ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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久しぶりの投稿ダァァ!!!
夏休みに入り投稿頻度が上がるといいなぁー。
てな感じで、感想もいつも通りお待ちしてまーす。


重なる過去

「ここにもう一人の僧侶の方がいらっしゃるのですか?」

 

 リアス、そしてその眷属の全員が集合していた。場所は、旧校舎の一室の入り口前。ここに来た目的とは、目の前の部屋に封印された現状では最後の眷属を解放するため。昨晩、サーゼクスから許しを得たリアスは、早速放課後に封印を解くつもりだった。

 

  「えぇ。……もう完了したようね。ありがとう朱乃」

 

 部屋に施された封印を、朱乃が解いたのを察知して、扉を開ける。

 巧は、封印された眷属がどんな姿をしているのか想像していた。その脳裏に浮かぶのは、筋骨隆々な大男。強すぎるが故に封印されていた、そんな風な予想を立てていたが、そんな予想とは真反対な声が、部屋の中から響く。

 

「いやぁぁぁ!!!む、無理ですぅぅ!!外に出たくないですぅ!!」

 

 部屋の中から聞こえたのは、少年とも少女とも聞こえる中性的な声。声の主が気になったアーシアは、駆け足気味に部屋に入る。巧も、気にはなるので、アーシアを追う形で歩き出す。

 

 部屋に入った二人が第一に感じたのは、部屋の暗さ。まるで、外からの光を拒絶するように、窓には黒いカーテンが吊るされ、電気は全く点いていない。暗い場所でも、目の冴える悪魔でなければ、歩き出すのも危なく思えたが、二人はそうではない。何秒かして、部屋の中心にあるものに気付く。

 棺。そして、その中には、駒王学園の女子生徒の制服を着た少女…??

 

「…女の子、なんですか?」

 

 封印されていた。その言葉に似合わない少女に、首を傾げながらリアスに尋ねるアーシア。

 リアスは苦笑いを浮かべて、首を横に振る。

 

「いいえ。この子は、男の子よ。名前は…ギャスパー・ヴラディ。あなたと同じ『僧侶』(ビショップ)よ」

「ちなみに、女装趣味があるのですわ」

 

「えぇーー!!?」

 

 声を大きく上げるアーシアの隣で、巧もまた驚いていた。なんども瞬きを繰り返しては、ギャスパーを見つめる。その姿は、どこからみても少女だ。ギャスパーを見続ける巧は、一瞬だけ‭寒気を感じた。ギャスパーに対してではない。より正確に言えば、ギャスパーの中にあるナニカに。

 

「コイツは…何者だ」

「えっ…?」

「なんで、コイツはここに封印されてたんだ」

 

 珍しく驚いた表情と声の巧に、リアスは反応に遅れた。巧の横顔は、よく見なければ分からないほどだが…緊張しているように見えた。

 

「この子は、元々は人間と吸血鬼…ヴァンパイアとのハーフなの。それに加えて、神器(セイクリッドギア)の持ち主なの」

「ぼ、僕の話なんて…しないで。ぼ、僕はここにいたいんです…」

 

 ギャスパーは起こしていた体を棺に戻し、掛け布団に包まっていた。そんな引きこもり少女に対して、朱乃やリアスは、心優しい姉や母親のように言葉を掛け続けるものの効果は見込めない。十分近くの間、奮闘を見せたものの、進展を見せない。

 

「はぁ〜。お前なぁ〜」

 

 ため息と共に、巧はギャスパーに近づき、布団を剥ぎ取ろうとした瞬間。

 

「やめてっ!!」

 

 ギャスパーの目が、妖しく、美しく、輝いた。

 

 

 

 

 その時、世界は止まった。

 

 

 

「ま、またやっちゃった…」

 

 暴発による時間停止。もう何度目か、数える事すら諦めた風景に、ギャスパーは顔を俯ける。部屋の隅へ逃げようと動こうとした彼の頭を何かが引っ叩いた。

 

「痛っ!……えっ?」

 

 自分以外の誰もが停まってしまった世界で、自分の頭を誰かが引っ叩いた。そんな事実に、驚きを隠すことは出来なかった。体を包む布団を取って、振り返るとーー。

 

「お前、なにしたんだよ。さっさともとに戻せ」

 

 どういうわけか、停まらずに、動き続ける乾巧に、兵藤一誠に、ギャスパーは、言葉に出来ない感情を抱きつつあった。

 

 

 

 停まった時は、再び動き出す。

 

 

「な、なんだ…今の感覚は」

「今のギャスパー君の神器の力さ」

 

 動き出した時間。その瞬間と、停まる寸前の感覚に違和感を抱いたゼノヴィアは、周りを見渡す。その隣にいた祐斗は既に知った感覚であるために、冷静に解説をする。

 

「い、今のは…一体」

「今のが、ギャスパー君の神器ーー停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)の力です」

 

 自身の視界に入れた物を、一定時間のみ制止させる能力を持った神器。

 

「ギャー君、どうしたの?」

 

 部屋の隅で呆然とするギャスパーの肩を叩き、声を掛ける小猫。ギャスパーの視界の先にいる存在をゆっくりと目で追う。

 

「あ、あの人。停まらなかった。あの人は、動けてた」

 

 驚いた表情で、けれども少しだけの笑顔を見せたギャスパーは、まるでヒーローを見るように、巧のことを見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャァァァァ!!!!」

「そらそら、どうした!早く逃げなければ…このデュランダルの餌食になるぞ!!」

 

 旧校舎の手前に広がる芝生の上を駆け巡るのはギャスパー。そしてそれを追うのは聖剣を携えたゼノヴィア。

 

「そんな顔をしないでください。止めてきます」

 

 オロオロとしたアーシアの隣で、小猫は居た堪れなくなる。目の前の命懸けの鬼ごっこを繰り広げる二人を止めに入る。

 

「二人共、落ち着いてください」

「むぅ…。いい方法だと思ったんだがな…」

「た、助かった」

 

 小猫の介入によりゼノヴィアは、やや不満顔で剣を置く。対するギャスパーは命拾いしたと膝から崩れ落ち、その場に座り込む。そこにアーシアも駆け寄る。

 

「次はどうする?私のアイデアがダメなら次はアーシアか?」

「わ、私ですか…」

「三人で一緒に考えよましょう」

 

 女子三人の中に、巧は居なかった。

 

 ギャスパーの解放の後、リアスと朱乃と祐斗の三人はサーゼクスに呼び出された。その時に、ギャスパーの引きこもりを少しでもいいから改善してほしい、と頼まれた。こちらの三人は快く引き受け、巧はギャスパーの態度を見て、すぐにどうこうなるものじゃないと決めて、帰宅してしまった。

 

 

「ムムム…。これだけ考えてもいいアイデアが少しも出てこないとは!」

「こうなれば主に祈るしかありません!」

「「あぁ、主よ!私たちに後輩を救う知識を…あうっ!!」」

 

 述べる口上すら揃えた二人は、同時に頭痛に見舞われる。悪魔である二人が神に祈るなど自殺行為だ。

 もはや見慣れた光景に突っ込む気がない小猫。気が緩んでいたのと、相手との実力差故か後ろからの何者かの接近にようやく気付いた。

 

「…誰っ!」

「おやおや、そんな気張るなよ。こっちは、女の子相手に手を出す気は毛頭ないからな」

 

 振り向いた先にいたのは、男性。…それも、かなり強力な力を持った。袴姿の男性は顎髭に手をやり、ポリポリと掻く。その振る舞いからは無精さを感じる。

 

「今、聖魔剣使いかファイズ…いや、兵藤一誠は居ないか?」

「二人共ここにはいない。一体何の用だ」

 

 小猫同様に、男性の強さを感知したゼノヴィアは、小猫とアーシアとギャスパーを守るように男性に相対する。その手は既にデュランダルを構えて、敵意を…闘志をむき出す。

 

「まぁ、肩の力を抜けや。せっかくの別嬪が勿体無いぜ」

 

 瞬き、いやそれよりも早く、短い時間ーー男性を見失った。次の時には、彼の手はゼノヴィアの肩に乗せられていた。

 

「……っ!?」

 

 大きく目を見開き、男性の様子を伺う。後ろにある三人に逃げろ、と叫ぶべき自身に選択を迫る。

 そんなゼノヴィアの不安を、取り去るかのように男性は口元を緩める。

 

「いい集中力だ。最後までそこの三人を守ろうとしたのは、悪くない。急な訪問悪かったな。兵藤一誠に伝えておいてくれ。また、お前と話がしたいってな」

 

 それだけ言って、踵を返そうとする男性を…その名を叫んだ。

 

「待て!!『アザゼル』」

「「っ!?」」

「アザゼルって…堕天使の!?」

 

 堕天使の総督の名前を聞いた三人は、男性を強く見入る。背中を見せていた男性ーーアザゼルは、振り返りながら飄々とした態度を崩さない。

 

「何だ?手短なら、答えるぜ」

「フリードセルゼンは何処にいる!お前達が送還した筈だ!」

「お前さんが奴とどういう関係かは知らないが…。やつは消えた。堕天使が保有する監獄に入れようとした直前でな。灰色の怪物が襲撃し、奴を連れ去った」

「そうか…」

「質問には答えたぜ。またな」

 

 そう言って、アザゼルは二度と振り返ることなく、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 ゼノヴィア達がアザゼルと接触した。巧がその知らせを受けて、部室に駆けつけたのは夜の7時を過ぎていた。

 部室には、既に巧とギャスパーを除いた全員が集合していた。

 

「全員揃いましたね。ゼノヴィア…話をしてもらっていいかしら」

「…私達が、3人でギャスパーのことで話し合っていた時。アザゼルがやってきました。奴は、木場とイッセーの事を探していました。特にイッセーには、また話がしたい…と。それと、これはイッセーに伝えておきたい。灰色の怪物がフリードを連れ去った。灰色の怪物については既に小猫やアーシアから説明は受けている」

 

 そう言って、ゼノヴィアは椅子に座り込む。

 視線の先には鍵で閉ざされた部屋が。更に、その中で怯えているであろうギャスパー。

 

「そのアザゼルについてだけど…ソーナからの報告では、匙くんやその他の神器持ちの悪魔に声を掛けていたそうよ」

「それは、一体どうして何でしょうか?」

「神器の研究…。それが今のアザゼルの最大の興味らしいわ。だから、未知の聖魔剣を持った祐斗。そして、ファイズのイッセーに近づこうとした事に納得だわ」

 

 

 話を聞き終わると、巧は部室を抜けて、ギャスパーのいる部屋の前に立つ。慌てて追いかけるリアスは、巧の隣へ。

 

「『巧さん』には、まだ言ってなかったわね。ギャスパーについて」

「…あいつが何で封印されてたか、か?」

「えぇ。ゼノヴィアとアーシアにはもう伝えたの。後は、貴方だけ」

 

 リアスが、本当の自分の名前を呼んだところを見ると、他のメンバーは部室にいるらしい。相変わらず気を回すのが上手い。

 

 巧は、兵藤一誠としてではなく、乾巧として、ギャスパー・ヴラディに向き合おうとしているのを、リアスだけが断片的に感じ取っているいた。

 

「ギャスパーがヴァンパイヤとのハーフなのは、もう伝えたよね。その影響で、ギャスパーは、親兄弟から疎まれていた。ヴァンパイヤは悪魔以上に血を重んじる種族なの。それもあり、家族からは愛されず、友達も出来なかった。時折、人間の世界に向かっても、ヴァンパイヤであるが故に嫌われた。その上、自分では制御できない時間を止める眼まで持ってしまった。ギャスパーは頼る人もいなく、その果てに殺された。…そこを私が、眷属として蘇らせた。これが、ギャスパーが今ここにいる経緯よ」

 

 ギャスパーの過去を聞いて、巧は重ねざるを得なかった。

 

 ギャスパー・ヴラディと乾巧の過去を。

 

 二人とも、望んでない力を手にしてしまった。その力が故に、ギャスパーは友を持てず、巧は夢を持てなかった。何よりも、自分自身が嫌いという点とまた同じ。

 

 掛ける言葉もないままで、巧はそっと扉に触れる。二人の違いは、仲間に、己の中にある力を受け入れてくれる仲間の有無。いや、本人の意思があるかどうかだ。

 巧に、園田真里や菊池啓太郎がいるように。

 ギャスパーにもリアス達、オカルト研究部がいる。

 

 後は、彼がこのドアを自分の意思で開けるか。それだけだ。

 

「お前、いつまでここにいるんだ」

「………」

「一人になりたきゃ、さっさと出てけ」

 

 バァン!と轟音が響き渡り、部室の中にいたアーシアらも慌てて外に飛び出す。そこには、ギャスパーの部屋の扉を、蹴り飛ばした巧の姿が。

 

「ぼ、僕は…」

 

 隠れ場所である棺から出て来ていたのか、扉のあった場所の手前で膝をついて涙をこぼすギャスパー。その涙を見て、慌てて駆け寄ろうとするリアスを、先程出てきた祐斗が止める。首を横に振り、彼も巧の真意を察して、目線だけをギャスパーへ。

 

 ーーここが君の正念場だよ、ギャスパー君。

 

 男として、乗り越えるべき壁がある。祐斗は、巧に背を押される形で壁を乗り越えた。祐斗にとってのそれが、今ギャスパーの前にそびえ立つ。

 

 

 ーー僕は…死にたい。

 

 親からの愛を受けず、一人の少女により、親や兄弟の元から解放された彼を待っていたのは辛い現実。

 現実は、幼くも純粋な彼の心を傷つけて、欠片へと変えていった。傷ついたその果てで、今の仲間達に出会えた。それなのに、ギャスパーは、彼らに歩み寄ることは出来なかった。

 彼らが、怖いのではない。彼らを傷つける可能性のある自分が怖いのだ。こんな自分(忌み子)を仲間と呼ぶ人達の、停止した表情を見る度に、血の気が引いていく。吸血鬼としての自分さえも死んでしまいたくなる。

 

 ーー死にたいの、本当に?

 

 何処からか、声が聞こえた。

 

 ーーうん。僕は、…死んだ方がいいんだよ。

 

 ーー彼らは、そんな事望まないよ?

 

「えっ?」

 

 何かの声に釣られ、周りを見渡すと。ギャスパーの周りには人がいた。全員が、ギャスパーの眼を恐れずに、見据えていた。

 

 ーーホントニ、シニタイ??

 

「ぼっ、僕は……。生きる、んだ!!ぶ、部長の立派な眷属として!!」

 

 リアスや、巧にではなく。己の中にいるナニカに言い聞かせるように、ギャスパーは誓った。

 

 ーーそっか。なら、いい現実()を。

 

 

 顔を上げたギャスパーに飛び込んできたのは、ひどく柔らかい感触と、美しい紅色。

 

「部長…ごめんなさい。こんなにお待たせして」

「いいの、いいのよ。貴方が、一歩でも前に進めたんだもの」

 

 これを皮切りに、皆がギャスパーに声をかける中。一人、巧だけが旧校舎から出て行こうとするのを見て、ふと決意をする。

 

 ーーあの人みたいな、強い背中をもった男になりたい。

 

 

 

 小さくも確かな決意が、少女のような少年の心に火をつけた。




というわけで、原作とは少し早いですがギャスパーに心火が灯る。

カシラ…。ほんとに覚悟が出来てるんだなぁ…。

Are You Ready?? 出来てるよ!

こんなにかっこいい変身…いままでありましたか?
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