の正体はジャイアントオクトパス。

近海に危険なモンスターが侵入するのを阻止している、言わずと知れた港町の守り神だ。

それにしても、一体何をしに来たんだろう?

子ダコ達まで引き連れて。

暫く観察してみたんだけど、どうやら観光してるみたいなんだよね。

ジャイアントオクトパスが脚を使って指し示す方向に子ダコ達が視線を向ける……まるでガイドさんとツアー客みたい。

少なくともボクにはそう見えた。

 

「ぎゃああはははははは!!」

 

突然上がった笑い声の方を見れば、いつの間にか1匹の子ダコがこめっこにへばり付き、それをベルとミルが引き剥がそうとしてる。

まぁ結局2人も一緒にくすぐり攻めを受けたわけだけど。

いくら子供とはいえ、ジャイアントオクトパスの吸盤は強力そのもの。

結局親が駆けつけるまで、子ダコがこめっこ達から離れることはなかった。

 

「んもう、ひどい目にあった!」

「まあまあ、人のことを知らない小さな子ダコのかわいい悪戯じゃないですか。そう気にすることでもないでしょう?」

「そうだよ。めぐみんなんて、もっとひどい目にあったことあるし…ね」

「っ……そうそう、そうですよ!」

「む~~~~………」

 

ギルドで昼食を食べてる間、こめっこはずっとむくれてた。

取り敢えずフォローを入れてはみたけど、あまり効果はないらしい。

ふと浜の方を見れば、ジャイアントオクトパスは勝手な方へ行こうとする子ダコを引き留めたり、他の人に絡む子ダコを引き剥がしたりでてんてこ舞い。

子だくさんって大変だなって思った。

とここで、ギルドの職員と思しき人が声をかけてきた。

 

「失礼、ちょっとよろしいでしょうか?」

「ん?何?」

「実は、カービィさんへの依頼が来ておりまして…」

「ボクに?どれどれ…」

 

アクセルならともかく、こんな遠く離れた港町でボク個人への依頼が来てるなんて。

取り敢えず内容を確認してみると……どうやら町の近くでドラゴンが目撃されたらしい。

でもって事実確認のための調査、場合によっては討伐してほしいとのこと。

皆にも依頼の紙を見せ、意見を聞いてみることに。

 

「…どうしようか?」

「別に聞くことないじゃない。アンタ1人で調査すりゃいいのよ」

「おいアクア、いきなり何を」

「だってそうじゃない、ダクネス。今までこの手の調査って全部カービィが1人でやってたでしょ?なら今回も同じ感じでいいじゃない!」

「あー、自分だけ楽しよーとしてる~」

「んなっ!?ち、違うわよ!何言ってんのこの娘は!?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

まぁコントはさておき、今回はゆんゆんと組んで行くことに決定。

聞けばゆんゆん、レベルアップのために1人で討伐依頼を請けたり、貯金を崩してスキルアップポーションを買ったりして、貯めたポイントで「テレポート」を習得したらしい。

というわけで、早速調査に出発。

目的地は山々に囲まれた密林の一番奥。

とはいえ、「エスパー」のテレポートなら何の問題もない。

目的地付近に移動して、ボクとゆんゆんはドラゴンの痕跡を探す。

でも足元はぬかるんでるし、大木の枝が知恵の輪みたいにこんがらがってるせいで、昼間なのにすごく暗い。

 

「……こりゃ手がかり見つけるの難しそうだね」

「そうですね、こんなに暗いとどうにも…それに、そこら中大木だらけで前もよく見えませんし…」

「…仕方ない、こうなったら奥の手を」

「あ、ちょっと待ってください!」

「どうしたの?」

「しっ!」

 

ゆんゆんが耳を澄ましてるのを見て、ボクも聞き耳を立ててみた。

すると………微かだけどドラゴンの泣き声と羽ばたく音がする。

ふと上を見れば、木漏れ日を遮る巨大な影がボク達の頭上を通過。

 

「…ドラゴン、いるね」

「はい」

「よし、行き先を調べつつ向かおう!『フォーメーション・バニル』!」

 

バニルの力でドラゴンの行き先を特定すると、すぐにそこへ向かう。

勿論、エリス様から貰った「例のテレポート」でね。

周りが密林で覆われてるのに、そこだけは開けた平地になっていて、そこに大きめの岩で囲まれた場所があった。

中を覗けば、そこには20個近い数の卵が。

 

「なるほど、ドラゴンの巣ってこんな感じなのか」

「私も初めて見ました!ドラゴンって皆、こんな感じで巣を造ってるんでしょうかね?」

「さぁ、どうだろう…………っと、そろそろ離れよう。ドラゴンが来る」

 

ボク達は大木の陰に隠れて様子を窺うことに。

そう間もなくしてドラゴンが巣に戻ってきたので、バニルの力で詳しく探ってみた。

………あれ?このドラゴン……

 

「あの~カービィさん…あのドラゴン、様子がおかしくないですか?その…元気がないというか……」

「その通りだよ、ゆんゆん。あのドラゴン…かなり年老いてるみたい…」

「なるほど、おばあちゃんでしたか。だからあんなに…」

 

こんなやり取りをしてる間にも、ドラゴンは苦しそうな息遣いがどんどん酷くなっていく。

 

「あそうそう、言い忘れてたけどアレ……テナガドラゴンだよ」

「…………っ!て、テナガドラゴンって…」

「そう、例のドラゴンさ。ホラ、前足…じゃない、腕が今までのドラゴンより倍近く長いでしょ?」

「い、言われてみれば確かに長い……ああ、それより見てください!何かだんだん弱ってきてるような…」

「……気が付いた?そう、あのドラゴンは今日…………」

「…まさか」

 

ゆんゆんが再びドラゴンに目をやった瞬間、テナガドラゴンは突然力が抜けたって感じで倒れ込んだ。

この時テナガドラゴンは、卵が自分のお腹の下にくるような立ち位置だから、そのまま倒れ込んだら卵を潰すことに。

でも最後の力を振り絞り、テナガドラゴンは胴体を思いっきり右にひねって、卵の右隣りに倒れた。

お陰で卵は全て無事。

ここでボクは再びバニルの力を使う。

とここで、ゆんゆんが飛び出そうとしたので引き留めた。

 

「ちょっ、何で止めるんですかカービィさん!早く卵を」

「ゆんゆん、あのドラゴンはまだ生きてるんだよ?今飛び出しても追っ払われるに決まってるじゃないか!」

「で、でも………」

「それにさ、見てよあの卵。50個もある」

「そ、そうですよ。だから守ろうと」

「無駄だよ、ほとんどは大人になる前に死んじゃうから。バニルの力で見通した結果だから、間違いない」

「ど、どうしてそんなことに…?」

「そもそもテナガドラゴンは、卵から生まれて暫くの間、病気とかにとても弱いんだって。というより、正常な免疫を持って生まれるのは10個に1個も無いんだよ。現にあの50個のうち、無事大人になれるのは4個だけなんだ」

「4個………そんなに少ないんですか…」

「まぁそんなわけだから、守るにしてもその4個だけにしといた方が良いよ」

「そうですね、ちょっと名残惜しい気もしますけど、この際仕方ありません」

 

そして間もなく、テナガドラゴンは静かに息を引き取った。

早速ボクは卵の選別にかかる。

 

「こっちの2個がオスで、こっちのがメスっと……これだけは大事に孵してあげないとね」

「はい!」

「……とは言ったものの、このままじゃ卵が冷えちゃうし…取り敢えず布か何かで包んどいて、ギルドに報告し終えてから回収しようか」

「なるほど、確かに安全ですね」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

というわけで、ありったけの布を用意して4個の卵を丁寧に包んでから、残りの46個をお腹の中に収めてギルドに戻った。

すると早速、受付の人が駆け寄ってくる。

 

「お帰りなさい、カービィさん。ドラゴンはいましたか?」

「うん、いるにはいたよ…」

 

言った瞬間、ギルド内がざわつき始める。

 

「そ、それで…ドラゴンはどうなりました?」

「ああ、今日が寿命だったみたいで、討伐する必要は無かったです」

「そうそう、しかもいたのはテナガドラゴンだったよ」

 

ここまで言った時、何かが崩れ落ちるような大きな音がした。

見ればダクネスが椅子ごと後ろに倒れたみたい。

一方エルロード国でテナガドラゴンの話を聞いたこめっこは、期待に目を輝かせる。

ダクネスは崖登りするみたいに立ち上がり、ボクの方に迫って来る。

 

「て、て、て、テナガドラゴンだとぉ!?ほ、本当なのか!?」

「うん、間違いなくテナガドラゴンだった。すぐ分かるもん。体の長さに対する腕の長さが、エンシェントドラゴンとかより倍くらい長かったから」

「そ、それじゃまさか……」

 

ボクは口から卵を十数個出してみせた。

ギルドにはボク達以外にもテナガドラゴンを知ってる人がいるらしく、何人かが目を見開いてる。

 

「卵もこの通り、手に入れたよ」

 

当然ギルド中が大歓声に包まれた。

耳塞いどいてよかったよ全く……。

それが大分収まってきた時、今度はめぐみんが迫って来た。

 

「あ、あの…これ全部その…テナガドラゴンの卵なんですか?」

「そうだよ。というのもね…」

 

ボクがテナガドラゴンの生態に関して一通り説明すると、めぐみんは同情するかのような顔で何度も頷く。

するとここで、何故かゆんゆんが会話を引き継ぎ始めた。

 

「生まれてくる子が育ちにくいが故に、死ぬまで産み続け、育て続けなくてはいけない、と……」

「そうよ、めぐみん。現にカービィさんが出した卵も、仮に産まれたとしたって大人になる前に死んじゃうのばかりだから……あ、でも大丈夫よ。無事に育つ卵は別の場所に移してあるから」

「なるほど…それで結局、その卵はどうするつもりなんですか?」

「カービィさんと話し合って、育てることに決めたわ」

「そういうこと。それじゃ…」

 

ボクはテーブルの上に立ち、声を張り上げてギルドの皆に伝える。

 

「それじゃ皆、これは置いてくから味わって食べてね!オムレツなら1個につき5人前、1人前で普通の食費50年分の価値は下らないともっぱらの噂になってる、伝説級の逸品だよ!」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」

 

最早言葉にすらなってない大歓声が響く冒険者ギルド。

何だって皆、こんなに大声出せるわけ?

ていうか耳大丈夫なのかな?

そんなボクの疑問をよそに、ギルドの奥では料理の準備が進められている。

今更だけど、皆お昼食べたばかりじゃない?

ボクやこめっこは別として……まいっか。

ギルドの人達は卵料理に意識が行っちゃってるし、残してきた卵も早めに回収しないと。

ボクがゆんゆん達に帰ることを伝えると、こめっこが不安顔で寄ってきた。

 

「あれ?みんなと一緒に卵食べないの?」

「そうだよ。あ、まだここに残ってるから大丈夫」

 

卵がまだ残ってると知るや否や、こめっこの目が輝いた。

今までと違って食べ物に困らない生活してるのに、食欲は相変わらずだな。

まぁボクとしても、こんな異世界で自分と同じような人に出会えるなんて思いもしなかったけど。

 

「それにホラ、無事に育つ方の卵も放っておくわけにいかないしさ。卵料理はその後でね」

「わかった~」

「よし、それじゃ『エスパーカービィ』!」

 

ということで、包んでる布ごと卵を回収して自宅に戻ってきた。

食用の残りは34個あったから十分でしょ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あそうだ!今日はボクが卵料理作るよ」

「んん!?いきなりどうしたカービィ、何故また急にそんな提案を?」

「だってあの時、無事に育つ卵を鑑定するついでに、ドラゴンの卵の調理方法とかも探ったんだもん」

「……お前という奴は、相も変わらず食べ物に関しては全く抜け目が無いな」

「あそうだ!ついでに『フォーメーション・バニル』!」

「こ、今度は何だ!?」

「いいからいいから!」

 

そう言ってボクは、皆の好きな卵料理を調査する。

その結果

ダクネス:スクランブルエッグ

めぐみん、アクア:ゆで卵

ミュイ:目玉焼き(あくまで興味本位)

ゆんゆん、こめっこ、ベルとミル:何でもOK

とのこと。

取り敢えず、ゆで卵は1個で十分でしょ。

目玉焼きも、ミュイが食べきれない分はボクとこめっこが頂くとして、こめっこ含む4人には卵焼きを振舞ってみようっと。

 

「『コックカービィ』!」

 

このコピー能力があれば料理が捗る捗る。

スクランブルエッグ1人前、ゆで卵・目玉焼き共に5人前、卵焼き34人前

あっという間に完成だ……というか、卵焼きちょっと作りすぎたかな?

 

「あ、あの~…カービィさん?私達まだ、お昼食べたばかりなんですが?」

「大丈夫だよ。余った分はボクとこめっこで片付けるから」

「早く食べた~い!」

「ね?」

「………はい」

 

というわけで早速食べてみると………何じゃこりゃ!?

冗談抜きの良い意味で期待を裏切る味だよこれ。

普通の卵に比べて味が元から凄く濃い!

しかもジューシーでまろやか且つボリューミー、何よりしつこくないのかミソ。

追加で味付けとかしなくても普通においしいんだよね。

他の皆も一口食べた途端、お昼食べたばかりってことをすっかり忘れたかのようなペースで食べ始めた。

特にめぐみんとアクアが2人して巨大ゆで卵にかぶりつく様は、今まさにベルとミルが卵焼きにかぶりついてるのと被っててなんか面白い。

まぁ結局のところ、ボク達の卵焼きを除けば完食はスクランブルエッグのみで、残りに関してはベルとミル、こめっこ、ゆんゆんの順にちょっとずつつまんでから、最後にボクがまとめて片付けた。

 

「さて、これで残り25個っと……」

「どうしますか?」

「取り敢えず、3個くらいイグニスさんの所に届けようかな?」

「父上の所にか?ま、まぁ喜ばしいことではあるが、何故急に父上の名が出たんだ?」

「だってイグニスさん、食べたことないって言ってたじゃん」

「え?お礼じゃないんですか?」

「お礼って?」

「ほら、以前ご馳走してもらった…」

「あれは手柄の対価なんだからノーカンだよ」

「アッハイ……」

「でもって、残りはアイリスの所かな?ちょっと相談したいこともあるし」

「相談?何のですか?」

「ほら、アクアが鶏の卵温める時に魔力を込めたって言ってたでしょ?一応周囲にモンスターを寄せ付けない程度には効果があるらしいから、ひょっとしてドラゴンの卵に魔力込めたら、もっと良いことが起きるんじゃないかと思ってね」

「ああ、なるほど。それにアイリス王女は『ドラゴンナイト』でしたよね確か」

「そういうこと。それじゃちょっと行ってくるね!」

 

よく出入りしてるからか、ダスティネス邸の門番の人達はボクが来ても特に何の反応も見せないんだよね。

せめて一言くらい挨拶してくれてもいいと思うんだけど…。

それはともかく、部屋に通されるとバルターさんも一緒にいて、何やら話し合ってたらしい。

 

「おお、これはこれはカービィ殿。本日は何用で…」

「まぁそこまで大した用事じゃないんだけど、珍しいものが手に入ったからおすそ分けしようと思って」

「珍しいもの?」

「そう、これだよ」

 

ボクは口から卵を取り出す。

 

「ん……これは一体?」

「決まってるじゃん。『テナガドラゴンの卵のオムレツ』食べたこと無いんでしょ?」

「……ま、まさか…本当かね!?」

「うん、今日取れたてのおいしいとこ、だよ」

「こ、これを届ける為だけにわざわざ?」

「そうだよ。これからすぐ向かわなきゃいけない所があるから、それじゃ『エスパーカービィ』!」

「あ、あの、ちょっとお待ちくださいカービィさん!」

 

テレポートしようとした時、バルターさんが声をかけてきた。

 

「どうしたの?」

「…これを、ララティーナさんに渡して頂きたいのです」

「おっと……この剣を?」

「はい。彼女の剣の腕を磨くべく努力を続けて早1年、ようやく成果が出始めました。そこでイグニス様と話し合った結果、彼女に再び剣を持たせることに決めた次第です」

「へ~…まいいや、取り敢えず持っていくよ」

 

手にした剣は、明らかにダクネスが最初に持ってたのより高価そうな見た目をしてる。

流石にこれを口の中に入れるのはよした方が良いね。

他の物に当たって傷ついたら大変そうだ。

というわけで、両手で持ったままテレポート。

出迎えたのはベルとミル。

 

「カービィ、お帰り~!」

「その剣は何?」

「ダクネスに渡すのさ」

 

するとここで、偶然にも近くにいたらしいダクネスがやってきた。

 

「私に渡すものがあるとか言ったか?」

「そうだよ。イグニスさんからこれを渡してくれって」

「っ!!?こ、これは………」

「?どうしたの?…もしかしてその剣、ダスティネス家の家宝だったりする?」

「いや、家宝ではないのだが……王都の武器屋で目を付けていた剣なんだ…」

「ええ!?ガンバさんの店に置いてたの?」

「ああ…」

「ふ~ん、取り敢えず持っとけば?折角許可が貰えたんだし」

「勿論そうするさ!」

「さてとそれじゃ……あ、ちょっと待って!そうだよ、アイツにも協力してもらえないかな?」

「アイツ?」

「ちょっと行ってくるよ!ダクネス、卵の番は頼んだよ。特にアクアがつまみ食いしないように見張ってて!」

 

そう言ってボクは「例の火山」で約束を取り付けてから、再びアクセルに戻ってゆんゆん達と王都へ向かった。

持ってきた卵の数と土産話で、アイリスは頭が破裂しそうになってるっぽいねこりゃ。

 

「お~い、アイリス?」

「……………ハッ!す、すみません。色々言われたらちょっと…」

「…『クリエイトウォーター』」

 

ボクは近くにあったグラス(ゴブレット?)に水を注いでアイリスに手渡す。

 

「あ、ありがとうございます……」

「別に構わないよ…それより本題だけど、無事に育つ卵を温めるのに、アイリスの力を借りたくてさ」

「私の力を…ですか?」

「そう。鶏の卵に魔力を込めると、周囲にモンスターを寄せ付けない力を持つヒヨコが生まれることが分かったんだ。それで、ドラゴンの卵に同じことをしたらもっと凄いことが起きるんじゃないかと思ってね」

「な、なるほど…それで、その卵というのは…」

「ココだよ」

 

布で何重にもくるまれて、冷えないように対策された4個の卵。

この気合いの入れように、アイリスはまた気が動転しそうになる。

 

「……卵4つだけなのに、随分とこんもり…していますね」

「ありったけの布を使ったからね。あそうそう、今回のことだけど、実は別の協力者もいるんだ。もうそろそろ到着する頃だと思うんだけど………」

『……ッサバッサバッサ!バッサ!!バッサ!!!』

「お、丁度来たみたい」

「丁度来たって……あの羽音はまさか!?」

 

全員でバルコニーに飛び出すと…そこから見えたのは、今まさに防護壁の外に着地しようとしてるランディア。

王都の人達が騒いでるから嫌でも目立つね。

 

「べ、別の協力者って彼のことですか!?」

「そうだよ。住んでるところが違うけど、同じドラゴンだし……あそうだ!黄金竜にも協力してもらえないかな?」

「黄金竜にですか?………お気持ちはお察ししますが、恐らく黄金竜に“魔力を供給”などという芸当は無理かと…」

「無理か…まいいや。取り敢えず行こう」

 

ということで、ランディアの着地場所にテレポートして準備開始っと。

 

「あそうそう、聞いとくの忘れてた。ねぇアクア、魔力の込め方には何かコツとかあるの?」

「コツぅ?んなもの知るわけないじゃない!適当に込めてりゃいいっておっちゃんも言ってたし」

「ふ~ん、適当でいいのか…でもまぁ、無事に育つことを祈っといた方が良いかもね」

「それって何か意味があるんでしょうか?」

「さあ?でも何もしないよりマシでしょ。料理だって、愛情込めて作るとおいしくなるって言うし」

(確かに一理あるな。「思う一念岩をも通す」とか言ったか……心というものは時として、想像もつかないような奇跡を引き起こすことがあるからな)

「何か分からないけどおもしろそう。こめっこもやる~!」

 

こめっこに続き、ゆんゆんも名乗りを上げた。

そしてそれぞれが、布に包まれたままの卵を囲んで一斉に魔力を放つ。

あいや、ランディアはちょっと違うかな?

正しくは、王冠「マスタークラウン」から僅かに放たれる“絶対の力”………で合ってるよね多分。

そんな感じの(今思い返せば、怪しげな儀式に見えなくもない)ことを暫く続けてるうちに…ボクは凄いことに気付いた。

卵を包んでた布が、少しずつ膨らんできてる。

というかこれは……卵が大きくなってるのかな?

気になったボクは皆に一時中断を呼びかけ、「フォーメーション・バニル」で卵を調査。

すると、もっと凄いことが判明したんだ。

 

「……あ~…なるほどね。どうやら魔力を入れ過ぎたらしい」

「「「ええ!?」」」

(?どういうことだ?)

「要するに、普通ならこの卵には収まりきらないほどの大量の魔力が入り込んで、今まさに行き場のない魔力が中で渦巻いてるって感じなわけ。その魔力の影響で、卵が大きくなったらしい」

「そ、それで……無事に生まれてこれるんでしょうか?」

「ああ、それに関しては問題無いよ。それどころかボク達が込めた魔力で、急速成長したみたい。多分だけど、明日か明後日ぐらいには産まれるんじゃないかな?」

「そんなにも早く!??」

「何にしても、取り敢えず一旦戻ろう」

 

ってことで、応接間に戻ってきたボク達。

まぁあんまり目立つようなことしてもメリット無いし…。

あ、因みにランディアは王都周辺の散歩に出かけてる。

普段マグマと岩しか見ないから、緑と触れ合うのは意外と楽しいらしい。

とここで、アイリスが口を開く。

 

「あ!そうそう、話は変わりますけどカービィさん……その~、可能であればもう一度ロボボアーマーをお貸しいただけないでしょうか?」

「へ?どうしたの急に?またエルロード国にでも行くの?」

「いえ…向かう場所は『砦』です」

「砦?」

 

アイリス曰く「砦」とは、魔王軍と衝突する最前線の場所のこと。

王都から歩いて大体2日の距離にある平原に位置し、強固な城壁に囲まれてる。

そこには王国の騎士団や勇者候補達が駐在してて、森の中にある魔王軍の前線基地と睨み合っているらしい。

因みに、王都から砦までの中間地点に温泉宿があるとのこと。

でもボクにとってもっと重要なのは、魔王軍の前線基地に邪神ウォルバクがいるってことだ。

何でも連日の爆裂魔法で城壁が損傷したり、駐在してる人達が攻めあぐねたりしてるらしい。

これはもしかしたら、結構好都合じゃないかな?

うまくいけば、ウォルバクを魔王軍から引き離せるかもしれない。

 

「それで、明日には出発する予定なのですが……急で申し訳ないですけど、お願いできないでしょうか…」

「なるほどね…別にいいよ。戦いの最前線ってことなら、万全の準備をするに越したことはないし。それでアイリス、黄金竜はどうするの?」

「勿論連れて行きます。だって私、『ドラゴンナイト』ですから!」

「でも、そうだな~…よし、念のため『エンジニア』に声掛けしとこう!あとランディアにもね」

「「「エンジニア?」」」

「……ああ、もしかしてスージーさんのことですか?」

「そうだよ。それでアイリス、砦にはいつごろ出発するの?」

「明日の9時頃を予定しています…」

「明日の9時か…ランディアはまだ帰ってこなさそうだし、まずはスージーだね!」

 

というわけで、ボクは一旦プププランドに戻ってスージーのもとへ。

コンピューターと睨めっこしてて、誰が見ても忙しそうな雰囲気だったのに、ボクからの協力要請だと知った途端に満面の笑みで2つ返事を返してきた。

それも「待ってました!」と言わんばかりに。

後で知ったことだけど、スージーは勤務中ずっとあんな感じらしく、周りの人達に「仕事してるのか休んでるのかの区別が未だにつかない」と言われるほど。

まぁそれはさておき、スージーを王都まで連れてきたボクは、間髪入れずに別の場所へ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「『エンジェルカービィ』!」

 

…なんかここ最近、この能力を発動するとおかしな感覚に陥るんだよね。

何て言えばいいか分からないけど……周りにいる人の、宗教がらみのことが何となく分かるようになってきてるんだ。

ひょっとして、エリス様と長いこと付き合ってるせい?

とはいえ、そのおかげもあってかクリス(エリス様)の居場所も何となく分かるから、結果オーライってことにしよう。

クリス(エリス様)が1人になったタイミングで、ボクはいつかみたく背後から声をかける。

 

「エ~リ~ス~さ~ま~?」

「っ!!??」

「ウォルバクに関する一件、あれからずっと音沙汰無しですが、いい加減お答え頂けませんかねぇ~?」

「……あ、あの~カービィさん…まだ近くに人がいるんですから大きな声で呼ばないで下さいよ!」

「まだなんですか?」

「…はい。ちょくちょく上司に確認は取っているんですが、未だ答えは出ていないようです」

「ではその上司にお伝えください。『猶予は明日の9時までだ』と」

「あ、明日の9時!?どうしてそんな急に…」

「王女アイリスが王都を発ち、砦に向かうからです。無論ボクも同行することになっております。ご存知かと思いますが、砦と対峙している魔王軍の前線基地にはウォルバクがおり……ここまで言えば、もうお分かりですよね?」

 

というか分かってもらわないと困るんだけど…。

まぁ冷や汗ダラダラな時点で、その心配は要らないとは思うけどね。

クリス(エリス様)は何か言おうとしたみたいだけど、上手く口が動かせないほどパニックになってるみたいで、結局ボクに深くお辞儀するとそのままどこかに行っちゃった。

ボクが言ったことをちゃんと伝えてくれるのか心配だけど、皆をこれ以上待たすわけにもいかないので、ボクは応接間まで戻ってきた。

 

「おお、カービィ!一体どこに行ってたんだ!?」

「もしかして、またエリス様に…?」

「そういうこと」

「そうだ、カービィさん。ランディアさんには私の方から伝えておきましたよ。協力してくれるそうです」

「あ、ランディアもう来てたのか。ありがとね、ゆんゆん」

 

そんな感じでこの日は解散。

スージーは早速ロボボアーマーの最終調整に入った。

因みにランディアは今日一晩、王都に居座るつもりらしい。

ついでに卵も向こうで預かってくれることになった。

ボク達はいつも通りに振舞ってるけど……他の人が見たら異常な光景だろうね。

だって明日には一番戦いの激しい場所に赴くんだから、緊張の糸が張り詰めるとかいう感じになるだろうし。

何より、魔王の娘の里攻め時には皆あんなに慌ててたのに、この差は一体何なのって話だよ………。

な~んて考えてた時期がボクにもあった。

けど翌朝の様子を見たら、何か一安心。

ボク以外は、こめっこを除くパーティメンバー全員が寝不足の顔になってる。

何だって昨日は無理して平常通りに振舞ってたんだろう?

まいっか、とにかく今は急がないと!

急いで朝食を済ませて皆を「ホイールモード」のロボボアーマーに押し込み、その上にスージーがちょこんと座る形のまま王都にテレポート。

時刻は8時45分、結構ギリギリだ。

 

「何だかんだ言って、あっという間でしたわね。できればワタクシも『テレポート』くらい習得したいものですわ」

「やるとしても後でね。今回ばかりは万が一にも故障して行動不能になるのは避けたいから」

「勿論心得てますわ」

 

とここで、鎧を纏ったアイリスが正面入り口から出てきた。

 

「あ、カービィさん!間に合ったんですね」

「まぁ、何とかね。一部を除いて寝不足だけど」

「多少は致し方ないでしょう。私も実はよく眠れていなくて……おっと、忘れないうちに…。カービィさん、女神エリス様からの便りが来ていますよ」

「エリス様から?」

「ええ、今朝枕元に…」

 

アクセルの時と同じパターンか…まいいや。

手紙を受け取って中を拝見してみると………長ったらしく色々書いてあるけど、要するに「頼みを承諾する」的なことが書かれていた。

何か色々と納得しがたい状況だけど……まいいや。

それより問題は…このことをどうやってウォルバクに伝えるか、だね。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

一方その頃、当のウォルバクはというと…………

 

(……この仕事も今日で終わりね。エリスからの報告が正しければ、だけど…)

 

既に女神エリスから全てを聞かされていた。

彼女としては内容云々より、エリスが危険を承知で直々にこのことを伝えてきたことの方が驚きだった。

そして現在、どんな感じで抜けようかと思案六法。

すると何故か笑みがこぼれる。

 

(どうにしろ、あのカービィがどう出てくるかで柔軟に対応するほかないね。一体どんな方法で攻めてくるのやら……)

「ウォルバク~!ウォルバクはどこだ~~!!」

「(あらやだ[※『市原悦子か!』というツッコミは受け付けません]…魔王がお呼びのようね)はい、こちらに」

「おお、またこんな所にいたのか!探したんだぞ!」

「それは失礼。それで、私に一体何用で?」

「助けて欲しいんだ」

「…助けて欲しいって?何?どういうこと?」

「最近、ラグクラフトの奴が急に変わってしまったんだよ!何かにつけておかしなジョークを発したり、そのジョークまじりに皮肉を言ったり、まるで別人だ!ちょっと見ない間に、アイツに何があったというんだ!?」

「私に言われてもねぇ……人は変わろうと思えばいくらでも変われると言うし、長いこと人間の世界に身を置いてきたあいつのことだから、その影響を受けたのかもね」

「そんなことはどうでもいい!何とかならないか!?」

「何とかって言われてもね~…変わっちゃったもんは仕方ないでしょ。諦めて付き合っていくしかないって」

「……なんてこった」

「…………ドンマイ」

 

ウォルバクにはこれ以上のフォローの仕方が思いつかなかったという…。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「さてと、ぼちぼち出発なわけだけど…アイリスはどうするの?エルロード国の時みたく護衛の兵士さんを連れてくわけ?」

「勿論そのつもりです。というより、私が出掛けるとなると何時もそんな感じですから……まぁ、黄金竜の背中に乗せられるだけ、ですけど」

「その物言いからするに、同行させられる護衛が少ないので不安を抱えている、ということですか?」

「い、いえ別にそういうことでは…」

「ウフフ、無理して強がる必要は御座いませんことよ、アイリス王女。そんな時は、『ハルバード』で人員輸送すれば済む話ですわ」

「え?『ポンッ』ああ、そう言えば兵員輸送用のスペースがあったっけ!」

『兵員輸送!?』

「ええ、ハルバードは大きいので相対的に小回りが利きませんから、対人戦にはやはり歩兵が一番有効ですわ」

「そうだね。あ、因みにそのスペースは下の方に設けられてるよ。200人くらいは運べるかな?但しあくまで人や、冒険者が扱うような装備を運ぶためのものだから、デストロイヤーの頭みたいな大きなものは入らないよ」

「そ、それでも十分すぎますって!」

 

まぁそんなわけで、その場で100人くらいの騎士達が追加で招集された。

 

「『ハルバードモード』!」

 

因みに下部スペースへの積み込み及び荷下ろしは「UFO方式」だから、この世界の人からすれば人が急に消えたように見えるだろうね間違いなく。

ボクは艦内放送用マイクのスイッチを入れて、収容スペース内の騎士達に状況を説明。

それが終わると今度は艦外マイクに切り替えて、黄金竜に跨ったアイリスに話しかける。

 

「アイリス、準備はいい?」

「ええ、何時でも行けますよ!」

「ランディアも大丈夫だよね?」

(当然だ)

「よ~し、出発するよ!皆椅子に座って!」

 

ボクはマイクのスイッチを切ると、ゆんゆん達にそう呼びかけた。

こめっこが勝手に動き回ったりしないか心配だったけど、その辺はゆんゆんとめぐみんが上手くやってくれたみたい。

あちこち見回してはいるものの、こめっこはキチンと椅子に座ったまま。

 

『ゴォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

エンジンをふかすと、アイリスは黄金竜の手綱を引いて飛ぶよう促し、ランディアは翼をバタつかせる。

そして一斉にスタート!

…とはいえ、別に競争するわけじゃない。

ボクはエンジン出力の調整レバーを握ったまま、艦外の映像と計器類を交互に見る。

ランディアと黄金竜のペースに合わせるためにね。

そのうち黄金竜が遅れ始めたのでスピードを落としたけど、それでもあと10分くらいで砦に着きそうだ。

ボクはスージーと協力して、全ての砲台と戦闘関係のシステムをくまなくチェックした。

なにしろ巨大な戦艦を点検するわけだから、流石に2人で全部ってわけにはいかない。

しかもボクは操縦席から離れられないし…。

スージーがいてくれて本当に良かったよ。

10分はあっという間に過ぎ、目の前に砦らしき建物が見えてきた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……………どういうことなの??」

 

いやホントに……冗談抜きでどういうことなの!?

私達はさっきまで、ベルゼルグ王国の兵士と戦っていた…そう、ついさっきまで。

でも、ふと上を見ればその先には巨大な鳥……じゃなくて謎の飛行機械。

しかもよく見れば、あのカービィそっくりな顔があるし…。

そして両サイドには2頭のドラゴン。

1頭は真っ赤な体に4つの頭、もう1頭は全身金色……明らかに普通のドラゴンじゃない。

もっかい言わせて……どういうことなの!?

こんなことを考えている間にも、3つの影は戦場へと迫り、それを私達はただ見つめるしかできなかった。

そんな静寂を破ったのは、カービィそっくりな顔をした飛行機械の攻撃だった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ファイア!」

『ドガガガガガガガガガガ……………!! ズドドオオオォォォォォォォォォォンンン……………!! ドギュオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンン……………!!』

 

魔王軍を射程に収めた砲台が一斉に動き出す。

まぁそんなわけで、結果的にボクが先陣切ったことになっちゃってるんだよね。

アイリスは既に敵陣へ突っ込み、黄金竜と王族スキルをもってモンスターを蹴散らし、ランディアは火炎弾と雷撃で敵を追い散らす。

そしてボクは、適当に砲撃しつつ「キャプチャー吸い込み」でエネルギー充填中。

最前線というだけあって、王都や紅魔の里を襲撃してたモンスターより強力なのが揃ってるみたいだね。

エネルギーの溜まり具合が全然違うもの。

これならもうすぐ発射できそう………っとそうだ、ウォルバクを探さなきゃ!

ボクは艦外映像に視線を移す。

あの時の攻撃に巻き込まれるなんてことは無いだろうけど……っといた!

周りのモンスター達が大混乱になってる中、無表情でこっちを見てる。

と思いきや、ボクが映像を見始めてから数秒経つと急に微笑んで2、3回頷き、誰も見てないのを確認すると「テレポート」でどこかに行っちゃった。

まだあのことを伝えてないのに……まいっか。

考えてみりゃ、今の状況で伝言する方が無理あるし。

何せ今のボクは、嫌でも目立つ戦艦に乗ってるからね。

それにもしかしたら、エリス様が先にこっそり伝えてたって可能性もある。

まぁどうにしろ、今は目の前の戦いに集中しないと。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

《………………てくれ》

「………?」

 

外でドンパチしている間、ワタクシは休むことなくシステムを監視し続けていました。

このような状況では、1つの小さな異常が戦局を大きく変えてしまうかもしれませんので。

そんな時でした……あの「音声」が頭に響いたのは。

 

《……聞こえた者は返事を返してくれ》

「!?」

 

最初は空耳かと思いました。

しかしそれは…間違いでした。

ワタクシは思い出したのです。

それは………ワタクシが以前働いていた会社で、“社長”との間で設けられた……特殊な秘密通信。

それがどうして今になってと考え始めた時、そんな必要は無いと悟りました。

でも…すぐには認められなかった……何故ならあの人はもう…………。

しかし、ろくに確認もせず結論付けるなんてワタクシらしくもない。

真相を確かめるべく、ワタクシは返事を返すことに。

 

「通信を確認しました。一体誰なのですか?」

《○○○○○○○○○○○○○………………また会えて嬉しいよ………》

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『エネルギー充填完了 エネルギー充填完了』

「よ~し!これで発射できるぞ!」

 

発射準備が整い、ボクは格納式発射トリガーを握りしめる。

ふと艦外映像に目をやった時、ランディアの姿が目にとまった。

ランディアは突然攻撃をやめたかと思うと空に舞い上がり、そして口の中にエネルギーを溜め始める。

どうやらボクが必殺技を使うことを察したらしい。

アイリスもそれを察したようで、手綱を引いて黄金竜を抑えようとする。

黄金竜は最初こそ渋ってたみたいだけど、ボクとランディアを見て納得したらしく、ボク達と同じところまで引き下がった。

念のために映像を一通り見て安全確認………よし、OK!

 

「プラネットバスター、発射!!!」

『ドババババババババババババババババババ…………!!!!』

『ドゴオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ……!!!!』

 

星型のエネルギー弾を無数に放つ「プラネットバスター」、星型のエネルギーコアを持つ巨大な火炎弾を6つセットで放つ「ランディア砲」……2つは同時に放たれた。

直後、耳をつんざくばかりの爆発音が響き渡る。

艦外映像は、どれも真っ白になってて何もわからない。

目の前の視界が白い光一色から黒煙へと変わり始めた頃、ようやくランディアとアイリスが見えた。

ランディアは4つある頭のうち3つがきつく目を閉じ、王冠をかぶった一番後ろの頭だけが、薄目を開けてニヤついてる。

一方アイリスは手綱を握りしめたまま、耳を塞いでうつむいてる。

黄金竜は目をつぶってなかったらしく、しきりに目をショボショボさせていた。

やがて黒煙が晴れてきたので映像を確認すると……そこにはモンスターの姿は無かった。

全滅したのか、それとも煙に紛れて撤退したのか、分からないけど誰もいない。

あ、王国の兵士さんはいるね。

ボクが砦のそばまでロボボアーマーを移動させてから改めて映像を見る。

すると、砦の一番高いところ…物見やぐら的な場所に1人、誰か立ってるのが見えた。

白くて立派な口髭に、白をメインにした派手な衣装、そして何より目立つ金の王冠…。

もしかして、いや、もしかしなくても間違いない。

あれが多分この国の王様……要するにアイリスのお父さんだ。

そういえば本名とか聞いてなかったな…まいいや。

取り敢えず収容スペースで待機してた騎士達を降してから、ロボボアーマーを元の姿に戻した。

ランディアと黄金竜も、それに続くように着地する。

そしてアイリスは黄金竜から降りると、黄金竜を気遣いながらゆっくりと砦に向かう。

ボクが砦の方に視線を戻すと、いつの間にか物見やぐら(?)にいた人が下に降りて来ていた。

でもよく見ると、明らかに何かを疑ってるような目をしてる。

まぁその理由はすぐに分かったんだけど。

 

「…………ア……アイリス………なのか?」

「?今更何を言っているのですか、父上?他の誰だというのですか?」

「あ、あああす済まない!暫く見ない間に随分と……みちがえったものだ…」

「そうですか?自分ではあまり自覚が無いんですけど……まぁ仮にそうだとしても、それは自分の力だけじゃありません。他ならぬ、彼がいてこそ…です!」

 

アイリスはボクを紹介する様に、左腕を伸ばしてロボボアーマーの上のボクに向ける。

取り敢えずボクは他の皆を降ろし、自動追尾モードに切り替えてから地に足を付けた。

ゆっくり歩み寄るボクを、その人は何かを測るような、複雑な顔で見ていた。

そしてアイリスは再び口を開く。

 

「カービィさん、紹介します。私の父…即ちベルゼルグ王国の国王、ベルゼルグ・スタイリッシュ・ソード・ペンドラゴンです」

「へ~やっぱりそうか。結構目立つ衣装だったから多分そうだとは思ってたけど……」

「うおおおおおおおおおい!!!!」

 

突然ダクネスが背後から覆いかぶさってきた。

ペンドラゴン国王は、そんなボク達のやり取りを無視して話し始める。

 

「ふむぅ…私が国王であると知って尚、口調を変えぬとは…これも噂に聞く“伝説の戦士”たる所以なのかな?」

「父上、それは違います。彼は『堅苦しいのは性に合わない』とのことで、基本的には万人に対してほぼ同じ様に接するのです。何しろ自身の故郷を治める王にすら、普段と変わらぬ接し方をしていましたから」

「……そうか。ところで話は変わるが、お前が乗っていたそのドラゴンは…」

「黄金竜です。エルロード国郊外の金鉱山に住み着いていましたが、今は私の良きパートナーです」

 

アイリスはそう言うと、懐からサッと冒険者カードを取り出す。

ペンドラゴン国王が驚いた顔になるタイミングで、待ってましたと言わんばかりに宣言する。

 

「だって私…『ドラゴンナイト』ですから!」

 

それを聞いた周りの兵士達は驚きと歓喜の声をあげる。

後で知ったんだけど、ドラゴンナイトって職業の中でも特に成り手が少なくて、記録がある中でドラゴンナイトだったのはアイリスを除いて1人だけ。

しかもその人は、色々あって職業をはく奪されて行方不明なんだとか。

まぁそれはともかく、ペンドラゴン国王は魔王軍最前線の壊滅とアイリスがドラゴンナイトになったお祝いをすると言い出した。

といっても、アイリスはドラゴンナイトになるために王都の冒険者ギルドで登録したわけだから、王都住民ならこのことは皆知ってると思う。

その時はお祝いこそしてなかったけど、王都では祝賀ムードが拭い切れない感じだったね。

でも今回はペンドラゴン国王が正式にお祝いすると宣言したので、本当の意味での祝賀ムードが王都中に広がった。

その道中、及び城の中にあった(というか所狭しと並んだ)ボクの石像を1つ1つ目にしては感心したような表情をするペンドラゴン国王。

 

「…どれも恐るべきことだ。特に魔王軍幹部の能力を取り込むなど……彼が味方で本当によかった」

 

ペンドラゴン国王がこんな独り言をつぶやく中、ボクは背後に何かの気配を感じて振り返る。

するとそこには、石像の影に隠れてこっちを見つめるウォルバクがいた。

ウォルバクはボクに向けてサムズアップすると、何かに導かれるように光の塊と化して天に昇って行った。

大方エリス様から予め聞いてたみたいだね。

でもウォルバク以外にもう1つ気付いたことがある。

スージーが何故か暗い顔をしてるんだ。

落ち込んでると言うよりかは、何か悩んでるような顔をしてる。

 

「スージー、どうしたの?」

「………………………………」

 

スージーは心ここにあらずって感じ。

 

「ねぇ、聞いて」

「…カービィ…ワタクシ、やはり話さなくてはなりませんわ!」

 

もう1度問いかけようとした時、突然スージーが覚悟を決めたように真剣な顔でそう言った。

 

「一体どうしたの?急に…」

「カービィ…あなたはワタクシの父を覚えていますか?」

「え?…それって、ゲインズさんのこと?」

「はい」

「まぁ、覚えてはいるけど……何で急にゲインズさんのことが?」

「それが…父は生きていたんです。しかも…魔王の城の中に!」

「ええええええええええええ!!??」

 

冗談抜きでビックリした!

まさかあの、「ハルトマンワークスカンパニー」の元社長であるゲインズ・インカム・ハルトマンが生きていたなんて…!

あいや、よく考えたらそれを臭わせるような状況は幾らかあったね。

それはズバリ、デストロイヤーの王都襲撃だ。

シルエットこそ同じでも、ボディーの色が異なってたり、1台しかないはずのものがいきなり何の前触れもなく5台もポンポン出てくるなんて、どう考えてもおかしい。

魔王のバックにそんなことができる技術者でもいない限りは。

そしてその後、ロボボアーマーで宇宙に飛び立ったわけだけど…その時、妙な違和感を感じたんだよね。

何かは分からなかった……ただ何となく、“普通じゃない何か”がそこにあった…もしくはそこで起きたか…。

いずれにしても、その違和感の正体が空間の割れ目…要するにゲインズさんがこの世界にやってこれたきっかけのような気がしてならない。

そうでもなきゃゲインズさんが魔王の城にいるわけがない!

 

「あ…あの~カービィさん、ちょっと話についていけないので、私達にも説明してくれません?」

 

…っと、ゆんゆんの言う通りだ。

皆にもこのことを知らせとくべきだろう。

スージーも同じことを考えてたらしく、ボクが皆に呼びかける前に話し始めた。

お父さんがどんな人だったのか…。

プププランド襲撃までにどんな経緯があったのか…。

そしてその後どうなったのかを…。

スージーが一通り話し終えた時、皆は何とも言えない複雑な顔のまま固まっていた。

何となく予想できてたけど…。

そして意外にも、沈黙を破ったのはめぐみん。

 

「…なるほど、よく分かりましたよ」

「へ?分かったの、めぐみん!?」

「ええ、分かりましたとも!この一連の流れが、宇宙の真理に次いで複雑怪奇であるということが!」

「「(ボク/ワタクシ)の期待を返して(くれないかな/下さらない)?」」

「何でそう冷たいんですか、ご両人!?確かに内容の理解は追いついてませんけども、私は私なりにどの程度難しい事態なのかは把握してるじゃないですか!!何が分からないのかも分からず固まっている者達よりはマシでしょう!?」

「ご両人って……まぁマシと言えばマシなんだろうけどもさ……」

「それを言われて、ワタクシ達は一体どのように返せば良いと言うのです?」

 

スージーの発言に何か言い返そうとしためぐみんだけど、結局言葉が見つからなかったらしく、顔を赤くして唸るだけだった。

その後はペンドラゴン国王が半ば強引に話をまとめたうえで、晩餐会を開くことを提案。

その際に“例の部屋”を用意するよう言ってたけど…どんな部屋なんだろう?

準備ができた部屋に通されると、そこは何と和室!

どういうわけか知らないけど、この世界ではこの手の部屋が最高級なんだとか。

しかも運ばれてきた料理は和食というね…。

あ、そういえばテナガドラゴンの卵はどうなったのかな?

それとなくウェイター役の人に聞いてみると、サプライズ料理として出す予定らしい。

一体どんな料理になるんだろう?

それにしても、冗談抜きで徹底的に“和物”に特化してるんだな。

まぁ、そのせいで服装と全然合ってないわけだけど。

そのうちメインディッシュが運ばれてきたわけだけど……ちょっと変だな。

最初からご飯のお替り自由ってこともあって、見た目はご飯無しの焼鮭定食っぽい感じなんだけど………本来真ん中にあるはずの焼鮭(この世界のことだから、必ずしも鮭とは限らない)が端にずらされて、代わりに小さな卵焼きが真ん中に配置されてる。

一瞬どういうことか分からなかったけど、メインディッシュってことを考えたら、多分この卵焼きがテナガドラゴンの卵で作られたんだろう。

案の定ウェイター役の人がそういう説明をし、ペンドラゴン国王はその場で跳び上がりそうになるほど驚いていた。

 

「ああ、この卵焼きはカービィさんが持ってきた卵で作ったんですね」

「な、何と!?………か、カービィ君!今の話は本当かね!?」

「うん。港町ドックの近くで偶然見かけてね」

「ほほう…まぁいい。早速頂くとしようか」

 

因みにだけど、この部屋にはボク達と王族及びその関係者以外に、貴族と思しき人も何人かいる。

中には2度の王城におけるパーティで見知った顔の人も見えた。

皆、これでもかというほど味わいながら卵焼きを食べてる。

まぁ、あまり時間が経たないうちに追加の卵焼きが運ばれてきたから、その必要は無かったんだけどね。

でもって一通りの食事が終わり、貴族の人達が帰ったところでペンドラゴン国王はスージーの話の続きを切り出した。

 

「さてと…魔王の城にいるという人物のことだが……ぶっちゃけどうすべきかな、スージー君?」

 

スージーはデザートのアイスを頬張ったままだったけど、話を振られるとすぐに飲み込んで口を開く。

 

「…可能ならば、助け出したいですわよ。だって、ワタクシのたった一人の家族ですもの」

「まぁ、そうだよね」

「ただ…急がないといけないかもしれませんわ」

「どうして?」

「………あまり信じたくはありませんが…お父様がワタクシに伝えてきたのです。『“星の夢”がじきに完成してしまう』と……」

「な、何だって!?『星の夢』が??」

『星の夢?』

 

ボクが思わず身を乗り出して声を張り上げると、皆が説明を求めてきた。

 

「…まぁ、言ってしまえば自分で考えて行動できる機械なんだ。ゲインズさんを取り込んだうえ、プププランドを滅ぼそうとしたことがある」

「そんなことが……!」

「もし…もしそれと同じものが作られたとしたら…」

「きっと大変なことになるだろう…そしてもし魔王がそれと一体化するなんてことになったら、きっと前のようにはいかないだろうね」

「そ、それで…一体どうするつもりですか?」

「そうだな~……取り敢えず、ボクは一旦プププランドに戻るよ。兎に角、少しでも応援を呼んどかなきゃ!」

 

というわけで、翌日からボクはプププランドを駆け巡ってあちこちに協力を求めまくった。

テナガドラゴン誕生の瞬間を見届けた後で、ね。




次回予告
魔王が予想外の強敵となりうることを知り、対策に追われるカービィ。
その間にも、魔王の計画は着実に進行していく。
果たしてカービィはゲインズ・インカム・ハルトマンを救い出せるのか!?
そしてこの世界の運命やいかに!
次回「最終決戦」
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