ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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お気に入りと評価の高さ…。ありがとうございます!!

3巻もクライマックスに向かいますね…。


現れた脅威

 

 

「まさか、俺たちが神父の服を着る事になるとは…」

 

 深い暗闇の中で、匙元士郎は自らが着ている神父の服が鏡に反射する姿を捉え、ため息混じりにボヤく。

 

「けれど…目的のためなら何でもするさ」

 

 隣にて着替えを完了させるのは、木場祐斗。

 二人の目の前には聖剣使いのゼノヴィアとイリナがそれを待ちわびていた。

 外での見張りを行っていた小猫が二人の様子を見て、四人の元に戻る。

 

「それではいいな。 私たちはこの街の西側を探索。君たちは東側を担当してくれ、お互い敵に接触があった場合は携帯電話に連絡をしよう」

 

 イリナは自分の持つ携帯電話を見せ、小猫も同じように携帯電話を持っている事を示した。

 

「それと…一ついいか? 何故この場に兵藤一誠が居ない?彼がいれば、かなりの戦力になる筈だ」

「いいんです…あんな人。 祐斗先輩の為に動こうとも思わない…最低な人です」

 

 小猫は間を空ける事なく、ゼノヴィアに返答した。

 けれど、その言葉は無口な小猫をさらに冷たい印象を抱かせるだけの重さがあった。

 小猫をよく知らない、匙でさえも冷や汗をかきそうになる。

 

 ーーあれぇ…なんで俺、こんな事になってんだ?

 

 

 ここで匙は自らの行動を振り返っていた。

 

 いつも通り生徒会として、想い人であり主でもあるソーナ・シトリーと駒王学園の為に汗水垂らして、働いていた。そんな時に小猫が自分に声をかけた。

 放課後に、小洒落たカフェにて二人だけとなりながら、祐斗の状態と身の上話を聞かされた匙はその場で男泣き。

 二つ言葉で聖剣の破壊に協力する事にした。

 その後、街で救済を求める哀れ過ぎる聖剣使いの二人を見つけて、小猫に呼び出された祐斗と聖剣使いの二人と自分と小猫の五人で聖剣の破壊に挑む事となった。

 

 ここで生まれた疑問は、何故巧がこの場にいないのか、という事だった。

 

 匙の巧ーー兵藤一誠の第一印象は最悪だった。

 女子更衣室の覗き、数々の変態行為。

 それらに手を染め、全くの悪気はなく、寧ろ開き直る。

 これらの行為をしていた一誠が突如、鳴りを潜めた、と話を聞いた時は耳を疑ってしまった程に。

 その後、悪魔として対面してみると、明らかに自分の中の兵藤一誠のイメージが崩れ落ちた。

 更に匙を追い詰めたのは、ライザー・フェニックスとのレーティングゲームの映像をシトリー眷属の皆で見た事だった。

 ファイズとなり、戦う巧にまだ幼かった頃に見ていたヒーロー物の主人公を投影してしまったのだ。

 それ程までに巧の後ろ姿に影響された匙は彼にーー自らのヒーローに追いつく為にも震える足を叱咤しながら、この場に立っているのだ。

 

 

 

「それでは、我々は街の西側を探索する。君たちは東側を頼む」

 

 ゼノヴィアの静かなる指令と共に作戦は開始された。

 

 

 

 

 

 

「と言っても、聖剣を持った神父なんてすぐに見つかるのか?」

 

 別行動をとって、公道を悪魔組の三人は歩いていた。

 どこの方角からの攻撃にも対応するために三角形の形をしつつ、移動を行う中で中々現れない、聖剣泥棒に対しての疑問を口にする。

 

「以前、僕と交戦したこともある。だから、ここよりも人気のない場所にいる可能性はあるかもしれない」

 

 祐斗は以前の戦闘からして、人気のないとは言え、公道でフリードが襲ってくることの可能性が低いことを提示し、ここからの移動を示唆した。

 小猫も同様の考えで祐斗の発言に苦言は一切受け付けなかった。

 

 匙は祐斗の提案に乗る形で聞き返す。

 

「なんだ、ここよりいい場所知ってるのか?」

「ああ…ない事はない」

 

 三人はその場から駆け足で移動し、夜の街から姿を消していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで…悪魔くんは今の所ボウズみたいだな」

 

 巧の依頼人である男性は、これまた生きのいい魚を釣り上げ、糸を持ち上げながら、釣った魚をバケツに入れる。

 隣で座る巧の様子を首だけ向ける形で確認すると、釣竿はピクリとも動かず、まさにボウズと言える状態。

 

「…なんだよ」

 

 男性がやっぱりと言った顔で見ていた為に急に羞恥が湧き出てきて、目を細め、これまた不機嫌と言った顔を見せる。

 巧の不機嫌そうな顔を見て、男性は笑みをこぼす。

 

「そんなに怒ってると体に力が入りすぎて、魚も逃げてくんじゃねえのか?」

 

 男性の指摘は間違っていない。

 巧は水面を覗き込み、自分の餌の状態を確認。

 夜行性である悪魔とオルフェノクの細胞が混ざっている巧にしてみれば、水面越しや夜間でも問題なく目視できた。

 水面越しに見える巧の餌は全くと言っていいほどに食われていなかった。

 対して隣の男性が仕掛けた餌には今なお、新しい魚が食いつきそうだった。

 二人の距離は2メートルも離れていない。

 つまりは魚たちはわざと巧の仕掛けた餌を食おうとはしない。海の上にいる圧倒的な捕食者の存在に気が付いているから。

 巧自身もここまでくると一匹でも釣りたいと思い始め、体の力を抜いて、イライラによって無意識のうちに体の外に殺気とまではいかないが、闘気に似た物を発していた事に気がつく。

 普段通りの気持ちで魚を待つ事約五分後…。

 

「釣れたみたいだな、悪魔くん」

「ああ…一応、な」

 

 釣れた魚を男性と同じバケツに入れ、一息つく。

 完全に力を抜いた巧がその場から、立ち上がる。

 目を大きく見開き、感覚を研ぎ澄ませ、目と耳で目の前に現れるであろう”敵”を待ち構えた。

 

「まさか…この距離で気づかれるとは」

 

 周囲の建物の影と夜の闇から声が聞こえる。

 声の持ち主は夜の影から足音を響かせ、現れた。

 黒いタイトなズポンに灰色のTシャツと黒のシャツといった格好をした少年だった。

 ダークグレーと呼ばれる白と黒が混ざった色。だが白の色が強い髪を持ち、どこか現実離れした美少年と呼ぶべき容姿。

 

「すまねえな、驚かせて。前に話したろ? こいつが俺の義理の息子って感じのヴァーリだ」

「ああ。君の話を聞いてね、少し興味を持ったから会いに来たのさ」

 

 アザゼルはヴァーリの隣に立って、巧に説明をする。

 先ほどの映像を見た為にヴァーリに対し、隣の男性と同じ安心感を持つ事は難しいと思ってしまう巧。

 不安感が心中に募る巧だったが、ここで巧の体は巨大な何かを感じ取る。

 無意識にその方向に体を向けてしまっていた。

 突如、別方向に体を向けた巧に対し、驚きもせずにその様子を男性とヴァーリは伺っていた。

 

「あんたら…もう家に帰れ。それと俺は今日はここまでしか付き合えない」

 

 巧は先ほどの感覚が、何処で味わったのかという答えをすぐに導き出していた。

 何かをえぐられる感覚、それは悪魔にとっては天敵の聖剣でしかない。

 その感覚が以前、ゼノヴィアとイリナが戦闘をせずにそのまま状態で感じ取った物とは格が違う。

 それはつまり、それほどに大きな力が働いている事を意味する。

 釣りを行っていた場所から走り出し、ファイズフォンを取り出し、素早くコードの入力を開始し始めた。

 

 

 

 

 

 

「イリナ、彼らの場所まで後どれくらいだ!?」

「ええ…と、一分もしないよ!」

 

 木々が生い茂った森と認定されてる場所を、白と緑のラインの入ったコードを纏いながら、ゼノヴィアとイリナは駆け抜けていた。

 ゼノヴィアは肩に自らの聖剣、破壊の聖剣を抱える。

 イリナも肩に紐の形に変形させた、擬態の聖剣の解放を急ぐ。

 小猫からの連絡で場所と状況が伝わり、二人も戦闘準備を走りながら、行っていた。

 

「見えた! 」

 

 自らの体を覆うコートを勢いよく外し、少し露出のある教会の戦闘服が露わになる。

 ゼノヴィアの視線の先に、木々がなくなり、光が差し込む開けた場所と距離がある為に正確には見切れないが、戦闘を行っている祐斗を捉えた。

 

「はぁぁあ!!」

 

 相棒を解放し、両手で担ぎ上げながら、ゼノヴィアは祐斗と聖剣泥棒のフリードの間を裂くように斬りかかる。

 聖剣を振り下ろし、二人は以前オルフェノクとなったはぐれ悪魔のバイザーを撃退した建物の屋上を破壊した。

 

「はぃぃ??またまた新手ちゃんですか??」

 

 祐斗と斬り結んでいた相手ーーフリードは破壊された屋上からまだ壊されていない地帯に飛び移る。

 フリードが肩にトントンと置いていたのは、聖剣。

 

「あれが盗まれた聖剣ね」

「はい。あれは天閃の聖剣、祐斗先輩の速さと殆ど同じです」

 

 フリードの持つ聖剣の正体を知ったイリナ。

 厄介な速さ故に中々攻めきれない小猫。

 匙は手首を回し、何かを準備するような仕草を見せる。

 

「木場!ゼノヴィアさん!俺が奴の足を止める。

 その隙に攻めるんだ! ラインよ!」

 

 匙の右手首から濃いピンク色の光が発生し、黒い何かを形成していく。

 黒い蛇を模した神器。

 その名もーー

 

「行くぜ、黒い龍脈!!」

 

 黒い蛇の口元から青白いラインのような物が発射され、祐斗とゼノヴィアのみを警戒していたフリードの足に勢いよく、幾重にも巻き付いた。

 

「よしきた!今だ!!」

 

 フリードは突然の事で不意を突かれ、自らの足に絡まる物体を見て、焦りを感じた。

 

「クソォ!なんですか、コレェ!!」

 

 自らの持つ聖剣でラインを断ち切ろうと振り下ろしてみるが、ラインと刀身が接触しても一向に切れる気配はない。

 

「はぁぁあ!!」

「これで終わりだぁぁ!!」

 

 フリードの最も近い位置にいたゼノヴィアと祐斗が勢いを付け、加速し自らが持つ刃でフリードを切り裂こうとした。

 フリードの視線とゼノヴィアの視線が重なる。

 ゼノヴィアの頭を支配したのは、攻撃よりも

 

 

 

 

 幼き日の記憶だった。

 

 

 

 

「ア、ア…レン?」

 

 ーーそんなはずはない!…アレンはアレンはっ!

 

 

 いきなり急停止したゼノヴィアを見て、祐斗も動きが止まる。下にいたはずのイリナもゼノヴィアの様子を見て、何かと合点が一致した顔を見せた。

 

「そ、そんな…。貴様はフリード・セルゼンじゃないのか…?」

 

 

 

 

「いいや…違う。この男はフリード・セルゼンという名前ではない。本当の名前は…お前が一番知ってる筈だ」

 

 建物から顔を見せたのは一人の男性。

 眼鏡をかけ、口髭を蓄えた神父服に似たものを着ている男。

 この男は祐斗とその仲間を奪った元凶、聖剣計画の発案者であり、その咎を問われ追放となったーー

 

 

「バルパー・ガルレイッ!!」

 

 祐斗は突如現れた男性に憎悪の念が込められた目で直視していた。

 イリナは呆然として動かないゼノヴィアの代わりとして、フリードを戦闘不能にするための一撃を食らわせる為にその場から発進する。

 

「フリード、体に流れる因子を聖剣に集中させろ!そうすればその程度の拘束など容易い」

「アイアイさぁ!」

 

 フリードが目を閉じたコンマがつくほどの間で聖剣全体に黄金色の光が灯る。

 その光を帯びた聖剣でラインを断ち切った。

 背後から祐斗が最高速のスピードを持って、接近。

 斜めからの振り下ろしを狙って、魔剣を振り抜く!!

 

「あまっい」

「なっ!?」

「フリード、今の状態では勝てるものも勝てない。再び、薬を投薬してやる。そろそろ、お前が主人格となるだろう」

 

 手に持った聖剣を背後に回す事で祐斗の振り抜いた刃の勢いを相殺し、受け止めた。

 建物の屋上から、バルパーのいる地点まで飛び降りる。

 小猫と匙、イリナもフリードとバルパーが逃げる事を予感し、二人のいる場所まで走り出すが…。

 

「はい…ちゃらば!!」

 

 再びの閃光弾に視界を奪われた。

 次の瞬間には、そこには誰もいなかった。

 

「そんな…いや、そんな筈はないっ! イリナ…奴らを追うぞ!」

「ちょっと、待って!ゼノヴィア」

「木場!」

「祐斗先輩ッ!!」

 

 屋上からすぐに飛び降り、元来た道を巻き戻るように引き返し始めるゼノヴィアとそれを追うイリナ。

 言葉一つ発さずに静かな表情で祐斗も二人を追った。

 匙と小猫はなにも出来ない無力感をその場で打ち拉がれながら、噛み締めていた。

 

 

「それで…一体これはどういう事、小猫?」

「説明してもらいますよ…匙?」

 

 小猫と匙の前にこの状況で会いたくない人ナンバーワンが現れてしまった…。

 

 

 

 

 

 

 

「それで、祐斗はそのバルパーを聖剣使い二人と共に追っていったのね?」

「はい…」

 

 小猫は現れたリアスと朱乃にこれまでの経緯を話した。

 勝手な行動とはいえ、主人であるリアスを心配させた事は申し訳ないと思い、罪悪感を感じていた。

 

「イッ…あの人はどこにいますか?」

 

 一瞬、巧の名を口にしかけたが、間を空けて言い直し、巧に対する評価を形容した。

 リアスと朱乃もあの人と言われ、少し考えるが、すぐに巧の事だと気付き、小猫の肩に手を置く。

 

「小猫…イッセーは祐斗の事を見捨てたわけじゃないの。イッセーが…彼が誰かを見捨てた事がある?」

「でも…ッ。あの人は断りました。動くなと言われた事を理由にして」

 

 姉と同じだった。

 自分を守ってくれると、そばに居てくれると信じていた姉は突然、力に溺れ自分を捨てた。

 

 彼も一緒だった。

 突然現れて、自分や仲間を助け…自らが持つ大きな力を誰かの為に、誰かの『夢』を守る為。

 

 怖かった。そばにいてくれる人が自分から離れるのは…。

 

「小猫…あの人はきっと私たちを裏切らない。それだけは約束するわ」

「……はい」

 

 力なく頷いた小猫は極度の緊張状態にいた為か、今は居ない姉を思い、心労が祟ったのか。

 その場から崩れ落ちるように眠りについた。

 

「全く…。朱乃、イッセーは?」

「はい、今は…バジン君と共に祐斗君の捜索を行ってくれてます」

「良かったわ…事前に連絡しといて」

 

 眠り姫のように可愛らしい寝顔をした小猫をお姫様抱っこをしつつ、リアスは朱乃が展開した円形の魔法陣を足下に展開された、魔法陣によって帰宅した。

 

 

「あの会長…向こうはいい感じで終わりましたけど…」

「うちはうち、他所は他所ですっ! 尻叩き後、997回!」

「ヒィィィィィ!!!」

 

 匙が四つん這いになって、ソーナからの物理的な説教を尻叩きという形で受けていた。

 翌日、彼の尻が真っ赤になっていたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつから連絡は」

「無かったわ」

 

 悠斗の失踪から一夜が明けた。

 一晩かけて、巧は祐斗とゼノヴィアとイリナの捜索をしたが、見つける事はできなかった。

 

「私たちも、ただ待っているだけではいけませんので、使い魔を放って探索中です」

 

 朱乃から今の状態を聞き、巧はその場から動き、部室に置いてあるアレを取り出した。

 

「どこに行くの? そんな物まで持って」

「あいつら…探しに行くんだよ」

 

 巧が肩にかけたのはナップザック。

 その中に入っているのはファイズギア。

 リアスは巧の言葉を背中で受けて、任務を出す。

 

「もしも…何かあったら、連絡を頂戴」

「ああ…」

 

 それだけ答え、巧は部室を出た。

 アーシアはこれから一体どうなるのか、という不安と今だ姿を見せぬ祐斗の無事を心中で祈っていた。

 

 

 

 巧が部室を出て、数十分。

 リアスの使い魔からの連絡を受け、リアス達はその場所に即座に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ…これは!」

 

 魔法陣による移動で飛んだのは駒王町にある山の一帯にある公園だった。

 ついて即座にリアスが目にしたのは、人としての形をした自らの使い魔に介抱されているイリナだった。

 

 教会の戦闘服はほとんどが破られて、体にはいくつもの生傷があり、先程まで凄まじい戦闘を行っていた事を語っていた。

 

「アーシア!」

「はいっ!…一体、誰がこんな事を」

 

 リアスの指示と同時にアーシアはイリナに駆け寄り、両手の中指から指輪が形成される。聖母の微笑での治療効果をもたらす、エメラルドグリーンの光が発生し、生傷の多いイリナの体を癒す。

 

「二人は…無事よ。私だけが…逃げおくれて…。あいつの力…パンパじゃない」

 

 それだけ伝えて、イリナは再び意識を失った。

 あいつと称されたのが誰なのか、リアスには見当がついてしまう。けれどその人物であることだけは外れて欲しいと願うリアス。

 

 グレモリーの紋章とは違う物が刻まれた魔法陣がリアス達のそばに出現し、ソーナ達はこの場に到着した。

 

 

「リアス」

「ソーナ、来てくれたのね」

「ええ、連絡をもらったのに来ないわけにはいきませんからね。それよりも彼女の体力の消耗が酷いですね」

「はい…。私の治療では、失った体力は元に戻せません」

 

 ソーナはアーシアの治療を受けるイリナの容体を把握し、この場所での治療はここまでと判断を下す。

 

「私の自宅に彼女を運びます。そこならば、医療施設は揃ってますので。椿姫、彼女を頼みます」

「はい」

 

 ソーナの女王たる椿姫は王の指示により、イリナの体を抱え上げる。

 再び足下に魔法陣を展開させ、ソーナの自宅に転移した。

 

「一応、祐斗ともう一人の聖剣使いの無事も分かった事だし、イッセーを呼びましょう」

 

 リアスは携帯を開き、巧にメールで公園にいる事とイリナの状態を打ち込み、送信した。

 匙はいきなりの展開に何が何だか、把握しきれておらず、申し訳なさそうにソーナに尋ねた。

 

「あの…今ってどうゆう状況に…ッッ!!」

 

 質問の途中で胸に何かが突き刺さる寒気を覚える。

 匙と同様の反応を小猫やアーシアも見せた。

 ソーナとリアスと朱乃はこの寒気を一瞬で理解し、その元凶がいる方角に視線を重ねる。

 

「あらあら?見つかっちゃいましたね☆」

 

 匙にとっては二回目の対面で小猫やアーシアはよく見知った顔。フリードが並木の一本の影から姿を見せた。

 ここまでのプレッシャーをフリードから感じた事に疑問を感じえないソーナ。

 確かに実力はあるが、それでもあそこまでのプレッシャーを感じるほど歴然と差があるとも思えなかった。

 

「あらあら、気がついちゃいました??」

 

 不敵な笑みを浮かべ、自らの体を覆うコートを広げる。

 その中に収められてある物を見て、ソーナは答えに辿り着いた。

 

「なるほど…あなたはいくつもの聖剣を所持しているのですね。だから、彼女を圧倒できた」

「いや、あのツインテールのお姉さんから擬態の聖剣を頂いたのは俺様ですが、今は戦うつもりはナッシングッ!!」

 

 好戦的な性格のフリードらしからぬ行動。

 両手を挙げて、一応の降伏のポーズを見せる。

 

「まあ、お話があるんだわぁ…うちのボスが」

 

 

 空の色が変わった。

 

 先ほどまで夕日が照らしていた街は見えなくなり、紫な青などが入り混じった色に変貌し、空に一人の男が浮かぶ。

 

「堕天使…」

「それに翼が10枚…幹部クラスですわ」

 

 空に浮かぶ男はこの場にいる誰よりも大きな体を持ち、堕天使特有の黒い翼を両脇に5枚ずつ生やし、その存在の大きさを表していた。

 

「初めましてだな、リアス・グレモリー。我が名はコカビエル」

 

 空に浮かんだコカビエルは口を開き、リアス達を見下ろした状態から薄ら笑いを浮かべる。

 リアスもお返しと言わんばかりに勝気な笑みを浮かべ、返答に応じる。

 

「ええ、初めまして堕天使の幹部さん。それで、この地に一体何の目的で侵入したのかしら?」

 

 ここで全ての謎を解き明かす、そのつもりでコカビエルに問う。

 質問をされたコカビエルもリアスに知られても問題は無いと判断したのか、ただの気まぐれか、質問に答えた。

 

「一言で言えば、再び戦争を引き起こす為だ。取り敢えずはこの街で暴れさせてもらう。そうすればお前の兄、サーゼクスは出てこざるを得ないだろう」

 

 何気なく答えたコカビエルにリアスは恐れを抱く。

 そんな危険なことを軽々と口にして、実行に移そうとする目の前の堕天使に。

 今、そんなことをすればどれほどの被害、そしてその先に待つ物をリアスは予感していた。

 

「確かに、そんなことをすれば…再び戦争が始まるわ。でも今度こそ、止められなくなる。人間も堕天使も天使も…悪魔も皆が滅びるわ」

 

 言葉で止められる相手では無いと分かっていたが、一抹の望みを抱き、否定をする。

 

「そうか…なら、それも面白いだろう。俺は…ずっと退屈してたんだよ。アザゼルやシェムハザは戦争に乗り気ではなく、悪魔も今や平穏を望む魔王になり、天使は…」

 

 突如、言葉を切ったコカビエルを首を傾げつつも、リアスは隣のソーナに視線を向ける。

 冷や汗をかきながら、コカビエルの企みを聞き出そうと今度はソーナが質問を問い直そうとするも、それを消すようにコカビエルは強く宣言する。

 

「リアス・グレモリー、ソーナ・シトリー。貴様らの通う学び舎…たしか、駒王学園とだったな。そこを戦場の中心としよう。貴様らの通う学び舎だ…魔力が立ち込め、心地よい混沌が楽しめそうだ」

 

 

 翼を広げながら、コカビエルは君の悪い笑みを浮かべる。

 高笑いをしていたコカビエルが突如、その笑いを止めて、何かを思い出すようにリアスに問いかける。

 

「リアス・グレモリー。 貴様の眷属の…」

「やあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 高らかな叫びがコカビエルに届き、その音源を辿ろうと体を振り向くと自分に向かって右足を突き出し、まっすぐ突っ込んでくる仮面の戦士が目に写り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 時を遡る事、数十分前。

 祐斗とゼノヴィアとイリナを探す為に勢いよく部室を飛び出た巧であったが、その結果は芳しくない。

 

 そんな状態が続いていた巧の元にリアスからのメールが届く。

 学生ズボンに入っているファイズフォンを取り出し、メールを確認するとイリナの発見と祐斗とゼノヴィアは無事であること、リアス達の現在地が書かれたメールを確認。

 急いで巧もその場に向かった。

 

 

 オートバジンの交通規制ギリギリまで飛ばし、リアス達のいる公園に向かうその途中。

 巧は自らの目を疑った。

 突如、自分の視界が捉えていた公園の周囲の空が青と紫の混じった色の何かに包まれたように見えた。

 

「くそっ…!」

 

 ヘルメットに下で苦しそうに声を漏らす。

 明らかに異常事態。

 この時点で巧は交通規制のルールを破るほどのスピードでオートバジンを走らせていた。

 

 

 

 

 

 オートバジンのエンジンにより、思わぬ速さで公園付近まで到着した巧だったが…巧の目の前で壁にぶつかった。

 

 先ほど、明らかに何者かが細工し、リアス達のいる公園に奇妙な細工を施した事。

 自分がそのまま向かっていっても、無事に合流できるのかという物。

 しかし、しかしなどと考える時間などないのだ。

 この青紫の壁を破って行くしかない、結論付けた巧はオートバジンの後輪部分に留め具をしておいてあるナップザックから、ファイズドライバーを腰に巻きつける。

 

 5・5・5

 

 いつも通りの変身コードをリズム良く入力。

 Enterキーを押す。

 

『Standying By』

 

「変身」

 

 いつもより静かに、ファイズフォンを胸の高さまで掲げ、呟くように言いながら、ファイズフォンをベルトに装填。

 垂直となった携帯を真横に倒す。

 

『Complete』

 

 フォトンブラッドが巧の体を覆う。

 一瞬にしてファイズに変身を完了させる。

 そのまま流れるように、オートバジンに跨り、勢いよくその場から発進。

 スピードを加速させ、青紫の壁を打ち壊しながら公園への侵入を完了させた。

 ファイズは閉ざされた空間の中で最も大きなプレッシャーを侵入して一秒も立たぬ間に感じ取った。

 迷いなど生まれない、ファイズは相棒と共に大きなプレッシャーの持ち主の元に向かっていく。

 

 

「あれ…かよ」

 

 ファイズは大きなプレッシャーの持ち主を見つけ出し、それが空に浮かぶ黒い羽を持った存在。

 堕天使である事を把握したが、以前倒したレイナーレとは格が違うなどこの距離でも分かっていた。

 恐らく、強化形態なしの今の現状で勝つ事は難しい。

 

 巧の頭にはオルフェノクの実力者が集められたグループ、ラッキークローバーの面々が浮かび上がる。

 少なくとも、あのクラスの実力者である事は覚悟しなければならない。

 しかも攻撃の破壊力では目の前の存在が圧倒的に強い。

 それらの点から、巧が有効な手として考えたのは背後からのクリムゾンスマッシュだけだった。

 

『Battle mode』

 

 状況を伺っていたオートバジンも意志を持って、変形。

 そのままジェット噴射を行い、ファイズの土台になる事にした。

 

『Ready』

『EXceed Charge』

 

 ミッションメモリーを腰に付けてあるファイズポインターに装填し、右足に取り付ける。

 真横に倒されたファイズフォンを開き、Enterキーを押す。

 フォトンブラッドが体のラインを伝わり、右足に収束され、溜まりきったところでスタートを切り、その場から疾走。

 

「はぁ!」

 

 加速をつけたところで、跳躍。

 オートバジンの浮遊している地点まで悠々と到着し、鋼鉄の相棒を踏み切り板の様に勢いをつけるために踏み、再び空高く跳躍。

 

 

 空中で一回転し、ファイズポインターから赤い光、ポインティングマーカが飛び出る。

 それは背中を向けたコカビエルの体を到着し、円錐状に形を広げる。

 

 

 

 

 そして

 

 

「やあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ファイズの攻撃がコカビエルに牙を向く。

 

「この力…。そうか貴様が『ファイズ』だなぁ!」

 

 コカビエルへの後ろからの奇襲。

 現時点での最強必殺、クリムゾンスマッシュでの攻撃はポインティングマーカをつける時点までは成功の色を見せていたが、やはり歴戦の堕天使の名は伊達ではなかった。

 

「うらぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 背後にいるファイズの必殺キックを堕天使の生み出す光の槍を盾として活用させ、真っ向から捻り潰そうとした。

 声を上げ、気合いを入れ直す。

 赤い光と金色の光が互いを飲み込まんとする勢いで発光し、巨大な爆発が発生。

 

 ファイズとコカビエルはその爆発に飲み込まれた。

 




というわけで、今回で書き溜めは終わりです。
でも、なんとか三巻は終わらせるまでは投稿は続けます。
…まぁ、毎日投稿では無くなりますが。

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