よろしくです。
「エクスカリバー」
「…っう。漸く収まりやがった。ってクソ悪魔の癖にこのエクスカリバーちゃんを知ってるとはねぇ」
雨に打たれている事など頭の隅っこに放置し、祐斗は自分にとって何よりも壊したかった復讐相手と思わぬ形で出会ったことに驚き、声を漏らす。
「…どうやらその輝きと僕の悪寒、本物の様だ」
「そうそう、このエクスなカリバーちゃんで君の端正な顔を切り刻んじゃうぜ☆」
フリードの手の中に収まり、黄金にも似たオーラを刀そのものから発生させる。そのオーラを肌で感じ、悪魔にとっては最恐の武器、聖剣の一本ーーエクスカリバーである事を察知。祐斗は自分の神器である魔剣創造の能力でイメージした魔剣を一振り創造し、手の中に収める。
柄を両手で持ち、腰を落とし、いつでも斬り込める体勢を作り、その時をじっくりと待つ。
フリードは自分の持つエクスカリバーを両手で構え、祐斗の動きを一瞬でも見逃さぬ様に、その目で捉え続ける。
一秒か一分か、互いに正確な答えは知り得なかったが、二人の足が同時に前に出た。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
「ぬひぁぁぁぁ!!!」
声と剣が同調する様にぶつかり合い、大気の波を作る。
鍔迫り合いとなるが剣に力を込め過ぎる事はしない。
けれど祐斗もフリードも互いに力を抜く事などせず、前に力を込め、押し切ろうとしていた。
鍔迫り合いを繰り広げたフリードの剣に込められた力が一瞬ゼロになり、奇妙な浮遊感にも似た物が祐斗を襲った。
前方に体が倒れかけていた祐斗に見えたのは、後ろに後退しようと後ろ向きに跳躍するフリードだった。
「逃がすかぁぁぁ!!!」
「逃げるわけねぇしょ!!!このエクスカリバーちゃんの餌食になりやがれよぉぉ!!!」
後ろへの後退を許すまいと左足を前に突き出し、そこを支点に足に力を込め、全神経を集中させて前に足を突き出し、両手で持っていた剣をフリードに向けて、突き出す。
その剣は後ろに後退しようとするフリードを突き刺す一撃になると確かな手応えを得た祐斗。
しかし、フリードのバックステップは一秒の間も開けずに終わりを告げ、一瞬の反転。フリードの体は前に向かっていく。
フリードはエクスカリバーを肩で担ぐ形で裕斗に突進していき…自分の間合いに祐斗が入るとエクスカリバーを横に一閃。
「ぐわぁぁぁ!!」
フリードの一撃は祐斗の右腕を制服ごと斬り裂き、悪魔にとっては最恐の一撃。聖剣での攻撃に成功する。
その際に斬り裂かれた腕からは黒い液体ーー血が垂れ落ちる。
聖剣での一撃は擦り傷でさえも悪魔にとっては致命傷。その痛みが体をのたうち回り、その場で膝をつく。
「やぁ、やぁ、クソナイト君。 取り敢えず君はここで退場でござんす」
「まだまだ…だっ!!!」
魔剣を杖代わりにして、体を支えて立ち上がる。
その双眼にフリードとエクスカリバーを捉え、狂気と憎しみを携え、それでもなお、祐斗は前に進む。
その行く末は何処に向かうのか、知っていてもなお。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおっ! 片手が使えなくとも中々に厄介でございますなぁ?だけどこのエクスカリバーちゃんには勝てるわけないでしょ!!」
魔剣を片手で持ち上げ、横に薙ぐ。
祐斗の一撃は聖剣の痛みもあって、一撃目とは雲泥の差があると言っていいほどの物。
そんな一撃を後ろに下がるステップで軽やかに避け、エクスカリバーを片手持ちから両手持ちに変え、力を込める。
フリードが両手でエクスカリバーを振り下ろす寸前…。
「んぁ? なるへそ、なるへそ。 ごっめんねぇ☆今日の君の相手はここまでになりやした。ばいちゃらば!!」
小型の魔法陣がフリードの右耳の真横に現れ、数秒程の不穏当な会話の後、自分の羽織っているコートの懐から閃光弾を取り出し、地面に叩きつけ、眩い閃光が祐斗の視界を覆う。
「…逃げたか。 …これは」
視界から光がなくなり、目を開けるとそこにはフリードの姿は居らず、ただ雨が降り注ぐだけであった。
祐斗もフリードの撤退により、手の収めていた魔剣を解除して、足に力を入れ、立ち上がる。
立ち上がった際に先ほどフリードのいた場所が赤い鮮血に染まっている事に気がついた。
祐斗は自分の腕と地面に落ちてある鮮血を見比べても明らかに色が違い、それがフリードの物であると結論付けた。
頭に浮かんだ答えを奥にしまい、祐斗は再び雨の中を歩き始める。
「たくっ! アイツの邪魔が無けりゃ、今頃スッキリ爽快気分になれたってのに!」
「そう、熱くなるなフリードよ。所詮は今のうちだけだ。今ではあの計画により後から生まれたお前の方が主人格となっている。残った人格もいずれは消え去る筈だ。いまさら主人格を取り返す事はほぼ不可能なのだからな。それよりも今は残ったエクスカリバーの回収だ。コカビエルが持っている本数だけではまだ足りんからな」
ーーチュンチュンーー
小鳥のさえずりが巧の耳に届く。
それと同時に体を起こし、背筋を上に向けて伸ばし、横目で自分の周囲を確認。
隣を見てもリアスもアーシアも居らず、巧にしてみれば気を楽にする事のできる朝であった。
「イッセーさん、朝ごはんが出来ましたよ」
「今日も私たちが作ったの。早く食べましょう」
そんな時間もいつの間にか過ぎ、アーシアとリアスが巧の目の前に現れ、モーニングコールの様に巧を朝食へと向かわせる。
巧も体を起こし、一階に行こうとするが、ふと昨日の事が頭を過る。
「昨日はどうだった」
「祐斗の事ね。 私の予感が当たるとなると今のあの子に私たちの言葉が届く可能性は少ないわ。私の王としての力不足を感じるわ」
リアスも巧の言葉一つで聴きたい内容を理解し、返答に応じる。
巧の知らない祐斗の過去が今の祐斗の変貌の一端となっている事だけは分かっていた。
かつての草加雅人がそうであった様に……。
「部長さん、イッセーさん、お父さまとお母さまが待ってますよ」
「ええ、すぐ行くわアーシア」
一階に降りていたアーシアの声で二人の真剣な空気も柔らかい物に変わり、二人はそのまま一階に降りていく。
「なあ松田、イッセーよ! 我々彼女いない同盟で何か大きな事をしようとおもう!」
「それはなんだ元浜よ!!」
「……」
教室に着くなり、松田と元浜の二人に絡まれ、巧はため息をこぼしたくなるが、二人は巧を挟み真剣な面持ちで会話を続ける。
「例えば有名な怪盗を捕まえて、覗き見の極意を教わる…とか!」
「おおおおおっっ!!! それは名案だ!!」
二人は気分が高揚し、席から立ち上がり空中で腕相撲をするのかと思わせる様にして腕を組み、喜びの声を上げる。
「そしてもう一つ…最近、巷で噂となっている灰色の怪人と謎の戦士ーー仮面ライダーについて調べるのだぁ!!」
「はっ??」
「仮面ライダーってなんだ元浜?」
仮面ライダー…。
意味を知らない巧でも何となく、その前後の言葉で察してしまっている。
それはファイズである自分の事ではないかと。
以前、リアスが言っていたようにこの街では灰色の怪人、つまりはオルフェノクの出現が多数あり、巧が憑依する以前から暴れている事も多々あったと耳にしていた。
けれど最近では巧が現れた事を感ずいたのか殆どのオルフェノクは自ら人を襲う事は少なくなりつつある。
けれどオルフェノクを倒していた時期からそういったファイズの存在が噂になり、この二人の耳に届いてしまった。
頭の中でそんな経緯を想定する巧。
「まぁ、仮面ライダーの方は殆どが作り話だけどな。なんかバイクに乗って灰色の怪人を倒したり…などなど、作り話って説もあるが…。
しかーしっ! 先ほどの怪盗に関しては確かな情報がある!この駒王町にはまだ現れていないが、確かにここ最近、犯罪で金を手に入れた奴らから金を奪い取り、貧しい人に分け与える…言うなればルパンの様な怪盗がいるとな」
「それじゃあ…俺たちがその怪盗から覗き見の極意を教われば、女子の着替えを…」
「「見放題ってことだぁぁぁ!!!!」」
エロ男子二人に囲まれ、巧は机に顔を付した。
元浜の話した殆どの言葉を耳にすることなく。
「わぁ、ピッカピカですね!」
キラキラと反射する地面、新品同様に反射した物を映し出すガラス。
それらを前にして、アーシアは驚きを口にして、目を輝かせていた。
旧校舎の改築が終了し、ガラスなどが美しくなり、その風景に心までもが美しくなったと言わんばかりにアーシアの顔もキラキラとしていた。
「……」
隣のアーシアが美しくなった旧校舎に驚いている中、巧も声さえ漏らしていないが、美しく作り立てのような風情を醸し出す旧校舎の改築に驚いてはいた。廊下を歩いていると、一つの曲がり角にぶつかる。
角を曲がると一つの部屋を見つけた。
その部屋の扉を見ただけで、その部屋が自分の知っている旧校舎の中で最も危険な場所では無いかと推測出来た。
「なんだよこれ…」
巧の目に映ったのは、扉全体に警察が事件が起きた際に関係者以外の立ち入りを禁止するために張る「KEEP OUT」の文字が振られているテープが扉に幾重にと貼られ、扉には大きな南京錠が掛けられており、まるでそこには何かが危険な化け物が封印されているような気がしてならなかった。
そっと扉に歩み寄り、封印されたと見える扉に触れようと手を伸ばす。
伸ばした腕が、指がその扉に触れる寸前ーー
「イッセーさん?どうかしたんですか?」
「いや…なんでも無い。 今行く」
自分の背中からアーシアの心配そうな声が聞こえ、急いで扉に向けて伸ばしていた手を引っ込める。
アーシアの心配を駆り立てる気の無い巧はその場から急いで離れ、そのまま振り返る事もなく、その扉から距離を取り、アーシアと合流してリアスの待つ部室に向かった。
そこは月の出ない夜のように暗く、光など一寸も届かない様な闇。
「よかった…封印が解けたんじゃないんだ」
その闇の中でコトコトと音を立てている棺桶。
先ほど扉に触れようとした侵入者が去っていった事に安堵し、溜め息を一つ。
彼はそのまま再び静かに息をひそめる。
この世界に自分だけが居れると祈りながら…。
巧とアーシアが入ったオカルト研究部にはいつも通り、お菓子を頬張る小猫、ソファーに座るリアス、この場にいないのは何時もニコニコとした朱乃とクールな様子の祐斗の二人。
「祐斗は…今は居ないわ」
リアスは祐斗がこの場に居ない辛さを噛み締め、コーヒーを口に含み、流し込む。
「リアス、奴の過去に何があったんだよ」
「そうね、誤魔化すのはもう、意味は無いわね。祐斗は元々、教会が行っていた聖剣計画という計画を行うために集められた…言わば、実験体だったの」
リアスが口にした祐斗の過去。
アーシアは予想もしていなかった答えに両手で口を抑え、小猫も悼む様に目を細める。
二人の様子は祐斗の中にある憎しみの根が更に深いものである事を思わせ、巧は頭の中で予想していた。
祐斗が暴走を始めた大きな理由がこの先にあるーーと。
「聖剣計画は、悪魔に無類のダメージを与える最強の剣、エクスカリバーを扱うために必要な因子を人工的に作り出すための計画よ。
そして祐斗はその因子を埋め込む存在だった。祐斗の他にも多くの子供達が集められ、毎日苦しい薬物の投与を行っていたわ。結果は…誰一人としてエクスカリバーに適応出来ず、そのまま計画は中止となったわ。実験を行った科学者は祐斗達を処分する事にしたの。子供達は必死で抗い…生きるために戦った。けれど…生き残ったのは祐斗ただ一人。その祐斗も教会の者が撒いた毒ガスにより命を落としかけていた。そしてそこを私が通りがかり、私の騎士としてーー悪魔に転生させたの」
リアスの焦点は自分の顔を鏡のように移す紅茶に向けられていたが、話を終えると巧とアーシアに移動する。
「私は…あの子の王失格ね。私がもっとしっかりしてたら、今頃祐斗はここに居たのに」
「…まあ、あいつもバカじゃないだろ。 生きてはいるさ」
巧はリアスの向かいにあるソファーに座りこみ、口を開いた。
リアスは何時もながら、遠まわしな巧のフォローに内心感謝しつつ、紅茶の二口目を含む。
「でも…木場さん、本当に大丈夫でしょうか?」
アーシアも巧のとなりに座りつつ、今はこの場に居ないイケメン少年を心配していた。
しんみりとなる、オカルト研究部室にノックする音が聞こえ、そこから入ってきたのは先程まではこの場にいなかった朱乃だった。
「あらあら、皆さんお揃いですわね。 お客様をお連れしましたわ」
朱乃の後に入ってきたは……この学園の生徒会会長、支取蒼那ことソーナ・シトリー、その人だった。
出来れば、評価の際に何か一言のコメントなどが有れば幸いです。
もちろん僕の勝手なお願いなんですが…。