ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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久しぶりの長文。
感想や評価を宜しくお願いいたします!


共同戦線

強い転移の光が止んで、巧の視界は鮮明になる。自分たちが転移したのが町外れの廃工場であることに気づいた後にリアス達がすでに戦闘を終えている様子が確認できた。

巧達の転移に気付いたのかリアス達も巧達へと視線を向けて、一人で向かったはずの巧が朱乃と合流していた事、そしてバトルモードのバジンが抱える傷だらけの少年と朱乃が手を繋ぐ少女の存在に疑問符を浮かべる。

 

「イッセー、朱乃と一緒だったのね」

「朱乃さん、その子供達は?」

 

駆け寄ったリアスとアーシアが二人に声をかける。

それに続く形で他のメンバーも巧達の元に駆け寄り,話を伺おうとしていた。

不意に巧は、リアス達の近くにした見知らぬ青年を見据える。

敵意とまでは行かないが警戒心を強くした視線に青年も気付いた、その直後青年は大きな体を起き上がらせる。

 

「ソラ,ハナ!!」

「あっ!トラ兄ちゃん!!」

 

朱乃と手を繋いだ少女ーーハナは、朱乃の手を握ったまま青年の名前を呼んだ。

名前を呼ばれた青年、虎徹は心から安堵した表情を見せてハナの元に駆け寄り、少し傷んでしまった髪を優しく撫でた。

 

「無事でよかった…!本当に!」

「ソラ兄ちゃん、それにおねーちゃんとこのお兄ちゃんに助けてもらったの!このお兄ちゃんね、かなで兄ちゃんと同じなの!!」

 

楽しそうに話すハナに、虎徹はそうかそうかと強面の表情を崩しながら相手をする。

すっかり警戒心を削がれた巧はリアスを呼ぶ。

 

「一体何がどうなってるんだよ」

「それはこっちが聞きたいわ。けど一旦部室に戻りましょう。ここではもう1人の子供も落ち着かないわ」

 

二人の視線の先にはバジンに抱えられたままアーシアの治療を受ける少年ーーソラが。

 

巧もその様子を受けて、そうだなと短く返事をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで話してくれるわよね、虎徹広明さん?」

 

オカルト研究部に戻った巧達は治療を終えたソラを来客用のソファーに寝かせる。一方でハナにはホットココアを朱乃が用意した。

アーシア・イリナ・小猫・ギャスパー・そしてハナに気に入られた朱乃の面々で怖がらせないように対応していた。

そして特に配慮の必要がない虎徹には残りの面々で話を聞くことにした。

 

「あぁ…。あの二人を助けられた以上俺はアンタらに協力させてもらう」

 

椅子に腰掛けた虎徹は俯いたままこれまでの経緯を話す様に促されてる。

何秒間か置いた後、堰を切ったように語り出した。

 

「俺たちはアンタらも知っての通りオルフェノク派の一人だった。けど…元がつく」

「えぇ、それはさっきも聞いた通りね。因みにその訳は?」

「…俺たちは『英雄派』の連中と対立したんだ。そして、『英雄派』と提携を結ぼうとしていたアイツに邪魔と判断された」

「英雄、派?」

 

虎徹から出た単語に思わず首を傾げる巧を見て、壁に寄りかかっていたフリードが自身の知っている禍の団(カオス・ブリゲード)にまつわる情報を共有する。

 

禍の団(カオス・ブリゲード)には幾つかの派閥があるんすわ。一番デカかったのが俺も居た旧魔王派。そして今,連中の中で影響力を高めてるのが『英雄派』。文字通り、歴史やアニメや漫画とかに出てくる偉人や有名人の祖先を名乗る奴らの集まりだ。まぁ、奴らが幅を利かせられるのには要因はあるけどな」

神器(セイグリッド・ギア)。この所有者たちが冥界や各地で暴れ回ってる。けれどその面々は全員人間だ。…アイツが,あの女が目をつけたのもそれが理由だろうな」

 

一人の人間の存在を想起して、虎徹が自分の掌を強く握りしめる。その方からは怒りや不甲斐なさに満ちていた。

 

 

「今アイツは、そう言った連中を確実にオルフェノクにするのを目的にしてる。元は多種族をオルフェノクにするのをスタートにしてたみたいだけどな。どうやら多種族の使徒再生や変異に関しては目標を達したらしい」

「それであの女は何をしようってんだ」

「…悪い,それも実験の概要程度しか聞いてない。奏はその辺を詳しく聞いてたのかもしれないがな」

 

巧の問いに力無く手を上げる虎徹。やはり,影山冴子は本当の部分を派閥の者にすら伝えてはいないのだろう。

気になる点、そして知りたかった事はまだあるがそれでも本題を進めようとリアスは問いを続ける。

 

「それであの子達が狙われて訳は?」

「ハナが神器(セイグリッド・ギア)に覚醒した。そのことを知った『英雄派』の連中はハナを実験と称して連れていこうとしたんだ」

 

 

朱乃達と楽しそうに話すハナに全員の視線が向けられる。アーシア達と楽しそうにお菓子を食べる様子はどこにでもいる女の子。そんな彼女にいったいどんな力があるのだろうか。

 

「あの子には神滅具(ロンギヌス)でも宿っていたの?」

「いや、英雄派の奴らはそこまでは言ってなかった。けど、何か特別な役割がなんとかって言ってたんだ。奴らはいろんな所で人間を誘拐してきて、洗脳してから自分たちの戦力にしてる。そんな奴らに渡す訳にはいかねぇ」

「でもよく貴方だけで逃げ出せたわね」

「んな訳ねぇよ。奏が英雄派の幹部達やあの女やその子飼いの奴らを相手に一人で戦って、俺たち以外の部下やその人間の家族を逃がしてくれたんだ」

 

リアスの脳裏にサイガに変身する天城が浮かぶ。

テロリストと呼ばれる天城ではあるが一瞬だけ巧の姿を重ねるリアス。即座に頭を振り,そのイメージを振り払う。

 

 

「それで奴はどうなった」

「分からねぇ。俺も命からがら逃げ出しただけだ。ただ奏から別れる直前にあの二人を頼まれてたからな」

 

 

それで先程の嘆願に繋がったのかと答えを導き出したリアスは判断を出しかねていた。

このあと兄のサーゼクスに連絡を入れはするもののこの三人の処遇は些か決めかねる部分がある。

今の話をどこまで信じるのかという点。この話が全て捏造で何かを企んでいる可能性もゼロではない。

 

「一応、話は分かったわ。貴方達の処遇に関しては一度検討してから改めて伝えさせてもらうわ」

 

「おぉいーー!悪ガキども、こんな遅くまで何乳繰りあってやがる!」

「なんじゃなんじゃ、デカい乳ならワシにも揉ませるのじゃ!」

 

リアスの声が響く中、突然ドアが開く音が聞こえた。

ドアが開いた先にいたのは、酒を飲んだ為か顔を赤くしたオーディンとアザゼル。そしてその後ろを疲れた表情で後ろから付いてきたバラキエルとロスヴァイセが溜息をしながら現れた。

 

登場の際の最低なセリフに女子メンバーから軽蔑の視線で見られるのはまた別の話…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどねぇ、そういった事情か」

 

酔いを醒ましたアザゼルはリアスから一通りの事情を聞いた上での状況を確認していた。

すでに時間は夜の12時を回り、ハナに関しては既に夢の世界へ入っていて。朱乃が用意した毛布に包まっていた。

 

「あの娘っ子の神器(セイグリッド・ギア)に関しては俺が調べておく。それでお前さんの処遇だが一旦は俺の元で捕虜という扱いにする。冥界の上層部や天界の連中にはうまく伝えておくさ」

 

軽い口調で言い放つアザゼルはまさに頼れる大人といった印象を持ってもいいが先程の発言からか威厳も何もない。

一方の虎徹は、上手くいけば自分の命でソラとハナの保護を取り付けられると踏んでいた。それ故にこんなに呆気なく自分の命も助かるとは思っていなかった。

 

「ありがとうございます!ありがとうございます!」

 

感謝の言葉と綺麗なお辞儀を、リアス達に繰り返し行う虎徹。リアスは軽い調子で判断したアザゼルに呆れるようで何処か嬉しそうな表情を浮かべていたことを巧は見逃さなかった。

 

 

 

 

 

「こらこら、動かないでソラちゃん」

「はーい!」

 

虎徹達を保護してから数日後の放課後。オカルト研究部室棟近くのグラウンドの隅に朱乃とソラの姿があった。

 

アザゼルとリアスの手配で虎徹と子供達二人は部室及び眷属が住まうマンションの一室を貸す形で生活をしている。

虎徹は用務員として雇用、子供達は部室に自由に出入りを許可する形になった。

 

「上手いもんだな」

「昔は私や小猫の髪も切ってくれてたのよ。それもすごく上手なのよ」

「…私は今でもお願いしてます」

 

椅子に座ったハナの首元には新聞紙が巻かれ、朱野がハサミを器用に使ってハナの黒髪を慣れた手つきで切っていく。

美容室に行ける様な生活ではなかった為、傷んでいたハナの髪を見た朱乃が散髪を提案した。その提案にハナは即座にうなづいて、せっかくだから明るい空の下がいいというお願いを受けて、この青空美容室が開店することになった。

軽快に散髪をする朱乃の姿とシチュエーションに、かつて真里と行った青空美容室を思い出した巧は珍しく顔を綻ばせる。そんな巧の笑顔に驚くリアスと小猫。

 

そんな彼らの後ろでは…。

 

「行くぞソラ,打てるものなら打ってみろォォ!!」

 

戦闘時同様の叫びと共に豪快なフォームで白球を投げ込むゼノヴィア。

 

「えいっ!!」

「ス、ストライクっ!!」

「アイツ、茂◯吾郎なの。なんでJKがジャイロボール投げんの」

 

放たれた豪速球にタイミングの合わないスイングを見せるソラ。

キャッチャーのフリードがボールを掴むのを見て、判定を叫ぶギャスパー。

 

「さすがね!ゼノヴィア!!」

「それよりも…」

「もう少し手加減してあげないと…」

 

 

守備についたイリナはゼノヴィアを大きなリアクションと共に褒める。

対して裕斗とアーシアは明らかに打てそうにない、というか駒王学園の野球部ですら当てられるか分からない程の豪速球を見せるゼノヴィアに苦笑する。

 

 

 

「ソラもハナも長い間人間界の晴れた空を見てないみたいだからせっかくだからって」

「そうか」

 

先程同様に優しい笑みを浮かべていた巧はその表情を崩さずにハナの髪を綺麗に整える朱乃に視線を向ける。

ハナとの会話を楽しみながら、ハサミの心地よい音が響く。

 

 

 

「はい、おしまい。どうかしら、ハナちゃん」

「ありがとう!!」

 

髪を切り終えた朱乃はハナの首元につけた新聞紙を取り外し、用意した鏡を取り出した。ハナは綺麗に整えられた髪を確認して、満面の笑みを朱乃に見せた。

椅子からスクッと立ち上がると兄の元へ駆け抜ける姿は少し前まで怯えていた少女とは思えない。片付け始める朱乃の元へ小猫とリアスが声をかける。

 

「お疲れ様、朱乃」

「流石です」

 

短いながらの労いの声に、ありがとうと言葉を返す。声をかけない巧にイタズラも兼ねて静かに近づいて驚かせようとする朱乃の足が止まる。

ハナやソラを見つめるその穏やかな表情に見惚れてしまった。

 

「分かるわ、朱乃。私もあんな顔するのなんてズルいと思ったわ」

「えぇ、あんなの反則よ…」

 

学園二大お姉様と称される二人の美少女を怯ませる程の笑みは確かに普段とのギャップもあるかもと心の中で評した小猫。

 

「朱乃、意外と似合ってるのかもな」

「えっ?」

「美容師とかそういうの」

 

思いもよらぬ巧からの評価に驚いた表情を見せる朱乃は、その言葉にふとこれからの自分の事を思う。

 

「悪魔の生は長い。…もしかしたらそういう『夢』を持つのもいいかもしれません」

「あぁ、いいと思うぜ」

「…なら、もし、もしですよ!私がそういうお店を冥界で出したらイッセー君はそこに来てくれますか?」

 

突然の問い。

巧としては髪型に強いこだわりはない。仮に担当するのが仲間の朱乃であるのは全く問題ない。むしろ,知らない美容師に髪の毛を触られるくらいなら仲間の方がよっぽどマシだ。そこまで深い意味など考えずに巧は返答を返す。

 

「気が向いたらな」

 

朱乃はその答えを聞いて嬉しそうな笑顔と共に強烈なハグを巧に見舞う。

回避ができなかった巧はそのままハグを受け入れざるを得ない。

そんな巧の姿にまたこの男はと言わんばかりの視線を向けるリアスだった。

 

 

「朱乃、離せ!!」

 

朱乃からのハグの最中、ファイズファンから電話の通知音がなる。ハグから解放された巧は電話口の声に耳を澄ませる。

 

『おい、ファイズか!!』

「そうだよ。デケェ声出すなよ、ったく」

 

電話口の声の主、虎徹は耳元に近づけたファイズフォンを思わず離してしまうほどの大声量を誇っていた。

若干、顔を顰める巧の表情など露知らずに虎徹は驚きの情報を巧に提供する。

 

『奏の場所が分かったんだ!!…いや,細かく言えば知ってる奴を見つけんだがお前と話をさせろってもんで』

「分かった。ちょっと待ってろ」

 

そう言って巧はリアスに視線を向ける。近くに来て欲しいという意思表示を察して、リアスは朱乃や小猫と共に巧の隣へ。

三人が声を聞こえる距離にいることを確認して,ファイズファンの音量を最大へ。

 

「続きを頼む」

『ああ!今とにかく駒王町のショッピングモールにいるんだが,そいつがお前を呼んでる。出来るだけ少ない人数で頼む』

「待って。…その、情報提供者は誰なの?」

『それは…。ついてから話させてくれっ!』

 

虎徹の懇願する声を最後に電話が途切れる。

突然の呼び出しにリアスは下すべき判断に迷う。虎徹の様子からして情報提供者はこの時点で名前を出さない…もしくは正体がわからない存在ということになる。そんな相手を信用してしまうのはあまりにも危険だ。

 

「リアス,どうしますか?」

 

朱乃の声に、リアスは巡らせる思考の中で最善を選択する。

天城奏の所在を知り,これまで未知となっていたオルフェノク派の足取りを掴む。

ハナが狙われていた理由の解明。

今巧達の前にある問題を解決するにはこの提案はあまりにも魅力的なものである事を否定できない。

 

「行きましょう。ただし向かうのは私とイッセー、イリナさん、裕斗の四人。残りのメンバーはソーナ達と協力して学園及びあの子達の警護。アザゼル達には私から伝えるわ。…みんな、集まって!!」

 

リアスの招集に先程までののんびりとした空気から一変。

彼らの顔がそれぞれ戦士の顔へ。

ハナとソラにはアーシアとギャスパーがそれぞれ付き添う形で部室へと誘導。それを巧は見届け、事情を共有する皆へと視線を向ける。

 

「裕斗、イリナさん。私とイッセーと一緒に行ってくれるかしら?」

「勿論です、部長」

「はい!私もミカエル様のA(エース)としての力を精一杯お貸しします!」

「ありがとう二人共」

 

リアスは危険な交渉場所へと赴く役目を担う二人へ感謝の言葉を伝える。

残りの面々も学園に残り警護役を務める指示を受ける最中、フリードが軽く手を上げた。

 

「相手が未知なら俺も行ったほうがいいんじゃないっすか?」

「…正直、そうした方がいいとも考えたわ。けど、敵の狙いが戦力の分散で貴方とイッセーを呼び寄せる可能性も考慮しての結果よ」

 

相手の存在や正体さえも分からないのにこちらの主戦力でもある巧とフリードと裕斗を一ヶ所に集まるのは危険と判断した。

旧魔王派の悪魔や英雄派の構成員といった面々であれば問題ないが敵が強力なオルフェノクを学園に向けた際にどうしてもライダーの力は必要になる。勿論,朱乃やソーナを中心にした面々で戦えない事はない。いざという時にソラやハナの近くに巧もフリードも居ませんでしたという状況だけは避けたかったと伝えたリアス。

そんな判断を下した王に、フリードは肩をすくめながら軽く笑う。

 

「それが大将の判断なら下っ端の俺は従うっすよ。イッセー君、あのテロリスト君の場所聞き間違えないでよ」

「誰がんなヘマするかよ」

 

もう一人の仮面ライダーからの茶化しにいつもの口調で答えた巧は学園に残る仲間達を一瞥する。

彼らの表情はこちら安心させる為か、皆が力強い表情を浮かべており巧達は一切の不安もなく指定されたシッピングモールへと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ、虎徹の奴電話繋がらねえぞ」

 

人混みの中、巧達は指定されたシッピングモールの中に埋もれていた。

平日とは言え、駒王町最大の商業施設とあってか活気に溢れている。

巧は繋がないファイズファンを強めに切り、周囲を確かめる。

 

「どこか別の場所に行っちゃったとか?」

「相手から指定している以上それはないと思うよ。…けど、本当に何者なんだろう。その情報提供者は」

 

イリナと裕斗が電話が繋がらない現状から情報提供者の存在を考察する中、リアスも巧同様に周囲への警戒をしている。

周囲の人々の喧騒の声、建物内ショップのBGM、ごった返す人の音。様々な要素が混じる建物の音が突如遮断された。

 

「っ!?」

 

四人がほぼ同時に違和感を感知して、互いに背中合わせとなり四方を警戒。

 

「今のってまさか」

「えぇ、人よけの結界のはず」

 

間違いなく謎の情報提供者が現れたに違いない。そう判断した巧は即座にファイズドライバーを腰に巻き付ける。

 

「そう警戒しなくていい。兵藤一誠、リアス・グレモリー久しぶりだな」

 

リアスの前方に現れた空間の裂け目からダークグレーの髪を靡かせた青年、ヴァーリ・ルシファー。その後ろにはこの空間の裂け目を作り出した支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)の所有者、アーサー・ペンドラゴン、小猫の実の姉でありはぐれ悪魔の黒歌、そして巧達を呼びつけた虎徹の四名。

 

「まさか、情報提供者って貴方のこと…?」

「いや,俺ではない」

「私よ」

 

言い放ったのは黒歌。

その表情は苦悶に満ちており、まるで見たくないものを見せられた後のような表情に巧は違和感を覚えた。

黒歌と直接会ったのはこれで二回目ではしかない。それでも彼女には奔放で軽妙な印象を持っていた。そんな彼女が今は年相応の少女のような、困った顔をする小猫に似た様子で言葉を紡ぐ。

 

「奏が、英雄派とあのオルフェノク派の女のせいで…『洗脳』されたの」

「洗脳…。話を続けて」

 

リアスも黒歌の様子を見て,一応話を聞く事を判断。そのまま話の続きを促す。

 

「あの日、ハナの神器(セイクリッド・ギア)の事を知った英雄派の幹部達を相手に戦った。…その時裏で、英雄派とあの女は密約を交わしていたらしいのよ。それを邪魔した奏は捕まって、英雄派によって洗脳させて今は奴の操り人形になってしまったの」

「でもどうして英雄派はハナちゃんの事をそんなに付け狙うの?」

「あの子の力は…」

 

言い淀む黒歌を見かねて、ヴァーリがその能力を告げる。

 

「相手の心の内を引き出し、弄ぶことさえも出来る能力。手の中の人形(パペット・ストリング)。それがあの少女に与えられた力だ」

「…そんな能力をあの子が」

 

様々な人間を誘拐する英雄派からすれば下手な洗脳よりも狂信者を生み出せるハナの能力は喉から手が出るほどに欲しい物に違いない。

いや、それだけではない。仮に表の世界に居たとしてもハナの力は欲しくない権力者が少ないくらいであろう。

 

 

「俺達はこの一件、兵藤一誠に力を貸すつもりでここに居る」

 

 

ヴァーリの提案に巧達は首を縦に振る選択肢しか持ち合わせては居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巧達がヴァーリと接触をしていたのとほぼ同時刻。

駒王学園、オカルト研究部にて。

 

 

「…んで、リアス達は謎の情報提供者の所って事か」

「えぇ、そう伺ってます」

 

 

オーディン関係の対応と教師としての仕事を一区切りつけたアザゼルはリアスの依頼で部室にいたソーナから話の共有を受けていた。

顎髭を弄りながら思考するアザゼルの後ろではバラキエルが待機しており,その視線の先にはハナを抱えながら読み聞かせをする朱乃の姿。

 

その姿が生前の妻、朱乃の母である朱璃とひどく重なる。

堪えても溢れそうになる涙をなんとか堪えながら、警戒のために緊張を緩める事はしない。

そんなバラキエルの前ではアザゼルとソーナが話を進めていた。

 

「んじゃまぁ、俺とバラキエルは此処であのガキンチョ共の子守りでイッセー達を待てばって…もう一人の坊主の方はどうした?」

「あぁ、それなら………」

 

 

カキーンという金属音。

アザゼルとバラキエルが固まる中,ソーナは軽く頭を抑えながら報告を続ける。

 

「何故か野球に熱中しています」

 

嘘だろ…。とアザゼルはその場で力無く倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいのかよ、おたくの彼女さん」

「そんなんじゃねえよ。たく、何考えてんのよ書記くんは」

 

バットを構えたソラに向けて、豪速球を投げるゼノヴィア。

そのボールをキャッチしたのはフリードではなく生徒会副会長の新羅。

リアスの指示の後しばらく部室にて待機していたソラであったが、本人の希望で野球を続けたいと言った為、ゼノヴィアがそれを了承。

合流した生徒会の面々を巻き込み、全員での野球大会を開催していた。

因みにフリードと匙の二人は休憩と称して周囲への警戒も兼ねて学園周辺の見回りに出ていた。

 

「けど、アイツなりに場の空気は読んでるだろうよ」

 

ゼノヴィアの行動は突拍子となかったり、時に勢いが目立つ面も多い。

その裏には場を明るくしたい、なんとか状況を明るくしたいという気持ちが見え隠れしているようにフリードには思えた。

幼馴染を思うフリードはかつて敵対した時とはまるで違う表情を浮かべる。そんな感想を持った匙は空を見上げる。

 

「まぁ、とにかく今の学校には先生達もいるし、よっぽど安心だな」

「そうだといいけどねぇ…っっ!?」

 

突如フリードが険しい表情を浮かべたと思えば、即座に地面を蹴った。

一瞬遅れた反応を見せた匙は突然のことに驚きつつも、フリードを追いかけるように同様に駆け出す。

 

 

 

 

 

「なんだよ…急に!」

「書記君、今すぐイッセー君に連絡とって」

 

1分ほど走り続けたフリードが突然立ち止まって、匙も同様に足を止める。

なんで、と言葉を紡ぐ匙の前にはその答えが聳え立つ。

息を飲み込む程の強い殺気、圧倒的な存在感。

そんな言葉が似合いそうな程の青年がこちらを見据えていた。

 

「おたく,そんな顔してたっけ?変なもんでも食ったか?」

「ハナは何処だ。教えろ」

 

青年、天城奏は感情を無くしたような冷たい声で少女の場所を問う。

匙は彼の探している少女が今現在保護した子供の一人である事に気づきつつとこんな様子の彼に場所を伝えるわけに行かないと判断。

 

「答えないなら構わない。駒王学園にいる可能性が高いのは予測がつく。学園の生徒を何人か殺せばわかるだろう」

 

当たり前の様に紡がれた言葉に寒気を感じる。

匙は喉が渇く感覚を覚えながら、足音を響かせる天城に止めるべく自身の神器(セイクリッド・ギア)を顕現させる。

その隣で、ガチャと音が鳴る。匙が振り返る頃にはフリードがデルタファンを口元へ寄せる姿が。

 

「悪いけどこっから先は通行止めなんでね、不審者は入れるわけにゃいかんのよ!ーー変身!!

「あぁ、ここでお前を止めさせてもらう!!」

「…お前を殺してデルタギアを回収。そっちの悪魔の首を見せてハナを呼び出すとしよう。変身」

 

『Standying By』『Complete』

『Standying ByーーーComplete』

 

2人の戦士が互いに変身を完了させる。

その直後轟音が響き渡り、駒王町でかつてないほどの戦闘が始まる事を告げていた。




次回はフリード・匙君回。
まともにフリードが戦うシーンを書けそうです。

オリキャラ紹介
虎徹広明→25歳の青年で、交通事故で命を落とすもその際にオルフェノクとして覚醒。恋人や友人達を殺してしまうかもと考えて、裏社会で生きる中でテロリスト入り
イメージの声優さんは平田広明さん。
アニメ見ながら浮かびました。

ソラ→家族で旅行中にとある事件に巻き込まれた際にオルフェノクとして覚醒。家族は彼を受け入れるものの社会からは受け入れてもらえずその中で影山冴子によりオルフェノク派へ。
イメージの声優は入野自由(若い頃)さん
因みに元ネタは.…。ゲームやりながら浮かびました。

ハナ→ソラと共にオルフェノク派に。実は神器持ちでその力は…。ソラと共に奏や小猫に懐いていたがオカ研究部では朱乃に懐いている。
イメージの声優は種崎敦美さん

ハナちゃんの神器はいい案が有ればそっちにするかも…。

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