【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を!   作:Mk-5

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仕事に加えて歯の定期健診……今後もこんな感じのが続く予感。
しかもビン詰めの開け方に四苦八苦したり…。
え、何故ビン詰めの話題になるかって?それは読めばわかりますって。
さて、そういえば海が舞台の話って見かけないな…というわけで、今回は海水浴の話でございます。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ


第08話 怖がり人魚と蛸の悩み

アルカンレティアでは…正直言って十分に羽を伸ばせなかった。街一番の宿に宿泊したって言っても、ハンスの一件もあって実質3日くらいしか泊まれてない。

そして季節は…もうすぐ夏本番といったところ。

どうせだから海水浴でもしたいな~。

でも皆に提案したら猛反発された。

一体どうしたんだろう?

 

「お前は知らないんだろうが、海は陸よりずっと危険なところなんだぞ!」

「そうなの?」

「そりゃもう、強力なモンスター達がひしめいていますから!!」

「でも、浜辺で遊ぶくらいなら大丈夫でしょ?」

「ま、まぁ…そのくらいなら大丈夫かもしれないが…」

「…ははぁ、なるほどね」

「な、何ですか?」

「その反応から察するに、キミ達…いや、この世界の人達は海辺での楽しみ方を知らないって感じかな?」

「そりゃ勿論、危険な場所で楽しもうなんて考える奴はいないだろうからな…」

「なら尚更行こうよ!ボクが知ってる範囲で、海での楽しみ方ってやつを教えてあげるから!」

「どうでもいいけどさ、貴方何だってそんなに海にこだわるのよ!?」

「だってアルカンレティアじゃ何だかんだで十分にのんびりできなかったんだもん。それにこれから夏本番だしさ、冷たい海で遊べば暑さも乗り切れると思うよ?それにさ~、ボクとしては海行くのに消極的な“水の”女神ってのの方がどうかと思うけど?」

「あのねぇ、確かに私は水の女神だけど、あくまで淡水限定なのよ!真水限定!海にはちゃんと海の神がいるんだから!」

「へ~、まいいや。ダクネス、ここから一番近い海辺の街ってどこ?」

「海辺の街か……となると、ドックぐらいしかないな」

「ぐらいしか?じゃあ他に無いってこと?」

「ああ、海に面していて尚且つ人が住めるくらい安全なところは、あの辺くらいしかないんだ」

「そうなんだ…あっ、ついでに聞くけど、人魚っているの?」

「ん?ああ、ドック周辺でもたまに目撃されてるそうだが……ってまさかお前っ、捕まえて高値で売ろうとか考えてないだろうな!?」

「はあ?何でそうなっちゃうのさ!単に見てみたいだけだよ!」

「…そうか、それならいいんだ」

「???」

 

何だってダクネスはあんなに人魚に対して過剰に反応したんだろう。

人魚に関わっちゃいけない決まりでもあるのかな?

ま兎に角、翌朝の出発に備えて各自準備開始。

ドックにも宿はあるらしいから、寝床に困ることはない。

ボクは人魚に会える可能性を高めるべく、アクセルのお菓子屋さんで下準備。

…まぁ本当にそうなるかは分からないんだけどね。

で、ドックへは転送屋を利用することになった。

何だかんだで、今まで利用したことなかったな。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

無事ドックに着いたわけだけど、危険とされてる海に面してるにもかかわらず、意外とちゃんとした街だったのに軽くビックリ。

海の幸と潮の香りが漂い、耳を澄ませば波の音が聞こえる。

ボクは早速、テレポート先に登録したら海に一番近い宿をとって海へ一直線!

他の4人は街を軽く見て回るんだとか…。

当然ながら海辺には漁船の停泊する港があり、意外にも冒険者ギルドはこれに併設する形で存在してる。

隣の道具屋さんに釣り道具と餌箱があったので、ボクは迷わず購入。

ゆんゆん達と合流しギルドに着いて早々、受付に呼び出された。

 

「どうかしたんですか?」

「実は、カービィさんの腕を見込んで頼みたいことが…」

「頼みたいこと?」

「はい、この辺りを中心とした海域を、ジャイアントオクトパスと言う巨大な蛸が根城としているんですが、最近になって近くを通る漁船などを襲うようになったんです」

「最近になって?」

「ええ、今まではとてもおとなしくて誰かを襲うなんてことは一切しなかったんですがね…」

 

受付のお姉さんはそう言って、おもむろに何かを見た。その視線の先にあったのは討伐依頼の張り紙で、例のジャイアントオクトパスのものだった。

 

「討伐依頼が出るくらい深刻なの?」

「その通りです…」

「どうします、カービィさん?」

「う~んそうだな…ボクはどうにも急に狂暴化した原因が気になるんだよね。どうせだからちょっと調べてみようかな」

 

と言って討伐依頼は半分断っておき、ボクは浜辺へ急いだ。

最初からこれが目的だったんだもん。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「やった~!遂に海に来れたぞ~!わぉっ、これだけ冷たけりゃ問題なしだね」

「それはいいですけどカービィさん、“海での楽しみ方”を教えてくださいよ」

「あ、そうだったね。ちょっと待ってて」

 

ボクは口から道具を出して並べる。

 

「何か2種類ほど出てきたけど、どう使うのよ?」

「まずこれはビーチパラソル、砂地に突き刺して傘と同じ要領で広げれば…っとこんな風に大きめの日陰ができるよ。あとはこうしてシートを敷けば…海で泳ぎ疲れたりしたらここで休めばよしっと。で次にこれはビーチボールと言って、海辺での遊び道具の1つだよ」

「遊び方が想像できないんですけど…」

「それは遊び手の自由さ。例えば…こんな感じで小さめの丸木を並べてこれ目掛けてボールを転がす。で、一番多く倒した人が勝ち。他にもこ~んな感じに拳で打ち上げて順番にパスしていって、落とした人が負け、とかね」

「なるほど…それにしてもこのビーチボールとやら…見た目より軽いし、中に何か入っているのか?」

「ん?中には空気が入ってるのさ。空気は水より軽いから海に落としても必ず浮くわけ」

「ん~、ますます興味深いな…」

「おっとそうだ!泳ぐからにはそれ用の服に着替えないとね」

 

ボクは口から追加で備品を取り出す。

 

「これが…泳ぐ用の服…ですか?」

「水着って言うんだよ。詳しいことは知らないけど~、動きやすさと泳ぎやすさを両立させた特殊な衣服…とでも言うのかな?因みに今並べたのは、全部女性用だよ」

「へあっ!?何だってこんなにも女ものが!?」

「何でってそりゃ、ボクの能力の影響でさ」

「女ものとコピー能力とどんな関係があるんですかねぇ!?」

「もう忘れたの、めぐみん?ボクのコピー能力は本来『吸い込んだ敵や物の能力を吸収する』ものなんだ。だからプププランドにいた頃は、能力を使う際に必ず“吸い込み”をしなくちゃいけなかったんだよ。ここまで言えばもう分かるでしょ?」

「要するに…対象以外の物もまとめて吸い込むことがある…ってことか?」

「そういうこと」

「いやちょっと待ってくださいよカービィさん、それってほぼほぼ泥棒じゃないですか!!」

「今思えば確かに…でも怒られたりしたこと1度も無いんだよね」

「それは恐らく、半ば諦めているからじゃないか?初心者殺しを難なく吸い込めるような奴を敵にまわそうとする物好きはいないだろうし…。あ、話を戻すがカービィ、それは何だ?」

「これはラップタオルだよ。着替え用の個室とかが無い時に便利なんだよね。使い方は簡単、これを頭からかぶるだけ。ホラ、ここに頭を出す穴があるでしょ?」

 

ゆんゆん達はボクの指示通りにラップタオルを身につけた。

 

「で、この後は?」

「決まってるじゃん。後は好きな水着を選んで着替えるだけ!着替え終わったらラップタオルを外せばおしまい」

「はあ…」

 

誰でもホントに初めての経験する時は、ギクシャクというか、おっかなびっくりというか、まぁそんな感じになるもんだよね。

取り敢えず全員着替え終わったみたい。

選んだ水着だけど、ダクネスはオレンジ色のビキニ、アクアは水色のフリル付きワンピース、めぐみんは朱色のセパレート。

皆いつもの服の色ないしそれに近い色の水着をチョイスしてるな。

服の色に愛着持ってるのかな…?

で、最後に着替え終わったゆんゆんは黒いワンピース水着なんだけど…確かあれって何か別名があったよな。

確かえ~と………きょ……競スク…だったっけ?(※「ARN-75W」)

まいっか、取り敢えずこれにて、海で遊ぶ準備は万端!

 

「なあカービィ、着てみて改めて思ったんだが…何となく下着姿と大差無いような」

「それは言わないお約束だよダクネス。関節部が衣服で隠れてたら動きづらいでしょ?特に泳ぐとなれば溺れるリスクに直結するんだから、こういうデザインになるのは仕方ないことだよ」

「そうですよダクネスさん!そんなこと言われたら折角の楽しみが台無しじゃないですか!」

「ん……」

「まぁとにかく遊ぼうよ!あそうだ、言っとくけどビーチボールはそこまで丈夫じゃないから、あまり力入れないようにね!これ多分この世界には…作れるとしてもまだ存在してない素材でできてるだろうから、壊さないでよ?特にダクネス」

「そ、そうか…分かった」

 

というわけで、皆揃ってボール遊び。

最初こそ力加減に四苦八苦してたダクネスだけど、次第に慣れて上手いこと返せるようになった。

でもアクアは…途中から誰が見ても飽きてますって感じの顔になってきて、最終的にビーチパラソルの日陰にエスケープ。

自主的に荷物番をすることに。

ボク達はチョコチョコとルールを変えたり、海に落ちたボールを拾うついでに波と戯れたりしながらボール遊びを楽しんでたわけ。

そのうち、めぐみんとダクネスが何かブツブツ呟いてるのが耳に入った。耳を澄ましてみれば、ボクがジャイアントオクトパスの討伐依頼を請けなかったことに不満があるらしい。

詳しく聞かなくても理由は大体分かる。

めぐみんは単に爆裂魔法が使いたいだけで、ダクネスは…察するにここで活躍してボクの中での評価を上げ、早めに剣を取り戻したいってとこかな?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「あ、そうだ!」

 

他にやりたいことがあったボクは、半ば強引にでも抜けるべく口を開く。

 

「ひゃあっ!ど、どうしたんです?」

「忘れるとこだったよ。ボク海で魚釣りやろうと思ってたんだ」

 

ボクは口から釣り竿と餌箱を取り出しながら言った。

 

「いつの間に手に入れたのよ…それとも最初からお腹の中に?」

「いや、この街のギルドの隣にある道具屋さんで買ったの。じゃボクはその辺で釣りしてるから、暫く4人で遊んでていいよ!」

 

そう言ってボクは砂浜をあとにし、「ホイール」で移動しながら釣り場探し。

すると、ある程度広々としたスペースがあるチョイ高めの岩場を見つけたので早速移動。

道具を準備してから餌箱を開くと…そこにあったのは大量の飴玉。

アクセルのお菓子屋さんで調達したやつね。

何で飴玉なのかというと…実はボク、人魚に関して以前どっかで聞いたことがあるんだ。

人魚は甘いものを好むので、飴玉を餌に釣りをすると食い付くことがあるって。

ホントかどうかは分からないけど、試さないことにはどうとも言えないわけで。

釣り針に飴玉を突き刺し、適当にヒョイっと針を投げて釣り開始。

とはいえ、釣りは根気が大事。そう簡単にかかるものじゃない。特に人魚とあれば尚更。

ボクは釣竿を適当に固定する。

少し寝て待とうか…なんて考えながら空を見上げてボ~っとしてたら、突然何かが沸き上がるような音が聞こえた。

何事かと思って岩場から見下ろしてみると、釣り針を投げたとこからそう離れてない場所で何かが湧きたってる!

と突然、そこから水蒸気の様なものが大量に吹き上がって塊を作ったかと思いきや、そこから男の人が現れた。

バルターさんと同じ好青年風だけど、見た目バルターさんより少し年上といった感じ。

けど宙に浮いてて普通の人より一回り大柄だし、何より貝やサンゴを模した装飾品や王冠を身に着けてる。

そして右手には、金色に光る三つ又の槍のような武器を持ってる。

 

「えっと……誰ですか?」

「私はポセイドン、海を司る神である」

「そうなんだ…でも何だってボクのとこに来たの??」

「実はなカービィ、お前さんの腕を見込んで頼みたいことが1つあるのだよ」

「頼みたいこと?」

「お前さんも知っているだろうが、最近ジャイアントオクトパスが狂暴化している。詳しい理由は分からんが、どうやらパニックに陥っているようなのだ」

「パニックに?いや、そもそも詳しく知らないってさ…仮にも海の神なんでしょ?」

「だからこその苦労というものがあるのだよ。お前さんや人間共は言葉を使う。それ故に、その心は感情表現豊かだ。ところが海の生き物達には言葉というものが無い。そのため感情も乏しい。であるからして、海の神たる私は彼等の内に秘めたるものを探るのに四苦八苦しているわけだ」

「へぇ、海を司るのってそんなに大変なんだ」

「左様、今回の騒動にしても私の力だけでは時間がかかる。まして討伐依頼が出たとなれば何時までも時間をかけてはいられない!奴とて、この海のバランスを保つのに大いに役立っているからな…。漁師共が無事に港へ帰れるのも、奴が脅威となる輩を追っ払っているが故なのだ」

「それでボクに、ジャイアントオクトパスが暴れてる原因の調査を手伝ってほしいってこと?」

「そういうことだ」

「なら別にいいよ。どうせ調べるつもりだったから。それに討伐されたら困るってことなら尚更断れないよ」

「うむ、よろしく頼むぞカービィ…!」

 

そう言うと、ポセイドンは再び水蒸気と化して海に消えた。

それにしても…ジャイアントオクトパスがパニックになる原因って何だろう?

天敵が近くにいるってことなら、漁船を襲うのはおかしいし…。

環境が変化したってんなら他所へ移動すれば済む話だし…。

と、あれこれ考えてたら突然、固定してた釣り竿がグイグイと引っ張られた!

まさか!?

ボクは反射的に釣り竿を握りしめ、持ってかれないように踏ん張る。

よく見ると、釣り糸の近くに水しぶきがあがり、黄色い影が見える。

この世界の釣り竿には糸を巻き上げるリールが無いので、ボクは竿をクルクル回して手繰り寄せる。

ある程度まで近くに引き寄せた時、ボクは竿を思いっきり引いた。

するとどうだろう、海中から飛び出したのは……本物の人魚!!

しかも相当必死で釣り針に食らいついてる。

そんなに甘いもの好きなの?

ボクが岩場に降ろすと、人魚は周りをキョロキョロ見回す。

そしてボクを見るのと同時に、その顔に怯えが走り出す。

 

「はわわわわ!い、いい一体誰なんです!?」

 

人魚は尾鰭をピチピチさせ、泣きながらそう言った。

何であんなに怯えてるんだろう?

取り敢えず落ち着いてもらわなきゃ。

 

「ボクはカービィ。よろしくね」

「た、たたた食べないでくださいぃぃぃ!!」

「は?何で食べなきゃいけないわけ?」

 

ボクの言葉に、人魚は一瞬キョトンとした。

 

「あ、え、そ、そのために私を捕まえたんじゃ…!?」

「違うよ。こうしたら人魚に会える可能性が高いって聞いたからそうしただけ」

「そ、そうだったんですか。よかったぁ……クスン」

 

何とか落ち着いてくれたけど、まだ涙目だ。

それにしても、ホントに絵本で見たような美人だね。

目は黒で、髪はダクネスより濃い黄色。

尾鰭は…青と水色の中間といった感じの色をしてる。

で、上半身に身に着けてるのは意外にも白いタンクトップ。

でもよく見ると、その下に貝のブラジャーを着けてるのが分かる。

でもそれ以上に気になってるのが、髪型なんだよね。

肩までの長さの髪、その一部をまとめて赤いリボンで留めてあるんだけど……ほぼ頭頂部でまとめてあるせいか、どう見ても“アホ毛”にしか見えない。

元々あーなのを誤魔化してるのか、それともあのヘアスタイルが人魚の間で流行ってるのか…。

ま、どうでもいっか。

 

「で、キミの名前は?」

「え?あ、はい。私、ミュイって言います…」

 

ここまで言った時、ミュイと名乗る人魚は口に飴玉が入りっぱなしなのに気付いたのか、口の中で飴玉を転がし始める。

で、ボクは暫くその様子を見てたんだけど、それに気付いたミュイは慌てて飴玉を噛み砕いて飲み込んだ。

それも顔を赤くして。

 

「す、すみません。甘いものが口にあると思ったらつい夢中に…」

「別にいいけど…人魚ってそんなに甘いもの好きなの?」

「だって~、味わう機会なんてほぼ無いんですから」

「そうなんだ…あ、そうそう!ついでにちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「は、はい、何でしょう?」

「この付近でさ、ジャイアントオクトパスが暴れてることは知ってる?」

「え、ええ…」

「それでね、ポセイドンから原因を調べて欲しいって頼まれてるんだけど、キミは何か知らない?」

「う、海の神様からですか!?それは一大事です!……でもごめんなさい、私は何も知らないんです」

「そっか…ん!?」

 

ボクが何気なしに海を見下ろすと、そこにはクラゲがいた。

只のクラゲじゃない。太陽の光に照らされて、まるで金塊のような輝きを放ってる!

そんなクラゲが10匹ぐらい、固まって海中を漂ってる。

しかもかなり大きいぞ。

 

「何だろう、あのクラゲ…」

「え?……あ、あれは!」

「何?ミュイはあのクラゲ知ってるの?」

「はい、ユメクラゲですよ!確か人間達が高級食材としているクラゲです」

「へ~、あれがユメクラゲか。どうせだから皆へのお土産にしようかな…」

 

運よく虫取り網とユメクラゲが入りそうな口の大きいコルク付きのビンが見つかったので、それを使って8匹ほど捕獲に成功。

ちゃんと栓がされてることを確認してから、ビンをお腹に戻す。

ふと横を見れば、ミュイが目を丸くしてボクのことを凝視してる。

 

「ど、どうなっているんですか!?口から色んな物を取り出して…」

「『備えあれば患いなし』って、聞いたことない?」

「いや、そういうことじゃなくてですね……」

 

なんてやり取りをしてたら、突然ボクの頭の上にベチャッと何かが落ちてきた。

引き剥がしてみると…

 

「…蛸だ。何処から落ちてきたんだろう?」

「状況的に岩壁にでも張り付いていたんでしょうけど……ってちょっと待ってください、これって…!」

「ん?この蛸がどうかしたの?」

「これ、ジャイアントオクトパスですよ!子供の!」

「ジャイアントオクトパスの子供?何だってそんなのが岩場に?……待てよ、てことはもしかして…」

 

その瞬間、海から大きなものが飛び出てきて、ボク達の周りが影となる。

 

「ん?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

その頃、ゆんゆん達はというと…

 

「それにしてもカービィ、何で討伐依頼請けなかったんでしょうね、ホイっと!」

「カービィさんにはカービィさんなりの考えがあるのよ、それっ!」

「確かにこれはこれで楽しいが、やはりモンスター討伐がないとつまらんな、いよぅっ!」

「全くだわ!早いとこ漁船襲ってる下衆に制裁加えるべきよ、たぁっ!」

「同感です!早いとこ倒さなくては、てぃっ!」

「めぐみんは単に爆裂魔法が使いたいだけでしょ!?せいっ!あとダクネスさんは、カービィさんに認めて欲しい」

「ふぬりっ!…あえて否定はせん」

「私はそんなちっぽけな理由じゃないわ!さっさと片付けて海をとおぅっ!…海を牛耳ってるアイツの鼻を明かしてやりたいのよ!!」

 

こんなやり取りをしつつボール遊びに興じる彼女達に向かって、波を利用し大きな影が迫って来た。

影は腕を伸ばし、ゆんゆんを除く「3匹の迷惑者」を締め上げる。

 

「きゃああああああ!!何!?何よこれ!?」

「ま、まさか…ジャイアントオクトパス!?」

「えええ!?…た、確かに言われてみりゃコイツ蛸だわ…てゆーかゆんゆん、何でアンタだけ捕まってないのよ!?」

「そんなこと言われても…!」

「う゛…あが…く、首……!」

「うわわわわわ!めぐみんが大変なことに…!」

「うぐぅ……く…んはぁ…!」

「そしてダクネスさんは何を楽しんじゃってるんですか!?」

「やっぱしダクネスはマゾのままか…」

「え、そ、その声はカービィさん!?ちょっカービィさん!何処にいるんですか!?」

「ココだよココ!!」

「へ!?」

 

さっきからずっとジャイアントオクトパスの頭に乗ってたのに、何で気付かなかったんだろう?

因みにミュイは後ろに隠れてる。

 

「か、カービィさん!い、何時から!?」

「さっきからずっといたよ!」

「な、何だってそんなとこに??」

「もう事件は解決したからさ」

「「「「えええ!!??」」」」

「あ、因みに原因はこれだよ」

 

ボクは頭の上に乗ってる蛸を指さした。

 

「えっと…その頭に乗ってる蛸は?」

「ジャイアントオクトパスの子供だよ。何か迷子になってたみたいでさ~」

「ま、迷子!?……ちょっと待ってください。ということは…ジャイアントオクトパスが暴れてた原因って、子供を探してただけってことですか!?」

「うん、そういうこと。漁船を襲ったのは多分、紛れ込んだんじゃないかと疑ったんだろうね」

「なるほど…」

「てゆーか何でコイツ私達を襲うのよ!?止めさせてよ!!」

「だってキミ達、最初から討伐することしか考えてなかったじゃん。だからついさっき、お仕置きすることに決めたわけ」

「が…ぐ…ぷはっ!お、お仕置きって・・・!」

「マンティコアみたいに最初から狂暴だってんならいざ知らず、最近になって急にってことなら何か特別な事情があるもんでしょ!そんなこともロクに考えず、やれ爆裂魔法が撃ちたいだの、やれ実力を認めて欲しいだの、そんなことでボクが賛成するとでも思ったの!?」

「というか、本当についさっきまでの私達の会話、全部聞いてたんですね…」

「それに大体、ジャイアントオクトパスがいなくなったらこの海の生態系が変わって、漁なんかできなくなっちゃうんだぞ!」

「はあ!?何言っちゃってんのカービィ!?この下衆がいなくなったら漁ができない?冗談キツイわよ!」

「冗談などではない!!」

 

声のする方を見れば、隣にはポセイドンが!

兎にも角にもいつの間に……。

 

「カービィさん!隣に現れたのは一体何者です!?」

「何って、ポセイドンだよ」

「ぽ、ポセイドンだと!?あの海の神の……!」

 

ポセイドンはまるでそよ風の如く、足音を一切立てずにアクアの正面まで移動する。

 

「な、何よアンタ!?」

「何だはこっちのセリフだ。お前、こんな状態のままでいいのか?」

「いきなり何を言っウグッ…!」

「俺の鼻を明かすんじゃなかったのか、アクア?」

 

ポセイドンは三又の槍……じゃなくて三又の鉾「トライデント」でアクアの喉を1度叩き、見下した感じで頬をペチペチ叩きながらそう言った。

状況が状況なうえに今までの会話を全て聞かれてたせいか、アクアは顔を赤くして黙り込んでる。

 

「というか、ポセイドンさんもあの会話聞いてたの?」

「いや、直には聞いていない。だが私は海の神だ。海を通じて、大抵のことは知ることができる」

「へぇ」

「おっと、そういえばこいつ等をお仕置きするんだったな。邪魔して悪かった」

「あれっ?ポセイドンさんは参加しないの?てっきりアクアにでも落とし前つけるのかと思ったんだけど」

「今回の件はあくまでお前達の問題だ。私に直接の関わりは無い」

「そう…それじゃ早速、お仕置きだ~!」

 

ボクの声と同時に、ジャイアントオクトパスは「3匹の迷惑者」を締め上げたり振り回したり…。

うち2人にはこれで十分だろうけど…あのマゾヒストにはお仕置きにならないねこりゃ。

ジャイアントオクトパスもそれが分かったみたいで、急にダクネスを責めるのを止め、海に向けて低い唸り声のような音を発した。

何をしてるのかと思ってたら、そう間もなく海面から無数の子ダコ達が顔を出す。

こんなに子供がいたのか…。

ジャイアントオクトパスが子ダコ達に何かを言い聞かせるような仕草をすると、子ダコ達は腕を伝って「3匹の迷惑者」のもとへ向かう。

そして何と、腕を器用に使って「3匹の迷惑者」をくすぐり始める。

 

「「「「きゃあああぁぁぁはははははは……!!!」」」」

 

苦しげな笑い声がそこかしこに響く。

いや、何か1人多いような…。

ってよく見たらゆんゆんまで子ダコ達に群がられてるし!

とはいえ、ボクの周りも子ダコだらけだし……ま、しょうがない。

折角ジャイアントオクトパスをおとなしくさせられたんだし、こんなとこで関係悪化させるわけにもいかない。

てことで、ポセイドンと一緒にそのまま傍観してたわけ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

当然ながら4人とも笑い死に。

暫くは再起不能だろう。

…そういえば、ミュイはどうなったんだろう?

ゆんゆんがああなったからには、ミュイだって無事じゃ済まないはず。

そう思ってジャイアントオクトパスの後ろを見てみたら…いない。

人間怖さで先に帰っちゃったのかな?

遅れてポセイドンもそのことに気付いたらしく、脚を海に浸けて探りを入れ始めたんだけど、突然大きく目を見開いた。

それも深刻な顔で。

 

「…こりゃマズイ。私としたことが…!」

「え、何?どうしたの?」

 

ポセイドンがおもむろに指さした方を見れば、そこには背中から血を流して倒れてるミュイが!

ボクは急いでミュイに駆け寄る。

ミュイはぐったりしてたけど、まだ息があるぞ!

 

「どうやら、ジャイアントオクトパスが大きく動いた衝撃で振り落とされ、水面下の岩場に背中をぶつけたらしい」

「『ヒール』!」

 

ボクはミュイに向けて、アークプリーストの回復魔法を放った。

だけど…おかしい。

回復してる感じがしないぞ。

と思ってたら、ポセイドンが口を開く。

 

「…お前さん、知らないんだな。回復を含めた支援魔法はほとんどの場合、人間に対してしか効果を発揮しないのだよ」

「えっ、そうなの!?」

「ああ、よっぽど人間と親しい付き合いをしている場合であれば、例外的に効果を発揮する場合はあるが、少なくとも彼女はまだそこまでいってないだろうし…」

「そんなぁ…」

「それに、これを見てみろ。何かおかしい所はないか?」

 

そう言って、ポセイドンがミュイの傷口を指さす。

おかしい所って……。

 

「……傷口が…紫色?」

「そうだ。これは明らかに化膿している。恐らく傷口から病原菌か何かが入ったんだろう。これでは長く持たんな…」

「な、何だって!?」

 

ちょうどその時、騒ぎを聞きつけたゆんゆん達が駆けてくる。

…さっきまで笑い死にしてのびてたのに…回復速すぎない?

ついでに4人とも人魚を見てビックリ。

 

「か、カービィさん!人魚ですよ!本物の!」

「知ってるよ。さっきまでずっとジャイアントオクトパスの後ろに隠れてたんだ」

「へ?それじゃ何?この人魚って貴方の知り合い!?」

「うん、ミュイって言うんだ。釣りしてる時に知り合って」

「というかケガをしているみたいだぞ」

「そう、だから困ってるの…」

 

こんな時役立ちそうなコピー能力があったはずなんだけど……ダメだ、出てこないよ。

このタイミングで度忘れとか勘弁してよ…。

で、意外にもアクアが立ちすくんでる。

ボクはてっきりしゃしゃり出てヒールが失敗する的な流れになると思ってたんだけど、どうやら人間以外は回復させられないことを知ってたらしい。

するとここで、ゆんゆんが何やら名案を思いついた様子。

 

「あ、そうだ!もしかして、アレなら治せるんじゃ!?」

「アレって?」

「ほら、カービィさんが持ってる回復技『応援キッス』ですよ!」

「あ……アレか~」

「何だと!?カービィお前、独自の回復技が使えるのか!?…いやちょっと待てよ、キッスとか言ったか…?」

「ええ、カービィさんも世間体を気にして今まで伏せてたみたいですけど、今はそんなこと言ってる場合じゃありませんから!」

「だからってあんまり堂々とぶっこまないでよ…」

「ご、ごめんなさい」

「というかゆんゆんは何故そのことを知ってたんですか!?」

「アルカンレティアで知ったのよ。その…温泉入る時にふと気になって聞いてみたの。で…私にだけコッソリ教えてくれたってわけ」

 

状況的にその場で考えついたシナリオなんだろうけど、それでもスジは通ってるし問題なさそうだ。

…ホントに回復できるかは分からないけど、今はもうこれに頼るしかない!

ボクはミュイの顔を起こし、ドッキング開始!

 

「え゛!?マジであんなことするの!?」

「ええ……しかもカービィさんの話では、ある程度回復するまで離れられないそうです…」

「なるほど、これは世間体的に問題アリなことに加え、離れられないということは要するに無防備な状態だからな…」

「確かにスキだらけ…あ!ちょっと見てください!」

「ん?どうしたんだめぐみん…おお、こ、これは…!」

「えええ!?き、傷が…傷が消えてってる!」

「ふふ…実に素晴らしい。流石は伝説の戦士…」

 

こんな声は当然ボクにも聞こえてるわけで、ドッキング解除後にミュイの背中を見てみると…確かに傷が消えてる。

成功したみたい。

でもミュイはというと、解除と同時に目覚めたせいで軽くパニック。

 

「はわわわわ!か、カービィ…さん…!い、一体…!」

「ん?背中ケガしてたから回復技使っただけだよ?もう大丈夫だから」

「だ、だだだ大丈夫とかそういう問題じゃ…」

「仕方ないんです。ミュイさんを助けるにはこうするしかなかったんですから」

 

ゆんゆんを見て一瞬ビクッとなったミュイだけど、やり取りからボクの仲間であることを直感したようで、恐る恐る口を開く。

 

「え、えっと…あな、あなた方はカービィさんの…知り合いか何かですか?」

「いや、知り合いじゃなくて仲間ですよ!」

「あ、ああ!そ、そうですよねアハハ……フゥ」

「ん?どうしたの?溜息なんかついて」

「いやその…怖いながらもやっぱり私、人間に憧れているんです…」

「何で?」

「だって、素敵じゃないですかそれ…」

「それって…足のことですか?」

「ええ」

「なるほどな、水の中では自由に動けても陸での移動は困難。そんな人魚にとって、大地を自由に駆け回る人間への憧れがあるということか…」

「はい。私もそういうものが欲しいです…」

 

ミュイがそう言った途端、今まで傍観してたポセイドンが何かに感づいたかのようにカっと目を見開き、ミュイの方に視線を向ける。

見れば、ミュイの尾鰭が光に包まれ始めてるぞ!

ミュイも遅れてそれに気付き、何事かと激しく動揺。

勿論、ゆんゆん達も例外じゃない。

そして何と、みるみるうちにミュイの尾鰭は足へと変化した。

服装も、白がメインのショートワンピースに白いニーハイブーツ。

 

「えちょっ、ど、どうなってんのこれ??」

「はわわ…私、人間になっちゃいました!」

「こ、これは一体どういうことだ!?おいカービィ、一体何をした!?」

「何って、ボクは回復技を使った以外は何もしてないよ!」

「フフッ…そうだ。その『回復』が、カービィ自身も意図しなかった『奇跡』を生んだのだよ」

「奇跡を…生んだ?」

「うむ、お前さんの回復技…確か『応援キッス』とか言ったか。それを彼女に行使したことで、今の彼女は人間になるのも、人魚になるのも自由なのだ」

「えっ…ということは私、人魚に戻ることもできるんですか!?」

「そういうことだ」

 

ミュイが試してみると、確かに人魚に戻れてる。

憧れだった人間の世界への進出のみならず、陸と海を自由に行き来できると知ってミュイは大喜び。

しまいにはボクの仲間になりたいと言い出す始末。

ま、ボクは構わないけど。

 

「本当にカービィと共に行動したいなら、なるべく人魚に戻ることは控えておきなさい。面倒ごとに巻き込まれるかもしれんからな」

「はい!ですがその前に……」

 

そこまで言うと、ミュイは突然アクアを睨みつけた。

一体どうしたんだろう?

 

「今からあなたには、私達の守護者を冒涜した罪を償ってもらいます!」

「んな!?」

 

アクアに反論の隙を与えず、ミュイはアクアに掴みかかる。

 

「ちょっと待ちなさいよ!アンタの言う“守護者”ってポセイドンのこと?なら私も女神なのよ!?細かい部分は違うけど、そいつと同じ水の神なんだからね!!」

「アクシズ教徒という名の危険物を生産している犯人が何を言っているんですか!!」

「き、危険物!?」

「ポセイドン様、お許しいただけますか?」

 

ポセイドンは半分呆れたような顔で成り行きを見守ってたんだけど、やれやれと言わんばかりの顔で一言。

 

「…好きにするがいい」

「ありがとうございます」

 

この後アクアが何かを言おうとしたようだけど、ミュイはすぐさまアクアを海まで引っ張ると、人魚に戻って大海原を引きずり回し始めた。

これじゃ市中引き回しの刑ならぬ“水中引き回しの刑”だよ。

 

「…それじゃボク達は海水浴の続きしよっか!」

「そ、そうですね…」

「ああ…」

「異議はありませんよ、はい」

 

皆もうどうでもよくなってるね明らかに…。

まぁそれはともかく、その後はジャイアントオクトパスも混ぜて楽しいひと時。

浅瀬で魚取りしたり、ジャイアントオクトパスと綱引きしたり…。

にしてもやっぱりジャイアントオクトパス…力が半端じゃないね。

いくら相手が女3人とはいえ、あのダクネスがいるのに終始優勢でしかも全力じゃなかったんだから。

最後3人を思いっきり吹っ飛ばしたのは圧巻だったね。

ついでに自分事だけど、そんな巨大蛸を「ファイター」で圧倒できたのも同じくらい衝撃的だった。まさかここまで力の差があったなんてね…。

後は子ダコ達との戯れが、ある意味印象的だった。

一体どうやって、一番くすぐったがる場所を知ったんだろう?

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

そんなこんなで一通り楽しみ終わったボク達は、ジャイアントオクトパスとポセイドン同行のもと、ドックの冒険者ギルドに出向いて事件の経緯を洗い浚い語った。

事件が結構あっさり解決したのと、海の神が降臨したってことでギルドの皆が狂喜乱舞。

あ、因みにアクアはというと、ギルドの隅にうずくまってるんだよね。

何時かの浄化クエストの時みたいに精神崩壊寸前なのかな?

勿論ミュイは、半ばボク達とは関係ないという雰囲気を出しながら喜ぶ人達に紛れてる。

で、そんなハチャメチャ騒ぎが落ち着いてきた頃、受付のお姉さんが報酬を用意してきた。

 

「えっ何で?討伐してないのに…」

「いいんですよ!事件解決へのお礼ですから!」

「そ、そう?……じゃあ」

 

まだ半ば興奮気味のお姉さんの圧に押される形で報酬を受け取る。

 

「おおそうだ!カービィ、私からも特別報酬を与えようと思う」

「え?」

「何しろ、言葉を使わぬ海の生き物達を統括するのは私としても重労働だ。それを軽くしてくれたんだからな。その礼として……これを受け取ってくれ」

 

そう言ってポセイドンがボクに差し出したのは…鉾!

今まで持ってたのと全く同じ鉾だ。

 

「…その鉾って予備があったんだ」

「うむ。万が一のためにな」

「それは良いんだがポセイドン殿、あまりこういうことは言いたくないんだが、この鉾はカービィが扱うには少し大きすぎるのではないか?」

「ふむ……」

「いいよダクネス。無いよりずっとマシだからさ。それに海の神様の鉾だよ?何かの役に立つかもしれないじゃん!…でも流石に持ち運びに不便だからっと」

 

ボクは鉾をお腹の中に収めるべく吸い込んだ。

 

「あ、あんな大きな鉾まで飲み込んじゃうなんて…!」

「冗談抜きでカービィの腹の仕組みが知りたくなってきたぞ……」

「…んんん!!?」

 

突如、ボクの体が水色に光り出す。

そして…感じる……“神の力”が全身にいきわたる…!

またも新たなコピー能力が…!

 

「『オーシャンカービィ』!!」

「えええ!?何ですかそれ!」

「まさかそんな……お前は神の力そのものをもコピーできるというのか!?」

「う~ん、どうもそうっぽいね。ほら見てよ。鉾がボクにぴったりのサイズになってるし。あ、そうだ!折角だしちょっと試してみようっと」

 

ドックの冒険者ギルドは入り口の反対側がデッキになってて、ジャイアントオクトパスはそこにいる。

たまたま右端に陣取ってたので、ボクは左端に移動。

 

「開け~~、海!!」

 

適当にそう叫んでみたら…できちゃったよ。

ホントにモーセの如く海が真っ二つ。しかも水平線の彼方まで。

でもって、これまた適当にやったら元に戻せる。

ジャイアントオクトパスは…何が起きたのか分からないといった感じで固まってるし。

そしてボクは更に閃いた。「ウォーター」の時と比べて、アレの使い心地はどうだろう?

 

「『セイクリッド・ハイネス・クリエイトウォーター』!」

 

…やっぱり段違いだ!

精神的にも肉体的にも全くと言っていいほど負荷が感じられない。

まるで人形遣いになった気分だよ。

 

「……素晴らしい。流石は伝説の戦士と呼ばれるだけあるな」

「そう?」

「もしかしたらこの力が魔王を倒すのに役立つかもしれない。上手に使いたまえカービィ。今後の健闘を祈る…!」

 

そう言い残してポセイドンは海へと帰り、ジャイアントオクトパスもそれにすがるように帰って行った。

この一連の出来事により、再びギルドの皆が狂喜乱舞。

そんな中、ふとアレのことを思い出したので口の中からビンを5つ取り出して並べてみる。

すると当たり前のように、ダクネスがぎょっとした顔で迫って来た。

 

「お、おいカービィ……そ、それって…!」

「あ、ダクネスはこれが何だか分かるんだ」

「当たり前だ!一体どうやってユメクラゲを捕まえたんだお前!?」

「どうやってって…釣りしてた時に偶然近くを漂ってたからビンに入れただけだよ?」

 

ユメクラゲというワードがダクネスの口から出た瞬間、狂喜乱舞してた冒険者達が一瞬にして静まり返り、ボクの方に視線が向く。

当然だろうけど、ゆんゆん達はこの状況に激しく動揺。

ゆんゆんが呼吸を整え口を開く。

 

「あ、あのダクネスさん…ユメクラゲって?」

「今目の前でビン詰めにされているこのクラゲのことだ。『一口食べたなら、夢に見てでももう一度食べてみたいと思わずにはいられない』という意味が込められた、幻の超高級食材だぞ!!」

「「「超高級!!??」」」

「レインボートカゲと比べたらどっちが高いの、ダクネス?」

「勿論ユメクラゲの方だ!海は陸より危険だと言っただろう?だから海の高級食材は陸のよりレアなんだ!」

「ふ~ん、あそうだ!ねぇ、この辺りでさ『ユメクラゲのパイ包み』って料理を作れる店、知ってる人いない?」

 

すると意外にも、ギルド併設の料理屋で作れるって。

その人の話だと1匹で5人前なんだとか。

つまり今出した分で25人前。

っていうかお昼にはまだ早いけど…まいっか!

 

「それじゃあ……ボクらで1人前ずつ。残りはギルドの皆で分けてよ。やっぱり皆にもおすそ分けくらいしなきゃね♪」

『ワアアアアアアアアア!!!!!』

 

言った途端にギルド中が感激の嵐。

例え味見レベルでだったとしても、幻の超高級料理が口にできるわけだから当然だよね。

料理屋の従業員を含め、ギルドにはボクら以外にちょうど60人いたみたいで、全員でそれぞれ3等分。

で、肝心の味はというと…凄いの一言に尽きるねこりゃ。

クラゲって本来ゴリゴリ感が強いはずなのに、ユメクラゲは違う。

強すぎず弱すぎず、まさに理想的なゴリゴリ感。

加えてパイ生地と混ぜて食べても、生地のサクサク感を損なわない不思議仕様…ホントに夢を見てるんじゃないかと疑いたくなる、常識離れした料理だ!

ていう感じのことを、他の冒険者の感想に合の手を入れる形で述べた。

それに比べて、ゆんゆん達はまともに感想が出ない様子。

一生夢の世界で生きたいだの、このまま全身とろけてしまいそうだの……少しでいいから料理に関する感想言いなよ。

食べ終わってから気付いたけど、ユメクラゲって意外と腹持ちが良いみたい。

これなら追加の料理は少なくて済みそう。

で、改めて料理屋を見渡すと見慣れぬ海の幸がズラリ。

 

「…どれもこれも他の街じゃ見かけない物だ…。ねえ、こういうのって他の街に売りに行ったりしないの?」

「出来ればそうしたいけどさ、運んでる間にどれも腐っちまうよ」

「テレポート使ったら?」

「それじゃ採算が合わないよ。1人25万エリスなんだから…」

「そっか…いや待って、それなら長く保存しておけるようにすればいいじゃん!ホラ、料理を熱いうちに壺に入れてピッタリ蓋すれば長く持つでしょ?」

「それは知ってるけど、壺は重いから…」

「全くもう!だったら小さいので代用すればいいじゃないか!例えばこの、ボクがユメクラゲを入れた口の広いコルク付きビンとか」

 

なんて話したら、料理屋の人を含めた周りの人達が興味津々な顔をする。

どうやらこの世界には缶詰の類が存在しないらしい。

なら尚更、ビン詰めを話題に出してよかったと思う。

こっちの方がやることは簡単だし。

皆が実演して欲しそうな顔してたので、ボクは早速料理屋の人に、口の広いコルク付きビン・ビンが入る程度の鍋・水・保存したい食材(調理済みor生でも食べられるもの)・蝋燭を用意させた。

そして説明付きで実演開始。

 

「まずは水を入れた鍋を火にかけて沸騰させます。…沸騰したら、食材を詰めたビンにコルクで緩く栓をして、沸騰したお湯に浸けます。時間は大体30~60分ってとこかな?」

 

ボクの説明を周りにいた皆が、特に料理屋の人がメモをとったり目を見開いて様子を見たりと真剣そのもの。

取り敢えず1時間ほど放置し、その間に追加で昼食をとることに。

ま、他の人達はそれどころじゃないって感じだったけど。

沸騰した鍋見続けても何も起こらないよ?全く…。

 

「…50分位経ったかな?それじゃここで蝋燭に火を灯して、溶けたロウを用意しましょう」

 

やっぱし皆、蝋燭をどう使うのか知りたいらしい。

 

「…時間だね。そしたらビンをお湯から出して、できる限りきつく栓をします。力を入れすぎてビンの中にコルクを落とさないようにね。その後でいよいよ蝋燭の出番。溶けたロウをこんな風に、ビンの口とコルク栓の間の隙間を埋めるように垂らします。隙間なく垂らせたらロウを冷まして完成だよ♪」

 

一通り説明が終わると、周りから拍手喝采と同時に質問の挙手が。

 

「何故ビンをお湯に浸けるんですか?」

「ビンの中の空気を抜くためだよ。空気は温まると軽くなるからね、こうするとビンの中の空気がコルクの隙間から逃げちゃうのさ。簡単に腐りにくくしたいならコレが一番だよ」

「それと腐りにくくなることに、どんな関係が?」

「…そもそも食べ物が腐っちゃうのはね、目に見えない小さな生き物達が腐らせてるからなんだ」

「何故そんなことを?」

「土に返すためさ」

「え?」

「ホラ、秋に地面にたまった落ち葉がさ、春になると消えてるでしょ?何故かといえば、その小さな生き物達が腐らせて土に返してるからだよ。そんな生き物達は土に返せるものなら何でも腐らせちゃう。だけどボク達と同じで、空気が無いと生きていけない。だから空気がほとんど無いビンの中じゃ腐らせるなんてまず無理でしょ?」

「た、確かに…」

「それに、こんな風にビンとコルク栓の隙間をロウで固めれば、外から空気が入ることもないってわけ。だからビン詰めした食べ物は腐りにくいのさ」

「なるほど…」

「あ、因みにボクが聞いた話じゃ、この方法でミルクを保存したら6年経っても飲める状態だったらしいよ」

『えええ!?』

「まぁ勿論、保存するものによって差があるかもだけど、少なくとも他の街まで運ぶ間くらい余裕で持つよ。よっぽど雑にやらない限りはね」

「…そうだ!それじゃあ、開けるのはどうするんです?」

「開け方はまぁ、ロウでとめた部分を沸騰したお湯に浸けて、ロウを溶かしてからナイフで残ったロウを削って開けるのが良いと思うよ?」

 

大体質問が無くなったみたいだからということで、ボクは更に付け加えることに。

 

「あとさ、やっぱりビンって割れやすいのが難点だよね?そういうのが気になるなら、こんなのもあるよ」

 

そう言ってボクは口から缶詰を取り出す。

 

「カービィさん、それは一体?」

「缶詰って言うんだ。ガラスビンの代わりに金属製の缶に入れておくんだよ。あ、因みにこれに使われてるのはブリキって言う金属だよ」

「ぶりき???」

「…やっぱ知らなかったか。ボクもあんまり詳しくないからさ、大体の説明だけして後は専門の技術者でも呼んで調べてみてよ。あ、因みにこれの蓋を留めてるのは『半田』って言う金属さ」

 

ボクは素早く半田付け作業に必要な道具を一式取り出した。

一通り説明し終わったら全部譲るつもり。

 

「何か色々出てきましたね…」

「うん。で、この糸みたいに細いのが『半田』だよ。ロウと同じく溶かして使うんだけど、ロウと違って沸騰したお湯程度じゃ溶けないよ。だからこの『半田ごて』を使って溶かすんだ。そして、このスポンジは半田ごての掃除と温まり具合を確認するもの。後はっと…半田をよりくっ付け易くする『フラックス』、そして付け過ぎた半田を取り除く『ウィック』だよ」

 

半田ごてを使うには電気が必要なので、ボクはコンセントを探した。

カウンターの下にあったぞ。

…そういえばこの世界では魔法が中心となってるわけだけど、発電ってどうやってるんだろう?

街の明かりは蝋燭なのに……。

まいっか、取り敢えず半田ごてのプラグを差し込んで準備準備。

半田ごてを温め、適当な金属棒を用意して、ビン詰め同様に実演してみせる。

くっ付いた金属棒を、皆が不思議そうに見たり触れたり。

ビン詰めの時に開け方の質問が来たのを思い出したので、缶切りについても実演してみせた。

缶切り要らずで開けられるタイプやコンビーフの缶まで説明した時には、皆既に言葉が出ない様子。

ボクとしてもこれ以上質問に答えるのは流石に疲れるので、適当にその場を収めて宿に直行。

ゆんゆん達に質問攻めされるんじゃないかとも思ったけど、むしろ皆一言も語ろうとしない。

話が難し過ぎたのか、それとも凄すぎて言葉が出ないのか…。

兎に角その後は、ミュイと少々話した程度で1日を終えた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

翌朝、何となくギルドに足を運ぶと……何だろうアレ?

石工師と思しき人達が何かを作ってる。

と思いきや、ボクを見るなり呼び止めてきた。どうしたんだろう?

 

「カービィさん、ちょうどいいとこに!」

「…何してるの?」

「この街一番の事件を解決し、更には新たな技術を私達にくれたわけですから、その記念としてあなたの石像を制作することが決まったんです」

「ボクの像!?」

 

…まぁ確かに、この世界の人達からすればビッグイベントなのかもね。

というわけで協力することに。

モデルは「オーシャン」で、鉾を高く掲げてくれと言われたのでその通りのポーズをする。

その後も表情や手の位置など細かく指示されたけど、何とか昼前には自由に動けるようになって一安心。

改めて見ると…「オーシャン」の時のボクってどことなくポセイドンの格好と似てるね。当たり前だろうけど…。

そして鉾を掲げた右手、その反対側では…ビンを脇に抱えてる?

ビンは水晶で再現されてて、中にはユメクラゲの石像が。

ていうか水晶って何処で用意したんだろう…。

そして足元にはボクが教えた各種の缶詰と缶切り、そして半田付けセットが。

そんな時、ギルドにいた冒険者の1人が質問してきた。

 

「そうそうカービィさん、アンタのお仲間が妙な服装で浜辺にいたけど、アレは一体何なんだ??」

 

ゆんゆん達が遊んでるとこを見てたのか…。

そういえば水着とかのことは話してなかったな。

というわけで、海での楽しみ方も教えることに。

あるだけの水着やら何やらを出してね。男性用の水着もあってホントによかった。

水着の素材や性質に関しては皆興味津々。ま、衣服に関して興味持つのは当たり前だよね。

当然ながら子供達はビーチボールやスイカ割りに反応してたな。

でもって、石工師の人達もそれならばと、像のバックに海水浴道具を再現し始め、ついでにとジャイアントオクトパスやポセイドンまで盛り込む。

それで完成…らしい。

チョット詰め込み過ぎじゃない?とも思ったけど、周りの皆は満足そうだったので言わないことにした。

アクアがやきもち焼いたのと、石像の下の説明文には興味なかったので、ボクはしれっとミュイからユメクラゲの餌のことについて聞き出してその場をあとにする。

何しろ…ね♪




次回予告
海水浴から帰って早々、王都にお呼ばれしたカービィ一行。
アクセルでは謎のドラゴン出現に慌てふためく住人達。
更に王都には未曾有の危機が迫る!
そして、ゆんゆん達が見た“カービィが人生最初に見た光景”とは!?
次回「王都とアクセルは大乱戦」
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