【完結】ピンクの悪魔よ、この忌々しい世界に制裁を! 作:Mk-5
現に今回も気が付けば1ヶ月以上経ってるし。
それと今回のカービィは、今までで一番忙しいと思います…(汗)。
引き続き以下の注意事項があります。
①オリジナルキャラ多数追加
②キャラ崩壊
③設定ブレイカー
④パクリ要素
等といった可能性を大いに秘めています。それでも大丈夫という方のみ
ゆっくり読んでいってね~( -∀-)”ノ
ボク達がドックから戻った翌日のこと……。
今、ボク達はアイリスにお呼ばれして王都に来たわけだけど……ボクの目の前には放心状態のアイリスがいる。
「…アイリス?」
「………ハッ!すすすみません!あまりに話のスケールが大きすぎて…!」
…まぁ、そりゃそうだよね。
マクスウェルの一件に加えて魔王軍幹部を2人討伐。
更に海の神から新たな力を貰い受けた…って普通に考えたら活躍もパワーアップも度を越してるねこりゃ。
「あ、そうそう。忘れるところだった。…ハイ、これお土産だよ」
「お土産…ってこれは…!」
「あ、アイリスもユメクラゲ知ってたんだ」
「勿論です!食べたことはありませんが…」
「というかカービィ、ここに3匹いるということは、要するに8匹も捕まえてたってことですか?」
「うん」
「は、8匹!?」
「そうだよ。1匹で5人前だから内1匹はボクらで、4匹はギルドにいた皆におすそ分けしたの」
「おすそ分け…ですか!?それも幻の高級食材と知ってのうえで??」
「うん。ボクは別に食にこだわり持ってるわけじゃないからさ、よっぽど不味くなきゃ何でもいいもん」
ボクの言葉にアイリスが尊敬の眼差しを向けてくる。
そんなに凄いことなのかな?自分じゃ分からないや。
でも、クレアや他の護衛の人達が信じられないといった感じのリアクションしてるからには……まぁそういうことなんだろうね。
因みにミュイは、館で掃除婦として過ごしてるからここにはいない。
人魚だとバレるのを避けるため、それも自分から言い出したんだ。
ボクは形だけでも冒険者登録したらって勧めたんだけど、争いごとは好きじゃないんだって。
まぁ、ちょむすけが懐いてるわけだし別に良いんだけどね。
とここで、アイリスが何かを閃いたらしい。
「そうだ!カービィさん、新しく手に入れた魔王軍幹部の力、ちょっとここで見せてもらえないでしょうか?」
「というと……アレか~」
「ちょちょちょちょっとお待ちを、アイリス王女!!それはいくらなんでも危険すぎます!!」
「危険?」
「ええ!バニルは全てを見通せる大悪魔です。一旦能力を発動したら、他人の裏の考えなんかが否応なしに見えてしまうんです!心に裏表が無いカービィさんにとってはそのギャップが耐え難いものとなります!現にバニルとの戦いでもそれが原因で暴走しちゃったんですから…!」
「『フォーメーション・バニル』!」
「ってカービィさん、何を…!?」
「大丈夫だよ。よっぽどのことがなければアクアやめぐみんレベルのものに出くわすことはないだろうし、それに力を抑えれば余計なものまで把握しなくて済むよ」
「で、でも…!」
「ついでに言えば、相手の考えが読めるってのは物事を円滑に進めるうえで役立ったりもするだろうし。この際だから少しくらい、そういったことに自分を慣らしておきたいんだよね」
というわけで、まずはアイリスの内部を探ることに。
「…ふ~ん、アイリスってお兄さんがいるんだ」
「はい、そうです!」
「でもって~…そのお兄さんが中々かまってくれないのがちょっと不満。で、密かに自分にとって理想の兄さんと呼べる人を探してる…と」
「正しくその通り…です!」
しかもアイリスの中でその理想に一番近いのが…何とボクだった!
まぁ…今思えば、初めて会った時に色んな話を聞きたがってたけど、あの時点で既に候補として挙がってたのかもしれない。
加えてユメクラゲのおすそ分けの件が重なって、ほぼ盤石と化してるみたい…。
「アイリス王女がそのようなことを…ということは、何かにつけてお外に出たがっていたのも…?」
「そうだよクレア、自分の理想を追い求めようとしてたのさ。誰にだって追いたい夢はあるもんだよ。キミにだってそういう……っうはわわわわわ…!!」
ボクはクレアに意識を向けた途端、ショックでソファーから転げ落ちた。
そりゃそうなるよ!だって……。
「ど、どうしましたカービィさん!!?」
ボクはその場で数回深呼吸して気分を落ち着かせ、立ち上がって再度大きく一呼吸。
そしてダクネスの方を向いて静かに口を開く。
「……おめでとうダクネス。方向性は違うけど、変態の同志が見つかったよ」
「なぁっ!?」
ダクネスのリアクションは大体想像できた。
でも状況が状況だからね…仕方ないよ。
アイリスがボクに歩み寄ってくる。
「あ、あの~カービィさん、今のはどういうことなんですか?全然話が見えてこないんですが…」
「…これ以上のことはボクの口からはとても言えないよ。でも……これはアイリスに関係あることだからな…」
「私に…ですか?」
「…よし、ここは1つ、アイリスの口から語ってもらおう」
「そ、それは一体どういう…」
「ちょっとゴメンね。ホイっと!」
「え?」
ボクはアイリスの顔に仮面をくっ付けた。
「あわわわわ…か、カービィさん!何てことを!」
「こ、これは一体!?何が起きて…!?」
「く、クレア、落ち着いて聞いて欲しい。今、カービィはアイリス王女に憑りついたんだ」
「と、憑りついた!?」
「そう。魔王軍幹部のバニルは、今みたいに仮面をくっ付けた相手に憑りつくことができるんだ!」
「何ぃ!??」
「と、というか何故カービィはいきなり王女様に憑りついたんです!?」
「(……なるほど、そういうことでしたか…)」
『!!??』
アイリスが静かにそう呟く。
「ちょ、これは一体!?」
「今の明らかに王女様の声じゃない!何でこんなことが?」
「声?声がどうかしたのか?話が見えないぞ!誰か説明してくれ!」
しょうがないよね。クレアはバニルのことをよく知らないわけだし…。
するとここで、めぐみんが口火を切った。
「え、えーとですね…バニルの時もそうだったんですが、基本的に憑りつき支配した相手を通して喋る場合、憑りついた本人の声になるんです!憑りつかれた人の声が出るのは、支配に抗った場合のみなんです!つまり、今のアイリス王女はカービィに憑りつかれているにもかかわらず、自らの意思で喋っているということなんです!」
「そういうことだよ。珍しくマトモなこと言ったね、めぐみん」
「あっカービィさんの声だ!」
「珍しくって何ですか!私は何時でも正常です!!」
「それじゃ尚更質が悪いよ」
「んな!?……いやそれより、何だって王女様に憑りついたりしたんですか!?」
「さっきも言ったじゃん。これはボクの口から言うには荷が重すぎるんだよ (そうですね…しかし、そのままにしていい問題でもありません。ましてやそれが私に大いに関係することとあっては…)」
「王女様に関係する?どういうことなんです?」
ゆんゆんの質問には答えず、アイリスはクレアをキッと睨んだ。クレアは訳が分からないといった感じで目が泳いでる。
そんなクレアをビシッと指さして、アイリスは語り出す。
「(クレア…アナタにはガッカリです!まさか、この私を自身の変態的欲求を満たす為の道具にしていたなんて…!)」
『へぇ!!??』
予想外の一言で、周りにいた皆の視線がクレアに注がれる。
「…ちょっとお待ちください王女様!ハ、ハハッ…いきなり何をおっしゃいますか。私は」
「(シラを切ろうとするんじゃありません、クレア!!カービィさんのこの仮面を通し、今の私には貴方の全てが見えています!どう誤魔化そうとも無駄ですよ!!)」
「…………………………………………!!」
クレアの顔から徐々に血の気が引いてくのが嫌でも分かる。
そして他の皆は固唾をのんで様子見中。
「(そもそも貴方は、生まれながらの同性愛者…いわゆるレズビアンだそうですね!加えて腐女子要素も少々。貴方が私の身辺警護を志願したのは、6割方が自分のその特殊な性的欲求を満たす為だった!そしてそれが叶うと、今度は毎晩寝付く前に、私を使って淫らな妄想にふけっているみたいですねぇ!因みに昨晩は…私を乳飲み子に見立てて育児の真似事、でしたよね?)」
クレアは声も出ずに頭を抱えながらその場にへたり込む。それも尋常じゃないくらいに身震いしながら。
ボク自身、これは全部聞いてたらまたおかしくなりそうな内容なので、必死に聞き流して耐えてるわけ。
アイリスはそれに気付いたのか、これ以上は明かさないことに決めたらしい。
「(これでようやく分かりましたよ…何故貴方がララティーナさんとあれだけ親しくできたのかを。それは、本能的に仲間意識を感じたからです。ララティーナさんは、人跡未踏のレベルでマゾを極めておられるようですから、確かにカービィさんの言う通り、方向性は違えども“変態の同志”であることは揺ぎ無い事実です!)」
アイリスの言葉に、ダクネスの顔は複雑な表情と化した。
実家で暴露した甲斐あって、変態呼ばわりされることには喜びもしなけりゃダメージ負ってるわけでもないみたい。
でもやっぱり、自分の口からそれを認めるのは抵抗があるよね。
「(んっ……う~ん、そうですね…どうしましょうか?)」
「え?こ、今度はどうしたんですか?」
「(ん、ああ、私の中でカービィさんが聞いてきたんですよ『それを踏まえてクレアを今後どうするの?』と。ですので今考えているんです」
それを聞いて、急にクレアが正気を取り戻し、何かを訴えるような眼差しをアイリスに向ける。
でもアイリスは目もくれずに思案六法。
…いや、公正な判断を下すためにあえて無視してるみたい。
「(……そうですね、少なくとも夜這いしたり、私の身の周りの物に手をつけたりはしていないようですし、今まで私のために尽くしてくれたことは確かです。よって…実際に事を起こさない限りにおいては、今回の件は不問にしたいと思います)」
これを聞いてクレアは心底安心したらしく、再度脱力したかと思えば緊張の糸が切れてそのまま気を失った。
他の護衛達がクレアを介抱するのを見届けた後、アイリスが再び口を開く。
「(申し訳ありませんカービィさん…必要だったとはいえ、聞きたくもなかったであろうことをこれでもかというほど喋ってしまって…)」
「いいよアイリス…これでも少しは慣れてるから…」
「(それと…感謝もしています。『敵は身内にいるかもしれない』ということを、身をもって知る良い機会になりました。これで私、また少し大人に近づけた気がします)」
ボクはアイリスの中から出た。
そして能力を解き、ソファーで一息つく。
その間、部屋の中は静寂に包まれた。
今までのやり取りに関して口出しする人は誰もいない。
ボクとしてはその方が存分に気を楽にできるから願ったり叶ったりなんだけどね。
そんな時間が少し経って、衛兵さんが部屋に入って来た。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「王女様、冒険者新聞の記者の方がお見えになっております」
「記者…ですか?」
「はい、何でもドックの件で、カービィさんからお話を聞きたいとか…」
ドックか…。
向こうじゃ水着やら缶詰やら、兎に角色んなものを伝えたわけだけど、ボク自身そういった方面の専門家じゃないから詳しいことは分からない。
それでも記事のネタにすべく質問攻めにする気なんだろう。
そう思うと今から気が滅入る…。
すると、アイリスはそれを察したのか、予想外のことを切り出した。
「では、どうせですからここにお呼びしなさい。私もカービィさんにお話ししたいことがまだ残っていますし、カービィさん自身、色々あって少々お疲れのようですから」
考えてみれば合理的だよね。
アイリスは、ボクにとっては気軽に話せる友達の1人だけど、他の人達からすればこの国の王女様。
彼女の前では流石に派手に振舞うことができないってわけだ。
それにしても色々あって…か……おっと、それより応対の準備しなきゃ。
間もなくして応接間に数人の記者が入ってきたわけだけど、王女様の目の前で取材って形だからなのか、終始アイリスの顔色をうかがいながらの静かな質疑応答が進行。
すっかり調子が狂った記者達は割と直ぐに退散し、ボクは再度一息つく。
ここでボクは、何気なく冒険者カードを見た。ハンス討伐した時にレベルの確認してなかったからね。
で、レベルは15のまま……だけどそれ以上に驚いたのは、スキルの一覧に新しいのが3つ追加されてたことだ。
「…何これ?…『セイクリッド・エクスプロード』とか『エクステリオン』とか…」
「ええ!?か、カービィさん、今何と…??」
アイリスが慌てた様子でボクの冒険者カードを覗き込んでくる。
「…何てこと…!これは紛れもなく、我が王家のスキルじゃないですか!!」
「へ?ってことは普通じゃ習得できないってこと?…『ポンッ』そうか!さっきアイリスに憑りついた時、習得可能になっちゃったんだ!」
「おお、そう言えばアクアに憑りついた時にもそんなことがあったな…」
「あ、確かに…まいっか、とりあえず習得してっと。ねえアイリス、この3つはどんなスキルなの?」
「え、えっとですね…まずこの『エクステリオン』は、光属性を帯びた巨大な斬撃を飛ばすもので、こっちの『セイクリッド・ライトニングブレア』は、白い稲妻と光の奔流を相手に落とす魔法です」
「なるほど…」
「そして最後の『セイクリッド・エクスプロード』ですが、光の力を剣に帯びさせて繰り出す斬撃です。恐らくドラゴンも楽に切れるかと…」
「そんなに凄いんだ…」
「ちょっと待ってくださいよ!何ですか『セイクリッド・エクスプロード』って!我が爆裂魔法とカブってるじゃないですか!!」
悪い意味で爆裂魔法一筋のめぐみんが突然食って掛かる。
「あ、そういえばそうだね…で、それが何か問題なの?」
「問題しかないでしょう、カービィ!!我を最強の魔法使いへと導く最強魔法と似た名を付けるなど言語道断!!爆裂魔法への侮辱は私への侮辱と同罪です!!!」
「どんな理屈だよ、もう……」
「それだけならまだしも、私には“爆裂魔法を超える魔法を自らの手で創造し、『セイクリッド・エクスプロージョン』と名付ける”という壮大な計画があったのに…!」
「あのさめぐみん…キミのそれは爆発で、こっちは斬撃だよ?例え唱え間違いしたって、余計に魔力消費するとかいうことは無いじゃんか。そもそも攻撃の種類が違うんだから」
「似た字面なのを気にしてるんですよ私は!!」
「ハァ…だったら名前も差別化すればいいじゃない」
「名前も差別化?」
「考えてみなよ、上位版の技だから頭に『セイクリッド』と付けなきゃダメって決まりは無いでしょ?例えば最上級の破魔魔法は『セイクリッド・ハイネス・エクソシズム』だから、その間からとって『ハイネス・エクスプロージョン』とかでも良いじゃないか」
「良くありませんよ!何ですか『ハイネス・エクスプロージョン』って、ダサすぎます!!」
「なら他のネーミングでも考えたら?『スーパー・エクスプロージョン』とか『ハイパー・エクスプロージョン』とか…」
「んん!?……スーパー…?それです!私が作りたい技にぴったりの名は!『セイクリッド・エクスプロージョン』だと、実は内心微妙だと思っていたんですよ!『スーパー・エクスプロージョン』…うむ!技名はこれに決定!!」
何だかよく分からないけど、とりあえず「スーパー」というワードが紅魔族の感覚にジャストヒットしたらしく、この話は終結した。
すると、今度はゆんゆんが口を開く。
「あ、あの~カービィさん…ちょっといいですか?」
「ん?どうしたの?」
「さっきから気になってたんですけど…カービィさんが背負ってる剣…何か光ってる気がするんですけど……」
「え?」
抜いて確認してみると…確かに青白く光ってる。
けど一体どんな意味があるんだろう?
試しに揺らしてみると、時折光が強くなるんだよね。
で…結論としては、一定方向に向けると光が強くなるってことが分かった。
それも床下の方だ。
「……もしかして、この先に何かがあるのかな?」
とここで、アイリスが突然ハッとなりソファーから立ち上がる。
「まさか……アレに反応しているのかも…!」
「アレって?」
「…兎に角ついてきてください」
アイリスに言われるまま、ボク達がやって来たのはお城の地下。
宝物庫と思しき薄暗い部屋の最深部でアイリスは立ち止まった。
その先にあったのは…壁に掛けられた眩いばかりの白い光を放つ剣。
「アイリス、この剣は何?」
「これは、我が王家に伝わる伝説の剣です。王族といえど、あのスキルはこの宝剣なしには発動できないんです」
「え、そうなの?」
「はい。恐らくカービィさんの剣は、これに反応したものと…」
「ボクの剣が…って…!」
宝剣の光のせいで気付かなかったけど、ボクの剣の光が鞘越しに漏れ出してるし!
抜いてみれば、宝剣と同じくらい青く光ってる。
「うわまぶしっ!何なのよその剣は!?」
「分かんないよそんなの……あっ、そういえば」
「どうしました?何か思い当たることが?」
「…これ買った武器屋の人がこう言ってたんだ『この剣は、持ち主に応じて進化する』って」
「そ、そういえばあの男、そんなことを言っていたな確か…」
ダクネスの言葉を最後に、ボクの剣は光を失った。
進化し終わったってことかな?
「あれ?何か急に光らなくなりましたけど…一体今のは?」
「…多分進化する時にでも光るんだろうねこの剣。…ってことは、この宝剣なしでもスキルが使えるようになったのかな?あとで試してみよっと。ところでアイリス、この宝剣は何て名前なの?」
「これですか?……よく分からないんですよ。『なんとかカリバー』…としか…」
「なんとかって何!?自分とこの剣なんでしょ!?」
「そう言われても、伝え聞いた時から既にそういう呼び方でしたので…」
「ええ!?ってことは何?結構前から正式名が分からずじまいってこと?」
「はい…」
「……どうせ『エクスカリバー』とかいう感じじゃない?」
「え、エクス……カリバー…ですか?何故その名が何の脈絡もなく出てきたんです?」
「何故も何も、伝説の剣で『カリバー』が付く名といえば、それくらいしか考えられないし…」
「ですから何故そうなるんです??」
なるほど…まずはそこから説明しないとダメか。
ボクは口の中から1冊の本を取り出した。
「あの…それは?」
「『アーサー王の伝説』っていう小説だよ。この本の中に『エクスカリバー』って名の剣が登場するんだ」
すると突然、ダクネスを筆頭に紅魔族2人が食いついてきた。
「お、おいカービィ!この本、古代文字で書かれているじゃないか!」
「は?古代文字?」
「うわ~ホントに古代文字がびっしりですよこれ!」
「か、カービィさん、これ読めるんですか?」
「いや読めるも何も、プププランドじゃ普通に使われてる文字だし…。ていうかボクに言わせれば、これを古代文字として扱ってる方がビックリだよ!」
…とは言ったものの、今思えば伏線みたいなものはあったね。
デストロイヤーの開発者が遺した、古代文字で書かれた紙の中に混ざってたあの記録が…。
「…まぁとにかく、エクスカリバーはここに出てくるよ」
そう言ってボクはドックイヤーしてあるページをめくると、口からペンを取り出して「エクスカリバー」と書かれた部分をペンで四角く囲み、その右隣にこの世界の文字を書き足した。
一応これで分かってもらえるだろう。
「なるほど、カービィが枠囲みした部分…ここに古代文字で『エクスカリバー』と書かれているのか」
「そうだよダクネス。あ、因みにだけど、この話に出てくるエクスカリバー、普段は石に刺さった状態で封印されてて、王族の正統な後継者以外は引き抜けないらしいよ」
「つまり、魔法の剣ってことですか?」
「そうだね。本にも書いてあるけど、鞘を身に付けるだけで一切傷を負わなくなるらしいし」
「一切傷を負わない!?それってつまり無敵ってことじゃないですか!」
「無敵かどうかは分からないよ?少なくともこのお話には魔法や呪いの類が出てこないから、そっち方面に対してもノーダメで済むかは分からないし…」
「そうですか…」
「ま、とりあえず部屋に戻ろうよ。まだ話したいことがあるんでしょ、アイリス?」
「あ、そうでしたね!」
てなわけで、ボク達は部屋に戻って話の続きをすることに。
「それで話の続き…というよりかはむしろ、ここからが本題でして…」
「ん?」
「実はつい数日前、この付近で謎のドラゴンが目撃されまして」
「謎のドラゴン?」
「はい。ドラゴンは本来、縄張りとする領域から出ることはまず無いので、恐らく最近になってこの近くを縄張りとしたか、もしくは縄張りを持たない“はぐれ者”と推測されています。これだけならギルドに討伐依頼を出せば済む話なんですけど…」
「けど?」
「……信じられない話ですがそのドラゴン、複数の頭を持つらしいのですよ」
聞いた途端、ゆんゆん達は絶句するほど驚いてたけど、どういうことなの?
「どうしたのさ皆?何で複数の頭持つことにそんな驚くの?めぐみんが以前討伐した大蛇だって頭が2つあったじゃん。ならドラゴンにだって、いてもおかしくないんじゃない?」
「いやいやいやいや!確かにあの時の大蛇はそうでしたけど、そもそも複数の頭を持つモンスターはごく限られているんですよ!ドラゴンにはまず存在しないはずなんです!」
「そうなんだ…じゃつまり、そのドラゴンについて調査してほしいってこと?」
「はい、その通りです!」
「う~ん、それじゃ取り敢えず情報収集から始めよう。ついでに武器屋も覘いてさ!」
「武器屋へ?」
「そうだよ。ドラゴンの正体が分からないわけだし、せっかく予算があるんだから、この際みんなの武器とか新しくした方が良いと思うんだ」
「ああ、そうですね!今思えば私達の装備って、初期からずっと変わってなかった!」
「た、確かに!今まではカービィを空腹にさせないよう無駄遣いは避けてきましたけど、今は予算が十分あります!新しい杖の1本や2本、問題無いですよね!?」
「おいおいちょっと待てお前達!いくら予算があるといっても、今この場に持ち合わせているわけじゃないだろう?」
2人はハッとなる。
「問題ないよ。だって銀行は既にテレポート欄に登録してあるから。後は良さげな店が見つかったらそこの前を登録して、銀行にテレポートしてお金を引き落として、また戻ってくれば良いだけだから」
そう言うと2人は途端に顔色が良くなる。
分かりやすいな。
「そ、それじゃあ私もそろそろ新しい剣が欲しいのだが…」
「いいけど買うのは後回しだよ?当てられないのに持ってたってしょうがないもん」
「うぐっ…!」
「取り敢えず候補を選ぶくらいなら許可するからさ、それより鎧の方をどうにかしよう。バニル戦の時から分かってたことだけど、ダクネスって結構足遅いじゃない?だから重い鎧着てたら単なる悪循環になっちゃうよ。だから今のより軽くて、できれば今より丈夫なのを探そう!」
「く…わ、分かった……」
というわけで早速行動開始……とはいかなかった。
魔王軍撃退の宴をきっかけとした“大道芸ブーム”が未だ冷めあがっておらず、広場は大道芸人と観客でひしめき合ってる。
そんな中、1人のマジシャンに呼び止められたわけだけど…。
「あ、カービィさん!すみませんが、ちょっとこちらへ…」
「ん?何?」
相当もったいぶった言い方で呼び出した彼だけど、披露したのは選んだカードを当てるという、プププランドではごく普通のもの。
とはいえ、この世界では新しい部類なんだろうね。
皆が感心してるもん。
でしかも、このマジシャンがいかにも「こんなことできないでしょう?」みたいなドヤ顔してきたので、仕方なくボクもやることに決めた。
「それじゃ今度はボクの出番だね!『マジックカービィ』!」
この時点でマジシャンはギョッとなったけど、ボクは無視して続けた。
そのマジシャンに、トランプの中から1枚選んでもらってボク以外の周りの人に見せ、そして戻してもらってシャッフル。
ここまではさっきと同じ。
でも、ボクはここに1手間加えることを既に決めてるわけで。
「さて、これで選んだカードが何処にあるか分からなくなったね…でも、探すのはボクじゃないよ?…ここに2枚のジョーカーがある。今からこのジョーカーに、彼が選んだカードを探してもらいます」
マジシャンを含めた周りの全員が、目玉が飛び出るんじゃないかってくらいボクを凝視する。
そんな中でボクは、裏向きのトランプの山の1番上と1番下にジョーカーを表向きにセット。
そしてボクが1番上のジョーカーを擦るように手を通過させると、1番上は裏向きのカードになる。
「これは別に消えたわけじゃないよ?今この中で、2枚のジョーカーが彼の選んだカードを探してる最中だから」
そう言った後、途中経過を確認するため、2回ほどトランプの山を広げて見せた。
その度に2枚のジョーカーの間にあるカードが少なくなってるので、それを見る度に驚きの声があがる。
そして運命の3度目。
「……どうやら探し終えたみたいだね」
2枚のジョーカーの間にあるカードは1枚。
ボクはそのカードをマジシャンの方に少しだけずらす。
「さ、ジョーカーが見つけたこの1枚…これが彼の選んだカードだったら成功だね。因みに、さっき選んだカードは?」
「……スペードのジャック」
「オッケー、じゃあそのカードをめくってみて」
マジシャンが恐る恐るカードをめくると…間違いなくスペードのジャックだった。
これには皆、拍手喝采!
ついでにゆんゆん達は開いた口が塞がらない様子。
マジシャンの方はというと、落ち込んだり悔しがったりするどころかむしろ諦めてる感全開だ。
1度負けたくらいでそれはないと思うな。
で、周りの人達が他にもやってくれ的なことを騒ぎ立ててきたのとほぼ同時に、とある広告が目にとまった。
リンゴが入ったバスケットの絵…これを見たボクはあることを閃いた。
ボクは一目散にその広告の所まで走っていく。
そして広告を手に取ると、その場で上下にブンブン振る。
「そんなことしたってリンゴは出ないよ?」
みたいな声や苦笑いがおき始めたのを見計らい、
ボクはわざとムッとした顔をした後、広告を大きく振る。
「ふんぬっ!!」
すると、広告からリンゴの絵が消えて本物のリンゴがバスケットごと地面に落ちる。
「えええ!?」
「ど、どうなってんだよ!?」
「ちょっと待って何が起きたの今!!?」
みたいな感じでざわめく皆をよそに、ボクはリンゴを一気食い。
皆不思議そうに目を丸くして、何もない紙を触ったり裏返してみたりと大騒ぎ。
ボクに注意が行ってないのを確認し、ゆんゆん達を連れてその場を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その後は住人達にドラゴンのことを聞いて回ったんだけど、有力な情報はなし。
でもその代わりに、品揃え豊富な王都一大きい武器屋の場所が聞けたので、ボク達はそこへ向かうことに。
確かに品揃えは豊富だけど、その分どれも高価なものばかり。
一番安くても数千万エリスからというんだから相当なもんだね。
でもボクとしては装飾品の方を見たかったので、そっちの方も品揃えが充実してて良かったよ。
おススメを聞くために店の主人を呼んだ。すると……
「…!何時会えるかと楽しみにしていましたよ、カービィさん」
「?ボクを待ってたの?」
「ええ。世界広しと言えども、『“真の”オールラウンダー』を職業とするのは、今のところあなたぐらいのものですから…。そして丁度、そんなあなたにピッタリの自信作が仕上がっております」
そう言って主人が持ってきた、如何にも守りが厳重そうな箱。
その中にあったのは……腕輪みたいだ。
でも変だ…2つに分かれててくっ付いてない。
「ねえ、どうしてくっ付けてないの?」
「そうしなくても使えるようにしてあるというだけですよ。何せこれは、“2つで1つの”腕輪ですから」
「???」
「え~まずこちらの赤い方は『オールマイティアタッカー』と申しまして、言ってしまえば攻撃に関係する“全てを大幅に”強化するものです。身体スペックはもちろんのこと、物理・魔法の全攻撃力が底上げされますよ。例えばアークウィザードの魔法であれば『威力アップ』と『高速詠唱』が初めから、幹部討伐の取得ポイント全てを注ぎ込んだくらいには付与されるはずです。そしてこちらの青い方は『オールマイティディフェンダー』。こちらは防御に関係する“全てを大幅に”強化するものです。単に防御と言えど、回避や回復等も含んでおりますので、身体スペック上昇ではオールマイティアタッカーと被るものもあります…逆に言えば、両方持っていれば上昇率も上がるということですがね。当然ながら、アークプリーストの支援魔法だって効力が上がること間違いナシです」
「へ~、神器並みに凄い腕輪なんだね……って近っ!!」
いつの間にか、ゆんゆん達がボクの隣…というか周りで目を輝かせながら腕輪を凝視する。
でも…
「やっぱり値段張るんじゃないの?」
「まぁそれなりには…」
そのやりとりで途端に皆、ハッとなって見て見ぬフリを始めた。
取り敢えず試してみる価値はあると思ったボクは、主人に頼んで裏庭を使わせてもらうことに。
まずアークウィザードの攻撃魔法とアークプリーストの支援魔法を素の状態で試してから、今度は腕輪を付けた状態で同じ魔法を使ってみる。
……主人の言うことは誇張でも何でもない!腕輪の性能は正真正銘の本物!
想像以上の強化具合だよ。
ついでに斬撃のキレも、分かり易過ぎて困るくらいの強化ぶりだ。
何よりも、敏捷性の強化が著しい。
攻撃と回避、両方に必要なものだから2つそれぞれが強化してるってわけか。
まさに「相乗効果」ならぬ「相乗強化」だね!
できれば買いたいなこれ…。
そんでもって、ゆんゆん達のことも主人に話し、合いそうな装備がないか聞いてみた。
すると主人は待ってましたと言わんばかりに、店の奥から色々持ってきた。
まず、めぐみんには『爆裂の杖』と呼ばれる…ホントに爆裂魔法を撃つため“だけ”に作られた、アダマンタイトとマナタイトの合金製杖がおススメだと言う。
続いてアクアには『救いの首輪』。
支援・回復魔法の強化に特化したアイテムで、まんまアークプリースト用だ。
ただ…どういうわけか首輪から鎖が伸びてるのが気になるんだよね…勿論アクアも。
「言うことを聞かない問題児にはこういったものが必要だと思いましてね~?『救い』にはそういう意味も込めております、はい」
それが主人の答えだった…ていうかこれ、絶対嫌味が半分くらい混ぜられてるよね?。
やり過ぎじゃないかとも思ったけど…主人の言動のせいか、それでも必要じゃないか、な~んて思えてしまう。
アクアが怒り心頭で睨みつけても、主人は当然でしょといった感じの視線を送るばかり。
因みにゆんゆんとダクネスはというと、それぞれオールマイティアタッカーがはめ込まれた杖とオールマイティディフェンダーがはめ込まれた鎧を勧めてきた。
「…で、結局これらはいくら位するの?」
「ああ、その件ですが…カービィさんが“最初のお客様”ということですので、こちらの腕輪…今回に限り8割引きの3億エリスでお取扱いしたいと思います」
「8割……要するに、本来は15億エリスってことか…」
「「「「じゅっ15億!!??」」」」
因みに、めぐみんとアクアのものはどっちも4億エリスだって。
腕輪を組み込んだ装備は高くなると思ったんだけど、主人は杖代・鎧代は結構だと言う。
…要はボクに、お得意様になってほしいってことだよね?
ということで支払額は14億エリスとなり、ボクは早速店の前をテレポート欄に登録し「エスパー」で銀行に直行。
すぐさま現金を引き出して支払いを済ませた。
微妙な顔のアクアを除けば、皆今回の買い物に大満足みたい。
…あ、ついでにめぐみんの「変な喜び方」も除こう。
で、ボクは早速腕輪を付けてみた。せっかくだからということで「流星の腕輪」と同じ左腕にね♪
するとどうだろう?
2つの腕輪が突如輝き出したかと思えば、買った腕輪が「流星の腕輪」に取り込まれ、1つに融合しちゃったんだ!
…まさか、神器にも自ら進化する力が備わってるの?
な~んて思ったけど、アクアの反応からしてその線は無さそう。
だとすると…また背中の剣のせい?
………まいっか。取り敢えず良い買い物ができたってことで、謎のドラゴンに関する情報収集を再開しよう。
と思ったけど、3日費やしてもなかなかうまくいかない。
だって情報が少なすぎるんだもん。
でも諦めかけてたある朝、ある男の人が1つだけ有力な情報を持ってたんだ。
「そのドラゴンがアルカンレティアの方向へ飛んで行ったと、たまたま途中まで道を同じくした男が言っていた」
ボク達は話の真相を探るべく、すぐさまアルカンレティアへ。
邪教の親玉も気が気じゃないみたいだしね。
街に着くと…住人達、要するに「救いようのない、この世の終わりの化身たる、人でなし集団」の皆さんが絶望に満ちた顔であたふた・右往左往・ドタバタの大騒ぎ。
教会に行ってみろと言われたので行ってみたら、教会が半壊してたんだよね。
アクアも唖然茫然。
その場に足から崩れ落ちた。
取り敢えず詳しい状況を探るべく、ボクは上空から教会を見ることにした。
「お前…自力でも飛べたのか…!」
「あれ?知らなかったの?魔王軍襲撃の状況を探る時にも使ってたんだけど…」
「いやいや、我々がカービィを見たのは飛んだ後でしたから…」
それはともかく…酷いねこりゃ。
「…これ凄いことになってるよ。燃えたような跡はあるけど、内部の瓦礫から察するに…間違いなく何らかの爆発が起こったみたいだよ」
「爆発ですか!?となると爆裂魔法とかその辺り」
「いや、違うと思うよゆんゆん。だって、爆発系の魔法は確かにこんな感じの爆発を起こせるだろうけど、ここまで激しく燃えたりしないよ!ましてや教会の石壁なら尚更ありえないよ」
「あ、い、言われてみれば確かに…」
「だとすると、これは一体………ん?何だアレ!?」
教会に最も近い防護壁、その先にも同じ様な爆発跡が!
しかもそばには文字をかたどった焼跡がある。その内容は…
『邪教蠢くアルカンレティアとその創造主には 必ずや天からの誅罰が下るであろう』
…何のことなのかよく分からないけど取り敢えず分かったのは、教会を半壊させた奴は本気でここを攻める気はなく、あくまで警告が目的ということだ。
もしこれが例のドラゴンの仕業だとすると、この世界のドラゴンとしてはあまりに格が違いすぎる!
エンシェントドラゴンでさえ、そこらのドラゴンの強化版でしかなかったのに…言葉が分かって文字を書けるなんて普通に考えたらありえないことだよ。
だけど、ギルドの冒険者達にこのことを話して確認をとってみたら…例のドラゴンの仕業で間違いないらしい。
そのドラゴンが街の外で火炎を放ってたのを見たって人がいるからね。
ボクは更に質問する。
「それで、ドラゴンがその後何処に向かったかは分かる?」
「え、え~と…確かあっちの方角へ飛んで行ったぞ。この地図でいうと~………そうだ間違いない!この方角だ!」
「この方角……ってちょっと待って、この先にあるのって……!」
この後ボクが言いたいことが分かったゆんゆん達は、一瞬言葉を失う。
そりゃそうだよ。なんせドラゴンが飛んでった先にあるのは…。
「「「「アクセル!!!!」」」」
「何てことだ…!アクセルが危ない!!」
「か、か、カービィさん!は早く戻りましょう!」
「勿論そのつもりさ!『エスパーカービィ』!」
間に合うかどうかは分からないけど、せめて現状の確認だけでもしとかなきゃ!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
で、アクセルに戻ってきたわけだけど…。
特に被害は出てないみたい。
もしかしてまだ来てないのかな?
念のためにギルドに足を運んでみると…何やら重苦しい空気が立ち込めてるぞ。
ボクは受付のお姉さんに話を聞いてみた。
「ねえ、皆どうしちゃったの?この張りつめた空気…」
「ああ、謎のドラゴンがマンティコアの岩山に向かったとかで、皆今後の動向を気にしているんですよ」
「ドラゴンが!?」
「は、はいそうですが…何か?」
ボクはこれまでの経緯をざっと話したうえで、更に確認をとる。
「ねえ、そのドラゴンって頭が複数あるとか、そういうことはない?」
「頭が複数?…そういえば誰かがそんなことを言ってましたね。まぁ見間違いでしょうけど…。ところでカービィさん、そんな話何処で聞いたんですか?」
「王都でアイリス王女から聞かされたんだよ!王都付近でも目撃されてるって。で、ボクに調査してほしいって直々に頼まれたんだ」
「な、何と!!そ、それじゃあアルカンレティアを襲ったのは…」
「多分同じドラゴンだろうね。アルカンレティア襲撃の後、この街の方へ飛んでったらしいから」
たちまち周りにいた冒険者達に緊張が走る。
何せアルカンレティアを平気で襲うような危険なドラゴンが、マンティコアがいた例の岩山に潜んでるかもしれないわけだからね。
「そ、それでカービィさん…これからどうするんです?」
「取り敢えず、まずはアクセルの守りを固めなきゃね。ダクネス!門番を含めた、アクセルを守る任務に就いてる人全員に警戒を怠らないように言っといて!」
「分かった!」
王都で買った新しい鎧のせいか、飛び出したダクネスの足取りは以前より軽く見えた。
『オールマイティディフェンダー』の敏捷性強化はだてじゃないってことか…。
「えっと~カービィさん、私達はどうすれば?」
「ああ、ゆんゆん達はギルドに待機しといて。その間、ボクは岩山の様子を探ってくるから!」
「ええ!?1人で行くんですか?」
「うん。ドラゴンの正体がまだ分からないから、あくまで様子見するだけ。こういう時は、単独の方が目立ちにくいし、いざって時に逃げ易いからね。それじゃ頼んだよ『ワープスター』!」
ボクはワープスターに乗ってから岩山までテレポート。
ワープスターは何かと小回りが利くからね!
…今のところ、岩山には特に異常は見当たらない。
まさかとは思うけど、横穴に身を潜めてるとか…はないか。
すると突然、巨大な影がボクの周りを覆った。
ボクは即座に逃げようとしたけど……よく見たらこの影…どっかで見たような…。
そう思って振り返ると、その先には…
「!!…キミはっ…!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その頃、アクセルでは…
「全く!あのカービィは何を考えてんだか…!」
「どうしたんですか、アクアさん?」
「どうしたもこうしたもないでしょ!?アイツ今まで散々他を圧倒する力を披露しときながら、なかなか倒そうとしないじゃない!」
「…分かってないですね。それはカービィさんが、あなたと違って“自分の力を過信してない”からですよ!」
「はぁ?」
「この世に絶対なんて存在しない、カービィさんはそれをよく分かっているんです。だからこそ、滅多に周りに自分の能力をひけらかそうとはしませんし、敵と戦う時には勝てる確証を得るないし勝つ方法を見出してから行動に移す!それこそが、ジャイアントトードに何度も自ら食べられに行くアクアさんとの大きな違いです!」
「ん~~~~~~…!」
「言われてみれば確かにそうだな…。今までの戦い…特に魔王軍幹部と戦う際、アイツは必ず“事前に敵の情報を仕入れる”か“実際に対峙して出方を見てから行動に移る”のどちらかを実践していた…」
「そういえばそうですね!考えてみれば、カービィが『先手必勝!』的なことをしたのって、見たことありません!少なくとも幹部戦では1度も…」
『…………ォォォォォォォ…!』
「んん?何よダクネス?」
「はぁ?いきなり何だアクア!私は何も言ってないぞ!」
『………ォォォォォォォン…!』
『……ッサバッサバッサ!バッサ!!バッサ!!!』
「ちょ、ちょっと…?だ、ダクネスじゃないとすると…」
「ま、まさか…!」
ゆんゆん達が見上げた時、頭上を巨大な影が風切音と共に通過。
その瞬間、アクセルの住人達が騒ぎ始める。
影はアクセルの出入口寄り、建物が一切無い原っぱの方へ向かい、ゆんゆん達は他の冒険者達を追う形でその場所へ向かう。
『『『『グガアアァァァオオオオォォォォォォンン……!!』』』』
大きな地響きと共に原っぱへと降り立った影は、天に向かって咆哮する。
その正体は……真っ赤な体のドラゴン。
勿論、ただのドラゴンじゃない。
「なっ……何なんだこのドラゴンは!!?」
「あ、頭が4つも…!しかも…夢じゃない!!」
「ひっ、ヒイィィィィィィィィィ……!」
「ちょ、ちょっとアクアさん!私の後ろに隠れないでくださいよ!……んん?あ、あれは!」
「ど、どうした、ゆんゆん?」
「ちょっと見てくださいよ!ドラゴンの頭の上!」
「頭の上?」
ゆんゆん達が見上げた先、そこにいたのは…。
「「「………カービィ!!??」」」
頭の上で手を振るボクに、割と早く気付いてくれた。
またスルーされるかと思ったよ。
「おいカービィ!何でまたドラゴンの頭なんかに乗っているんだ!?まさか、ジャイアントオクトパスに続いてドラゴンとまで仲良くなったのか!?」
「違うよダクネス、もっと古い付き合いさ!『ランディア』って言うんだよ。プププランドのはずれにある火山に住んでるの」
「まさかのカービィさんの知り合い!?」
「カービィ…ホントに貴方は一体何者なのよ!?」
「そんなことより、ランディアがさっきからゆんゆん達と戦いたいって言ってるんだけど?」
「戦いたい?」
「うん。まぁボクとランディアとは…ちょっとしたライバル関係的なものでもあるからさ、ボクのパーティメンバーであるゆんゆん達に興味を持ったみたいなんだよね」
「おいちょっと待て!それは確かなのか、カービィ?」
(確かに言ったぞ)
「んっ…な、何だ今の声は!?」
「いや、声というより……心に直接語りかけてきたような…」
「そうだよ、ゆんゆん。ランディアは喋れないけど、テレパシー的な力で自分の気持ちを相手に伝えることができるんだ」
「ほほう、それはいいことを聞いたわ。ならそこのランディアとやら、私の問いに答えなさい!アルカンレティアの教会を壊したのはアンタなの?」
(教会?というとアレか?アクシズ教徒とかいうクズ共の本拠地のことか?なら確かにやったな。警告文付きで)
「やっぱそうだよね…考えてみれば、あの爆発と炎上が起きるのってランディアの火炎弾ぐらいのもんだし…」
「…………うううう…………うがああああああああああああ!!!!貴様ああああああああああああ!!!!よくも……よくも信者達の心のよりどころを破壊してくれたなああああああああああああ!!!!!」
(当然だ。邪教の信者なんぞに心のよりどころなど無用の長物だからな。…で、それが何だと言うんだ?)
「ランディア、あの発狂してるのがその邪教の親玉、女神アクアだよ」
(何ぃ!?あの如何にもバカ丸出しの…どうしても更生可能とは思えないあの女が女神だと!?……いや、あり得ない話ではないな。アクシズ教徒共のどうしようもなさ加減から逆算すると、確かにその可能性は大いにある)
「そうだよ!じゃなきゃ『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』が生まれるはず無いもん!」
(ほう、『救いようのない・この世の終わりの化身たる・人でなし集団』…か。あの邪教徒共を象徴するには実にふさわしい響きだ…。因みにだがカービィ、あの女はどう言えば良い?)
「そりゃ勿論、『女神の皮を被った邪神界の帝王』だよ!だってアクア、魔王軍幹部の邪神より良識が無いらしいからね!」
(……流石の俺でもそれはヒくな。邪神より良識が無い女神など、存在して良いはずがない…)
「それが存在してるのが、この世界の不思議なんだよね」
(いやカービィ…これは不思議じゃなくて、単にイカレてるだけだと思うぞ)
「ゴルアアアアアアアアアァァァァァァァァ!!!!どんだけ人を悪しざまに言えば気が済むんじゃわりゃああああああああああああ!!!!」
(アクシズ教徒が……いや、アクシズ教そのものが滅びるまでだ。丁度いい、どうせカービィの仲間と戦ってみたいと思っていたところだし、邪教滅亡の足掛かりとして、その親玉には今ここで滅んでもらわねば……!)
『『『『グルルルルルルルルルル……!!』』』』
言うや否や、ランディアは鼻から煙を立ち昇らせるとともに一斉に唸り出す。
その瞬間、今までの威勢は何処へやら、一気に逃げ腰になるアクア。
「ちょっと待ってよランディア!ここは街中だよ?やるなら街の外にある平原にしようよ」
(む…確かに)
「でしょ?というわけで『エスパーカービィ』!」
ボクはランディアとゆんゆん達を例の平原へ移動させた。
思った通り、ジャイアントトードはドラゴン出現を察知して既に隠れたらしく1匹も見かけない。
これで存分にやれるだろう。
(カービィ…お前、暫く見ないうちに新たな力を身に付けたようだな。こちらとしても、修行した甲斐があるというものだ)
「へ~、じゃあランディアも強化してるんだ。…あっそうだ!ランディア、ちょっと耳貸して」
(?)
ボクはランディアに、ハードルを低くすることと「あること」を耳打ちする。
「…カービィ、さっきから何をしてるんです?」
「ん?別に大したことじゃないよ。ランディアに『状況に応じて適宜に加減して』ってお願いしただけ」
(ま、我としてはそれでも戦う価値はあると思う。ここらのドラゴン共ときたら、力任せに暴れるだけで中身が無い。多少は弱くとも、知的そうな輩と戦った方が張り合いがあるというもの)
「何ですかその遠回しな見下しは!売られた喧嘩は買いますよ!!手加減なんかせずにかかってきなさむぎゅっ!?」
「めぐみん、何てことを言うの!!相手はカービィさんのライバルよ?真っ向勝負じゃ勝ち目なんてないじゃない!!」
「そうだね。それにランディア、またボクと戦う時のために力をつけてきたみたいだから、尚更そっちの方が良いと思うよ?」
「是非加減してください!!お願いします何でもしますから!!じゃないと私達死んでしまいます!!」
「お、おいゆんゆん…そこまで本腰入れて土下座しなくてもいいだろう」
「そうですよ!いくら何でもやりすぎですって!」
ボクとしてはそれよりも、逃げ腰のはずのアクアが終始黙ってたのが意外だったんだよね。
まぁ、アクシズ教徒の教会を壊されたわけだし、今更後には引けないって感じなのかな?
例え逃げ腰でも、実際に逃げてないだけマシだと思うよ。少なくともボクの価値観からすれば。
というか、ランディアをこれ以上待たせるのも悪いから…ってなわけで、ボクはランディアの頭から降りて主審的な立ち位置に移動。
「それじゃ早速、始め!!」
「ちょ、ちょっと待ってください!まだ」
『『『『グガオオオオォォォォォォンン……!!』』』』
「ゆんゆん!どうやら喋っている暇はないようだぞ!」
ダクネスの言葉に、ゆんゆんは慌てて臨戦態勢に入る。
その間にランディアは得意の空中戦を仕掛けるべく、翼を羽ばたかせて上昇。
そして景気付けの一発として火炎弾を発射!
『チュドドオオオオオオォォォォォォォン…!!』
爆裂魔法級の爆発と共に、その周囲が炎に包まれる。
初戦では爆発魔法クラスだったことを考えると、確実に能力を底上げしてきてるなこりゃ。
あそうだ!どうせだからこの際、ゆんゆん達のためにチョコチョコ解説入れようっと。
ついでに今の衝撃で、隠れてたジャイアントトード達が一斉に地中から飛び出して森の中へ逃げ込んだ。
「ななな何ですか今のは!」
「いや~凄いね。あの時は爆発魔法レベルだったのに、爆裂魔法レベルにまで通常技の威力を底上げしてくるなんて」
「そ、底上げ!?しかもあれが通常技ですと!?」
「そうさ!ランディアからすれば、今のはほんの挨拶代わりだよ…ほら気を付けて!そろそろ来るよ皆!」
そう言われてゆんゆん達が見上げるのが早いか、ランディアは4つの頭から一斉に火炎弾を放つ。
全員なんとか回避できたものの、周りは既に火の海。
行動範囲を広げるべく、ゆんゆんが必死にクリエイトウォーターで消火しようとしてるけど、それに気付いたランディアが翼で風を起こして炎を燃え広がらせるので状況は一向に良くならない。
……今更だけど、この光景はボクだけじゃなく、アクセルの冒険者やギルド職員達も傍観してる。
まぁ、あの人達は巻き添えを食らわないようにするためか、街の門から離れようとはしない。
皆一言も喋らず、瞬きも固唾をのむのも忘れて、ただただ目の前の光景を眺めてる状態だ。
「ゆんゆん!もうその辺にしておけ!これ以上は無駄だ!」
「いいえダクネス!まだ手はあります!アクアさんの力があればあるいは…!」
「…そうか、『セイクリッド・クリエイトウォーター』!だがしかし、アクアはこの技を制御できなかったはずじゃ…」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないですって!!アクアさん早く!!」
「わ、分かったわよ!『セイクリッド・クリエイトウォーター』!!」
洪水級の大量の水により、平原を覆ってた炎は瞬く間に消えていく。
ここまでは良いんだけど…この作戦には大きな問題点があるんだよね。
とはいえ、ゆんゆん達は「あの事」を知らないわけだからしょうがないんだけど…。
『ドバババババババババ!!!』
ランディアは水目掛けて電撃を放つ。
…まさか“そのままの状態”で、しかも口と両目から放つなんて…!
今までは分裂した時にしか使えなかったのに…。
まるで鞭の如く水を伝う稲妻。
ゆんゆんとめぐみんは何とかその場から離れられたけど、アクアとダクネスが逃げ遅れる結果に。
「アバババババババババ!!!」
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
水出してるアクアはさておき……やっぱし敏捷性の低さが祟ったね。
敏捷性確保のために無駄な筋肉は削減するように進言しとこうかな…。
「くっ…まさか炎だけじゃなく電撃まで扱えるなんて…!」
「本当に何なんですかあのドラゴンは!何処の世界の万能の天才ですか!?」
めぐみんが訳の分からない発言をする最中、ダクネスが合流した。
アクアはまだ痺れが抜けないのか、その場から動こうとしない。
「ダクネス!無事でしたか!」
「当然だ!あれしきのことで私は」
「いやああああああああああ!!!!」
突如轟く叫び声の方を見れば、ランディアがアクアを1人狙いしてる。
「うわあああああああぁぁぁぁぁぁ!!!何で急に私ばかり狙うのよおおおおおおお!!??」
(言ったはずだ、「お前は今ここで滅ぼす」と…!)
そう言ってランディアは引き続き、アクア目掛けて電撃を目や口から連射する。
メインの攻撃を電撃に切り替えたのは、やっぱり火炎弾だと周りの被害が大きくなるからだね間違いなく。
現時点で平原の半分以上が焼け野原になっちゃってるし穴ぼこだらけだし…。
そんな中、ランディアの注意をアクアから逸らせるべく、ゆんゆんがランディアの左側面に向けて攻撃。
「『ライト・オブ・セイバー』!!」
パーティはボクを除けば4人…ランディアの頭も4つ。
要するに、それぞれの頭で各パーティ要員を個人マーク可能ってこと。
現にランディア、このことを事前に察知してたらしく、左側の頭で常にゆんゆん達を監視してた。
そして光の斬撃を歯で受け止め、どうするのかと思ったら…シンプルに噛み砕くというね。
物理攻撃扱いの「斬撃飛ばし」とかならまだしも、魔法の斬撃を噛み砕くって……地味だけど凄い能力だよ。
ゆんゆんも呆気に取られてたけど、すぐに立ち直って次の攻撃を始める。
「『エナジー・イグニッション』!!」
敵を内側から燃やす青白い炎……だけど、これもランディア相手じゃ力不足みたい。
見た感じ…炎でダメージ受けてるというより、煙でむせてるだけのような……。
兎に角、ゆんゆんの攻撃を大して気にしてないらしく、引き続きアクアに狙いを絞るランディア。
考えてみれば、敵の後方支援…特に回復系って結構厄介だもんね。
先に潰した方が後々自分に有利になるってのも、多分理由に含まれてるんだろうと思う。
そしてトドメの1発とばかりに、4つの火炎弾をアクアに向けて発射!
ってよく見たらダクネスがアクア…もしくは火炎弾目掛けて全力疾走してるぞ。
「いやあああああもうダメええええええ!!!!」
「『デコイ』!!」
(!?)
当たる直前にダクネスが囮スキルを発動。
当たる直前だったせいか十分に引き付けることはできず、多少引っ張られて着弾点がズレた感じになった。
とはいえ、ランディアはスキル云々を十分に把握してないらしく、攻撃を一旦止めると同時にダクネスに注意を向ける。
1人狙いが収まったことを理解したアクアが腰砕けになる一方で、ランディアはダクネスの様子をうかがう。
すると、右の頭が不意に口から電撃を放つ。それも全く見当違いの方向に。
けれど電撃は弓なりに曲がってダクネスに直撃。
「うぐぁっ…!!んぐ……くううぅぅん…!」
(……何だコイツ…)
ボクにとっては相変わらずといった印象しか受けないダクネスのリアクションだけど、ダクネスのことを知らないランディアにとっては頭のおかしな奴に見えたらしい。
それはさておき、ランディアにとって最も重要なのは、ダクネスに“敵の攻撃を引き付ける能力がある”ということだ。
それが分かった瞬間、ランディアは微かにニヤリと笑ったかと思えば全ての頭が一斉に大口を開け、そこに高密度且つ強力なエネルギーが集まってく…。
これってもしかして………やっぱりだ!
「ダクネス!デコイを止めて逃げて!早く!!」
「カービィ、それは一体どういう」
「いいから早く!ランディア、必殺技を使う気だ!!いくらダクネスでも、アレをまともに食らったら消し飛んじゃうよ!!」
「ひ、必殺技だと!!?」
「た、大変!めぐみん、行くわよ!」
「へ!?い、行くって何処へです?」
「決まってるでしょう!ダクネスを助けに行くの!!あの人足遅いんだから私達が補助にならないと!」
「あ、そ、そうでしたね!」
…何気にゆんゆんがリーダーシップを執り始めてる。
防護壁が直るまでの間、1人で討伐依頼を請け続けた甲斐あって度胸がついたのかな?
どうにしろ、今のボクの仲間の中で一番マトモなのがゆんゆんなわけだし、別におかしくはない。
『ドゴオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ……!!!!』
なんて考えてるうちに、ランディアが必殺技「ランディア砲」を発動。
星型のエネルギーコアを持つ巨大な火炎弾が6つ…それを4つの頭が同時に放った!
…でも、ランディア自身は本気で当てに行ってはいないみたい。
明らかにパワーチャージが完了してるのに、紅魔族2人に腕を引かれたダクネスがある程度退避するまで待ってたり、わざわざバラける様にワザと外したりと、よく見ればちょいちょい配慮してるのが分かる。
まぁ、初見じゃ分からない…というかそんな余裕無いだろうけど…。
『チュドオオグアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァンン………!!!』
多分…爆裂魔法50発分くらいかな?
それくらいの大爆発が起きたわけ。
ゆんゆん達は勿論吹き飛ばされはしたけど、ランディアの配慮のおかげもあって技そのものを食らうことはなかった。
でも、目の当たりにした破壊力は彼女達を呆然自失させるには十分すぎるもの。
……アレ?そう言えばアクアは何処だろう。
見れば、腰砕けになってた所からそう離れてない場所で、大の字で気絶してるし…。
…ってちょっと待って、ゆんゆん達の周りが影に……マズいよこれ!!
「ちょっとゆんゆん!上見て上を!!」
ボクの声に全員ハッとなって上を見上げると、視線の先には……自分達目掛けて絶賛垂直落下中のランディアが!
『ズドオオオオオオオォォォォォォォンン……!!!!』
なんとか回避できたものの、ランディアの着地時の衝撃でまたしても吹っ飛ばされることに。
ランディアは、大股歩きやジャンプを駆使してゆんゆん達を踏み潰そうと迫るけど、急に止めたかと思えば今度はアクアに向けて電撃を放つ。
紙一重レベルの間近に雷が落ちたら、そりゃ誰でも飛び起きるよね。
そして再び1人狙いを始めるランディア。
ついでに泣き叫びながら逃げ惑うアクア。
当然だろうけど、その様には女神の面影なんてありゃしない。
「行こう!アクアを助けなきゃ!」
「で、でもどうする気ですか、ゆんゆん?上級魔法を意に介さないとなると、我が爆裂魔法も効くかどうか…」
「よし!こうなればもう一度『デコイ』で…!」
ダクネスが言った瞬間、引き続きゆんゆん達を監視してた左の頭が大口を開け、「ランディア砲」の発射準備に入った。
頭1つといっても、放たれる攻撃は爆裂魔法数発分の威力がある。
いくらダクネスが硬いったって、当たり所が悪ければ最悪死ぬことになるだろう。
要するに、ダクネスの囮スキルは完全に封じられちゃったわけだ。
するとここで、意外にもめぐみんが何か閃いたらしい。
「フ、フフフ…分かりましたよ~~!我の超・頭脳が、このピンチを打開する活路を見出しました…!」
「ええ!?ホントなの、めぐみん?」
「勿論です!あの大口を利用すれば!」
「お、大口って?」
「いくら硬い鎧を身に纏おうとも、内側は脆いもの…それはあのドラゴンだって同じこと!つまり、奴の弱点といえば口の中ぐらいしかないでしょう!そして今、その大口は必殺技発動のためにエネルギーを溜めている最中。あそこに我が爆裂魔法を撃ち込めば、自らのエネルギーが暴走して自滅するのでは?」
「「な、なるほど!!」」
確かに、今の状況ならそれが一番有効だね!
まさかあのめぐみんから、こんな名案を聞けるなんて夢にも思わなかったよ。
やる時はやるんだね…何時もそうだといいのに。
おっと、今はそれよりも……
「フフフ、では早速」
「ちょっと待っためぐみん!ボクの呪いのこと忘れてるでしょ!」
「……あ゛……」
「ま、まさかカービィさん…今という今までめぐみんに許可してなかったんですか!?」
「うん。だっていつかのマクスウェル討伐の時みたいに、変なところで使って空振りしたら勿体ないじゃん。ま、今回はめぐみんが名案出したわけだし、もう“使っていいよ”!」
「……いざ承知!!」
そう言って、めぐみんが呪文の詠唱を開始。
ゆんゆんとダクネスはその間、ランディアの注意をめぐみんから逸らすべく駆け出した。
ゆんゆんが背後から魔法を連続で放ち、ダクネスはアクアに向けられた攻撃を少しでも引き離そうと必死に前に出る。
けど、その程度のことで怯むランディアじゃない。
2人の奮戦も…言ってしまえばお邪魔虫レベルにしか捉えてないらしく、攻撃がダクネスに引き寄せられてると分かるやいなや、メインの攻撃を踏み潰しに変更。
ゆんゆんの攻撃に至ってはほとんど無視してる。
「『カースド・クリスタルプリズン』!!」
そんな中、ゆんゆんが地面に向けて氷属性魔法を放つ。
ランディアは足元が凍ったせいで、滑ってうまくアクアを追えないみたいだ。
考えたねゆんゆん!
普段から火山に佇んでるランディアのことだから、氷属性の攻撃には対応が難しい……と思ったんだけど、割と直ぐに対応。
スケートよろしく滑りながらアクアを追い始めた。
まさかランディアにスケートの才能があったなんて……今度スケート勝負しようかな…。
そうこうしてるうちに、めぐみんが動き出す。
「さあ、気は満ちた!邪悪なるドラゴンめ!我が最強の魔法で滅びるがいい!『エクスプロージョン』!!」
作戦通り、めぐみんの爆裂魔法がランディアの口の中で発動!
エネルギーが爆裂魔法によって連鎖反応を起こしたらしく、大爆発が生じた。
爆風と共に大量の土煙と砂煙があがる。
視界が曇る直前、爆発の衝撃で吹き飛ばされるランディアをボクははっきりと見た……けど、今ので一体どの位のダメージが入ったんだろう?
煙で視界が悪い中、めぐみんの高笑いが聞こえてくる。
今の攻撃でランディアが消し飛んだと思ったんだろう。
……でもいざ煙が晴れれば、そんな甘い期待は一気に消し飛ぶ。
ランディアは未だピンピンしてる。
“ダメージらしいダメージ”は受けたみたいだけど、実際に攻撃を食らった左の頭すら、吹き飛ばされなかったばかりか余裕すら感じ取れる。
「そ、そんな……!」
「自分が溜めたあのエネルギーを食らって…まだ動けるというのか……しょ、正真正銘のバケモノだ……!」
めぐみんは絶望増し増しな顔で倒れた。
すると、ランディアはボクに向けてあるパフォーマンスをした。
それは…口の中で溜めたエネルギーをペッと吐き出すというもの。
つまりこういうことだ。ランディアは爆裂魔法が発動する直前に、攻撃対象になってたエネルギーを口の外に吐き出し、口の外で爆発が起きるようにしたってこと。
まさかあの一瞬のうちにこんな芸当を披露するなんて…やっぱランディアは一筋縄じゃいかないね。
ゆんゆん達がこのことに気付いてないのはさておき、ランディアは突如として怒りに満ちた顔でゆんゆん達及びアクアに襲い掛かる。
中途半端な攻撃は相手を怒らせるだけ……ってことなのかな?
7割方演技なんだろうけど、当のゆんゆん達は怒り心頭といった顔で闇雲に暴れるランディアに尻尾を巻いて逃げ惑うばかり。
そんな追いかけっこが続き、暫くすると突然ランディアが進撃を止めて、正門に固まってた冒険者達に呼びかけた。
(おいお前ら、何時までそんな所でボーっと突っ立っているつもりだ!)
突然のことに、訳が分からないといった感じで戸惑う冒険者達。
「つまり、4人だけじゃ張り合い無いから他の皆とも戦いたいってこと?」
(愚問だ。出来ればこの街にいる全員まとめて…な)
その言葉に、アクセルの冒険者達がざわつき始める。
その中で「全員でなら何とかなるんじゃないか」って声が多く聞こえた。
「そう言ってくれるとボクとしても嬉しいよ。ボクのパーティメンバー、既に1人が魔力切れでダウンしちゃってるし…それにランディアはちょっと頑固なところがあるからね。ああ言い出したら多分、燻り出してでも戦おうとするだろうから……というかそもそも、現時点でランディア、相当ハンデやってるからね。本来ランディアが得意なのは空中戦なのに途中から完全に地上戦してたし…」
こう言われたら、どうにしろ後に引けないことは嫌でも分かるだろう。
冒険者達は各々覚悟を決め、ランディア目掛けて突撃。
しかし、不意にランディアが翼を大きく1回羽ばたかせて冒険者達を吹き飛ばす。
「くぅ…な、何て風だ!」
「気を抜いちゃダメだよ、今のは単なる小手調べなんだから!ホラ、来るよ!!」
ボクの言葉通り、ランディアは翼を羽ばたかせ…というよりバタつかせて強風を巻き起こす。
因みに、アクアにはめぐみんを連れて街に戻るように言っといたので、巻き込まれることはない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
その後は強風から抜け出した冒険者が側面に回って攻撃だの、大胆にもランディアの頭目指して足元からよじ登ろうとする者が出てくるだの、色々あったけど結果だけ言えば、冒険者達は惨敗した。
動ける人は自力で門まで向かい、動けない人は門番の人やギルドの職員達が運ぶ。
その様子を暫く見てたランディアだけど、ボクの方へ向き直る。
この後の展開は嫌でも分かる……最後の相手はやっぱりボクってわけ。
ボクはその場で軽くストレッチして気合を入れる。
…そうだな、どうせだからランディアが知らないコピー能力で先手を打とうか。
「『ジェットカービィ』!」
アイリスと空中散歩して以来だな。
ボクは力を溜めた。
それにより、背中のエンジンが大きなうなりを轟かす。
「『ジェットダッシュ』!!」
ランディア目掛け、「トルネード」の後押しのもと超高速で突進!
面食らったランディアは回避も防御もままならず、王冠を被った頭がボクの突進をマトモに食らう結果に。
おっ、まだ立ち直れてないぞ。
よし、このまま畳み掛けよう!
「『アイス・ニードル』!」
(!!??)
ランディアの背中で「カースド・クリスタルプリズン」を纏った巨大な雪の結晶になる。
そこにランディアの翼が触れたので、翼は一瞬にして凍り付き、飛べなくなったランディアは真っ逆さま。
ボクは再度「ジェットダッシュ」を使って一気に垂直降下してランディアの真下へ。
「『ジェットクラッカー』!」
余ったエネルギーを拳にのせて発射。
で、まだ余裕がありそうたったから最大限にエネルギーを溜めて…
「『爆裂ジャンプ』!」
溜めたエネルギーを爆発させての大ジャンプ……だけど目測ミスったな。
ランディアとはまだ大分距離が離れてる。
けど、それならそれで手はある。
「『ハイジャンプカービィ』!からの~『二段ハイジャンプ』!!」
爆裂ジャンプと合わせれば…間違いないよね?
最初のジャンプの時に使い忘れた「トルネード」とハイジャンプの勢いを生かしたアッパーカットが、ランディアの正面手前の顎に食い込んだ。
そしてそのままランディアの頭上へ。
「『ロケットフォール』!」
今度は急降下で王冠を被った頭を殴る。
更にもう一発!
「『ファイターカービィ』で、『Wスパイクパンチ』!!」
いつかのエンシェントドラゴンの件もあるからね。
今回は両手でやってみた。
あの時からレベルが上がってるとはいえ、やっぱり手がジンジンする…。
でも、手を緩める気はないよ!
もう一度「ジェットダッシュ」でランディアの真下に陣取り、今度は…
「『ギガトンハンマー』!」
巨大ハンマーをどてっぱらに2発打ち込んで、ランディアを再度打ち上げる。
そして、連続攻撃の〆を飾るのはやっぱりアレだね。
「『クラッシュカービィ』!」
いくら打ち上げたとはいえ、爆裂魔法との併用は避けた方が良いな。
ボクはランディアの首にしがみ付き、全力の爆発をかました。
『ズガガガアアアァァァァァァン………………ドオオオオオオオォォォォォォォォォンン……!!!!』
爆発の後ランディアは地面に激突したわけだけど、ボクは直前くらいにランディアから離れたので問題なし。
………でも、これで終わるわけがない。
黒煙立ち昇る中から、ランディアがゆらりと現れる。
流石にピンピンしてるわけじゃなさそうだけど、まだまだ余裕がありそうだ。
うっすらとだけど、笑みを浮かべてる。
(……俺の翼を凍らせたかと思えば、流れるような連続攻撃……随分と腕を上げたもんだな)
「ハハッ、ランディアだってパワーとタフさに磨きかけてるじゃん」
ボクらにとってはライバル同士の何でもない会話なんだけど、他の冒険者達からすればその全てがイレギュラーに感じるってことが、背中で聞こえる会話から嫌でも分かる。
特にゆんゆん達の会話からは…ね。
「……冗談抜きで何なんだあのドラゴンは…!カービィの攻撃をあれだけ食らって…それも巨大ハンマー2発に大爆発…爆裂魔法は使っていないんだろうが、全力を出したことには間違いないだろう。そんなものを食らってまだ余裕を見せるとは…!格が違うにも程があるだろう……!」
「いや…逆に言えば、あれくらいでないとカービィさんのライバルは務まらないってことでしょう…。お互い、一体どこまで強くなる気なんでしょうかね…」
「(特に決めてない[けど/が]、何か?)」
「まさかの地獄耳!?」
(さて…そろそろこちらも本番と行こうか!)
そう言うと、ランディアは最初より遥かに短時間のチャージで「ランディア砲」を発射。
やっぱしあの時、相当手加減してたんだ。
……ん?ちょっと待って。何か狙いがズレてるような………って、狙ってるのはゆんゆん達の方!?
「ちょっ、くっ、『ミラーカービィ』!」
兎に角、アレを何とかして止めなきゃ!
「『リフレクトフォース』!!」
鏡の力でランディアの火炎弾をはね返そうとしたんだけど……火炎弾を受け止めた鏡はぎしぎしと不気味な音を奏でるだけで、一向にはね返せそうにない。
そのうち、鏡とエネルギー体に亀裂が生じ始める。
「マズい…!」
そう言うのが早いか、その場で大爆発が起こった。
『チュバアアアアアドドドドドオオオオォォォォォォ……!!!』
「うわあ~~~~………!!!」
ボクはその爆発に巻き込まれ、思いっきり吹き飛ばされる。
予想外のダメージをかなり負っちゃったけど…ラッキーなことに大量の土煙が舞っててランディアの視界が遮られてるぞ。
このチャンスは逃せない…!
傷だらけであちこちがズキズキ痛む体に鞭打って、ボクは立ち上がった。
「『エスパーカービィ』!」
ボクはテレポートでランディアの背後に移動。
そして……
「『オーシャンカービィ』!」
海の神様から貰った力が役に立つ時が来た!
「それっ…!!」
…何となくやってみただけなんだけど、技名言わなくても発動できるんだな。
ともかく、「セイクリッド・ハイネス・クリエイトウォーター」による大量の水をカプセルみたいな形にし、その中にランディアを閉じ込める。
(な、何……だと…!!)
突然水の中に閉じ込められ、もがき苦しむランディア。
でも、恐らくこの程度じゃそこまで怯まないだろう。
ボクは追加攻撃の準備に入る。
「『スパークカービィ』!」
そう。水は電気をよく通すからね。
「『スパーク波動弾』!」
(ぐわああああ!!!)
ボクは水のカプセルに向け、「カースド・ライトニング」を帯びた電気の巨大エネルギー弾を発射。
電気エネルギーは高電圧を保ちながら水のカプセル内を縦横無尽に駆けめぐり、ランディアにじわじわとダメージを与え続ける。
しかしランディアは、突如ボクに睨みを利かせたかと思えば大きく体をひねり出し、その身は白と虹色の光に包まれていく。
ランディアの錐揉み回転はどんどん速くなり、遂に第2の必殺技「スパイラルドラゴン」を発動!
水のカプセルを突き破って突進してきた。
ああなったら簡単には止められない……けど、少しでもランディアの軌道を逸らせれば…!
ボクは再び「オーシャン」を発動し「セイクリッド・ハイネス・クリエイトウォーター」で巨大な噴水を作り上げた。
突き上げるように噴出した大量の水はランディアの顎に直撃。
そのショックで突進は、ボクの上空を通過するという結果に終わる。
よし、もう一度動きを封じるぞ。
今度はっと……
「『スパイダーカービィ』!」
ボクは手から糸を発射してランディアの尻尾にくっ付け、ランディアのスピードを生かして飛び上がる。
「『ウェブ飛ばし』!」
ボクが飛ばした蜘蛛の巣は見事にランディアの翼を絡めとる。
それを確認したボクはもう一度ランディアに蜘蛛の糸をくっ付けてランディアの真上に移動。
「『ネットワーク』!!」
間髪入れず、巨大な蜘蛛の巣を上からかぶせ、身動きが取れないようにする。
ランディアは再び地面に落下。
(くっ…!水の次は……蜘蛛の糸か!?)
「『レーザーカービィ』!」
ボクは単発発射型のレーザーでランディアの頭を狙い撃ちにする。
……けど、空中で使ったのが仇となった。
初弾発射時点でのボクはランディアの背中辺りにいたんだけど、そこから頭を狙ったために、発射の反動で後退してしまい、ランディアの「テイルアタック」をマトモに食らうことに…!
「ぐあっ…!!?」
ボクはそのまま地面に叩きつけられる。
…というか、さっきの爆発でダメージ負ってたのすっかり忘れてた。
思い出した途端、再び激痛が。
「うぐ…ぐ…そう言えば、さっき爆発でダメージ食らってたんだっけ……」
(忘れていたのか…フッ、カービィらしいな。だが、俺としてもこれ以上捕らわれっぱなしというわけにはいかん!)
再び「ランディア砲」の発射準備に入るランディア。
今の状態でアレを食らうわけにはいかない。
けど、回復してる時間もない…やるしかないか!
「『インフェルノ・ドラゴストーム』!!」
必殺技発動より一瞬早く、ボクは巨大な火炎龍をランディアの頭目掛けて突っ込ませた。
ランディアはたまらず発射を中断したけど……今の一撃で蜘蛛の巣が焼け落ちてる。
まぁ分かってたことだけどね。
『捕らわれっぱなしというわけにはいかん』……つまりランディアは、最初からこれを狙ってたんだ。
ワザと「ランディア砲」を見せつけて…ボクに強力な、それも蜘蛛の巣に影響を及ぼすくらいの技を使わせるために…。
それはともかく、顔に大ダメージを負いつつも解放されたランディアは、上空へ舞い上がって態勢を整える。
(…今度はこっちの番だ!『ウインドカッター』!!)
ランディアが放った11枚の風の刃……思ったより速いぞ!
弾き落とすには時間が足りない……なら、防御しかないよね!
「『スパーク・スパーク』!!」
ボクは「カースド・ライトニング」で強化した電磁シールドを展開し、風の刃を弾く。
直後にボクは「ウルトラソード」を発動したんだけど…“間髪入れずに次の手を打つ”という意味では、ランディアも同じようなことを考えてたらしい。
ボクが見た時、ランディアは既に「ランディア砲」を放った後だった。
……体力も残り少ないし、次の一撃で決めないと体が持たない…!
ウルトラソードを全力で振り……発動した。
そう、アイリスから教わったあの技を……!
「『エクステリオン』!!」
光輝く巨大な斬撃がランディアの技を切り裂き、そのままランディアに直撃!
『『『『グガアアアアアァァァァァァアァァァ……!!!!』』』』
ランディアは断末魔の叫び声をあげながら大きく後方へ吹き飛ばされ、地面に背中から落ちてそのまま動かなくなった。
それを確認した途端、全身から力が抜けていって、そのまま意識が遠のく………………。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
気が付いた時、ボクはベッドの上にいた。
「あ…皆来て!カービィさんが起きたよ!」
第一声はゆんゆん。
その声にダクネスとめぐみんが駆け寄ってくる。
「おお、カービィ!気が付いたか」
「いや~良かったですよ!もし死んじゃってたらどうしようかと…」
……ダクネスはいいとして、めぐみんはホントにそう思ってるのかな?
それはそうと、よく見ればボクは体中包帯だらけ。
周りに目をやれば、同じような感じの冒険者達がそこかしこにいる。
「えっと…ここはアクセルの…」
「療養所ですよ。ギルドの奥に位置してます」
「そうなんだ…ところでアクアは?」
「ああ、あの人ならめぐみんを運んでから……」
そう言ってゆんゆんが指さす先には、空きベッドの上で体育座りするアクア。
よく見れば何かブツブツ呟いてるけど…ここからじゃ聞こえないな。
…それにしても、改めて見ると結構な数いるね。
「……これ、ボクが治療費肩代わりした方が良いかな?」
「ん?…別にそう気にすることじゃないだろう。強敵と戦えばそれなりのリスクが伴うことぐらい、奴らだって分かっているさ。それに大体、ランディアの性格を差し引いても、その前にあいつ等は戦うことをほぼ決めていたようなものだ」
「そうですよカービィさん!それに治療費出すより『ヒール』でも使った方が早いじゃないですか」
「そうかもしれないけどさ…今はもう魔力がほとんど残ってないし、おまけに回復要員のアクアがあの状態じゃね…」
なんて言った瞬間、急にアクアがベッドから飛び降りて駆け寄って来た。
「なになに?私がどうしたって?」
「っ……アクア、今までベッドの上にいた人のテンションじゃないよね?」
「何か知らないけど、誰かが私を必要としてる気がしてね!ねえ、私を必要としてるんでしょ?」
「ま、まぁそうだけど……元気ならさ、周りにいる人達のケガの治療、頼める?」
「な~んだ、そんなこと?朝飯前よ!全て私に任せなさい!!」
そう言って、アクアはケガ人の治療を始める。
その間に確認してみたんだけど、少なくともこの戦いで死んだ人はいないらしい。
ランディアにとってはあくまで力量を調べるための“模擬戦闘”みたいなものだし、ゆんゆん達との戦いで力加減はある程度把握してただろうから間違っても殺す事はないと思ったけど、念のために…ね。
とはいえ、療養所にいた冒険者達ほぼ全員が相当な重傷を負ってたらしく、アクアの回復魔法をもってしても完全に治るまでにはそれなりの時間を要した。
にもかかわらず、アクアは頼られたのがよほど嬉しかったのか、療養所を飛び出してケガ人を探し回り、片っ端から回復して回ったらしい。
そこまでしろとは言ってないのに…。
体力と魔力を相当使ったのか、療養所に戻ってくるなりベッドにダウン。
でも、「無駄遣いできない呪い」が発動してないあたり、無駄というわけでもなかったらしい。
「ふふ、相変わらずアクアは無駄なことが好きですね…」
「ゆんゆん、別にそうでもないと思うよ?だって『無駄遣いできない呪い』が発動してないんだもん」
「ああ、そう言えばそんな呪いありましたっけ」
そんな会話をしていたら、ギルドの受付のお姉さんが慌てた様子で走ってくる。
あんなに息切らして、一体どうしたんだろう?
「カービィさん!大至急王都に向かってください!アイリス王女がすぐ来てほしいと!」
「だ、大至急?」
一体何があったんだろう?
とにかく行かなきゃ!
「カービィ、動いて大丈夫なのか?」
「行くだけなら問題ないよ!『エスパーカービィ』!」
…なんだかんだ言って初めてだよね。
パーティメンバーと一緒の状態で「テレポート」使うのは。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
無事に城の前へテレポートできたかと思えば、衛兵さんに急かされる形でアイリスのもとへ。
「あっカービィさん!お待ちしてまし……ど、どうしたんですかその怪我は!?」
「ああ、例のドラゴンの件でね…。あのドラゴン『ランディア』って名前なんだけど、ボクの旧友でありライバルでもあるんだ。で、そいつと久しぶりのバトルになったわけ」
「えええ!?あのドラゴンと親しい仲だったのですか?……それよりも、バトルになったということは…かなり消耗されているということでしょうか…?」
「そうだね。魔力だってほとんど残ってないし…」
「…何ということでしょう……最悪の事態です…!」
「最悪?」
「……この一件は、デストロイヤーを葬ったカービィさんにしか頼めないことだというのに…!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!何でそこでデストロイヤーが話題に挙がるわけ?」
「……そのデストロイヤーを………魔王軍が率いて、こちらに向かっているからです…!」
「へ?」
「「「「ええええええええええええ!!??」」」」
「え…ちょっと待って。てことは何?デストロイヤーって何体もいるの?」
「そんなバカな!!デストロイヤーはノイズで試作された、あの1体だけのはずだぞ!!」
「ええ、私も最初に聞いた時は信じられませんでした……それも、5体もいるなんて」
「ご、5体!?あんな凄いのが5体もいるんですか!?」
「確かに今の状態じゃ無理だね…。『クラッシュ』は何とかなるだろうけど、爆裂魔法を同時に発動するだけの魔力は残ってないし…」
「いやそれ以前に、傷だらけの状態でそんなことをしたら…最悪の場合、お前自身も爆発に巻き込まれるんじゃ…?」
「さぁ、どうだろう…?」
「………どうにせよ、絶体絶命ですね。王族の力をもってしてもデストロイヤーを5体も相手するのはまず不可能。頼みの綱だったカービィさんも、怪我のせいでまともに戦えない…。この国は今日で終わるのでしょうか……」
頭を抱え、半ベソかいてその場にしゃがみ込むアイリスの肩に、ボクはそっと手を置いた。
「…大丈夫だよアイリス、手はまだあるよ」
「え?」
「ボクがデストロイヤーと戦った時に使ってた乗り物のことは知ってる?」
「……それって、『ロボボアーマー』のことですか?」
「そうだよ…遂にこの時が来たんだ…。『ロボボアーマー』の真の力を使う時が…!」
「「「「「真の…力?」」」」」
「知りたいなら……付いて来て!」
アイリスとゆんゆん達が、ボクに続いて城の外に出る。
「カモン!『ロボボアーマー』!」
ロボボアーマーが着地すると同時に、ボクはメットを被って乗り込む。
「ほら、早く皆も乗って!」
ボクの声に、ゆんゆん達が乗り込む。
……その場の勢いなのかアイリスまで乗っちゃってるけど…もう時間ないから仕方ない。
「『ハルバードモード』!!」
ロボボアーマーが宙に浮きつつ全体が白い光に包まれ…………それが収まった時、ロボボアーマーはその姿を、船首にボクの顔があしらわれたピンク色の空中戦艦へと変貌させていた。
ボク達が乗り込んだ狭い操縦席も、今や広々とした戦艦のブリッジと化してる。
アイリスを含め、全員が今の状況を理解できてない様子。
「あ、あの~カービィさん…何かお忙しいところ恐縮ですが、現在どのような状況なのか教えて頂けませんか?」
「ん?ああ、こういう状態さ!」
そう言ってボクは、正面右上の立体投影画面に映し出された映像を指さす。
アイリス以外の視線も、当然ながらその画面に向く。
「な、何だ?急に乗り物の様なものが映し出されたが…」
「それが今のロボボアーマーの姿『ハルバードモード』だよ。ロボボアーマーの最強形態」
「さ、最強ですと!?」
「そうだよ、めぐみん」
『システムチェック完了 全システム 異常ナシ』
「よ~し、全砲門開け!」
ボクはコンパネを操作し続ける。
さっきの立体映像では、砲台部分がオレンジ色に点滅してる。
「こ、今度は何ですか?この点滅は一体?」
「点滅してる所にあるのは、全部砲台だよ、ゆんゆん」
「ほ、砲台!?こんなに沢山あるんですか?」
「そうだよ。因みに今ボク達がいるのは…白く点滅してるココさ」
「そ、そうですか…」
ま、今までの変形とはわけが違うからね。
こんな反応になっても仕方ない。
『全砲門 砲撃準備完了』
おっと、攻撃準備が整ったぞ!
取り敢えず街の外まで移動させよう。
「…どうやら攻撃の準備ができたようだが、まさかここから攻撃するわけじゃないよな、カービィ?」
「冗談キツイよ。これから移動するの!」『ギリリリ…』
『微速前進』
推進レバーを前に倒すと、ロボボアーマーが大きな音をたてながら、ゆっくりと前進する。
「おお!?動き出しましたよコイツ!」
「そりゃそうだよ。ここからじゃ攻撃しづらいじゃん。あ、そこら辺にあるものは勝手に触らないでね!壊れでもしたら困るから!あと、結構揺れることあるからさ、椅子に座っといた方が良いよ」
そう言ってる間にも、ロボボアーマーは前進し続ける。
防護壁の上を通過し切ったところで少し上昇してみると…その先にデストロイヤーが見えた。
ボクが以前見たやつは古代遺跡の石壁みたいな色だったけど、今回のは5体とも真っ黒。
明らかに正規の物じゃないね。
だとしたら、一体誰が作ったんだろう…もしかして、魔王かな?
まぁ今はどうでもいいか。デストロイヤー達はまだ遠いし、先にモンスター達をどうにかするとしよう。
…それにしても、流石はロボボアーマーといったところか。
レーダーには建物とモンスターしか映ってない。
敵味方の区別がしっかりついてるらしいね。
「攻撃開始!!」
『ドドオオォォォォン!!ドギュオオォォォォン!!』
『ガガガガガガ!! ズババババババ!! ドガガガガガガ!!』
ロボボアーマーがモンスターに向けて砲撃。
と同時に
『キャプチャー吸イ込ミ 開始』
ボクの顔があしらわれた船首の口部分から倒したモンスターの残骸を吸い込んでいく。
あの時は隕石ぐらいしか吸い込む物が無かったから、てっきり無生物しか吸い込めないのかと思ってたんだけど……意外とそうでもなかったっぽいね。
とここで、ゆんゆんがまた口を開く。
「ちょ、ちょっとカービィさん!何やら新しい言葉が出てきたんですが、“きゃぷちゃー吸い込み”って?」
「ほら、あの画面見て。ボクの顔があしらわれた所、口が開いてるの分かる?」
「え、ええ……」
「あそこから、倒した敵を吸い込んでるんだ」
「それで……吸い込んでどうするつもりなのですか?」
「決まってるじゃんアイリス、必殺技発動のためのエネルギーにするのさ!」
「た、倒した敵をエネルギーに…ですか!?」
「うん……けどやっぱり、そこらのモンスターだけだとなかなか溜まらないな…もうすぐ15%ってとこか…」
ついでに言うと船体下部は、砲台の数が少ないせいで地上のモンスター達に対応しきれてない。
何せ回転式の砲塔が3連装の大型レーザー砲1門と、その背後及び両主翼下部にある連装式純単発速射型レーザー砲3門の計4門だけだからな~。
そういうのはブリッジがある船体上部に集中してる。
そのおかげか、空を飛ぶモンスターが弾幕に飲まれてバッタバッタ落ちてるけど、そんなの魔王軍全体からすれば微々たる規模なわけで…。
船首を下に傾けて上部砲塔でも攻撃できるようにしようかとも思ったけど…デストロイヤー達が良い感じの距離に近付いてるし……ソッチの方が良いか。
「やっぱり1体くらいはデストロイヤー片付けないとダメだねこりゃ」
「ええ!?まだ必殺技の準備ができてないんでしょ!?」
「多分1体くらいなら何とかなるよアクア、主砲発射用意!!」
ボクの目の前に照準画面が出現。
それをもとに……位置的に一番近い、右端のデストロイヤーに照準を合わせる。
ついでに固定砲台も食らわせるべく、船体を右旋回。
後は射角を微調整してっと…。
『ダーゲットロックオン 攻撃準備完了』
「ファイア!!」
『ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!!』
『バシュウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!バシュウウウウウウゥゥゥゥゥゥ!!』
『ズガアアァァァァン!!ドドオオォォォォン!!バゴオオオォォォォン!!』
主砲からの極太レーザーと砲弾、両主翼・両補助翼・船体下部の固定砲台からのレーザーやエネルギー弾、それら全てが1体のデストロイヤー目掛けて放たれる。
その圧倒的な破壊力の前には、デストロイヤーの装甲も紙同然。
動きが止まったかと思えば、直後に大爆発を起こした。
すかさず「キャプチャー吸い込み」で残骸を回収。
『エネルギー充填完了 エネルギー充填完了』
「おおっ、もう溜まったみたい!」
「ええっもう溜まったんですか!?いくらデストロイヤーを吸い込んだといっても早すぎるんじゃ!?」
「そんなこと今はどうでもいいよ!とにかく準備準備!」
船体を左旋回させて残る4体のデストロイヤーに照準を合わせる。
……とここで、誰かが騒いでるような声が聞こえてきた。
耳を澄ましてみると…近づけないだの、どうすりゃいいんだとかいう慌てた物言いと、デストロイヤーを壊しちまったぞ・なんて強さだ等といった声がする。
どうやら外の音を聞くための集音機が作動してたらしい。
操作中に間違えて触っちゃったのかな?
スイッチに手を伸ばすと、艦外への放送マイクも作動してるのに気付いた。
…もしかして、今までの会話が魔王軍に聞かれてたりとか……。
『全ダーゲットロックオン プラネットバスター 発射準備完了』
おっと、今はどうでもいいか。
手早くスイッチを切ると、直後に格納式発射トリガーがボクの目の前に。
ボクは大きく深呼吸してトリガーを握る。
他の全員は、この後どうなるのかと展望窓から見えるデストロイヤーに釘付けになり、固唾をのんで見守ってる。
「プラネットバスター、発射!!!」
『発射』
『ドババババババババババババババババババ…………!!!!』
船首の口部分から無数に放たれた、星型の巨大なエネルギー弾。
着弾直後に大爆発するため、4体のデストロイヤーはあっという間に爆発と煙に隠れて見えなくなった。
そしてそう時間が経たないうちに、ひと際大きな大爆発が4回起こる。
そして攻撃が終わり、煙が収まってくると……そこにデストロイヤーの姿は無く、無数の大穴が確認できるだけ。
そう。デストロイヤーは全滅ってこと!
「よ~し!デストロイヤー全滅っと!!」
「「「「……やったああああああああああ!!!!」」」」」
皆が歓喜の声をあげる。
けどまだ終わりじゃない。
だってまだ魔王軍が残ってるんだもん。
レーダー画面を映像に切り替えるとそこには………デストロイヤーの爆発跡を呆然と眺める魔王軍のモンスター達。
その隙に、ボクはロボボアーマーを魔王軍の中心辺りまで移動させ、降下し始める。
よっぽどショックだったんだろうね。
明らかに周りが影になってるのに、モンスター達は気付かない。
まぁ、おかげで上部砲塔が地上目標を狙える程度まで、安全に降下できたわけだけど……。
「攻撃再開!!」
その後は上部砲塔が使えるようになった甲斐あって、地上・空中関係なくモンスターを寄せ付けない弾幕を張ることができた。
で結局今回もまた、生き残ったのは微々たる数でしたっと。
「やりましたね、カービィさん!」
「今回も今回とで完全勝利…か」
「よかった…王都壊滅の危機は去ったんですね……カービィさん、本当に有難う御座います!!」
「いいってアイリス。どっちにしたって、あの状況はロボボアーマー抜きには覆せなかったわけだし……あ、そうだ!どうせならついでに、面白いもの見せようかな」
「面白いもの?」
……ボクはこっそり艦外放送マイクのスイッチを入れ、ボリュームを上げる。
「ダクネス…キミ以前こう言ってたよね、ボクの半生を割と本気で知りたくなったって…」
「あ、ああ…確かに言ったが…」
「ならチョットだけ見せてあげるよ。ボクが“生涯最初に見た光景”をね!」
「何!?」
「「「カービィ(さん)が生涯最初に見た光景!?」」」
「そうだよ。さあさあ皆、早く座って!ベルト締めるよ!」
皆が座ったのを確認すると、ボクは各座席のベルトを締める。
外れないことを確認し終わり、ボクも自分のベルトを締めた。
そしてコンパネを操作して船首を上に上げる。
「ところでダクネス、カービィが最初に見た光景って何なんですか?」
「私も詳しくは知らないが、確かあの時こう言ってたな『空の向こうに広がる、この世界よりずっと過酷で、危険で、そして神秘的な世界』だと……」
「ホントに危ない香りしかしない雰囲気ですね…!」
「でも一見の価値はあるよ!それじゃ早速、空の彼方へしゅっぱ~~つ!!」
『ゴオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォ………!!!』
「「「「「………………………………!!!!」」」」」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
凄まじいエンジン音を轟かせ、ロボボアーマーが超高速で動き出す。
後ろに引っ張られる力も凄まじくなるから、皆声が出せないらしい。
その間にもロボボアーマーはぐんぐん上昇し……やがて宇宙空間に到達。
同時に風切音が聞こえなくなり、エンジン音も艦内で聞こえる程度のものになる。
ようやく声が出せるようになったことで、第一声を発したのはダクネスだった。
「お、おいカービィ!一体何をしたんだ?何故急に夜空が」
「夜空なわけないじゃないか、ダクネス。空はもうとっくに超えてるよ」
「何!?そ、それじゃこれは…」
「そう。これが空の向こうに広がる世界…俗に“宇宙空間”と呼ばれる世界だよ」
そう言った途端、ダクネスはまるで見とれるように上半身を乗り出して景色を凝視し、皆もそれに続く。
けど、アイリスだけは違うとこに気が行ったみたい。
「音が急に静かになりましたけど…どうしたんですか?」
「どうもしてないよアイリス。音ってのは空気の振動によって聞こえるものだから、空気の無い宇宙では音が聞こえないんだ」
「ええ!?地上には空気があるのに何故!?」
「ああ、それはね…」
「というかその…何というか普段見ている夜空と大して変わらない気がするんですが…」
「それは今だけだよ。……そろそろいいかな?」
ボクはロボボアーマーを逆噴射で停止させてから旋回させる。
すると、目の前に青くて巨大な丸い星が。
「ほら見てよ」
「な、何ですかあの巨大な球体は!?」
「あれが、ボク達がいた世界…ボク達が住んでる星だよ!」
「「「「「ええええええええ!!??」」」」」
「わ、私達がいた世界って丸かったの!?ならどうして地面に立っていられたの??」
「それは、“重力”が引っ張ってるからだよ」
「じゅう……りょく…??」
ここでボクは、立体スクリーンに星の映像を投影して説明を始める。
「そう。大抵の星にはこんな風に、周りの物を自身の中心に向かって引き寄せる力があるんだ。その中でも、空気がある中で働く力を“重力”、それより外から引っ張る力を“引力”って呼んでるわけ。さっきゆんゆんが質問してきた『地上には空気があるのに何故宇宙には空気が無いのか』ってことだけど、空気にも“重さ”があるから重力に引き寄せられて、星の周りに存在してるわけ」
「な、なるほど……」
「ふ~ん、あの星には3つの大陸があるのか…あ、そうだ。因みにアイリス、今赤く点滅してる所が王都の場所だよ」
「…中央の大陸のちょうど真ん中辺りなんですね」
「だね。左側の大陸は一部開拓されてるみたいだけど…右側は手付かずなのかな?」
「はい。あの左側の大陸には、我が王国とは別の王国が存在しています」
「そうなんだ。よし、どうせだからもっと遠くまで行ってみよう!」
「もっと遠く?」
ボクはロボボアーマーをもう一度旋回させ、コンパネを操作して準備を始める。
到着地点は…この辺でいいか。
「よし、座標計算完了!」
「あ、あの~カービィさん、今度は何をする気で」
「ハイパードライブ、スタート!」
瞬時に星々が光の筋と化し、超空間に突入!
ここでも皆、言葉を失ってるな。
そして超空間を抜けた途端、また饒舌になる。
「…多分また移動したんでしょうけど……ここは一体?」
「今ボク達がいるのは、今いた星から大体230万光年離れたところさ」
「ちょっと待て!230万は分かるが、何なんだその“こうねん”ってのは!?」
「距離を表す単位の1つだよダクネス。まず確認したいんだけど、長さの単位ってどんなの?」
「な、長さ?というとmやkmのことか?」
「そうか、なら話が早いや!」
再度立体スクリーンに映像を投影して説明を始める。
「まず光ってのは1秒間に30万km、つまりボク達の星を1秒で7周と半分くらい移動できるんだ」
「たった1秒でそんなにも!?」
「うん。で“1光年”というのは、そんな光と同じスピードで休まず動き続けて1年かかる距離ってことだよ」
「え……てことは、今いる場所まで来るには光と同じスピードで…230万年かかるってことですよね?それをあんな短時間で…?」
「そう、それを可能にするのが『ハイパードライブ』…分かりやすく言うなら」
ボクは口から長細い紙を1枚取り出して、両端に黒丸を書く。
「…一体何を始めるつもりです?」
「この2点間を最短で結ぶにはどうしたらいい、めぐみん?」
「は?そんなの決まってるでしょう!その2つの丸を結ぶ直線です!」
「だよね。でも『ハイパードライブ』を使うと、こういうことができるのさ!」
紙を曲げて、2つの黒丸を近づけてみせた。
「え~と…これはつまり…」
「つまり、この2点間の間の空間を捻じ曲げて、距離を縮めるようなものなんだ」
「だから短時間で移動できたということか…」
「そういうこと。あ、見てよあれ!」
ボクが目の前に見えた星雲を指さすと、皆は不思議そうに見つめる。
「何ですかあれは……?」
「あれは“銀河系”と言って、たくさんの星が密集してる場所だよ。ボク達がいた星も、あの中にあるんだよ。ちょっと拡大してみるね」
コンパネを操作して、立体スクリーンに拡大映像を投影する。
「…あの白い点は…全部星だったりするの?」
「そうさ……端から端までは、大体10万光年だね」
「光の速さで10万年か…」
「ボク達がいた星は…ここ。今画面に出た縦線と横線が交わってる所だよ」
「なるほど、中心から端までのちょうど中間辺りですか…ところで、あの中心で黄色く光る球体は何ですか?」
「ボクもそこまでは知らないんだ。分かってるのは、あの中心にあるものが、周りの星を一所に集めてるってことだけ」
「そうですか……。というか、そろそろ帰りません?このまま帰れなくなったらシャレになりませんし…」
「そうだね、めぐみん。そろそろ戻ろうか。あ、そうだ!その前に、ついでだからあれも見せようかな?」
ボクは再度ハイパードライブを使い、とある場所に移動。
………………………………………………………………………………………………………………。
「それで~、見せたいものとは?」
「あれだよアイリス」
ボクが指さす先には、炎を噴き出しながらオレンジ色に輝く巨大な星が。
「何です?あの眩しい星は!?」
「あれは太陽、ボク達の星に陽の光を供給してる存在さ」
「…太陽って、間近で見るとこんな感じだったんですか」
「そう。ついでに言うと、ボク達の星に日光が届き続けるように引き留めてるのも、太陽なんだよ」
「太陽が…引き留めている?」
「うん。これも詳しいことは知らないんだけど…取り敢えずこれ見て。さっきも言った“引力”だけど、ある程度発生源から離れた所に、引き寄せられもせず、離れもせず、周りをずっと回っていられる“見えない道”を作り出すことがあるんだ。こんな風にね。ボク達の星を含め、太陽の周りにある幾らかの星は全部、太陽の引力が作り出す“見えない道”を回ってるのさ」
「そ、そうなんですか……宇宙というものは本当に奥が深いですね。皆さん、付いていけなくなっておりますし…」
「そうだね。それじゃ最後に、もう一度ボク達の星を見てから帰ろう!」
その後は皆、難しい話抜きで純粋に宇宙旅行を楽しんでた。
星の色や光の強さ、勿論形に至るまで、いちいち面白がったり不思議がったり。
今のボクにとっては見慣れたものだけど、初見だったらボクも皆と同じように楽しめたんだろうな。
そんなことを思いながら、何事もなく王都まで戻ってこれた。
ついでに思い出づくりの一環として、今まで見てきたものをプリントアウトして残しておくことに。
それはいいんだけど……王都では大事が!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「な…何ですかあれは!?」
そこには1匹のドラゴンと、倒れた大勢の冒険者と騎士。
そのドラゴンというのは勿論……
「ランディア!また何してんの!」
ランディアがおもむろにこっちへ振り向く。
アイリスはたまたま目に留まったケガ人搬送中の救護兵に事情を聞いた。
それによると、アイリスの帰りを待ってる時にランディアが突然現れて、名乗りの後に勝負を挑んできた。
そして誘いに乗った冒険者達と騎士団に対し、まだダメージが相当残ってるというハンデがあるはずのランディアは終始優勢に事を運び、途中高レベル冒険者の強力な攻撃を受けたにもかかわらず、大分余裕を残して勝利したらしい。
「…因みになんですが、あの体の傷は…」
「ああ、多分だけどほぼ全部ボクとバトルした時のだよ」
「ほぼ全部…ですか!?」
(ああ、そうだな。特にこのデカい傷なんかはそうだ。確か『エクステリオン』…とか言っていたような…)
「な、何ですって!?我が王族に伝わる光の斬撃……それもあんなに巨大なものをマトモに食らい、それでも尚…戦い続けられるなんて…とても…とても信じられません……」
愕然となるアイリスを尻目に、十分戦えたのかランディアは悠々と帰って行った。
救護兵が大変そうにしてたので、ボクはロボボアーマーを使ってお手伝い。
一通り終わったら、念のためにボクも診察してもらうことに。
もし傷口が開きでもしたら大変だしね。
一方その頃アイリスとゆんゆん達はというと、ベッドに転がってる冒険者に対し、退屈しのぎの一環でこれまで自分達が見てきたものを、プリントアウトした画像を交えて長々と語った。
ボクの診察が終わって療養所の様子を見に行く途中、衛兵さん達が慌ただしく、それもワクワクした顔で走るのを見て何事かと思って駆け付けると、ゆんゆん達の語りに周りの人全員が耳を傾けてる…。
空を飛ぶことすら叶わないだろうと思われる人達にとって、空の更に向こうに広がる世界の話を聞くなんてものは多分、「人生の宝物」レベルの貴重な体験だろうね。
ボクも空いてるベッドを見つけてその上に座ると、他の冒険者達と一緒に語りを聞き入った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「『セイクリッド・ハイネス・ヒール』!」
翌日、魔力が回復したボクは手始めに自分を治療すると、アクアと分担して王都の怪我人の治療もした。
今日の夕方に宴だもんね。
怪我で参加できなかったなんて寂しすぎるもん。
それに何だかんだでアクアより大勢の人を治療したってことで、皆から称賛されたわけ。
でもって肝心の宴なんだけど…完全にボクに合わせて用意したなこれ。
以前の立ち食い形式じゃなくて、しっかりと椅子に座って食事できるようにしてある。
それに料理のボリュームも相当なもの。
ボクにとっては十分といった印象だけど、普通の人からすると作りすぎだろ、とか思うのかな?
ま兎に角、豪勢な夕食を堪能できたわけ。
そして食事の後は、例の如く宴会芸の注文が来た。
1度やっただけなのに既にリピーターがいるらしく、バルーンアートと例のダンスの注文が来たうえに、ドラゴン探しの前にやったマジックの件が噂になってたらしく、新たにいくらか手品を披露することに。
まぁそれでも、有意義な1日になったことは間違いない。
次回予告
季節は秋に移り、遂に紅魔の里へ向かうことを決めたカービィ。
何もかもがズレているこの里に、再び魔王軍幹部の影が!
そして、この里に眠る“2つの力”により、カービィに新たな力が!?
次回「蛇の邪神?と大砲の戦士?」
下はおまけ(替え歌)
♪重力を振り切り 成層圏突ん裂き
♪星団越え 轟け ブースター
♪真空も震える 宇宙意志もひれふす
♪究極のレベルへ いざ行け!
♪戦艦ハルバード! 優しき破壊神
♪青い命の星 守れ
♪戦艦ハルバード! 射止める主砲ファイア
♪おお輝けプラネットバスター flash!!
♪砂の星掠めて 磁界の海飛び越え
♪使命のため 突き進む 宇宙戦艦
♪黒い影垂らして 行く手塞ぐ魔獣を
♪迎撃だ飛べよ いざ行け!
♪戦艦ハルバード! 雄々しき破壊神
♪はるか宇宙の理想 求め
♪戦艦ハルバード! 荒ぶる主砲ファイア
♪おお無敵のプラネットバスター break!!
♪戦艦ハルバード! 優しき破壊神
♪青い命の星 守れ
♪戦艦ハルバード! 射止める主砲ファイア
♪おお輝けプラネットバスター flash!!