ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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もう少しでお気に入りが1000人を行きそう…。
信じられませんが、嬉しい限りです。
千人突破したらお知らせがあるかも…
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幼馴染と姉妹

『此度のパーティーは、若手悪魔たちの交流を目的として……』

 

 パーティ会場の中心に位置する場所から聞こえる魔王()のスピーチを、リアスは殆ど聞き流していた。いや、まともに聞いていられる精神状態ではなかった。アーシアと彼女以外の眷属は皆、この会場には居ない。最初に飛び出した巧の表情から察して、只事ではない予感がしている。

 

 視界の端でレイヴェルとイザベラの二人と共にスピーチを聞くアーシアを確認し、リアスは兄に背を向ける形で会場を離れる。

 

 

 皆が森に向かったと確信したリアスは会場を離れて、そのまま森へ向かおうと一階への階段へ。

 急ぐ彼女の元に一つの影が。

 

「どうしたリアス嬢」

「あなたは……」

 

 振り返った先にいた影の主に、少し驚いた顔を見せる。

 

「一つ尋ねたいが兵藤一誠はここにいるか?」

 

 その問いにリアスは──。

 

 

 

 

 

 

 ほぼ同時刻。場所は、会場から少し離れた森の中。

 

 

「あ、アレン……!!」

 

 ゼノヴィアは、思わぬ形で再び出会った幼馴染の名前を呼ぶ。

 呼ばれた彼は彼女の記憶の中とは全く違う人物に。

 

「だっかっらっ〜、何度も言わせるなっ、ての。もうアレンの奴は奥の方に縮こまってるの。まぁ、お寝んねしてるってわけよ」

 

 

 幼馴染の顔で、身体で、邪悪な笑みを浮かべる男に、ゼノヴィアは変わらない決意を示すだけ。

 

「そうか。なら、お前を倒し……アレンを目覚めさせる。それが、私の役目だ!」

 

 気合いと共に、ゼノヴィアは右手にデュランダルを顕現させる。以前までは呼び出すのに詠唱が必要だったが、これも修行の結果の一つ。

 

「それはいい目標だな、俺に勝てれば、だけどねぇ──!」

 

 その決意を、嘲笑うフリード。彼の隣に、美猴と黒歌が並び立つ。

 

「こっちの頼みを聞けば、今回はあのアホと一緒に退散すっから」

 

 頼み、その言葉を聞き巧は逡巡させられる。この場での戦闘を回避できるのならそれに越した事はないのだから。

 すると黒歌は無邪気な笑みを浮かべ、小猫を指差す。

 

「白音、私と一緒に来ない?」

 

 その提案を受け、小猫は予期していた物なのか特に動揺は見られない。巧としては、動きたいがそういう訳にもいかない。ここで自分一人で動けば、共に彼らをも巻き添いにしてしまう可能性がある。

 

「私は……」

 

 小さな呟き。小猫は迷っていた。自分が姉の元へ向かえば、恐らくこの場は丸く収まる。いくら巧が居たとしても、姉や美猴、そしてフリードの三人を前に無事で済むとは思えない。

 

 着いて行く、そう答える小猫の前にギャスパーが立った。

 

「こ、小猫ちゃんは……行かせない」

「ギャー君……」

 

 普段は誰かの背に隠れることの多いギャスパーが、何処にも隠れず、仲間を守る為に、己を奮い立たせ敵に立ち向かおうとしていた。

 

「どうして? それは、私の妹よ。必要だから来てもらいたいの」

「違うっ!!」

 

 響くギャスパーの怒声。それにその場にいた全員が驚いた。

 

「家族なら……『それ』なんて言わない。貴方は小猫ちゃんを傷つけるかもしれない。……だから、僕が守る。僕は……僕だって、男なんだ!!」

 

 ギャスパーの決意を下らないと可愛らしい笑みを浮かべる黒歌。すると一変。その美しい顔から笑顔が消え、冷酷なものへ。

 

「そう。なら……死ね」

 

 一発。

 手を前に突き出して放った魔力は小猫とその前方のギャスパーへ。

 二人の前にゼノヴィアと裕斗が立ち、互いの剣を以って放たれた魔力の塊を斬り崩す。

 

「よく言ったギャスパー」

「次は僕らの番だね、イッセー君」

 

 二人の声に応じる様に、ギャスパーを腕に抱えた巧は立ち上がる。

 

「おう」

 

 巧は剣士二人組よりも素早く二人に近づき、朱乃に小猫を投げ渡す。自身はギャスパーを抱えて後方へさがっていた。

 因みにこれは悪魔の駒の能力の応用。兵士の特性、プロモーション。他の駒の力を使う事ができる。即座に騎士の能力を発現させた。

 

 

「あれあれ、ていうわけで……交渉決裂でござんすね!!」

「だなっ……! お前どっち行く」

 

 黒歌のすぐ後ろで、美猴とフリードは、嬉々とした表情だ。建前的に闘いはする気は無いと言った美猴だが、ヴァーリを退けた巧に興味津々と言った様子。

 

「もちろんイッセー君でござんす。……変身」

 

『Standing By────Complete』

 

 闇夜の中で、白い光共にフリードの肉体はデルタへと変化。

 表情は仮面に隠れているが、ウキウキとした待ちきれない様子は体への反応として露わになる。

 

 

 

 フリードがデルタへなった事でまさに一尺触発の雰囲気の中、小猫の耳が聞き慣れたエンジン音を捉える。

 

「……この音」

 

 

 何秒かすると小猫の元で燃料を切らし倒れているバイク状態のバジンが。久しく運転もしておらず、グレモリー家本邸からこのパーティまで走行してきたからだろう。

 そして巧の手には、小猫により投げ渡されたファイズドライバーが。

 

 ──久し振りだな。

 

 珍しく感慨深さに耽る巧ではあったが、即座にそれを腰に巻きつけて、約一ヶ月振りに変身を果たす。

 

『Standing By』

「変身」

『Complete』

 

 赤い光が巧を包み、再び冥界の地に赤い閃光が現れる。

 変身を完了させた巧は、久し振りに手首のスナップを。

 

 懐かしい音が冥界の森に響いた。

 

 

 

 

 

 

「朱乃さん、どうしますか」

 

 剣を構える裕斗は、隣の朱乃に耳打ちをした。

 リアスのいないこの場では、彼女が指示役を担うことになっていた。

 

「黒歌は、私が相手をします。裕斗君とゼノヴィアちゃんとギャスパー君と小猫ちゃんの三人で美猴。イッセー君がフリード。この形でいきましょう」

 

 朱乃の作戦に裕斗は頷く。

 この作戦の肝は朱乃と巧。朱乃が最上級の悪魔に比肩する黒歌相手にどこまで食い下がれるか。巧が、どれだけ早くフリードを倒せるか。それにより作戦は大きく変わる。

 朱乃はこの指示を、皆に伝えようとするも……。

 

「行くっよー!!」

 

 巫山戯た声と共にデルタが巧に突貫。

 朱乃の作戦通りの相手と思いきや、デュランダルを振りかぶるゼノヴィアが二人の間に割って入る。

 

「はぁぁ!!」

 

 振り下ろされた一撃はデルタには当たらず、地面を穿つ。

 その僅か後方で立ち止まったデルタ、フリードはイラつきを隠さない態度。

 

「あのさぁ、この流れならイッセーきゅんでしょ相手は」

「そうかもな。……それでも、お前は私が止める」

 

 一瞬、巧を含む皆に視線を向けるゼノヴィア。

 

 フリードを、一人で相手にする。

 

 その視線の意味を理解してない者はおらず、巧も彼女の事情を知ってるので止まることも出来ない。

 

「ゼノヴィアちゃん。危険になったらすぐに私達の元へ来なさい」

「はい……副部長」

 

 

 そんな二人のやり取りに、フリードは何処か飽きた演劇を見るかのような態度で割って入る。

 

「はぁ〜。悪いけど、もうアレンの奴はいないからさ。アンタの首をチョンパしても問題ないよ」

「そうか。なら、このデュランダルで貴様を斬り伏せた後、アレンを目覚めさせるだけだ」

 

 デルタとゼノヴィアは同時に突貫。

 幼馴染の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

「ファイズの相手なんて、今回は当たりだな〜」

 

 クルクルと器用に手に持った赤と金色の棍棒を回す美猴。そんな様子の相手にも、巧の態度は変わらない。

 

「さっさと来い」

 

 目の前の相手を出来るだけ早く倒し、ゼノヴィアか朱乃達と合流しなければならない。

 一向に攻める気を感じさせない美猴に痺れを切らし、巧は飛び出す。ファイズの身体能力とここ一月の修行の為か、動きにはキレがある。

 

「……マジかよっ!?」

 

 棍棒を回す美猴の間合いに詰め寄り、加速の勢いを乗せた右ストレートを彼の胸の部分へ。

 この不意打ちに、手に持った棍棒の回転を止め、盾がわりに使う事で対応。けれど、その勢いは体だけでは止めきれず、後方へ数メートル程下げられていた。

 

「なるほどねぇ……コイツがヴァーリを退けたファイズか。面白い!!」

 

 美猴の雰囲気と纏うオーラが一気に変化、上昇。

 その一瞬で、巧も構えを見せて備える。美猴の一撃に対して。

 

「伸びろ……如意棒!!」

 

 赤が迫る。

 先程まで彼の手元にあったはずの棍棒の先端が巧の、ファイズの仮面に向かって来ていた。

 首を右へ逸らし、直撃は避けるものの、後方からは木が壊れる音が背中越しに聞こえる。今の一撃の威力を物語る証拠だ。

 

「いい反応してんなぁ……ファイズ」

 

 美猴の声に反応し、彼を見るとその手元には既に伸縮を終えた棍棒が。伸びる距離も未知。しかし、それ以外にも伸縮にかかる時間が速い。

 

「コイツはどうするファイズ!!」

 

 棍棒──如意棒。

 美猴の持つ棒は、彼の出自に大きく由来する。

 元は最遊記で有名な妖怪、孫悟空の持つ棍棒を指し、彼がその血族の末裔である事につながっている。

 

 

「……っ!」

 

 美猴の放つ棍棒での攻撃をなんとか掻い潜り、耐える巧。

 彼の技は、性格もあるのか少しばかり粗野ではあるものの、洗練された物も感じ取れる技。

 

 

「逃げてるだけじゃ……俺っちは倒せねぇぞっ!」

 

 気合いと共に仮面部分を狙う一撃。腕をクロスさせて一撃を受け止め、美猴もカウンター防止の為か後方に下がる。

 現時点では、巧がやや押され気味ではあった。同時に巧の中の焦りも募る。

 

 咄嗟に左腕に巻きつけられたファイズアクセルに手が触れそうになるのを止める。ここで使えば、新手が現れた時に打つ手が無くなる可能性もある。

 何よりファイズアクセルの効力は十秒間限定。その中で、目の前の美猴の他にフリードと黒歌を倒さなければならない。下手な賭けはまだ打てない。

 

 再び美猴との距離を詰めようと前に足を踏み出す巧の前に一匹のコウモリが。

 

「イッセー先輩、これを!」

 

 手に何かを持っていたコウモリからギャスパーの声が。それに足を止めつつも、コウモリが投げ渡した何かを受け取る。

 

『Ready』

 

 受け取ったオートバジンの左ハンドルのパーツ部分。

 ハンドルの中央にある窪みに、ミッションメモリーを換装。

 森の中でも強い光を放つ光剣へ。

 

「らぁぁぁぁ!!!」

 

 森の闇を、切り裂く様にファイズは勢いよく美猴に突貫。

 輝く光剣を、勢い良く敵へと振り下ろした。

 

 

 

 

 

「へぇ、あれがヴァーリのライバル(仮)なんだ」

 

 棍棒とファイズエッジの斬り結びへの感想を、木の枝に座りながら呟く黒歌。

 

「なら、美猴の次は私の番にゃ♪」

 

 二人目の黒歌は、頭の上の猫耳と尻尾を軽く揺らして見た目通りの語尾を付ける。

 

「なら、さっさと片付けなきゃ……」

 

 三人目の黒歌の視線の先には、剣を構える裕斗、雷を放つ朱乃、姉である自分に打撃を打ち込む小猫、ヴァンパイヤの力を解放し、皆のサポートに回るギャスパー。

 

 

「遊ばれてるわね……」

「えぇ、悔しいですけど!」

 

 今の自分と木の枝で優雅に座る黒歌の実力に圧倒的な差がある事を思い知らされる。

 隣の裕斗も先程から、聖魔剣を以って何度も黒歌を斬り伏せているものの、それらは全て彼女の作った分身体。

 しかも、本体同様に攻撃もするためにかなり厄介な技だ。

 

「えいっ!」

 

 黒歌の分身の一体が放った魔力の塊を、可愛らしい声と共にギャスパーの魔術で受け止める。

 

 今までとは違ったギャスパーの行動。

 先程の黒歌への啖呵と同様に、戦闘面でも成長は著しい。元々、才能に富んではいたものの極度の対人恐怖症の為に苦しんでいた。けど、今は懸命に自分の力を受け止め、それを自分と仲間の為に使えるようにと磨いている。きっと神器も彼ならば使いこなせるだろう。

 

 少しづつ前を往く後輩が朱乃には眩しく見える。

 

「……そうね。私も、強くならなくては」

「朱乃さん……?」

「朱乃先輩」

 

 聖魔剣を握る裕斗と、黒歌同様に猫耳と尻尾を生やした姿となった小猫は朱乃に視線を向ける。

 

「小猫ちゃん、『仙術』のコントロールは?」

「まだまだ未完成です。……でも、お姉さまの本体は分かります」

 

 仙術。

 それが、黒歌をはぐれ悪魔にした力。

 人間の大元のエネルギーを根源としたもので、魔力や光の力とは全く異なる物。それらを上手く扱えば、周囲の敵の探知、打撃に応用すれば体の内部からの破壊。他にも植物の成長を早めたり、枯らせる事さえも可能となる。

 

 今の小猫には全ては扱いきれないし、危険も多い。

 仙術の源は、本人の力だけではなく周囲の自然からのエネルギー。そういったものを集めると邪悪な気も寄せ付けられ、使用者を穢そうとする。

 

「あら、ようやくあんたも使う気になったのね、白音」

「お姉さまを、超える為です」

 

 その言葉を聞き、黒歌はくすりと笑った。その笑顔には毒気が一切なく、妹を思う一人の姉の物。

 

「そっかなら、こっちも本気を出すにゃ♫」

 

 黒歌を中心に森を覆うような結界が展開される。冥界の空ではなく、紫色の空間へ変わった。同時に黒歌の分身体が消えて、霧が発生。

 それらはゆらりと揺れながら……四人の元へ。

 

「吸ってはダメです……これは、お姉さまの」

 

 霧が迫る瞬間、ギャスパーは小猫を押しのけて先頭へ。

 すれ違った一瞬、小猫の目はギャスパーの目の変化を捉えていた。

 

「ぎゃー君……!?」

 

 ギャスパーの神器が発動し、四人に向かっていた霧の時間を停止させる。

 停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)の力に、黒歌は驚きつつも、止めた張本人の前へ行こうとするも……。

 

「……っち!」

 

 ギャスパーへの距離が二メートルと縮まりかけた所で、鋭い刃が黒歌の肌を通り過ぎる。

 顔の部分に軽い切り傷が生まれるものの、仙術の応用で傷はすぐに消えた。

 

「女の子の顔に傷をつけるなんて、随分と酷い事するにゃ」

「そうだね。でも僕は、グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』。仲間を護る剣にならなきゃならない…彼の隣で」

 

 剣を構え、持ち前のスピードを生かし攻めてくる裕斗。基本的には魔力や仙術。そして妖怪の力、妖力での攻撃を基本とする黒歌。肉弾戦はあまり得意では言えない。スピード系の裕斗ととは特に相性が悪い。

 

 聖魔剣での力強い横薙ぎを後方に下がり避ける。一旦距離を置こうとする黒歌の体が『停止』した。

 その意味を即座に理解し、自分のいる場所が自身の放った霧とギャスパーの間にあり、彼に停められた事に気づく。

 先程からの裕斗の剣にはここへ誘導する意味があった。

 

「えいっ!」

 

 背中から撃ち込まれた一撃は、幼い頃から変わらない声。でも、その声の主は自分の名を呼び、その後ろをついてくる(白音)ではない。小猫の仙術での一発は黒歌の妖術や仙術の使用を一瞬だけ、不可へ。

 

 その一瞬を、姫島朱乃は逃さない。

 

 前方に突き出した手には、バチバチと彼女の象徴とも言える雷が纏っている。

 今までなら、これを敵に向けて放つ。それだけで彼女自体の魔力、それに伴う魔法の才能で敵を倒せてきた。

 

 自分の中の血を、受け入れる。

 

 小猫もギャスパーも、前に進んでいる。

 ここで自分も進むんだ。

 

 その決意を雷に纏わせて、彼女は『雷光』を放った。

 

 悪魔の力で作った雷に、堕天使の父と同じ光の力を上乗せ。

 雷から雷光へと進化した一撃は、黒歌と言えどもダメージは否めなかった。悪魔である黒歌には、堕天使の力は堪える筈。

 

 

「へぇ……結構やるじゃない……」

 

 今ある全てをぶつけても、黒歌は倒れなかった。

 それでもなお、裕斗たちに絶望は見えない。

 

 同じ様に、ゼノヴィアと巧も絶望など見えていないのだから。

 

 

 

 

 

 

「アレン、助けるじゃなかったの。ゼノヴィアちゃ〜ん」

「黙、れっ!!」

 

 デュランダルを振り上げて、気合いと共に袈裟斬りを放つ。デルタは体を半身にして最低限の動きのみで、一撃を避ける。ゼノヴィアは振り下ろしたデュランダルを地面に走らせ、横薙ぎの一撃へ繋がるものの、デルタは彼女の手首を掴む。

 

「コイツはいい剣だけど……それを扱う君自体がまだまだですなぁ」

「……ッ!」

 

 掴まれた手は、ギリギリと音を鳴らし、その痛みは徐々に広がっていく。少しするとデュランダルを手から放してしまった。

 

「はい、おーしまい」

 

 デルタの軽い拳の一撃はゼノヴィアの腹部に直撃。彼女の体を後方の木へと激突させる。木に倒れかかり、動かなくなったゼノヴィアを見るとフリードの呼吸が僅かに速くなる。

 

 ゼノヴィア。

 

 その名前を呼ぶ、もう一人の自分。

 本来の人格でもあるアレンは、傷ついた彼女を見て、フリードの精神を乗っ取ろうしてくる。

 

「そうかいそうかい。なら、殺すしかねぇか」

 

 この声を消すべく、デルタは彼女は近づいて、腰のホルスターについてる換装されたデルタフォンを取り外し、銃の形となったそれを、ゼノヴィアへ。

 

『Error』

 

 突然、デルタへの変身は解除され、元の体へ。

 自分の手のひらや体を見ると変身前の服を着た自分が。

 

「なるほどね。そんなに死なせたくないですかい」

 

 ならば、と言わんばかりに着ていたコートの裏から光剣を出現させる。漸く意識を取り戻したゼノヴィアの前には、自身の命を狩るべく首へ向けて剣を構えるフリードが。

 

 

「大好きなアレンの顔を見て……死んじゃえ」

 

『Start Up』

 

 聞いたことのある電子音。離れた場所から何かを殴る鈍い音が複数回回聞こえ、次の瞬間には何かがフリードとゼノヴィアの間へ。

 現れた何か──アクセルフォームを発動したファイズが振り下ろされた剣を受け止め、まずは腹部へ一撃。二撃目は、構えた頭の間を縫う様に撃ち込まれたアッパー。トドメの一撃は、胸の部分に勢い良く蹴りを放った。

 

『Time Out──Reformetion』

 

 十秒間の活動時間を経て、ノーマルファイズへと姿を戻す。

 変身を解除して、ゼノヴィアに駆け寄る巧。

 木にもたれかかるゼノヴィアの肩を掴み、声をかける。

 

「おい、起きろ。ゼノヴィアッ!」

「あぁ……起きてるさ。助かったよイッセー」

 

 普段よりも声に張りとボリュームは無いものの、意識があるのを確認し、地面に倒れているフリードを確認。

 

「イッセー君!」

 

 裕斗の声と複数の足音が聞こえ、振り返ると傷を負った裕斗たちが。四人ともそれなりの傷はあるものの、致命傷に至った者は居ないことを確認し、フリードの近くに落ちてあるデルタギアを回収しようと近づいたその時。

 

「さっすが……ファイズ」

「えぇ、ヴァーリが勝てなかっただけあるわね」

 

 倒したはずの黒歌と美猴がフラフラになりながらも立ち上がっていた。理由としては、巧はアクセルフォームでの通常の攻撃しかしておらず、必殺技は放ってはいない。

 仮に巧がアクセルフォームで技を発動させていれば、二人とも無事では済まなかっただろう。

 

「お前ら……」

 

 裕斗たちに下がっていろ、と言おうとした巧と黒歌の間に空間の切れ目が発生。切れ目からは聖なるオーラを放った剣を握る青年が出てきた。

 思わぬ新たな新手に巧は、再びファイズドライバーを腰に巻きつける。

 

「遊びはここまでです。美猴、黒歌……フリード」

 

 背広を羽織り、腰には二本の剣を携えた青年は、立ち上がった二人を見た後、地面に倒れてる筈のフリードに声をかける。

 何事もなかったかの様にフリードは体を起こした。

 

「ちっ、まだまだ遊び足りないってーの!」

「既に悪魔が気付きました。ここでのこれ以上の戦闘は無意味です」

「アーサーの迎えが来たってことは本格的にトンズラだな」

「まっ、仕方ないわねぇ」

 

 剣士の青年、アーサーの言葉に三人は渋々ながらも従っていた。

 不意に、剣士たる性故か、裕斗の視線とアーサーの視線がぶつかる。

 

「いつか、貴方とそしてデュランダルの使い手──ゼノヴィアとは剣を交えたいものです。ですが今は、その時ではありません」

 

 裕斗の体がピクリと反応したのを見て、アーサーは更に言葉を続ける。

 

「聖王剣コールブランド、そして最後のエクスカリバー、『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』の相手に貴方達は相応しいのですから」

 

 今の自分よりも何枚も上手の彼にそこまで言われて、黙っていられる裕斗ではなかった。

 

「えぇ……僕達も貴方の相手に相応しい剣士になっているので、覚悟をしておいてください」

 

 裕斗の啖呵に、アーサーは軽く微笑みを見せて、黒歌達を連れて消えていった。

 

 

 

 

 それから数分後、タンニーンにより黒歌の結界が破壊され、巧達は漸く肩の荷を降ろせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「また、ファイズですか」

 

 アザゼルは、堕天使の副総督……シェムハザの呟きを聞き逃さなかった。

 今回のパーティ、名目は若手悪魔の交流ではあったがあの場には悪魔の上役は勿論、アザゼルを始めとした他の種族のVIPも出席していた。

 そんな場所にテロリスト、それも一人でも強力な力を持った者達があらわれた事もあり、パーティは途中で中止となった。

 

「それにしても報告によると……彼が『ヴァーリチーム』の二人と『デルタ』の対処をしたと、これはどう思いますか」

 

 シェムハザは、現場にいた者達(巧達)の証言をまとめたプリントをアザゼルに手渡す。しかし、アザゼルはそれを一瞥もせずに彼に返した。

 

「その『ヴァーリチーム』のリーダーを倒したんだ。今更不思議でもなんでもねぇよ」

 

 勿論、プリントには巧一人で戦ったとは書いてはいない。それでもアザゼルは今の裕斗や朱乃達が黒歌にある程度戦えたことの方が驚きだ。それも小猫は仙術を扱い、ギャスパーは目の力を更に強め、朱乃は雷光を手にした。これだけでグレモリー眷属のレベルアップは確実。顧問としては良い誤算の一言に尽きる。

 

「あまりに不思議ではありませんか……? 彼が、ここまでの力を今まで隠していたとは考えにくい」

 

 彼が、兵藤一誠そして乾巧を指しているのを分かってるアザゼルは、巧のためにも敢えて言葉を選んだ。

 

「いいじゃねぇのか、それで」

 

 少なくとも、巧の事を知らせるのは早い。今伝えれば、三大勢力は並行世界から来た未知の種族に備えなければならない。それもテロリスト中に隠れた。その為にも巧のファイズの力を、アザゼルは神器らしき物と曖昧な答えを周囲には示している。

 

「どうやら、近頃のガキは年寄りの迎えにすら来れないらしい」

 

 嫌味の含まれた声共に、室内に一人の老人が。

 

「ようやく来たか、北の田舎のジジイ」

「久しゅうございます……オーディン殿」

 

 北欧神話の主神。文字通りの神さま──オーディンは、古ぼけた帽子を被り、白い髭を蓄えてた風貌で現れた。その後ろには護衛の銀髪の女性がアザゼルと挨拶の為にこちらに来たサーゼクスに軽く会釈を。

 

 挨拶もそこそこに、オーディンの訪問により上役達の集まる室内の話題はテロリストのパーティ会場襲来からオーディンの興味の矛先、レーティング・ゲームへ。

 

 悪魔とは違い神話体系を持つ北の主神が悪魔の催しに興味を持つ。レーティング・ゲームが多種族に高い人気を誇るいい証拠だな、そんな事を思いながら会話に加わった。

 

 

 ここ数年のレーティング・ゲームの話題から、方向はリアスとソーナのゲームについて。話してるメンバーにセラフォルーさえも加わっていた。

 

「お前達は二人はどちらが勝つと思ってるんじゃ?」

「ソーナちゃん!」

「リアスですよ」

 

 尋ねられた魔王二人は、即座に妹の名前を。その目は勝つ事を疑っていない目だ。

 尋ねたオーディンは、そうかそうかと笑い出した。いつのまにか話題をセラフォルーの来ていたコスプレ用の服について。セラフォルーの露わになった太腿に手を伸ばしたオーディンが護衛役の女性にハリセンで叩かれるのを横目に、サーゼクスはアザゼルを呼ぶ。

 

「アザゼル、君はどう見る。今度のゲーム」

「今のリアス達は若手の中では飛び抜けた力を持った奴が多い。そして今回の襲撃で小猫、朱乃は確実にレベルを一つあげた。そしてギャスパー。あいつは今回の襲撃で神器の力を更に強めた。……まぁ、コントロールの定まらない豪腕ピッチャーって所だ」

「そしてイッセー君……か」

「あぁ。仮にファイズにならなくてもあいつは強い。それにアイツに付いていこうと眷属全員が前に進む。……逆に言えば、イッセーが倒されてもどう戦うかだ。ソーナがイッセーをどう対応するのかは見所の一つだな」

 

 不意にアザゼルは、自分に真実を語る巧が頭を過る。

 彼に課せられた役目はあまりに大きい。

 その役目が、彼に牙を剥くことが無いように祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「次のレーティングゲームで、仕掛けてくれ。……だけは、傷つけてはダメだ。……手筈はこちらで整える」

 

 

 

 

 リアス眷属とシトリー眷属のレーティングゲームまであと二日。




ここからはオリジナル色の強い展開になります。
賛否両論あるかもとはおもいますが…ぜひお楽しみに。

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