ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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555 vs スティングフィッシュオルフェノク

「なんだそれ?」

 

 変身したファイズの姿を見て、スティングフィッシュオルフェノクは一言声に出した。

 巧も返答をせず、暗い建物に冷たい静寂が生まれる。リアスはそっと唾を飲み込む。

 唾が喉を通り、体の中に入っていくのがよく分かる。それほどまでの緊張が体に走っているという事実を認め、あの青年ーー巧が勝つことを祈り、そっと視線を向ける。

 

「ファイズだ」

 

 言葉短くオルフェノクの疑問に答え、手首をスナップさせるとカシャという金属音が鳴る。それが開戦の狼煙となった。

 

「意味分かんねえよぉぉ!!!」

 

 相手は、叫びながらファイズに向けて駆け出した。

 その手には先ほどのトライデントを構えながら、一歩一歩確実にファイズへと近づいていく。

 ファイズは、相手の攻撃を待つようにその場で静止の姿勢で構えながら、その双眼でオルフェノクを視界に入れる。

 

「ふんっっ!!!!」

 

 両手で持っていたトライデントを、自分の射程範囲内に入った直後、自分の持つ筋力のすべてを集中させ、ファイズの体を射抜かんと言わんばかりの速さで前に向けてトライデントでの刺突を繰り出す。

 

 ーー勝った。

 

 何時ものように相手の命を奪ったと、例え相手が姿を変えようと自分には勝てるはずが無い。

 そんな確信めいた物を持っていたスティングフィッシュオルフェノクの腹部に強い痛みが生じる。

 

「がふっっ!!」

 

 腹部の痛みにより、その場で膝をつく。

 自分への攻撃を仕掛けたであろうファイズを探すが見当たらない。

 キョロキョロと周りを見ようと体を後ろに向けた瞬間、今度は自分の顔の左半分に痛みが生じる。

 

「うらっ!!」

 

 ファイズの気合の篭った声が耳に聞こえ、その時に視界に入ったのは自分の顔に全力での蹴りを入れるファイズの姿だった。

 ファイズの蹴りにより、その場から吹き飛ばされ地面を転がりなから距離を取る。

 

 ーーなんだよあいつ!? なんで人間の攻撃が痛いんだよ!! 

 

 今までに会ったことのない未知の敵の出現。

 そして、その者と自分の力の差をたった数回の攻撃を喰らっただけで理解をしたスティングフィッシュオルフェノクはその場から逃げ出したいという恐怖が生まれた。

 しかしファイズはそんな事を気にせずに、カツーンという金属音と足音をこの建物内に響かせながら、確実に自分の元に向かって来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい……」

 

 リアスはファイズーー巧の戦いぶりを見てそう一言呟いた。

 自分では全く勝ち目のない相手をあそこ迄、余裕を見せながら圧倒出来る巧にリアスは驚きを覚える。

 それもそのはず、巧は一年間もの間、オルフェノクと戦い続けてきたのだから。

 元々、オルフェノクであった為に身体能力は高く、それに加え長年に渡り、命を賭けた本当の戦いをしてきた巧にとってはスティングフィッシュオルフェノクなどは、余裕を持って倒せる相手だった。

 巧が兵藤一誠に憑依する前から戦ってきた事は先ほどの話だけは聞いていたが、こうやって目にするとその事実を認めざるを得ない。

 オルフェノクと戦えるのはファイズの力もその理由の一端にあるが、それ以前にその巨大な力を巧が使いこなしているからこそ、あそこまでの戦闘能力を発揮出来るという事をリアスは認識していた。

 

 ーー彼は一体何者なんだろう。

 

 リアスは巧を見て、巧のことをもっともっと知りたいという気持ちにさせられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前のスティングフィッシュオルフェノクの腹部へのボディーブローを一撃入れ、膝を地面につこうとした相手の肩に手をやり、そのまま立ち上がらせて、顔に拳を撃ち込み、振り上げた足で胸元を蹴り込まれた相手はそのまま宙を舞い、数秒の浮遊の後に地面に叩きつけられる。

 

 巧は、目の前の相手との対峙が初めてでは無かった。

 このスティングフィッシュオルフェノクは、自分がまだ乾巧の頃に初めて園田真里と出会い、その際にファイズギアを使い、初めてファイズに変身をして倒したオルフェノクだと記憶して、目の前にいる相手がそのオルフェノクと一致すると思い出していた。

 

「くそぉぉぉ!!!」

 

 スティングフィッシュオルフェノクは余裕を持って戦うファイズとそんなファイズに圧倒させらている自分に怒りを露わにして、咆哮の如く、声を上げる。

 怒りを向ける対象のファイズを視界に入れながら、両手でしっかりとトライデントを握りしめ、足を前に進める。

 そのままオルフェノクに接近し、ファイズの胸部に向けてトライデントを持ち手を両手から利き手である右手に変えて、腕を一瞬引いて、一秒もしない内に右手を前に突き出し、そのトライデントはファイズの胸部を貫く軌道に乗っていたが……。

 

 

「なんでだよっっ!!!!」

 

「らぁぁ!!!!」

 

 トライデントは虚しくも空を切った。

 軌道上にはすでにファイズは居らず、誰もいない空間をトライデントは貫いたのだ。

 ファイズは自分に向かってくる、トライデントを右に体を少し傾けただけの最小限の動きだけを行い、そのまま自分を貫こうとするトライデントを持っていたスティングフィッシュオルフェノクの手首を拳で弾いた。

 トライデントを持っていた右手の手首は攻撃により、そこに入る力は一瞬無くなり、握りしめていたトライデントは地面へと落下。

 落下の際にはトライデントと地面がぶつかり合う、キィィンという金属音が響いただけだった。

 

 そこからファイズは、前に突き出していた右手を自分の左手で掴み、逃げる事を許さない様な力で動きを封じ込め、相手の体の脇に拳を撃ち込み、最後に半歩引いてからの蹴り込みを脇腹に打ち込んだ。

 

「ハァ……ハァ……」

 

 例え、オルフェノクになろうと基本的な体の構造は人間と同じである為、人体急所を攻撃されればそれだけ、攻撃によりダメージも大きい物となる。

 スティングフィッシュオルフェノクも脇を攻撃された事により、息を乱して、空気中の酸素を多く欲し、大きく呼吸を行っていた。

 

 ーーこいつ……っっ!! 殺すっ!!! 

 

 オルフェノクとなった自分。

 誰も勝てる筈のない境地に達した筈の自分をこうも圧倒するファイズに疑問や謎を持つ前に怒りを抱く。

 

 ファイズーー巧は、乾巧の体の時から様々なオルフェノクと戦闘を繰り返してきた。

 このスティングフィッシュオルフェノクもかつて倒したオルフェノク一人。さらには上級のオルフェノクの中でも特に力を誇っていたラッキークローバー。スマートブレインの社長、村上ーーローズオルフェノク。

 最後にはオルフェノクの王である、アークオルフェノクにさえも、最強形態であるファイズブラスターフォームとなり、仲間である木場勇次と三原修二が変身したカイザとデルタと共に戦い、勝利さえもしてみせた巧にとっては目の前のスティングフィッシュオルフェノクは弱い部類に入るのは当然だった。

 しかし相手はそんな事を知らないため、強くなったはずの自分を見下している物とファイズを認識して、攻撃を仕掛けていた。

 

「このやろぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 叫ぶと同時に、スティングフィッシュオルフェノクの下半身が変化をし始める。

 しっかりと両足が付いていたはずの下半身が魚の尻尾の様な形態に変化し、その体は宙に浮かぶ様になった。

 

「へへへ……お前は空飛べないもんな!」

 

 ファイズの姿から、空中の飛行は出来ないという事が分かり、自分に利がある空中からの攻撃に切り替え、ファイズを、嘲るよう様な笑みを見せる。

 

「空飛べるからって強くなる訳じゃねえだろ」

 

 そんな余裕を見せつけるスティングフィッシュオルフェノクに皮肉を込めた一言を言ってのけ、相手の攻撃を待つ。

 

「んな事言ってやられるのも何時までかな!!」

 

 ファイズの一言が琴線に触れ、宙に浮いた状態のまま、体を傾ける。

 頭はファイズに向けられたままで、そのまま突撃してくる事は明らかであった。

 体制を整え、数秒が経った瞬間、自分の下半身である尻尾を、大きく動かしてそのままファイズに向けて突進をする。

 落下により加速と自分で行う加速により、まるで弾丸の様にファイズの元に向かっていく。

 

「危ないっっ!!」

 

 スティングフィッシュオルフェノクがファイズに迫り、横に逸れたり、相手を飛び越えようとする動作を行おうとしないファイズを見てリアスはその危機を伝える為にできるだけ大きな声で叫ぶ。

 しかし、それはリアスの杞憂にて終わる。

 

 ーーこれで終わりだ!! 

 

 自分の攻撃を全く避けようとしないファイズはもう勝つことを諦めたのかと思い、つい口元がにやけるのを止められなかったスティングフィッシュオルフェノクはファイズの次の行動を見て、現実に引き戻される。

 

 ファイズは自分の体を、後ろに倒してそっと重力の働きに従って、そのまま身を任せる。

 その際にもスティングフィッシュオルフェノクの突撃は迫り、止まることはない。

 しかし、ファイズが地面に倒れこんだ事により、ファイズの立っていた場所をそのまま通過してしまうと思った矢先にスティングフィッシュオルフェノクは自分の腹部に生じる痛みに気がつく。

 

「うらぁぁぁ!!!」

 

 痛みはファイズのオーバヘッドキックによるものだった。

 地面に倒れた状態から足を振り上げ、そのまま相手の腹部への蹴りを全力で叩き込む。

 ファイズの蹴りと自分の突撃の速さにより、壁に正面衝突を起こし、体への痛みはさらに大きくなる。

 なんとか体を起こし、ファイズを探すが壁にぶつかった時の衝撃で崩れた壁の一部から土煙などが発生し、視界をそれらに奪われ、ファイズの姿を見失う。

 

 

『Ready』

『Exceed Charge』

 

 土煙の向こうからそんな音声が聞こえる。

 そっと目を細めて見てみると……そこには、右足に何かライトのような物を固定させ、陸上のクラウチングスタートのような姿勢を取っているファイズの姿が写り込む。

 音声が聞こえてから一秒ほどが立つと、ファイズドライバーの縁の赤い部分から、赤い光ーーフォトンブラットがファイズの体の赤いラインに乗って、足に固定されているデジタルトーチライト型の器具ーーファイズポインターに伝わる。

 そこからファイズは宙を舞うように跳躍。空中にて一回転を行い、左足を折り、右足を前に突き出す。

 

「やあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 ファイズのキックを見て、本能的に危険を察知し、その場から逃げ出そうとしたが、その場から動けない。

 脳からの「逃げろ!」という命令を乗せた信号が神経に伝わっているはずなのに、体は動く事はない。

 そこでスティングフィッシュオルフェノクは気付いた。

 よく見ると自分の体は既に拘束されている事に。

 先程、ファイズが空中にて一回転をした時に、ファイズポインターから赤い線ーーポインティングマーカーが放たれ、それはスティングフィッシュオルフェノクの体を辿り着くと、円錐型に形を変え、そのまま逃げることを許さない。

 迫り来るファイズのキックに対する恐怖とファイズの気合の入った声が同時に建物に響き渡る。

 そしてファイズ必殺のキックーークリムゾンスマッシュはスティングフィッシュオルフェノクの体を貫き、地面に着地をすると同時に青い炎を発生させて、その体を灰へと還した。




戦闘回でしたね…。
暫くはたっくんの無双が続きます…。

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