【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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今後はどの程度ハチャメチャになるのでしょうか……私にも全く分かりません。
もうどうでもいいや。
目指せ「3匹の迷惑者」のSAN値-1無量大数…いや、-1不可説不可説転!!
ついでに今回はちょいエロ要素入りです(笑)
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第07話 目には目を!毒には毒を!

「……まさかここまで土木作業着が似合うなんて。アクア、やっぱりキミは女神から土木作業員に転職すべきだよ」

「何度も何度もうっさい!死んでもするもんですか!!」

 

アクアがアクセルの防護壁を壊してから1週間が過ぎた昼下り、壁は今も修理中。

費用は迷惑代込み、占めて1億5千万エリス。

それを差し引いたバニルの討伐報酬は6億5千万エリス。

魔王より強いんじゃないかと噂されてる大悪魔にしては少ない報酬だと思ってたけど、お姉さん曰く、バニルは長いこと存在が確認されなかったという理由で徐々に報酬が減額されて今の値に落ち着いたんだって。

まぁそれはともかく、「サボれない呪い」をかけたうえでアクアを修理要員として一時的に輩出したわけだけど、これがなかなか手際よく作業してるんだよね。

少しだけだけど、他の作業員よりアクアの方が早く作業を終えてるんだ。これでサボり癖さえなければな……。

呪いがかかってるの知ってるくせに、1日に5回はサボろうとする。

で、その度にお仕置きの電撃を食らって、ついでに親方及び現場監督の叱責も食らうという…今となってはお約束の展開がこの街の風物詩と化してるわけ。

 

「そういう割には他の作業員と結構仲良くしてるじゃん」

「好きでやってるんじゃないっての!こうでもしてないと、今度は私の心がどうにかなりそうなのよ!」

「それになんだかんだ言って作業はかどってるし、やっぱり土木作業員の方が良いって絶対」

「だああああああ!!どんだけしつこいのよアンタは!?誰が何と言おうと、私は女神アクア!それ以外絶対認めないんだから!!アンタがかけた呪いさえなけりゃ、こんなとこすぐにでも辞めて」

『バチバチバチバチバチバチチチチチ!!』

「アバババババババババ!!!」

「ったくもう……」

 

この騒ぎを聞きつけ、現場監督がとんできた。

まぁ割と大きな音だからね…。

 

「コラぁ、アクア!!お前またサボろうとしたな!!」

「あ、現場監督さんだ」

「おお、これはこれはカービィさん。幹部討伐、ご苦労様です!いや~それにしても、アクアの扱いには苦労しますな~。おかげでこっちは朝から晩まで怒ってるんだから」

「まぁそうなるよね……でも見た感じ、大体半分くらいってとこまで漕ぎ着けてるじゃん。あともう1週間の辛抱だよ」

「そうですねぇ…アクアが今まで通りやってくれればねぇ」

「っ……!わ、分かったわよ!やりゃいいんでしょやりゃ!!」

「もし出来なかったらどうしようかね……」

「ああ、それは問題ないよ。最近また例の湖の浄化クエストがギルドに来てるみたいだから」

「ヒィッ!」

「そういえば、そんなのありましたな」

「まそういうことで、ボクはダクネスの様子でも見に行くとするよ。アクア、あと1週間だよ~」

「カービィ!アンタ覚えてなさいよ~!!」

 

迷惑代追加したせいか、現場監督さんの腰がやたら低かったことは置いといて、次の行き先はダスティネス邸。

ダクネスは今も、実家で剣術の特訓中。

と言っても、イグニスさんとしては一人娘のあられもない姿を外に晒すわけにもいかないってことでグラウンドは使ってない。

基本的にはボクが貸し切ってるような状態だ。

ボクが能力を試すのに十分な広さだしね。

……そういえば、室内練習場的なのってどこにあるんだろう?

執事のハーゲンさんが案内してくれたのは、いかにも頑丈そうな扉のついた部屋。

微かに剣を交える音が聞こえてくる。

中に入ってみると、練習場というよりちょっとしたダンスホールに見えなくもない見た目の部屋の真ん中で、ダクネスは結構絞られた感じでへばってた。

…というより、状況的には単に空振りしまくって体力を浪費しただけなんだろうな。

だってバルターさん、特にいつもと変わらないもん。

でもって、そんな様子をイグニスさんは部屋の端で腕組みしながら静観してる。

 

「こんにちは~」

「あ、カービィさん」

「ダクネスの調子はどう?」

「え~とそうですね…構えや太刀筋は申し分ないです。ただその…扱い方が異常に下手なだけなんです」

「ううううう……!」

「ふ~ん、構えとかは大丈夫なんだ…。でもあの外しっぷりを見せられると~…やっぱしその辺も怪しく思えてきちゃうんだよね…」

「うむ、その気持ち分からんでもない。私も初めは同じ様なことを考えたものだ」

「父上……!!」

「ハァ、一体何時になるんだろう…ダスティネス家に恥じない剣の腕を身に付けるの…」

「あ、そうだ!剣の腕で思い出したんですが…」

「何を?」

「いや実は、かねてよりカービィさんの剣の腕も一度見てみたいと思ってまして。ララティーナさんはこれ以上続けられそうにありませんので、どうせですからひとつ、お手合わせして頂けないでしょうか?」

「手合わせを?」

 

その時、ボクもふと思い出したことがある。

そういえばまだ「アレ」を誰にも見せてなかったな…。

でもどうしよう。やっぱあんまし見せびらかすのは良くないような…。

 

「勿論手加減は無用ですよ。あくまでカービィさんの腕を見たいので」

 

…ま、1回くらいなら。

 

「…ホントに手加減しなくて良いんだね?」

「お、おいカービィ…何なんだその意味深な笑みは!?」

「ダクネス、『グランドスラム・コロッセオ』の後でミツルギさんと再戦したこと…聞いてる?」

「さ、再戦?……あ~、めぐみんから聞いたぞ」

「じゃあさ…その時ボクがミツルギさんに言ったことは?」

「い、言ったこと?」

「『ソード』に関してさ…」

「………ハッ、アレのことか?“『ソードカービィ』が職業的にはソードマンクラス”ってやつか!?」

「当たり~」

「…ということは…」

「そう、ボクはまだソードマスタークラスの能力をお披露目してないんだ。手加減しなくて良いってことだし、どうせだからバルターさんに初披露しようかと思ってさ」

「わ、私に…ですか?」

 

バルターさんの全身に緊張が走ったのは嫌でも分かる。

ボクは気合を入れ直してどっしり構えた。

 

「さてと……『マスターカービィ』!」

「うおっ!?」

「な、何だ?黄金に…輝く剣!?」

 

呆気に取られてるダスティネス親子を無視して、ボクは静かに目を閉じ、剣を素早く自分の目前に持っていき、静かに降ろして深呼吸すると、バルターさんを睨み据えた。

よほど気迫が出てるらしく、バルターさんの腰が僅かに引けてるのが分かる。

確認の意味も兼ねてイグニスさんに視線を移すと、イグニスさんが一瞬ビクついた。

…やっぱり自分じゃ気迫あるかどうかって分からないもんだね。

 

「イグニスさん、こういうのって何時始めればいいわけ?合図とかないの?」

「お、おお!そうであるな……では両者、位置につけ!」

 

バルターさんのを真似してボクも位置につく。

よく見たら床にそれらしき線が引かれてるんだよね。

 

「始め!!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

決着はすぐについた。というよりボクとしては、単に普通に走って近づき、ジャンプしてバルターさんの剣を左足で蹴り落としてから、腕を伝って接近し、そしてバルターさんの目前に剣を突き付けただけ。

でも、この後のイグニスさんの一言で、初めてこの一連の流れが普通じゃないことを知った。

 

「まさか……一瞬でこんな…こんなことがっ!」

 

そう。今の一連の流れは、ほんの一瞬のうちになされたことだった。自分ではそんな気しなかったけど、思えばあの時、なんとなくバルターさんが止まってるように見えたような…。

頭の整理がついたボクはバルターさんの腕から飛び降り、バルターさんの方は今ので緊張の糸が緩んだのか、一瞬腰が砕けそうになった。

そしてダクネスが震える声で、まるで絞り出すように言う。

 

「じょ……悪い冗談はよしてくれ…!『ソード』の時と動きが違い過ぎるじゃないか…!」

 

何だか知らないけどちょっとだけ気分を害されたので、ダクネスにも同じようなことをした。

相手からすれば一瞬、ボクからすれば普通に、駆け寄って後ろに回り込んで首に剣を突き立てる。

 

「これでもまだ冗談とか…言わないよね?」

「ヒッ……」

「どうしたのダクネス?いつものマゾ発言は無し?」

「う……あ……ううっ……」

「あ~カービィ殿、もうその辺にしといてやってはくれぬか?」

「そそ、そうですよカービィさん!その気迫のままそんなことされたら……ララティーナさんが八つ裂きにされそうで心配で…」

「八つ裂きぃ?…まぁ確かに、コッチが真剣にやっただけのことをダクネスに『悪い冗談』とか言われて少しカチンときたのは事実だけど、そんなことで八つ裂きにするほど小さい器じゃないよボクは…。強いて言うなら、ダクネスに求めるのはキミのマゾ言動が仲間のモチベーションをどれだけ駄々下がりにしてるかを自覚してほしいってことくらいかな?」

 

そう言ってボクがいつもの姿に戻ると、ダクネスは膝から一気に崩れ落ちた。その顔はまるで死にかけた病人のよう。

 

「あとはそうだな…防護壁の修理があと1週間で終わりそうだから、出来ればそれまでに剣術一人前ってなってほしいことぐらいだね」

「何と、あの壁が2週間で直るのかね!?」

「うん。意外にもアクアに土木作業の才能があったらしくて、予定より早めに修理が進んでるんだって。まぁ、1日に5回はサボろうとするのさえなきゃ更に早く終わるんだろうけど」

「…どうせサボろうとしてもお前の呪いで妨害できるだろう」

「そういうことだよダクネス。兎に角、1日でも早く上達しなよ。そしたら今まで通り、剣持たせてあげるから」

「ううう……!」

「ところでさ、ダクネスのお母さん見てないけど、何処にいるの?」

「……妻は、既にこの世を去っておるよ」

「え?そうだったの!?」

「うむ…良き妻であり、すぐれた攻撃耐性、状態異常耐性を持っていた…」

「なるほど、じゃあやっぱりあの人並外れた硬さは父親譲りだったのか」

「硬さ言うな…!」

「そんなことよりダクネス!今みたいな体たらくじゃ天国のお母さんも浮かばれないと思うよ?お母さんを安心させるためにも、早く一人前のクルセイダーになってあげてよ」

「母上の…ため?」

「そうだよ!もしボクがダクネスのお母さんの側だったら、絶対天国に行くのためらうと思うよ?いやむしろ、この世にとどまってダクネスを見守って、時にはアドバイスできるように死に物狂いでエリス様に頼み込むと思うよ!?」

「ふむ…確かに、妻ならララティーナの現状を知ったらそうしようとするかもな」

「そうですよララティーナさん!カービィさんの言うとおりです。お母さまを…いや、貴方の両親を安心させるためにも、一日も早く一人前になりましょう!私も全力で尽くしますから!」

「母上……ううっ………」

「おお、それで思い出した。カービィ殿、お主の両親はどんなことをしている方なんだね?」

「…知らないよ」

「知らない?」

「ボクは、生みの親が何処の誰なのか知らないんだ。勿論兄弟も親戚もいない、物心ついた時から一人さ」

「な、何だって!?だとしたらカービィ、どうやって今まで生きてこれたんだ?」

「そうだな~、コピー能力と…運が良かったからかな?」

 

ボクは冒険者カードの幸運度の欄を指さした。

 

「なるほど、これだけ運が良ければ身寄り頼りなしに1人で生きながらえてもおかしくはないか…」

「だよね。他のメンバー、ダクネスも含めて全員運悪いもん。特にアクアは歴史上最悪と言っていいくらいだよ。まさに“神ってる”不運さ加減だね」

「そ、そうか……」

「あそうだ、ついでだから聞くけどさ、ダクネスが生涯最初に見た光景って何?」

「生涯最初に?ん~……母上の顔…かな」

「ふ~ん」

「そういうカービィはどうなんだ?」

「ボクはね…」

 

そう言ってボクは、この部屋唯一の天窓を見上げる。

 

「ん?…どうしたんだ急に、天窓を見上げて…」

「ほう…カービィ殿が見たのは…青空か?」

「違うよ。空の更に向こうにあるもの」

「空の更に向こう…だと!?」

「そうだよ。あの青空の向こうに広がる、この世界よりずっと過酷で、危険で、そして神秘的な世界。それがボクの、生涯最初に見た光景さ」

「…お前の半生を割と本気で知りたくなってきた」

「ところでイグニスさん、話は変わるけど、マクスウェルの件はどうなったわけ?」

「お?ああ、それについては…」

 

イグニスさん曰く、ボクの要望通り「ダスティネス家との共同戦線を張った」てことにしたけども、貴族全体の信頼を取り戻すには十分じゃなかったらしい。

そこでアイリスの出番。

ダスティネス家とともに、アルダープが負うべき罪全てを調べ上げ、それらに関与した者にも相応の罰を下すことを約束したそうな。

まぁそんな感じで、どうにか暴動的なことは回避できたみたい。

するとそこへ、ゆんゆんが執事さんと一緒に入ってきた。

 

「ああ、カービィさん!随分探しましたよ!」

「どうしたのさ、そんなに慌てて?」

「実はその…めぐみんがちょっとやらかしまして~」

「は?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ダスティネス邸の正面玄関で待機してた警官の話によると、めぐみんが巨岩に向けて爆裂魔法を放った際、その周辺にいたモンスター達がジャイアントトードの平原になだれ込んでしまったらしい。

めぐみんったら…チョット目を離すとすぐこれだよ。正真正銘、生粋のトラブルメーカーだな。

もうこうなったら手段を選んでられない…!

警官の話通り、平原にはジャイアントトード以外にも大量のモンスターがひしめいてる。

 

「カービィさ~ん……」

 

弱弱しい声のする方を見ると、そこにいたのはジャイアントトードに食われてるめぐみん。

 

「めぐみん…何してんの?」

「見れば分かるでしょう。今死にそうなんです助けてください」

「そんなことより周りを見なよ!キミの爆裂魔法のせいで平原がモンスターだらけなんだよ!自分が蒔いた種ぐらい自分で刈りなって!」

「そんなこと言ったって爆裂魔法撃って魔力が空ですし、このままでは蛙の胃の中に収まるのも時間の問題かと…」

「しょうがないなぁ、じゃあボクが手を貸してあげるよ『アイスカービィ』!」

「え?ちょっと」

『ゴオォォォォォ』

「あっ…!」

 

めぐみんをジャイアントトードごと氷ブロックにしてから、平原のモンスター達の現状を確認。

 

「う~んと、あそこに密集してるな…」

 

警官がキョトンとするなか、ここでゆんゆんが何かを思い出したようだ。

 

「…ハッ!カービィさん、遂にアレを試すんですね!?」

「そういうことだよゆんゆん!それっ!『カチコチ体当たり』!」

 

モンスターの密集地点目掛けて氷ブロックを打ち出す。

密集してたモンスター達は勿論のこと、氷ブロックの進行ルートに侵入したモンスター達も、ボーリングのピンみたいに吹っ飛ばされてそのまま息絶える形となった。

ジャイアントトードと一緒にいるくらいだから、皆強さは大したことない。

しかもアクセルの門から平原までは下り坂だからスピードが出やすい。

どうせだからもっと遊ぼうっと!

というわけで、近寄ってきたジャイアントトードを氷ブロックに。

 

「ほら!おまわりさんもやってみない?」

「へ?わ、私が?」

「うん、ストレス解消にはちょうどいいと思うよ?今だと…あそこにモンスターが密集してるからさ、あそこ目掛けて押すなり蹴るなりしてみてよ!」

「わ、分かった!どりゃっ!」

 

乗り気じゃなさそうだった割りにはカッコつけようとしたのか、警官は飛び蹴りで氷ブロックを打ち出す。

これまたクリーンヒットし、いくらか間引かれる。

と今度は門番の人の方へジャイアントトードが迫ってたのでこれも凍らせる。

 

「おっしゃあ!これでも食らえモンスター共!」

 

この人もやりたかったらしい。

それにしたってブロック作って早々パンチで打ち出すって…。

思ったより血の気が多いのかな?それとも意外と根が幼稚とか…?

 

「え~~い!!」

 

そんな中、ゆんゆんがパンチで打ち出したのが微妙に衝撃的だった。

めぐみん同様、ゆんゆんも見た目によらずパワータイプだったらしい。

ひょっとして紅魔族ってみんな腕っぷし強いのかな?

それはともかく、警官も門番も仕事そっちのけで「カチコチ体当たり」を存分に堪能。

特に門番の人は、縦長の氷ブロック2つを倒し、それを横に連ねて同時に押し出し、範囲攻撃を実行。しかも「アイスウェーブ」とかいう如何にも必殺技っぽい技名まで付けて。

そんなこんなで気が付けば、うまいこと氷ブロックが残ったモンスター達を取り囲むような形で配置されてた。

 

「よし、それじゃ仕上げといこうか!」

 

ボクは氷ブロックをランダムに幾つか作ってモンスター達を囲める位置で止まるよう調整して打ち出し、完全に逃げ場をなくした。あとは勿論…

 

「『ギガトンハンマー』!」

 

巨大ハンマーの一撃で残党狩り完了。

平原はジャイアントトードだけとなった。

その後は討伐ないし解凍したジャイアントトードをギルドで引き取ってもらい、ゆんゆん並びに警官と門番の人を交えて、ちょっと早めの楽しい夕食会。

因みにめぐみんはというと、この日から防護壁が直るまでずっと風邪で寝込むことに。

実はこの時、こっそりめぐみんに「爆裂制限の呪い」をかけて、“ボクの許可無しに”爆裂魔法が使えないようにした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

防護壁が直った翌朝、2週間ぶりにパーティメンバー全員集合。

 

「だああああああ!メッチャ疲れたわ壁修理!」

「お疲れ~」

「何よその軽さは!こっちは2週間強制労働強いられたんだけど!?」

「その原因作ったのキミ自身じゃん。自分で蒔いた種を刈っただけじゃん。感謝の言葉述べられるだけマシだと思うよ?」

「んぐぐ……」

「私だって言いたいことあるんですよ!!とうとうやってくれましたねあなたは!最強の魔法使いたるこの私を、1度ならず2度までも氷漬けにして!!」

「本当に最強なら蛙に食べられたりしないよ?それに、あーでもしなきゃ爆裂魔法でモンスター呼び寄せた責任取れないじゃん」

「仕方ないでしょう!まさか近くにあれだけのモンスターが潜んでいたなんて、どうやって知れと言うんですかね!?」

「知る知らない以前に、大爆発が起これば周辺のモンスターが反応することぐらい分かるでしょ。考え足らずにもほどがあるよ……。ホントにめぐみんは生粋のトラブルメーカーだね」

「と、トラブル…メーカー…ふ…ふふふ、言ってくれるじゃないですか…!いいでしょう、売られた喧嘩は買いますよ!お望み通り、今ここでトラブルメーカーとして存分にやらせてもらおうじゃないですか!!」

「は?」

「思えばあの時、あなたを吹き飛ばし損ねましたんでね、改めてこの場を借りてやらせてもらおうではありませんか!!」

「な、ちょっと正気なのめぐみん!?」

「勿論正気ですとも!私はもう決めましたんでね!」

「おいやめろ!こんな所で爆裂魔法なんて使ったら」

「別にそんな慌てることないってダクネス」

「カービィもカービィで何を暢気にしているんだ!何故止めようとしない!?」

「大丈夫だってばそんな気にしなくても~、ミネストローネ冷めちゃうじゃん」

「あわわわわわわ、最悪のタイミングでカービィさんがまたおかしくなっちゃってるぅ!」

 

今更だけど、めぐみん達紅魔族は感情がある程度高ぶると、目が光るみたいだね。

ギルド及び周囲に戦々恐々な空気が漂い始めた頃、ボクはミネストローネを飲み終わり、ステーキと唐揚げに手をつける。

 

「さあ時は満ちた!今こそ悪魔のピンク玉を地獄の底へ叩き込む時!この魔法で砕け散るがいい!『エクスプロージョン』!!」

 

しかしながら何も起こらない。

周りの皆はキョトンとしてる。

 

「……あれ?どうしたんですか一体!?『エクスプロージョン』!!『エクスプロージョン』!!ま、魔法が出ません!」

「そりゃそうだよ。あの一件の後、ボクが何もしなかったとでも思ってたの?」

「…まさか、めぐみんにもバニルの呪いを!?」

「そうだよ。名付けるなら、『爆裂制限の呪い』かな?だから今のめぐみんは爆裂魔法を使えないの。“ボクの許可”無しにはね」

「な、なんですとおおおおぉぉぉぉぉ!!??」

「ちょっとカービィさん!それならそうと何故言ってくれなかったんですか!?」

「だってミネストローネは温かいうちに飲みたいんだもん。それに~実演すればより説得力出るでしょ?」

「だとしても心臓に悪い実演はやめて下さいよ!危うく私もおかしくなるところだったんですから!」

「ゴメンゴメン、ご馳走様っと」

「絶対謝る気ありませんよね!?」

「にゃ~」

 

突如聞こえた鳴き声の主は…ちょむすけ。めぐみんが飼ってる猫。

といっても翼を持ち空を飛べるから普通の猫じゃないことは誰にでも分かる。

多分悪魔か邪神か、もしくはそれに準じた存在なんだろう。

現にこのパーティで唯一、アクアに全く懐いてない。

それどころか近寄ることさえ嫌がる始末。

そのせいもあってか、ボクがちょむすけのことを知ったのはつい最近のことだ。

丸いものに興味を持つという習性からか、気が付くとボクのそばにいることも。

ボクの頭の上に乗ることもあるんだけど、爪を立ててくるから痛くてさ。

でも意外と知能が高いせいなのか、ボクが1度痛がって暴れて以降はよじ登りから飛び乗りにチェンジし、肉球で踏ん張るようになった。

 

「あぁもう!毎度何かにつけて呪い呪い呪い、もうたくさんよ!それでなくてもクタクタなんだから!温泉にでもつかって気晴らししないとやってられないわ!」

「温泉…というと、アルカンレティアに行きたいってことか?」

「それ以外に何があるって言うのよダクネス!?」

「あ~、噂に聞くアクシズ教徒の本拠地か」

「そうよ!」

「んじゃ、今日の日暮れにでも出発するか」

「何?何故日暮れなんだ?」

「ちょっと待った!言っとくけど私『ドラグーン』には乗らないからね!!」

「そっちじゃないよアクア。今日は大地をかっ飛ばしたい気分なのボクは」

「大地を?」

「うん。だからモンスターが少なそうな日暮れを選んだわけ」

「だがカービィ、大地をかっ飛ばすと言ってもどうするんだ?馬でも借りるのか?」

「冗談キツイよダクネス。馬って割と遅いじゃん」

「いや十分速いと思うぞ!?」

「それより速いのって一体何ですか??」

「勿論これさ!カモン!『ロボボアーマー』!」

 

実はボク達が今住んでる館にはガレージとして使える外付け倉庫があり、ロボボアーマーは普段そこに置いてる。

 

「なあカービィ、呼んだのはいいが、これってそんなに速かったか?」

「そうですよカービィ。これで速く移動する時って『テレポート』使ってたじゃないですか」

「めぐみんはさておき、ダクネスは1度見てるはずだよ?ほら、バニルを追いかけた時にボクが使ったコピー能力と言えば?」

「んん?え~と…バニルを追いかけた時…そういえば何か使っていたな……確かぁ~…ハ…ハヒフ…ホ、ホ!?そ、そうだ思い出した!確か『ホイール』とか言ってたな。馬車の車輪みたいな形状になって」

「ええ!?そんなコピー能力が!?」

「ああ、あのスピードは尋常じゃなかった。ということはロボボアーマーにも」

「そういうこと!スペース的にちょっと窮屈かもだけど、全員乗っても問題ないと思うよ」

「よし、決まりね!早速準備しましょ!」

 

ドラグーンより危なくないと思ったのか、その後のアクアは終始独走状態。

周りの意見に耳も貸さず、ひたすら準備に勤しむ。

特にゆんゆんとめぐみんは王都のレストランにおける一件でアクシズ教徒の恐ろしさを知ったせいもあってか、終始愚痴まじりで荷造りする。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

とはいえ、デストロイヤー戦で使用した際に乗るスペースが狭いことが既に露呈してたこともあってか、皆荷物は必要最小限にとどめてたのでそれほど時間はかからなかった。

ボクのお腹の中に収めれば大荷物でも問題ないんだけど、食料つまみ食いするんじゃないかってことで皆揃って却下だって。

早めの夕食を済ませ、ボクはゴーグルを着けてロボボアーマーに乗り込む。

 

「『ホイールモード』!」

 

ロボボアーマーは真っ赤なボディの3輪自動車へとその姿を変えた。

周囲に轟かすエンジン音は、この世界の人達からすれば聞きなれぬ音だろう。

 

「おお、こりゃまたゴツい見た目になったもんだ!」

「それにしても何なんですかこのうるさい音は!?」

「そりゃ勿論、大地を高速で駆ける為の動力源の音さ!ほら、早く荷物積んで」

 

運転席の後ろに「バインド」で荷物を固定し、全員乗り込んだのを確認すると、ロボボアーマーをアクセルの門まで移動させる。当然だけど他の通行人にぶつからないようゆっくりとね。

因みにちょむすけはというと、めぐみんの懐に収まって丸くなってる。

 

「ダクネス、アルカンレティアへの道はこれで合ってるの?」

「ああ、アルカンレティア行きの馬車はいつもこの道を使うんだ。確か1本道だったから迷うことはないと思う」

「よ~し!それじゃあ早速、全速前進だ~い!!」

『ブロロロロロオオオオォォォォン!!!』

「「「「おわあああああああ!!!!」」」」

 

派手なエンジン音を響かせながら、ロボボアーマーは風の如く地を駆ける。

馬車の車輪は木製だから、凸凹道の衝撃がそのまま席に伝わるけど、自動車のタイヤはゴム製。

ある程度衝撃を吸収してくれるからさほど揺れない。

特にロボボアーマーのは耐久性と柔軟性に長けてるから更に揺れにくい。

モンスターはおろか人っ子一人いない一本道を存分に堪能できるぞ。

 

「流石はロボボアーマーと言ったところか。こんなに速く走っているというのに、ほとんど揺れもしないとは…まるでまっ平らな道を進んでいるかのようだ」

「でしょ?だから馬より速く走っても何の問題もないのさ!」

「ていうか何故揺れないんですか?私ずっと気になってるんですけど」

「別にいいじゃんそんなこと。それよりどうよこの景色。ここにはボク達以外誰もいない。だから派手にかっ飛ばしても誰にも怒られない。何というかこう、自由だ~!って感じしない?」

「た、確かに…言われてみたらそうかもですね」

「ねえカービィ、どうでもいいけどそろそろ暗くなるわよ!大丈夫なんでしょうね!?」

「大丈夫だよアクア、ライト点ければいいんだから」

 

ロボボアーマーは目の部分がライトとして機能するからね。

 

「おお、明るい!まるで前だけ昼に戻ったみたいです!」

「どう?これで十分でしょ」

「そ、そうね…」

 

何故アクアが複雑な顔をしてるかはさておき、暫く夜の道を走っていると、前方に微かな明かりが見えた。

スピード差的にすぐ追いつくだろう。

 

「んん?何だろうアレ」

「あれは…カービィ、一旦スピードを落とした方が良い!あれは馬車の列だ!」

「なるほど、馬車に吊り下げたランプの光か。てかスピード落とさなくていいじゃん。脇を追い抜けばいいんだから」

「お、おい!」

 

ボクはロボボアーマーを左脇に寄せて馬車を次々追い抜く。

 

『ウィヒヒヒヒヒィィィィン!!』

「ほら見ろカービィ!馬達が驚いてるじゃないか!いいから止まれ、早く!!」

「しょうがないな~」

『ブギギギギギィィィ…!!!』

 

ボクがロボボアーマーを急停止させると、ちょうど馬車列の先頭辺りで止まれた。

馬も人も興奮してるみたい。

 

「な、何だ何だコイツは!?」

「何この変なの!?」

「変なのって何だよ!失礼だな!」

 

ボクはロボボアーマーから降り、ゴーグルを外しながらそう言った。

 

「っ!あ、あんたまさか…カービィ!?」

「な、何だって!あの『伝説の戦士』と呼ばれたあの…!?」

「だとしたらこれは一体!?」

「ボクの戦闘メカ、ロボボアーマーだよ」

「いやちょっと待った!それって確か2本足で歩くはずじゃ!?」

「状況に応じて形を変えたりできるの!今日はこれでアルカンレティアまでひとっ走りしようと思ってね」

「だとしても、何だってこんな夜中に?」

「夜中だから良いんじゃないか。周りを見てよ。ここにはボクらしかいないんだ。『千里眼』使ったって虫1匹見つけられな……んん!?」

 

何だろう?

遠くに土煙があがってる。

 

「ねえ!向こうに土煙が見えるよ!何か…鳥みたいなモンスターがこっちに向かってきてる。それも大量に!」

「何!?」

 

アーチャーらしき人が馬車の上に登り、「千里眼」でボクが指さした方を見る。

 

「あれは…走り鷲鷹だ!それも全部オスだぞ!」

「走り鷲鷹?」

「ああ、走り鷲鷹のオスは発情期になると、硬い物に突進して激突直前に回避する、という変わった求愛行動をとるんだ。普通はその辺の木や岩に対して行うもんだが…」

「ああ、なるほどね。ボクんとこにはドラゴンより硬いともっぱら噂のクルセイダーがいるから…」

 

3人が一斉にダクネスの方を見た。

 

「え!?カービィさん仲間がいたの!?」

「ソロじゃなかったのか!?」

「へ?いや、結構前からパーティ組んでるんだけど…」

 

何だってソロ活動してるなんて噂が流れてるんだろう…王都とかマクスウェルの一件とかでちょいちょい活躍してると思うんだけど…。

ゆんゆん達、相当ショックだったらしい。

 

「そうだったんですか……」

「うん。乗ってるの全員ボクの仲間だから。パートナー1人に、囮役3人ね」

「「「囮役!?」」」

「取り敢えず皆降りてよ!ダクネスは走り鷲鷹の注意を引いて、ゆんゆんは馬車に近いのから順に攻撃して!」

「ん…承知した」

「了解です!で、カービィさんは?」

「ボクはどうせだから、これでひと暴れしてくる。っとその前に、めぐみん!最初の一発、デカいの頼むよ!」

「え…?いいんですか!?爆裂魔法を使って!?」

「“許可する”。今すぐにね!」

「フ…フッフッフ、いざ承知!!」

 

意気揚々と前に出ためぐみんの爆裂魔法により、馬車から一番近かった走り鷲鷹達が消し飛んだ。

それを確認したボクは、エンジンをふかして群れに突っ込む。

 

「『フルターボアクセル』!」

 

いきなり急加速したせいなのか、走り鷲鷹は回避できずにはね飛ばされたり、先端の棘で串刺しになったりと、群れの最後尾を抜けるまでずっとそんな調子。

ボクが急停止&ドリフトで方向転換すると、一部の走り鷲鷹がボクの方に突進してくる。

ふと馬車の方に視線を移すと、ジャンプする走り鷲鷹が目にとまった。激突直前の回避ってジャンプなんだ。

となると同じ要領でかわされるかもね。

それならそれで手はある!

ボクは再度急発進。

 

「『フルターボジャンプ』!」

 

ロボボアーマーのジャンプがたまたま走り鷲鷹のそれとほぼ同じ高さだったために、2羽ほど空中で串刺しになったうえ、着地点にいたのを踏み潰す結果に。

ついでに周りを取り囲まれた。

それならばっと。

 

「『アクセルバースト』!」

 

炎を身にまとってその場で高速回転!

6羽ほど焼き鳥になったタイミングで次の手を。

 

「『スプリングホッパー』!」

 

車体下部のバネを使えばより高く、そして色んな方向にジャンプできるんだよね。

あとはこれを繰り返して踏み潰しまくるだけ!

見ればゆんゆんを筆頭に馬車の警備をしていた冒険者達が攻撃に参加してる。

ダクネスはダクネスで、「デコイ」を駆使してうまいこと引き付けてる。

群れの数が減ってくると、流石の走り鷲鷹もボクのことを避けるようになり、ボクはエンジンをふかしてクラクションを鳴らしながら走り鷲鷹達を追い回す感じに。

…よく考えたらこれって暴走族ってやつと大して変わらない?

まいっか、追ってるのは敵モンスターだし。

そんなこんなで走り鷲鷹の群れは数羽を残して逃げ去った。

こんなことをしてるうちにすっかり遅くなったので、今夜はこの場で野営することに。

ボクらは焚火を囲んで他の冒険者達と話し込む。

 

「いや~それにしても、カービィさんの戦いは素晴らしかったです!あんなゴツイ乗り物を自分の手足のように扱って」

「そうそう!走り鷲鷹をブッ飛ばすだけじゃ飽き足らず、まさかジャンプして押し潰しにかかるなんて」

「ああ、あれね。場合によっては2段ジャンプもできるよ」

「マジか!?」

「そこにいる紅魔族の子の爆裂魔法も凄まじかったんだけど、あれで囮役なんですか?」

「うん。爆裂魔法はボクも使えるし」

「えええ!?」

「あ、そういえば王都に魔王軍が攻めてきた時、大爆発起こして魔王軍半滅させたって聞いたことある!」

「半滅ってどんな威力だよ…」

「ボクが元から持ってる能力に、爆発系の全魔法を同時に使った威力さ」

「もはやどこから突っ込めばいいのやら…」

「それにボクとしては、ゆんゆんの連続攻撃も見ごたえあったと思うけどな~」

「そりゃあ勿論!ここ2週間、レベルアップのために討伐依頼請けまくってたんですから!」

「暫く見ないと思ったら討伐やってたのか」

 

こんなやり取りをするなか、アクアはこっそりヤケ飲みしてた。活躍の場がなかったもんね。

で、それが一段落つくと皆寝出した。切り替え速いな。

ボクは暫く星空を眺め、周りを見渡してそろそろ寝ようと思いその場にゴロンとなった。

けど、直後に異様な気配を感じて周囲を見渡す。

いつの間にか馬車の周りを黒い影が取り囲んでるぞ。

多分だけどアンデッドの類だな。何せボクのパーティには…ね。

 

「『エンジェルカービィ』!」

 

ボクがいつものようにアクアを殴ろうとすると、いつものようにアクアが飛び起きる。

 

「か、カービィ!何なのよもう!」

「何って、キミのファンが周りにいっぱいいるじゃん」

「ファン!?…って只のアンデッドじゃないのアイツら!!」

「だってアクア、蛙とアンデッドにモテすぎて困ってるんでしょ?」

「モテすぎって何よ!バカにしてんの!?」

「してないよ。だってそうじゃなきゃベルディアのアンデッドナイトが一糸乱れずキミを追い回すわけないじゃないか」

「そんな昔のことをいちいち蒸し返さないで!!」

「とにかく早く準備して!キミのファンを追い返さなきゃ!」

「だからファンじゃないって!!」

 

この騒ぎでゆんゆん達も起き出した。

 

「「『セイクリッド・ハイネス・ターンアンデッド』!!」」

 

他の人達が驚く間もなく、取り囲んでたアンデッド達は消滅。

全てが片付いたので、ボクは「スリープ」で眠りについた。

翌朝、冒険者達は朝食をとりながら昨夜の戦いのことを延々と話しててキリがない。

ま、走り鷲鷹の時活躍できなかったアクアが注目の的になって、当の本人の機嫌も直ったし、これはこれでよしとしよう。

それに活躍の報酬として、アルカンレティアで一番の高級旅館の宿泊券を貰ったし。

一応こっそり確認したところ、アクシズ教徒が運営してるわけじゃないらしいのでひと安心。

長話もほどほどに、ボク達はロボボアーマーに乗り込んで再出発。

合流するまでに結構な距離進んでたらしく、到着までそんなに時間はかからなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

『ブギギギギギィィィ…!!!』

 

ボクのドリフトを加えた急停止に、アルカンレティアの門番役の人は腰砕けになる。

 

「来たわ来たわ、アルカンレティア!私の心のふるさとよ!!」

 

興奮した邪神が踊り狂ってるのはさておき、ボクはロボボアーマーを元の姿に戻してコンパネを操作する。

 

「カービィさん、何をしてるんです?」

「自動追尾モードに切り替えてるの」

「ジドウ…ツイビ??」

「要するに、ボクが降りても勝手に付いてきてくれるようにしてるわけ」

「そんなことまでできるんですか!?」

 

設定が済んだので、試しに降りて少し歩いてみる。

すると、ロボボアーマーが少し距離を置いて付いてくる。上手くいったみたい。

噂じゃこの街では、アクシズ教徒達がひっきりなしに訪問者に入信を勧めてくると聞いてるけど……皆むしろボクのことを避けてるみたい。

ヒソヒソ話に耳を傾けてみると、「王都」というワードが聞き取れた。魔王軍襲撃の件かな?それともコックカワサキの件?

いずれにしても、うっとおしい勧誘が無いなら願ったり叶ったり。

ゆんゆんとめぐみんもアクシズ教徒が近寄らないと見て大層安心した様子。

まぁレストランでの一件があるからね。

ダクネスが前もって用意してくれた地図を頼りに、迷うことなく温泉宿に到着。

するとアクアが、街を一通り見てくると言ってどっか行っちゃった。

入り口に立つと、女将さんと思しき女の人が興奮した様子でお出迎え。

 

「いらっしゃいませカービィ様!お会いできて光栄です!」

「どうも。あの~早速で悪いんだけど、これは何処に置いとくべきかな?」

 

ボクはロボボアーマーを指さす。

 

「ああ!これが例の『ロボボアーマー』ですね!?ふむ…それではこちらの中庭などいかがでしょうか。ここはよくうちの者達が物置代わりに使っておりまして、屋根もございますのでどうぞお使いください」

「ありがとね」

 

ボクは宿泊券を女将さんに渡すと、ロボボアーマーを移動させてから「バインド」を解き、荷物を運び込んだ。

アクアの分はダクネスがまとめて運ぶ。

用意された部屋はこの宿一番の大部屋。

それも宴会ができるんじゃないかってくらいの広さを誇る。

ボク達は荷物を置くと、お宿に引きこもりを決め込んだ。

ダクネスは読書、ゆんゆんとめぐみんはアクシズ教徒怖さに。

ボクは運転疲れしたので、昼前に起こしてとゆんゆんに言ってひと眠り。

その傍らでちょむすけも寝転んでた。

目覚めた時、枕元にアクアが涙目で正座してたのでビックリ。

聞けば、道中でアクシズ教徒運営の宿の温泉をお湯に浄化しちゃったそうな。

で、自分が女神であることを話したら鼻で笑われた、と。

 

「そりゃそうだよ。だって女神らしさが欠片もないんだもん」

「うわあああああああああん!!!」

 

昼食ができたと女将さんが呼びに来るまで、アクアは泣き続けた。

昼食も部屋に見合うレベルの豪華さ。

これで1週間も宿泊できるんだから素晴らしいの一言に尽きる。

しかも追加料金払って量を増やしてもらったので言うことなし。

まさかこんなオプションがあるなんてね…。

そんな昼食に舌鼓を打ってたら、突然アクアが真剣な顔で話し出す。

 

「私、重大なことに気付いたわ!」

「何に?」

「街にある温泉の質が下がり始めてるのよ。それも突然のことで、専門家にも原因が分からないと来てるわ!それで私、確信したの!これは間違いなく、魔王軍の工作だわ!!」

「可能性としてはアリだね…何せ住人が『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』なわけだし、魔王軍が危険視してもおかしくない」

 

アクアを除く3人は確かにといった感じで頷く。

んでもってアクアは記憶を飛ばしたあの日のワードのせいで混乱気味。

 

「そんじゃ取り敢えず、明日にでも調査しに行こう。ここの温泉は大丈夫みたいだから、今日はゆっくりしよ」

 

3人もボクの意見に賛成。

というわけで、皆して部屋で好きにやってから夕食前に入浴タイム。

アクアは観光時に既に入った+女将さんに迷惑をかけないようにということで部屋で荷物番。

だけどここで…。

 

「あ…ボク凄いことに気付いちゃった」

「何ですか?」

「いや実はさ…今まで気にしてなかったけど、ボク物心ついた時からずっと1人でさ…だからその、自分が男なのか女なのかもよく分かってないんだよね…」

「え゛!?それって結構な問題じゃ!?」

「だよね~」

 

すると突然、ゆんゆんが予想外のことを口にした。

 

「それじゃあ…私と混浴風呂…行きますか?」

「へ?」

「「「ええええええ!!??」」」

 

ゆんゆんが以前からボクのことを気に入ってるのは知ってたけど……一体どういう風の吹き回しだろう?

 

「い、いきなり何を言うんですかゆんゆん!!」

「仕方ないでしょ?男か女か分からないのに男と決めつけて男湯入るのは、それはそれで問題ありだし、だからといって混浴に1人ってのも可哀そうじゃない。だから、私がお供しようってこと!」

「いいんですか!?カービィと2人きりなんて…」

「大丈夫!私はめぐみんと違って、カービィさんに迷惑かけないもん」

 

そう言われためぐみんは返す言葉が見つからず仕舞い。

 

「それじゃ行きましょうか」

「あ、うん…」

 

ボクとしては温泉に入れれば何でもいいので、ゆんゆんに言われるまま混浴温泉の脱衣所へ。

 

「…前から知ってはいましたけど、カービィさんってホントに何も着てないんですね」

「逆にボクのこの体型に合う服なんてあるかな…」

「多分ありませんね…なんかごめんなさい」

 

そんなやり取りをしつつ、タオル1枚のゆんゆんと合流。

 

「あ、そうだ!」

「ん?どうしたの?」

「前から気になってたんですけど、カービィさんは回復技って持ってないんですか?勿論アークプリーストの回復技じゃなくて、カービィさんが元から持ってる能力の話ですけど」

「回復技か…一応あるよ」

「ホントですか!?」

「うん。でもな~、あれは最近ちょっと使うの控えようと思ってて…」

「え?何故ですか?」

「ちょっとね……世間体的に問題アリっていうか…」

「それならここでちょっとやってみてくださいよ。今ここには私達しかいませんし」

 

使うかどうするか迷ったけど、ゆんゆんが尋常じゃないほど食いついてきてるので…1回だけならいいかな。

いつの間にか抱き上げられてるし…。

 

「しょうがないな~。1回だけだよ?」

「ええ!」

『チュウ~…』

「んんっ!?」

 

ボクはゆんゆんにマウストゥマウスした。

ゆんゆんにとってもここまでされるとは思わなかったんだろうな。

 

「ん~~~っ…!っふうっふうっ…んん~~~っ……!」

 

ゆんゆんは顔を真っ赤にし、終始震えながらボクを引き剥がそうとする。

でもこれある程度回復するまで離れられないんだよね。

お互いの口が凄く伸びてる。ゆんゆんもゆんゆんで腕力あるな…。

で、回復し終わってようやくドッキング解除。

 

「ぷはぁっ!!ハアッ…ハアッ…!か…カービィさん…ちょっ…」

「どう?わかった?これがボクの回復技『応援キッス』だよ。欠点はある程度回復するまで離れられないことかな…」

「ハアッ…ハアッ…ほ、本当に回復したんですかね…。逆にゴッソリ体力持っていかれた気がするんですけど…!カービィさん、ちょっと確認させてください。今エナジードレイン的なもの使いませんでしたよね?」

「使ってないよ、もう!」

「それならいいんです。…まさかこんな形でファーストキス奪われるなんて…」

「ファーストキスだったんだ…何かゴメンね色々と…」

「いえ、いいんです。もとはといえば私が軽率に見せてくれなんて言わなければこんなことにならなかったんですから、自業自得です!さ、早いとこ温泉に入りましょう!」

「大丈夫なの?震えてるけど…必要なら歩くよ」

「いえ、大丈夫ですから!」

 

ゆんゆんは大丈夫とか言ってるけど、本当かな?

よく見ると脚周りが特に震えてる。しかも汗だくになってるし…。

とはいえ、その後は普通に温泉につかれたので一安心。

いや、ボクの場合つかるというより浮いてるだけなんだよね。

 

「やっぱり温泉は良いよね~」

「そうですねぇ」

「それにしても…何だって魔王軍幹部が温泉を狙ったりするんだろ?」

「それはこの街が温泉街だからですよ。もっと言えば、この街は温泉を中心に色んなことが成り立ってますから」

「なるほど…つまり温泉がダメになれば温泉宿は困るけど、それ以上にアクシズ教徒が困るってこと?」

「…まぁ、そんな感じですかね……ってまさかカービィさん、とんでもないこと考えてませんよね?」

「ん?それってまさか、“温泉ダメにしてアクシズ教徒を破滅させよう”的なこと?それなら初めからやる気ないよ。流石にボクはそこまでのことできる自信ない」

「で、ですよね。よかった……それよりカービィさん、何時まで私の胸に座ってるつもりですか!?」

「へ?あ、ホントだ」

 

どいた後でゆんゆんの顔を見たら、まだ顔が赤い。

 

「どうしたの?もうのぼせた?」

「違いますよ…単にさっきの余韻がまだ残ってるだけです」

「全く…それっ」

 

ボクは足をバタつかせてゆんゆんに温泉水をかける。

 

「きゃあ、何するんですか!」

「いつまでも気にしたってしょうがないってば!ホラ笑ってごらんよ、嫌なこと全部忘れられるからさ!」

「それとこれとどんな関係があるんですかもう!お返しです、えいえいっ!」

「あはははははは」

 

何だかんだでゆんゆんとの付き合いが一番楽しい。

だってそんなに気苦労しないんだもん。

 

「おい、あんまり騒ぎすぎると他の客に迷惑だぞ」

「そう?キミのマゾ癖に比べたら大したことないと思うけど?だってダクネスのそれは迷惑の域をとっくに超えてるじゃない。女将さんに良くしてもらってんだからここでは勘弁してよね~」

「お、お前という奴は…!」

「そうそう、めぐみんもここで喧嘩はしないでよね」

「向こうから売られない限りしませんよそんなこと!」

「どうしましょうカービィさん、もしめぐみんが宿泊中に喧嘩したら…」

「そうだな~、それじゃ丸坊主にでもする?」

「ま、丸坊主…ですか!?」

「じょ、冗談じゃありませんよ!そんなことしたら出歩けないじゃないですか」

「いや帽子被ってるんだから歩けるでしょ?」

「無理なものは無理です!!」

「それが嫌ならおとなしくしててよね!」

「分かりましたよ全く!!」

 

何だかんだで温泉は楽しめたし、その後の夕食も豪勢で文句ない。

メインは大鍋いっぱいの…肉じゃが似の鍋料理。

しかも入ってるのは、普通の人なら一口で食べられないであろう巨大なサイコロ肉がゴロゴロ。

加えて鍋も、十数人分の量が入るくらいの巨大なもの。

それを係の人が器用にすくって取り皿に入れてくれる。

追加料金次第でこれだけのことをしてくれるという事実に、ゆんゆん達は開いた口が塞がらない様子。

ホントの意味で満腹とはいかなかったけどすごく美味しかったし、この世界に来て一番のびのびできた素晴らしい1日となったわけ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そして翌朝、アクアが言ってた質の下がった温泉の調査をば。

ついでにアクアが、数少ない神として(?)活躍できる機会となった。

まさか温泉に手を突っ込むだけで詳細が分かるなんて…。

 

「それじゃ早速、浄化を始めるわよ」

「ちょっと待ってよアクア!キミが浄化したら温泉がお湯になっちゃうじゃん!まずはボクにやらせてよ!」

「え?カービィが!?」

「うん。勿論アークプリーストの浄化じゃなくてコピー能力でね『クリーンカービィ』!」

「え…ほ、箒!?」

「やっぱ皆知らなかったか…掃除の際、時折使ってたんだけどな」

「そうだったのか…それで、本当に綺麗にできるのか?」

「それを今から試すの!ボクの場合は浄化というより“汚いものを消す”感じだから、それっ!」

 

ボクが箒で一掃きすると、それまで濁ってた温泉水が透明に。

アクアが再度手を突っ込む。

 

「どう?」

「……信じられない!元通りの温泉よ!」

「やった!大成功!アクア、早く手を引っ込めて!お湯にならないうちに!!」

「分かってるわよ!いちいちうるさいわね」

「それにしても大したもんだ。浄化魔法より汎用性高いな、その『クリーン』とかいう能力は」

「そうだね。よし!これで幾らか綺麗にしようっと」

「幾らか?全部じゃないんですか?」

「そうだよめぐみん。犯人をおびき出すためにね」

「犯人をおびき出す?」

「そう。聞くところではさ、アルカンレティアの温泉って全部同じ源泉から来てるわけだから、一部だけ汚染されてるってのはおかしいよ。これはつまり、誰かが意図的に汚したってこと!全部綺麗にしちゃったら、今度は源泉を狙ってくる可能性が高いじゃない。それだと万一失敗した時のダメージがデカいから、何ヶ所か綺麗にして再度汚しに来るよう仕向けるって作戦」

「なるほど…それは良いがカービィ、その作戦を実行する場合、綺麗にした温泉を誰かが見張る必要があるぞ。宿の主人に頼むにしても、いちいちこちらに伝えてもらうんじゃ要領が悪い。場合によっては逃げられるかもしれん」

「おっとそうだった!その前にアレを試さないとね!」

「アレ?」

 

ボクは口からガラケー型アイテム「プペポフォン」を取り出し、発信ボタンを押す。

すると…いつも通り(?)赤・黄・緑のボクの分身達が出現。

 

「「「ハ~イ!」」」

「えちょっ、か、カービィさんが4人に増えた!?」

「い、一体何が起きたと言うんだ!?説明してくれカービィ!!」

「あ、そうだね。それじゃあ順を追って説明するけど、シャドーのことは覚えてる?」

「シャドーというと…マクスウェル討伐の際にお前が連れてきた黒いアイツか?」

「そう。シャドーが誕生するきっかけになった事件の時、更に不思議なことが起こってさ、いつの間にか4人に分裂しちゃってたんだよ」

「いつの間にか分裂って……それじゃ未だに原因が分からないってことですか??」

「その通り…分かってるのはこのアイテムで自由に呼び出せることと、呼び出した分身達は呼び出す直前までのボクの性格や能力、そして記憶を受け継いでるってこと位かな」

「記憶までもか……本当に完全なる分身だな」

「だから良いんじゃないか」

「そうだよ~」

「中身が違ったら統率取れないじゃん!」

「一度に色々喋るな!」

「それでカービィさん、作戦は?」

「あとは簡単さ、4ヶ所綺麗にしてからボクらがそれぞれの温泉を見張る。その間ゆんゆん達には犯人につながる情報がないか調べてもらいたいんだ」

「ああ、そうですね!犯人の特徴とかが分からないと見張ってる意味ありませんものね、了解です!」

「さてと、あとは何処にするかな…」

 

ボクはアルカンレティアの地図を広げる。

汚染された温泉は大通り沿いの狭い範囲に集中してる。多分街を1周する感じで汚しまわってるんだろう。

となれば犯人は意外と近くにいるかも。

とはいえどっち方面に回るのかがこれだと分からないので、取り敢えず範囲内の両サイドにある温泉を綺麗にしてから見張るってことにしよう。

因みにボク達が今いる温泉もその範囲の端っこだ。全くの偶然だけど…。

それはともかく、早速行動開始だ!

分身達はそれぞれの場所へ飛び、温泉を綺麗にする。

分身達もプペポフォンを持ってるから、何か異常があれば直ぐに急行できる。

ゆんゆん達は、温泉宿周辺で怪しい奴を見た人がいないか聞き込み調査。

そしてボクは、最初に綺麗にしたこの温泉を見張る。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

…2日くらい続けたんだけど、未だ怪しい奴は引っかからない。

とはいえ、新たに汚された温泉が確認されてない今の状況からして、相手は汚したはずの温泉が突然綺麗になったことを警戒して身を隠してるんだろう。

で、聞き込み調査の収穫はというと、浅黒い肌で茶色い短髪の男が汚された温泉に足を運んでたらしい。

念のため、該当する男が温泉に現れたら直ぐにそこから離れるよう街の人とかに伝えなきゃ。

……ボクは初めてかもしれないね、ダクネスの貴族階級がまともに役立ってるのを見たのは。

ダクネスは警官達にその旨を伝え、そして警官達は温泉利用客を中心に、何時でも避難できるよう準備することを呼びかけた。

これで取り敢えず人的被害のリスクは大分減らせたはず。

そして更に2日後の夕方、それも夜になりかけの頃になって、ボクが見張ってる温泉に例の怪しい男が入ってきた。

まぁ、宿泊客を主人が誘導してる声がかすかに聞こえたので特に驚くこともない。

プペポフォンで仲間に連絡とったから、もうすぐ合流できるはず。

それにボクは「ストーン」でお飾り(?)の石に化けてるからバレることはないだろう。

そういえば、魔王軍幹部にはハンスとかいう名の奴がいるらしい…。

何でもデッドリーポイズンスライムの変種で、触れた瞬間即死するほどの猛毒を持ってるって話だ。

それに今まで気にしてなかったけど、スライムは元々物理・魔法全般に高い耐性を持ってるし、上級のスライムともなればハンス同様、人間に化けたりできるんだとか。

んでそのハンスはというと、ボクが綺麗にした温泉を、頬をポリポリ掻きながら不思議そうに見てる。

そして辺りをキョロキョロ見渡し、誰もいないと思ったのか温泉に手を突っ込んで汚し始めた。

ボクは能力を「ファイター」に変更し、ハンスに気付かれないようコッソリ背後に回り込む。

ハンスはよっぽど温泉に気が行ってるのか、ボクが左隣に来ても気付かない。

しかもブツブツ独り言をつぶやいてる始末。

 

「チッ、何だって綺麗に戻っちまってんだよ…汚し方が足りなかったのか?」

「へ~え、こうやって汚してたのか」

「!!??」

 

ようやくハンスがボクの存在に気付き、同時にボクはガロンスローでハンスを宿の外に放り出す。

温泉に手を突っ込んでから汚し始めるまでのタイムラグからして、人間に化けてる時は触っても問題ないというボクの予想は大当たり。

直後にボクも温泉から飛び出し、ハンスが地面に激突するのと同時に着地。

 

「……ってーなこのぉ!…貴様が温泉を綺麗にしてやがったのか!!」

「うん。こうしとけばまた汚し直しに来るだろうと思ってさ、今までずっと岩に化けてたんだ」

「しかも計画的かよ!?クソッまさか伝説の戦士を相手する羽目になるとは…!いや、それより一つ聞かせてもらおうじゃねぇか!何だってオメーはこの街の奴らを守ろうとするんだよ?ああん?」

「違うよ。ボクが守りたいのは街の人じゃなくて温泉だよ。強いて他に守りたいものがあるとすればアクシズ教徒以外の」

「ほう…だが温泉守ったら、結果的にアクシズ教徒も守ることになるんじゃねぇか?」

「その辺は問題ないよ。アクアの悪行は既に後輩のエリス様に報告済みだし、近いうちに追加の報告もするつもり。だから『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』がずっとこのままってことは、少なくともあり得ないね」

「そ、そうか……まぁいい、どうせ魔王様からテメーに会ったら殺せって命令が出てるからよぉ、どのみち今ここで死んでもらわなきゃな!!」

「『アイスカービィ』!」

 

ハンスが左腕を触手状に変化させ、そこから毒の塊と思しきものを複数飛ばすのとほぼ同時に、合流したイエローが塊を凍らせる。

直後に騒ぎを聞きつけたのか、ゆんゆん達がやってきた。

ボクはイエローが凍らし損ねた塊を吸い込む。

 

「おいやめろカービィ!何をしているんだ!!」

 

ダクネスの声が聞こえたけど、ボクは気にせず飲み込んだ。

ハンスの能力をコピーできないかと思ったけど、似たようなの持ってるからな…。

ボクの予想はこれまた大当たり。

 

「『ポイズンカービィ』!」

「ええ!?まさか貴方、ハンスの能力まで!?」

「違うよアクア。これはボクが元々持ってるコピー能力さ。どうやら似た能力だったせいで、ハンスのスライム状になる能力とかはコピーできなかったみたい」

「何だと!?オメーも毒が使えるのかよ!?…っ、だがこれで終わったと思うな!どっちの毒が上か教えてやるぜ!!」

 

そう叫んだハンスが本性を現した。巨大な紫色のスライム…人間の時と体積が違いすぎるような…。

まいっか、とにかくコイツを倒さなきゃ。

 

「『毒の沼地』!」

 

ボクはハンスの足元…というか真下に毒沼を出現させた。勿論、ハンスがスッポリ収まるくらい大きなのをね!

 

「グギャアアアアアァァァァ!!!」

 

ハンスの叫び声と同時に、毒沼に触れてるハンスの体がジュウジュウ音を立てて泡立ってる。

しかも白煙まであがってるし。

 

「な、何だ!?何が起きている!?」

「まさか…カービィさんの毒がハンスの体を溶かしてるんじゃ…」

「はい!?てことは何ですか!?カービィの毒はハンスより強力ってことですか!?」

 

ちょうどその時、レッドとグリーンも合流。

 

「よし、全員そろったね!それじゃ早速、作戦開始!」

「『ボムカービィ』!」

「『バブルカービィ』!」

 

作戦はいたって簡単。

まずレッドが爆弾でハンスの体を削り、グリーンが破片を泡でキャッチ。

そしてイエローが破片を凍らせる。

でボクは、ハンスが逃げないように監視。時々凍らせ損ねたのを回収しつつね。

これを何度も何度も繰り返した結果、ハンスは最初より大分小さくなった。

そりゃそうだよね。毒の塊も元はといえばハンスの体の一部なわけだし、仮に再生できるとしても、これだけひっきりなしに削れば再生しきれない。

ボクの毒沼によるダメージもあって、ハンスは徐々に動きが鈍ってきてる。

ここらでトドメを刺すべく、ボクは分身達に攻撃を中止させた。

 

「『ポイズンシャワー』!!」

「ギガアアアアアァァァァァァァ………!!!」

 

ボクは頭から毒液を噴射し、ハンスの頭上に降らせる。

上下からの毒攻撃により、ハンスの体は瞬く間に消滅。

冒険者カードを確認してから毒沼を消す。

そしてプペポフォンを操作してボクは1人に戻った。

とはいえ、毒沼で地面が汚れてたので「クリーン」で綺麗にし、ついでに残りの温泉も元通りに。

で、残り2日は今まで通り宿にこもったわけだけど、ゆんゆん達も女将さん達も、ひっきりなしにボクの活躍の話で持ち切り。

噂じゃアクシズ教徒から恐れと称賛の両方の声があがったんだとか。

ま、ボクには関係ないけどね。




次回予告
温泉街でのんびりできなかったのと、そろそろ夏ということで海水浴を決め込んだカービィ。
人魚見たさに知恵を絞ります。
しかし、港町では何やらトラブルの模様。
果たして無事に休めるのか?
次回「怖がり人魚と蛸の悩み」

下はおまけ(替え歌)

♪未来が来るぞ 時空を超えて
♪風を追い抜く 虹の光が
♪今この空へ 呼ぶのは
♪勇気と愛と希望
♪それが僕達の Quadruple Copy
♪OK! 行くぞ
♪レッド イエロー そしてグリーン
♪永遠目指せ 恐れるな4つの戦士
♪無限大の 壁を崩せ

♪響いてくるぞ 奴らの叫び
♪大地を汚す 巨大な悪に
♪さあ燃え上がれ 怒りよ
♪正義と夢と自由
♪守り抜くための Quadruple Copy
♪OK! 行くぞ
♪グリーン イエロー そしてレッド
♪伝説へGO! 走りだせ4つの戦士
♪決めろ熱く 全速前進

♪勇気と愛と希望
♪それが僕達の Quadruple Copy
♪OK! 行くぞ
♪レッド イエロー そしてグリーン
♪永遠目指せ 恐れるな4つの戦士
♪無限大の 壁を崩せ
♪OK! 行くぞ
♪グリーン イエロー そしてレッド
♪伝説へGO! 走りだせ4つの戦士
♪決めろ熱く 全速前進
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