ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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約2年ぶりの投稿になりました。
今後はまた定期的に投稿していきますので応援の程宜しくお願い致します。


隣に居たい人、隣に居てくれた人

「はぉぁ!!」

 

気合の雄叫びと共に振り下ろされた薙刀。

その軌道を確実に見定めてから、バックステップ。

次いで向かってくるのは、剣を振り下ろさんと構える二人の少女。

 

「…当たらない!」

「どうなってるのよ、イッセー君」

 

少女二人、イリナとゼノヴィアは、見事な一言としか言えないほどの流れる様な剣技を持って巧に攻撃を仕掛け続けるが、一太刀も浴びる気配はない。元々教会に属していた頃からのパートナーの二人。仲間内でのコンビネーションでは高い二人だ。

 

「…えいっ」

 

同時に振り下ろされた一撃を、横っ飛びでかわした直後。小さな気迫と共に小猫による飛び蹴りが巧に向かってくるが、身を低く構える事で直撃を避けた。

しかし、巧の回避を察した小猫もすれ違いざまに空中で身を捻りながらの裏拳を繰り出す。

巧からすれば死角の筈の一撃を肘を盾にする事で受け止める。

接触の後、着地した小猫は距離を置き背後に下がる。

 

 

「…っ!」

 

小猫が下がった直後、巧は自分の足元から魔力と悪寒を感じ取り、距離を置く。その一瞬後、直前に巧が居た場所からは剣の華が咲き乱れる。

巧の視線の先には自らの能力を全力で解放した裕斗が居る。

ため息と共に、今度はこっちだと言わんばかりに駆け出そうとした瞬間にタイムアップを告げる音が鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様、イッセー。はい、これ」

「おう」

 

どこまでも続いていそうな空間。冥界で見た風景と同じだ、なんて感想を抱きながら座り込む巧の隣にドリンクを渡したリアスが座る。

今は、対ディオドラのレーティングゲームのトレーニングにオカルト研究部、そして生徒会役員の面々で勤しんでいる。

今回の騒動を巧の提案もありレーティングゲームでこの一件を収めることになった。その直後からソーナ達もバックアップに努める事を約束。今に落ち着く。

 

「すげぇもんだな、お前の実家」

「えぇ。お父様やお母様、お兄様達が全面的に協力してくれてるもの」

 

そして巧が見上げているトレーニング空間。

ここは、グレモリー家がリアス達のためにと用意した異空間。レーティングゲームの技術の応用で仕立てられた空間。その辺りの用立てにはリアスの兄であり、現魔王のサーゼクスの口添えもあり様々な設備が搭載されている。

 

「リアス」

「何?」

「サンキューな」

 

小さく呟かれた言葉と共に立ち上がり、巧は彼女に背中を見せる。そんな彼の背中を見送りながら、リアスは笑みを溢した。

 

「もっとキチンと言ってもいいのよ、巧さん」

 

紅の髪を揺らしながら、彼女は彼を追い掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーニングも終わり、自室でくつろごうとする巧ではあるが、そういう訳にもいかない。

何故なら、くつろごうとした部屋にリアス達をはじめとしたオカルト研究部全員が集合していたからだ。

元々一人用の部屋にリアスを除く八人が押し込まれており、人口密度は高い。

 

「お前らな…。とっと帰れ、狭くて仕方ねぇ」

 

リアスとアーシアの下宿組を除く面々に、帰るように催促するも効果は見返られない。それどころか…。

 

「酷いですわ、イッセーくんは。せっかくこんなに近くにいるのに帰れなんて」

「頼んでねぇし…って、引っ付くなよ朱乃!!」

 

甘い言葉と共に巧の胸にしなだれかかる朱乃。以前よりも距離感が近くなったとは言え、ここまでは許容できない巧。

それに反応し、突貫するアーシアといつも通りの風景が広がる最中で部屋のドアが開く。

部屋に入ってきたリアスは、驚きの情報を皆に伝える。

 

「みんな聞いてちょうだい。今回のディオドラとのゲームの詳細が決まったのと、冥界でのテレビ出演が決まったわ」

 

えぇーー!!、と声を出して驚くのはイリナとギャスパー。残りの面々は驚きこそしたが、特に声には出さない。

チラリ、とリアスはアーシアと巧の表情を窺う。

 

「とりあえず三日後に収録の為に、冥界へ向かうわ。…イッセーもね」

 

その問いに答えることなく、巧は首を縦に振るだけだった。

 

 

 

 

 

私ーーアーシア・アルジェントは、今とても困っています。

かつて、まだ私が聖女と呼ばれていた時に助けた悪魔の男性、ディオドラ・アスタロトさんに求婚されて、その事で部長さんを始めとする部員の皆さん、生徒会役員の皆さん、そしてイッセーさんに迷惑を掛けてしまっているんです。

同時に、みなさんが私の為にと共に戦おうとしてくださる事がとても嬉しいんです。

 

何より私は、この街に居たい。居続けたい理由が今は出来ました。

昔はできなかったお友達がたくさん出来て、そして好きな人が出来たから。

 

だから私は、ここに居続けたいです。 

 

あの人が傷ついた時に癒せるように、あの人が悲しい時に、隣に居られるように。あの人が笑った時、一緒に笑いたいんです。

 

一誠さんの、隣にずっと。ずっとーー。

 

 

 

 

 

 

冥界でのテレビ収録当日。

リアス・グレモリー眷属は見学としてきたイリナと共に控え室で待機をしていた。

こういった形式は人間界のテレビ業界と同じなのか、人数に応じた広い前室が用意されて、その中心のテーブルにはお菓子や紅茶がケータリングとして置かれている。

 

「こ、これでいいんでしょうか」

「あぁ。バッチリだよ、アーシア」

「私としてはこんなメイクもいいかも!」

 

前室には化粧台やそれに伴いメイクさんも待機している。冥界全土で放送されるとありアーシアやゼノヴィアはメイクを施され、イリナはそんな二人を見て、もっとナチュラルな方が…と感想を。

 

「ギャスパーくんは、女の子の格好なのかい?」

「は、はい。今ですし…僕にはこれが戦闘服です!」

「……段ボールも卒業したし、少し成長」

 

いまだギャスパーの女装癖は治っていないが、似合い過ぎてはいる。それよりも、あの超人見知り時代を知る祐斗と小猫から見れば、こうして人前に、それも冥界全土の前に立つことになると考えると凄まじい成長と言える。

二人はどこか成長した妹or弟を見送る気分はこんな感じなんだろう…なんて事を考えていた。

 

『冥界期待の新人、ディオドラ・アスタロトは語る!この試練を乗り越えて彼女の愛に応えて見せる』

『リアス・グレモリー眷属、兵藤一誠乱心か。上級悪魔の婚姻を二度も破る?』

『冥界上層部、ファイズは我々の先兵として戦うだろう』

 

冥界の世情を報道する新聞に目を通しながら、巧は一人で納得していた。

腹も立つし、気に食わないがディアドラの発言は筋が通っている。今の冥界での巧の評価は低く、中には強制的に先兵として旧魔王派との戦いに投入させろ、と発言する上級悪魔も少なくない。

以前、ライザーとリアスの婚姻も破談にさせた経緯もある為か、一部のメディアではリアスではなく巧個人を批判する記事を出す物も。

その一方で、四大魔王を始めとした穏健派や他の勢力との和平に賛成だった権力者や上級悪魔らは、巧を擁護する発言や記事を出している。

良くも悪くも今の冥界では話題の中心にいる。そんな評価を下されているのが巧の現状だ。

 

「こんな記事気にする必要ないわ」

 

言葉の裏にある苛立ちをそのままにしているリアスは新聞を片づけながら、巧の隣に腰を下ろす。

駒王学園の制服姿ながら、何時もとは少し趣向の異なるメイクが施されている。普段とは異なる美貌を放つリアスに言葉を差し出すわけでもないが、小さく頷く。

 

「ああ、元々どうでも良いからな。奴にも言ったが、疫病神の方が気楽でいい」

 

特に不貞腐れた様な意味合いはない本心を呟く巧に、リアスは目を背けたくなる。

彼にこんな役回りをさせているのは、自分の力の無さだ。

少しでもその負担を減らせる様に動くのが今の自分の精一杯。

ならば、自分にできる事をやろう。

 

 

「そうね、貴方が私の自慢の眷族である事には変わらないものね」

「かもな」

 

短く返された言葉。顔を逸らして、そっぽを向く巧の横顔。けれど、リアスには見えていた。その口角が、ほんの僅かではあるが上に向いていた事が。

 

 

 

 

 

 

 

「つ、疲れましたぁ〜」

 

まさに充電切れとも言えるギャスパーの声が響く。

二時間ほどかかった番組の収録を終えたリアスたちは前室にて一息ついていた。

 

「まさか私たちにあれだけの人気が出ていたなんて驚きだよ」

「そうね、見ていた私たちも皆か芸能人みたいに感じたもの!」

 

撮影の際の風景を思い出し、未だ興奮冷めやまないゼノヴィアとイリナ。

番組のスタイルとしては、日本のよくあるバラエティ番組と同じで、司会を務めるMCとアシスタントの二人がゲストをもてなして、そこを視聴者か観覧する中でトークすると言ったものだった。

 

「みんな、これからはこう言った仕事も定期的に来るかもしれないから慣れていきましょう」

 

皆に引き締まる様にリアスが、声をかける。

先程の収録の際もただ一人、落ち着いた様子で臨めていたのも幼い頃から冥界のメディアに出ていたのも起因しているのだろう。

 

「部長さんって本当に凄い人気なんですね」

「えぇ、部長は幼い頃から冥界でも人気が高いので眷属の私たちにも目が行きやすいのでしょう」

 

番組の中で、当然ゲストの中でも多く言葉を発したのはリアスではあったが朱乃達眷属にも話が振られている。

朱乃を始めとした女性陣には若い男性悪魔からの黄色い声。

裕斗には女性悪魔の声、ギャスパーにはその両方から。

そしてあの仏頂面の男には……。

 

「凄い人気だったね、イッセーくん」

「みたいだな、どうやら」

 

悪のソファーに深く腰掛ける巧に冷たいお茶を差し出しながら、いつも通りの笑みで声かける祐斗。

巧の頭には先ほどのスタジオにいた冥界の子供の視線と声があった。

 

『あっ、ファイズだ!!』

『あいぼうのけんしもいるよー』

 

スタジオに入る際、子供から声をかけられてどう言葉を返せばいいのか分からない巧。

咄嗟に祐斗が隣に立ち、軽く手を振る。巧はそこまではしなくても軽く手を上げてすぐに指定された椅子に座った。

 

 

「子供達にはわかるのかもしれない。君が、憧れるにふさわしいヒーローだってことが」

「どうだかな」

 

祐斗がまるで自分の事ように誇らしげになる姿に悪い気はしない。

巧も軽く笑った。

子供の一人が言った相棒。

その言葉に相応しい二人を見て、リアスは静かに安堵した笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日のうちに冥界から駒王町に戻り、自宅に戻ったリアス達。

ディオドラとの決戦が近づく中、巧は寝れないでいた。

 

「………」

 

屋根に登り、空を見上げる。空には満月が浮かび、夏も過ぎつつある季節のため夜風が体を通るたびに涼しさを感じさせる。

巧にとっては負けられないレーティングゲームは二回目になる。

前回のリアスの時のような二の舞はしないと固く心に誓いながら、昂りつつある心を少し鎮める。

 

「巧さん、ここにいたの?」

 

声がした方向を探すと少し薄いネグリジェを着たリアスがいた。

おう、と短く言葉を返す巧の隣にリアスは座り込む。

そのまま二人とも何も言葉を発さずに時間だけが流れる。

 

 

「今日は、助かった」

「えっ?」

 

唐突にお礼の言葉を告げる巧にリアスも少し驚き、気の抜けた言葉を返した。

一体どうゆう理由でお礼を…と続けようとしたリアスを遮る様に巧は言葉を続ける。

 

「俺の話があまり振られなかったのは、お前が気を回してくれたんだろ」

 

今日の収録で巧はMCからディオドラ関連の話を聞かれる事が無かった。理由としては、子供も見たりする番組というのもあるが今の冥界で話題になる巧に対してあまり突っ込まないのも違和感があった。

恐らくはリアスやソーナ達が尽力してくれたのだと感じた巧は素直に感謝の言葉を繋げる。

 

「あ、ありがとな」

 

言い慣れない素直で真っ直ぐな言葉。

巧の性格的にあまり使う頻度の少ない言葉を引き出して、リアスに届ける。

受け取ったリアスは良かったと小さく呟いた。

 

「ねぇ、巧さん。お願いだから、何処にも行っちゃダメよ」

「何処って、何処にいくんだよ」

「この前…巧さんが斃される夢を見たのよ。だから、それで…」

 

それ以上言葉を紡げないリアスを見て、巧は立ち上がり空を見上げてながら静かに呟く。

 

「俺はここにいる。この町で生きていく。お前や、オカルト研究部や生徒会やクラスの連中達と一緒に過ごしていたい」

 

自らの感情を混じり気なく伝える巧。

その顔は何か憑き物が晴れたような顔つきに変わる。静かに広がる夜の中でリアスと巧の時間は過ぎていく。

 

「私も貴方の隣にいたいわ。これからも一緒に」

 

リアスの言葉を静かに笑う事で受け止める巧。

二人はディオドラとの決戦を受け止める覚悟をより一層に深めていく。

 

 

 

 




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