一応次回から7章のクライマックスになります。
ハナたちの移送作戦の前日、この日は土曜日でもあるため各々がそれぞれの時間を過ごす中、作戦実行メンバーの多くは同じ考えの元とある場所に集まっていた。
「らぁぁ!!!!」
「この程度ではまだまだ足りん!」
以前,サーゼクス及びグレモリー家から寄与されたトレーニング空間。
そこに響くのは、匙の覇気が籠った雄叫び。
叫びと共に放たれる殴打のラッシュを叱咤共に弾くのはバラキエル。
バラキエルは頭、腹部、足,様々な箇所目掛けて放つ攻撃の全てをいなす。時折、カウンターのアッパーカットやボディブローを浴びせる。
「ぐっ!!」
堕天使幹部の一撃、勿論手加減をされてはいるものの決して軽くない。攻撃の手が止まるのをギリギリで耐える。匙の目から闘志が消えてないことを感じとるバラキエル。
「っ!!」
「よく見切った!」
顎を狙った一撃を、スウェーで避ける匙。状態を元の姿勢に戻すと同時にバラキエルへ一歩詰める。
狙うのは人体急所の一つ、鳩尾。狙いすました一撃は空気を裂くような音共に放たれる。
しかし、一枚上手だったのはバラキエルだった。匙の一撃を読んでいたかの様に受け止め、勝敗は決した。
「ここまでよくやったな、匙元士郎よ」
「くそぉぉ〜」
先ほどの集中状態から一変、力の抜けた声と共にその場に崩れる匙に賞賛の言葉を掛けるバラキエル。
彼の状態に異変や暴走が無いことに安堵しつつ、ふと3日前の出来事を回想する。
ーーお願いします、先生。俺を強くしてください!!
匙が目を覚ました日の夜、バラキエルはアザゼルと共に匙やフリードの様子を見に行った。そこで目にしたのは膝をつき,地面に頭を擦り付ける様に懇願する匙。
『今度の戦い、きっと俺は足手纏いになるかも…いえ、なります』
『覚悟の上か?』
『はい。今の俺じゃ、兵藤やフリードの足を引っ張ります。口が裂けてもこの3日間で自力じゃ強くなれない。けど…先生ならきっと!』
『匙、お前…死ぬ気で着いてこい。……ソーナ、2日…いや、1日コイツを預かるぞ』
その後、アザゼルと共に匙を堕天使の研究施設へ連れて行き、彼の
「他のヴリトラの力は馴染んでいるか?」
「いや、まだまだですね。…けど、実践で使い物になる様にしてみせます。そうでなきゃアイツに借りも返せないですし」
匙への強化、それは彼の中に眠る五代龍王のヴリトラの力を持つ他の
通常であれば複数の
作戦結構までの間、バラキエルが彼の近くでサポートすることになった。
「匙、こちらを」
「あっ、会長!ありがとうございます!」
ソーナから水筒を受け取り、勢い良く飲み干す姿はまだ彼は娘と同じ学生である事を強く意識させる。
ーー久しいな、こう言った感情は。
かつての自分にもこの様な時期があった。堕天使幹部としての名が広まるよりも少し前、強くなるためにと集まった若い堕天使たちに手解きをしていた頃。どこまでも貪欲に強くなろうとする若者たちを見て,彼らが強くなっていくのを見守ることが何より楽しみだった。
その果てにあったのは、虚しい死でしかなかった。
三大勢力の戦争、多くの堕天使が戦死する中に彼が手ほどきをした者も多くいた。その後出会う妻さえもーー。
だからこそ,今度こそ守り抜いてみせる。この若者達には明るい未来を見据えて前に進んでほしい。
そう願うバラキエルは、若者たちへのさらなる指導を行うべく彼らの元へと歩き始めた。
同時刻、駒王学園。
「なるほど、つまるところコイツはバジンの仲間ってところかい?」
「多分な。…使えそうか?」
旧校舎付近にて、巧は一台のバイクに跨るフリードを見守る。
「まぁ、使えないって事にはならないけど…。てか、よくこんなの見つけたねぇ」
「見つけたっていうか…」
フリードが跨るバイクーーサイドバッシャーは、かつての記憶と同じ様に黒い車体をキラリと輝かせながら、新しい主人の登場を喜ぶ様に見える。
相手がどの様な形で妨害してくるのか分からない現状でこちらの戦力アップは必須となる。そんな中で巧が期待したのは、かつて草加雅人が愛用していた愛機、サイドバッシャーの存在だった。
オートバジンの様にこの世界にいるのかは分からない。けれども、賭ける可能性はあるはずとオートバジンと同じ様に呼び出すと、どこからともなく彼の元へと現れたという事だ。
「まぁ、これで多少は戦力アップができたって訳か」
フリードの感想に素直に頷けない巧。決して状況は楽観視出来ない。
ベルトの力を最大限発揮したサイガは、少なく見積もってもファイズとデルタの二人がかりで対応する必要がある。
それに加えて、影山冴子や更なる敵の戦力が上乗せされると考えるとどうしても考えてしまう。
最後にしてファイズ最強の形態、ブラスターフォームの存在を。
「ないものねだり…か」
吐き捨てるように、自分の未練を断ち切る巧。そんな彼を安心させる様にフリードはあっけらかんとした様子で呟く。
「なんとかなる、てか何とかするしかないでしょ。俺ら、一応『仮面ライダー』なんだし」
「お前なぁ…」
フリードの軽口に反論しそうになる巧はその目に宿る覚悟を感じて、その先の言葉を言い淀んでしまう。
「それに、俺ら二人で戦うわけじゃないしょ?」
「あぁ、そうだな。…あと一応、もう一台ーー」
「あら、ずいぶん仲良しになったのね?」
聞き覚えのある、嫌な声。
巧とフリードが同時に振り返った先には、妙齢の美女。けれど容姿とは裏腹に死を感じさせる強いプレッシャーの様なものが感じられる。
「お前…!」
「前哨戦のつもりですかい?」
寒気を感じさせる笑顔を前に咄嗟に自身のドライバーを腰に巻き付ける。
臨戦態勢の二人を揶揄う様に美女ーー影山冴子は微笑む。
「今日はそんなつもりないわ。明日は、私達の実験に付き合ってもらうから、そのご挨拶に…」
「挨拶で終わらせてやるよ、変身っ!!」
『Standing ByーーComplete』
フリードはデルタへの変身を完了させ、一気に距離を詰める。突進と共に拳を繰り出したデルタを見て、ため息をこぼす影山冴子。
「話は最後まで聞きなさい」
ロブスターオルフェノクへと変身を遂げ、デルタの一撃を受け止める。特に驚きはせずに、そのまま顔面への蹴りを放つ。
その一撃さえも片腕で受け止めたロブスターオルフェノクは、青い炎を纏ってカウンターの一撃をデルタの胸元へ。
「なめんな!」
カウンターの一撃を、防がれたハイキックを再度放つ事で相殺。衝撃により互いの身体が後退するものの、共に意に返す事はない。
『Standing By』
「変身!」
『Complete』
二人の攻防の隙に巧も変身を完了させる。
すぐにオートバジンの左ハンドルを抜き取り、ファイズエッジを換装。
そのまま一気にロブスターオルフェノクへと突貫。
「あらあら、そんなに焦っちゃって可愛いわね」
「うるせぇ!」
背後からの一撃を難なく躱される。回避と同時にロブスターオルフェノクはレイピアを創造し、追撃のファイズエッジを受け止める。
ファイズが鍔迫り合いを押し除け、刺突を繰り出すも尚も空を切る。
回避した位置からレイピアを振るい、隙だらけとなったファイズの背中に火花が散る。
「ぐぅっ!」
一瞬の隙に複数回の斬撃が、ファイズを襲う。堪らず苦悶の声を漏らすが、膝をつかずにその場で横薙ぎの一撃を放つ。
その一撃を軽く受け止めたロブスターオルフェノク。
しかしその一瞬で、二人の攻防を見ていたデルタが動く。
「Fire」
『Burst Mode』
デルタファンをドライバーから取り外し、バーストモードへ。そのまま5発のフォトンブラットの光弾をロブスターオルフェノクへ。
攻撃を察知したロブスターオルフェノクは、ファイズから距離を置くものの放たれた光弾の内、2発は被弾。
灰色の肉体から煙が上がり、攻撃が通用する事を確信するとファイズとデルタは共に駆け出す。
ファイズがスパークルカットを発動させるその時。
「悪いけど今日貴方達を始末する気はないわ」
そういったロブスターオルフェノクは姿を人間へと戻して、消えていった。攻め込むことが出来なかった2人は影山冴子が消えた事を確認して、互いに変身を解除する。
「あの女…何のつもりだったんだよ」
「それにあいつのいってた実験って。…まぁ、いい予感はしないっすけど」
互いに顔を見合わせて、明日の作戦に向けて更に警戒が高まる2人。
かつてない戦いを前に二人の決意が更に強まっていく。
必ず勝つ、そして守り抜いてみせる。
来たる作戦実行まで24時間を切っていた。
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影山冴子強くしすぎた…どうやって倒そう。