ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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長かった。
今回は殆ど戦闘シーンのみです。


繋がる心

「ようやく来たな、ファイズ」

 

 太々しい顔の巧を見て、コカビエルは三日月のように口元を曲げる。その笑みは、安らぎを与えるものとは程遠い。むしろ、相手に恐怖を、その先にある死を想起させる冷たい笑みだ。

 

「イッセー、良かった無事で」

「…あぁ。なんとかな」

 

 バジンを降りた巧に、リアスは駆け寄って声を掛ける。制服の汚れや頰に傷があり、先程の戦いの影響が全くないとは言えない状態なのは分かった。

 

「…ごめんなさい、また貴方を頼る様な事になって」

「お前は、そんな事言うキャラじゃねえだろ。いつもみたいに、偉そうにしてろ」

 

 相変わらずの巧に、こんな状況なのに笑みが溢れてしまう。それは、リアスだけではない。

 

「イッセー君、……僕は」

「答えを、見つけたのか」

「うん。…君が、気付かせてくれた」

「別に、そんな事しちゃいないさ。…お前が、見つけたんだ」

 

 男子二人の、短い言葉。どうやら男という生き物は、そういう物らしい。女子であるリアスは二人を眺めて、そんな事を思った。

 

「さぁ、私の可愛い下僕達。…コカビエルを倒して、この街を、私達の大切なこの学園を守りましょうっ!」

 

 眷属達は、主人の言葉に力強く頷く。巧も、ファイズファンに変身コードを入力。いつもよりも、力強く、高らかに叫ぶ。

 

『Standying By』

 

「変身ッッ!!」

 

『Complete』

 

 

 

 超金属の戦士ーーファイズは、いつも通り右手をスナップ。真っ先にコカビエルに向けて、駆け出した。

 

 

 

 

 

「ほぉ、来るか…面白いっ!!」

 

 この状況は、コカビエルにとって嬉しい誤算だった。ファイズーー巧のみならず、リアスやゼノヴィアといった者達も戦うのだから。

 

「余興相手には十分だっ!」

 

 無論、ここで終わるつもりはない。むしろ、彼の楽しみはここから先にあった。再びこの世界を、破壊と混沌の満ちた戦場へ。その為に教会の持つエクスカリバーを奪い、魔王の身内であるリアスとソーナの居るこの街を余興の舞台に選んだのだから。

 

 

「はぁっ!」

 

 真っ先に、コカビエルの眼前に飛び込んで来たのはファイズ。コカビエルは気合いと共に放たれた拳を片手で難なく受け止める。その時に感じ取るのは、ファイズ、いや巧の拳の重さだ。ただ腕力に身を任せた一撃ではない。そこには戦いの技術であったり、何よりも巧の意思が込められていた。

 

「いい一撃だ。…だが、これだけでは足りんっ!!」

 

 空いた片手で、光の槍を創生。カウンターの一撃をあびせようとするコカビエルの頭上を何かが通り過ぎる。

 

「…えいっ」

 

 白髪の少女、小猫がコカビエルの背中を拳で連打で浴びせる。もちろん、ファイズよりも力も弱い。ダメージとは言い難いが、それでも十分だった。

 

 ファイズが連打を撃ち込むには。

 

「らぁっ!」

「ぐっ!」

 

 下から掬い上げるように、ファイズの左アッパーはあごを捉える。そこからインターバルを空けずに、右ストレートが鳩尾を襲う。背後にいた小猫も既に距離を取っていた為に、僅かながらに後ろへ後退。

 

 すぐに、集中を取り戻そうと刺激をかき消さんと脳の指令が届く、そのコンマ数秒を、二人の剣士は見逃さない。

 

「はぁっ!!」

「喰らえっ!」

 

 聖剣と聖魔剣の同時攻撃。コカビエルの着ていたコートを斬り裂き、その下にある肌にうっすらと切り傷を残す。

 

 二人の剣士ーー祐斗とゼノヴィアも、コカビエルの一撃に警戒し、深追いを避ける。

 

 攻撃こそ仕掛けていないが、リアスと朱乃も、コカビエルに向けていつでも一撃を放てる状態だ。その二人の後ろに、回復役のアーシアは気丈に立っていた。

 

 

「……まさか、ガキだけで、俺に勝とうとしているのか?」

 

 僅か数十秒の攻防。それだけで、コカビエルの堕天使としての…戦士としてのプライドは大きく傷つけられた。

 自身と敵対する者に、恐怖を抱くものは誰も居ない。

 

「…ならば、壊してみろ、この俺をっ!!」

 

 叫びと共に、背中から計10枚の翼を大きく広げる。墨のような黒に一瞬、目を奪われかけた小猫の目の前に突如、コカビエルが。

 

「小猫っ!!」

「「「小猫ちゃん!!!」」」

 

 リアスと朱乃は魔力を練り上げ、ファイズと祐斗とゼノヴィアは、小猫を守る為に、その場から駆け出す。

 

 コカビエルの標的となった小猫は、懐に飛び込み、拳を打ち込もうと飛び出す。

 

 けれど、それよりも一瞬早く。コカビエルが光の槍を小猫に向けて振り上げた時だった。

 

『Battle Mode』

 

 巧にはとても聞き慣れた音声。けれど、コカビエルにとっては聞き慣れない音。一瞬、目を奪われたと同時に。

 

 ファイズを超える馬力を持った銀色のスーパーマシンの拳がコカビエルの顔に叩き込まれた。

 

 

「な、なんだ…」

 

 コカビエルの眼前には、小猫を守るように立ちふさがるオートバジンの姿が。

 

「ありがとう、バジン君」

 

 少しばかりの笑顔を見せ、バジンもまた力強いサムズアップで応える。

 

『Ready』

 

 バジンの隣に立ったファイズは、ファイズフォンからミッションメモリーを抜き取り、左ハンドルの窪みに換装。掴んだそれを一気に引き抜く。そして高熱を帯びた光剣ーーファイズエッジが、紅く光る。

 

「全く面白い男だよ。兵藤一誠は」

「…うん、僕もそう思う」

 

 微かに笑ったゼノヴィアは、破壊の聖剣を地面に突き刺す。突然の行動に祐斗は疑問の表情を浮かべる。

 

「彼にだけ任せるのが嫌になってきた」

「えっ?」

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

 何かの呪文らしき物を唱え続けるゼノヴィアの隣に、歪みが生まれる。空間の歪みは、何かを大きな物を取り出せるほどの大きさへ。

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する。デュランダル!」

 

 歪みに手を入れてから、何秒か経ってから、歪みからはとてつもないプレッシャーをその場にいた全員が感じ取った。

 

 そして、そのプレッシャーは、形となって現れる。

 

 

「デュランダル…だとっ!?」

 

 コカビエルが最も早く反応した。その顔には、なにやら拭いきれない悔しさを滲ませていた。

 

「エクスカリバーに並ぶ聖剣の一本よ。…つまり彼女は」

「あぁ、私はイリナや他の聖剣使いとは違って、天然物さ」

 

 と、皆が驚く中でも巧はあまり凄さを飲み込めてはいなかった。しかし、ゼノヴィアの持つ剣から放たれるプレッシャーを素直に認めてはいた。

 

「兵藤一誠。悪魔である君にだけ任せるわけにはいかないんでね。神の信徒として、聖剣使いとしてね」

「それは、僕のセリフでもあるよ」

 

 祐斗、ゼノヴィアがファイズと共に並び立つ。小猫もバジンと共に構える。リアスと朱乃は、いつでも援護射撃を放てるように警戒を怠らない。アーシアも、すぐに回復に移れるように集中力を切らさない。

 

 

「…神…か。くくく…っ」

 

 それでも、コカビエルはその上をいった。

 黒い翼を広げ、低空飛行。その速度についてこれたのはファイズのみ。

 ファイズは祐斗もゼノヴィアも気づかない速度で、皆の前に躍り出る。一瞬遅く響いたのは、金切り音。

 

「…くっ!」

「いいぞ、いい反応だっ!」

 

 二人の視線の先にいたのは、コカビエルの一撃をファイズエッジで受け止めるファイズ。けれど、ファイズーー巧は、仮面の下で苦しげに息をする。

 

 ーー強いっ…!!

 

 

 以前戦ったレイナーレーーダウンフォールオルフェノクとは、レベルが違いすぎる。

 たった一撃を受けただけで、それを痛感。この男を、あと30分程度で仕留めなければならない事実に、肩が重くなりそうだった。それでも、諦めるなど選択肢にはない。

 

 それは、この場にいる全員が。

 

 

「はぁっ!!」

「雷よっ!!」

 

 リアスの滅びの魔力と朱乃の雷がコカビエルを背後から襲う。邪魔者を払うかのように翼を動かして攻撃を受け止める。勿論、ダメージが無いわけでない。それでも、手も足も使わずに攻撃を受け止められた事に驚かざるを得ない二人。

 

「貴様らの父と兄の攻撃を知る者からすれば、今のを受け止めるなど造作もない」

 

 父…。巧は不思議に思って、朱乃に目線を向ける。その表情は強い怒りを浮かべていた。

 

「私を…あの者と一緒にするなぁぁぁ!!」

 

 怒りと共に、朱乃は悪魔の翼を広げる。そのまま地面を滑空して、低空飛行でコカビエルに突貫。朱乃を援護する為に祐斗とゼノヴィア、そして小猫も同様に前に飛び出す。

 

 こちらに向かってくる朱乃を見て、鍔迫り合いを演じていたファイズだったが、咄嗟に後退。その一瞬後、5メートル程度の距離にまで朱乃は接近。そこから、最大威力の雷をコカビエルに向けた。

 

「はぁぁ!!!」

 

 その声はさっきまでと違う。怒りと、憎しみの込められた声。声と共に放たれた雷を、軽く前に突き出した右手で受け止める。

 

「…っ!?」

「俺は、お前の父親の雷を受け止めたことがある。まだ未熟な貴様の雷を受け止める事の何処が不思議なんだ」

 

 数秒経つと、朱乃の魔力が底をついたのか、その場で膝をつく。呼吸も荒い。そんな朱乃を冷たく見下したまま、空いたもう片方の手を振り上げる。

 

 その右手を、ゼノヴィアの一閃が捉えた。

 

「なにっ!?」

「今回は、切れ味重視の攻撃をさせてもらうっ!」

 

 右手に注意を向けられたコカビエルは、己の背後に迫る敵を感知。咄嗟に振り返り、回し蹴りを浴びせる。背後にいた小猫は、そこから何十メートルも吹き飛ぶ。しかし、小猫をキッチリと受け止めているバジン。けれども敵の存在がまだゼロではなかった。振り返った正面には、聖魔剣を振り下ろす祐斗が。

 

「まだ…だっ!」

「小賢しいぞ…雑魚共がっっ!!」

 

 光の槍で、聖魔剣を受けながら、それを受け流しカウンターの一撃をあびせようとするも、再度腕に軽い衝撃が走る。振り向くとそこには祐斗の背後から魔力を放ったリアスの姿が。

 

「リアス・グレモリー…っっ!!」

「まだ私で終わりじゃないわ!!」

 

 まだ、終わらない。その言葉通りにこの連携の中心人物が、コカビエルの死角ーー上空から、一番強い敵の存在が。

 

「やぁぁぁ!!!」

「ファイズゥゥゥッ!!」

 

 両者の雄叫びが、校庭に響く。上空に飛び出したコカビエルの光の槍。ファイズの握るファイズエッジが衝突。赤と黄色の二色の火花が咲いた。

 

 

 

 何秒間の衝突の後、ファイズとコカビエルはお互いの攻撃の衝撃により吹き飛ばされる。地面に倒れるファイズに駆け寄る仲間達。そこには、本来は敵である聖剣使いーーゼノヴィアも加わっていた。この不思議な光景に、コカビエルは笑いを堪えきれなかった。

 

 

「それにしても、聖剣使いが悪魔と共闘か。今は居ない神が知れば、随分と呆れることだろうよ」

「神が、居ない…?どういう意味だコカビエル!」

 

 神について、違和感を感じる一言を口に出され、ゼノヴィアは我慢する事もなく、叫びながら訊ねる。

 しかしコカビエルの口から返ってきたのは、答えではなく嘲笑だった。

 

「ハッハッハッ!本当に何も知らない様だな。貴様も」

「何を…だっ!」

 

 笑いを止めたコカビエルは哀れむ様に、ゼノヴィアと小猫を治療するアーシアを見て、彼女達にとって受け入れがたい真実を言い放った。

 

「先の大戦で、四大魔王のみならず…神も死んだのさ。この事実を知るは、各勢力の上層部だけ。……魔王や神の死により、戦争は中断。そしてこの時からの均衡は、今も保たれたままなのさ」

 

 

 コカビエルの口にした真実に、二人は。

 

「何を…言ってるんだ…??主が、神が居ない…だと?」

 

 握っていたデュランダルを、地面に放り捨てて、その場で膝から崩れ落ちる。

 

「主がもう、いらっしゃらない。……っ」

 

 小猫の治療を、突然止める。小猫は、それを疑問に思わなかった。元シスターであるアーシアにこの事実は酷すぎた。そっと、倒れそうになるアーシアの体を支える。

 

 二人のみならず、祐斗や朱乃やリアスも驚きに包まれていた。そんな中で、アーシアは小猫の力を借りながらも、コカビエルに訊ねた。

 

「それをどうして…私達に」

「お前達は前座だ。まずは魔王の身内とその眷属の首を土産に冥界に…いや、悪魔共に再び宣戦布告!そして、教会…天使や信徒達にお前達と同じ事実を叩きつける!そうすれば、均衡は崩れ…再び戦争が始まる。そして、堕天使が勝つッッ!!戦争が始まれば、二度目の戦争は無いと言ってたアザゼルもシェムハザも動かざるを得ないだろうからな」

 

 コカビエルの野心を聞き、リアスは立ち上がり、尚も訊ねた。

 

「何故、そうまでして戦争を求めるの!?そんな事になれば、三大勢力だけじゃない…人間にも影響が出るわ!」

 

 ファイズは、チラリとリアスを見やる。横顔からも分かる必死さに巧は言葉が見つからない。

 

「あの戦争時…多くの堕天使が死んだ。奴らは皆、堕天使こそが最強である事を信じていた。…だが、結果は停戦で決着がつかず、その上二度目の戦争もない。これでは、奴らの魂は眠るに眠れない筈だ。だからこそ、俺は天使も悪魔も全て捻り潰す事でようやく、奴らの墓前に最強という名の華を添えられると思った。その為だけに、俺は全てを捨ててきた」

 

 巧は、コカビエルという一人の男の本質に触れた気がした。

 

 ーーこいつは…。

 

 きっと、コカビエルにはこんな馬鹿な自分を慕ってくれた部下がいたのだろう。けれども、彼等は皆戦争により死んでいった。だからこそ、彼等の最後の願いを叶えようとしていたのだろう。

 

 納得は、出来ない。けれど、全てを否定することはできない。少しだけ、理解出来た。いや理解できてしまった。

 

 それでも、乾巧という男はーー。

 

「まだ、立ち上がるのか」

「あぁ。…アンタを、止める」

 

 コカビエルを止めなければこの街に住まう人が犠牲になる。その数だけ夢が潰えてしまう。

 それは、それだけは見過ごせなかった。

 

 ファイズエッジを構えるファイズの隣に、リアスが並び立つ。二人を中心に、祐斗、朱乃、小猫、アーシア、オートバジン、そしてゼノヴィアが並ぶ。

 

「行くぞ」

 

 皆が、静かにそれを答える。

 

 コカビエルは両手に光の槍を創生し、口元を緩める。

 

「お前達は、最高の前座だっ!!…だが、そろそろ幕引きの時間だな」

 

 

 駒王町崩壊まで、あと15分を切っていた。

 

 

 

 

 

「うらっ!」

「…えいっ」

 

 ファイズの思い一撃がコカビエルの顎を、小猫の細く鋭い蹴りが腹部を襲う。それらを受けても倒れる事はない。追撃のファイズエッジの一撃も光の槍で受け止める。

 

「ふんっ!」

 

 コカビエルは上半身の捻りのみで光の槍を投擲。放たれた槍は、ファイズの仮面をスレスレに通る。一瞬遅れて、祐斗はその先にいる少女の名前を叫ぶ。

 

「アーシアさんっ!!」

 

 コカビエルの狙いは、回復役のアーシア。動きも機敏ではないアーシアにこの一撃を避ける術はなかった。

 

 しかし隣にはオートバジンがいる。オートバジンはアーシアを抱えて飛空し槍を避ける。二人のいた場所を通り過ぎた槍は、体育館に衝突し、爆発。体育館であった場所は崩壊。地面は深く抉れてさっきの一撃の重さを示していた。

 

「喰らえっ!」

「これなら、どうだっ!」

 

 一撃を避けられたコカビエルの翼が二枚、斬り落とされる。祐斗とゼノヴィアの同時攻撃は見事成功。

 

「貴様らぁぁ!」

 

 翼を二枚斬り落とされたコカビエルは、自身の肩を掴んで逃げる事を許さなかったファイズを強く睨む。

 そこから、ファイズは肘の力のみで繰り出される拳を頰に叩き込む。けれど、対するコカビエルもサンドバックになどなっていなかった。五発目を打ち込もうとするファイズの胸部を、一瞬で創生した光の槍で突き立てて反撃。体勢を崩す所に追い打ちの前蹴りを喰らわす。腹部を捉えた蹴りによって、吹き飛ぶファイズ。そこを好機として、前に飛び出そうとするコカビエルの前に朱乃とリアスが立ち塞がる。

 

「彼の所へは」

「行かせないっ!!」

 

 二人は、互いの最大出力を迷う事なく絞り出す。この男を止めるには最大の攻撃ですら、足りない。

 朱乃とリアスの魔力が、混ざりたいながらコカビエルを襲う。

 

「小賢しいっ!!」

 

 前に突き出した両手で、巨大な雷と赤黒い滅びの魔力を受け止める。手からは、軽く血が漏れ出し、ダメージを与えるが足らない。

 

「…えい!」

 

 魔力を受け止め続けるコカビエルの手を狙って、小猫は踵落としを放つ。

 

「…それで、俺を壊せる思ったか!」

「…くっ」

 

 コカビエルはその一撃を読んでいたのか。魔力を受け止めていた両手を片手に切り替えて、空いた片手で小猫の足を掴む。凄まじい握力で掴まれた足は悲鳴をあげ、小猫の苦しい声が漏れだす。

 

「小猫ちゃんを…っ!」

「離せっ!」

 

 小猫の救出の為に接近する祐斗とゼノヴィアに向けて、受け止めていた朱乃とリアスの魔力を跳ね返す。祐斗達は二人の魔力の強さを知る為に、互いの剣をにして受け止める。

 

「まずは一人…っ!」

「…ぁぁぁっ!」

 

 足を捻り潰さんと、更に込められた力に小猫の足は悲鳴をあげていた。その声は小さいがリアスと朱乃を動かすに十分だ。

 悪魔の中でもグレモリーは、眷属に対する愛情が深い。その事を知るコカビエルの立てた策略。それに気づかず、コカビエルへ向かうリアス達。そんな彼女らに、一瞬で創生した光の槍を放つ。

 

 コカビエルのクラスの光の槍ならば、一撃で殆どのーー魔王や最上級は除くがーー悪魔には致命傷になる。今までのコカビエルならば、ここで勝利の笑みを浮かべてしまうが、今は違っていた。

 

『Exceed Charge』

 

 決して、油断できない男がまだ居るのだから。

 ファイズの必殺の斬撃ーースパークルカットは、コカビエルの放った光の槍を真っ二つに。そのまま、駆け出す。

 

「面白いっ!!来い、ファイズ!」

 

 掴んでいた小猫を放り出し、コカビエルも駆け出す。

 

 ぶつかり合う赤き閃光と黒。

 

「やぁぁぁぁ!!!」

「死ねぇぇぇぇ!!!」

 

 下から突き上げる様に繰り出された光の槍と上から振り下ろされたスパークルカット。

 

 これまでの斬撃とは異なり、金切り音ではない音が響く。

 

「あぁぁぁ!!!」

 

 せめぎ合う二つの光。周囲にいたリアス達もただ見守る事しかできない。

 

 そして、決着が訪れた。

 

 

 

「俺の勝ちだ、ファイズっ!!」

「くっ…」

 

 力と力のぶつかり合い。その軍配は、コカビエルに。力の押し合いに負けたファイズは、光の槍を下から突き上げれた為に上空へ。

 

「まだ…だっ!」

 

 そこからの機転の利かせる。ファイズエッジに換装されたミッションメモリーを抜き取り、腰のホルスターに入れてあるファイズショットへ。

 

 かつてのラッキークローバーのマスターJを倒した時の、クリムゾンスマッシュから、グランインパクトへの繋がる必殺技のコンボ。

 

 思い出した記憶と似たこの状況に、巧は希望を見出だす。

 

 だが、あの時とは状況は異なっていた。

 

 あの時のミスターJは、ファイズの一撃を受け止めた上で撥ね返そうとしていた。けれども、コカビエルはファイズの一撃の前にカウンターを繰り出そうとしている。これでは、不利なのはファイズ。

 

 

 しかし、今の巧ーーファイズにも共に戦う仲間がいる。

 

「彼の邪魔はさせないっ!」

「今だ、兵藤一誠!!」

 

 カウンターを放とうとするコカビエルの脚を、二つの鋭い斬撃が切り裂く。

 祐斗とゼノヴィアが、互いに最高の一撃を浴びせる。

 

「さっきのお返し、です」

「うふふ…そうですわね」

 

 二つの斬撃により痛みを堪えるコカビエルの背中に撃ち込まれた鋭い蹴り、一瞬遅れて放たれた雷。

 アーシアの治療を受けた小猫とやけにニコニコした朱乃。

 

「イッセー、お願いっ!」

 

 リアスの滅びの魔力を、コカビエルの腹部へ。これまでのダメージもあるのか避ける事をせずにそれを受けた。

 

 ここでようやく、コカビエルは膝をつく。

 

 そして最後はーー。

 

 

 

 

 上空にいたファイズは、仲間の援護に素直に感謝していた。

 

 ーーありがとな、お前ら

 

 落下し続けるファイズの体を、そっとオートバジンが受け止めた。

 

「お前…」

 

 ヘッドライトの部分が点滅し、力強く頷く。

 すると、突然ファイズをボールの様に強く放り投げた。

 

 落下の速度に加えて、ファイズを超える膂力による投擲により、威力は倍増…いや、それ以上となっていた。

 そしてそこに、アーシアの声援が届く。

 

「負けないで、イッセーさん!」

 

 これは、もう負けるわけにはいかなかった。

 

『Exceed Charge』

 

 ファイズファンを開いて、ENTERキーを押した。ベルトの縁から、赤いフォトンブラッドが、体のラインに沿ってファイズショットに伝わる。

 

 ーーあぁ。

 

 アーシアに向けた仮面の下で、少し笑って巧は頷いた。

 

「やぁぁぁ!!!!」

 

 

 仲間達の最高の援護によるグランインパクトは、コカビエルの胸部に叩き込まれた。

 

 放たれる一撃の瞬間。巧は、コカビエルが笑っていたのを見た。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーまさか、俺が負ける気になるとはな。

 

 それは、コカビエルの予想を遥かに上回る展開だった。

 

 4本のエクスカリバーを合わせても、それを超える聖魔剣が生まれた。

 

 自身の力を少しだけでも見せても、怯える事なく立ち向かう。

 

 神の不在を知らせても、心を折らずに立ち上がる。

 

 そして、あの強い意志。消して折れない黄金の精神。

 

「過去にしか目を向けない俺と、未来を守ろうとするお前たち…か」

 

 敗北したというのに、コカビエルは最高の闘いが出来たという喜びから笑顔を零していた。

 

「お前の…いや、お前達の勝ちだ」

 

 

 駒王町は、崩壊という運命を逃れた。

 

 そして街には、いつも通りの夜明けの太陽が昇ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 コカビエルとの決戦から数日後。

 

 巧は、昼休みに静かな校庭にいた。大きな木の下で天然芝生に寝転がり、日差しを浴びる。

 数日前の闘いが嘘の様だ、と思った。あの後、崩壊した校舎などを生徒会やようやく着いた魔王の援軍が修復したとリアスから聞き、一先ずは安心した。

 

 勿論それだけではない。倒れないコカビエルを魔王軍が拘束、堕天使との取り決めでその身柄を引き渡し、然るべき措置を取った。

 

 

 恐ろしい男だった。

 

 巧一人では、決して勝てる様な相手ではなかった。

 

「俺は…あいつらを、守れるのか?」

 

 これから先、あのレベルの敵がまた現れた時に、誰一人欠ける事なく乗り越えられるのか。そんな漠然とした不安が現れて、巧を飲み込もうとしていた。

 

「イッセーさーん!一緒に、お昼を食べましょう〜」

 

 聞こえたのはアーシアの声。

 

「おおーい、アーシアちゃんだけじゃなくて、ゼノヴィアちゃんも一緒みたいだぞっ!」

「うぉぉぉ!!羨ましいぞ、イッセー!」

「いや、ゼノヴィアっちごめんね、このアホ二人も一緒で」

「とても愉快でいいじゃないか」

「そうだね、きっと」

 

 巧に手を振るアーシアの後ろには、松田や元浜、桐生に祐斗。そしてゼノヴィアがいた。

 

 コカビエルの撃退後、彼女はイリナと共に帰国する事は出来なかった。

 

 その理由としては、神の不在を知ってしまったからだ。その事を教会に知られてしまった。その結果として彼女は異端に、そしてーー教会を追放。行くあても無かったゼノヴィアを、リアスは眷属に勧誘した。

 つまりは、今の彼女は悪魔で駒は騎士。転入生として巧とアーシアのクラスに入り、どうやら友人も出来ている。その中でも、アーシアと一番親しくしている様子だ。

 

 

「おうっ」

 

 自分を呼ぶ友人達の声に、小さくも確かに応えた。

 

 今は、彼らの未来を、夢を守ることが出来た。

 

 それだけで、十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかこうなるとはね…」

「どうかしましたの、リアス?」

 

 昼休みの旧校舎。巧と共に昼食を取ろうとしたが冥界から重要な知らせが来ると聞かされ、それを断念。知らせを待っていたリアスの元に魔法陣を介して、一枚のプリントが届けられる。その内容を見たリアスは、驚きに満ちた声を漏らす。その声に反応した朱乃が立ち上がる。

 

「これは…っ」

 

 リアスから受け取ったプリントには、悪魔の用いる言語で書かれた文字が並べられていたが既にその言語を理解していた朱乃は、その内容をすぐ理解する。

 

 

 

 プリントにはこう書かれていた。

 

 

 

 要約ーー三大勢力のトップによる会談が開かれる。場所は駒王学園。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ。随分と面白そうな顔をしているじゃないか」

「まぁ、面白い物を預かったからな」

 

 マンションの窓から見える月を肴に、酒を飲む。巧の悪魔としての仕事の依頼人、お得意さんの男性は楽しそうに微笑む。その後ろには巧に義理の息子と紹介したヴァーリという少年。

 

「コカビエルが暴れたというのに、何故何もしなかったと各勢力から非難を浴びてとうとう頭がおかしくなったのかと思ったぞーーアザゼル」

「おいおい、俺はあの坊主から逃げろって言われたんだぜ?その言うことを聞いただけだ」

「ふん・・・。それにしても、あのコカビエルを倒すか…面白い」

 

 それだけ言って、ヴァーリはリビングを出た。

 

「……。ファイズ、兵藤一誠…か」

 

 カシャ、と小さな音が一人しかいないリビングに響く。男性ーーアザゼルは、手のひらにあるデバイスを弄ぶ。

 

 リストウォッチ型のデバイス、SB-555W。

 もう一つの名前を、ファイズアクセル。




というわけで、コカビエルはなんとかみんなの力で勝つという展開にしました。ヴァーリにも強さを認められてます。

最後に出てきたのは、ようやく出したかった物です。

次からは4巻になります。

感想や評価をお待ちしてます。

本当に…モチベーションになるんで。
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