ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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久しぶりの投稿になりました。
次回で終わりにしたいです。…1話にできませんでした。


運命を求めた青年

「そいつを離せ。ぶっ飛ばされたくなきゃな」

「あら、随分とビックマウスね。余程、この子の事が大切なのかしら?」

 

 ゼノヴィアの喉元を銀色に光るレイピアで撫でながら、挑戦的な声色で笑う一体のオルフェノクーーロブスターオルフェノク。

 その声に、彼女の腕で抑え込まれたゼノヴィアと剣を構える裕斗は聞き覚えがあった。

 

 まさに一触即発の状態。ファイズにしても、人質を取られてる以上は無理な攻撃は仕掛けられない。けれど、この敵を見逃す事もしたくはない。

 

 ロブスターオルフェノクーー影山冴子は、巧がまだ乾巧であった頃からの敵。オルフェノクの中でもトップクラスの実力者であり、アークオルフェノクとの最終決戦の際にも上手く逃げ延びていた。巧が何より警戒しているのは、実力よりも行動。この女が動けば、少なくても人類にいい方向には向かない。予知にも近い巧の勘と思考が、ここで仕留めるのが最善と判断。しかし、その一歩を踏み込めない。

 

「いい子たちねぇ…。偉い子にはご褒美をあげないとねっ!!」

 

 突然、ゼノヴィアを解放。ゼノヴィアの背中を軽く押して、前方へ。その行動を見て、ファイズと裕斗が動く。

 動き出す二人を見て、軽く笑う。ロブスターオルフェノクは腕を構え、溜めの動きを。そこから自身の持つ筋力を最大限に引き出した上での一撃必殺ーー突きか放たれる。

 

「ダメェ!!」

 

 そこから見える未来に争うようにギャスパーは、声と共に意識を目に集中させる。ロブスターオルフェノクを停止させるために。けれど、まだまだ力に翻弄されかけている状態では、間に合わない。

 

「…アレン…」

 

 刃が自分に迫る事を受け入れ、木にもたれる形で倒れる幼馴染の名前を呟いて、ゼノヴィアは目を瞑る。

 

 彼女の肉体を、細い刃が触れた瞬間ーー甲高い音が聞こえ、刃はそれ以上進む事はなかった。

 

「二人から…離れろっ!!」

 

 ロブスターオルフェノクは聖魔剣の一撃が自身に迫った事を認知し、後方へ大きく下がる。彼女の視線は、ファイズでも裕斗にも行かず、折られたレイピアに向けられていた。

 次いで、その視線は折った張本人に向けられる。

 

「流石ね、ファイズ。腕前はまだまだ健在ね。…でも、今回はここまでね」

「…っ!」

 

 逃すわけには行かない。ファイズは一気に距離を詰めようと駆け出すが、ロブスターオルフェノクはそれよりも遥かに速い速度を持って視界から外れた。同時に、倒れていたフリードとデルタギアを回収していた事にも気づく。

 

「…すまない、イッセー。私の所為で」

「いや、アイツは最初からやる気は無かった」

 

 変身を解除し、ファイズから巧の姿に戻ったのを認めてからゼノヴィアは謝罪をする。対する巧は、特に怒りといった感情は見せずに冷静を保つ。

 巧の中の影山冴子は、決して不利な戦いは行わない敵。自身が有利な状況で仕掛けてくる。先ほどの状況でも、巧が有利になりつつあるのを察知し戦闘を避けた。だからこそ、ここで倒しておきたい敵であった。

 

 四人と一台は一段落といった雰囲気になりつつあったが、その雰囲気は一回の爆発で吹き飛ばされる。

 爆発の中心は、校舎のある方角。裕斗とゼノヴィアは、すぐに察する。あれは、アザゼルとレヴィアタンの戦闘の余波。

 

「行くぞ」

 

 二人の顔を見て、まだ終わりではない事に気付く。すぐさま巧は前に向けて歩き出す。

 

 彼を待つのは、本来のこの体の持ち主とそこに宿る存在が戦わなければならなかった宿敵。

 もう一人の伝説のドラゴンを宿す者。

 

 

 

 

 

 

 ーー同時刻、駒王学園空中ーー

 

「あらよっと!!」

 

 アザゼルは己の掌から生成した光の槍を、前方に構える敵に射出。10を超える光の槍は最短距離で、カテレア()に向かう。

 悪魔にとっては猛毒の槍、それも堕天使の総督が放ったそれは、下級の槍の比ではない。それを知るカテレアは巨大な防御魔法陣を展開。盾と槍がぶつかり合い、相殺。

 それを確認し、一気に間合いを詰める。その一瞬で、自身の右腕に魔力を集中させる。腕からは灰色の霞んだ光が放たれ、その威力が重い事を物語る。対するアザゼルは臆する事なく、放たれた拳の一撃を難なく受け止めた。

 

「おいおい、この力にこのオーラ。かつて負けた魔王一族の末裔にしちゃ随分なもんだな」

「黙りなさいっ!!」

 

 売り言葉に買い言葉。

 アザゼルはこの襲撃と今の戦闘を通じて、カテレアを分析した。今、自分が戦っているカテレアはかつてのカテレアとはかけ離れた力を見せつけている。

 ここでの可能性は一応は二つ。自身を鍛えて、力を蓄えたーープライドの高い悪魔の大半は修行などはしないーー可能性はない。

 もう一つはーー。

 

「誰だ、お前にそんな力を与えたのは」

「っ!?…流石ですね。あなたを褒めるなど不愉快ですが」

「やめろよ、照れるだろうが」

「だからこそ貴方はここで終わるっ!!」

 

 アザゼルが受け止めていた筈のカテレアの拳から尋常でないほどの力が。本能的に危険を察知したのか、手を離す。

 次の瞬間ーーアザゼルは、己に迫る拳を捉え、同時に気づく。その腕には蛇が巻きついていた事に。そこから放たれる禍々しいオーラは、アザゼルの思考に一筋の仮説を掴ませる。

 

「蛇…まさか、お前ら」

「死になさいっ!!」

 

 そこから先は言わせないと言わんばかりの突貫に後方に下がる事も出来ず、半身になって攻撃をスレスレで躱す。衣服が少しばかり破け、頰からも僅かに血が流れる。

 

「余裕が無くなってきましたね…アザゼル」

「そうだな、そろそろ奥の手って奴を出してみるか」

 

 破けたコートのポケットから取り出したのは、一本の槍。しかし、その大きさはナイフ程度で、持ち手の下には紫色の宝玉が取り付けられていた。

 それは、正にアザゼルにとっての切り札ともいえる存在。

 

禁手(バランス・ブレイク)

 

 その言葉に呼応し、宝玉からは強い光が放たれる。数秒間その光は続き、輝きが収まるとアザゼルの姿は金色の鎧を纏っていた。

 

「作ったという事ですね、忌々しい神器をっ!!」

 

 人工的な神器の開発と研究。それが、今のアザゼルの最大にして唯一の趣味。それは最早、趣味の範囲を超えて、一つの武器にすら昇華された。その武器と共に、アザゼルは前に進む。

 

「貴方の命と共にーー」

「今時、敵の前で喋るのなんて古いぜ…?」

 

 言葉を紡ぐカテレアの懐に一瞬に入り込み、拳を打ち込む。シンプルな打撃でもアザゼルのスペックと神器の元になった存在も相まって、必殺技になり得る。

 

「こいつは五大龍王の一角、ファーブニルを封じ込めて作られた神器で、俺の最高傑作だ。それ、もう一丁!!」

 

 容赦なくカテレアの頰に打ち込まれたフックパンチ。攻撃を受けて、空中から地面に急降下ーー地面に叩きつられる。数十メートルも地面を転がり、ゆっくりとした動きで、杖を支えに立ち上がる。

 

「ここまで…ですか。でも、ここで終わるわけにはいかないっ!!」

 

 カテレアは、命を捧げた。

 

 この突貫は、自殺に等しい。

 

 目の前の敵を倒すことは出来ない。せめて、道連れにすべきだ。

 ある意味、彼を敵として認めているからこその選択。カテレアの身体は人体のルールを破り、ゴムのように腕が伸びた。突貫する身体と共に腕はアザゼルの右腕に絡みつく。それが意味する事はーー。

 

「なるほどね、道連れって訳か。だが悪いな」

「………」

 

 何の迷いも躊躇もなく、アザゼルは光の槍で己の片手を斬り落とす。その行動を見て、カテレアはただ自分の負けを確信した。

 

 彼女は、己の頭を貫く槍の明るさを拒むように瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは…アザゼル」

「勝ったみたいだね」

 

 校舎に着いた巧たちの上空で、アザゼルとカテレアの戦いが終わった。しかし、四人と一台に訪れるのは平穏ではない。

 彼らを待っていたのは、自身たちを狙う無数の魔法使い。特にギャスパー。彼を取り返せば、この静止した時間の解除はされない。敵の狙いを察知し、巧は裕斗に視線を送る。それだけで、裕斗も巧の考えに気づく。ギャスパーを抱えて、防御結界を張る魔王達の元に駆け出す。

 

「この数を彼は一人で相手にしていたのか」

 

 エクソシストとして幾度となく実戦経験を積んできたゼノヴィアでも驚く、数の差を物ともしない白い鎧を纏った戦士に賞賛の言葉を呟く。隣の巧は、特に躊躇する事なく冷静な様子で変身コードを入力。

 

『Standying By』

「変身っ!」

『Complete』

 

 ファイズへ変身を完了させて、ファイズエッジを換装。バトルモードになっているバシンと共に敵に向かう。

 何秒か遅れはしたもののゼノヴィアも追いかける形で、駆け出す。

 

 

 

 

 視界に映るのは、敵、敵、敵、敵。

 四方からは敵が常に視界に映る。1秒たりとも気が抜けない。だけど、ゼノヴィアに不安は無かった。自身の背中を守る存在がいたからだ。見たことのない鎧ーー実際は強化スーツだがーーを纏った仲間と人型の変形ロボットのバイクという変わり過ぎるメンバーではあったが。

 

「ふんっ!」

 

 手を持て余す程の威力と切れ味を誇るデュランダルを振るい、敵を屠る。一撃で敵を沈め、次に目を。この動作を何回も繰り返すが、同時に背後にいるファイズは、その動作を連続で、速度も桁違い。改めて、彼の実力の高さを再認識する。同時に、変形バイクことオートバジンも遠距離魔法を放とうとする魔法使いを認知すると、バスターホイールという遠距離射撃を繰り出す。

 ゼノヴィア達を囲う魔法使いの背後では、裕斗が仲間内では巧以外では反応する事が難しい超速移動と共に聖魔剣を振るい、確実に敵を葬っていく。

 

 しかし、状況は芳しくない。

 

 まだ時間は停止し続け、敵の魔法使い達は駒王学園に転移し続ける。それに加えて、こちらの増援を呼ぶ魔法陣を使えないようにしている。

 

 つまり、この停止状態を解決しなければ、状況は変わらない。

 

 

 

 

 

「ぼ、僕のせいだ…」

 

 ほぼ永久的に増え続ける敵を前に、諦めない仲間や自身の能力で停止した仲間達を見回し、ギャスパーは膝をついた。

 

 悔しい。なんで、なんで僕はこんなに弱いんだろう。

 僕が、裕斗先輩みたいに、ゼノヴィア先輩みたいに。

 

 そして、イッセー先輩みたいに強ければ、きっとーー。

 

 いや、違う。どんなに望んでも、僕は僕でしかない。

 

 今までは、過去は変えられない。けど、今を…未来を、変えることは出来るかもしれないんだ!!

 

「僕が、強くならないと…いけないんだっ!!」

 

 ギャスパーの叫びに呼応するように、彼の両目は強く光る。

 

 神器(セイクリッド・ギア)には、禁手(バランス・ブレイカー)と呼ばれる形態が存在する。先ほどの、時間停止はそれにあたる。あの結果は今のギャスパーの自力ではない。魔法使い達がギャスパーの潜在能力を無理やり引き出した上での物。

 

 それが、キッカケになる。

 

 ギャスパーと時間停止に陥った者達を庇うための防御結界を張っていたサーゼクスは、そう直感。だからこそ、ギャスパーに対して何もしなかった。

 

 その直感は、現実のものになった。

 

 

 

 

「…えっ?」

 

 誰かの口から漏れた声。

 突然、止まっていたはずの時間が動き出した。その証拠にリアス達は動き出し、学園全体にすら及んでいた時間停止の際に発生するオーラは消え去った。

 魔法使い達には動揺が走る。自身達を有利にしていた状況から一変。サーゼクス達の魔法陣の使用が可能となる事を察知するやいなや、逃げ出す者もいた。

 その恐怖はやがて多くの者に伝染。学園にいた魔法使いの半分近くは逃げ出していた。

 

 

「お兄様、これは一体どういう…」

「今は、説明している時間が惜しい。彼らと共に戦ってほしい」

 

 時間停止を受けたことのみ、微かに記憶にはあるが状況を把握しきれないリアスは、サーゼクスに尋ねる。

 リアスは、兄が指差した方向を見て、瞬時に気持ちを切り替える。

 

「朱乃、小猫、ソーナ、行くわよ。アーシアは、ギャスパーをお願い」

「は、はいっ!」

 

 唯一、戦闘要員ではないアーシアに、気を失って倒れているギャスパーの介抱を任せて、リアス達も飛び出す。

 

 大切な人と共に戦う為、飛び出す妹の背中を見て、何も感じない訳ではない。

 

「サーゼクス様、ここは私も…」

「あぁ、この結界は私とミカエルで十分だ。彼らを…頼む」

 

 本当なら、若い彼らではなく自分が敵と戦うべきなのに。魔王という立場上、彼らはそう簡単には動けない。サーゼクスの隣にいるセラフォルーも同じ。

 最も信頼し、愛する女性に妹とその大切な仲間…いや、家族を託し、魔王は戦場を見つめ続ける。

 

 

 

 

 

「はぁぁ!!」

「雷よっ!!」

 

 リアスの滅びの魔力と、朱乃の雷が遠距離からの魔法を吹き飛ばし、尚且つ、魔法使い達を襲う。

 魔力弾が放たれ、リアス達が狙われるもソーナの生み出す水壁が、直撃を阻む。

 軽快なスピードで、小猫とゼノヴィアが敵に肉薄し、互いの攻撃を敵に放ち続ける。

 二人を超える速度を持って、裕斗は聖魔剣を振るい、敵を切り払う。

 

 そして、ファイズはーー。

 

「やぁぁぁ!!」

 

 光剣を操り、敵集団を分裂させる。一人で既に百人以上の敵を斃していた。分裂した半分をリアス達に任せ、残り半分ーー五十人は下らないーーをオートバシンの二人で対峙する。

 

「ちっ!!いい加減、くたばりなさい!」

「一人で調子に乗りすぎよっ!」

 

 あくまで近距離での攻撃しかないファイズ相手に、敵もわざわざ突貫してくる訳もない。たが、ファイズは敵の放つ魔力弾を全て切り裂き、放たれた魔法を回避。

 

「…なぜ避けられる!」

 

 魔法使いの一人が、自身がファイズの背中から放った爆発の一撃を難なく避けられた事に驚愕。そんな動揺を見せる隙をついて、必殺の一撃を浴びせる。

 

「ならば、同時だっ!!」

 

 一人の魔法使いの声に合わせ、魔法使い達が一斉にそれぞれの魔法を放ってくる。それら全てを薙ぎ払おうと剣を構えるファイズの前に、メイド服を着た女性が。

 

「…アンタ…」

「怪我は大丈夫ですか?」

 

 片手で魔力での防護壁を展開。正面からの魔法攻撃を全て封じる。涼しげな表情で、こちらの安否を確かめる銀髪のメイドーーグレイフィアに仮面の下で驚いた表情を見せる巧。

 

「貴方達を1人も欠かさせる訳には行きませんからね」

「なら、あっちに行ってくれ」

 

 あっち…とは、言うまでもなくリアス達の事だ。巧は、自信過剰でも傲慢ーー素直ではないがーーな人間ではない。今の自分の実力とリアス達の実力を考えて、一人で敵を引き受けている。

 

「確かに事実上コカビエルを倒した貴方に下手な手助けは必要ないとは思いますが…。貴方の戦う姿は、あまりに哀しい」

「……かもな」

 

 自分よりも遥かに強く、大人のグレイフィアの言葉に否定は出来なかった。

 

 自分と同じ種族であるオルフェノクを斃し、最期にはその王まで。こちらの世界に来てからは、オルフェノク以外の種族とも戦った。その中で、傷つくのは自分だけであって欲しい、と思うようになっていた。また出会えた大切な仲間に、傷ついてほしくない。

 

 ーー死んでほしく、ない。

 

 そんな思いからか、巧は一人で敵を倒す事を意識している。無理をした姿は大人から見れば、背伸びしてる子供と同じ。

 

「貴方は、リアスにとって大切なーー」

 

 音が聞こえた。

 グレイフィアにより紡がれる言葉よりも、そちらの音に反応。音が聞こえたのは、二人から10メートルも無かった。

 一瞬遅れて、爆風がファイズとグレイフィアを襲った。地面を転がる巧は、自分の変身が解除された事に気がつく。

 

「イッセー!」

 

 転がった方向には、リアス達がいたのかすぐさまこちらに駆け寄った。立ち上がろうとする巧の体をリアスは両手を使い支える。

 

「…悪い、もう大丈夫だ」

「でも…」

 

 確かに大きな傷はない。しかし、額からの汗、少しばかりの息切れ。間違いなく疲労は蓄積されている。そんな状態でまた新手の敵と戦おうとする巧を、リアスは止めたい衝動に駆られる。

 

「部長!今の音は一体」

 

 さらに多くの声が聞こえ、振り返るとアーシアや気を失っていたギャスパーも含めたオカルト研究部全員とソーナが集合していた。

 全員で音の方向に向かおうとするが、グレイフィアがみんなの前に立った。

 

「お下がりください、皆さま」

「グレイフィア、何が起こったの」

「こう言う事だ」

 

 巧にとって、聞いたことのある若い声。その声からは、これから起こる出来事に胸を躍らせるかのような楽しそうな声でもあった。

 爆発の中心たる穴から、よっこらしょと言いながらアザゼルが出てきた。立ち上がると彼は、視線をゆっくりと上に向ける。

 

 その先にいたのはーー。

 

「悪いな、アザゼル。俺はこちら側に付かせてもらう」

 

 夜空の下、美しい白い光を放つ鎧を身に纏ったヴァーリ。彼は、仮面の下でこれから起こす事象を待ちきれずにいた。

 

「そうか…。いつ頃、決めたんだ」

「彼がコカビエルを討ち取った夜にね。彼と戦うには和平は邪魔なんだよ。…彼の敵になるには、テロリストの方が都合がいい」

 

 ヴァーリの視線が、一瞬だけ巧に向けられる。その意味は、ただ一つ、彼は戦いたいのだ乾巧と。

 

「テロリスト…ねぇ。シェムハザに調べさせておいて正解だったな。三大勢力の不満分子を集めて、対抗しようなんて大層な奴らだ。組織の名前は、禍の団(カオス・ブリゲード)だったか」

「しかし、そんな者たちが一つになるとは…」

 

 アザゼルの言葉にグレイフィアが驚く。実際、統制の取れる連中ではない。そんな者たちが紛いなりにも一つの組織になる事が出来るのか、と言わん表情だ。

 

「簡単な話だ。ご立派な、リーダーがいるのさ。…ウロボロスドラゴン、オーフィスだ。違うか、ヴァーリ?」

「そうだ。だが、奴らは力の象徴としてオーフィスに付いてるだけだ。本来の目的は覇権とかいう下らないモノさ」

 

 実際、自分たちに立ちはだかった敵の数を見て、あれ以上の力や数にリーダーとされてる存在に巧は軽い寒気を感じる。そこまで実力者が敵の大将として立ちはだかる事に。

 

「お前の目的は何だ?ただ強い奴と戦いたいだけなら、和平の下でも可能なはずだ。それとも同じ魔王の末裔として反旗を翻したくなったか?」

「…つまらないからさ。アンタに出会い、ルシファー(・・・・・)の力も、アルビオンの力も扱えるようになった。でも、平和で暖かい世界では、その力は意味がない。いつか現れると期待した俺のライバル(赤龍帝)も遂には現れなかった。だから、俺は君をーー兵藤一誠をライバルに決めさせてもらったよ」

 

「…??」

「…えっ!?そ、それよりも今、ルシファーって!?」

 

 巧は、いきなり自分の名前が出てきた事で顔を顰め。

 リアスは、巧の名前が出てきた事と、アザゼルの会話の流れで自然と出てきた悪魔として流しきれない事実に、驚きの声を出す。

 その場にいた全員がアザゼルの方を見やり、言葉を待った。

 

「アイツは前魔王の孫で、その息子と人間の女との間に生まれたハーフだ。半分人間だったからこそアルビオンを宿す事に出来た。まったく、チートとか漫画の主人公みたいな奴だよ」

 

 サラリと口にされた事実は、巧以外の全員を驚愕させる。悪魔の事情についてかなり疎い巧は、取り敢えず睨みつける。

 

「おい、お前。勝手に人を変な事に巻き込むな。俺はな、お前みたいに戦いたくて仕方ないタイプじゃない。同じような奴を見つけて、勝手にやってろ」

「君みたいなタイプの者をそれなりに見てきた。多くはーー偽善者だ。口先だけの半端者で、力の伴わない者達ばかりだ。誰かの為と言いながら、いざとなれば保身に逃げる」

「イッセーさんは違いますっ!!わ、私のことを友達と言ってくれました。私が命を落としそうになったら、助けてくれました!!と、とても優しい人なんです」

 

 ヴァーリの言葉を遮る様に、アーシアは反射的に叫ぶ。今の言葉は、巧をーーアーシアの想い人を貶す物だから。

 ヴァーリは鎧のマスク部分を収納させ、顔を露わにして軽く笑う。寧ろ、その言葉を待っていたと言わんばかりだ。

 

「そう、そうなんだ。彼は口先だけじゃない。本物なんだよ。だから、君を俺のライバルに選んだんだ。誰かの為に本気で戦える様な強い者をね。…でも、問題が一つある。それは、君の闘争心の無さ」

 

 ゆっくりと地面に降り立ち、巧に歩み寄るヴァーリ。警戒を怠ることなくその行動に警戒を向ける。

 

「だからーー」

 

 言葉と共に向けられた手はアーシアに。そこから魔力を放とうとするが、巧の手がそれを阻む。

 

「そう、その表情さ。君の性格からして、周りの人を殺して復讐者という設定が一番良いと思った。彼女で足りないのなら、君の両親をーー」

 

 戦闘欲に満ちたヴァーリの頰を巧の拳が捉える。

 マズイと、グレイフィアが二人の間に入ろうとするが。

 

「…アンタは、下がっててくれ」

「あぁ、そうだな。君でなければならない。俺のライバルである君こそ」

 

 その言葉と後ろ姿を見て、グレイフィアは察した。これは、避けられない戦いだと。自分にできることは、見守る事といざという時に彼の命を守る事だけだ、と。

 

「先程の私の言葉を忘れないでください。貴方は死んではいけません」

 

 その言葉に背中を押された感覚があった。

 軽く小さくうなづいて、ベルトを腰に巻きつける。

 いつもの様に変身コードを入力

 

 

「変身」

『Complete』

 

 

 巧が変身する後ろで見守るリアス達の視界は、見慣れた赤い光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「悪いな、頼んだぜファイズ。いや、兵藤一誠」

 

 コートの内ポケットから取り出した風変わりした時計型デバイスーーファイズアクセルを弄びながら、アザゼルはコレを自分に渡した青年のことを思い出した。

 

 

 

 

『一体誰なんだ、お前さんは?俺の部下を灰色の怪物から助けた事には感謝してるが』

『いえ、貴方の部下の方なら一人でも充分でしたよ。僕は少し手助けをしただけです』

『それに、この変な機械をファイズに渡せ、なんてよ。たしかに俺はファイズ、兵藤一誠との接触はしてるがな』

『彼を見て、知った上でその機械の処遇を決めてください。今の僕は、彼には会えませんから…』

『名前も分からない奴から物を受け取るつもりはねぇぜ』

 

 そういう時、青年は少しだけ困った様に笑った。

 

『木場勇治です』

 

 

 

 

「お前さんはこいつに相応しいんだろ、ファイズ」

 

 ヴァーリに向けて駆け出す巧に対して、イタズラ小僧の様な笑顔を浮かべてアザゼルは始まってしまった戦いを見つめた。




最後の変身は、ファイズあるあるの変身音声ミスです。
個人的にコンプリートだけの変身も好きです。

本当に次回で最終回にします。四巻の。

巧vsヴァーリをお楽しみに。
今作のヴァーリは、赤龍帝が現れなかったので少しやさぐれています。
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