ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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かなり久しぶりの投稿です。
すいませんでした。
これからも投稿し続けるので…。


二人の魔王

 目の前の青年は、自分に会いに来た。つまり、戦いの意志はない。そう判断して、巧は肩の力を抜く。

 

「…いい反応だ。たしかに、コカビエルを討ったというのも、あながち間違いではないみたいだな」

 

 そういった青年、ヴァーリは巧との距離を詰める。その距離が、1メートルを切ったところで、ヴァーリは、自分の喉元にある刃に目線を送る。

 

「何の真似だ?」

「…僕の勘さ。君からは、危険な匂いがする」

 

 ヴァーリの喉元に刃を向けた裕斗は、鋭い目つきで剣を構える。そんな裕斗を軽く笑って、ヴァーリは脚を振り上げる。振り上げられた脚は、裕斗の手首を捉えた。一瞬、痛みに苦しむ裕斗はヴァーリから視線を外してしまった。しまった、と急いで視線を戻した時には目の前には魔力を纏う拳が。

 

 

 

「よく止めたな」

「話があるのは、俺だろ」

 

 ヴァーリの拳をギリギリで止めたのは巧だった。裕斗に目線を向けて、下がる様に促す。その意味を把握した裕斗は素直にそれに従い、リアス達と共に距離を置く。

 

「一応、言わせて貰えば…先に仕掛けたのは彼だ。っと、こんな話をしに来たんじゃない」

「さっさと話せ。こっちは暇じゃない」

「そう言われると困るな。俺は、コカビエルを倒した君と、その仲間を見に来たんだ。争いを仕掛ける為でも、君らに復讐をしに来た訳じゃない」

 

 一瞬の視線の交錯。混じり合う、二つの視線。巧の後ろにいたリアスは唾をゆっくりと呑み込む。何秒か経ち、ヴァーリはそっと視線を外しながら笑う。

 

「今回は、顔合わせのつもりでね。アザゼルが少し落ち込んでいたよ。君が正体を知っても反応が薄かったと」

「ンなこと知るか」

「それもそうだ。…いずれ、君とは戦う事になる。その時が、今回の続きだ。それまでに、他の誰と戦う事になっても死なないでくれよ」

「やだね。何で俺がそんなことしなきゃいけないんだよ」

 

 巧の言葉にも、美しい微笑を返すだけ。苛立つ様な態度を見せて、巧はヴァーリの背中を見送った。

 

 少しして、オカルト研究部は校門にて解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァ―リとの邂逅から数日後。今日は本来なら学校が休みであるはずの土曜日。しかし、巧とアーシアは制服を着て玄関にいた。平日と勘違いしているわけではない。

 

「二人とも、後でキチンと見に行くからな!」

「がんばってね!」

 

 スーツ姿の兵藤夫妻に、アーシアは笑顔を、巧は苦い物を飲み込んだような顔を浮かべていた。

 

 今日は駒王学園の生徒たちの保護者が学校に来る。つまりは、授業参観ということだ。

 

 

 

 

「そういえば部長さんは何の用事だったんでしょうか?」

「知りたきゃ、後であいつにきけばいいだろ」

 

 リアスは朝早くに家を出ていた。巧が理由を聞くとなぜか疲れた表情を浮かべるだけで答えは聞けなかった。

 会話のない状態が何分か続いたが、二人はとあるマンションの前で立ち止まる。すると、見計らったかのようにマンションのエントランスから見慣れた青髪の少女が出てくる。

 

「やぁ、イッセー、アーシア。早めに行動しておいてよかった。五分前行動は良いものだ」

 

 何故か勝ち誇る表情のゼノヴィアに、言葉を返さずに巧とアーシアは軽く笑う。

 

「なんで、そこで笑うんだ?」

 

 何処かズレた少女は、これまた可愛らしい表情で首をコテンと傾げる仕草がとても似合っていた。

 巧は、この前…プールで辛く凄惨な過去を語った少女と同一人物なのかと疑いたくなるほどに、今のゼノヴィアは優しい笑顔を見せていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、皆さんにお配りした粘土を使って好きな物を創造(ビルド)してください!!そこから科学は…失礼、化学は始まります!」

 

 トレンチコートを羽織る若い男性教師は、頭頂部の一部が寝癖に様に跳ねさせて、興奮した口調だ。

 巧は、机の中心に置かれた粘土をただ見つめるだけ。自分が想像力とかそういった所に弱いのは一番分かっていた。けれども、逃げるわけにはいかなかった。

 

 巧の…いや、学生たちの後ろにいる保護者の視線が故に。

 

「……」

 

 一瞬、自分とアーシアを見ているであろう兵頭夫妻に目を向けて、予想通りに優しく見守る二人を見て、腹をくくる。

 ため息をこぼしたから、比較的に早く粘土に手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ」

 

 巧が作り始めてから、約30分。周りを見渡すと、半分近くの生徒が作り終えていた。巧もなんとか作り終えて、息を漏らす。巧の机の上に置かれた粘土でつくられたバイクーーオートバジン。粘土故にフィギィアには劣るものの、中々の出来栄えに巧自身も満足していた。

 

 

 8割近くの生徒が作成し終えたところで、今度は保護者も含めた批評会が始まる。各々が席を立って、友人や保護者と一緒に作品を見て回る。

 

「初めまして…ゼノヴィアと言います。いつもアーシア…さんとイッセー…くんとは、仲良くさせてもらってます」

「まぁ〜!貴方があのゼノヴィアちゃんね。お話は聞いてるわよ、今後とも二人と仲良くしてあげてね。…それと、私たちの前だからって気を使う必要ないわよ。いつも通りにしてあげて」

 

 ゼノヴィアは、初対面の涼子に言葉を選んだ上での挨拶。しかし、人生経験の長い涼子にはあっさりと看破される。ゼノヴィアは、その優しさに満ちた表情に、異国にいる母に等しい存在を想起する。それと同時に背中に寒気も走ったが…。

 

「これは、家に置いてあるイッセーのバイクか…。昔は、私も母さんを乗せてデートに行った事もあってね」

「そうなんですか!?す、すこし羨ましいです…」

「今度、イッセーを誘ってみたらどうだい?きっとアイツも喜ぶさ」

 

 アーシアは、巧とのバイクをデートを想像して顔を赤くする。そんな彼女の隣で、兵藤真司(ひょうどうしんじ)は軽く微笑む。

 

 そして、話題の中心たる巧は…。

 

「これはどうだイッセー。俺の芸術は!」

「いやいや、こっちに方がいいだろう!!」

 

 なぜか張り合う松田と元浜の作品の評価をさせられていた。巧としてはまだ距離感の掴めない兵藤夫妻の近くにいるよりも、この二人の方が楽だった。

 

「…どっちも酷い。俺からしたら、大差ねえよ」

 

 こんな素直な感想を口にしても、二人は気にせずに自分に絡んでくる。

 

「何をっー!」

「はっ!!お前のバイクだって、小学生が作りましたって感じだろうが!!」

「…はっ…?」

 

 いつのまにか二人は、巧にとって初めて出来た悪友になっていたのかもしれない。

 

 そして、それはある意味では眷属にも負けない大切な絆になる。

 

 巧がそれを否定しようとも、他のクラスメイトから見た3人の姿は、あの変わらない3人組の姿に映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これがバジンね。可愛らしいじゃない」

 

 巧の作った粘土製のバジンを手に取りながら、リアスは微笑む。巧とアーシアは、旧校舎でリアスと、その隣にいた朱乃に会っていた。この時に、朝から出かけていた理由もはっきりした。その理由を聞いていただけの巧でも疲労感が肩にのしかかった。

 

「…それにしても、お父様もお兄様もはしゃぎ過ぎよ、全く」

「わ、悪気はないですから…」

 

 落ち込むというよりも、疲れを滲ませるリアスの顔を見て、アーシアもやんわりとフォローをするも効果はあまり無い。そんな二人の隣で、巧は少し複雑そうな表情の朱乃を捉えた。

 

「どうかしましたか、イッセー君?」

「……いや、気にすんな」

 

 巧が見ていた事に気付いた朱乃はいきなり距離を詰める。朱乃との距離が急接近した為に、巧の頰にやんわりと赤が差し込む。つまりは、照れているのだ。

 

 ーーイッセー君は、異性への興味がないわけではないのね。ふふっ、いい事を知れたわ。

 

 年上らしい朱乃の笑顔を、正面から受け止められずに目をそらす。二人の姿は、初々しいカップルのように見えるかもしれない。

 

「あらあら、目を逸らしてはいけませんわ」

 

 微妙に後ろに下がる巧を見て、サドスティックの血が燃えたのか、流さないと言わんばかりに一歩前に足を進める。

 しかし、足はそれ以上は巧に接近はしなかった。

 

 彼女たちの妨害によって。

 

「随分と楽しそうね…朱乃」

「ず、ずるいですぅ!イッセーさん、私の顔もみてください!」

 

 目が全く笑ってないリアスと、朱乃から巧を解放したアーシア。そして、状況に全く着いてこれない巧。ニコニコとした笑顔を崩さない朱乃。正に混沌と言わんばりの状況を、朱乃は一気に攻め立てようと言葉を紡ぐ。

 

「ねぇ、部長イッセー君を「「「うぉぉぉ!!!魔女っ子の撮影会がはじまるぞ!!!」」」

 

 朱乃の言葉を覆うように、男子たちの雄叫びにも似た声が校舎から離れた旧校舎に届いた。四人は、何事かと思い、声のする方に歩き出した。

 

 

 

 

「魔女っ子と聞いてまさかとは思ったけど…」

「どうやら、そのまさか、でしたわね」

 

 四人の到着した場所は、体育館。男子たちの熱狂の元は、体育館のステージ。

 

 

 そこには文字通りの魔女少女がいた。

 

 巧とアーシアは、誰だ?といった表情で、リアスと朱乃は、苦笑いといった真反対の反応を見せていた。

 

 

「はーいっっ!!お前ら、さっさと解散しろ!!」

 

 白熱する男子たちを止めたのは、生徒会役員唯一の男子ーー匙元士郎だった。ブーブー、と反対行動を見せる男子たちを押さえつける手際は凄腕と言わざるを得なかった。

 あれ程までの騒ぎだった集会は、ものの数分で解散となる。悔しさを滲ませた男子たちは、おぼつかない足取りで体育館を後にする。

 

「はぁ…それよりも、貴方もこの場に相応しい格好で来ていただかないと」

 

 ため息と共に、匙は今回の騒動の原因たる女性に注意する。巧は、この場にいる意味はあまり無いと判断。教室に戻ろうと体育館の扉に向かうが、その扉が突然強く開いた。

 

「匙、遅いですよ。体育館での騒動はどうなりましたか……」

 

 現れたのは、生徒会長のソーナ。けれども、彼女の言葉は少しずつ勢いを失い、匙と向かい合う女性を目にした瞬間に体を硬直させた。それは、前方にいた巧が心配してしまうほどに。

 

「おい、大丈夫「ソーナちゃーーーん!!!」

 

 ソーナに声をかける巧を飛び越えて、件の女性がソーナを抱きしめる。その行動にどう反応すべきか迷う。そんな巧の肩をゆっくりと叩き、リアスが声をかける。

 

「あの方は、セラフォルー・レヴィアタン様。…四大魔王の一人で、ソーナの実のお姉様よ」

「…あいつ…が??」

 

 巧の頭には、以前会った事のある魔王の一人で、リアスの兄。サーゼクス・ルシファーが浮かび上がる。彼の堂々たるオーラは、確かに魔の王たる威厳を放っていた。しかし、目の前の少女にも見える魔王は、あまりにも幼く見えた。妹であるソーナの方が大人っぽさを醸し出していた。

 

「イッセーがそういうのも、無理ないわね。……軽いのよ、今の四大魔王様はプライベートの時は、お兄様も含めて」

「…お前の兄貴…も?」

 

 さらりと口にした事実に巧は食いつく。これまで巧は、リアスが一人っ子であると勘違いしていた。ライザーとの婚約も長男が居れば、そもそも問題にすらならない。

 

「部長のお兄様は、サーゼクス・ルシファー様です」

 

 今日、何度目かの衝撃が巧とアーシアを襲うことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日の夕食。

 兵藤家は、普段と異なる色を見せていた。その色とは…とある3人。

 一人目は、リアスの父であるグレモリー卿。二人目は、巧も面識のあるグレモリー家に使える女性、グレイフィア。三人目は、グレイフィアの夫であり、リアスの兄であり、魔王の一人ーーサーゼクス・ルシファー。

 

 三人のオーラに、流石の兵藤夫妻も圧倒されると思われたが…。

 

「さぁ、どうぞどうぞ、一杯と言わずに!!」

「これはこれは、それでは是非とも」

「いやー、この料理も美味ですね」

 

 男性陣は、酒を煽り、すっかり出来上がっていた。その空気感は、とても楽しそうなのが巧にも伝わる。一方の女性陣は。

 

「食事まで用意していただき、ありがとうございます。今回のお礼はまた…」

「いいのよ!気にしないで、グレイフィアさんも食べてね」

 

 クールなやり取りをしながらも、涼子もグレイフィアに食事を勧める。落ち着いた大人の振る舞いの様なものを感じる。

 

 どうしてこうなったのか、話を少し遡る。

 

 ソーナの姉、セラフォルーとの遭遇の後、巧たちは会話を繰り広げていた大人組五人を発見。リアスが声をかけて、話を聞くとこのまま兵藤家に夕飯を食べに来ないかと提案していた所だった。すっかり意気投合した保護者達は、自身の種族の壁など知らずに大盛り上がりを見せていた。

 

「いやー、うちのリアスも中々に成長しておりまして…」

「えぇ。あの様に授業を受けるリーアたんを見て、何故か涙が」

「分かります!ウチも最近、アーシアちゃんという娘が出来て、もう可愛くて可愛くて」

 

 食事を勧める巧達を他所に、男性陣の話題は娘…つまりは、リアスとアーシアの話題へ。二人とも、苦笑いを浮かべてはいるものの、悪い気はしていないのだろう。巧は特に気にすることなく箸を進める。

 ここで、少し熱い肉を口にしようとするためにフー、フー、と息を吹きかける。しかし、かなりの高温なのか、中々に熱が抜けない。悪戦苦闘する巧の視界に、突如エメラルドグリーンが差し込む。

 

「フー、フー、フー」

 

 真横で息を吹きかけるアーシアの横顔に、数秒間凝視してしまった。その白い肌や宝石の様に輝くブロンドの髪。巧も、ほんのりと頰を染めてしまった。

 そんな巧の腕の皮を、リアスの指が抓る。

 

「…痛ッ!……、何すんだよお前」

「別に……」

 

 隣に座るリアスに、巧は怒るもリアスは顔を背ける。

 そんなに大きな声を出してない為に、大人達は気付いてる様子はなかった。無視を決め込むリアスにこれ以上は無理と判断し、巧は冷ました肉をなんとか頬張って、自室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよ…アイツ」

 

 夕飯を食べ終えた巧は、自室でベットに横たっていた。ライトを点けずにただ天井を見つめるだけ。一階からは大人達の声が聞こえて、まだ宴会は続いてることを察する。

 

 それよりも、巧の頭にあったのはリアスの怒った表情。

 

 ーーまさか、な…。

 

 一瞬、思い出したのはライザーとのレーティング・ゲームに臨む前夜。リアスは、巧に告白をした。けれども、それは辛い現実から逃げたかっただけで、心からの物ではない。少なくとも巧は、そう思っていた。しかし、先程の表情やこれまでの自分に対する態度を鑑みれば、もしかしたら…と考えを深めてしまう。

 

「ンなわけねぇか」

 

 自分の勝手な勘違いに違いない。そうやって、結論を出して瞼をゆっくりと下ろす巧。何秒か経って後で、コンコンとノックが聞こえる。

 

「少し…いいかしら?」

 

 開いたドアからひょっこり顔を覗かせたのはリアス。その表情は、少し罪悪感を滲ませていた。巧の椅子に座り、向かい合う二人。

 

「さっきは…ごめんなさい。その、つい…」

「全くだ。…ったく、いきなりなんだったんだよ」

「それは……。巧さんが、アーシアや朱乃の事ばかり…見てるから」

 

 徐々に、言葉も小さくなり、顔を俯けてしまう。表情の見えないリアスに返す言葉を探すが見つからない巧。

 逃げたくなる程に重い沈黙が二人を襲う。

 

「少し、いいかい?」

 

 そんな沈黙に包まれた部屋に響いたのは、低音の声。その声の主は、サーゼクス。リアスの髪と同じ、紅を揺らしながら微笑む姿は、まるで物語の中から抜け出した貴公子の様に見える。

 

「お兄様!?」

 

 突然の兄の登場に、リアスは立ち上がって反応する。

 サーゼクスは、兄としての優しい笑顔から一変。悪魔の長たる魔王としての顔へ切り替える。

 

「リアス。もう一人の僧侶の解放についての話があってね」

 

 また、新しい波乱が自分達に近づきつつある事を巧は予感していた。

 




四期が終わりましたね…。
あの終わり方としては、五期の放送を待ちわびるしかありませんね。
予告ですが、原作と絡んだオリジナルをやるつもりです。
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