ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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遂に開戦。
ここからはまたまた長くなりますので是非お付き合いを。
感想や評価を宜しくお願い致します。


レーティングゲーム開幕

ディオドラ・アスタロトとのレーティングゲーム当日。

巧達はオカルト研究部の部室から試合会場に向かう為、それまでの時間を部室にて待っていた。

 

「よーしおまえら準備と気合い(・・・・・・)は出来てるな。まぁ、いつも通りのお前らなら問題ないが、まぁ今回はあの世間知らずのお坊ちゃんに一泡吐かせてこいや」

 

飄々としながらも鋭い観察眼を持つアザゼルは、リアス達がいつも以上の気合いを持ってこのゲームに臨んでいることを察していた。

否、そんな鋭さなど無くとも今のグレモリー眷属を見てそこに気づかない者は居ないだろうと感じさせる雰囲気を漂わせている。

 

 

「えぇ、そのつもりよ」

 

そんな眷属を代表するようにリアスが力強さと凛々しさを含んだ声で応える。その姿は正に(キング)の名を冠するのに相応しい姿だ。

 

「要らない心配みたいだな。じゃあ、それは一足先に行ってるからよ。気張ってこいや」

 

そう言うと冥界行きの魔法陣を展開させてアザゼルの姿はオカルト研究部から消え去る。

後に残る静寂を断つように、リアスが皆に声を掛ける。

 

「皆、今回のゲーム…完膚なきまでにディオドラを吹き飛ばして見せましょう!!」

『はい!!!!』

 

王の一声に、眷属達は強く応える。そこに迷いや恐れなどは一切無い。

ただ何処までも自分達の勝利を信じて前に突き進む若者達がそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ同時刻、冥界ーーアスタロト家、ディオドラの自室にて。

 

 

「それでは、今回はそう言った手筈で」

「あら、貴方は見ていかないの?」

「確かにあの男の息の根を止める瞬間を直接見れないのは残念ですが…それよりも僕にはやらなきゃいけない事があるので」

「それは残念。なら、私は存分に楽しませてもらうわ。ファイズの…兵藤一誠の死の瞬間を」

 

 

自身の欲望を堪えきれないと見るものを不快にさせる笑みを浮かべたディオドラは、黒髪の美女ーー影山冴子との会話を打ち切る。

ニタニタと笑うディオドラを前にしても、別段変わらない影山冴子の後ろには二人の青年がいる。

 

「あぁ〜、あんなクソ変態に狙われちゃって大変ですなぁアーシアちゃんは」

 

クルクルと手のひらでデルタファンを回転させ玩ぶフリード・セルゼンは一切同情した気持ちのない感想を楽しそうに呟く。

彼にとっては、ディオドラのアーシアへの執着など興味のない話でしかない。

 

「つーか、なんであんたまでンな所にいるの??あの猫又とニャンニャンしてるって思ってたけど」

 

自身の隣で自分以上に我関せずを貫く同年代の青年に対して、声をかけるフリード。

彼の些か品の無い問いに帝王のベルトの一本ーーサイガドライバーを持つ天城奏は簡潔に答える。

 

「呼ばれたからですよ。これでも一応オルフェノク派のトップの一人なもので」

「まぁ、確かにファイズ絶対に殺すマンな奴らからしたら、この作戦サイコーだものね」

「そうゆう事です」

 

彼の顔からも何処か不本意そうな雰囲気を感じつつも、これから起こす戦いを前にフリードは自分の中の昂りを抑える事など出来ない。

 

「今回こそ、イッセー君をぶっ殺してついでにあのクソビッチも…っ!!」

 

ゼノヴィアを殺す。そう言い切ろうとした矢先に激しい頭痛と意識の混濁に飲み込まれそうになり寄りかかっていた壁に手をつく。

この現象の正体を知るフリードは、自身の中にある名前を、この身体の本来の持ち主である青年の名を呟く。

 

 

「アレン…まだこの体まだ明け渡さねぇてか。幼馴染への深い愛??あぁ…やだやだ。ンなもん持ってるなんてキモチワリー」

 

なんとか堪えてたフリードは、端正な顔を醜悪な笑みと共に歪ませながら歩き出す。

 

「んじゃまぁ、クソ悪魔達にクソビッチ達まとめてぶっ殺してさしげましょうか!」

 

不気味なスキップで歩き出すフリード、いやアレンの背中を見て天城は憐れみとその気持ちを抱きながら何もしない自分自身を嘲るように笑うことしか出来なかった。

 

 

「彼等は…何処までも貴方を壊そうとしてくれてるわ、乾巧。貴方も彼らと一緒に壊れてくれるかしら?」

 

 

歪で、何処までも壊れる結末を迎えることしかないであろう三人の青年をまるで面白い玩具を見つけた少女の様に、それでいて自分の目的の為に利用する冷徹さを持った大人として影山紗子は見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがゲーム会場ですか?」

 

誰に訊ねるでもなく呟いたアーシアの言葉が聞こえ、巧はゆっくりも瞼を上がる。

数秒前に巧達はゲーム会場に向かう為の魔法陣を使用し転移をした。

転移の際に発生する光が落ち着き目を開けると何もない殺風景な石畳と生き物を模した石像が祀られた空間が目に飛び込んだ。

 

「どうやら今回は、僕らの街を模したと言うよりも…」

「何もない広い空間を用いたゲームって事なんでしょうか」

 

転移されれば直ぐに聞こえるはずの進行役のアナウンスもない為、警戒を怠らない裕斗とこれから始まるゲームの内容を考察するギャスパー。

二人とも警戒心が高まっている事を巧もまた感じている。

 

「リアス、こんなに何もないなんて…」

「えぇ、どうも何かおかしいわ。…皆、固まって!」

 

朱乃の言葉に、即判断したリアスは皆に警戒心を高める様に促す。

 

「どうやら部長の判断は…!」

「正しいみたいです」

 

即座にデュランダルを構えるゼノヴィアの隣で、猫又化を完了させた小猫が臨戦体制に入る。

リアスの判断が正しかったことが、巧達の前で無数に展開される魔法陣が証明する。

 

 

「あれって…!!」

「旧魔王派の魔法陣!」

 

巧達を中心に幾つもの魔法陣が現れて、そこから悪魔達が次から次へと現れる。

その光景は巧に自分の中のルールを即座に破らせる。

 

「冗談じゃねぇ…!」

 

前回の乱入以降、もしものためとアザゼルに渡された一つの魔法陣が描かれた小さな紙を取り出す。

少し魔力をこめると紙に書かれた魔法陣が少し大きくなり、巧が腕を入れる事ができるサイズまで変化。

迷いなくそこに手を入れて、別空間にあるはずのファイズドライバーを取り出して、腰に巻き付ける。

 

『Standing By』

 

「変身!」

 

『Complete』

 

 

変身を完了させる巧だが、その間にも魔法陣から旧魔王派の悪魔達は転移を続けていた。

そこから何秒かして、ようやく転移の嵐は終わりを迎えた。

 

 

「こんにちわ、旧魔王派の皆様。これはどういう了見なのかしら?」

 

いつも通り、ではなく怒りを見せるリアスが前に出ながら旧魔王派の者達に訊ねる。

体から沸々と魔力が漏れ出し、髪同様の紅のオーラがリアスの体を包み込む。

 

「偽りのグレモリーよ、今日こそはその首を頂戴する!」

 

携えた槍を構えながら悪魔の男が叫ぶ。

その声の後に、咆哮の様な猛り声がレーティングゲームの空間に反響する。

悪魔達の咆哮と共に、巧達を囲う千人を超えた軍勢が同時に魔力弾を放つ。

 

「皆、後ろに!!」

 

眷属を守る為、魔力に長けたリアスと朱乃が咄嗟に前に出て魔力障壁を生み出す。

1秒で千発を超える魔力弾に耐えながら、部員を、眷属を守る為に二人はこれまでにないほどに魔力を放出させつづける。

 

 

「ほぉ〜、サーゼクスの妹もその『女王』も中々のものじゃ」

「「ひゃぁ!!」」

 

魔力の雨、いや暴風雨とも言える状況の最中、リアスと朱乃の間の抜けた声が巧達に届いた。

声の音源には、見たこともない長い白髪の老人がリアスと朱乃のスカートを捲り上げていた。

 

「オーディン様!まだ学生の子達になにしてるんですか!」

「二人とも若さゆえのハリとツヤがあるから、ついのぅ…」

 

白髪の老人ーーオーディンは、護衛のロスヴァイセに諌められつつリアス達のスカートから手を離す。

 

「ど、どうして僕たち無事なんですか?」

 

すでにリアス達が魔力障壁を出していないにも関わらず無傷な状況にギャスパーは周りを見渡す。

どうやらオーディンがこの場にいる全員を守る障壁をリアス達の障壁の上から展開させていた。

 

「お前さん達、さっさと身を隠せ」

「どういう意味ですか?」

 

オーディンの指示に、リアスが問い直す。オーディンは答えは答えずに一回手に持った杖で軽く地面を突く。すると先ほどリアス達を守る為に展開されていた障壁が瞬間的に大きく肥大。

この場にいた旧魔王派の悪魔達を飲み込み、文字通り消滅させた。

 

 

「今回の連中の参戦は最初から分かってた事じゃ」

「分かってたというのは…」

「『内通者』が分かったんじゃよ。そいつが今回のゲームでお前さん達やワシら各勢力のトップに『禍の団』(カオス・ブリゲード)を差し向けようとしてたことものぅ。だからこそ今回で奴らを返り討ちにすべく、アザゼルの小僧に頼まれたんじゃ」

 

つまり自分達はこの迎撃作戦においての要であり、囮役に使われたと事実にリアスたちは驚愕する。

それも自分達が頼りにしていた顧問から。

 

「まぁ、アザゼルが珍しくワシに頭を下げたからなぁ。お前さん達を傷一つ付けることなく守ってやってほしいとなぁ」

「アザゼルが…」

 

顧問の意外な姿に皆が、関心とも困惑とも言える表情の中で巧はオーディンに一つの疑問をぶつけた。

 

「内通者ってのは誰なんだ」

 

巧の中で、その人物は一人しかいない。けれど、この予感が正解であれば彼女の人生が弄ばれていた可能性が高くなる。

それだけは、そんなことだけはあってほしくないと願いつつ、オーディンの言葉を待つ。

 

 

「ディオドラ・アスタロト。奴が前回、そして今回の騒動で不貞の輩と繋がりを持った張本人じゃよ」

 

ちくしょう、仮面の下で舌を打つ巧は自身の嫌な予感が高まりつつあるのを感じる。

内通者でもあふディオドラにこの状況でアーシアに何もしてこない訳がない。

 

「と言うわけで、お前さん達はさっさと何処かしらで身を隠しておれ。

後はワシらでなんとかするからのでなぁ」

「そんな事出来るわけ…!」

「そんなも何もないわい。ロスヴァイセ、この小娘達の護衛につけ。後はワシが引き受ける」

 

オーディンが障壁を解いた彼方の空から先程よりも数の多い旧魔王派の悪魔達がこちらに向け、進軍を開始している。

 

「ほれ、さっさと行かんか。この北欧の主神がお前達を最前線で守ってやると言ってるあるんじゃ」

 

そう幼子に言い聞かせる様なオーディンを前に、リアスは王としての判断を迫られる。

何秒かの間、リアスは顔を見上げてから眷属達に指示を出す。

 

「一旦、この場を離れましょう。……オーディン様、ありがとうございます」

 

リアスの礼に手を軽く上げて応える。そこにはさっさと行けという意思があり、リアス達はこの場から離れる様に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

オーディンと一旦別れてから30分経過。

最前線から距離を置くグレモリー眷属とロスヴァイセ。

敵の攻撃を難なく退ける一団は、前に進み続ける。

 

「オーディン様のおかげで、大群とは遭遇しないけどっ!」

「敵との衝突は仕方ないっ!」

 

背中合わせに、眼前の敵を斬り伏せ続けるゼノヴィアと祐斗。

二人の近くでは、リアスや巧が旧魔王派の者達と交戦している。オーディンが旧魔王派の大群を相手に大立ち回りをしてはいるもののグレモリー眷属も旧魔王派の者達と戦闘を繰り広げている。

 

「でも、今の私たちなら!」

「問題ないわ!!」

 

雷光と滅びの魔力を放ち、魔力を展開する敵を打破するリアスと朱乃。

夏休みでの修行や日々の成長の中で、リアス達もその力を上げており旧魔王派の者達に遅れをとる事なく現状退ける事に成功している。

 

「でも…いつまでこの空間は支配されたままなんでしょうか」

「きっとアザゼル先生や魔王様達が止めてくれるよ」

 

敵との衝突は、体力のみならず精神的な疲れがのしかかる。弱音じみた不安を口にするギャスパーを奮起させる様に小猫が希望を口にする。

 

「イッセーさん、お怪我はありませんか?」

「問題ねぇ。お前は体力は?」

「私もまだまだ大丈夫ーー」

「あら、楽しそうな所悪いわね」

 

何度目かの襲撃を退けて、一息つくリアス達。非戦闘員であり、眷属の要でもあるアーシアの呼吸が少し乱れている事に気づき、巧が声をかける。自身を心配する巧を安心させようと笑顔で応えるアーシアが、忽然と消えた。

巧の視界から居なくなったアーシアは、背後にいた影山冴子ーーロブスターオルフェノクに抱えられていた。

 

「い、イッセーさん!」

「そいつを、離せっ!!」

 

振り返ると同時に巧はロブスターオルフェノクに向かい、突貫。

自分の名を呼ぶ、アーシアを守る為に、ロブスターオルフェノクに対して拳を振るう。

 

「甘いわね、ファイズ」

「ッッ!!」

 

そんな巧の拳は空を切り、ロブスターオルフェノクの武器であるレイピアがファイズの装甲を襲う。

激しい火花が散り、その体が宙に舞う。

 

「アーシアさんを離せ!」

「はぁぁぁ!!」

「残念、遅すぎるわ」

 

『騎士』二人もファイズとロブスターオルフェノクの攻防に気付き、即座に距離を詰める。

聖魔剣とデュランダルの刃を、レイピアで受け流す様に捌き切り、カウンターを二人に見舞う。

噴水の様に血が噴き出し、二人がその場で倒れる。

 

「イッセー、祐斗、ゼノヴィア!!」

「大丈夫ですか!!」

 

地面に倒れる三人の名を叫ぶリアス。三人の様子を見て、ダメージこそあるが致命傷は避けた事に安堵するロスヴァイセ。追撃から三人を守るべく、小猫と朱乃とギャスパーがロブスターオルフェノクと三人の間に立ち塞がる。

そんな三人の覚悟を他所に突如、ロブスターオルフェノクが影山冴子の姿に戻る。

 

「どういうつもりなのかしら…」

「この子を捕まえるのが私の仕事よ。貴方たちの相手は私の仕事じゃないもの。……ねぇ、ディオドラ君?」

 

突如、人の姿に戻った影山紗子を前に、朱乃問いかけるもどこ吹く風といった様子。けれど彼女がその名を読んだ瞬間、魔法陣からディオドラ・アスタロトが相変わらずのーー薄気味悪い笑顔と共に現れる。

 

「これはこれは、グレモリー眷属の皆さん」

「ディオドラっ!」

 

人を小馬鹿にした態度を崩さずに現れた内通者に、リアスは怒りを隠さずに視線を向ける。

 

「アーシア・アルジェントは僕がいただく。悪いね、ファイズ」

 

勝ち誇った笑みを浮かべ、影山紗子の腕の中にいたアーシアを自身の腕の中へ無理やり移動させる。

なんとか突き放そうとアーシアも抵抗するが、力が違いすぎる為か効果は見受けられない。そんな反抗もディアドラにとっては、面白いのかアーシアの綺麗なブロンドの髪を撫でる。

 

「これから僕は、あそこの神殿でこの戦いの顛末を見届けさせてもらうよ。…その間に、アーシアとの永遠の契りを交わすつもりだ」

 

あまりにも一方的な発言にとうとう堪えきれないとリアスが前に出るのを巧が静かに制す。ディオドラが指差した方角には神殿が建てられており、本来のゲームが開催されればあそこがディオドラの本陣になっていた事が窺える。

 

「アーシアを、離せ」

 

静かに呟かれた言葉と共に、ファイズは指をファイズアクセルメモリに添える。

ファイズアクセルに形態変化してディオドラと影山冴子に必殺技を叩き込む。そんな思惑を分かっていたかのように、再びロブスターオルフェノクへの変身を完了させた影山冴子がファイズの前に躍り出る。

 

「甘いわね、ボーヤ」

 

ファイズアクセルメモリーを抜き取る瞬間、信じられないほどの加速力を待ったロブスターオルフェノクはかつての戦いとはまるで違う

どうしてそこまで違うのかと答えを探す間もなく、激しい青い炎を纏ったレイピアがファイズを襲う。

 

「イッセーさん!!」

「ーーっ!!リアス!」

 

一撃目の正面からの振り下ろしこそ受けたものの二撃目が到達するよりも早く、振り下ろされるレイピアを掴みらロブスターオルフェノクの体を抑え込む。

呼ばれた名前の意図を汲み取り、リアスが滅びの魔力をロブスターオルフェノクへと叩き込む。

決して小さくない衝撃がその場で生まれる。

 

衝撃が止んだ後、ファイズは先ほどまでの拘束していたロブスターオルフェノが何事もなかったかの様にディオドラの隣に立っている事に気づく。

 

「この空間にはまだまだ旧魔王派やそれ以外にも禍の団(カオス・ブリゲード)の者たちがまだ残ってるので、彼ら相手に精々奮闘してくれたまえ。…あっ、そうだ。せっかくだから、君たち相手に暴れさせたい子達がいてね」

「相手…ですって」

 

ディオドラがケタケタと笑うと、ディオドラの前に複数の魔法陣が転移のために展開される。

そこが現れるのは皆、年若い少女達ばかりで合計で四人程しかいない。

巧は少女達を見て、以前似たような雰囲気の少女を見た事を思い出す。

 

「イッセー君、まさか!」

「あぁ、アイツだ」

「それじゃあ、あの人の主って!!」

 

巧と共にその少女に会った祐斗、ギャスパーが、少女達の顔に灰色のラインが走る事でディオドラを強く睨む。

何秒かして、少女達の体はーー以前戦ったビートルオルフェノクへと変化していった。

 

「さぁグレモリー眷属諸君、僕の下僕達相手にどれだけ食い下がってくれるかな?」

 

四体のビートルオルフェノクは、同時に巧達に襲い掛かる。

腹の立つ笑い声と共にこの場を離れようとするディオドラを追わんとするファイズの前に、一体のビートルオルフェノクが立ち塞がる。

 

「どけっ!!」

 

巧の声に一切反応せずに、拳を振るうビートルオルフェノク。

左ストレートを受け流しながら、カウンターの回し蹴りを浴びせる。ファイズはそのままの勢いで、ディオドラの前に向かう。

 

「イッセー、ーー」

 

しかしファイズが手を伸ばすよりも早く転移の魔法陣が発動。

アーシアを抱えたディオドラは、不敵な笑みを浮かべる影山冴子と共にこの場から消え去った。

 

「イッセー君、そのままアーシアちゃんを追って下さい!」

 

ビートルオルフェノクの一体に雷光を浴びせながら、朱乃が巧を叱咤する。その声は呆然としていた意識が現実に戻り、再び自分のやるべきことを認識させる。

 

「ここは私たちでなんとかします!」

 

四つの魔法陣を同時に展開させ、両手で異なる魔法を操るロスヴァイセが二体のビートルオルフェノクを相手取りながら、巧に向かって叫ぶ。

 

「私たちもすぐに追いつくから!」

 

そしてリアスが、滅びの魔力でビートルオルフェノクに対して攻撃を放ち続ける。

このビートルオルフェノク達は悪魔だった為か、魔力も併用しつつ『悪魔の駒』の特性も活かしてくる。

今の彼女達だけでは戦況的に厳しい可能性が高い。

既に負傷した祐斗とゼノヴィアも小猫とギャスパーの肩を借りて、なんとか立ち上がれる状態。

ここで自分が離れれば、それこそ打つ手がなくなりかねない。

 

「…くそっ、たれっ!」

 

それでも、アーシアを放置も出来ない。

彼らに背を向けて走り出すことが出来ない巧は、仕方がないと再度ファイズアクセルでこの場を切り抜ける事を決める。

アーシアを助ける為には影山冴子との勝負も控えている。それでも、この場でリアス達に背を向けて行くよりはーー。

 

「いいえ、ここは私達に任せて下さい」

 

聞こえたのは、凛とした声。

リアスと向き合っていたビートルオルフェノクに向かい、薙刀を振るう神羅椿姫が。

朱乃と向き合っていたビートルオルフェノクには、水の魔力を放つソーナ・シトリーが。

 

そして匙元士郎を始めとするシトリー眷属が現れた。

 

「お前ら…!」

「よう、兵藤。アルジェントさんがやばいって聞いてアザゼル先生が俺らを助っ人に呼んだんだ。他にも何人か来てるみたいだけど俺らが一番乗りって訳だ。…アルジェントさん、絶対に助けてこい!」

 

そう叫ぶと匙は、ソーナと相対したビートルオルフェノクに対して、ラインを伸ばすとその体を拘束。

加えて、そこから更にもう一本のラインを射出し、椿姫の薙刀を避け続けるビートルオルフェノクを拘束する。

 

「今です、リアス!!早く!」

「ソーナ…ありがとう!」

 

最高の援軍に感謝して、リアス達はディオドラがいる神殿に向けて駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

ビートルオルフェノクをソーナ達とロスヴァイセに任せ、リアス達は神殿に到着しかけたその時。

先頭を走るファイズが足を止めた。リアス達もその先に何かがいると察知して息が止まる。 

視線の先には、ファイズのベルトと似たベルトを腰に巻いた青年二人がリアス達を待ち受けていた。

 

「やっぱ来てくれちゃったねぇ〜、イッセーきゅん」

「行くぞ、外道神父」

 

天城はふざけた態度を崩さないフリードに促すように歩き出す。

仲間達に対しての丁寧な言葉遣いとは異なる雑な物言いではあるが、その眼光の鋭さは初めて巧と交戦した時と変わらない。むしろ、鋭さは増しているとすら言える。

 

「あんたらは、ここで首チョンパの刑でござますーー変身」

『Standying ByーーーーComplete』

「悪いですけど、全力でいかせてもらいます。変身」

『Standying By』

『Complete』

 

二人の体を異なる色の光が包み込む。

一瞬の内に、サイガとデルタへと変身を完了させる。同時に、二人がファイズに対して駆け出す。

迎え撃つファイズは、開戦の合図と言わんばかり手首をスナップする。

カシャと金属音を響かせたファイズもまた突貫。

 

「やぁぁぁ!!!」

 

三人のベルトの戦士が、衝突する。

巧にとって、大きな転機となる戦いが幕を開ける。

 




感想や評価を宜しくお願い致します。

今回の戦い当初は、巧一人の予定でしたがそれでもあまりにもボロボロになるかと思いこういった助っ人ありの戦いにしました。
とりあえず前半戦の総集合的な話です。
番外編で見せようかな…。
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