【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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およそ1ヶ月(2ヶ月?)ぶりの投稿、お待ちどうさまです!
さあさあ、バニルの運命が知りたきゃ、いざお立合い~!
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第06話 乗っ取り頂上決定戦!

アルダープの裁判に立ち会った翌日の早朝、慣れないことをした疲れから帰宅後すぐ寝たせいか、ボクが一番先に目覚めた。カーテンを閉め忘れたせいで朝日が異常に眩しい。

顔を洗って部屋を出て、何となく廊下を歩いてみる。

ほとんどは微かな寝息が聞こえるだけだけど、ダクネスだけは違った。悪夢にうなされてるらしい。

寝言はほぼ「やめろ!」が占めてて、ついでに少々バリエーションが。

それにしても、マゾを極めたような存在であるダクネスに「やめろ!」なんてセリフは似合わないな。

……普通の感性を持ち始めたのなら願ったり叶ったりだけど…どうだろう?

すると突然、誰かが玄関の扉をノックした。こんな朝早くから誰だろう?

扉を開けると、そこにはタキシードを着た白髪まじりの男の人が立ってる。

 

「えっと…誰ですか?」

「初めましてカービィ様。わたくしハーゲンと申しまして、ダスティネス家の執事でございます」

 

何と訪ねてきたのはダクネスの実家の執事だった。でも何の用があって…?

 

「こんな早くにお訪ねしてしまい申し訳ありませんが、急ぎの用事ですので…失礼ですが、お嬢様をお呼びいただけますか?」

「…分かった。ちょっと待ってて今起こしてくるから」

 

そう言ってボクはダクネスの部屋に入り、ベッドの前で叫んだ。

 

「ダ~~~クネ~~~~~~~~~ス!!!!」

「おぉうっ!!??」

 

ボクの大声でダクネスは飛び起きる。

しかもその際に体勢を崩してベッドから転げ落ち、まるで寝相の悪い男の子みたいな体勢で落ち着いた。

 

「か、カービィ!全く、脅かすんじゃない!」

「何言ってんのさ!キミん家の執事さんが来てるんだよ!」

「な、な、何だと!?」

「早く着替えて応対してよ!待ってんだから!」

「わ、分かった!!ちょっと待っててくれ!!」

 

そう言うと、ダクネスは大慌てで着替えを済ませた。いつもの鎧姿じゃない、白がメインのドレス姿。初めて見たよ。

ついでに、この一連の騒ぎでゆんゆん達も起き、同じく大急ぎで身だしなみを整える。

執事さん曰く、マクスウェル討伐の件でダクネスのお父さんがボク達を呼んでるらしい。

少なくともボクはダクネスの実家の場所を知らないわけだけど、どうやら問題ないみたい。

とはいえ、まさかアクセルの街中にあるなんて…。

それなりに距離があるみたいだけど、朝食はダスティネス家の方で用意してくれるみたいだから文句はない。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

着いてみると…やっぱり違うな。

ボクが今住んでるとこよりずっと大きいし、整備も行き届いてる。

庭には大きな池があって、その奥にはグラウンドのような場所が見える。

池には…蓮みたいな水生植物が浮いてるだけで魚とかは飼ってないみたい。

で、内装だけど…豪華な見た目に反して結構質素な感じがするんだよね。

とりあえず、茶色メインで床にはワインレッドの絨毯が敷かれてる。

いわゆる…モダンな感じっていうか…。

まぁそれでも、所々に高そうな物品が置かれてるのは確かだ。

これで貴族の中でもトップクラスというんだから、王族がいかに格の違う存在かが嫌でも分かる。

そのうち、ボクの腹の虫が鳴いた。それもかなり大きな音で。

 

「おいカービィ…」

「仕方ないじゃん、お腹空いてんだから!ゴハンまだ!?」

「全く…ハーゲン、カービィは空腹だといつもご機嫌斜めなんだ。話は食事の後でということにできないだろうか」

「ご心配なく、旦那様もそのつもりのようで、食堂でお待ちしております」

 

それを聞いて安心したよ。

食事の前に長話をされる…ボクにとってこれ以上の苦痛はない。

両開きの扉の先には、お城に次いで広い食堂に、これまたワインレッドのテーブルクロスがかけられた長テーブルが置かれてる。

そしてその奥には、立派な白い口髭を蓄えたガタイのいい男の人が座ってる。

あの人がダクネスのお父さんなんだろうな。

その後ろでは護衛と思しき男の人が2人、微動だにせず立ってる。

 

「これはこれはカービィ殿!急に呼びたててしまって済まなかった」

 

ここまで言った時、またボクの腹の虫が鳴いた。何かさっきより音が大きいな。

 

「…あ~、まずは朝食といこうか」

「うん、そうしてもらえると助かるよ」

「おいカービ」

「ゴ・ハ・ン!!!!」

 

ダクネスがケチ付けようとしたので、ボクはダクネスを睨みつけた。ボクとしてはそこまで本腰入れたつもりはないんだけど、あのマゾを極めたダクネスが素直に引き下がるんだから相当なものだったんだろうな。

それを確認したボクは大きな肉の塊に一番近い席に座り、いただきますして食べ始めた。

 

「全くカービィときたら、食べ物となると品も遠慮もないんだから…!」

「いやそんなことより、我々も早く食べましょう!このままではカービィに独り占めされてしまいます!」

 

めぐみんの一言で皆、一斉に席について食べ始める。

そのタイミングで、ボクの席に10段重ねのラージバーグが運ばれてきた。アイリスが教えたのかな?

結局それでも足りなくて、「エスパー」で遠くにあった魚料理を半分失敬してとりあえず満足。

本当はおかわりしたかったんだけど、ダクネスのお父さん(?)が咳払いしたのでやめにした。

と同時に、レストランの従業員みたいな格好をした人達がテーブルの上を片付け始める。

テーブルがすっかり綺麗になったところで、ダクネスのお父さん(?)が口を開いた。

 

「では改めて、ダスティネス邸へようこそカービィ殿。私はダスティネス・フォード・イグニス。アクセルの現領主にしてララティーナの父である」

「ボクはカービィ。このパーティのリーダーをやってるオールラウンダーだよ」

「ああ、知っておるとも」

「知ってるって…いやイグニスさん、ボクのことよりダクネス…いや、ララティーナのことはどこまで知ってるの?」

「どこまで…というと?」

「え~とまず、王都での活躍のことは知ってる?」

「王都?ああ、知ってるとも。アイリス王女から聞いている」

「じゃあさ、その時ララティーナがどうしてたかは聞いてる?」

「ララティーナは…魔王軍と戦う冒険者達に攻撃が及ばないよう、身を挺して守り抜いたと」

 

やっぱし守りに回ってたのか!

攻撃しないとレベル上がらないって散々言ったのに!

…とはいえ、他の冒険者達が魔王軍の攻撃にさらされなかったと聞いたら大っぴらには怒れない。

とりあえず話を続けよう。

 

「ホントにそれだけ?聞いたのは」

「ああ、それだけだが…何故だね?」

「……あそっか、王族とダスティネス家のパイプは物凄く太いんだった。それならパイプを傷つけるようなことは言わないよね…」

「ん?それは一体どういうことだね?」

「…まぁボクはその時、魔王軍の後方にいたから現場を見たわけじゃないけど、今までのララティーナの言動を見聞きしていれば、誰でも『冒険者達に攻撃が及ばないように』って理由は全体の半分だと分かるさ」

「半分?…ではもう半分は一体?」

「そりゃ勿論、『自分の変態欲求を満たすべく貴族階級を悪用した』だよ!」

「んあっ!!??」

「…………!!」

 

ダクネスが珍しく声も出ない状況なのは置いといて、イグニスさんのあの反応は間違いない…。

 

「ララティーナ、キミってホントに本性を隠すのが上手いね。まさかあれだけの変態癖を親に今まで隠し通してきたなんて」

「い、いや…その…娘のソレについては知ってはいたんだ…」

「へ?知ってた!?」

「ただその…まさかそこまでとは…」

「な~るほど、納得いった!多少おかしい程度のものと思わせてたのか。それだけでも十分凄いよララティーナ。悪い意味でだけど」

「カービィ…あなたは実の親の前でも躊躇しないんですか!?どれだけ神経図太いんですか!?」

「当然じゃないかめぐみん!というか神経図太いのはむしろキミの方だよ!爆裂魔法単体じゃ意味ないって今まで散々言って言われてきたのに未だに学習しないじゃないか!!それにいいかい、ダクネスの変態癖はもはや擁護不可能ってレベルですらないんだよ!?あれはもう『更生不可能』だよ!バカは死ねば治るかもしれないけど、ダクネスの変態癖は死んでも治らないと思うよ多分!バカは時と場合によってはムードメーカー的な扱いができるだろうけど、マゾは絶対無理だもん!ましてやそれを人跡未踏のレベルで極めてるダクネスなら尚更だよ!!」

「うわああああああああ!!!」

 

ダクネスが泣き叫びながら迫ってきたけど、ボクは「ファイター」で胸ぐらを掴み上げた。勿論テーブルに乗っからないとそんなことできなかったわけだけど。

 

「泣くほど嫌なら何でちょっとでも治す努力をしないのさ!!それとも何、何時かこんな日が来るって予測できなかったの!?だとしたら鈍すぎるにも程があるよ!!!少なくともキミのマゾ癖は見て見ぬフリをしていいレベルじゃないんだから!!!」

「おおおぉぉぉおおおう!!??」

 

ボクが胸ぐらを掴みながらガクガクゆすると、ダクネスはまんざらでもない表情になる。

遂に本性を現したなコイツ。

 

「こ、これは……悪くない」

「ほらねイグニスさん、今の聞いたでしょ!?これがララティーナの本性だよ!攻撃を当てられるようになる努力をろくにせず、マゾを極めることと筋肉バカになることしか頭にない、このパーティにおける『3匹の迷惑者』の筆頭、それがダスティネス・フォード・ララティーナなんだよ!!」

 

これでハッとなり、大急ぎで何事もなかったかのように振舞おうとしたダクネスだけど、勿論それは無意味だ。

イグニスさんは右手で頭を抱えて微かに唸ってるし、執事さんは冷や汗ダラダラだし。

と突然、イグニスさんが椅子から立ち上がると、おもむろにボクの方へ歩いてきた。そしてなんと、ボクに向かって土下座してきた!

 

「うちの娘が多大な迷惑をかけてしまって、申し訳ない」

「いや何もそこまでしなくても…まぁ、今まで勘当されなかったのが奇跡ってレベルのことではあるけどさ…」

 

まさかの土下座に面食らっちゃったけど、ボクは何とか持ち直そうとやり取りを続ける。

 

「ごもっともである」

「ち、父上!?」

「ハァ…これでもう分かったでしょダクネス?キミの変態癖はどう考えようがどう見ようが、ダスティネス家の恥以外の何物でもないんだよ!いや、もはやその域さえ超えてるかもしれない。にもかかわらず、どうしてキミのお父さんが今という今まで『勘当』と一言でも言わないのか分かる?それだけ人並み外れた心の広さを持ってるからだよ。そう、キミ自身はまともに生きてたつもりかもしれないけど、実際はお父さんの心の広さにあぐらをかいて好き放題してただけなのさ!」

 

ダクネスはショックのあまり開いた口がふさがらず、席に戻ったイグニスさんは冷や汗ダラダラで腕組みしながら何度もうなずく。

そうだよね…娘の変態癖の深刻さを目の当たりにしたんだから、流石のイグニスさんでもすぐに受け止めるのは無理だね。

それでも必死で全てを受け止めようとしているあたり、ダクネスは親に恵まれてるよ。

 

「もうこの際だからもっと言わせてもらうとダクネス、今のままいったら結婚なんて夢のまた夢だよ。ダスティネス家はキミの代でおしまいさ。何故かと言えば、キミに見合う結婚相手を見つけることが夢のまた夢だから!『更生不可能なマゾヒスト』の女に見合う結婚相手は『更生不可能なサディスト』の男だけだもん。ダクネスと同じく、人跡未踏のレベルでサド、つまり相手を痛めつけるのが大好きという変態癖を極めてる男なんて、まずいないと思った方が良いよ絶対!」

「……やはりダメか」

 

イグニスさんは腕組みしたまま肩と首を落とした。それだけダクネスの将来を案じてるってことかな。

そういえば、ゆんゆん達はどうしてるんだろう?やけに静かだけど…。

見れば3人とも、目を背けてだんまりを決め込んでる。

少なくともアクアの場合は、話についてけないからそうしてるだけだってことは嫌そうな顔を見れば分かる。

ゆんゆんとめぐみんは…多少ボクと同じようなことを考えてたから「反論の余地なし」という感じなのかな?

とここで、執事さんが割り込んできた。

 

「あ、あの~旦那様、そろそろ本題に入られた方が…」

「あそうそう、そういえば呼ばれた理由まだ聞いてなかった」

「う、うむ…本題とは他でもない、アルダープの一件についてだ」

「アルダープの?」

「まぁ率直に言えば、今回の件を『ダスティネス家が解決した』ことにしてはもらえないか、ということでな」

「そりゃまたどうして?」

 

イグニスさん曰く、今回の一件で領主や貴族全体の信頼が大きく揺らいだらしい。

土地を預かってるという立場上、信頼が揺らげば国が国として成り立たなくなる。

そんなわけで、信頼回復のために手柄を譲ってほしいんだって。

さて、どうしようかな…。

あれこれ考えてたら、今までだんまりを決め込んでたゆんゆんが口を開いた。

 

「カービィさん、ここは譲っておきましょうよ」

「いきなりどうしたの、ゆんゆん?」

「だって、国の情勢が不安定になったら、私達冒険者の稼業にだって多少なりとも悪影響が出るでしょうし…何より冒険者が解決したなんて知れ渡ったら、それを不快に思った貴族が暗殺を企てる可能性もありますし…」

「そっか~確かにね。因みにだけどさゆんゆん、暗殺者って討伐したら経験値稼げるかな?」

「いや無理だと思いますよ!?暗殺者を倒してレベルアップなんて聞いたことありませんから!」

「やっぱダメか…」

「そりゃそうですよ。だからカービィさん、ここはひとつ」

「いや譲ってもいいけどさ、丸ごと譲るのはよした方が良いと思うんだ」

「といいますと?」

「マクスウェルとの戦いの時、ダクネスとアルダープのやり取りは聞いたでしょ?」

「勿論、近くにいましたから」

「アレ一応、そういう状況になるようにボクが色々手を回したからできたことなんだ。ダクネスがアルダープの前に出たのだってボクが指示したわけだし。でしかも、その時にはすでにアクセルの冒険者達が集まってたからさ、一部始終見てた人がいるかもしれないじゃん。ましてやアクセルには、誰にも知られずに噂を広めるのが上手い人がいるみたいだから、その人がこのことを知ったらあっという間に街中に知れ渡っちゃうよ。現にボクだって、知らないうちに『魔王の世を忍ぶ仮の姿』とかいう根も葉もない噂を立てられちゃったし」

「ええ?そんな噂が立ってたんですか!?全然知りませんでした」

「信憑性がないから大して広まらなかったんじゃない?まとにかく、仮にそうでなくとも、最終的にボクがマクスウェルを倒したことはその場にいた皆が知ってることだからさ、そんなときにダスティネス家が全て解決、なんて言ってごらんよ。『ダスティネス家が手柄を横取りした』って噂があっという間に流れて、逆に状況が悪化するってことになりかねない」

「ふむ…確かにそうだな」

「だからさイグニスさん、この場合は最悪でも、共同戦線を張ったってことにしとかないとマズいと思うんだ」

「合理的ですね。それなら暗殺のリスクを回避し、同時に国の秩序も保てます。ましてやカービィはアイリス王女と親しい間柄ですから、尚更暗殺し辛いですね」

 

ゆんゆんに続いてめぐみんも口を開く。

ダクネスはまだショックから立ち直れてないみたいだけど、一応ボクの意見に賛成みたい。

……そうだ。どうせだからこの機会にひとつ…。

 

「それにさ、譲るからには少しくらい何か見返りが欲しいよね」

「み、見返りだと!?おいカービィ、一体何をする気だ!?」

「なるほど、食費稼ぎのために手柄の引き取り料をせしめようという魂胆ですか」

「いや別にお金じゃなくてもいいんだけど…」

「…ということはお金ではなく、直に食料を調達するつもりでしたか」

「調達ってめぐみん…まぁそうだな~…じゃあさイグニスさん、せめて今日の昼食くらい奢ってよ。この際だから普段食べれないようなものも食べてみたいし」

「普段食べれないようなもの…というと?」

「例えば、『テナガドラゴンの卵のオムレツ』とか…」

 

言った瞬間、貴族親子がひっくり返りそうになってたけど、そんなに豪勢な料理なのかな?

 

「か、カービィ!お前一体何処でそんな料理のことを知ったんだ!?」

「どこって、王都の冒険者ギルドにいた冒険者の会話の中で耳に挟んだんだよ。それとも何?そんなに高級なの?オムレツが」

「当然だ!!ドラゴンの卵を得るだけでも大変なんだぞ!?特にテナガドラゴンは滅多にその存在が確認されない希少種で、その卵で作ったオムレツともなれば、一皿で庶民の食費50年分の価値は下らん!」

「「「ご、50年分!!??」」」

「へ~、そんなに高級なんだ」

 

そう言えばあまり気にしてなかったけど、ドラゴンってこの世界の人達からすれば相当強いモンスターだったね。

エンシェントドラゴンほどではないにしても、希少種でしかも卵を持ってる雌のドラゴンを探さないといけないから…相当な労力だこりゃ。

でもテナガドラゴンか…もし会う機会があったら卵手に入れてみたいな。

 

「ねえダクネス、テナガドラゴンってどんな見た目か分かる?」

「いや、知ってるのは名前だけで……ってまさかお前!」

「別に探すつもりはないよ。ただ何かのはずみで会えたら卵取りチャレンジしてみようかと思っただけ。ニアミスするには勿体ないしさ」

「…食べ物がからむと本当に抜け目ないですねカービィは」

「いやそれよりも、貴方のその食への探求心は一体何処から湧いてくるのよ!?武器探しより遥かに真剣じゃない!」

「まぁ兎に角、卵の用意はないんでしょ?」

「そりゃあそうだろう…私だって食べた事はないんだから」

「それじゃ…『レインボートカゲ』は?」

「ぬ!?」

「何ですか、今の微妙な間を開けた質問は!?」

「ダクネスさん、レインボートカゲって?」

「全身が七色に輝く希少なトカゲのことだ。それよりカービィ、何故突然レインボートカゲが話題に挙がるんだ!?」

「いや~、何かキッチンの方からトカゲみたいな匂いがしてるもんだから、あるかな~と思って」

「トカゲの匂いなんて分かるんですか!?」

「何となく…ねえイグニスさん、レインボートカゲある?」

 

イグニスさんは暫く唸ってたけど、やがて観念したように溜息をつく。ま、ボクが最初に話題を振った際の反応から察してたことけど…やっぱりあるみたいだね。

 

「………ある」

「じゃあ今日の昼食は『レインボートカゲの丸焼き』だね♪」

「だね♪じゃない!!とんでもない大出費をさせておいて!お前は我が家を食い潰すつもりなのか!?」

「いくら言っても無駄ですよダクネス。食べ物がからんだカービィの右に出る者なんていないんですから…」

「何言ってるのさめぐみん、さっきも言ったじゃないか!ダクネスが今のままじゃ遅かれ早かれ、ダスティネス家は潰れるよ。ダクネスの変態癖に見合う男なんてまず居ないと思っていいくらいだもん」

「お、おお、そうだった。じ実はなカービィ殿、ララティーナには許婚がおってな」

「許婚?そんな人がいたの?」

「う、うむ」

 

どもりどもりでそう言うと、イグニスさんは執事さんに目で合図し、合図を受けた執事さんは部屋をあとにする。

と思いきやそう間もなく、執事さんは男の人を連れてきた。いかにも好青年って風貌をしてるけど…あの人がダクネスの許婚?

というかこの短時間で来るってことは…結構近くの部屋、もしくは扉の前で待機してたって感じかな?

その人はボク達に向けて2度、頭を下げた。しかも2度目は明らかにボク個人に向けてのものだ。それも申し訳なさそうに深々とね。

察するに後者が正解だったらしいや。

 

「紹介しよう、彼はアレクセイ・バーネス・バルター。ララティーナの許婚にしてアルダープの一人息子だ」

「ええ!?アルダープの!?」

 

そりゃそうだよ。だって全然似てないんだもん。

一体どうやったらこんな親子が生まれるんだろう。

 

「まぁ、そう言われてもしょうがないですよね…一応言っておくと、私とアルダープは本当の親子ではないんです。私は養子でして」

「養子?ってことは小さい頃に貰われたってこと?」

「はい」

 

なるほどね。それなら似てなくて当然だ。

 

「まぁいいや。それでバルターさん、今後はどうするつもりなの?」

「どうする…というと?」

「だから~、ララティーナとの付き合いについてだよ」

「ああ、そのことですか…。カービィさんのお話は影で聞いておりました。確かに私はララティーナさんに見合う男ではありません。それに義理とはいえ、父の不祥事の件もありますから、どちらにせよ私にダスティネス家を継ぐ資格はありません。ですから今後は、ダスティネス家の補佐としてやっていく所存です」

「うん、そうだね…その方が良いと思うよボクも。あそうだイグニスさん、バルターさんってどんな人なの?」

「ん?ああ、そうだな。まず彼は努力家でな、民のためにと日々勉学に努めている。また誰に対しても怒らず、家臣が失敗しても決して叱らずに失敗の原因を探ることを第一とする。勿論頭がいいだけじゃない。剣の腕も相当なものでな、歴史上彼ほどの若さで騎士になれた者はいないのだ」

「なるほどね、こりゃ絶対ダクネスと合わないよ……それに剣術の腕があるのか…それなら頼めそうだね」

「頼めそう?一体何をですか?」

「そりゃ勿論、ダクネスの剣術の稽古だよ!イグニスさんから聞いてないの?ダクネスの剣術の下手さ加減を」

「「ええ!?」」

「な…あ…てょっ…!!」

 

ダクネスが変な声をあげながらボクを止めようとしたけど、ボクは「ファイター」で逆にダクネスを止めた。

 

「…イグニスさんも知らなかったんだ」

「あ、ああ…どうせだから聞こう。どのくらい下手なんだ?娘の腕は」

「薪割りクエストすらまともにできないくらいだよ。お昼休憩を除いて8~10時間くらい剣を振り続けて、ようやく2、3本割れる程度さ」

 

聞いた途端、バルターさんもイグニスさんも言葉を失って棒立ち状態。

まぁ確かに、いきなりこんなこと言われてもすぐには信じられないだろうね。

でもボクの真剣な顔を見て、2人とも真実だと悟ったらしい。

 

「何ならクエストの依頼主に確認とってみる?」

「いえ、結構です…嘘をついてるようにはどうしても見えませんから…。それにしても、そこまで深刻となるとやはり上達にはそれなりの時間が必要ですね…」

「ああ…全くだ」

 

ここでダクネスがボクの手を掴んできたのに気が付き、ボクはダクネスの方を向いた。見ればダクネス、火が出てないのがおかしいくらいに顔を赤くしながら恥じらいと怒りが一緒くたになったような顔をしてる。

 

「カービィ…お前という奴は……どれだけ私を辱めれば気が済むんだ!!」

「自業自得じゃないか!デストロイヤーの件でキミが出掛ける時、ボクはこう言ったよね!?『剣の修業は怠けちゃダメだよ』って。どうせキミのことだから家では筋トレしかしてないんでしょ!」

「うぐっ……」

「筋肉はもういいよ!女かどうか疑わしいくらいあるんだから十分だよ!!でっかいワニの群れでさえ一切傷つけられない檻を壊す勢いでガシャガシャできるくらい筋肉あるんだからもういいよ!!人でなし扱いされても知らないよボクは!?そんなことする暇があるなら剣の腕を磨いてよ頼むから!!」

 

ダクネスが何か言い返そうとしたみたいだけど、その前にボクはダクネスのお腹の部分を叩いた。まるでプラスチックを叩いたかのような音がする。

 

「ホラ、もうこんなにカチカチじゃないか。これはもう女の筋肉量じゃないよ絶対に!!」

「か、カチカチって言うな!!」

「兎に角!本採用を望んでるなら早いとこ剣の腕をどうにかしてよ!硬くてパワーがあるってだけならボクのコピー能力でどうにかなるし、クルセイダーのスキルだって一通り習得したし!あ、それで思い出した。以前初心者殺し討伐した時にキミの冒険者カード見たけど、『両手剣』スキル取ってなかったよね?アレどういうこと?」

「そ、そんな事どうでもいいだろう!!お前から見て私がどう見えているか知らないが、私だって必死なんだ!必死に頑張ってる奴にそこまで辛辣なことを言うのかお前は!?」

「言うよ!少なくともダクネスに対しては全力で言うよ!何だったら向こうから助走つけて走って言うよ!!」

 

こんなやり取りをしてるうちに、いつの間にか部屋の外に出ていた執事さんが入ってきて、ギルドの職員がボクを呼んでる旨を伝えた。

とはいえ、微妙な時間帯なんだよね……。

昼食とるには早いけど、今行くと食べ損なう可能性あるだろうし…。

 

「それじゃあ、お昼済ませてから行こう」

「やはり食事優先ですか…」

「『腹が減っては戦はできぬ』って聞いたことないの、めぐみん?それに高級料理って、つくるのにもそれなりに時間がかかるもんでしょ」

「そりゃまぁ、そうでしょうけど」

「ねえイグニスさん、『レインボートカゲの丸焼き』ってどの位でつくれるの?」

「ん?あ、ああ…今からであれば恐らく、昼前ぐらいに完成するだろう」

「なら決まりだね。ギルド行くのはお昼食べた後で!」

 

それを聞くや否や、執事さんは一礼して部屋をあとにする。

調理の指示をしに行ったのか、それともボク達を呼びに来た人を待たせてたのかな……。

イグニスさんが護衛の1人に調理の指示をしたから、後者が正解みたいだ。

新しいテーブルクロスが用意され、さっきのレストランの従業員みたいな格好をした人達が食器の配置作業にかかる。

はいいんだけど、一体何だろう…皿の奥に置かれたたくさんの金属製小瓶は?

多分調味料なんだろうけど…それにしたって多すぎない?

匂いを嗅いでみると、左から順に塩・コショウ・酢・レモン似の果物のしぼり汁・にんにく風味のソース・ハチミツ・砂糖・ラー油とワサビを混ぜたような香辛料、ってことまでは分かったけど…一番右端のは何だろう?

ジャイアントトードみたいな匂いがするけど…。

ボクの席にそれらを配置した人がたまたま近くで作業してたので、ボクは質問してみた。

 

「すみません、この調味料って何ですか?」

「ああ、それはトードパウダー。ジャイアントトードの骨を粉状にしたものです。濃すぎる料理の味を薄めるのに便利なんですよ」

「へ~そうなんだ」

 

やっぱりジャイアントトードか…。

それにしても肉が食用なだけじゃなく、骨が調味料になるなんて…ジャイアントトードって思った以上に万能なんだな。

そして間もなく、銀の蓋がかぶさった大皿が人数分運ばれてきた。予想したより随分大きいな…。

蓋がとられると、そこにあったのは……恐らくこれが、いや間違いなくこれが「レインボートカゲの丸焼き」だ!

体色が虹色なのもそうだけど、その体は相当大きい。何せ頭と胴体だけで大皿の直径ギリギリなんだもん。

何よりこの…何とも言えない食欲をそそられる匂いが辺りに漂っているのがたまらない!

ゆんゆん達もこの匂いのせいか、早く食べたくてうずうずしてるみたい。

いざ食べてみると……やっぱり他の料理とは別次元だ。

ステーキみたいな食感だけど…かなり濃厚で、それでいてしつこいわけでもない。

しかも脂身がほとんどなくて、肉自体も相当引き締まってる。なんて食べやすいんだろう。

ふとダクネスの方を見れば、今まで辱められただの食い潰すつもりだのと言っていたのが嘘のように、料理のおいしさに浸っている。

……本気で自分の家のこと心配してるのかな?

イグニスさんやバルターさんは、それどころじゃないって感じで真顔なのに……。

まぁ兎に角、早いとこギルドの用事を済ませちゃおう。

ボクは皆が食べ終わったのを確認し、イグニスさんに一旦さよならを言ってから、ゆんゆん達とギルドに戻った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

受付のお姉さん曰く、キールのダンジョン…とかいう場所で、奇妙なモンスターが度々目撃されてるんだって。

で、そのモンスターっていうのが、自爆攻撃を仕掛けてくるらしい。

そういえば、この世界では自爆攻撃するモンスターって見かけてないな…。

まぁそんなわけで、アクセルじゃすっかり「伝説の戦士」で通ってるボクに調査依頼が来たってわけ。

一応お姉さんから地図を貰い、いざ向かってみると…第一印象はレンガ造りのトンネルみたいだ。

するとそこから、おかしな仮面をつけたモンスターが飛び出してきた。

とはいえ、自爆することを除けば基本的にザコレベル。ボクの「空気砲」でもなんとかなるんだから。

大量に出てきた場合は別だろうけど…。

そんな中、ダクネスが自ら自爆されに行ったのには流石に開いた口が塞がらなかった。

そして当たり前のように見た目ノーダメージ。

 

「相変わらずだねダクネス…これはもう女どころか人間かすら疑わしいね。筋肉も硬さも」

「やめろぉ!その話を何時までも引っ張るな!」

「じゃあ何で今自爆されに行ったの?『自分硬いですよ』ってアピールのためじゃないの?」

「そそ、そんなわけないだろ!」

「『ポンッ』ああそっか、単純に変態癖を満たしたかっただけか…」

「うぉああああああああああ!!!」

 

ダクネスはその場にしゃがみこんで項垂れた。

 

「…まいっか、今回に限ってはそれが利点として働きそうだし、これが最初で最後だと思ってしっかりやってね!」

「うぅ……分かった」

「さてと…」

 

ボクはおもむろに地図を広げ、口からペンを取り出して入り口から最深部まで直線を引く。

 

「あの~カービィさん、一体何をしてるんですか?」

「何って、最深部までの最短コースを調べただけだよ。えーと、この向きだな」

「ちょっと待ちなさいよカービィ!ダンジョン内は迷路なんだから、最短コースなんてあるわけないじゃない!」

「だから今から作るの!」

「今から?」

「あ…もしかしてカービィさん、そういうコピー能力があるんですか!?」

「そういうことだよ、ゆんゆん『ストーン・ニードル』!」

 

ボクの右腕にドリルが出現する。

 

「えっかっカービィさん、右腕のそれは一体?」

「でっかい槍の先っぽみたいね」

「いやどう見ても槍先じゃないでしょアクア……これはドリルって言って、固い地面とかを素早く掘るのに役立つんだ。こんな風にね」

『ギュゥイイイイイイイイン』

「「「「おおおお!!??」」」」

 

ボクが実演のためにその場でドリルを回してみせると、ゆんゆん達はそろって驚愕した。早くから気付いてたことだけど、この世界では魔法に頼るあまり、ボクの故郷では当たり前のように見かける便利グッズの多くが存在しない。

ひょっとしたらボクのお腹の中にあるものの多くがゆんゆん達…いや、この世界の人達にとってとてつもなく新鮮なものなのかもね。

 

「あ、でも待ってくださいカービィさん。確かにこれならダンジョンの壁を掘れるでしょうけど…これだと穴が小さくてカービィさん以外まともに通れないような気が…」

「あそっか…それなら体でぶち当たってみよう」

「体でって?」

「『フォーメーション・デストロイヤー』!」

 

ボクは蜘蛛脚を展開すると、少しだけ後ろに下がってから進行方向にある壁に向かって突進した。お試しということで、とりあえず壁1枚壊す程度にとどめたけど。

それでもぶつかった衝撃で、かなり大きな穴ができたから十分だね。

 

「オッケー。近くに敵はいないみたい」

「改めて見ると凄いですね。カービィが手に入れたというデストロイヤーのパワーは…というか少し力み過ぎでは?」

「仕方ないよめぐみん、まだその辺の力加減とかよく分からないんだから。ともかく道を作るには問題ないわけだしね、ダクネス!もしモンスターが後ろから来たら片付けといて!」

「ん…承知した」

「よ~し、いっくぞ~!!」

『ゴガガガガガガ……』

 

ボクは十分に後退してから一気に突撃した。壁は気持ちいいくらい簡単に壊れる。

例の仮面をつけたモンスターはいくらか見かけたけど、自爆する前に皆はね飛ばしちゃったからボク自身は一度も攻撃にさらされなかった。

ボクの後ろでも爆発音が聞こえる。ダクネスが上手いこと敵を引き付けてくれてるみたい。

少なくとも今回だけは、ダクネスがまともに役立ってるって実感できるね。

 

『ズドゴオオオォォォォォン!!』

 

ボクは難なく最後の壁をぶち抜いた。けど誰もいない。

モンスターたちの親玉って普通はダンジョンの最深部にかまえてると思ってたんだけど…読みが外れたか…。

と思ったその時

 

「う…む…は、早くどいてくれええぇぇぇ!!!」

「うわぁ!?」

 

ぶち抜いた壁に押し潰されてた誰かが壁を押し上げたために、ボクは転げ落ちた。

見ればそこには、例のモンスターと同じ仮面をつけたタキシード姿の人が。

しかもその左手には例のモンスターの作りかけ(?)が握られてる。

 

「まさか、キミがモンスターを作ってたの?」

「いかにも。我輩特製の人形は気に入ったかね?」

「ていうか外まで溢れてきてたからボクに調査依頼が来たんだよ」

「おやおや、となるとここにはもう他のモンスターは残ってないということか。ではもう用済みだな」

 

仮面の人が指を鳴らすと、握られてた人形は土に変わって崩れ落ちた。

 

「さて……ん…ムムッ」

 

仮面の人は急にボクのことを凝視した。一体どうしたんだろう。

 

「フ…フフ…ハ~ッハッハッハッハッハッ!そうか、お主がそうだったのか!『辻褄合わせのマクスウェル』を滅ぼした伝説の戦士よ!我が名はバニル!諸悪の根源にして元凶!魔王軍幹部にして、マクスウェルと同格たる地獄の公爵!この世の全てを見通す大悪魔である!」

 

いきなりボクのことを悟ったかと思えば続けて自己紹介。どうなってるの?

とはいえ、またしても魔王軍幹部か…。

 

「いや~、それにしても…入り口からここまで一直線に突っ込んでくるとは、お主も強引だな」

「だって、このダンジョンってもう調べつくされてるんでしょ?だったら別に迷路攻略する必要ないんじゃ?」

「ふむ、それもそうか…だがおかげで我輩の計画が狂ってしまった」

「計画?」

 

とここで、ようやくダクネスがやって来た。

 

「ハア、ハア…遅れてすまない」

「あ、やっと来た。ダクネス、例のモンスターはバニルが作ってたみたいだよ」

「バニルって…まさか、魔王軍幹部か!?」

 

ダクネスは息を整えると、すぐに剣を構えた。

 

「まぁそういきり立つでない。我輩はお主等と戦うつもりなど毛頭ないのだ。あの人形も、ここにいたモンスター達を追い出すためだけに用意したのだからな」

「何だってそんなことを?」

「それが、先ほど言った計画のためなのだよ。我輩はかねてより自分のダンジョンを持つのが夢でな、伝説の戦士たるお主の調査のためにこの地を訪れ、偶然にもこのダンジョンを見つけた。そこで我輩は、ここを自分にとって都合のいいもの、つまり自らの糧となる人間共の悪感情を手に入れるのに適したダンジョンへと作り変えようとしていたわけだ」

「ふ~ん…ボクはてっきりおびき出しのための作戦かと思ってたよ。ベルディアは占い師がどーたら言ってたし」

「おお、それなら我輩も聞いておる。だが我輩はそういうこととはほとんど無縁だ」

「どうして?」

「そも我輩はウィズと同じく、魔王の城を守る結界を維持するためだけに存在する、いわゆる『なんちゃって幹部』なのだ」

「ウィズ?」

「おやおや、忘れておるのかね?お主が眠れぬ夜に戦ったアンデッドの王であるぞ」

「……ええ!?あのウィズが!?」

「うむ。更に言えば、彼女にリッチーになる術を教えたのは他ならぬ我輩である」

「そうなんだ…」

「お、おいちょっと待てカービィ!さっきから何の話をしてるんだ!全然話が見えんぞ!」

 

ボクは溜息を1つつくと、ウィズのことをダクネスに話した。その出会いから、今どうしてるかまで…。

一通り聞き終わったダクネスは、何やら複雑な顔をしてる。

 

「なるほどな………だが、どうして今までそのことを言わなかったんだ?」

「どうしてって…アクアが暴走しかねないからに決まってるじゃん」

「そういうことだ、好きでもない男が剣術の師匠になることに危機感を覚えながらも一方でそれもまたよろしとして興奮している娘よ」

「ななな何をいきなり!そ、そ、そんなこと考えてるわけないだろう!!ふざけるな!!」

「ここまできてもまだ認めぬとは。全く、そんなことだからお主は未だ仮採用のままなのだぞ」

「な、何だと!?」

「お主に本採用の許可が下りんのは普段の変質者ぶりだけではない。誰が見ても明らかな変質者ぶりを頑なに認めようとせんねじ曲がった根性もだ。いやむしろ、そちらの方が問題なのかもしれん。おかげで伝説の戦士の心は崩壊の一途をたどっておるのだからな…」

「ほ、崩壊!?」

「ふむ…どうやら外にも崩壊要因があるらしいな…よし、ここはひとつ、我輩が灸を据えてやろうぞ!」

 

と言うや否や、バニルはダンジョンの入り口目掛けて走り出した。それも尋常じゃない速さで。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ『ホイールカービィ』!」

 

ボクは全速力でバニルを追う。

一旦追いつきかけて接触したけど、すぐにバニルは引き離しにかかる。

全力で走ってたわけじゃないのか。

勿論ボクも速度を上げたんだけど、スピードを出し過ぎたらしく、入り口の直前でバニルをはね飛ばしちゃった。

 

「うぉああああああああああ!!!」

 

バニルは走った勢いで転がりながら飛び出す。

ボクは出た直後にブレーキをかけたおかげで、何とかバニルの直前で止まれた。

 

「ふう…やっと追いついた」

「追いついたじゃない!お主が我輩をはね飛ばしたんだろうが!」

「だから今追いついたの」

「何ですかカービィ、その超絶カッコイイ仮面をつけた男は!」

「何って、魔王軍幹部のバニルだよ」

「「「魔王軍幹部!?」」」

 

ダクネスの到着を見計らって、バニルが口を開く。

 

「ふむ…これで伝説の戦士の心を狂わす『3匹の迷惑者』が揃ったわけだ」

「『セイクリッド・エクソシズム』!」

 

アクアが破魔魔法を放ったけど、バニルは余裕でかわす。

まぁ予想できたことだけど。

 

「何が『心を狂わす』よ!!むしろ狂わされてるのは私達の方なんだから!!」

「やれやれ、挨拶もなくいきなり攻撃したかと思えば、よくもそんなことを恥も外聞もなく言えたもんだ。『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』たるアクシズ教徒を率いる『女神の皮を被った邪神』めが」

「んな!?」

 

あのアクシズ教徒への例え…確かコックカワサキが使ってたやつだ。多分ボクの心を読んだ際に知ったんだな。

……そういえばアクアは例の一件でその辺の記憶が飛んじゃってるんだったよね。

そのせいかアクアは混乱してるみたい。

バニルは構わず続けた。

 

「よく聞きたまえ『3匹の迷惑者』どもよ!まずお主等のリーダーが何故、お主等に日頃から強く当たるのか知らんのだろう?それは、伝説の戦士の心に裏表が無いからである!」

「な、何だと!?」

「要するに、こやつの言うことは基本的に全て『心からの本音』である。だからこそ、お主等の歪んだ考えに口を出さずにはおれんわけだ。我輩は悪魔として末永く過ごしておるが、ここまで裏表の無い、純粋な心の持ち主は見たことがない。それも、これまでお主等が想像もできんような、凶悪且つ強力な敵を数多く葬っているにもかかわらずだ!そしてそんな心は『3匹の迷惑者』どもの歪み、捻じ曲がった心のせいで、今まさに色あせ、薄汚れ、崩壊し始めておる!我輩は悪魔故、悪感情は好きだが、こやつの中で保たれ続けた美しいなまでに純粋な心が汚されていくのは、それはそれで見るに耐えられん!我輩は今、お主等がまともになってほしいと願う伝説の戦士に心から同情しておるのだ!!」

 

悪魔から同情されてる…そんなに今のボクって危ない状況なのかな…。

自分ではそんな気がしないけど…でも確かに考えられない話じゃないかもね。

特にアクアとダクネスがさ……。

なんてことを考えてたら、めぐみんが話に割り込んできた。

 

「ちょっとカービィ、何をしんみりとしてるんですか!悪魔の話に乗せられてどうするんですか!!」

「我輩の話に間違いがないからこそしんみりしているのだぞ。毎晩毎晩バストアップ体操を欠かさぬ紅魔族よ」

「なっ!?」

 

めぐみんが赤面を両手で覆う。

ホントにそんなことしてるの?

真相を確かめる意味も兼ねて、ボクは「コピー」でバニルをスキャンする。

 

「おっといかん」

「『フォーメーション・バニル』!」

 

いざ発動してみると……単に仮面が付いたってだけじゃない。

何というかこう…今までのボクの体じゃないっていうか…まるで借り物みたいだ。試しに意識をバニルの方に向けてみると、その理由はすぐ分かった。バニルは仮面が本体で、あの体は単なる土くれらしい。

ということは、今のボクも同じような状態ってことか…。

そして次にめぐみんの方に意識を向けてみると……。

 

「…ホントにやってたんだ、バストアップ体操。あとさ、胸に手を当ててエクスプロージョン!…ってこれは何なの?」

「恐らく自己流の胸が大きくなるおまじないだろう」

「ああ…なるほどね」

 

めぐみんは顔を覆ったまま座り込んだ。

今思えばこの能力、凄く便利だよね。

そういえばバニル、全てを見通せるとか何とか言ってたな…ってことは、過去や未来も?

試しにめぐみんの過去を探ってみた。

すると………とんでもないことが!

 

「こ…これって!?」

「おっと、それに関しては言わんでよろし。いずれ言う時が来るからな」

 

直前でバニルが制止した。いずれ言う時が来るって一体…?

いや、もうよそう。ただでさえショックが大きいのにこれ以上深入りしたら…。

でもそう思うと、同じ紅魔族であるゆんゆんの方も怪しく思える。

念のために調べてみよう。

 

「……なるほどね」

「え?ど、どうしたんですかカービィさん!?」

「いや、ね…あの時ボクと会ってなかったら、その後の人生がその……何というかこう、一言でいえば悲惨だったってこと…」

「ええ!?そ、そんなに酷かったんですか!?具体的にどんな感じで??」

「ボクに聞かないでよ……」

 

悲惨過ぎて語る気になれない…けどよかった。少なくともゆんゆんは問題ない。

となると問題はダクネスとアクアか……。

 

「おいよせ!これ以上は見ない方が…」

 

……………………………………………………………………………………………………………………

 

「…手遅れだったか」

 

ボクは一気に全身の力が抜けて、その場に座り込んだ。

 

「え、ちょ、どうしたのよ急に…」

「見れば分かるだろう!貴様等の内に秘めたる邪悪なものを見てしまったのだ!そやつの純粋な心ではそれらを到底受け入れることができず、戦意喪失してしまったようだな…」

「ダニィ!?」

「な、何ですって!?アンタ何てことを!!」

「我輩に八つ当たりするのはお門違いだぞ、サボることしか頭にない邪神めが。少なくとも、そこの紅魔族を除く『2人の迷惑者』の内面を探ったのはそやつが自発的に行った事である。そもそも、仮にそのようなことがなくとも一緒に過ごしていれば、いずれそやつは今見たことを知る時が来る。あくまでその時期が早まっただけだ。いい加減に自覚したらどうだ!自分達が好き勝手してしまったが故に、そやつの純粋な心を歪ませ狂わせていたと!」

「カービィさん、しっかりしてください!カービィさんってば!!」

「無駄だ。今のそやつは混乱していて周りが見えておらん。しばらくはお前さんの声も届かんだろう」

「そ、そんな……!カービィさん、お願いだから返事してください!ねえ!!ねえってば!!」

「ふむ…あの取り乱しよう、やはり心から信頼する仲の者が失われつつあることに耐えられんと見えるな」

「何を他人事みたいに言ってるんですか!!カービィをこんなにしたのはあなたでしょうが!!」

「全く…ここまで言ってもまだ分からんのか。そやつがこうなったのは、あくまで貴様等の内に秘めたる悪しきものを見たためだ!それも遅かれ早かれ見るであろうことをな!つまり、我輩と対峙しようがしまいが、今のような結果に帰結することは決まっていたのだよ!貴様等『3匹の迷惑者』と共に行動した瞬間からな!!いやもっとだ!貴様等のその常軌を逸した言動が改まらん限り、貴様等の未来は『伝説の勇者の手により滅ぼされる』の一択しかないぞ!!」

「ほ…滅ぼされる、だと!?」

「何ですか何ですかその飛躍しすぎな内容は!?そんなことをいちいち信じろと!?」

「そうよ!悪魔の言うことなんかに耳を貸してたら耳が腐っちゃうわよ!!」

「黙らんか、邪神より良識のない『女神の皮を被った邪神』めが!よし、口で言って分からんなら体で分からせてやろうぞ!!」

 

バニルがダクネスに向けて仮面を投げ、ダクネスに憑依する。

 

「よし、これでいい。さあ、伝説の戦士の心を破壊せんとする迷惑者どもめ、お仕置きの時間であるぞ!」

「なっ!?アイツ、ダクネスに憑りつきましたよ!!」

「フンっ!これだから人の悪感情にしがみつかないと生きられない寄生虫は嫌いなのよ!」

「そうかそうか…だがその寄生虫に対抗する術があるのかね?知能が低い故に最初からアークウィザードにはなれないということすら理解しておらぬバカ邪神の貴様に」

『カチンっ』

「『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』!!」

「おっと、ハッハッハッそれで精一杯かね?なら今度はこちらから、トォッ!!」

「ヒィッ!ちょっ、何よ今の動き!?」

「明らかにダクネスの剣捌きじゃありません……っていうか」

「ねえカービィさん!私のこと見えてますか!?声聞こえてます!?」

「ゆんゆん!いつまでやってるんですか!!今はバニル討伐が先でしょう!!」

「……ハッ!」

「おお、そうであった。いくら迷惑者どもへの制裁措置といえど、全く相手しないというのは不公平であるな。それじゃここらで、迷惑者どもでは我輩を倒せんと確信しておる娘の手並みを拝見するとしようぞ!」

「ヒッ…」

「なっ!?ゆんゆん!今の本当なんですか!?私達じゃ絶対倒せないと思ってるんですか!?」

「わ、わわっ、カービィさん!は、早く逃げないと!カービィさんってば!!」

「ハッハッハッハッハ!!」

「ゆんゆん!そんなピンク玉ほっといて逃げるか避けるかしなさいよ!!」

「何言ってるんですか!カービィさんを見捨てるわけにはいきません!!」

『ガシッ』

「えいっ!!」

『バッ』

「っと、我輩としたことが、かわされてしまうとは」

「『インフェルノ』!」

「ヌハハハハハハ!!」

 

…………あれ………は………バニルの……仮面をつけた………ダクネス…………

魔王軍幹部………迷惑者………魔王軍幹部……迷惑者……魔王軍幹部…迷惑者…

魔王軍幹部‥迷惑者‥魔王軍幹部・迷惑者・魔王軍幹部!迷惑者!魔王軍幹部!!迷惑者!!

マオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノマオウグンカンブメイワクモノ………!!!

…………ト…………ウ…………バ…………ツ……

 

『バッ!スタッ』

「うわっ!?カ」

「『バニル式破壊光線』」

『ビシュウゥゥゥ』

「うおっ!?」

 

左手から放った光線はかわされ、岩壁に直撃した。

 

「ふむ…やはり我輩のスキルもコピーしておったか」

「カービィさん!よかった、気が付いたんですね!」

「………………………………………………………………………………………………………………」

「カ……カービィ……さん?」

「フッ、どうやら始まったらしい」

「え?」

「『バニル式殺人光線』」

 

両手から放った光線は2つの“的”へ。

 

「おぉっと!」

「きゃあ!!ちょっ、カービィ!どこ狙ってんのよ!!バニルはあっち」

『ズババババ』

「うひゃっ!?」

『ズババババ』

「わわっ!?な、何でこっちに飛ばすんですかね!?」

「ハッハッハッハッ!やはり始まったようだ。 (何が始まったと言うんだ!説明しろ!!) おや、抵抗できる余力があるのか。よかろう教えてやろう。先ほど我輩はこう言ったな、貴様等の未来は『伝説の勇者の手により滅ぼされる』の一択だと…それが今、実現しようとしておるのだよ」

「な、何ですって!?」

「ハハッ、貴様等の内面の邪悪さを受け止めきれず、あまりに混乱しすぎて攻撃対象の見境が付かなくなっておる!どうやら今のそやつは、貴様等『3匹の迷惑者』ごと我輩を始末するつもりらしい! (何だと!?それは確かなのか!?) ああ、勿論だ」

 

………トウバツ……トウバツ!…トウバツ!!

 

「『バニル式殺人光線…連射』」

「おおお!?何と!あの光線を連続で撃つとは!流石だ!流石は伝説の戦士だ!ヌハハハハハハ!! (笑い事じゃない!このままでは…これでは『自らを囮として華々しく散る』という私の計画が…) 」

「んなこと言ってる場合じゃないでしょ!!このままじゃ皆、きゃああぁぁ!!」

「アクア…!くっ、カービィ!どうせなら狙いを絞ってバニルをやってください!!何でわた、おおぅ!!」

 

めぐみんが登ってた天然の高台…そして立ち位置は切り立った崖になってる。

そこに光線が命中し、高台は一部が裂け、めぐみんはそこに取り残される。

 

「ちょ、ちょっと!何てことするんですか!これじゃ降りれないでしょ!」

 

間髪入れず、第2弾命中。

 

「おお!?お、お、うわっわわわ……!」

 

めぐみんは衝撃で落ちかけたが、枯れた低木につかまって何とかしのぐ。

 

「め、めぐみん!!…っ、カービィ!アンタいい加減にしなさいよ!こんなことして何が楽しいのよ!!」

『ズゴオオオォォォォォ』

「ひゃあ!?こ、今度は何!?」

「(カービィの奴、一体何をしようとしているんだ!?) ハハハハハ!大方、小腹が空いたんで腹ごしらえといったとこか。いくら混乱していようとも、食欲だけは変わらんようだな!」

「な、冗談でしょ!?何でこのタイミングで…いやああああああ!!」

 

アクアは確実に吸い寄せられてく。

 

「……くっ!もう手段を選んではいられません!我が杖よ!地獄の鉄槌を!『エクス」

 

爆裂魔法を放とうとしてる“的”目掛け、殺人光線をW発射。

 

「うひゃあああ!!」

 

めぐみんは火事場の馬鹿力(?)で崖のへりにある出っ張りへと飛び移って難を逃れた。

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃ……!」

 

そのままめぐみんを睨みつける。

 

「(くそ!カービィ、意地でもめぐみんを落とす気か!) ハッハッハッ!落とす落とさない以前に、伝説の戦士はあの娘のお望み通りに狙いを絞ったまでだ。まぁもっとも、絞ったのはあの娘自身に向けて、だがな」

 

再度両手をめぐみんに向け、

 

「ア…」

 

両手に魔力をチャージ

 

「アアア……!」

「(な、何だあの魔力は!さっきまでとは比べ物にならんぞ!) おお、どうやら今までの攻撃は本気じゃなかったらしい。これは見ものだぞ!さあ伝説の戦士よ、今こそ汝の、全力の殺人光線を我輩に見せてくれ!」

 

最大チャージ完了

 

「い…いやああああああ!!!」

 

めぐみんは目を覆った。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!!」

「ウグァッ」

 

背後からの斬撃は更にバニルの方へと向かう。

 

「おお!?」

 

その後、ゆんゆんは目に涙を浮かべながらゆっくりと射線前に割って入る。

めぐみんはこの隙に崖の上へよじ登った。

 

「…………」

「ちょっとゆんゆん!何をそんな所で棒立ちしてんの!気でも狂ったの!?」

 

ゆんゆんはアクアを睨みつけて黙らせ、向き直ると、深々と頭を下げる。

 

「カービィさん……本当にごめんなさい!!」

 

周りの皆は呆気にとられる。

 

「私は……仲間になってからずっと…『苦労者』同士ってことで、カービィさんのこと…何でも知ってるつもりになってた。けれど……本当はカービィさんのこと、何も分かっていなかった!」

 

ゆんゆんは続ける。

 

「現在の私達が組んでるパーティって…客観的に見たら、パーティとして成り立ってるのが不思議なくらいの最悪な構成ですよね…。まずは、喧嘩と爆裂魔法以外ロクにせず、爆裂魔法による周囲の迷惑を全く考えない自己中心的なめぐみん」

「んな!?」

「知能が最悪レベルで後方支援くらいしかできないにもかかわらず、しゃしゃり出て目立とうとせずにはいられない、世界規模の自分勝手さワガママさを誇るアクアさん」

「ん~~~~~~…!」

「そして、聖騎士としての腕を磨かず、周り気にせず変質者加減を極めることにしか労力を使わない……恐らくカービィさんにとって今一番の悩みの種、ダクネスさん」

「(う……ん……)」

「普通なら見捨てられてもおかしくないはずなのに、なぜ今までパーティとして組み込まれたままで、カービィさんが心からの本音で強く当たっていたのか……今になってやっとわかりました。それは、純粋すぎるカービィさんなりの優しさだったんだと!」

「「「!!??」」」

「カービィさんは他の誰よりも、パーティの皆のことを思い、そして考えてる。めぐみん限定で言えば、多分私の何十倍も何百倍もね!他の人なら絶対に仲間にしない人さえ置いてるのは…いつの日かまともになってほしいと思ってるからこそだったのよ!」

「………………………………………………………………………………………………………………」

「私は、他の誰よりも、カービィさんのそばで一緒に活動してたっていうのに……こんなことにも今まで気付けなくて本当にごめんなさい!でも、でもこれからは自分一人だけで背負わないでください!正式な仲間になった時、カービィさんが初めて私にかけた言葉『苦労者同士、これからもよろしくね』……今でも私の中で時々聞こえてきます。まるで昨日のことのように…。だから、私にも手伝わせてくださいよ!!同じ苦労者同士として!!」

 

………トウバツ………トウバツ………トウ………

 

「…………………………………………………………ユ…………………………………………………」

「…え?」

「…………………………ユン…………………………………………ユン………………………………」

 

………よく分からない。何をしてるのか………何を言われたのか……。

分からないけど……どうしてだろう……ボク今………何だかすごく……嬉しい気分。

ボクの目から涙が伝う。と同時に脱力感から能力が解けた。

 

「か、仮面が………消えた!?」

「これってつまり…正気に戻ったんですか!?」

「あぁ……あはっ……カービィさ~~ん!!」

 

ゆんゆんがボクに抱きついてきた。しかも泣きながら。

 

「よかった……本当によかった……!」

 

何が良かったの?……っていうかこの状況は何なの?

………何故か口がうまく動かない。

 

「あ、あの……ゆんゆん…ボ、ボクは………一体…?」

「うう……う……ううっ……」

「そ…それに何だか……すごく嫌なものを見たような…」

「いいんです!……嫌なものなら、思い出さなくて…!」

「………アクアが『自分は神故に自分の言ったことは全て正しい』とか考えてることも?」

「!?」

 

少しずつだけど、記憶が整理できてきた。勿論アクア以外の分も。

 

「……やっぱりあの時、言いそびれたのは間違いだったな…」

「え?」

「いや…いいんだ……こっちの話だから。それに他のも…それなりに気色悪かったし、特にダクネスの」

「わああああもういいですから!もうやめにしましょう!」

「そうは言ったってさゆんゆん、あれは流石に見過ごせないよ…あんな……まさかあんな…」

 

再びボクの目から涙があふれる。

そんなボクを見て、ゆんゆんはボクを強く抱きしめる。

 

「私には…カービィさんが何を見たのかは知りません。ましてやそれがどんな感じだったのかなんて…。でも今は後にしましょうよ。折角今まで、仲間としてやってきたんですから……ね?」

 

ボクはゆんゆんの手から離れると、涙をぬぐった。

 

「…仕方ないな…今回だけだよ」

「…ええ」

 

ボクとゆんゆんはバニルに向き直る。

そこには…最後の記憶と同じ、バニルの仮面をつけたダクネスが。

さっきコピーした時に、バニルが仮面を投げつけて相手の体を乗っ取ることができることは既に知ってる。

 

「フッ、ようやく立ち直ったか。そうこなくては!」

 

再び剣を構えようとしたみたいだけど、突然剣を手から離し、仁王立ちの状態に。

 

「こ、これは!? (カービィ、早くやるんだ!) 」

「???」

「ほう、まだ抵抗できるとはな…まぁ当然と言えば当然か。我輩が乗っ取った相手は、逆らえば激痛が走る。お主ほどの変態騎士ともなれば……おや?喜んでおらんのか? (そんなことはもはや関係ない!!) 」

 

仮面の下から涙が滴っている。

 

「(私は絶望した…自分自身にな!お前の目にどう映ってたかは知らないが、私は今まで…お前の役に立てる存在になりたかったんだ!だからベルディア襲来の時、真っ先に駆け付けたんだ。お前のアドバイスのもと、修行だってした。これで少しは役に立ててるだろうと、本気で思ってた。だが実際は……お前のことをただ傷つけているだけ。修行の成果だの何だの、そんなものは何の足しにもなっていないと分かった!……正直言って、私はもうこの先どうしていいのか分からない。このまま付いていっていいのか、そもそも生きていていいのか、それすらも分からん!…だが、分からんなりに1つの答えを見つけた。仮に死ぬとしても、最後くらいはクルセイダーとして恥じない死に様にしようとな!だからカービィ、今すぐ私を『クラッシュカービィ』となって吹き飛ばすんだ!毛1本残さずにな!それでコイツを闇の奥底に葬ってやる!!)」

「……ダクネス、言いたいことは大体わかったけど、そんなことしてもバニルは倒せないよ」

「(何!?)」

「バニルには『残機』とかいうスキルがあってさ、1度死んでもまた蘇ることができるんだ」

「 (ええ!?) ハハッ、流石だ、心が清く戻りつつある伝説の戦士よ!そんなことにまで気付くとは!」

「か、カービィ、今のマジなの!?」

「うん……それにあんなもの見せられたら逆に吹っ飛ばす気力なんて湧かないよ」

「そ、それじゃどうするんです?」

「とりあえず、バニルをダクネスの中から追い出さないとね」

「ほう、面白いことを言うな。だがどうするつもりだ?我輩の仮面は既にこの変態クルセイダーの顔におさまっておる。仮面の2重付けは流石にできんぞ?」

「ふ~ん、それならそれで問題ないよ。憑りつく方法はボクも知ってるから」

「何?」

「『ゴーストカービィ』!」

「!?カービィさんが幽霊になった!」

 

間髪入れず、ボクはダクネスの中に飛び込む。

…今までにもいくらかやったことあるんだけど、頭の中って薄暗いホールみたいなんだよね。

相手を乗っ取るなら、その薄暗い中でも一番暗い場所…ホールの中心に向かう。

すると思った通り、バニルはそこにいた。足元には…床から何かがバニルの両足に絡みついてる。

一体何だろう?ボクの場合にはあんなの出てこなかったけど…。

ボクに気付いたバニルは慌てふためく。

 

「ま、まさかここまで……!」

 

ボクの方に向こうとしたみたいだけど、足に絡まったやつのせいで身動きが取れないらしい。

それでもバニルはボクを迎え撃とうと身構える。

ボクはバニルに飛び掛かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それからはお互い純粋な殴り合いが続く。

ボクがバニルを殴るたびに、ダクネスの悲痛な叫びが聞こえる。

多分、外ではダクネスの“体”がもだえ苦しんでるんだろうな…。

で、バニルだけど、肉弾戦はそれほど得意じゃないみたい。

その場から動けないことを差し引いても、攻撃が単調すぎる。

初めから割と受け流しやすかったもん。

そんなわけで、最終的にはボクが一方的に打ち込んでる感じになっちゃった。

 

「うぐっ…!く、くそっ、これさえ、ウガッ、なければ……!」

 

なんて苦し紛れの言い訳してるけど、あの素早さ入れても多分有利不利はそんなに変わらないと思う。

いくら素早くても、軌道が読みやすければ受け流すのもかわすのも簡単だしね。

 

「バニル…!ダクネスの中から、出てけぇ――――――!!!!!」

 

ボクの渾身の飛び蹴り「スマッシュキック」がバニルの顔面に直撃。

今思えば、仮面ぶつけて乗っ取ったはずなのに、何でダクネスの中のバニルは仮面付けてるんだろう?

まぁ兎に角、その衝撃でバニルの両足を拘束していた何かがちぎれた。と同時にバニルの体が光り出し、消滅。

ボクが今まで通り、バニルと同じ立ち位置に来ると、ダクネスが見てるものが見えた。

それは、バニル。どうやら追い出しに成功したみたい。

でも、これで終わりじゃない。「アレ」を使うにはバニルをもっと遠くに移さないと!

バニルが立ち上がろうとしてるのを見て、ボクはダクネスに叫んだ。

 

「ダクネス!早くバニルを殴り飛ばして!」

「そ、その声はカービィ!殴り飛ばすって」

「いいから早く!!バニルの顔面に右ストレート!!」

「わ、分かった…!」

 

ダクネスは攻撃が不器用だけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない。

あの様子じゃ、ボクが出るまでにバニルは間違いなく態勢を整えるだろう。

だから一刻も早くバニルに反撃の隙を与えないようにしなきゃ!

今はダクネスを頼るしか……!

でもこの直後、信じられないことが起こった。

ダクネスが放ったストレートが、バニルの顔面にクリーンヒットした!

普段止まってるものにすらなかなか攻撃を当てられないのにどうして?

しかもダクネスはこれで気分良くなったのか、立て続けに3発バニルに打ち込む。

…もしかしてダクネス、攻撃が当たらないんじゃなくて「剣戟」が当たらないってだけなんじゃ?

最後のアッパーカットでバニルが吹っ飛んだのを見て、ボクはダクネスの中から飛び出した。

 

「おお!?カービィ!」

「皆下がってて!『ビッグバンカービィ』!!」

「な、何なのよその虹色に輝く姿は!?」

「おいカービィ、一体何をする気だ!?」

「危ないから!!」

 

ボクはダクネスを後ろに突き飛ばすと、能力を発動した。

 

『ズゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォ』

「な、な、何ですかあれは!?」

「キャベツの時の吸い込みと全然違います!」

「ちょっとどうなってんのよ!木とか岩が次々吸い込まれていくんだけど!?」

「ハ~ッハッハッハッハッハッ!そうか、これがある意味で伝説の戦士の究極の力……!こやつがかつて、能力発動の際に行っていた“吸い込み”を究極にまで高めた能力『ビッグバン』か!そうだ!これでようやく我輩の夢が叶うぞ!」

「何、夢だと!?」

「うむ!実は我輩はな、永遠とも呼べる時の中で過ごすうち、いつしか破滅願望が芽生えたのだ!そしてそれを叶えてくれるものが、今まさに我輩のそばにある!あらゆるものを、限りなく吸い込むことのできる『ビッグバン』なら可能だ!金と虹色に輝く伝説の戦士よ!今この場を借りて礼を言うぞ!お前さんのおかげで、我輩はようやく永い眠りにつくことができる!」

 

そう言って、バニルは自ら踏ん張ってた足の力を抜き、なすがままに。

 

「ではさらばだ諸君!!ワ~ッハッハッハッハッハッ………!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

それがバニルの最後の言葉だった。元に戻ってから、恐る恐る冒険者カードを見てみると、レベルは一気に15に跳ね上がってた。けどそれ以上に驚いたのは、バニルを9回討伐したことになってたということ。

要するに、バニルは残機を8つも持ってたってことだ。今思えば、バニルってボク以外の冒険者は相当手こずるだろう。それなのに9回討伐しないと本当の意味で倒せないなんて知ったら間違いなく絶望するだろうね。

……ってよく見りゃさっきの吸い込みでダンジョンがほぼ消滅しちゃってる!

なんてことを考えてたら、ダクネスに背後から声をかけてきた。

 

「…………すまない、カービィ」

 

振り向けば土下座してるし。

 

「まさかお前が…そんなにも私なんかのことを気にかけてくれていたとは夢にも思わなかった…。その上、もう少しでお前の心…いや、お前そのものを完全に壊してしまう所だった……!無論、とても償いきれんことだというのは分かってる。だが、できる限りお前の望むことは何でもするつもりだ!さあ、言ってみてくれ!」

「それは後で考えるとして、まずは……全く反省の色がないそこの女神の面汚しからだね」

「は、つ、だ、誰が面汚しよ誰が!!」

「『フォーメーション・バニル』!」

「ちょ、ちょっと…またその姿になって何を」

「『カースド・ダークネス』!」

「きゃあああああああ!?」

 

怪しげな赤い光線がアクアに突き刺さる。

 

「あ、あの…カービィさん?一体今のは?」

「ああ、今の?バニル専用のスキルでね、『相手に色んな呪いをかけられる』んだって」

「い、色んな呪い!?」

「ちょっと待ちなさいよ!何で私が呪いにかかるのよ!?私の羽衣はあらゆる状態異常を無効化するはずなのに!」

「それは単純に、カービィの力がお前を超えてしまっているからじゃないか?というか、その羽衣にそんな効果があったとは……」

「もういや!どんな呪いかけたのか知らないけど、これ以上面倒に巻き込まれるのはごめんよ!私帰らせてもらうから!!」

 

アクアが帰ろうとした瞬間、全身に稲妻が走る。

 

「うぎゃあああああああ!!!!」

「…どうやらうまくいってるみたい」

「うまくいってる?」

「うん、今アクアにかけたのは『サボれない呪い』と『無駄遣いできない呪い』だよ。今適当な口実つけてサボろうとしたからああなったのさ」

「本当に何でもアリなんだな……」

「ついでに…ホイっと!」

「あっ……!」

 

ボクが投げた仮面はアクアにクリーンヒット。

そのままアクアに憑りつき成功。

 

「へ~これがアクアの目線か。いつもより高~い♪」

「ていうかカービィ、何故アクアに憑りついたんですか?」

「何故って?水属性の強力な魔法持ってないかと思ってさ~。『ソード』の時に使える属性付きの斬撃飛ばしの中でも、水属性だけ何というか、他より見劣りするんだよね。それでアクアの中にヒントないかなって……あ、あったぞ!これだ!」

 

どの程度のものか分からないから、なるべく被害が少ない場所を選んでっと…。

 

「『セイクリッド・クリエイトウォーター』!」

 

それは…ボクの想像を絶するものだった。何せ洪水レベルの水を生み出すなんて……!

 

「…思った以上に凄い魔法だこりゃ。制御するのも一苦労だ」

「それよりアクア、なぜ今まで使ってこなかったんでしょう?」

「そんなの使いどころがないからに決まってるじゃん……あ、そうだ!もしかしたら」

 

ボクはアクアの中から飛び出すと、冒険者カードを確認。

アクアのスキルが追加されているのを確認してその場で習得。それから…

 

「『ウォーターカービィ』!」

 

この姿なら制御できるかも。

ボクは意識を集中する。

 

「『セイクリッド・ハイネス・クリエイトウォーター』!」

 

さっきよりも更に大量の水が生み出されたけど……自分でも目の前の光景が信じられない。

水はボクの意のままに、流れる向きや形を自由自在に変化させてる。

その場で渦を巻いたり、低い所から高い所へ流れたり、果ては“水人形劇(?)”的なものまでできちゃう。

まさかここまでうまくいくなんて……!

 

「ふざっけんじゃないわよおおおおおおおおおお!!!!」

 

突然アクアが泣き叫んだ。

 

「何なのよさっきから!!いきなり私に憑りついたかと思えば私だけの技を盗んで、おまけに私より上手に……うわあああああああああ!!!」

「上手にって……それは単に練習をサボってただけじゃないか」

「お黙りなさい!!女神に対する重ね重ねの侮辱、もう限界よ!!この罪も、この怒りも、何もかも洗い流してやる!!!」

「あ、洗い流すって……まさか!?」

「『セイクリッド・クリエイトウォーター』!」

「ば、ちょ、アクア!この向きでそんなの使ったら……!!」

 

と言ったところで後の祭り。

 

「うわ~マズいよこれ!」

「み、水が全部アクセルの方に流れていきます!」

「おいおい、このままじゃアクセルが流されてしまう!」

「『ウォーターカービィ』!」

 

今思えば、「エスパー」とかの方が良かった気がするけど…仕方ないよ。

ボクだって慌ててたんだから。

結局十分に制御できず、アクアが出した水はアクセルの防護壁に直撃。

街の中にもいくらか流れ込んだ。

そして間もなく、騒ぎを聞きつけたギルドの冒険者達が集まってくる。

受付のお姉さんも何故か一緒だ。

 

「か、カービィさん…一体何の騒ぎです!?」

「ああ、ボクの連れが魔法で洪水起こしちゃったんだよ」

「こ、洪水を!?」

「で、何とか止めようとしたんだけど、思ったより流れが速くて止めきれなかった…」

 

どうやら洪水を起こせるほどの水属性魔法がアクアだけのものってのは本当みたいだ。

冒険者達皆ドン引きしてるもん。

ふと壁の方を見てみると…。

 

「ありゃりゃ、防護壁チョット壊れてる…」

 

洪水が直撃した壁は、一部が半壊してる。

他にも所々にひび割れが。

 

「…お姉さん、これ…修理代どれくらいかかる?」

「そうですね…恐らく1、2億くらいは」

「そう…じゃ、バニルの討伐報酬から引いといて」

「わ、分かりました」

 

そんなやり取りをしてたら、ゆんゆん達が合流。

 

「…やっぱり間に合いませんでしたか」

「何言ってんのゆんゆん。これでも被害は少なくできた方だよ?」

「それでもけっこう被害甚大じゃないですか」

「まぁね。でも討伐報酬から修理代払うってことで話はついたから問題はないよ。お姉さん、修理って何時から始まるの?」

「恐らく今日中に始まるものと…あ、すでに土木作業員の皆さんが集まって来てますね」

「なるほど……アクア、ボ~っとしてないで修理手伝いなよ!」

「へ?わ、私が?」

「そうだよ!もとはと言えば壁壊したのキミなんだから、責任もって修理すること!」

「勝手に決めないで!何で私がそんな」

『バチバチバチバチバチバチチチチチ!!』

「ギャアアアアアア!!!」

「ほらサボろうとしない!」

「あ、あの…今のは?」

「今の?ああ、バニルの能力使って『サボれない呪い』をかけたってだけさ。あ、あと『無駄遣いできない呪い』も」

「バニルにそんな能力が…」

「そんなわけだから、アクア!サボっちゃダメだよ!ボクはその間、イグニスさんのとこに行くから」

「何?何故また父の所へ?」

「ダクネス、キミ言ったよね『望むことは何でもする』って。そのためさ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その後は一直線にダクネスん家に向かい、イグニスさんにも経緯を説明した。バルターさんもまだいたから好都合。

 

「それで、カービィ殿が望んでいることとは?」

「それはね…」

 

ボクはダクネスの剣を取り上げるとイグニスさんに差し出した。

 

「これを預かっててほしいの」

「「ええ!?」」

「お、おいカービィ!何を言ってるんだ!?」

「だってダクネス、剣より拳の方が攻撃当たるじゃん」

「「えええ!?」」

「あ!そう言えばあの時、バニルに4連続でパンチ当ててましたね。あれ普段だったらあり得ないですもん!」

「そう!だから剣術が上達するまで、ダクネスにはこの世界でただ一人の『肉弾クルセイダー』としてやっていってもらいたいってわけ」

「肉弾言うな!!」

「大丈夫だよ、キミの硬い筋肉があれば、多分剣はあってもなくても関係ないもん」

「やめろおおおおおおお!!!!!」

「というわけでイグニスさん、その剣の管理、お願いします!」

「うむ…」

「バルターさん、ダクネスの稽古任せていいかな?」

「勿論です!お任せください!」

 

これにて一件落着!

…といいたいとこだけど、ボクにはまだ行き残してるところがある。

そう、「ウィズ魔法店」だ…。

恐る恐る入店すると…

 

「あ!カービィさん!」

 

ウィズが明るく出迎える。

バニルとは自分の仲間を救う方法を教えてくれた恩人という関係上、少しくらいは落ち込んでるかと思ったけど、そうでもないみたい。

 

「聞きましたよ!バニルの討伐、成功したんですね!」

「うん…落ち込んだりとかしてなさそうでボクとしても何よりだよ」

「落ち込む?…ああ、そのことですか。別にそこまで親しい間柄じゃありませんよ。現にリッチーになる方法を教わって以来、一度も会ってませんでしたから」

「ええ!?そうなの?」

「はい」

「な~んだ。心配して損した」

「あはは…それで、一応確認なんですが…私が魔王軍幹部だということはもうご存知ですよね?」

「そりゃ勿論」

「…ですが、討伐はもう少し後にしていただけませんか?」

「え?」

「私にはまだやるべきことがあるんです。それが済んだら、討伐でも何でも受けますから、今すぐというのは勘弁してくださいお願いですから!」

「……別にそんな必死になる必要はないよ。本当の意味で敵対関係じゃないなら、ボクがキミと戦う理由なんてないんだし」

「…ありがとうございます」

 

そしてボクは、ウィズにさよならを言うとアクアのもとへと向かった。




次回予告
激戦の疲れを癒すべく、温泉街へ行くことになったカービィ一行。
だが道中でも街でもトラブル続き!
しかもここにも魔王軍の影が!
果たしてカービィは無事に休暇をとれるのか?
次回「目には目を!毒には毒を!」
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