【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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恐らくここで、ダクネスの運命が大きく変わることでしょう…。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第05話 盗賊VS泥棒VS大悪魔

デストロイヤーとの激戦から一夜明けた朝のこと。

ボクがあてもなく散歩していたら、2人の警察官に職務質問された。

何でも最近、この界隈で窃盗事件が多発してるらしい。

しかもその犯人というのが、ボクと同じような背格好だったというのだ!

…実を言うと、ここまで聞いて思い当たる奴がいる。

ボクは警察の人に確認をとってみた。

 

「ねえお巡りさん、もしかしてその犯人って、こ~んな感じの耳がなかった?」

「ん?耳?そう言えば、目撃者の中にそんなことを言ってた人がいたな…」

「それじゃあさ、『ヌヒョヒョヒョヒョ…』って笑い声を聞いた人っている?」

「ああ、いたぞ!犯人がそんな感じの笑い声をあげてたって」

「…ウソでしょ……最悪だ」

 

ボクは頭を抱えた。

だってそうだよ。アイツまで紛れ込んでたなんて…!

 

「まさか、犯人に心当たりが!?」

「うん、多分そいつはタックだよ。ボクの故郷じゃ名の知れたプロの泥棒なんだ」

「「プロの泥棒!?」」

「もう最悪だよ!あんな奴がやって来てるなんて…!」

「そうですか…貴重な情報をどうもありがとう!」

「ご協力に感謝します!!」

 

そう言って警官達は足早に去った。

タックは逃げ足速いからそう簡単に捕まらないだろうけど…こっから先は警察の仕事だから深入りはよそうっと。

朝食がまだだったのでギルドに来ると、ゆんゆん達が待ってた。

ダクネスは実家に呼ばれたとか言ってボクが散歩に出るより早く館から出たので、剣の修業は怠けちゃダメだよとだけ言っといた。

 

「待ってましたよカービィさん!」

「どうしたのゆんゆん、そんなに興奮して…」

「デストロイヤー討伐の報酬が用意できたそうです!」

「あ、そうか」

 

早速受付のお姉さんがボクを呼んだ。

 

「ではカービィさん、こちらをどうぞ!特別報酬込みで25億エリスになります!」

『25億!!??』

「ふ~ん、エンシェントドラゴンの2.5倍か。労力の割にこっちの方が実入りが高いな…」

「えちょっ、ちょっとお待ちを。カービィさん、今エンシェントドラゴンって言いました?」

「言ったよ。ドラゴンスレイヤーの称号があった方が良いって言われたから」

 

ボクが冒険者カードを見せ、それが真実だと分かるや否や冒険者達は歓喜に沸いた。

まあ、ボクにとってはそんなの問題じゃないけどね。

今回はちゃんとはしごさずに済む程度のもてなしをしてくれるのか、それだけが問題だよ。

食べながらチラチラとカウンターの方を見ていたんだけど、いつの間にかお酒やジュースの種類が増えてる。

ジュースの方はボクがお酒を飲まないからだろうけど、そんなボクが見ても高級そうなお酒が並んでるのは変だ。

仮にも駆け出し冒険者の街なのに…。

まいっか。今回は十分な食事ができたし。

 

「いや~、このお酒なかなかの品だね!」

 

突然聞こえたその声の方に目をやると、銀髪の子がいた。声は女っぽいけど、見た目では男なのか女なのか分からない。

 

「ねえ、キミ誰?ここらじゃ見かけないけど…」

「ん?ああ、あたしはクリス。盗賊やってるんだ」

「クリス…盗賊…ああ!キミがダクネスと友達になったっていうズル賢い盗賊か!」

「ず、ズル賢い!?」

「どうせ、ダクネスのクルセイダーという地位を悪用して、盗賊と付き合ってることを秘密にする見返りに金品を定期的に要求してるんでしょ!」

「ち、違うよ!何言ってるんだよ!」

「盗賊と聞きゃ誰だってそう思うさ!」

「それは流石に失礼が過ぎるよ!?盗賊=野蛮なんて考えは捨ててよ!!あたしはそんなことのために盗賊やってるんじゃないんだから!!」

「じゃあクルセイダーと盗賊がつるむ理由が他にあるっていうの!?」

「つるむなんて言わないでよ!!単に気が合うから友達付き合いしてるの!あたしもダクネスと同じで、困ってる人は出来る限り助けたい。だから不当に金を巻き上げたりする輩から奪って、貧しい人達に配ってるってわけ。いわゆる義賊なんだよあたしは!」

「でも結局盗んでるわけじゃないか!」

「ヴ……」

 

見た目に反して結構なことしてるんだなこの子………っていうか、何だろう、何かが引っかかる。

ボクが何気なしに酔い潰れたアクアを見たとき、思い出した。

そうだよ!「エンジェル」の時に感じたあの違和感…あれと同じだ!

ということは、クリスもアクアと同じ感じの…?

しかもよく考えたら…エリス様と1文字違いじゃないか!銀髪という点でも同じだし…!

まさか、クリスとエリス様は同一人物……?

なんてことを考えてたら、奥から誰かがボク達に話しかけてきた。

 

「ヌヒョヒョヒョ!そうだな、他人の物盗んでいる時点で単なる犯罪者に変わりないな!そういうことをもっとよく考えてからもの言いたまえよ!」

 

やっぱりボクと同意見の人っているんだな。

…ん?ヌヒョヒョヒョ?

ってもしや……!

 

「あ~~!!タック!!」

「ヌヒョ!?カ、カービィ!?」

 

やっぱりだ、黒い体に大きな耳、細目に草鞋に唐草模様の風呂敷。

そしてボクと同じ背格好…こんな奴はタック以外にいないよ!

タックはボクを見るなり椅子から飛び降り、距離をとって身構える。

 

「ヒョヒョッ、まさかこんなところで出くわすとはな」

「全くだよ!おかげでこっちはいい迷惑さ!!」

「いい迷惑?」

「さっきギルドに来る前にお巡りさんに職質されたんだよ!キミのことについてね!」

「ヌ~ヒョッヒョッヒョッヒョッ、ここでも俺は顔が売れ始めたか…結構結構♪」

「何が結構だよ!!」

 

ここでクリスが割り込んできた。

 

「ね、ねえカー…君、彼は一体何者なの?」

 

今絶対カービィって言いかけたよね…。

絶対エリス様だよ。

ま、今はどうでもいいや。

 

「タックだよ。ボクの故郷じゃ名の知れたプロの泥棒さ!」

「ぷ、プロの泥棒!?」

「ヒョヒョヒョ、まさにその通り!こちとら生まれ持っての泥棒稼業ひとすじだぜ!」

「そういうことは是非ともプププランドでだけやってほしいんだけど?」

「やなこった。折角泥棒としての腕を上げられる力を見つけたってのに」

「泥棒としての腕って…まさか盗賊スキルのこと!?」

「勿論さ!あれを正しく扱えるのは我等泥棒だけだからな」

「ちょっと!それどういうことさ!?」

「泥棒はな、基本的に力を必要としないのさ。無駄な暴力は振るわずにここで勝負!ま、力ずくで奪うしか能のない盗賊には一生理解できないだろうがね…」

「あ~の~さ~、彼もそうだけど、いい加減に盗賊=野蛮って考えは捨ててほしいんだよね!」

「世間一般ではすでにそう決まってるんだ諦めな!ヌ~ヒョヒョヒョヒョ!」

 

タックの見下した態度にカチンときたクリスは、立ち上がりながらテーブルをバンッと叩くとタックに迫る。

 

「もういい!そんなに言うなら、どっちの盗賊スキルが上か勝負しようじゃないか!」

「ヒョッ、勝負だと?」

「そう!ルールは簡単。お互いに『スティール』を使って、より高値のものを奪えた方が勝ちだよ!」

「ヌヒョヒョヒョ!別に構わんが、お前は高値の品なんて持ってるのか?タダ働きは御免だぜ?え?」

「馬鹿にしないで!これでも一流の盗賊なんだから!」

「自称一流の間違いだろう?」

「うるさ~い!!兎に角勝負だ!!」

 

タックとクリスはギルドのど真ん中で勝負をつけるらしい。

周りにいる冒険者達は無言で様子を見守る。

 

「ヒョヒョ、お先にどうぞ」

「……後悔しても知らないからね!『スティール』!…っと、こりゃ高そうなネックレスだ!どう、これでも自称一流かい?」

「ヌ~ヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッ!!」

 

クリスは勝ち誇ったような顔をしたけど、直後にタックが見下したように爆笑した。

 

「ヒョヒョヒョ!その程度のことでよく勝ち誇れるな~。俺に言わせれば、そんなんじゃあ三流も名乗れないね」

「な、何だって!?」

「いいか?俺が手本を見せてやろう『スティール』!」

「へ……い、いやあああああああああ!」

「ヌ~ヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッヒョッヒョ……」

 

あろうことか、タックはクリスからネックレスを取り返すだけじゃ飽き足らず、クリスの身ぐるみを1つ残らず剥がしてしまった!

いきなり全裸にされたクリスは、その場にうずくまって泣き叫ぶことしかできない。

 

「も~うかった~儲かった~♪ヌ~ヒョッヒョッヒョ」

「た、タック!!何てことを!!」

「やあああああ!お願いいいいいい!服返してよおおおおおおおおおお!!」

「や~だね♪売りゃ行きがけの駄賃くらいの儲けは出るんだからよぉ。ついでにお」

「『スティール』!」

「ヌヒョ!?」

「…言っとくけど、オールラウンダーも盗賊スキルは習得できるんだよ!」

 

とはいえ、やっぱり力の差は歴然だ。

ボクの実力ではクリスの服と、例の「マジックダガー」を取り返すのが限界。

その他は未だタックの手中にある。

 

「…チッ、服で儲けるついでにそいつを売春宿に売り飛ばそうと思ってたのに」

「あたしも売る気だったの!?」

「もしかしたらお前みたいな体型の奴が好みの客がいるかもしれないじゃないか。そうなりゃ高値で取引できるぜ?まあいい、これで分かったろう?盗人はな『絞り取れる時に絞り取れるだけ絞り取る』のが常識なのさ!恨むならそんな常識すら持ち合わせてない自分の無教養さを恨みな!今日はこのくらいで勘弁しといてやるからよぉ、これに懲りたら2度と俺の邪魔すんじゃねーぞ!ヌヒョヒョッそんじゃ、あばよ!」

 

タックは出口へ向けて駆け出した。

 

「逃がすもんか!『ホイール…』」

「『盗みの手』!」

「あうっ…!」

 

コピー能力を発動する前に、タックが先手を打ってきた!

咄嗟にガードしようとしたけど間に合わず、ボクは右頬に一撃を食らった。

腕輪の効果で敏捷性がアップしてるはずなのに、余裕でその上をいくなんて…!

タックの奴、どんだけ素早さに磨きをかけたんだよ。

 

「そ~れ、もう一発!」

 

だけど、何時までも打たれっぱなしのボクじゃない!

ボクはタックの手の掴み、引き戻す勢いを使ってタックに近づく。

 

「やったな~!とおっ!!」

「ヌボァッ!?」

 

ボクの右ストレートが決まって、タックは吹き飛ぶ。

だが、飛んでったのは出入り口の方。

そしてタックはニヤリと笑った。

 

「『逃走』ア~ンド『タックハイド』!」

「ああっ!?」

 

ギルドの外に出たけど…いない。

盗賊スキルの「敵感知」を使ってもダメだ。反応がない。

あの僅かな時間で感知範囲外に逃げ去るなんて…しかもボクとしたことが、タックの透明化能力のことをすっかり忘れてた!

 

「くっ……!」

 

王都襲撃の時にも逃げた奴はいたはずなのに…今回は何故か悔しさが溢れてくる…!

ボクは地団太を踏んだ。

すると突然、逃げたはずのタックが戻ってきて、ボクの耳元でささやいた。

 

「そうそう忘れてた。どうせだからお前さんだけにちょっとした情報をやるよ」

「情報?」

「ああ、アルダープって知ってるか?この街の領主なんだが、絵に描いたような悪徳領主でな、悪い噂が絶えないんだ。そんな奴ならごっそり金儲けできるかと思って屋敷に忍び込んでみたんだがな……俺としたことが、何も盗めなかったんだ」

「はあ?」

「まぁ最後まで聞いてくれよ。で、何故盗めなかったかというとな…あのアルダープ、屋敷の地下室でな…悪魔を飼ってやがったんだよ」

「悪魔を?」

「ああ、地下室に確かにいたんだ。で、怖くなっちまってそのまま逃げてきちまった。ま、俺が言いたいことはそれだけだ。じゃあな!」

 

そう言ってタックは去った。

悪魔を飼う悪徳領主…。

殴り込もうかとも思ったけど、王都でのことがある。

またホーリツってやつに阻まれるのはやだな…よし!

折角の機会だから、ここらでひとつホーリツについて学んどこうかな。

アクセルにも本屋はあったから、まずはそこを覘いてみよう。

そう思っていたら、後ろからクリスがやって来た。

 

「あ、あの…ありがとね。服取り返してくれて…」

「別にいいよ…それにしてもタックの奴、前はここまで大胆じゃなかったのに…!」

 

そこへ警官が駆け付けた。ギルドの誰かが通報したらしい。

遅れてゆんゆん達もギルドから出てきた。

警官がボクに聞いてくる。

 

「タックはどこに?」

「…ごめん。逃げられた」

「何と…!」

「カービィさんでも捕えきれないなんて…」

 

警官達が半ば呆然とした感じでそう言ってる最中、今度はゆんゆんが口を開いた。

 

「カービィさん御免なさい…突然のことだったので、見届けることしかできませんでした…」

「いいよ。どうせキミ達の手に負える相手じゃないんだから」

「そんなに凄腕なんですかその…タックとかいう奴は」

「勿論だよめぐみん。まず逃げ足が元から速いし、加えて姿を消す能力を持ってるんだ」

「何よそれ!透明になる魔法はアークウィザードのものじゃない!?」

「タックが元から持ってる能力なんだから仕方ないよ。しかもただ透明になるだけじゃない。存在感も消せるんだ。だから『敵感知』以外だと絶対に見つからないと思うよ。ボクの故郷でも、『存在感を消したタックは、幽霊でさえ見つけられない』ってもっぱらの噂だもん」

「幽霊でさえ見つけられないって何ですかそれ!?幽霊より存在感なくせるんですかソイツは!?」

「うん、勘が鋭いって評判の奴の家からも平然と盗んでたからね、間違いないよ。しかもこっちに来てから、盗賊スキルで盗みのテクに更に磨きをかけてるみたいだし…最悪だよもう!」

「ちょっと待ってくださいカービィさん、タックが盗賊スキルを使ってたんですか!?」

 

警官の1人がボクに聞いてきた。

 

「うん、だって『スティール』も『逃走』も盗賊スキルでしょ?アイツがこんなスキル手に入れたらますます厄介だぞ!例えば『アンロック』が使えれば、そこらの家から盗み放題だし…」

「……となるとヤバいなこれは!」

「そうだよ!早いとこ国中で指名手配しとかないと、更に被害が拡大しちゃうよ!…多分タックの腕なら間違いなく、この世界で最強の泥棒になれるだろうね」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それはともかく、警官はタックを指名手配にすることを約束して走り去った。

捕まるか否かは別として、タックによる被害は少しくらい減るだろう。

そしてボクは報酬を銀行に預け、本屋でホーリツに関する本を探す。

どうもこの世界では、紙が結構高価らしく、本もまたそれなりの値段がする。

それでも法律に関する本が見つかったのは幸いだ。

お金には余裕出てきたからね。

…流石にマンガ本の類はないか…。

付いてきた3人も、それぞれ1冊ずつ買っていた。ゆんゆんとめぐみんは魔法に関する怪しげな見た目の書物で、アクアが小説。

早速家に帰ってちょっと読んでみた。

まず家に関する法律だ。どうやら不法侵入になるのは街の領主以上の位に位置する人の家が該当するらしい。

ってことは、アルダープって奴は貴族と比べると下位なわけか…。

あとボクにとって大事なのは、やっぱりお金だね。

食費のためにもお金に制約が出るのは困るな。

ん?「税金」ってのが書いてあるぞ。何だろう税金って?

……なるほど。商売で儲けたり死んだ人の財産を受け継いだりすると、そこからいくらかの額を国に納めないといけないわけか。

いや待てよ。ボクそんなことした覚えないけど、大丈夫かな…。

読み進めると、冒険者は特例事項として税金が免除されていることが分かった。

いつ死ぬかも分からない危険な職業だからそうしてるわけか。

あ、そうだ!領主とかが不正行為してた場合にはどう対処すべきなんだろう。

悪魔を飼っているのが事実ならこれも知っとくべきだ!

読んでみると、そう言ったトラブルの際には、ソイツより位の上の者に掛け合うか、王都に報告することが義務付けられているらしい。

それなら、ダクネスの実家にでも掛け合えばいいか。貴族は領主より上なんだから大丈夫だろう。

それにいざとなれば、アイリスに直接相談するという手もあるし。

ボクは本を部屋の棚に入れ、リビングで読みふけっていた3人の所まで来ると、デストロイヤーの中で見つけた紙のことを思い出し、折角だからと紅魔族に関する記述のことを話した。勿論、書いていたこと全部をね!

…ていうか今更だけど、この世界の文字ってプププランドのものと違うんだよね。

どうして今まで普通に読めてたんだろう?

もしかしてこれも転生特典の一部なのかな?

ともかく、この話を聞いた3人は今までで一番ビックリしたって顔をしてる。

 

「し、信じられない…。私達の祖先が…デストロイヤーの設計者によって創られたなんて…!カービィさん、い、今の…本当なんですか!?」

「そうだよ。じゃなきゃ体の紋様のことまで知ってるわけないじゃないか」

「そ、そうですよ!紋様を見られることは紅魔族にとって最大のタブーなのです!死んでも言うわけがありませんもの!」

「ふ~ん、そうなんだ」

 

因みにデストロイヤーだけど、この国でも名の知れた技術者達によって王都に運ばれて研究対象になってるみたい。

その時に、ボクは操縦席にいた設計者はそのままにしといてほしいと言っておいたんだ。

あの人は今もそこにいる。操縦席たる頭部だけを残した状態でね。

 

「なるほどね、貴方があの白骨死体の処分について掛け合ってたのは、そのためだったわけか」

「うん、どうせ埋葬するなら、紅魔族に関係ある所にした方が良いと思ってさ」

「…そうですね。では埋葬先は紅魔の里にしましょうよ」

「紅魔の里?」

「ええ、文字通り私達紅魔族の故郷です。あそこが適しているかと」

「そうだね。まぁ、近いうちってことで」

「今すぐじゃなくていいんですか?」

「大丈夫だと思うよ?一応確認してみたけど、もう成仏しちゃってるみたいだし、骨を欲しがるようなもの好きなんているかなぁ?それに、そもそも紅魔の里って結構遠いんじゃ?」

「ああ、確かにここから里までは数日くらいかかるかと…」

 

こういう時だけ勘が冴えるアクアは露骨に嫌がった。「ドラグーン」に括り付けられたのがよっぽど嫌だったらしい。

その日は冒険者新聞に載っていた討伐依頼の一覧を確認した後、白狼の群れと大蛇の討伐依頼を掛け持ちすることに。

その間アクアには館の掃除を任せた。「クリーン」でやれば早いけど、皆にまだ言ってないのと、たまにはボクの苦労を知ってもらう意味で一任したわけ。

それに、支援と回復はボクもできるからね。

あ、あと追加で浄化魔法その他も習得しておいた。蘇生魔法はまだ残してある。

ポイントは十分なんだけどね…。

結果として、白狼の群れではゆんゆんが、大蛇ではめぐみんが活躍した。

やっぱり群れる相手には手数の多い奴、強敵単体なら一撃必殺の力を持つ奴が向いてるんだな。

特にあの大蛇、ドラゴン並みに体長いうえに頭が2つあるとか…。

ひょっとしたらドラゴンより強かったりするんじゃない?

まぁ爆裂魔法1発で体が半分消し飛ぶくらいだからね。防御の点ではドラゴンに及ばないか…所詮ヘビだし。

ともかく2人とも大幅にレベルが上がったみたいで、ゆんゆんは上級魔法をいくらか追加で習得。

めぐみんは「威力上昇」と「高速詠唱」に費やす。

結局まともなアークウィザードになるつもりはないらしい。

…そういえば「威力上昇」にはポイント振ってなかったな。

この際だからとボクも適当に振ってみた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それから2日経ち、ギルドで偶然にもミツルギさんと再会した。

まだ1週間経ってないけど、「魔剣グラム」の修理が終わっているしどうせだからということで対決することに。

 

「『ソードカービィ』!」

 

ボクが魔法を纏わせた斬撃を飛ばすと、ミツルギさんは必要最小限の動きでかわしながらボクとの距離を詰める。

まあ、剣を使う能力なら他にもあるけど、とりあえず今のままでいってみよう。

身長差があるし、鍔迫り合いは避けた方が良いかな。

ミツルギさんの斬撃飛ばしをステップで避けて、次の攻撃に移る。

 

「『ブレードビーム』!」

 

そういえばこの技、「ソードビーム」と「斬撃飛ばし」を掛け合わせたまではよかったけど、魔法を纏わせたことなかったな。

とりあえず「インフェルノ」を纏わせてみた。

斬撃形の光線が直撃する時、爆発と同時に周囲が炎に覆われる。

それを見たミツルギさんの顔に恐怖の色が浮かぶ。

あの時、炎系の能力を多用したのが響いてるのかな?

ボクはそのまま切り込んでみたけど、やっぱり身長差と体重差は否めない。

普通に切り合ってると押され気味だ。

 

「ふふふ、どうやら今回は俺の方が優位にいるようだな!」

「そう…それだけ言う余裕があるなら…レベル上げても良いよね?」

「何!?」

 

ボクは剣を思い切り振り上げ、ミツルギさんが怯んだ隙に距離を置いた。

このまま「ソード」1点張りにしようかとも思ったけど、1度も出さないってのは勿体ないしね。

 

「…言ってなかったけど、今のボクの能力…職業的にはソードマンクラスのものだからさ」

「な、何だと!?つまり上位版もあるってことか!?」

「まぁね、今度のはそうだな、クルセイダーの要素が入ってるみたいな感じかな?『バーニング・カッター』!」

 

ボクは口から炎を帯びた両手剣を取り出す。

 

「な、そんなものを隠し持ってたのか!?」

「いや、この能力を発動するとこうなるってだけ」

 

何というか、以前より剣が軽く感じるぞ。

両手剣スキル取っといて良かった!

剣が変わっても斬撃飛ばしは使えるから便利だな。

…っていうか、今回も今回で炎属性多用しちゃってるな。

まいっか。今は戦いに集中しないと!

こういう大剣は攻撃時に隙が大きいものだけど、少なくとも今回はそこまで問題じゃないみたい。

ミツルギさんの魔剣も、両手で扱っているから状況的には同じってわけ。

押され気味だったのは大分解消されたぞ。

ミツルギさんの大振りの隙を突いて、ボクはミツルギさんの胸のあたりに強力な突きを見舞った。

ミツルギさんが押されてバランスを崩したのを見て、ボクは剣を投げつける。

 

「そりゃ!」

「うおっ!?ちょっ、剣を投げるな!!」

 

怯みはしたものの、ギリギリで避けられた。けど…。

 

「だが、これで武器がなくなっちまったな!」

「ああ、大丈夫だよ」

 

ボクは2本目の剣を口から取り出す。

 

「はあ!?ど、どうなってるんだ一体!?」

「だから大丈夫だって言ったじゃないか。能力が発動してる間は何本でも出せるから」

 

気が付くと、この状況を見ていた冒険者や住民達は歓喜の声をあげ、ボクの名前を連呼してる。

ミツルギさんのサポーターはいないのかな…。

あ、そうだ。投げるで思い出したけど、「カッター」の時と同じことはできないかな?

試してみようっと。

 

「ジャジャ~ンっと二刀流!ソイヤッさぁ!!」

 

ボクは両手剣2本を同時に投げつける。

思惑通り、両手剣からは斬撃飛ばしがいくらでも出るぞ!

ついでに色んな属性の魔法も纏わせてみよう。

炎・水・氷・風・地・光、これらの属性をランダムに纏った斬撃飛ばしの雨に、ミツルギさんは翻弄されっぱなしだ。

特に「アースセイバー」は脅威だろうな。地割れができちゃった教訓を生かしてあれだけは威力を弱めてるけど、それでも地面が大きく抉れちゃってるから。

しかもジャンプではかわせない微妙な高さで斬撃飛ばしの頭が突き出てるから尚恐ろしいよね。

 

「うおおおおおおおぎゃああああああぁぁぁぁぁ……!!」

 

遂に避けきれなくなって、「アースセイバー」がミツルギさんに直撃した。

勝負がついて、周りを見渡すとゆんゆん達がいたので、アクアに回復を指示した。

以前見た仲間を見かけなかったからまさかとは思ってたけど、ホントに1人で来てたんだ…。

傷が癒えたミツルギさんは、修行し直すと言ってギルドを去っていった。

ゆんゆんを筆頭に、ギルドにいた全員がボクの戦いを称賛したり語り合ったりしてる。

でもボクはそれよりも、ダクネスの動向が気になるんだよな。

未だに帰ってきそうにないし…どうしたんだろう?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

結局ダクネスが帰ってきたのは、それから4日後のことだった。

しかも様子がおかしい。帰ってからずっと溜息ばかりついている。

 

「どうかしたの?」

「いや、その…」

「ははぁ…さては勘当されたな?」

「ち、違うぞ!何てことを言うんだ!」

「だってキミのマゾさ加減はボク達が見ても目に余るんだよ?ましてやこれをキミの両親が見たら尚更そう思うよ!もし両親ともにキミと同じ種の変態だったなら話は別だけど…。え…まさかの?ホントに?ホントにダスティネス家って一族郎党マゾなの?」

「そんなわけないだろう!!あ~もう!兎に角、私が悩んでるのはそういうことじゃないんだ!!」

「じゃ何さ?クルセイダーの資格をはく奪されたとか?」

 

ダクネスはだんまりを決め込んでたみたいだけど、ボクの一言で重い口を開いた。

これ以上黙ってたら更に誹謗中傷されるとでも思ったのかな?

ボクに言わせればキミの本性を考えると全部妥当だと思うけど…。

で、ダクネス曰く、デストロイヤーの進撃でアクセル周辺の穀倉地帯が大損害を被ったんだとか。

でも何故それでダクネスが落ち込むんだろう?

アクセルのことは領主が責任を負うのが普通じゃないか。

と思っていたら、この後のダクネスの発言が衝撃的だった。

 

「それを私の家が負担したのだが…」

「はあっ!?」

 

そりゃそうさ。法律に通じている人なら誰が聞いたっておかしいのは明白だからね。

 

「ダクネス、キミ自分が何言ってるか分かってるの!?」

「な、何だいきなり!?」

「何だじゃないよ!!何故ダスティネス家が負担するのさ!?アクセルのことなんだから、負担すべきはアクセルの領主じゃないか!?」

「お前の言いたいことは分かるが、領主のアルダープは悪い噂の絶えない悪徳領主なんだ。そんな奴が負担応じるわけがない。だから、私がやらなくてはならないんだ」

「そんなことが、法律違反する理由になるわけ!?」

「「「法律違反!?」」」

 

ゆんゆん達3人が目を丸くしてる。

 

「そうだよ!貴族には『傘下の領主が責務を果たさない場合、領主に警告の後、強制的にでも責務を果たさせることが義務付けられてる』んだよ!!ボクがお城の散歩しようとした時は法律がどーだの散々言ってたクセに、何自分は堂々と法律違反してるんだよ!!」

「というかカービィ、貴方何処でそこまでのこと知ったのよ!?」

「そう言えばカービィさん、あの時本屋で買ってた本…法律に関するものでしたよね?」

「ちょっと黙っててくれる?」

「あ、ご、御免なさい…」

 

ダクネスはしばらく俯いてたが、溜息を1つついて再び口を開いた。

 

「……お前が言いたいことはよくわかる。王都での一件もあってお前を苛立たせてしまっていることは十分にわかる。だがな、今回のことはお前のそれとはわけが違うんだ。これは法律だけの問題じゃない!貧しい民が生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされているんだ!領主が救わないなら私が救うしかないだろう!!」

「ダスティネス家の皆を一生路頭に迷わせてもか!?」

「「「ええ!?」」」

「この法律違反は重大なんだよ!!キミの親が逮捕されるだけじゃない!お家断絶だよ!!ダスティネス家は滅ぶんだ!!そうなったらキミん家で働いてた皆を路頭に迷わせることになるんだぞ!!執事とかメイドさんとか!そいつらを苦しめることがそんなに楽しいの!?マゾからサドに転職したの!?」

 

するとダクネスは両手でテーブルをバンッと叩いて叫んだ。

 

「ふざけるな!楽しいわけないだろう!!」

「い~や信じられないね!ホントにそう思ってるなら尚更アルダープに責務を果たさせるはずだ!!そうすればダスティネス家も被害にあった人達も、誰も路頭に迷わずに済むんだ!!何でそんな簡単なことも分からないの!?」

「それが現実的なら私だってここまで苦労はしない!悪徳領主にいちいちあーだこーだ説明している間にも民は飢えているんだ!それをただ黙って見ているなどありえん!!」

「だから何故そこで諦めるのさ!?領主は貴族より格下なんだから、キミのとこが一言いえばアルダープは従わないわけにはいかないはずじゃないか!?それとも何?キミの家はアルダープを擁護する理由でもあるわけ?」

「擁護とはなんだ擁護とは!!ダスティネス家にそんな確執などあってたまるか!!それより何より、デストロイヤーの襲撃からもう1週間も経ってるんだぞ!仮にお前の言うことが可能だとしても、もう時間がないんだ!!」

「そんなのキミの、いや、キミん家の管理不行き届きじゃないか!!もっと早くにアルダープに強制させとけば苦しまずに済んだんだ!!つまり、キミの言う『民の苦しみ』の半分くらいはキミの自業自得なんだよ!!」

 

ここまで言ってもダクネスは怒りの表情のまま。

もう何を言っても無駄みたいだな。

 

「もういい!『エスパーカービィ』!」

「な、お、おい!どこへ行く気だ!?」

「…キミん家の無能さ加減はよ~く分かったよ!今からこのことをアイリスに直に報告しに行くから!!」

「ちょっと待」

「『テレポート』!!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

城の前をテレポート先に登録しといてよかった。

ボクは城門前の衛兵に駆け寄る。

 

「これはこれはカービィ様、どういたしました?」

「アイリス王女に会わせて下さい!緊急で伝えないといけないことがあるんです!」

「ん~弱りましたね…王女様は只今接客中でして」

「とある貴族の重大な法律違反に関してなんです!!アイリス王女も無関係ではありません!!忙しいというのならクレアさんでもいいんです!!お願いします!!」

 

ボクは必死に頼んだ。

すると、仕方ないということで衛兵の1人が城の中に入っていった。程なくして戻ってきて、結構あっさりと許可が下り、ボクはアイリスのいる部屋に案内される。

あの時の応接間にね。

 

「あ、カービィさん!どうしても会いたがっていると聞いて何事かと思いましたよ!」

「突然押しかけちゃってゴメン!でもどうしてもアイリスに直に話さないといけないことでさ……えっと、この人は誰?」

 

黒い短髪で眼鏡をかけたその人は、ボクの方を見ると椅子から立ち上がってボクの方まで歩いてきて、眼鏡をクイッとしてから喋り始めた。

 

「初めましてカービィさん。私の名はセナ。この国の検察官です」

「ケンサツカン?……警察官じゃなくて?」

 

ボクの言葉にセナはガクッってなった。だって知らないんだもん。

 

「カービィさん、検察官というのは、その警察官がかかわった事件、いわゆる刑事事件に関する裁判についての細々としたことを担当する人のことです」

「そうなんだ…」

「ええ…ここへは刑事事件関連の法律の一部見直しのためにアイリス王女の意見を参考にしようと思って来たのですが、『貴族の重大な法律違反』となると、私としても無関係というわけにはいきませんので、私にも是非お聞かせ願いたい」

「ああ、いいよ」

 

アイリスが自分の隣を勧めてきたので、ボクはアイリスの右隣りに座る。

セナはボクの話を聞きやすくするためか、わざわざボクの向かいの位置に座った。

 

「で、まずその法律違反した貴族ってのがダスティネス家なんだよ」

「な、何ですって!?ララティーナさんの実家が!?」

「うん」

 

そしてボクは、デストロイヤーのアクセル襲撃から今までのことを、ありのまま全て話した。

話を聞き終わると、アイリスは信じられないという顔で半ば呆然とし、セナは半ば呆れてた。クレアは複雑な表情をしてる。

もしかして何か気付いたのかな?

すると、部屋の外が騒がしくなってきた。この部屋は防音仕様とのことだから、それでも聞こえるってことは相当うるさいんだろうな。

やがて扉を乱暴に開けて、ダクネスが入ってきた。ゆんゆん達もそれに続いて入ってきた。

ボクはダクネスを睨む。

 

「っ……!カービィ……!」

「まさか本当にアイリス王女に報告していたなんて…」

「皆、随分早くこれたね」

「そりゃ転送屋を利用しましたから!」

「てかそこの眼鏡の人は誰なの?前来た時はいなかったけど」

「彼女は検察官のセナです。あまりお気になさらず。それよりもララティーナさん。折角ですから今回の法律違反について、あなたの口からお話し頂けますか?」

 

アイリスは口ではそう言ってるけど、険しい顔でダクネスを睨みつけてるあたり、拒否権を与えるつもりはないみたい。

ダクネスは観念した顔でセナの隣に座ると、その隣にクレアが座る。

逃げられないようにという配慮だろう。

で、ゆんゆん達は空いてるところに座った。

勿論ゆんゆんはボクの隣に。

全員が掛け終わると、ダクネスは絞り出すように語った。

ダクネスの語りからは、終始自分は間違ってないといった意思が嫌でも感じ取れる。

ここまで露骨にアルダープを追求しないってことはやっぱり、タックが見た「悪魔」が関係してるな。

語り終えたダクネスが何かを訴えるような目で皆を見たけど、それに同調しようという人はいない。

考え足らずのアクアでさえおかしいことが分かってるんだもん。

それでもダクネスは考え直そうとしない。むしろ懐疑的な目で皆を見る。

いつものダクネスならこんな事態になるはずはない。

少なくともこういう場では誰よりもまともなこと言うから。

ここでセナはまた眼鏡をクイッとやって、冷淡な目でダクネスを睨んだ。

 

「…ダスティネス卿の貧しい民を救いたい気持ちには一定の理解の余地があります。それは認めましょう。しかし、この度の違反行為がそれに見合う判断だとは思えませんね」

「その通りです!ララティーナさん、私が見ていたあなたは、誰に対しても優しく、そして誰もが苦しまないようにといつもいつも努力を惜しまなかった…それなのに今はどうです!?双方が丸く収まる方法があるというのに無視し、人を苦しめる道を歩もうとしている!あなた、本当にどうしてしまったんですか!?」

「どうもしていない!!民のことを最優先に考える、それの何がおかしいというんだ!?」

「ったく、ここまで言われてもまだ分からないの!?どうして意地でも自滅の道を歩もうとするんだよ!!まるで悪魔に操られてるみたいに!!」

「何!?悪魔に…操られてる!?」

「悪魔ですって!?カービィ、どういうことなの!?」

 

そうだった。悪魔に過剰反応する馬鹿女神のことすっかり忘れてた。

でももう後の祭りだし、しょうがない。

セナも関心を向けてる。

 

「…思えば、今の状況的にあなたの考えは妥当な見解でしょう。しかしカービィさん、何故そのような考えが何の脈絡もなく出たのでしょうか?個人的にはその辺りが非常に気になります」

「そうですよ!カービィさん、どうして悪魔が関わってると思ったんですか!?」

 

ボクは大きく溜息をつき、皆を見渡しながら語った。

 

「アクセルの領主…アルダープに関してね…」

 

皆が真剣な顔でボクの話を聞き入ってる。

 

「……タックが言ってたんだ。『アルダープの屋敷の地下室で悪魔を見た』って」

「「「ええええええ!!??」」」

 

ゆんゆん達が驚愕の声をあげている最中、セナが冷静に問いかけてきた。

 

「…タック…噂は聞いています。確か、カービィさんの故郷において名の知れたプロの泥棒だとか。…有力な情報と思いたいのですが、情報源が泥棒となると…信用するには値しないと思われますが」

「いや、状況的には真実の可能性が高いよ。だって、1度は完璧に逃げおおせたのに、わざわざ戻ってきてボクに伝えてきたんだよ?わざわざ捕まる危険を冒してまで冗談を言いに来るなんて、誰が考えても割りが合わないでしょ」

「た、確かに…だとしても、現時点ではその悪魔の存在を示す証拠がありません。カービィさん、その辺りはどうするつもりです?」

「そんなの、屋敷に潜入するしかないじゃんか。まあ、飼い主のアルダープに都合のいいような選択を他人に強制させるくらいの悪魔だから一筋縄ではいかないだろうけど…」

「あ、あああ!!!」

 

突然ゆんゆんが叫んだ。どうしたんだろう?

 

「分かりましたよ!アルダープが飼っているであろう悪魔が!『都合のいいように強制させる』…該当する悪魔を知ってるんです私!!」

「ホントなのゆんゆん!?で、何なのその悪魔は」

「マクスウェルですよ!『辻褄合わせのマクスウェル』!事実を意のままに捻じ曲げる力を持つ悪魔です!」

「事実を捻じ曲げるか…アルダープ擁護にはピッタリだね」

「いやいや、そんな呑気なこと言ってる場合じゃありませんよ!?」

「そうだ!マクスウェルは公爵、そこらの上級悪魔とは格が違うんだ!魔王軍幹部のバニルと同格なんだぞ!もしそれが事実なら非常にマズい!!」

「なるほどね、幹部級の大悪魔か…経験値多そうだね」

「カービィさん…ここまで聞いても恐れを抱かず、第一声が経験値の心配とは…一体どのような生き方をしたらそう落ち着いていられるのですか?」

「どうもこうも、ボクが今まで戦ってきた奴の中には、もっと世界規模でとんでもない事しでかしたのもいるからね。ソイツらと比べれば地味なもんだよ」

「そ…そうですか」

「兎に角、普通にやっても悪魔の存在なんて証明できないだろうし、潜入して証拠を持ち帰るしかないねやっぱり」

「ちょっと待ってよカービィ!だとしたら腑に落ちないことがあるんだけど…」

 

珍しくアクアが知的そうな発言を始めた。

 

「悪魔ってのはね、人間と契約を結ぶ場合には必ず代価を要求してくるものよ。少なくとも契約主たる人間の願いを叶える際にはね。でも殆どの場合、支払いきれなくなって破滅するのよ。特にアルダープみたいな奴はね!」

「確かに、だが奴は今も生きている…これはどう説明すればいいだろう?悪魔の噂は奴が領主になる前からあったわけだからな…」

「へ~そんな昔から?…ねえアクア、悪魔を操る方法ってないの?」

「あ、悪魔を操る?」

「うん、神器の中にそんなものないかな~って思って」

「い、いや、私は聞いたことないけど…でも可能性はあるわね!」

「あとはそうだね…そのマクスウェルが、アクアと同じような奴だったら神器はいらないかも」

「それどういう意味よ!」

「だってキミの知力は平均以下じゃん。もしマクスウェルも同じくらいのバカだったら簡単に騙せるんじゃない?」

「なるほど、それに漬け込んで『支払った』と嘘をついている…それもありうるな!」

 

アクアが涙目のふくれっ面してるけど、以下同文。

 

「とりあえず、屋敷への潜入以外に選択の余地はないからね。その辺はボクが何とかするよ」

「待ちなさいよ!まさかこのアクア様をないがしろにする気じゃないでしょうね!?」

『ゴンっ』

「ひぎゃあっ!?」

「ベルディアの配下のアンデッドナイトすら倒せない奴が何言ってんのさ!!それに今回は悪魔の存在を証明するのが目的で倒すことじゃないんだ!!キミが一番不適任なんだよ全く!!」

「じゃあカービィさん、ここは私が」

「悪いけどゆんゆん、この件にはあまり突っ込まない方が良いよ。潜入するには『盗賊スキル』が必須なんだから」

「盗賊…スキル…」

「ということは…クリスさんですね!?確かクリスさんは盗賊でしたから…」

「お、おいちょっと待て!お前達クリスに会ったのか!?」

「うん、キミが出て行った翌日にアクセルのギルドに来たんだ」

「そうです!それでタックに身ぐるみ剥がされた所をカービィさんが助けたんですよダクネス!」

「そ、そんなことが…!」

「ま、とりあえず現時点ではそんな感じの作戦でいくつもりだから…アイリス、今はこのこと、他の人には言わないでね」

「ええ、勿論です!クレア、セナさん、よろしいですね?」

「異議はありません」

「…分かりました。カービィさん…くれぐれもお気を付けください」

「うん、ありがとね『エスパーカービィ』!」

 

そしてボク達はアクセルに戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌日、ボクは「エンジェル」でアクセル上空を飛んでクリスを探す。

この姿なら、そしてクリスとエリス様が同一人物なら分かるはず!

……見つけた!

裏路地を歩いてるぞ。仮にエリス様なら、正体を公に明かすのは不都合なはず。ラッキー。

ボクは人目に注意しながら降下して、クリスの背後からしかめっ面で声を掛ける。

 

「エ~リ~ス~さ~ま~?」

 

その声にクリスは過剰にビクついた。…間違いないな。

ボクは続ける。

 

「仕事をサボって、おまけに盗賊などという悪行に走っておられたとは…アクアの処分はどうするつもりなんですかね~?」

「ち、違います!別にサボっているわけではありません!!それにアクア先輩のことについ…て…は……」

 

ここでハッとなり、クリスもといエリス様は恐る恐る後ろを向く。

しかめっ面のボクを見て大きく後退りした。

 

「うあっ、あ、貴方って人は…わ、わわ、私をハメましたね!?」

 

ボクはしかめっ面のまま矢をつがえる。

 

「お聞かせ願いたい…なぜ世界一の女神ともあろうアナタが、盗賊に成り下がっているのかを…!」

「はわわわ…ま、待ってくださいよ!私は貴方が考える様なやましい理由からこんなことをしているわけではありません!!単に神器回収に最適だからです!!」

「神器…回収…?」

 

ボクが弓矢を下すと、クリス(エリス様)は胸をなでおろして地面にへたり込んだ。ボクは着地すると、クリス(エリス様)のもとに駆け寄る。

 

「そうです。異世界転生の際に神器を特典として与えることは知ってますよね?」

「はい」

「ですが、目的を果たせずに命を落としてしまった場合、その神器は持ち主不在となってしまい、時に悪事をもくろむ者の手に渡ってしまうこともあるんです」

「……」

「当然ながら私としても、神器をそのようなことに使ってほしくありません!ですからこうして、下界に降りて回収せねばなりません。そして目的を達成するのに最も適した職業が『盗賊』だったというわけです」

「…言い分は分かりました。しかし!その盗賊の状態でダクネス…いや、ダスティネス・フォード・ララティーナと友達付き合いなさるというのは賛成できかねます!」

「それは私だって先刻承知しています!ですから、距離を保ってお付き合いしてるんですよ!」

 

そういう問題じゃないんだってば!

…いや、この話はもうよそう。あんまり時間がないから本題に入らなきゃ。

 

「それはそうと、アナタはアルダープをご存知ですか?」

「アルダープですか?ええ、知ってますよ」

「では、彼が屋敷の地下室に悪魔を飼っていることは?」

「あ、悪魔ですか!?いえ、それは知りませんでしたむぎゅ!?」

 

声が大きいよもう!

ボクが口を塞ぐと、クリス(エリス様)は顔を赤くして平謝りした。

 

「で、調べてみたところ、どうもその悪魔というのが『辻褄合わせのマクスウェル』のようなんです」

「ま、ままま、マクスウェル!?それは確かなんですか?」

「まず間違いないかと…それで、真相究明のため、近いうちにアルダープの屋敷に潜入しようと考えております」

「そう…ですか…」

 

すると突然、クリス(エリス様)は豹変した。

誰が見ても分かるくらい殺気立っている。

まさか、エリス様もアクアと同じような奴だったりするわけ!?

うっわ~…完全なる人選ミスだよ。

 

「それで、何時決行するんですか?」

「まずは下調べが先でしょう?」

「以前から候補に挙げてましたから、屋敷内部は全て把握してます」

「なら地下室も知ってるんですよね?」

「当然です」

「ならば侵入経路を教えてくださいよ。今夜あたりでいいでしょう」

 

ボクは適当に紙とペンを口から出した。

 

「分かりました。まずはここから入って……」

 

とまあ一通り説明してくれたわけだけど、終始殺気立っていたことは言うまでもない。

全く…なんで神ってのはいつもこうなんだろう…。

しかもこの敵意はアクア以上だ…ボクの中でのエリス様に対する評価は間違いなく下がった。

 

「…とまあこんなところでしょう。警備の人数はそこまで多くないはずですし」

「なるほど…ところでアナタ、何時まで殺気立ってるつもりですか?」

「は?何を言ってるんですか?私はいたって普通です。おかしなこと言わないでください」

「『ミラーカービィ』!」

「うぉあっ!?」

 

自分が殺気立ってることにすら気付いてなかったので、目の前に鏡を置いてみると、クリス(エリス様)は大きく後ろに飛びのいた。

 

「い…今のは!?」

「キミの顔に決まってるじゃないか!!まさかホントに気付いてなかったの!?」

「す、すみません。全く気付きませんでした…」

「ったく、もういいよ!!後のことはボクが何とかするから!!」

「え、ちょっ、もういいって!?」

「悪魔に関わらせたらアクアより危険な奴だって分かった以上、この作戦にキミを加えるわけにはいかないんだよ!!」

「そ、そんな…!で、でも侵入するのであれば盗賊の」

「そんなのキミより遥かに優秀な人材のツテがあるからいいよ!」

「遥かに優秀な…ってまさか、あのタックのことじゃ」

「そんなわけないだろう!タックも盗賊なんだから、悪魔と戦闘ってなったら役に立てるわけないじゃないか!できるのは冒険者か、オールラウンダーだけだよ!兎に角、キミは潜入に参加しないで!特に悪魔には何があろうとゼ~~~~ッタイに関わらないでよね!!」

「…わ、分かりました。で、ですが、私の目的はあくまで神器回収です。ですから、せめてそれだけは…」

「ああ、いいよ。但し!全てが片付いてからだよ!!途中で割り込んだりしたら許さないからね!!!」

「も、勿論そんなことしませんよ!…ていうかカービィさん、姿変わってから口調が乱暴になりましたね」

「ああ、それ?『エンジェル』発動中はキミの前でだけ何故かあんな口調になっちゃうってだけだよ!意識なんてしてないから!」

 

そう言ってボクはプププランドに戻り、「仲間」のもとへ向かった。

思った通り、彼は快く受け入れてくれたので助かった。

ボクは彼を冒険者ギルドまで連れて行って、ボクと同じオールラウンダーを選んでもらい、盗賊スキルを一通り習得してもらった。

作戦も話したし、これで準備万端だ。

彼はギリギリまでスキルを磨いておきたいと言うので、時間を指定して待ち合わせることに。

そしてボクは館に戻った。

 

「あ、お帰りなさいカービィさん!作戦の方はどうですか?」

「準備は万端だよ。侵入経路はクリスに考えてもらったし」

「え?クリスが!?」

「何故にこんな早く、そこまでのことを調べられたんですかクリスさんは!?」

「そんなの知らないよ。クリスの方だって結構な手練れみたいだから情報通だったんじゃないの?」

「そ、そうか…」

「で、作戦だけど…潜入はボクとボクの仲間が組んでやる。悪魔の存在を示す証拠を見つけたら戻るつもりだけど、マクスウェルに見つかったりした場合は戦うことになるだろうね。その時に備えて、ゆんゆん達には近くで待機しててほしいんだ」

「分かりました!…で~、その仲間というのは?」

「屋敷の前で待ち合わせることになってるよ。ギリギリまで腕を磨きたいんだってさ」

 

こんな会話をしてる間、終始アクアは黙ってた。

あの時殴っといてホントよかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

深夜0時、ボク達は屋敷の前にやって来た。驚いたことに、クリスが先に来てるじゃないか。

あれだけ言ったのに懲りてないわけ!?

 

「まあまあ、そんな怖い顔しないでよ。悪魔のことは嫌ってほど聞かされたから、おとなしくしてるってば」

 

単にボク達のことが心配になっただけらしい。

まあボクとしては、邪魔さえしなければ他はどうでもいいんだけどね。

 

「ところでカービィさん、あなたの仲間はどこに?」

「ここにいるぜ!」

 

後ろから声がしたのでボクは振り返る。

 

「間に合ったみたいだね、シャドー」

「「「「「シャドー?」」」」」

「フン、知らないなら教えてやるよ。オレの名はシャドーカービィ!『鏡の国』の守護者にして、カービィの悪の心から生まれたもう1人のカービィだ!」

「「「「「ええええええ!!??」」」」」

「既にボクと同じオールラウンダー、盗賊スキルも習得済みだからクリスよりずっと役に立つよ」

「な、なるほどね…カービィが信頼するはずだ」

「待ちなさいよ!コイツ『カービィの悪の心から生まれた』って言ってたじゃない!大丈夫なの?そんなのにまかせて」

「そんなのって何だ!!『邪神より邪神らしい女神の皮被った邪神』にだけは言われたくねーやい!!オメーこそ悪魔に関わったりすんじゃねーぞカス!!」

「な、何ですって!?」

「ホラもういいから!時間が勿体ないから早速行くよ!」

「おう」

「ゆんゆん、見張りは頼んだよ!」

「はい!この『3匹の迷惑者』を監視しとけばいいんですね?」

「「「『3匹の迷惑者』!?」」」

「うん!あそうだクリス、万一戦闘なんてことになったらさ、アクセルの冒険者達を出来るだけ多く呼んできてね!」

「分かったよ…できればそうなってほしくないけど…」

「それじゃシャドー、手筈通りにね!」

「おっし、そんじゃ」

「『フォーメーション・ベルディア』!」

「『ファイター』!」

「「『潜伏』!」」

 

屋敷の中は当たり前だけど凄く暗い。

こういう時、敵感知スキルは重宝するね。

とりあえず見つけた警備は「ドレインタッチ」で何とかするつもり。

ってか今更だけど、魔王軍幹部の能力使ってる時でもスキルとか普通に使えるんだな。

クリスが描いた図面によると、マクスウェルがいる地下室はアルダープの部屋からしか行けないらしい。

地下室は流石に内部構造まで把握できてないみたいだ。

 

「さて、どうしようかな…」

「とりあえず、アルダープの部屋に行こうぜ。ついでにその道中の部屋をいくらか調べよう。あまり引っ掻き回し過ぎると目立つだろうしな」

「…そうだね。おっと、警備が来た」

 

相手は1人。それも完全に油断してる。「ドレインタッチ」で無力化するのは簡単だ。

シャドーが気絶した兵士を目立たないところに運び、ボクは近くの部屋を覗いてみる。

警備兵達の寝床だった。一応一通り調べては見たけど収穫はなし。

念のために「宝感知」も使ってみたけど、特に反応はない。

その後も2部屋ほど調べてみたけど、結果は変わらなかった。

アルダープの部屋に到着したので、ボク達は聞き耳を立てる。

……独り言をつぶやく声が聞こえる。起きてるみたいだな。

それならそれで手はあるぞ。

 

「『サイレント』」

 

いわゆる消音魔法。これをドアにかければ開閉音がしなくなる。

あとは…。

 

「「『ライト・オブ・リフレクション』」」

 

光の屈折魔法で姿を消す。

そしてボクはドアをギリギリ入れる程度に開き、神器である腕輪の力を借りて素早くアルダープに接近する。

典型的な悪人面だ。それに脂汗かいてるし。

あんまり触りたくないけどしょうがない。

ボクは特に念入りにドレインタッチをかけてから、ベッド脇にあった入り口から梯子を伝って降りた。

降りた先は…廊下だった。

部屋がいくつかあるかなと思ってたけど、違ったみたい。

部屋は1つだけだ。あれがマクスウェルのいる部屋。

 

「…引き返して証拠探しを続けようか」

「あいや、ちょっと待ってくれカービィ。ここは1つ賭けをしないか?」

「は?」

「だからさ、神器のことをマクスウェル本人に聞くんだよ」

「ええ!?いやいや、どうやって聞くのさ?」

「オレに考えがある。カービィはそう…しかめっ面して黙っててくれりゃいい。時には適当に頷いたりしてな」

「わ、分かったよ…」

 

考えてみれば危険は大きいけど、うまくいけば神器のことについて聞ける確率が高いのも事実だ。

ここからはシャドーが先頭に立つ。

静かにドアを開けると、その部屋には何もない…巨大な鳥籠を除いては。

そこから喘息のようなヒューヒューいう声が聞こえてくる。

そこにいたのは、やせ細ったような体型の悪魔。あれがマクスウェルか。

マクスウェルはボク達に気付いた。同時にシャドーが応対する。

 

「ん?君達は誰?」

「お?オメーがマクスウェルか?」

「うん、そうだけど」

「ほーん…」

「で、君達は何しに来たの?」

「あ?探し物だよ」

「探し物?」

「ああ、アルダープの野郎に半ば無理矢理な…探してるのは神器なんだ。あの野郎が置き場所わからなくなったとか言ってよぉ」

「ふーん。アルダープも随分抜けてるんだな」

「だろう?しかもその肝心の神器がどんなものかも教えねえときたもんだ!…なあマクスウェル、オメー知らねえか?場所の見当がつかないならせめて形だけでも良いんだ」

「形か…えっとね、アルダープは神器を2つ持ってるんだ。1つは片方の先端がこう…つる植物みたいにグルグルなってる杖型のやつ。で、もう1つは柄の長いシャベルみたいなのだった」

 

シャドーの芝居もあってか、あっさりと神器のことを教えてくれた。

少なくとも今まで調べた部屋の中に、マクスウェルが言うような形のものは無かったぞ。

となると、しらみつぶしに全部の部屋を探さないといけないな…。

 

「お、そうだ!ついでに聞くけどよぉ、その神器ってのはさ、盗賊の『宝感知』とかに引っかかったりするもんなのか?」

「ああ、確かそれで見つけられるはずだよ」

「おいおい、それってかなりマズいじゃんかよ…もし泥棒に盗られでもしたらどうするつもりなんだあの野郎…!」

 

シャドーのおかげで、ボクの中のモヤモヤが晴れた。

神器は「宝感知」で見つけられるのか。

それなら今まで見てきた部屋には間違いなく神器はないことになる。

 

「チッ、こんなとこで文句垂れててもしょうがねえや!他を探そうぜ」

 

その言葉に、ボクは静かにうなずく。

部屋を出ようとした直後、外から足音が聞こえた。多分アルダープだろう。

ゆっくり歩いてきてる。「ドレインタッチ」による違和感から、何となく様子を見に来たってところかな?

兎に角、鉢合わせは不可避ってことだ。ボクとシャドーは覚悟を決めた。

そしてドアが開く。

 

「おいマクス、調子はど…な、何だ貴様らは!?」

 

やっぱりアルダープだ。ボクは左手でアルダープを指さす。

 

「ヘッ、随分早いお目覚めだこと」

「貴様ら、一体ここで何を」

『ズビシュッ』

「うぉあっ!?」

「おっと、動かない方が身のためだぜ?さもないとコイツの『死の宣告』の餌食だ。死ぬのは怖いだろ?」

「『死の宣告』だって!?……思い出した!そのピンクのコの身に付けてる鎧、どっかで見たことあると思ったらそうだ、魔王軍幹部のベルディアだ!そいつの鎧と似てる!」

「何…だと!?ベルディアと同じ力を使える……ま、まさか…カービィ!?」

「な~んだ、今頃気付いたの?結構有名なんだけどなボク…」

 

もうここまで来たなら喋ってもいいでしょ。

それに、さっきの「死の宣告」は壁を狙ったものだからアルダープに当たる心配はない。

 

「まいっか。予定とは違うけど、これで一応悪魔を飼ってる証拠は押さえられたわけだし」

「ふん、そんなもの俺の手にかかればいくらでも揉み消せ」

「馬鹿かテメェ!オメーと悪魔の関係は昔から噂されてたことだ!あれぐらい浸透してりゃオレ達が今の状況を戻って報告すりゃすぐにでも強制捜査のメスが入るだろう!そうだ、屋敷前で待機してるアイツに言えばもっと早くに片が付くだろうよ、ダスティネス・フォード・ララティーナになぁ!」

「ダス…ティネス!?」

「そうだ!貧しい民を救うためにしたことが、実は仕組まれたものだったと分かりゃさぞご立腹だろうな!」

「そうだね。場合によっては王都も動いてくれると思うよ。マクスウェルのことはアイリス王女の耳にも入ってるしね」

「ええ!?王女様が僕のこと知ってるの!?」

「うん、まあ情報源はボクの仲間のアークウィザードなんだけど」

「つーかさ、何でアイツはマクスウェルのことを知ってたんだ?」

「それは多分、まともな友達がいないという事実を捻じ曲げてもらうためにマクスウェルを呼び出そうとしたことがあるってことじゃないかな?」

「あ~…確かに妥当だなそりゃ」

「ねえねえ、他に僕のこと知ってる人っているの?」

「え?えっとあとは…アイリスの護衛をしてるクレアと、検察官のセナくらいだね今のところは」

「ふ~ん、そんなもんか…」

「ええい、マクス!!不法侵入者と仲良くするな!チクショウめ!ダスティネス家だけでも厄介だというのに王族にまでつけ入るスキが…!くそっ、マクス!!こいつらの」

「『波動ショット』!」

 

アルダープがマクスウェルに何か命令しようとしたけど、シャドーはそれを遮るために波動弾を放つ。

しかし、波動弾は突然軌道が大きく逸れてアルダープに当たらず、ドアに直撃した。

これがマクスウェルの力か…。ってことはこれ、結構ヤバい状況なんじゃないかな。

普通に攻撃してもまず当たらない。辻褄合わせで軌道を変えられるんだもん。

となると…不意を突くしかないね。何かで気を逸らしてそのスキに攻撃する。

ってマズイ!アルダープがマクスウェルの方に行っちゃった!

 

「マクス!奴らの記憶を捻じ曲げろ!!」

 

きっ記憶を!?

大変だ!そんなことされたら今までのことが全部白紙に戻っちゃう!

でも…もう「エンジェル」になる時間はない…!

……いや、ちょっと待てよ。捻じ曲げると言ってもどうやるんだ?

それに…未だに何ともないぞ。

 

「オイどうした?失敗でもしたのか?何も変わってないようだが…」

「何をしてるんだマクス!!早く記憶を」

「無理だよ……流石に……」

「何を言うか!!どんなものでも捻じ曲げるのかお前の力だろうが!!さっさとしろ!!」

「いくら言ったって無駄だよアルダープ。だって捻じ曲げようがないんだもん」

「何だと!?」

「……ああ、そういうことか!確かにカービィの言うとおりだぜ。この状況を覆すのは無理だ!記憶を消したりできるならまだしも、マクスウェルは捻じ曲げることしかできない。要するに、別の口実を用意する必要があるってこった。だが、この部屋にはマクスウェルと檻以外何もない。そこにオレ達がいる。これに悪魔探し以外の口実をつける方が無茶だ。ただの散歩だの、間違って入っちゃっただの、そんなの辻褄が合わなすぎる!そう、これは流石のマクスウェルでも辻褄の合せようがねえってわけだ!限度を超えちまってんだよオメーの命令は!」

「ウヌ~…!」

 

シャドーが長話でアルダープ達の気を逸らしてくれたおかげで、ボクは「コピー」を用いてマクスウェルの能力をコピーできた。

マクスウェルがそれに気付いたのはコピーし終わった直後だった。

 

「え?カービィ、今何をしたの?姿が変わってるけど…」

「ええい!そんなことはどうでもいいだろうが!マクス、奴らを殺せ!!」

「…分かった!」

 

やっぱり戦いは避けられない!

 

「『フォーメーション・デストロイヤー』!」

「『メタル』!」

 

ボクの能力を見て、シャドーも守りを固めるべく「メタル」を使用した。

マクスウェルがどんな攻撃をしてくるか分からないからね。

でも、マクスウェルの攻撃はボクの予想を遥かに超えたものだった。

 

「『バースト』」

 

何と爆発魔法を使ってきた!

まさかこんな密室でそんなのを使うなんて…!

あそっか、マクスウェルの辻褄合わせを使えば瓦礫が当たる心配もないのか。

身構えたとはいえ、ボク達は大爆発で吹き飛ばされた。

起き上がって周りを見てみると、そこは瓦礫の山。

でもボクは何ともない。これがデストロイヤーの力か。デストロイヤーのと同じ特殊金属製のアーマーと強力な対魔法結界のおかげで無傷だったんだ。

あとは攻撃手段だけど…。ボクが試してみると、両腕と頭からバリスタの矢が発射できる。

あくまでボクに合うサイズの小さなものだけど…でも連射がきくから牽制には使えそうだ。

すると、シャドーが瓦礫から這い出てきた。

 

「シャドー!よかった無事で」

「フン、馬鹿にするな!このオレがこの程度のことでくたばってたまるかってんだ!」

「よし!マクスウェルは辻褄合わせで攻撃の軌道を逸らすことができるから、手数で勝負しよう」

「手数か、それなら『プラズマ』!」

 

これで迎撃態勢は整ったぞ!

…と思った矢先、騒ぎを聞きつけたのか、ゆんゆん達が駆け付ける。

 

「カービィさん、大丈夫ですか!?」

「うん、問題ないよ」

「一体何があったんですか!?」

「マクスウェルだよ。アイツ爆発魔法が使えるみたい」

「やはりいたのか…!それに爆発魔法を使うだと!?」

「そう。だけどそれより厄介なのは例の『辻褄合わせ』だね。攻撃の軌道を曲げられるんだもん」

「だからオレ達は手数で押してく方針ってわけよ!で、あとの2人はどうした?」

「ああ、アクアとクリスならアクセルの冒険者達を呼びに行っている」

 

アクアも行ってるのか。

まあ、その方が良いに決まってる。あの2人が悪魔に関わったらとんでもないことになりそうだから。

 

「出てこいクズ共が~!!」

「!アルダープの声が…!」

「多分マクスウェルも近くにいるね」

「ああ、一応契約主だから守らないわけにはいかないしな」

「それで、私達はどうすればいいでしょうか?」

「う~ん、それじゃまず、ボクとシャドーが先にマクスウェルを攻撃するから、ゆんゆんとめぐみんはバックアップをお願いね!ダクネスはアルダープの方を頼むよ!」

「承知した!」

「はい!」

「騒ぎますよ!我が血潮が、爆裂魔法の血潮が騒ぎます!!」

 

めぐみんに至っては何を言いたいのかさっぱりだけど、今はどうでもいい。

ボクとシャドーは瓦礫の陰から飛び出した。ゆんゆん達も時間差でそれに続く。

思った通り、マクスウェルはアルダープと一緒にいる!

ボクはマクスウェル目掛けて矢を連射した。

でもやっぱり全て外れた。あれだけの数の矢の軌道を同時に捻じ曲げるんだから相当な腕前だ。

 

「マクス!もう1発見舞ってやれ!!」

「うん『バースト』!」

 

2発目の爆発魔法。爆裂魔法ほどではないだろうけど、こっちも魔力消費は激しいはずだ。

撃てても数発といったところだろう。

渾身の力を込めて踏ん張ったおかげで、ボクは後退こそしたものの吹き飛ばされなかった。

 

「何度やったって無駄だよマクスウェル!デストロイヤーに効かない攻撃がボクに効くわけないじゃないか!」

「で、デストロイヤーだって!?」

 

ボクは腋下の突起部分を展開させた蜘蛛脚で走り始める。

結構小回りもきくから回避にも優れてるぞこれ。

ボクはジグザグに高速移動しながら矢を放ち続ける。

 

「か、『カースド・ライトニング』!」

 

確実にボクに攻撃を当てる為なのか、マクスウェルは上級魔法に切り替えてきた。一応避けてはいるけど、デストロイヤーの防御力なら当たっても問題ないだろう。

その時、ボクは閃いた。ベルディアの能力を使ってる時に盗賊スキルが使えるなら…魔法も使えるんじゃないかな?

以前、矢に魔法を纏わせることに成功してるんだ。もしかしたら、デストロイヤーのバリスタにも纏わせられるかも!

よし!やってみるか!

 

「『プラズマニードル』!」

 

ここで、チャンスをうかがってたシャドーが針状のプラズマ弾をマクスウェルに放つ。

が、これも軌道が逸れた。

 

「チッ!」

 

すかさずシャドーは連射に切り替える。

個人的には「バブル」の方が連射と攻撃範囲的に便利だと思うけど、やっぱりアレだと軌道がそれた際の誤爆範囲が広くなっちゃうからな…。

ま兎に角、今のうちに属性攻撃の準備だ!

位置関係的にマクスウェルはボクの進行方向右手前、アルダープはそれより左奥にいる。

となると…マクスウェルに隙を見出すならアルダープも攻撃対象にしないといけないな。

そうするには…「インフェルノ」にしよう!

何だかんだで空を飛べる敵が少ないせいか、炎属性魔法って結構使う機会多いんだよね。

そうこうしてるうちに、大勢の人の声が聞こえてくる。

どうやらアクセルの冒険者達が到着したようだ。

 

「おいおい、何か大変なことになってるぞ!」

「ははっ見ろよ!領主さまの屋敷がバラバラだぜ!」

「お、アルダープの隣に何かいるぞ!あいつがマクスウェルか!?」

「間違いない!俺達も早く加勢しようぜ!!」

 

こんなことを口々に言ってる。

でもここはダクネスが先頭に立った方が良い。

ボクは奴らの注意がこっちに向いてないことを確認し、ダクネスに前に出るよう言った。

 

「『インフェルノバリスタ』!」

「!!??」

「どわあああああ!!!」

 

ボクはアルダープ目掛けて炎の矢を放った…ように見せたけど、実際はアルダープとマクスウェルの間、ちょっとアルダープよりの辺りを狙ったもの。

でもマクスウェル相手なら十分みたい。

アルダープを狙うとは思ってなかったようで対応が遅れ、地を這うように広がる炎がアルダープを飲み込む直前に何とか防いだ。

とはいえ、普通の矢と比べると魔法を纏わせる分、連射速度が大幅に落ちるみたい。

それに矢1本につき魔法1発分の魔力を消費するからあまり多用はできないな。

まあ何はともあれ、ダクネスは無事にアルダープのもとに近付くことができた。

 

「アルダープ!!」

 

ダクネスの声にアルダープは、遠目でも分かるくらいにビクッとなって声のした方を向く。

ボクはとりあえず、ダクネスの後ろで様子を見守ることに。

シャドーはアルダープの背後に陣取ってるけど、向こうも見守る方針みたいだ。

 

「お前は領主という立場にありながら、悪魔を使役するなどという大それたことをしていたとは!観念しろ!お前はもう終わりだ!」

「なな、何を仰いますか!誤解です!私は無理矢理従わされてるだけでして…」

「今更どうしらばっくれようとも無駄だ!無理矢理従わされただと?お前がマクスウェルに命令しているのをはっきりと見ているんだ!勿論、マクスウェルがお前を守ったところもなあ!!」

「そうだ!俺だって見たぞ!」

「本当に従わされてるならそいつが身を挺して守りに行くわけないだろ!!」

「どんだけ嘘つくの下手なんだよテメーは!」

 

ダクネスの発言を皮切りに、他の冒険者達がバッシングを浴びせる。

それにシャドーも続いた。

 

「つーかオメー、オレが言ったこと忘れてたのかよ!屋敷前にダスティネスを待機させてるって!そうでなくても第一王女の耳に入ってるって話題が出た時点でダスティネス家の輩の耳に届いてねぇわきゃねーって話だ!…ま、オメーは見るからに馬鹿そうだからそんなことも理解できなかったんだろうな!こんな馬鹿でも領主になれるんだから、ホントこの街は変わってるな!いや、この国自体が変わってるのかねぇ、ダ~ハハハハハ!」

 

シャドーが笑うと、何故か他の冒険者達も笑い始めた。笑いってこんなにうつりやすいものだっけ?

いや、シャドーの言うとおり、少なくともアクセルの住人達は変わり者なんだろう。

すると突然、その笑いを消し去る事態が起きた。

 

「『エクスプロージョン』!」

 

何と、めぐみんが何の前触れもなくマクスウェルに爆裂魔法を放ったのだ。

状況的に不意を突こうとしたんだろうけど、直前に気付かれて爆破地点をずらされたために倒すことはできなかった。とはいえ、爆裂魔法の効果範囲は広く、マクスウェルも無傷では済まない。

でも結果的にこっちが不利になったことに変わりない。爆裂魔法が不発に終わって、しかもめぐみんを避難させる為の救助要員を割かないといけない。

もうこうなったら何が何でもマクスウェルを早く倒さなきゃ!

ボクは矢を連射する。

 

「チィィ!無駄遣いしやがってあのバカ!」

「シャドー!早く攻撃を!」

「おっとそうだった!」

「みんなー!何でもいいからマクスウェルに攻撃して!もうこの際石投げるでもいいから!これ以上爆発魔法を使わせないように!!」

 

ボクの呼びかけで、その場にいた全ての冒険者が攻撃を開始した。石や瓦礫を投げてるのは多分クルセイダーだな。

ゆんゆんもファイヤーボールを全力で連射してる。

でもそんな状況でさえ、マクスウェルには攻撃が当たらない。

…もうこうなったらアレだ。目には目を、歯には歯を、爆発魔法には爆発魔法だ!

魔力消費的にも、誤爆時の被害を少なくする意味でも爆裂魔法よりこっちの方が良いはず。

ボクは爆発魔法を矢に纏わせ、発射した。できれば当たらないにしても、マクスウェルに一番近い所で爆発してくれるといいんだけど…。

なんてことを考えてたら、意外や意外。軌道を逸らされたボクの矢は、ほぼ逸らされた瞬間に爆発した。

 

「!!」

 

マクスウェルは爆風で大きく前に吹っ飛んだ。

まだ魔力に余裕はあるぞ。

よ~し!これならトドメをさせそうだ!

 

「『バーストバリスタ』!」

『ズドオォォドドオォォズガガアァァァン……!!!』

 

爆発魔法を纏わせた矢を、今度は3本同時に放った。これもボクが思ったタイミングで爆発する。

また新しい発見だ。まさか爆発のタイミングを決められるなんて!

これには流石のマクスウェルでも対応できず、大爆発に飲み込まれた。

爆煙が収まった時、マクスウェルの姿はなく、ボクの冒険者カードに名が刻まれてる。

ボクがその冒険者カードを精一杯高く掲げると、他の冒険者達が歓喜の声を張り上げた。

一方のアルダープはというと、ボクの爆発魔法の爆風で吹き飛ばされて気絶してた。

見るからに間抜けな顔で…。

 

「…それじゃ後のことは私に任せてくれ、カービィ」

「うん…」

 

結局アルダープは、間もなく駆け付けた警官達に連行され、シャドーは早々と鏡の国へと帰った。ギルドの宴に誘ったんだけど、興味ないってさ。

ギルドに戻り、ダクネスは自分が貴族であることを明かしたうえで改めて皆に自己紹介する。

でも特に驚くような人はいなかった。むしろそんなの関係ねぇって感じでボク達を、そしてダクネスを称賛した。

何故か涙目で顔を真っ赤に染めるダクネスを尻目に、ボクは豪勢な夜食を楽しんだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そんなことがあって、翌日の昼くらいまで目が覚めなかった。正確には王都警察の警官達が訪ねてくるまでね。

アルダープの裁判に証人として来てほしいってことだったから、ボク達は軽食を済ませると、早速王都の裁判所へ向かった。

ダクネス曰く、証人は呼ばれたら証言台で事件に関して話せばいいとのこと。

といっても青空のもと、かなり簡素な机や椅子が並んでるだけのもので、ボクがイメージしてた重苦しい感じがあんまりしない。

で、アルダープはというと、椅子に縛り付けられていた。

ボクは今までの経緯を洗い浚い証言台で喋った。セナの隣に座っていたアイリスは、それを食い入るように聞く。

それもあってか、下った判決は死刑。2週間の執行猶予付きとのこと。

ここで突然、アイリスが立ち上がった。

 

「裁判長、只今の判決に関して提案があるのですが、よろしいでしょうか?」

 

突然のことに裁判長は一瞬戸惑ったけど、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

「…して、提案というのは?」

「はい、彼アルダープは我が国の歴史上最も悪辣な犯罪者といっても過言ではありません!よって、万が一にも執行猶予中に逃亡することがないよう、保険をかけておきたいのです!」

「保険?」

「具体的には、どうあっても死から逃れられないようにしたいのです」

「死から逃れられないように?」

 

その言葉に、周りにいた人達が騒ぎ始めたが、静粛にの一言でまた静まり返る。

 

「…で、一体どのようになさるおつもりなのでしょうか?」

「ずばり、カービィさんの力をお借りしたいのです」

「え?ボクの!?」

「はい!こんなことを頼むのは心苦しいのですが…確実なる死を与えるためにも、どうかお願いします!」

「……ってことは何?この場でアレを使うの?」

「はい」

 

ホントは控えたかったけど、状況が状況だから仕方ない。

ボクは席を立つと、アイリスを一睨みしてからアルダープの前まで移動した。

 

「あの~アイリス陛下、一体何が始まるのでしょう?」

「カービィさんには、魔王軍幹部ないしそれに匹敵する強さを秘めたモンスターの力をその身に取り込むという特殊な能力があります。そしてカービィさんは過去に、魔王軍幹部の1人ベルディアを倒したのです」

「『フォーメーション・ベルディア』!」

「そして、ベルディアの持つスキル…それが、『死の宣告』」

「キミは…2週間後に死ぬ!」

 

ボクが放った呪いは見事アルダープに直撃した。当たり前だよね?縛り付けられてるんだもん。

アルダープの顔には絶望の色が浮かび、汗が滝のように流れてる。

そう言えばこれって、呪いをかけた本人は解除できないのかな…?

なんて考えてたら、アクアが割り込んできた。

大丈夫なの?そんなことして。

 

「ちょっと待ってよ!確かにこれなら死の確率は大幅に上がるわ。けど必ず死ぬってわけじゃない。ベルディアの呪いは腕のあるアークプリーストなら解除可能だもの。例えば私が今ここで、『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

アクアがアルダープ目掛けて解除魔法を放った。最近あまり活躍できてないから見栄を張ろうとしてるのかな?

 

「……あ、あれ?どういうことよ、呪いが解けてない!くっ今度こそ『セイクリッド・ブレイクスペル』!」

 

その後も何度か解除魔法を放つが、解けるどころか呪いを弱めることさえままならない。

アクアのアークプリーストとしての腕は確かだから、解除魔法だけ下手なんてことはまずないだろう。

となると…ボクの腕が相当上がってるのか、そもそもベルディアの力が強すぎるのかどっちかといった感じかな。

アクアは終始、額に汗して真剣な顔で解除魔法を放ち続ける。

そろそろボクも試してみよう。解除魔法でもいいけど、まずは素でやめられないかを先に。

 

「アクア、一旦ストップ」

 

ボクはアクアを押しのけてアルダープの前に出る。

 

「今のキャンセル」

 

適当に一言そう言ってみた。するとどうだろう、アルダープの周りを渦巻いてた呪いはあっという間に消えてしまった。なるほど、ベルディア本人は解除できるんだ。

疑問が晴れたので、ボクは再度アルダープに呪いをかけ直す。

 

「よかった。万一かけ間違えても、呪った本人は解除できるみたい」

 

ボクの一言で、王都住人達が安堵の声を漏らす。

正直、ボクもホッとした。と同時に恐怖した。

だってアクアが解除どころか、呪いを弱めることすらできなかったんだよ?仮に解除可能としても、腕利きのアークプリーストが束にならないとダメなんじゃないかな。

兎に角、そんな感じのことはあったけど、その後はさっと片付いてボク達は帰路についた。

ギルドに着くと、お姉さんから特別報酬7億エリスを受け取った。お姉さん曰く、内2億はアイリスからの迷惑代らしい。

使うのを控えたいと言ってた「死の宣告」を半ば無理矢理使わせてしまったからってさ。




次回予告
マクスウェルを倒したカービィのもとに、ダクネスの実家から呼び出しが。
これ見よがしに親に娘の変態癖を暴露しようとするカービィだが、そこへ新たな人物が。
そして遂に、ダンジョン奥に潜むアイツと相まみえることに!
次回「乗っ取り頂上決定戦!」
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