【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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遂にデストロイヤー戦が始まります。フレンズ能力をどうしようか模索中。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第04話 再会、戦い、レパートリー

ボクは今、地図を頼りにアイリスおすすめの飲食店に向かってる。

ホーリツとかいう理不尽なルールが存在することに加えて、あのダクネスの堅物加減…イライラは今も絶賛増量中だ。

早いとこ夕食にありつかないとどうにかなりそうだよ!

到着した飲食店は…思ったより大きい。

というか、この形状は明らかに増設してるな。

半ば無理矢理飲食スペースを広げた感じだ。

とりあえず中に入ってみよう。

中では多くの冒険者や王都住人達が楽しく夕食をとっている。

ボクは厨房に近い席が空いているのを見つけたので、そこに座った。

 

「すみませ~ん。メニュー下さ~い」

「はいは~い♪」

 

……今の聞きおぼえある声と口調。

メニューを持ってきたのは…やっぱりだ!

オレンジ色の卵型の体に白いエプロンとコック帽。

といったらもう…。

 

「…コックカワサキ!?」

「おや、カービィじゃないか~!どうしてここに?」

「アイリスに勧められたの。カワサキはどうして?」

「あぁ、何故か突然この世界に飛ばされちゃってね~、とりあえずここで働くついでに新メニューの開発をやってるって感じかな~」

「その右手に持ってる料理がその新メニュー?」

「まぁね~」

 

その色は絶対出しちゃダメな料理だよ!

何なのその不気味な青色したハンバーグは!?

一体何を入れたらそうなるわけ!?

直前に他の従業員に止められて注意されたのでホッとした。

 

「一応聞くけどさ、まだそれ続ける気?」

「勿論!元の世界に帰る前に~、天下一のオリジナルメニューを作るその日までね!」

「…まぁいいや、とりあえずこのラージバーグってやつを10個お願い!」

「かしこまりました~10段重ねでも良いか~い?」

「うんそれでいいよ!」

 

とにかく何でもいいから食べて憂さ晴らししたい。

再びイライラが募ってきた。

カワサキもそれが分かったのか、客が多いにもかかわらず割と早く料理を持ってきた。

でっかくて肉厚のハンバーグが10段重なっているのは圧巻だ。

きっと食べこたえあるぞ。

ボクが食べ始めると、カワサキがボクの反対側の席に掛けてきた。

 

「意外と早かったね。お客さん多いからもっと時間かかると思ったけど」

「別に問題な~いさ。何だかんだでカービィとの付き合いも長いし、機嫌悪い時はどうすりゃいいかぐらい分かるよ~」

「…気を使ってくれたんだ。ありがと」

「いいっていいって。ついでに全部出しちゃいなよ。も~っと気分スッキリすると思うよ~?」

「うん…実はさ…」

 

ボクはカワサキに、これまでの経緯を洗い浚い話した。

今思い返すとダクネスに関する内容が一番濃かった気がする。

アクアのこともそれなりに話したと思うんだけどな…。

そんなボクの話を、カワサキは終始食い入るように聞いていた。そして聞き終わった時、複雑な表情をしてた。

でもそれは…何となく何かを悟った感じにも見える。

 

「なるほどね~、確かにダメな部下がつくと苦労するよね~。でもさ~、カービィの場合もやっぱりその~…何というか『100%失敗』ってわけじゃないと思うんだよね~」

「どういうこと?」

「いわゆる『反面教師』ってやつさ。周りがダメだと~、自分がしっかりしなきゃってなるじゃな~い?だから結果的には自分に良い影響があるっていうね~。現にカービィも、以前より大人びてる感じがするしね~」

「…そうかなぁ?」

「そうだよ~。悪ガキレベルのダメな奴らを引っ張ってきたからこそ、自分がもっと大人にならなきゃって心のどこかで思ってたんだよきっとね~」

「……」

 

ハンバーグを食べ進めながら考えてはみた…今まであの4人、いや、1人と「3匹の迷惑者」を終始引っ張ってきたことは確か。

とは言え、やっぱり素直に喜べない。

基本的にゆんゆん以外は既に要らない子レベルなんだもん。

アクアの使える魔法にしたって、今となってはボクが使った方がマシって感じだし…。

なんて考えてるうちに大分食べちゃったよ。

もっと味わいたかったのに…これも全部ダクネスのせいだ!!

 

「どうする~?おかわりいっちゃう~?」

「う~ん手持ちに余裕あるし、そうしよっかな~?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

すると、ゆんゆんがやって来た。

あとに続くは…「2人の迷惑者」。

ダクネスは空気を読んだみたいだね。少し気が楽になったよ。

 

「ここがアイリス様御用達のレストランですか…」

「いや、御用達かどうかは分からないでしょ!」

「そんなことよりほら、カービィさんあそこにいるよ」

「あ、ホント…って隣になんか如何にもカービィの仲間って感じのがいるけど!?」

「あぁ、紹介するね。この人はコックカワサキ。ボクの故郷で料理人やってるんだけど、突然王都に飛ばされちゃったらしくて、現在はここでシェフをやってるんだって」

「なんだよね~」

「…ホントに大丈夫なんですかこの人は?」

「うん、料理は普通に上手いから。ただ、時々オリジナル料理と称してゲテモノを作っちゃうのが玉にキズだね」

「ゲテモノはないでしょ~ゲテモノは~…」

「いやどう考えてもアレはダメでしょ!何だったんだよさっきの不気味に青みがかったハンバーグは」

「青い!?ハンバーグって青くなるんですか!?」

「それ絶対危ないでしょ!」

「なにお~う!君だって青一色じゃないか~!」

 

この一言でうちの馬鹿女神はたじろいだ。何考えてんだか…。

それに構わずカワサキは続ける。

 

「それに料理は見た目じゃなくて中身だろ~?」

「いやいや、多少は見た目も大事だと思うよボクは…」

「そうですよ!いくら何でも青いハンバーグはやりすぎです!」

「よ~し!そんなに言うなら証明してあげるよ~!」

「「「「証明?」」」」

 

カワサキは一旦厨房に戻ったかと思えばすぐまた出てきた。

何か料理を持ってる。

 

「…何これ?」

「『フィッシュアンドチップス』だよ~。魚の白身を揚げたもの。スナック感覚でパリパリ食べられるよ~」

「……これもまた嫌な予感しかしませんね」

「何でさ~どこにもそんな要素ないじゃないか~」

「あるよ!何で湯気に混じって紫色のオーラが出てるのさ!?」

「な~にちょっとした隠し味だよ~。元気が出る薬草の類を白身に練り込んでみたのさ~。君に是非試食してもらおうと思ってね~」

「え?何故私なんですか?何故ゆんゆんではなく私を!?」

「だって君、元気だけが取り柄って感じがしたからね~」

「元気だけが取り柄って何ですか!失礼にもほどがありますよ!!」

「…カワサキ、キミ鋭いね!」

「そ~お?」

「おい、何がどう鋭いのか説明してもらおうか!」

「説明も何も、キミが一番分かってなきゃいけないことだろ?」

「そうよめぐみん!あなた喧嘩と爆裂魔法しかしないじゃない!そんなことする元気があるならいい加減まともなアークウィザードになってよ!!」

 

ゆんゆんが吐き捨てるようにめぐみんを怒鳴りつける。

そこからしばらく売り言葉に買い言葉だったけど、結局論破されためぐみんがやけを起こした。

 

「あ~もう分かりましたよ!食べますよ!食べればいいんでしょ!?」

 

めぐみんは怪しげなフィッシュアンドチップスを一口で平らげた。とりあえず魔女っぽい服装のせいか、ほとんど違和感が感じられない。

カワサキはめぐみんの感想を早く聞きたくてうずうずしてる。

が、結局ボクの悪い予感が的中した。

突如めぐみんが痙攣を起こしたかと思えば、体中が青紫色に染まる。爪の先から髪の毛まで。

そして狂ったかのように踊り出す。

 

「フィッシュがチップスでフィッシュッシュ~♪」

「うわわわわ!めぐみ~ん!しっかりして~!」

 

ゆんゆんが必死に呼びかけるが、明らかにめぐみんの目は焦点が合ってない。

多分聞こえてないんだろうな。

ボクの隣でコックカワサキは目を丸くして呆然としてる。

そして何故かボクは笑いが込み上げてきた。

アクアはというと…あわあわするだけで何の役にも立たない。

 

「フィッシュとチッブス~♪アイアム ア フィッシュ~♪」

「あははははは!!」

「カービィさ~ん、笑ってないで何とかしてくださ~い!」

「大丈夫だよ!数分経てば元に戻るだろうから!それにこれはこれで良いじゃないか。カワサキの予想とは違うみたいだけど、一応元気にはなってるし」

「『ポンッ』あぁ、そうか~!」

「そうか~じゃないですって~!!」

 

結局めぐみんは無事正気に戻りましたとさ。

 

「う~頭痛い…」

「ったく、元気出し過ぎるからそうなるんだよ!」

「そうなんですか?その辺の記憶が全くないのですが…」

「まぁいいんじゃないの~?爆裂魔法なかっただけマシじゃな~い」

「何を他人事みたいに済まそうとしてるんですか!もとはと言えばあなたの料理が原因なんですからね!?」

「そんなことより、ゆんゆん達も何か注文しなよ。おなか減ってないの?」

「あそ、そうね。とりあえず続きは食べてからね」

 

ゆんゆんは白狼肉の鍋シチュー、めぐみんはファイアードレイクの肝の香草と肉詰め、アクアは栗とキャベツと一撃熊肉のごった煮スープを注文。

ボクはラージバーグ10段重ねをおかわりして、ゆんゆんが食べきれなかったシチューも平らげた。

他の料理も予想以上にボリューミーだったため、ボク以外はまるで妊婦さん状態だ。

 

「うっぷ…もう無理動けない」

「食べ過ぎました~…」

「あ、まだ余ってる。デザートにバニラアイス頂戴」

「まだ何か入るんですか!?」

「え?女の子なのに別腹持ってないの?」

「知りませんよそんなの…」

「え~持ってないの~?勿体な~い」

 

バニラアイスを運びながらカワサキが言う。

するとここで、厨房から別の人がボク達の席にやって来た。

よく見ればこの人、さっきカワサキがハンバーグ運ぼうとしたのを止めてた人だ。

 

「いや~、カービィ君が大食漢だとは聞いてたけど、これは予想以上だね」

「あぁ、店長。どうも」

 

店長さんだったのか。

どうせだから聞いてみよう。

 

「あの~、率直にうかがいますけどどうですか?カワサキは」

「ん?まぁ良いヤツだよ。元々料理人やってただけあって料理の腕は相当なものさ。君達が食べた料理だって全部彼が作ったんだから」

「ええ!?そうなんですか!?」

「そうとも!今やうちの自慢の料理長さ。たまに作るゲテモノさえなけりゃな…」

「店長~…」

 

ここで突然、ゆんゆんが口を開いた。

 

「そうだカービィさん、あなたに朗報です」

「何?朗報って」

「ダクネスさん、カービィさんに堅物と言われたのがこたえたらしく、落ち込んでました」

「え?嘘でしょ?あのマゾの頂点に立つダクネスが?」

「はい、事実です…」

「…やった、遂にダクネスが普通の感性を持ち始めたぞ!」

「そうですよ!喜ばしいですよね!?素直に喜んでいいですよね!?」

「勿論!」

 

ボクとゆんゆんは思いっきりガッツポーズした。

アクアとめぐみん「2人の迷惑者」の反応は容易に想像ついたから見る気はない。

そんな時、コックカワサキがアクアを見て何かを思い出したようだ。

 

「そうそう、君は確かアクアだよね~?あの悪名高い邪教『アクシズ教』の親玉たる『女神の皮を被った邪神』だよね~?」

「じゃっ邪教!?邪神!?ちょっと待ちなさいよ!何で私の信者達がそんな呼ばれ方されなきゃならないわけ!?みんなすっごくいい子なのに!!」

「ホ~ントにいい子ならこんなこと言うわけないじゃないか~。え~?」

「まさにその通り!ボクも同感だよ。他人の都合とかそっちのけで自分達のやりたいことだけやって、悪いことがあれば全部他の宗教に擦りつける…こんな悪夢が現実世界に飛び出してきたみたいな連中がいていいわけ!?」

「ちょっとカービィ、いくら何でも言いすぎでしょ!!何よ『悪夢が現実世界に飛び出した』って!!」

「その通りなんだからしょうがないじゃんか!貧しい人への配給を独占したり、他宗教の教会に石投げたり、後輩のエリス様を冒涜したりする連中を、他にどう表現しろってのさ!」

「だ~か~ら~、何故こんな根も葉もないことが出回ってるのか教えなさいよ!!」

「まだそんなこと言うわけ!?何もしてないのにこんな具体的な内容が噂で広まるわけないだろ!」

「カービィの言うとおりさ~!君を崇める『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』たるアクシズ教徒のせいで、こっちはいい迷惑してたんだぞ~!!あれが証拠さ!」

 

カワサキが指さす先にあったのは、9枚の張り紙。

しかもよく見ると「指名手配」と書かれていて、その全てに大きくバツ印が書かれてた。

 

「何なのあの『指名手配』って?」

「あれはね~、この店に出入りしていた無銭飲食の常習犯だよ~!それも全員アクシズ教徒さ!」

「ええ!?全員そうなの?」

「そう!」

「フン!たかが1度や2度したくらいで、何をバカ騒ぎしてるんだか!」

「1度や2度なわけな~いだろう!君どんだけ頭悪いの!?『常習犯』だってさっき言ったよね~?ぜ~いん10回以上無銭飲食してるんだよ!」

「あ~カワサキ、頭悪いのはしょうがないよ。ほら見て」

 

ボクはカワサキにアクアの冒険者カードを見せた。

すると瞬時に納得した顔になった。

 

「あ、そ~ゆ~ことね。こ~んな平均値以下の知力しかないとは。これじゃ~信者が善悪の区別ができなくなっても無理ないね~!こ~んなお馬鹿さんを崇めてたらそ~なっちゃうよね~?ア~ッハッハッハッハッハ!」

 

コックカワサキは笑いながらアクアのカードを押し付けるように返した。

今までのやり取りを全部聞いてた店長も、アクアの知力のなさを知って噴き出してる。

そして何とか笑いを抑えたカワサキは続ける。

 

「兎に角いいかいアクア?この店は『掛け値なし』だからね~。ツケにしようとしたら…許さないからね!」

 

カワサキは渾身の怒りを込めた営業スマイル…という例えしかできない恐ろしい顔でアクアに迫る。

こんな顔をしたカワサキはボクでも見たことないよ。

多分デデデ大王も知らないんじゃないかな。

 

「言われなくてもツケは金輪際しないって決めてるからやらないわよ!借金作って金欠になってカービィを空腹にさせた暁には…多分私達非常食扱いされるわ!!」

「だろうね。今のところゆんゆん以外は…ところでカワサキ、結局その常習犯達はどうしたの?」

「そりゃ勿論、こうやってさ…」

 

カワサキが左手で何かを入れ、右手でかき回すようなジェスチャーをする。

 

「あ~、アレか」

「あの~、今のは一体何の合図でしょう?」

「合図じゃないわよめぐみん!ほら一度見てるじゃない!ベルディアの部下をカービィさんがどうやって倒したか覚えてないの!?」

「………まさか!?」

「そうだよ。カワサキも同じようなことができるんだ」

 

ボクの言葉に店長が合の手を入れる。

 

「おうともよ!私も最初見たときは信じられなかったがな!お前さんはホントに素晴らしい力を持ってるな!」

「そうそう。それも~作りたい料理をある程度限定することも~可能さ!」

「へ?そうなの!?ボクは初耳なんだけど…」

「な~んかこっちに来てからそんな力が芽生えたみたいでさ~」

「あの~確認なんですけど、あれをやられた人って、結局どうなるんでしょうか…?」

「「へ?う~ん…」」

 

ボクとカワサキはちょっと考えてから、互いに頷いてこう言った。

 

「「死~んだんじゃないの~?」」

「待ちさないよ!それじゃあ何?私の信者達を料理にしたってこと!?」

「そういうことね~」

「ね~じゃないわよ!!アンタなんてことを!!」

「さっきも言っただろ~?彼らは当たり前のように無銭飲食して~、催促しても適当な口実つけて一切払おうとしないんだよ~?こっちとしても元を取らないといけないからね~。そうなったらもう自分達が料理になってもらうしかないよね~」

「何をさっきから訳の分からないこと言ってんのよ!!アンタがしたのはれっきとした人殺しよ!!いいわ!これから警察に行ってアンタを逮捕してもらうから!!」

「多分それはないね~」

「何でよ!!」

「あれが証拠だよ~」

 

指名手配の張り紙の上に、賞状と思しきものが額縁に入れられて飾ってある。

 

「あれは何?」

「あれはな、うちのカワサキの活躍で、王都におけるアクシズ教徒の異常犯罪が大幅に減少…というよりほぼなくなったってことで、王都警察署長が彼宛に送った感謝状さ!うちのちょっとした自慢だよ」

「へ~、凄いじゃんカワサキ!」

「や~、それほどでも~…」

「いやいや、それだけお前は王都のためになることをしたんだ、それも誰もなしえなかった偉大なことをな!自慢したって何の問題もないと思うぞ!」

「て、店長までそんな~」

 

ふと周りを見渡してみると、今までの話を全部聞いていたお客さん達がカワサキを期待の目や憧れの目で見たり、その通りだと大きく頷いたり、小声で口々に称賛したりしている。

アクシズ教徒の悪行は誰が見ても納得いくはずだ。

無理矢理でも店を大きくしたってことは、それだけ常連客も多いはず。

となれば、無銭飲食の現場を実際に見た人だってこの中には多くいるはずだ。

それに大体、誰一人として反対の意を示してる人が見当たらない。

僅かでも「それは言いすぎなんじゃないか」と考えてそうな人がいないんだ。

この状況なら誰だって、アクシズ教徒への評価が全うだと分かるさ。

けどアクアはそんな反応にも全く気付く様子はなく、カワサキを怒鳴り散らす。

 

「何が凄いのよ!!どこが偉大なのよ!!こんな重罪人に感謝状送るなんてここの警察はどうかしてるわ!!あ、そうか分かった!アンタ警察署長を脅迫したのね!?『感謝状くれなきゃ料理にするぞ~』って脅したんでしょ!?」

「全く…日頃の行いも悪けりゃ往生際も悪いね~。百歩譲って仮にアクアが正しいとしてさ~、そんなことして私にな~んのメリットがあるわけ~?」

「白々しいにもほどがあるわ!そんなのここの評判を上げるために決まってるでしょ!私の信者達を危険物扱いして自分の犯罪行為を正当化してるのよ!そうに違いない!どう、アンタ達だってそう思うでしょ!!」

 

ここで初めてアクアが周りの人に目をやった。

勿論今の言葉に賛成する人はいない。

皆アクアに冷たい視線を送る。中には鬼の形相でアクアを睨む人も。

だが、そんな状況で平然と逆ギレするのがアクアだ。

 

「何さその顔は!皆どうしちゃったわけ!?目の前に重罪人がいるってのにホっとくの!?そう、それならいいわ!!全員我がアクシズ教に入信なさい!!私が全員改心させてやるわ!!!」

 

すると、「改心すべきはお前だ!」というどっかから聞こえてきたブーイングの声を皮切りに、全員が口々にブーイングを浴びせる。

 

「無銭飲食を平気でする輩を擁護するような宗教に入るなんてとんでもない!!」

「サービスを提供されてるんだからその代価を支払うのは常識だろ!そんな常識すらない連中と付き合うなんてまっぴらごめんだ!!」

「アクシズ教徒は入信を強制することと犯罪を犯す以外にすることないのかよ!?」

「そうだ!貧しい人への配給を独占する元気があるなら自分達で食糧生産しやがれってんだ!!」

「俺なんか腹減ったって理由で食い物カツアゲされたんだぞ!そいつもアクシズ教徒だった!」

「こんだけのことしといて、よくイイ子ぶれるな!!流石は『女神の皮を被った邪神』様だ!!」

「しょうがないねそりゃ、善悪の区別もつかないバカを崇めてるんだから、自分が邪神だってことにも気付いてないんだろ絶対!!」

 

こんな内容がそこかしこから聞こえてくる。

アクアは涙目になりながらも、怒りに満ちた顔で聞こえてくる方をいちいち睨みつける。

往生際が悪いのか、それともただのバカなのか…今となっては区別できない。

ていうかここまで言われて、まだ自分は間違ってない的な雰囲気を出せるのが1周まわって凄い。

多分往生際の悪さとバカ、両方の分野において「神ってる」のがアクアなのかもしれない。

そしてそれが、アクアが神になれた理由じゃないか…?

ゆんゆんと「迷惑者の片割れ」は現状に呆れ、うつむいてる。

いやめぐみん、言っとくけどキミも同類だよ?

爆裂魔法の迷惑度合いをいい加減考えてみようよ。

そんなバッシングが落ち着いた時には、流石のアクアも限界が近い感じになっていた。

けど、鬼の形相は変わらない。

これ以上ここにいてもしょうがないと思ったボクが店長にお勘定を頼もうとした時、入り口の窓ガラスが割れた。

外の誰かが石を投げたみたいだ。

そしてそれを皮切りに、カワサキを出せという叫び声が聞こえた。それも1人2人じゃない。何十人もいるみたいだ。

それに対し、カワサキはフンと鼻を鳴らしてお客さんに声をかける。

 

「ご心配なく~。すぐに解決しますから、少~々お待ちを」

 

明るくそう言って、カワサキは店の外に出る。

ドアが開いたままだったのでボクは影から様子を見ることに。

もしもの時は助太刀するつもりだ。

入り口付近を取り囲んでるのは、アクシズ教徒で間違いないだろう。

全員が鬼の形相でカワサキを睨みつけてる。

その様子に、周りを見渡したカワサキの顔は驚くどころか呆れていた。

何時か来るんじゃないかと予想してたんだろうな。

ボクも何となくそんな気がしてたもん。

 

「貴様に告ぐ!我らの家族を今すぐ返すんだ!!」

「家族?というとアレですか?『無銭飲食の常習犯』達のことですか?何故犯罪者を引き渡さねばならないんです?」

「ごたごた言ってねえでさっさと返しやがれ!!こんなことしてタダで済むと思ってんのか!!」

「こんなことですって?奴らはこの店でかれこれ10回以上無銭飲食してるんですよ?9人合わせりゃ100は軽いでしょう。そんな犯罪を犯して、タダで済むと思ってたんですかね?」

「黙らんか!!そんなちっぽけなことで監禁するとは!!」

「デカい図体のクセに小さい事気にしてんじゃねえよ!!とっとと返しやがれこの悪魔め!!」

「悪魔?ほっほっほっ、邪神を崇めている悪魔達に悪魔呼ばわりされるいわれなんてありませんよ」

「何だと!?我らの家族を不当に罰するだけでは飽き足らず、偉大なるアクア様をも侮辱する気か貴様!!」

「侮辱も何も、犯罪行為を擁護してる時点で邪神以外の何者でもないでしょう?聞くところでは、魔王軍幹部の中にも邪神はいるそうですが、彼らとてここまでの悪事を平然とはたらけるほどの輩ではありませんよ?彼らだってアンタ方と違って良識というものをちゃんと持ってますからね」

 

ホントなの!?

アクアって邪神より良識がないの!?

ということは…以前エリス様に言った「邪神より邪神らしい」って表現は正しかったんだ!

こりゃあ尚更追放を推奨しとかないと本格的にマズイ気がする。

今度エリス様に会ったらそうしよう絶対!

 

「黙らっしゃい不届き者!!さっさと返せば済むものを!!」

「またそれですか?犯罪者を引き渡すなんてことしたら、それこそこっちが犯罪者じゃないですか。そんなことも分からないなんて…アンタら本当に人間なんですか?」

「人でなしに言われる筋合いはない!!我らの同胞を、仲間を、家族を返せ~!!!」

『かーえーせ!かーえーせ!かーえーせ!かーえーせ!かーえーせ!かーえーせ!』

 

…どう考えてもこれ、仲間を取り戻すことしか頭にないよね。

理屈もなにも抜きにして。

だってさ、言ってること支離滅裂なんだもん。

コックカワサキはこの現状を見て大きく1つ溜息をつくと、大鍋を出現させて、ボクが以前やったみたいにフライパンをお玉で連打した。

 

『うわあああああああああ!!!!』

 

その場にいたアクシズ教徒達は1人残らず大鍋に吸い込まれた。

そしてカワサキはその鍋をレストラン内に運び込み、厨房近くまで移動させると、お玉でかき回し始めた。

 

「いや~皆さん、先ほどはご迷惑をお掛けしました。ホントにアクシズ教徒を相手するのは疲れますね~。皆さんにお詫びと言っては何ですが、追加で料理を提供したいと思いま~す。あ、お代は結構です。あくまでお詫びなんですから~」

 

と言ってカワサキは煮込み、かき回す。

んでアクアはというと、自分の信徒達が大鍋で調理されているのを呆然と眺めてる。

 

「さ~て、出来上がりましたよ~。さあ皆さん!どうぞお召し上がりくださ~い!!」

 

カワサキの声とともに、大鍋から如何にも高級そうな料理が大量に飛び出し、テーブルに着地する。

その光景に皆、歓喜の声をあげた。

 

「おお、すっげ~!!」

「高級料理ばっかだぞ!」

「これ一度食べてみたかったんだ~!!」

「ねえカワサキ、これ全部タダでいいの!?」

「勿論さ!まだまだ出せるからね~!皆さ~ん、遠慮はいりませんよ~!今日は特大サービス、めったに食べられないであろう高級料理が食べ放題です!存分に食い倒れていってくださ~い!」

 

その言葉にお客さんだけじゃなく、厨房の奥にいたであろう他の料理人や従業員も拍手喝采した。

皆が皆、食べたいものを席を巡りながら食べる光景は最早バイキングだ。

ボク達はたまたまこっちに飛んできた霜降り赤蟹鍋をついばむ。

プププランドの蟹料理なんて、この味を知ったら当分食べる気にならないかもね!

その後は目についた高級料理にも手を出していき、そして結局、レストランにいる全員が食い倒れることになった。

いや、1人は除く。

アクアは違う意味で倒れてた。仰向けに大の字で。

ショックが大きすぎて気絶しちゃってたらしい。

ボクはカワサキに歩み寄る。

 

「それにしても凄かったな~さっきの高級料理ラッシュ」

「そうね~…強くて凶悪なモンスター程、高級料理を大量に作れるんだけど~、まさかあそこまでとは…」

「それぐらいアクシズ教徒が邪悪な存在だったってことじゃない?」

「それもそうだね~…」

「あ、そうだ!」

「ん?ど~したの?」

「ちょっと閃いたんだけどさ…」

 

ボクはカワサキに耳打ちすると、勘定を済ませ、「ファイター」で一旦アクアを店から出し、今度は「ストーン・ストーン」でアクア達を頭の上に乗せて城に戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日、アクアはショックから前日の記憶をほとんど飛ばしてしまったらしく、違和感を覚えながらも普通に朝食をとっている。

ま、結果オーライだね。ゆんゆんとめぐみんも、今回の件は絶対秘密ってことで同意してくれたし。

それにしても、まさかアイリスが朝食に誘ってくるなんて思わなかったよ。

白いテーブルクロスがかけられた無駄に長いテーブルの上には、幾種類もの肉やパン、スープや果物が並んでる。

ふと見れば、アイリスが何やら心配そうな顔をしてる。

 

「どうしたの?」

「え?あ、その…皆さん何やら元気がなさそうでしたから、どうしたのかと…」

「あぁ、それか~。大丈夫だよ。元気ないんじゃなくて、昨日の夜食べ過ぎたってだけ」

「そ、そうなんですよ!予想以上にボリュームがあったので、つい食べ過ぎちゃいました!」

「全くです!あのファイアードレイクの肝の香草と肉詰めってやつは、ただでさえ大きいのに5個も6個も皿に盛り付けて、絶対1人で食べる量じゃないですよ!おかげでなかなか朝食が入りません…」

 

食べ放題の前から半分食い倒れ状態だったからね。

そこに更に詰め込んだんだから…当然だね。

お腹をさする2人を見て、アイリスはとりあえずホッとしたらしい。

すると今度はアイリスが、予想外のことを口にし出した。

 

「そうだカービィさん、勝手なことかもしれませんがその…もうちょっとだけこちらにお泊まりいただけませんか?」

「ん?別にいいけど、どうして?」

「ちょっとした思い付きなんですけど…昨日のカービィさんの活躍を見てて思ったんです。本当にカービィさんに匹敵する方はおられないのかと…」

「ふんふん…」

「それで、どうしても確かめてみたくなったんです。その為に、ある企画を考案したんです」

「考案?確かめる?…それってつまりこういうこと?世界中の腕利きの冒険者達と戦ってほしいってこと?」

「はい!」

「「「ええ~~~!!??」」」

 

ボク以外の3人は驚愕した。今更だけどダクネスがいないな。

あとで聞いとこう。

 

「あ、勿論優勝者には相応の賞品を用意してありますから!」

「いやいやいや、そういう問題じゃないでしょう!自分が何言ってるか分かってるんですか!?冒険者同士を戦わせるなんて前代未聞ですよ!!」

「何?こういうことって今までなかったの?」

「そりゃないわよ!冒険者ってのはあくまでモンスターと戦うんだから!」

「でもさ~、自分の実力が冒険者の中でどの程度かってのはこういう手のことを通じてしか分からないんじゃない?同じモンスターでも強さ云々は個体差があるし、勿論ボクが今日討伐予定のエンシェントドラゴンにしたってさ…」

「だとしても、初の試みとなるのは事実ですし…冒険者同士で戦うってのに抵抗ある人は当然いるでしょうから…来てくれますかね?」

「それはやってみなきゃ分からないじゃん。やってみて来なかったら止めればいい。それだけじゃないか」

「てゆーかカービィ、貴方何でそんなに乗り気なわけ?」

「別にノってはいないよ。賞品が本当に相応のものならボクはどっちでもいい。アイリス、とりあえず宣伝と準備だけしといてさ、本当にやるかはギルドの様子見て決めるってことでいいんじゃない?」

「…そうですね!やってみましょう!」

 

話が一区切りついたので、ボクはダクネスのことを聞いた。

 

「それはそうと、ダクネス知らない?」

「あぁ、ダスティネス卿なら、やることがあるからと言って、アクセルに戻られております。夕方には戻ると」

「あ~、『修業』か」

「修業?」

「うん、クレアは知らないだろうけど、ダクネスは剣の扱いがヘタクソでさ…」

 

知らないだろうけどとは言ったけど、当のクレアはそれほど驚いていない様子で顎を撫でてる。

もしかして知ってた?いや、それならちょっとでも驚く必要はない。

となると…魔王軍襲撃の時だな。

あの時のダクネスの行動から予想したんだろう。

 

「なるほど、よく分かりました…」

 

クレアは話を打ち切る意味を込めたであろう一言を口にする。

ダスティネス家との関係が崩れるのを恐れて深入りを避けたんだろう。

 

「さてと、そろそろエンシェントドラゴンを討伐しに行くか」

「油断は禁物ですよカービィさん。ドラゴンは元々、魔法にも物理攻撃にも高い耐性がありますから。ましてエンシェントドラゴンはドラゴンの最上位種で、神と互角に渡り合える力を持つと言われていますから」

「なら余裕じゃん。アクアと互角なら簡単に倒せるよ」

「それどういう意味!?」

「冗談はともかく、真剣にやらねば全滅もあり得ます。心してかかりましょう」

「めぐみん、言いたいことは分かるけど、戦う前から気張っても意味ないよ」

 

てなわけで、アイリスの推薦状片手にギルドで討伐依頼を請けたら「ドラグーン」で一飛び。

今回はめぐみんを後ろに座らせて、アクアは「バインド」でドラグーンの爪部分に括り付けた。

白い霧が立ち込めていて、薄暗くも神聖な何かを感じる…そんな感じの場所だった。

それでも、ドラゴンの中でも巨大なエンシェントドラゴンはすぐにわかった。

立ち上がったら街を見下ろせるんじゃなかろうかと思えるくらいの大きさだ。

霧と同系色の白い鱗で覆われたそのドラゴンは…どうやら寝てるらしい。

かなり大きな寝息が聞こえてくる。

 

「…どうやらまだ気付いていないようです」

「カービィさん、どうします?やっぱり例の『スーパーコピー』で」

「いや、とりあえずまずは殴ってみる。本気でやってどこまでダメージ負うか確かめたいんだ。それでダメなら別のでいけばいい」

 

すると、エンシェントドラゴンが突然目を覚まし、唸り声をとどろかせる。

今日はダクネスがいないわけだから、ゆんゆん達に攻撃の矛先を向けさせないようにしなきゃ。

 

「グオオォォォォアアアアアアアァァァァァ!!!!!!」

 

ボク達の存在に気付いたエンシェントドラゴンが咆哮をあげる。

これで一気に戦意喪失した「2人の迷惑者」は大混乱。

ゆんゆんは一瞬恐怖に飲まれそうになってたけど、すぐに立ち直ってドラゴンを睨み据える。

 

「『ファイターカービィ』!」

 

ボクは手筈通りにドラゴンを殴りにかかる。

ゆんゆんに注意を払っていたエンシェントドラゴンは、ボクが真横に来るまで気付かなかった。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

ドラゴンがボクの方を向いた途端、ゆんゆんは光の斬撃を放った。これはボクとしても予想外だった。まさかゆんゆんがここまでするなんて…。

ダメージは与えられなかったようだけど、おかげで難なくドラゴンの頭上をとれた。

 

「『スパイクパンチ』!」

 

上空の相手を殴り落とす拳…それを全力でエンシェントドラゴンの脳天に見舞った。

大きな鈍い音とともに何かがひび割れるような音がしたかと思えば、ドラゴンの脳天から血がしたたり落ちてる。

だが痛みで悶絶してこそしているものの、まだ動けそうだ。

やっぱりこれだと仕留めきれないか…。

 

「イツツ…」

 

それに思ったより硬いなあの鱗。

殴ったところ以外は一切ひび割れがない。

何となく左手で殴って正解だったな。

よし、まだ悶絶してる今がチャンスだ!

トドメの「スーパーコピー」はもう決めてある。

 

「『ウルトラソード』!」

 

超巨大な剣の一振りで、エンシェントドラゴンは真っ二つになった。

そしてボクのレベルは9。

順調に上がってる。

 

「あんな巨大な剣を軽々扱うなんて…」

「一体カービィの実力はどこが限界なんでしょう…」

 

後ろでそんなことを力なく語る「2人の迷惑者」はほっといて、ボクはゆんゆんに歩み寄る。

 

「ありがとねゆんゆん。あのタイミングは良かったよ!」

「いえいえ、カービィさんの拳の方が…」

 

なんてことを交わしながらボク達は帰路についた。

報酬の10億エリスを受け取る際、ギルドにいた冒険者が「冒険者新聞」とかいうものを読んでるのが気になり、銀行に預けたらすぐに新聞を貰って読んでみた。

期待の新人冒険者の欄にはボクの名前がある。

そして読み進めると、そこにはアイリス考案のトーナメントバトルの挑戦者を募集する記事があった。

4日後に開催だそうな。

今朝聞いたばかりだってのに、掲載早すぎない!?

…まぁ、王女様の意向なら可能か…。

なんて考えてたら、ゆんゆん達が覗き込んでいた。

 

「もう新聞に載せてたんですか…」

「そうみたいだね」

「で、どうするの?ルールも書いてるけどどうする?」

「どうするって…」

 

読み進めてみると、対戦方法は①3人一組の勝ち抜き戦②2人一組のタッグ戦③戦闘役とヘルパー役が組んでのバトル、この3つの中からランダムに毎回選ばれるらしい。

で、ルールは「指定の敷地の中で戦い、故意に死を与えてはならない」というものだった。

 

「ねえ、どうするのよ?」

「あ~それなら気にしなくて大丈夫だよ」

「大丈夫ってどういう意味ですか?」

「そのまんまの意味だよ。全部ボクに任せといて!」

 

そういうとボクは昼食を済ませて地図を頼りに王都を散策するフリをした。

そしてボクは、スターロッドから貰った力でプププランドに一時的に里帰り。

道中でリックに会った。

 

「おっカービィ!戻ってきたのか」

「うん、一時的にだけどね。ちょっと頼みたいことがあって…」

 

メタナイトがボクの現状をちゃんと説明してくれてたようで、リックをはじめ、他の皆もボクの頼みを割と素直に聞いてくれた。

確認してみると、あっちの世界とプププランドは時間的に同期しているみたい。

細かいプランも説明し終えると、向こうの仲間を心配させないようにと皆に早々とさよならを言って王都に戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

長々説明してたので、空は夕焼けが近い。

帰り道で偶然ダクネスと会った。

 

「あ、カービィ…あ~その~…き、昨日はすまなかった。その、私の方も予想外のことだったとはいえ、取り乱して場もわきまえず迷惑をかけてしまったようだ…」

 

しどろもどろながら、ボクの機嫌を損ねた件について謝罪したいことは分かった。まだ「仮採用」だってこと、忘れてたなこりゃ。

 

「それより、昨日言ってた武器屋ってどこ?」

「あ、ああ!そうだったな、え~と…」

 

偶然にも現在地が武器屋にほど近い場所だったので、到着にはそう時間はかからなかった。

ここがオススメの武器屋となった理由は、俗にいう「短剣」を一番豊富に取り揃えている点にある。

そしてこの種の武器の中にも聖剣や魔剣と呼ばれるものがあるらしい。

聖剣と魔剣の違いは主に神の祝福を受けた魔法剣か否かということだけど、魔剣の中には呪われたものもあるらしいから気をつけないと。

で、その中でも一番ボクになじみそうだったのが、「パタ」と呼ばれる珍しい剣だった。

最大の特徴は鎧の腕部分、いわゆるガントレットと一体化したような外見をしていることだ。

このため、剣を持つ手周辺の守りが強化される。

しかも拳部分のみだったので尚更ボクの腕にフィットする。

店主に聞いてみると、この剣には何と「持ち主に合わせて進化する」という力が込められているらしい。

果たしてこれが「ソード」にどんな効果を与えてくれるのだろう。

他の人には使い勝手が悪いようで、値段はそんなにしなかった。

宴の時間にどうにか間に合い、そこから楽しい夕食会…とはいかないようだ。

ゆんゆんをはじめ、ボクのパーティのメンバーは全員周りの冒険者達に称賛の声を掛けられ食事どころじゃない。

特にダクネスは同じ貴族と思しき男達に囲まれている。どうせ言い寄られてるんだろう。

ボクの場合は終始一貫して食事メインでやり取りしてたせいか、そこまで積極的に声を掛けられなかった。

いや、アクセルでの噂の件もある。半分くらいはボクの食べっぷりの噂が原因だろう。

そのうち、何故かアクアと芸達者決定戦的なことをやる羽目になった。

そう言えばアクアって「宴会芸スキル」ってやつを取ってたな。

そのせいなのか、結構上等な水芸を披露した。

そしてボクの番。

一応こういう場合に使えるのが3つほどあるけど、まずは手堅くいこう。

あの「マジック」は魔法と混同されるだろうから抜きにして。

念のためにボクも「宴会芸スキル」手に入れてっと…。

 

「『パラソルカービィ』!」

 

直前にスキルを入手したせいなのか、ボクの大道芸は大いに盛り上がる。

壺やらガラスケースやら、時には体の小さな人をも回してみせた。

もっと凄いの見せてくれと言われたので、その声にこたえるべく、もう2つも出すことにした。

この時点でアクアが、ギリギリ勝ってる的な空気つくってたけど、もう関係ないね。

 

「『サーカスカービィ』!」

 

ボクは火の輪くぐりや玉乗りジャグリング、トランポリン、そしてバルーンアートを披露した。

アクアのとはまた違う、体を張ったボクの大道芸に皆拍手喝采。

跡取りと思しき子も同席してたせいか、特にバルーンアートが大好評。

注文通りの作品を仕上げられたので、ボクも喜びでいっぱいさ。

さてと、仕上げは…。

 

「『フェスティバルカービィ』!」

 

派手な音楽とともにボクが踊ると、周りにいた皆もそれにつられて踊り出す。

どんなにダンス下手な人でもボクの能力であのダンスだけは上手にできるということで、宴が終わったあと貴族達が口々にボクを何とか雇えないかと相談しているのが聞こえた。

その後の王都での生活は悠々自適。

ある日はギルドに強者達が急に大勢押しかけててビックリし、更にボクが一昨日カワサキにアドバイスした「本来食材にならないモンスターの亡骸限定で料理に加工するサービス1回お1人様につき2千エリス」が予想以上に大好評でもっとビックリした。

ある日はドラグーンに乗ってみたいと駄々をこねるアイリスに、クレア同行という条件付きで飛行許可が下りた。そして流れでアイリスを「バインド」で吊り下げた状態で「ジェット」を発動し、2人だけの空中散歩を楽しんだ。

ある日は宴の時のボクの大道芸が広まって、王都に「大道芸ブーム」が到来した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そしていよいよ、トーナメント戦の日がやって来た。

急造とはいえ、それなりに立派な闘技場が出来上がっていて、その周囲には臨時の出店が立ち並んでる。

観客の出入りも非常に多い。今までなかった大会だから皆気になるんだろうな。

そしてボクはこの日のために特別なプランを用意した。

アイリスにだけはそのプランを事前に説明してある。

きっと皆ビックリするぞ。

トーナメント表に目をやると、そこには懐かしい人の名前が。

 

「あ、ミツルギさんがいる」

「勿論さ!こんな面白そうな大会、出ないわけにはいかないだろ!」

 

ミツルギさんが後ろから声を掛けてきた。

 

「あれ、その女の人は誰?あの時はいなかったけど」

「あぁ、コイツはアークプリーストのレティーだ。かなり腕の立つ奴だから重宝してるよ」

「へ~」

「ヘルパー役と組むってタイプでは大いに役立つだろう」

「そうだね」

「お前とは是非とも決勝戦で会いたいもんだ」

「ボクも~」

 

そんな感じのことを話して、ボクはミツルギさんと別れた。

ボクのチームは…あった。

しかも何とシード枠!

決勝まで出番がない…仲間呼ぶ意味あったかな。

偶然にもアイリスと会ったのでそのことを話したら、ちょっとしたサプライズを用意してあるとだけ言った。

ボクはそれだけで何となく分かったのでボクの方もそれ以上何も聞かなかった。

アイリスと別れて間もなく、今度はゆんゆん達がやって来た。

 

「おいカービィ!これは一体どういうことだ!?」

「これって?」

「これですよ!シード枠の『チームプププランド』ってカービィさんのですよね!?何でこんなチーム名に?」

「何でってそりゃ…プププランドの皆の力が、この世界でどの程度通用するか気になったからね」

「「「「ええ~~~!?」」」」

「それじゃあ貴方、そのプププランドから…?」

「うん、もう呼んであるんだ。勿論皆には特等席で見てもらうつもりだよ!」

「見てもらうつもりって…仲間外れにされた気分が凄まじいんですが」

「めぐみん、そんなこと言わないであげてよ。カービィさんだってたまには故郷の気分を味わいたいでしょうし…」

 

ゆんゆんの説得もあって、皆は指定された席に向かう。

そしてボクは控室でプププランドの仲間達と合流した。

いよいよ大会が始まるぞ。

 

「会場の皆様!長らくお待たせいたしました!間もなく、冒険者同士が争い最強の冒険者を決定する夢の大会『グランドスラム・コロッセオ』を開催いたします!」

 

大音量の放送が聞こえる。

司会兼実況役の人と解説役の人がそれぞれ自己紹介し、更に特別解説役として何とアイリスが!

まぁ、企画したのは彼女だしね。でも特別解説役って何するんだろ?

そして大会に出場する他の冒険者達が1人ずつ呼ばれ、それぞれ自己アピールをしてる。

中にはキメ台詞を言う人も。

そして同時に冒険者カードの内容も皆に知られることになる。

仕組みは知らないけど、手前の台にカードを置くと、後ろにでっかく内容が投影されるみたい。

そしてついにボクが呼ばれる番だ!

 

「さあ、最後はシード枠、即ちこの大会の大本命の登場です!謎に満ちた異郷の地『プププランド』出身。状況に応じて様々な姿と能力を発揮する『コピー能力』を駆使して戦う伝説の戦士、その名は~、カービィ!!」

「ハ~イ!」

 

ボクはステージに上がると皆に手を振る。

すると皆は拍手喝采。中にはボクの名前を連呼してる人も。

それだけボクは有名になっちゃったんだな。

手前の台がボクに合わせるように低くなったので、他の冒険者と同じ感じでカードを置いた。

でっかく投影された内容に、司会者を含め全員が驚きの声をあげる。

 

「おお~っと、これは凄い!レベルが2ケタに達していないにも関わらず、エンシェントドラゴンにマンティコア、更には魔王軍幹部ベルディアまで討伐している!これはシード枠に選ばれるのも無理はありません!しかも聞くところではカービィさん、『コピー能力』でベルディアの能力を取り込んでしまったそうですがどうでしょう皆さん、1度見てみたいと思いませんか?」

 

司会者が観客に問うと、それに答えるように観客席から大きな声が響き渡る。

 

「見たいということですね?ではカービィさん、申し訳ありませんが1つ、お願いします!」

「あ、うん、『フォーメーション・ベルディア』!」

「何とカービィさん、漆黒の鎧を纏った姿に変化した~!鎧のデザインは確かにベルディアのものと同じだ!これは凄い!しかも聞くところでは、『死の宣告』も使えるんだとか…」

「うん、マンティコア討伐の時に試したんだけど、ちょっと凶悪すぎたから上級モンスター以上の相手以外には少なくとも使うつもりはないよ。ましてやこの大会で使うなんて…!」

 

ボクの言葉に、観客席からはボクの能力に驚く声と安堵の声が入り乱れていた。

 

「そしてカービィさん、今回はいつものパーティメンバーとは違う編成とのことですが、それは一体?」

「あぁ、それね。ボクの故郷の仲間達の力が、ここではどの程度通用するのか確かめてみたくてさ」

「何と何と、プププランドの住人がメンバーとは!これはいよいよ目が離せなくなってきましたよ!では、全出場者の紹介が終わりましたので、早速第一試合を始めたいと思います!」

 

他の皆は控室に戻る。

それぞれ個室になってたので、他の冒険者達にも、来るべき時まで秘密にできるぞ。

これもアイリスの配慮なのかな?

映像中継的なものはないけれど、実況放送は流れるから現状を把握しやすい。

参加したのはボク達を含めて計9組。

最後まで勝ち抜いたパーティと対戦することになる。

最悪戦わずに終わるかもと言おうか迷ったけど、意外にも皆はその時はその時といった感じでのんびりくつろいでたので少し安心した。

楽しくお喋りをしてるうちに、1回戦目が終了する。

 

「さあ、第1回戦はこれにて終了です!続きましては準々決勝~…と行きたいところですが皆さん、カービィさん達の戦いを見てみたいと思いませんか?」

 

再度司会者が観客に問うと、観客はさっきより大きな声を響かせる。

 

「やっぱり見たいですよね!それは良かった!実はカービィさんの方も、一通り戦う前提で仲間を集めたようですので、私としても決勝まで何もなしというのはナシだと思ってました!え~たった今、私の手元にカービィさんの仲間に関する情報が届きましたが、これに関しましては登場まで伏せておきたいと思います!それではこれより、敗者復活戦を兼ねた特別試合を始めます!対戦方法は勝ち抜き戦です!」

 

対戦相手はくじ引きランダムに選ばれるようだ。

ボクはサプライズのため、皆より先にバトルエリアに入る。

そこではすでに、対戦相手のパーティがスタンバイしてた。

 

「さあ、カービィさんが出てきました!ではカービィさん、今回のメンバーは?」

「ちょっと待ってて。お~い!リック、クー!」

 

呼ばれた2人が、意気揚々と出てくる。

 

「それではご紹介します!まず先に出てきたのは、運動神経抜群でカービィさんに次ぐ食いしん坊、喧嘩上等の怪力ネズミ、リック~!」

「よっしゃあ!暴れまくるぜ~!」

 

リックが自信満々なのと、司会者の実況とが相まって、観客からは期待の声があがる。

 

「続いて登場したのは、雨の日も風の日も何のその、何時でも何処でも飛び回る、スピード自慢のクールな梟、ク~!」

「フッ、まさか俺と勝負したいなんていう奴がいるとはな…」

 

クー本人はいつも通りなんだろうけど、観客席からは明らかに冷やかしを含んだ声が声援に混じってる。

一瞬不安に駆られたけど、クーが気にしてないみたいだから一安心。

ここでボクは司会者にある提案を持ちかけた。

 

「あ、そうだ。ねえねえ!ちょっと相談なんだけどさ~!」

「おや!?カービィさん、何か言いたいことがあるようです。一体何でしょうか!?」

「いや実はね、この2人にも平等にバトルする機会を設けたいと思ってさ~、そこで相談なんだけど…今回の勝ち抜き戦、先鋒・中堅・大将同士で戦うってのはダメかな?」

「お~っと!?これは意外な提案!勝ち抜きではなく、シンプルに勝利数で決めるということですね?」

「いやいや、とりあえずまずは一通り戦って、一方が全滅するまで戦い続けるって感じ。例えば、一方が中堅だけ残ってもう一方は先鋒と大将が残ってるって場合には、中堅だけ残ってる方はまたローテーションで相手の先鋒、大将と戦うって感じで」

「なるほど、あくまで勝ち抜き要素は残す方向ですね!さて、カービィさんはこのように言っておりますが、対戦相手の皆さん、そして観客の皆さん、いかがでしょうか!」

 

対戦相手の方はあまり乗り気じゃない感じだったけど、絶対に嫌というわけじゃなかったせいか、観客の興奮した声に応える形で了承してくれた。

相手の先鋒はごつい体のクルセイダー。ボクの方は勿論リックだ!

試合開始と同時にクルセイダーは大剣を振り上げて突進する。

しかし、リックは冷静に大剣を持つ右手を鷲掴みにする。

 

「へっ、思ったより力ないな~、どりゃっ!」

 

リックはどてっぱらにストレートパンチを食らわして相手をぶっ飛ばす。

よく見れば、クルセイダーの鎧はリックの拳の形に凹んでいた。

 

「ぐ…チクショウめ!!」

 

クルセイダーとしてのプライドが傷ついたのか、相手は激昂して再度突進。

リックは逆にそれを利用して巴投げをかます。

だが、相手は素早く反撃の体勢に入ったため、リックは背後をとられる結果に。

勝利を確信したのか、相手は笑みを浮かべて剣を振るうけど…。

 

「おいおい、背後に回っていいのかい?『ニードル』!」

「な、何ということだ!背中の体毛が棘状に変化したぞ!まさかこれは、カービィさんと同じ『コピー能力』か!?」

 

リックは冗談半分って感じで言ってたけど、まさかホントに能力をボクと同じように改良してたなんて。

多分スターロッド使ったな。

リックのニードル、その何本かが鎧の隙間に刺さったせいで相手は大きく怯み、距離をとった。

 

「おっし!なら今度はこっちから行くぜ!!」

 

リックは突進を開始。

相手は盾を構えて迎え撃つ。

 

「俺も随分とナメられたもんだな!『ストーン』!」

 

リックのソレはボール状だからね。走りながら使えばそのまま転がっていける。

強化された突進は防ぎきることができず、盾をはね飛ばされ、相手の体は無防備状態で大きく仰け反ってしまった。

それを見たリックは素早く元に戻る。

 

「お次は、『ファイアー』!」

「これは予想外の一方的な戦いだ!岩球に変身したかと思いきや今度は火炎放射です!意外にも中距離戦をも得意とするようです!」

 

しかも明らかに顔面狙ってるよリック。

とはいえ、相手の方は少し火傷した程度で済んでるみたいだし、その後は盾で防いでる。

あれが「状態異常耐性」スキルの効果なのかな?

でもリックにとってそれは問題じゃなかったみたい。

リックは火炎を吐きながら相手に近付いていく。つまりあの炎は囮だ。

そしてギリギリまで近づいたところで、火炎攻撃を止めると同時に強烈なアッパーカットで相手を上空に飛ばした。

どうするのかと思いきや…。

 

「これで仕上げだ!!『パラソル』!」

 

あぁ、いつものアレか。

リックは鼻っ柱にパラソルを置くと、落ちてきた相手を大道芸のように回し始める。

ボク達にとっては見慣れた光景でも、この世界の人達にとっては予想外のことばかり。

司会の人も十分に実況しきれてないしね。

そのうち、リックは敷地の端まで来ると、敷地の外に相手を投げ飛ばした。

 

「しょ、勝負ありー!これが一番予想外です!まさか宴会芸そのものと言ってもいい技でトドメを刺そうとは!何という戦闘技能でしょう!」

 

最早司会の人が何を言ってるのか全然分からない。

けど興奮していることだけは伝わる。

相手は精魂尽き果てた感じでパーティに戻る。

リーダーと思しき人はクルセイダーを励ました後、中堅のアークウィザードらしき女の人に何かをささやいてる。

アドバイスしてるのか、それとも警戒を促してるのか。

ボクもクーに言っとこう。

 

「クー、注意してね。キミの相手は魔法使いだから!」

「みたいだな。だけど石に変えられるわけじゃないんだろう?」

「そうだけど、相手が氷属性の魔法を使えるとしたら厄介だと思うよ?」

「確かに氷はちと苦手分野だな。とりあえず攻撃のタイミングは見逃さないようにしないと…」

「うん、頑張ってね!」

「…カービィ、チョット見ない間に随分大人びたなオイ」

「そう?」

 

クーは敷地に入ると、翼をばたつかせる。

この世界じゃ空を飛べる奴は珍しいみたいだから、結構有利にやっていけるとは思う。

でも、もし彼女がドラゴンとかと戦った経験があったらそうも言ってられないよね。

試合開始と同時にクーは空に舞い上がる。

が、アークウィザードの方は動かない。

クーの攻撃パターンを見極めようとしてるのかな?

でもそれが仇になった。

観察に神経を費やしたばっかりに、クーが飛ばした羽に対して十分な回避行動がとれず、左わき腹と右膝に結構な切り傷を負ってしまう。

 

「キャアアアアアア!!!!」

「またまた予想外の攻撃が飛び出したぞ!まさか羽毛が刃物として機能するとは!!」

 

アークウィザードは激痛でその場に倒れ込んでしまう。

 

「フッお嬢ちゃん、俺の羽に触るとケガするぜ?『羽毛カッター』!」

 

クーはクールにそう言うと、さっきより大量の羽を飛ばす。

相手は右ひざのケガを抱えながらも、ファイアーボールと渾身の横跳びで回避を試みる。

しかし、やっぱり全部回避することはできず、今度は背中に切り傷を負ってしまう。

 

「アウウウゥゥゥ…!!」

 

相手が激痛に耐えかねて動きが止まるのを、クーは見逃さなかった。

まぁ、フクロウは有能なハンターだもんね。

クーは彼女に掴みかかる。

それも魔法攻撃を警戒してか、左足で左肩を掴んで自身を固定して、右足で杖を蹴り落としてから右肩を掴むという念の入れようだ。

そしてクーは彼女を掴んだまま再び空に舞い上がる。

相手は激しく暴れるけど、クーはそんな中でも冷静に次の攻撃の準備を進める。

 

「うわああああ!!離せー!!降ろせー!!」

「もう手遅れだ!『パラソル』!」

「な!?まさか私もさっきみたいにする気!?」

「フッばかいえ、俺はあんなおふざけはしねぇよ。俺の場合は…ただ回るだけさ!『パラソル大回転』!」

「わあああああああ!!??」

 

今日のクーはいつになく気合入ってるな。

顔が見えないくらいの高速回転なんて初めて見たよ。

しかもそこからの見事な急停止。

これで目を回さない人っているかな…?

当然あの人はまともに立つことさえできない様子。

そして結局、自分から敷地の外に出てしまった。

そしていよいよ大将戦!

対戦相手はソードマスターだ。

 

「『ソードカービィ』!」

 

何だかんだであまり使う機会がないから、こういう時くらい使わないと!

対戦相手には、自分のために二刀流での戦いを避けたと思われたみたい。

個人的にこっちの方が戦いやすいってだけなんだけどな…。

それに、ソードマスターは所詮物理攻撃専門だ。

斬撃飛ばしがちょっと脅威だけど、そこまで気にすることじゃない。

ボクの方は斬撃飛ばしに魔法を付加できるから、1番呆気なく終わってしまった。

でも観客はむしろ、その圧倒的な力の差に熱狂している。

ボク達は控室に戻ると、準々決勝の様子に聞き耳を立てた。

ミツルギさんは順調に勝ち上がってる。

 

「さて、これにて準々決勝は終了です!それでは皆さん、もう待ちかねてるようですね?では第2回目の特別試合を始めます!対戦方法はタッグ戦です!」

 

次の相手はアーチャーとアークウィザードのコンビみたい。

 

「よし!行こうか、グーイ」

「は~い」

 

ボクはグーイと一緒に登場した。

 

「さて、今回カービィさんとタッグを組んでいるのは~…こりゃまた凄いのが来たようだ!かつてプププランドを滅ぼそうとした邪悪な種族『ダークマター族』の生まれでありながら、内に秘めたる大いなる力と良心に従って野望を阻止したダークヒーロー、グーイ!!」

「ど~もで~す」

 

グーイののほほんとした受け答えを聞くと、何故か不思議と気分が和らぐんだよね~。

おっと、試合開始の合図だ!

まずは遠距離攻撃を阻止しなきゃ!

 

「『ウィップカービィ』!」

「お~っとこれは、新しいコピー能力だ!鞭を武器にするようだが、果たして何を企んでいるのでしょうか!」

「グーイ、まずは奴らの動きを封じるんだ。ボクは弓持ってる方を、グーイは魔法使いの方をお願いね!」

「分かりました~」

 

ボクは鞭を、グーイは長い舌を巧みに使ってアーチャーとアークウィザードの武器をボッシュートし、適当にその辺に放って今度はそれぞれをグルグル巻きにする。

盗賊スキルの「バインド」が役に立った!

 

「素晴らしいコンビネーションだ!武器を奪い縛り上げるまでの息はピッタリ合っている!さあ、ここからどうするつもりなんだ!?」

「よし!ここまで手筈通りだ。いくよ、グーイ!」

「は~い」

「「それ~!」」

 

ボク達はグルグル巻きにしたのを一気に引いて、相手をコマみたいに回した。

けれど、相手は意外にもあまり目を回さず、すぐに武器を取り戻した。

 

「まぁいっか、それならこっちも遠距離戦だ!『レーザーカービィ』!」

「おおっあの姿は…間違いない!王都襲撃の際に巨大ゴーレムの頭を一撃で粉砕したコピー能力だ!」

 

司会者の解説を聞いて対戦相手の2人は驚きを隠せない様子。

でもそのおかげで大きな隙ができた。

 

「グーイ、やることは覚えてるよね」

「もちろん覚えてま~す」

「照射!」

「『ダークレーザー』」

 

ボクのスコープから放たれる虹色の光線と、グーイの両目から放たれる漆黒の光線は、アークウィザードが放った「カースド・ライトニング」に阻まれる。

打ち消されたわけじゃないけど、ぶつかったせいでコースがズレちゃったんだ。

出力を上げて無理矢理当ててもいいけど、どうせだから色んな攻撃を繰り出そう。

せっかく打ち合わせしたんだから。

 

「次はトゲトゲ作戦でいこう」

「は~い」

「「『Wニードル』!」」

「「からの~『ローリングタックル』!」」

 

ボク達は棘を纏った状態で相手に向けて、転がりながら突撃する。

矢と魔法の雨をかいくぐって体当たりを仕掛けたけど間一髪でかわされた。

でもこうなることは大体予想できるからね。

 

「「『Wバーンニードル』!」」

 

かわされた瞬間、ボク達は纏っていた棘を一斉発射する。

これは流石に予想できなかったみたいだね。かなりのダメージを負ったみたい。

 

「それじゃあ、仕上げはアレでいこうよ!」

「アレですね~?」

「「『Wバーニング』!」」

 

ボク達は2人の周りを円を描くように旋回し続ける。

そしてその半径を徐々に縮めていく。

アークウィザードが魔法で何とかしようとしているけど、今のボク達はそんなことじゃ止められないよ。

結局2人はボク達の炎に焼かれてギブアップした。

そして、準決勝ではミツルギさんのパーティが勝利をもぎ取り、いよいよ決勝戦。

対戦方法は戦闘役とヘルパー役が組んでのバトルだ。

……そういえば、アイリスは今まで一度も口を開いてないけど、特別解説役ってのと関係あるのかな…。

ボクは最後の仲間と一緒に敷地に入った。

 

「さあ皆さん、いよいよ決勝戦です!シード枠のカービィさんに対するのは、『魔剣の勇者』ミツルギさんです!」

「ふふふ…カービィ、約束通り決勝まで上り詰めたぞ!」

「ホントに約束通りだね。凄いや!」

「へ~、この人がカーくんの言ってたミツルギさんか。いかにも勇者って感じね」

「でしょ?」

「なるほど、その子が今回のコンビ相手か…やはり見た目からでは能力が想像できんな。レティー、心してかかるぞ!」

「はい!」

 

ミツルギさんがアークプリーストのレティーさんに喝を入れたところで、司会者が放送を始めた。

 

「さて、カービィさんが故郷から呼んだ仲間も彼女で最後です!これまた異色の存在だ!将来の夢は世界一の画家!夢に向かってひたすら絵の修業にいそしむ少女、アド~!」

 

アドは観客に向けて笑顔で手を振る。

その愛くるしさのせいか、レティーさんの時より観客の声が大きい。

レティーさん、ちょっとだけど明らかに嫉妬してるな。

 

「それじゃアド、バックアップよろしくね」

「ええ、まかしといて!」

 

凛々しい笑顔で胸をドンと叩くアドが妙に頼もしく見える。

ミツルギさんはソードマスターだけど、武器が魔剣だからな。

多少何か魔法が使えるかも。警戒しとこう。

打ち合わせ通り、アドは試合開始と同時に絵を描き始める。

 

「ムム…何をする気か知らないが、阻止した方が良さそうだ!」

 

ミツルギさんはためらいなく、アド目掛けて斬撃を飛ばしてきた!

まさかこんなことするとは思わなかったけど、近くにいてよかった。

 

「『メタルカービィ』!」

 

ボクの強固な体はミツルギさんの斬撃を軽く弾いた。

 

「そういうことして良いんだったらこっちだって!『フリーズカービィ』!」

「何?フリーズ?アイスと何が違うんだ!?」

「それっ!」

「!?わあああああああ!!!」

 

レティーの頭上から大量の氷が雨のように降ってきて、たちまち生き埋めになりましたとさ。

 

「なっレティー!!」

「ついでにっと『カースド・クリスタルプリズン』!」

 

頭上からミツルギさんに向けて氷の塊が形成されていく。

ミツルギさんは素早い剣戟で氷を切っているけど、ボクにとっては問題じゃない。

そう、元に戻っても氷の形成が止まらない、それが重要なんだ。

 

「『バーニングカービィ』!」

 

ボクは氷に埋もれて動けないでいるレティーに向けて突撃。

 

「ま、待て!!」

 

それに気付いたミツルギさんは、直前でボクの目の前に割り込み、魔剣で切り付けてきた。

ボクの炎は魔剣を弾いてるけど、ミツルギさんの方も結構な力で踏ん張っているせいで、拮抗状態だ。

 

「お~っと、これは白熱させられる展開になったぞ!炎を纏っての突撃と魔剣の斬撃がぶつかり合って膠着状態!これはかつてない展開だ!」

「…まさか、ボクの炎でも溶けたりしないなんて…!」

「ナメてもらっちゃ困るぜ!この『魔剣グラム』は俺を選んだのさ!選ばれし者が扱う時、この剣に切れないものはなくなる…お前の炎を除いてはな!」

「そう、それじゃ…本気出していいよね!!」

「何!?うおおおお…!!!」

 

ボクは纏っている炎をより強力なものにする。

突撃能力も上がってミツルギさんは押され始めた。

それでも、ボクをレティーに近づけさせまいと必死に踏ん張ってる。

とここで、レティーが氷から脱出。

寒さに身を震わしながらも、ミツルギさんに全力で支援魔法をかける。

 

「ぬおおおおおお!!!」

「よ~し!そっちがその気ならこっちは『インフェルノバーニング』!!」

「な、何ということでしょう!ここまで長く膠着状態が続くとは!ミツルギさんは支援魔法で自身を強化、対するカービィさんは自身に『インフェルノ』を纏わせてコピー能力を強化した~!さあこのゴリ押し勝負、果たしてどちらに軍配が上がるのか!!」

 

ボクとミツルギさんのぶつかり合いで周囲の空気は熱せられ、煙が舞う。

 

「アヅヅヅ…うおおおお!!!」

「ふんぬぅ~~~~~…!!!」

 

予想外の競り合いに、観客達は口々にボクを、そしてミツルギさんを応援する。

応援というか、名前をコールしてるだけなんだけど。

それでも、ボクはそんな応援に応えようと、折れんばかりに歯を食いしばって必死にミツルギさんの魔剣を押す。

汗が目に染みる。

すると突然、「ピキッ」という音がボクの耳に届いた。

見れば…ミツルギさんの魔剣にヒビが入っている!チャンスだ!

ボクは渾身の力でミツルギさんを押し返す。

が、ここでミツルギさんが驚きの行動に出た。

何と、この競り合いの最中に僅かに剣をスライドさせ、斬撃飛ばしを発動した!

あんなちょっとの動きで!?

これで力の均衡が崩れ、ボクとミツルギさんは互いに吹き飛んだ。

ミツルギさんはボクの炎で全身に火傷を負ったみたい。

でもボクの方も無傷とはいかなかった。

お腹に斬撃飛ばしが当たって切り傷ができていた。

 

「イタタ……」

「さあ、まだ勝負の行方はつかめません!お互いここからどうするのでしょう!?」

 

ヒールで回復してもいいけど、ここは…。

 

「アド、用意はできてる?」

「勿論よカーくん、さあ受け取って!」

 

絵から飛び出したのは…ボクが待ちに待ったもの!

 

「何と何と!さっきまで絵を描いていただけかと思いきや、その絵が実体化した~!それにしてもあれは一体何でしょうか!?」

「それについては私が解説いたします」

 

ここでようやくアイリスが口を開く。

 

「そうですか、ではアイリス王女、ご説明をお願いします」

「はい、カービィさんから事前に聞いていたことです。まずあのトマトはカービィさんの故郷にしかない『マキシムトマト』と呼ばれる特別なトマトで、カービィさんの大好物であり健康の秘訣です。続いてあの飲料は『元気ドリンク』と呼ばれており、どんなに元気がない人でも3本も飲めばたちまち元気になるそうです」

「それは凄いアイテムです!…ってちょっと待ってください。今カービィさん、5本飲んでませんか?」

 

マキシムトマトを食べてからの元気ドリンク一気飲み。

最高だね!

 

「気力十分!!!ファイト、イッパ~ツ!!!」

「その意気よカーくん!頑張って!」

 

傷はすっかり元通り、元気が全身を駆け巡ってるのが分かる!

今日は寝ずの晩になりそうなほどだ!

ミツルギさんの方はまだ回復中らしい。

 

「ま、まさか…あそこまで元気になるものなのか!?」

「またしても驚きの展開!カービィさん、傷が全回復しただけでなく、やる気も元気も、そしてテンションも最高潮に達したようだ!これはミツルギさん、流石にマズイか!?」

「よっしゃ!こっからは『ミックスコピー』や『スーパーコピー』をバンバン使ってくぞ~!」

「おやおや!?カービィさんから新たなワードが出ましたよ~!『ミックスコピー』と『スーパーコピー』、一体どんなものなのでしょうか!」

「それも私が解説いたします。まず『ミックスコピー』ですが、2つの能力をミックスして発動する能力のことで、中には単一の能力の2重掛けもあります。例えば『ストーン』は石に変身するだけでその間は身動きが取れませんが、2重掛けした『ストーン・ストーン』であればゴーレムと同じく自力で動き回ることができます。『スーパーコピー』は特定の能力を強化したもので、魔王軍襲撃の際には巨大なハンマーを振るう『ギガントハンマー』なる能力を使用しておりました」

「アイリス!ギガントじゃなくてギガトンだよ!『ギガトンハンマー』!」

「「うわあああああああああ!!!」」

 

未だ回復中だった2人目掛けてハンマーを振るったけど、ギリギリでかわされた。

 

「やっぱや~めた!面倒だし炎で統一しちゃえ!『バーニング・バーニング』!」

「こ、これは…『バーニング』を2重掛けしたミックスコピーだ!」

「鳥を模ってます…もしかして、フェニックス!?」

「やっほ~い!!」

 

そうさ!今のボクは火の鳥だ!

止められるもんなら止めてみろ!!

ボクはミツルギさん達へ突撃する。

 

「おいおい、こいつは本格的にヤバいぞ!!」

「いやああああ!!こっち来ないでえええええ!!」

「おっと、逃がすもんか!それ!!」

 

突撃は避けられたけど、ボクは高速ターンして地面をこするように飛ぶ。

2人の周りを2周も旋回すれば、周りは火の海だ。

ボクは能力を解いて着地する。

 

「さあ、そろそろスーパーコピーでトドメを飾ろう!『ドラゴストーム』!!」

 

ボクの頭上に出現した巨大な火炎龍は、身動きが取れない2人目掛けて一直線に突っ込んでいく。

 

「「ぎゃああああああ……!!!」」

 

…今考えてみたらこれっていわゆるオーバーキル?

ま、兎に角ミツルギさん達は大火傷で戦闘不能となり、ボクのチームが優勝となった。

表彰台に全員で上がり、表彰状と共に優勝賞品として金色の液体が入った瓶が渡される。

 

「あの~これは?」

「それではご説明いたします。カービィさんが持っている瓶に入っているのは『レジェンドスキルポーション』と呼ばれるもので、飲めば大量のスキルポイントを確保できます。取り損ねたスキルや魔法も、これさえあれば習得できること間違いなしです!」

 

スキルポーション…そういえば名前だけ聞いたことあったな。

説明を聞いたボクは早速飲んでみた。

味がどうというものではなく、全く味がしないのだから不思議だな。

で、冒険者カードを確認してみると…ホントにスキルポイントが、あり得ないくらい増えてる!

これなら戦闘系以外のスキル全部取ってもお釣りがくるんじゃないか?

っていうか、よく見たら「手品スキル」なんてのもある。「マジック」は使っても大丈夫なのか…。

この結果には、皆素直に喜んでた。

リックは食べ物じゃないことを愚痴るんじゃないかと思ったけど、空気を読んだのか、それとも控室で十分に食べたからなのか、普通に皆と一緒になって拍手してる。

早々と控室に戻ると、ボクはプププランドへと空間を繋げた。

 

「それじゃあな、カービィ!」

「あとは俺達が何とかしとくから、安心しな!」

「うん!グーイ、留守番よろしくね」

「は~い」

「カーくんも無理しないでね。もしもの時は何時でも呼んで!」

「分かったよ。ありがとねアド」

 

そして皆はプププランドに帰った。

ゆんゆん達が口々にボクや仲間達の戦いぶりについてあーだこーだ言っているのを遠目で見ていたら、ミツルギさんがやって来た。

まだ大分火傷が残ってる。レティーさんも大火傷してたから、十分な回復ができなかったんだなきっと。

 

「ふふっ、カービィ君、ホントに君の能力は凄まじいね。聞けば王都近くの超巨大クレーターは、君が作ったそうじゃないか」

「うん、王都襲撃の時に指揮官達を全滅させようとね。爆発系の魔法も全部使ってみたんだ」

 

今考えてみると、あれは流石に無理があるぞ。大量に魔力を消費する魔法を使っても魔力に大分余裕があったし…。

あ、そう言えば…左腕にはまってる「流星の腕輪」。確か天使はこう言ってたな「魔力消費を4割程抑える」って…。

なるほど、この腕輪の恩恵だったのか!

 

「やりすぎだろ…だがあの大爆発、今からでも魔王の城を破れるかもな」

「城を破る?」

「あぁ、魔王の城はな、爆裂魔法を数十発撃ち込まれても耐えうる強力な結界が張られてるんだよ」

「す、数十発!?」

「だが心配はいらない。その結界は魔王軍幹部が維持しているからな、幹部の人数が減れば当然結界は弱まる。おそらくもう1人か2人、幹部を倒せばあの爆発で結界を破壊できるだろう」

「ふ~ん、そっか」

「おっと、話は変わるが…1週間後くらいに再戦したいんだが」

「再戦?」

「あぁ、今度は正々堂々剣で勝負してほしい」

「うん、別にいいよ」

「意外とすんなり受け入れてくれるんだな」

「だってさ、何だかんだで『ソード』とか使う機会が少ないんだもん」

「そ、そうか…」

 

そんな会話を交わした翌日、ボク達はテレポートでアクセルの自宅に帰還した。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

昼食後も、ゆんゆん達は昨日の興奮が冷めあがらないようで、未だ興奮気味に会話を交わしてる。

すると、警報音が鳴り響いた。

 

『緊急警報!緊急警報!デストロイヤー接近!デストロイヤー接近!アクセル住民の皆様、直ちに避難を開始して下さい!冒険者の方は、至急準備を整え冒険者ギルドにお集まり下さい!』

 

デストロイヤー…一体何だろう?

兎に角急いで冒険者ギルドに行かなきゃ!

 

「ちょ、ちょっとカービィさん、待ってくださいよ~!」

 

ゆんゆんの言葉にボクが振り返ると、結構な距離が開いちゃってる。

今まで意識してなかったたけど、結構走るの速くなってるんだな。

ギルドについた途端、周りの冒険者達が期待の目で見てくる。

それだけ危険な奴ってこと?

受付のお姉さんが説明してくれた。

機動要塞デストロイヤー。

古代の大国「ノイズ」で開発された蜘蛛型の対魔王軍用超大型搭乗兵器。

稼働直後に暴走してノイズを滅ぼしてしまい、今なお各地に甚大な被害を与え続けているらしい。

というのも、デストロイヤーはコロナタイトという常に高熱を発し続ける特殊鉱石を動力源としてるせいで、半永久的に動き続けることが可能。

しかも馬より速く走れるし、どんなモンスターでも踏みつぶしてしまう。「デストロイヤーが通った後はアクシズ教徒以外草も残らない」とか噂されてて、もうほとんど天災みたいな扱いをされてる。

当然、この説明を聞いた邪教の親玉は納得いってなかったけど…。

ボディには特殊な金属がふんだんに使われてて、ただでさえ壊し辛いのに、強固な対魔法結界を装備しているせいで爆裂魔法もあまり効果がないらしい。

落とし穴や壁を作っての妨害工作もすぐに対応してしまう。

加えてデストロイヤー上部には多数のゴーレムが徘徊し、上空からの強襲に対しバリスタで迎撃するという。

 

「…ってことらしいが…カービィ、どうだ?破壊できそうか?」

「…破壊するか否かはともかく、侵入経路さえ確保できれば何とかなりそうだね。動力源になってる鉱石をどうにかできれば動かなくなるだろうし」

「いやいや、だとしてもどうやって侵入するのよ!結界のせいで魔法は通じないってのに!」

「…お姉さん、デストロイヤーって今どのあたりにいるかわかる?」

「少なくとも今の時点ではまだ目視できない位置かと…」

「それなら、大爆発が起きても街に影響はなさそうだね」

「大爆発…そうですよ、『クラッシュ』です!あの大爆発なら結界を破壊できますよ!」

「確かに、デストロイヤーの結界は魔王の城のものほど強固ではないからな。だが問題もあるぞ。カービィの能力の場合は、自身を中心に大爆発を起こす。要するにカービィ自身がデストロイヤーに接近する必要があるってことだ」

「そうですね。移動するだけなら『テレポート』で事足りるでしょうが、迎撃に出ているゴーレム達の的になってしまいます」

「ゴーレムだけだったら念力でどうにかなるんだけど、バリスタが厄介だよね~。あれを防ぎながら接近するとなると…ん?」

「どうしました、カービィさん?」

「…デストロイヤーって機械のモンスター…だよね?」

「は、はい…」

「…なら、試してみようかな」

「な、何を…?」

 

ボクはギルドを出て、空に向かって叫んだ。

 

「カモン!『ロボボアーマー』!」

 

少し経つと、上空から垂直に降下してくるものが。

大きな音を立てて着地したのは…間違いなく「ロボボアーマー」だ!

コイツも呼び出せたのは大きいぞ!

…でも何でさっきからバチバチなってるんだろう?

 

「カービィさん、これは一体?」

「『ロボボアーマー』、最近手に入れた戦闘メカだよ!」

「こんなものまで持ってたとは…!」

「何かカービィと似た見た目してるわね…まさかコイツも『コピー能力』が使えるとか!?」

「珍しく冴えてるねアクア、そうなんだよ。限定的にではあるけどね」

「で、このバチバチしてるのは何ですか?気になります…」

「そこはボクも気になってたんだ。ちょっと確認してみるよ」

 

ボクはロボボアーマーに乗り込んで、システムチェックしてみた。

すると、見たこともないプログラムがいつの間にやら組み込まれてる!

誰かの細工?それともこっちに来た時に?

 

「…これってもしかして?」

 

ボクがコンパネを操作してみると…。

 

『Fire Mode』

 

電子音とともに、ロボボアーマーの配色が赤く変化し、両手が火炎放射器に変形した。

 

「こりゃ凄い!何か知らないけどバージョンアップしたみたい!」

「バージョンアップ?それってもしかして…カービィさん同様に吸い込まなくても能力が使えるってことですか?」

「そうだよゆんゆん!よし!次はこれを試そう『エスパーカービィ』!」

 

ロボボアーマーに乗ったまま「テレポート」を使ってみると、これもうまくいった。

これで何とかなりそうだぞ!

ボクが考えた作戦はこう。

まずボクがロボボアーマーでゴーレムの上空に移動。

バリスタを防ぎつつ念力でゴーレムを一掃し、上部ハッチから内部に侵入。

暴走している理由として、設計者が乗っ取って操縦している可能性もあるらしいから、中にいるゴーレムも倒しつつ、操縦者を倒して止めるか、コロナタイトを無力化して止めるかはその場で決めよう。

コロナタイトは常に高熱を発するらしいから「アイス」で凍らせれば問題ないか。

あとは念のため、めぐみんに爆裂魔法でデストロイヤーの脚を破壊して動きを止めてもらうことにする。

ギルドの皆にはデストロイヤーの動きが止まり次第、応援に来てほしい。

皆不安顔だったのに、ボクの作戦を聞いた途端やる気をみなぎられてた。

 

「あの~ちょっとよろしいでしょうか、カービィさん」

「どうしたの、めぐみん?」

「仮にそれでデストロイヤーの結界を無力化できたとしても、デストロイヤーは特殊な金属で覆われています。爆裂魔法1発で止められるかどうかは保証できません…」

「そうか…ん~…あ、ねえ!この中に職業が『冒険者』の人っている?『ミミックオールラウンダー』でもいいんだけど!」

 

ボクが問うと、1人だけ該当する人がいた。

1人でもいれば十分だ。

 

「カービィ、お前一体何を始める気だ?」

「ホラ、冒険者ってさ、教わりさえすれば習得できないものはないでしょ?だから、その人に学んでほしいスキルがあるんだ」

「学んでほしいスキル?」

「そう。ゆんゆん、ちょっと来て」

「え?私ですか?」

 

ボクに言われるまま、ゆんゆんはボクの所に来る。

 

「まだ時間がありそうだから、今から見せるこのスキルを学んでほしいんだよ。見ててね『ドレインタッチ』!」

「うわわわわわ!?」

 

ボクはゆんゆんとめぐみんを掴んだ状態でスキルを発動する。

 

「な、何ですかこれは!魔力がどんどん私に流れてくる…!?」

「そう、これが『ドレインタッチ』。魔力を吸収して他の人に分け与えるスキルだよ。彼がこれを習得すれば、他のアークウィザードの魔力をめぐみんに移せるから、爆裂魔法を複数発撃てるよ」

「なるほど、これならいけますね!」

 

幸いなことに、その「冒険者」は結構な手練れだったこともあって割と直ぐにこのスキルを習得。

これで準備が整った。

ボクはギルドの屋根に上って「千里眼」で周りを見渡す。

まだ姿は見えない…と思いきや遠くに砂煙があがってる。

そして間もなく、蜘蛛みたいなシルエットが見えた。

デストロイヤーだ!

 

「来てるよ!あっちの方からだ!」

 

ボクの様子を見ていた冒険者達は、一斉にボクが指さした方へと駆け出した。

ボクはロボボアーマーに乗り込み、テレポートで移動する。

再度「千里眼」で確認しなかったせいで、かなり手前に移動しちゃったけど、問題はない。

 

「『パラソルモード』!」

 

パラソル状のローターを回してデストロイヤーに接近すると、ゴーレム達が一斉に攻撃してきた。

ロボボアーマーの防御力に助けられ、ボクは念力でゴーレムを一掃できた。

 

「『ファイターカービィ』!」

 

中にいたゴーレム達を破壊しながら操縦室を目指す。

扉を蹴破ると、そこには操縦席に座る白骨死体があった。

既に死んでるとなると、デストロイヤーは自動運転ってことか。

古代文字で書かれているせいで何処をどうすればいいのか分からない。

操作方法でも分からないかとその辺に落ちている紙に目を通すけど、やっぱしどれも読めない…。

すると、1枚だけ違うものがあった。

ボクでも読める…プププランドでもよく使われてる文字だ!

どうしてこれだけが…?

読んでみると、あの人の日記みたいだ。

それによれば、このデストロイヤーの開発にそれほど乗り気じゃなかったようで、設計も半ば適当だったらしい。

少ない予算他、無理難題を上から押し付けられ、何とか応えられたと思いきや、もし試運転で失敗したら死刑と言われて自暴自棄になり、酒に酔った勢いでコロナタイトにタバコの火を押し付けたらデストロイヤーが暴走。

自動運転も解除不可能で、結局ノイズを滅ぼす結果となった。

本人は降りることができないのと散々無理を言われた鬱憤を晴らせたことで満足し、そのまま余生を過ごすことにしたんだとか…。

いやいや、だとしても鬱憤晴らし終わったんなら止めなよ!

…と思ったけど、自動操縦解除できないわけだし、多分この人じゃコロナタイトも処分できないだろうしな…。

 

「…コロナタイトを止めに行こう」

 

そう思って歩き出した矢先、同じ文字で書かれた紙をもう1枚見つけた。

そこには更に驚きの情報が!何と、彼はデストロイヤーの開発責任者となる前に、とある功績を残していた。それが今に至る伏線だったらしい。

で、功績というのは、魔法の才能に長けた改造人間の製造に成功したこと…そう、紅魔族だ!

読み進めて分かったのは、他の人間と区別するために目を紅くし、体のどこかにバーコードみたいな紋様が浮かぶようにしたこと。そしてあの奇妙な名前は、設計者が製造当初につけたニックネームの名残だということだ。

ボクはその2枚をお腹に収めると、エンジンルームに向かう。

そこにあったのは、開いたガラスカプセルの中に浮かぶ赤い鉱石。

これが多分コロナタイトだ。

 

「『アイスカービィ』!」

 

ボクは冷気を放ってコロナタイトを凍らせた。

しばらくすると氷が溶けてしまうので冷気を当て続けないといけない。

 

『警告!警告!エネルギー供給停止!エネルギー供給停止!コロナタイトに異常発生!搭乗員の方は直ちに復旧を開始してください!繰り返します!コロナタイトに異常発生!搭乗員の方は直ちに復旧を開始してください!』

「うるさいなぁ……」

 

大音量の放送が流れる中、ボクは耳を塞ぎながらコロナタイトに冷気を当てる。

少し経つと、それまでの振動が徐々に弱まってきた。

エネルギー供給が止まって、デストロイヤーの動きが鈍ったらしい。

もう少しで止まりそうだ。

と思った直後、大きな爆発音とともにデストロイヤーが大きく揺れた。

 

「あいたっ!!」

 

ボクはその衝撃で後ろに吹っ飛んで壁に思いっ切りぶつかった。

今のは…爆裂魔法かな?

まだ完全に止まってないのに、随分せっかちだなめぐみんは。

いや待てよ、もしかして結構街に近付いてたのか?

操縦席から外見なかったな…。

おっと、氷が溶けそうだ!

その後も何度か爆発があったけど、近くにあった手すりにつかまって何とか凌げてる。

すると今度は、落ちる感覚がしたと思いきや重いものが地面に落下したような音と大きな衝撃があった。

デストロイヤーが完全に止まったのか、それとも爆裂魔法で駆動系統が壊れたのか。

どうにしろその後は静かなものだった。

しばらくして、ゆんゆん達の声が耳に入る。

 

「あ、いましたよ!」

「おお、カービィ、無事だったか!…何をしている?」

「何って決まってるでしょ?コロナタイトに冷気当ててるの!」

「これがコロナタイトですか…思ったほど大きなものじゃありませんね」

「うん、でもこうして凍らせ続けないといけないんだ。じゃないと多分、デストロイヤーが再起動しちゃうだろうから」

「あぁ、そのことなんだが…」

「?」

「コロナタイトはかなりデリケートなものらしくてな、そのままにしておくと爆発する恐れがあるんだ」

「ええ!?それじゃどうするのさ!」

「…やはりコイツを取り出して、爆発の影響が少ない場所に運ぶしかないだろうな」

「そう…分かった!それじゃ皆、ボクが今からコロナタイトを厚めの氷で覆うよ!その間にコロナタイトを取り出して!」

 

ボクがカプセルギリギリの範囲で凍らせると、他の冒険者達がノコギリで周りの氷ごとコロナタイトを切り出した。

あとはこれを安全な場所に持っていくだけ。

 

「それじゃ行ってくるね!」

 

ボクは万一落としたりしないようにと、コロナタイトを口の中に収めた。

 

「お、おい大丈夫なのか!?そんなものを口に入れて」

「…んんっ!?」

「え…どうしたんですか?」

 

この感覚は…もしかして……使えるの!?

ベルディアの時みたいに…!

 

「『フォーメーション・デストロイヤー』!」

「えええええ!?」

「まさかその姿…本当にデストロイヤーの力を!?」

 

ボクの体はデストロイヤーのと同じ装甲で覆われてる。

腋下の片側4ヶ所、計8ヶ所の突起部分は展開して蜘蛛脚みたいになった。

しかもこれが結構速い!

恐らく結界とかも再現されてるんだろう。

新たな力を手に入れ、ボクは意気揚々にデストロイヤーを飛び出し、ロボボアーマーでギルドへ一直線に駆け戻った。




次回予告
デストロイヤーを倒して早々、ミツルギと再戦。
一方、アクセルにはダクネスの友人と最悪の人物が!
そして駆け出し冒険者の街「アクセル」に渦巻く陰謀とは!?
次回「盗賊VS泥棒VS大悪魔」
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