ハイスクールFaiz〜赤い閃光の救世主〜   作:シグナル!

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タイトルほどかっこいいお話展開ではありません。


不死鳥の襲来

 

 

 

「部長のお悩み?…ううん、そうだなぁ、僕は分からないけど、朱乃さんなら知ってるんじゃないかな。なにせ部長の懐刀みたいな人だからね」

 

「…そうか」

 

リアスの来襲から一晩。

巧は昨日のリアスを見て、彼女に何かが起きていることは簡単に理解し、自分からは聞きにくいし、事情も知らない為に同じ眷属の祐斗に話を聞くことにしたが結果な微妙な答えだった。

けれども女王の朱乃ならば話が聞こえるかもしれないと祐斗の話を聞いてそれとなく話を聞いてみることにした巧。

 

「はぅぅ!! 私…昨日の私はっ…ううぅ…」

 

悲鳴に似た声を上げる一人の少女ーーアーシアは巧と祐斗から4メートルほど後ろで両手で頭を抑え、体を小さくして蹲る。

昨日のことを思い出し、恥ずかしさと忘れたいという気持ちが彼女を支配し、あのような態度をとらせていた。

 

「イッセー君、アーシアさんはなんであんな風に?」

「…俺が知るかよ」

 

アーシアの様子を見て、無視するわけにもいかない為に祐斗は巧に話を伺う。

だが、巧自身がそれを話したくはないので祐斗の質問には答えずにそのまま旧校舎へと足を進める。

今回ばかりは巧もアーシアに手を貸すことはしなかった。

 

「……?」

 

 

アーシアから距離をとって旧校舎の入り口に入りかけた寸前で巧の足が止まった。

不意に誰かの視線や存在に気づいたのだ。

周りを何度も見渡して誰がいるのかを探す。

しかし、この旧校舎に近づけるのは生徒会の面々などで一般の生徒が近づいてしまわない様に魔力を使って人除けの魔法をかけてある。

そんな場所にいるのは確実に悪魔などの関係者ということになる。

さらに巧が感じた第三者の気配は外からではなく、旧校舎の中、さらに言えばオカルト研究部室から感じたものだった。

それになのに、先ほど感じた視線はまるで自分のいる場所を的確に分かっていて見つめていた視線の様に感じた。

 

「イッセー君、扉開けないの?」

 

巧の隣にいた祐斗が声をかけ、深い思考の中から目を覚ます。

すぐに扉を開けて、二人はオカルト研究部室にまで移動した。

 

 

 

「…っっ!? まさか、僕がここまで来てようやく気が着くなんて。だからイッセー君はあの時に止まっていたんだね?」

 

「…さぁな」

 

部室の入り口前で祐斗もこの先のオカルト研究部室に第三者がいることを察知し、目を細める。

その際に自分よりも遥か先に気がついた巧に声をかけるがぶっきらぼうな返しをくらい、思わず苦笑する。

祐斗の苦笑に何も返さずにそのまま扉をあける。

扉を開けるといつも通り、リアスは部室に置いてある自分の席に座り、朱乃もニコニコ顏で二人の事を立ち、待っていた。

が、そこには部員ではない第三者がいた。

昨晩、リアスの暴走を止める為に巧の部屋に魔法陣を介して出現し、その後兵藤夫妻にご挨拶として様々な物を迷惑をかけた謝罪の品として渡した張本人。

グレイフィア・ルキフグスはそこにいた。

 

「一晩ぶりですね、兵藤一誠様」

 

「ええ…まぁ、そうっすね」

 

ここで祐斗は普段のにこにこ顔から一転し、驚いた顔を見せる。

巧の憑依事情を知らない祐斗から見れば、年上であるリアスの事を呼び捨てにしたり、朱乃の事を姫島と呼んだりと何処か他の人たちとは違った様子を見せていた巧がグレイフィアを前にするとぎこちなさはあるが、敬語を使って見せたのだ。

 

ーーここで敬語使えるんだ、なんて言ったらイッセー君に怒られるかな?

 

心中のぼやきは全く口に出さず、驚いた表情も一瞬でいつも通りの表情に戻して部室内に入っていく。

彼女がここに来ている時点で巧の話していた悩み事に関してなのでは?という仮説が生まれており、その証拠にリアスの掌は赤くなっており、先ほど机を力を込めて叩いた事を物語っていた。

けれどもどんな問題があろうとも目の前のツンデレ兵士がともにいてくれるのならばどんな事も出来る気がする。

不思議とそんな気持ちにさせられた祐斗はゆっくりとオカルト研究部室の敷居を跨いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで皆様お揃いになりましたか?」

 

銀髪メイドのグレイフィアはグレモリー眷族が全員集合である事を確認し、リアスの隣いたはずの場所から一歩前に足を運ぶ。

 

「今日、私が来たのはーー」

 

グレイフィアの説明が始まり、部室に集合していた眷族の体がピクリと反応する。

壁に背中を合わせて、両目を閉じていた巧も目を開き、顔だけはグレイフィアに向ける。

 

「待って、グレイフィア。 私が説明がするわ。今日は……っっ!!」

 

リアスは座りながら静止の言葉をグレイフィアにかける。

一瞬、後ろを向いてリアスに視線を向けたグレイフィアだったが、リアスの顔を見てその場から数歩後ろに下がる。

リアスの説明が始まろうとした瞬間ーー。

 

この部屋の中心部から炎が生まれる。

その炎が生まれると同時にどこからともなく鳥の鳴き声が聞こえた。

巧はそんな炎の中で直立する一人の男を見つけた。

あの男がこの炎を生み出した事に気づいた。

 

「ふぅ人間界は久し振りだな。 っと、会いに来たぞ。愛しのリアス」

 

炎が収まり、一気に鎮火する。

すると一人の男がリアスを見て、喜びの混じった声を上げる。

しかしそれを受けたリアスの顔からはリアスと呼ばれた事に関する嫌悪感だけが滲み出ていた。

 

 

 

 

 

 

 

巧たちの元に突然現れた男ーーライザー・フェニックス。

この男はリアスの婚約者。

けれどもリアスはそれを断固拒否し、今日まで断り続けてきたが、今日は遂にお互いの話し合いとなった。

巧はいきなり現れたライザーにイライラが生まれ始める。

そんなライザーは朱乃のお茶を飲んで一息ついていた。

 

「いいね。 リアスの女王が入れてくれたお茶は美味しいな」

 

「痛み入りますわ」

 

普段とは違い、完全な作り笑顔を浮かべライザーに対応する朱乃。

ライザーはそんな朱乃の本心などいざ知らず、彼女に対して男としての目線をぶつけていた。

自分の隣で自分の指で触れているリアスの事を置いておきながら。

朱乃は巧たちと同じように壁側に移動し、その場で立ち見と同じ状態でこの場を見守る。

 

ライザーは巧たちが見つめているのにもかかわらずリアスの長く美しい紅髪の触れ、反対の手で白く艶やかな太腿に触れる。

 

ーーいけ好かない野郎だな。

 

巧のライザーに対する第一印象はそれだった。

赤いジャケットにネクタイをつけない状態のワイシャツのボタンを複数も開けており、とこぞのホストかよ!とツッコミを入れたくなるような格好だった。

 

「ライザーっ! 前にも言ったように私はあなたとは結婚なんかしないわ!」

 

長く自分の体を触れた事、そして自分の大切な親友で眷族である朱乃に卑しい目線をぶつけた事を合わせて、ライザーに向けて否定の言葉をぶつける。

 

「おいおい、リアス。 君は自分の家のお家事情や今の冥界の事情を分かっていないのか?」

 

ソファーから立ち上がったリアスに向けて、やれやれだぜと言わんばかりに両手でジェスチャーをする。

こういった行動一つがリアスやそして巧のイライラを募らせる。

 

「ええ、分かっているつもりよ。 確かに純潔の悪魔は先の戦争で減ってしまった。 けれども、私は自分がいいと思う人と結婚をしたいの!それは決してあなたではないわ!

だから二度と言わない!私は…あなたとは結婚しないわ、ライザーっっ!!」

 

リアスは自分の意思と持ち続けたい『夢』の為にライザーに今までで一番、大きな声で否定の言葉をぶつける。

巧はここまで感情的になるリアスを見るのは初めてで少しばかり驚いていた。

 

ーーこれで面倒事も終わりだな。

 

これでライザーとの話し合いは終わり、立ちっぱなしの状態からあの柔らかいソファーに座れるのかと思うと気が楽になり、それに加えて心の中で早く帰れと念じる。

しかし、リアスの否定の言葉を浴びてもライザーは動かずにポケットに突っ込んでいた右手をリアスの顎に添える。

自分の顔を近づけて、リアスとの距離を近づける。

 

「俺もな…リアス、フェニックス家の看板を背負っているんだ。名前に泥を塗られる訳にはいかないだよ…っっ!それにな、俺は人間界が嫌いでね。この世界の空気や炎は汚れている。炎と風を司るフェニックス家としては…不愉快でならない」

 

するとライザーの周囲から熱気が発せられる。明らかに怒りや殺気の類を放出していた。その殺気に対抗するようにリアスも自分の体にある滅びの魔力をぶつけようと魔力を体から放出させる。

祐斗や朱乃や小猫は臨戦体制をとり、アーシアは戦闘を恐れ、体を小さくする。

グレイフィアは二人の様子を見て、静止の言葉をかけようと空気を吸い込んで、声を発するために口を開けようとするが…。

 

「嫌いなら来るんじゃねえよ」

 

「…なに?」

 

壁にもたれかかっていた巧の声に反応するライザー。

その際にライザーの眉は上に上がり、怒りを露わにする。

ライザーの怒りを込めた視線は巧の近くにいたアーシアを震わせる。

 

「聞こえないなら、もう一回言ってやる。嫌なら来るな。お前のくだらない話のせいで さっきからソファーには座れてないからな。リアスに振られたんならさっさと帰れ」

 

巧はすべてのイライラをライザーにぶつけた。

事実をだけを伝えた巧の言葉にリアスは思わず込み上げてくる笑いをこらえようと必死だった。

グレイフィアは自分よりも先にライザーに言葉をかけた巧を見ていたが、こんな言葉をかけるとは予想外。そんな心情を顔に表していた。

 

「貴様っっ…!! 誰に向けた言葉か分かってるのか!!」

 

「リアスに振られた男だろ?さっさと帰れ」

 

ライザーの事を厄介払いするように追い払う巧。

自分の中にある大きなプライドが音を立てて崩れ去りそうになる。

ライザーは自分の隣を通り過ぎようとする巧の顔に向けて悪魔として込められる全力の拳を振り抜き、放った!!

 

「イッセーっっ!!」

 

リアスはその場から巧の名を叫ぶ。

巧は強い。けれどもファイズにならない巧の強さを見た事のないリアスは年相応の少女のように叫んだ。

 

パシィィ!!

甲高い音が響く。

ライザーは自分の魔力を込めて、巧に向けて放った拳は確実に直撃し、あのムカつく小僧の顔を見てやる。

そんな風にニヤニヤしている。

瞑っていた目を開くと驚愕の景色が目に入った。

 

「こういう事は適当なとこで切り上げとくもんだ。でなきゃカッコ悪いだけだぜ」

 

先ほどと変わらない様子で自分の全力の拳を片手で受け止めて尚且つ、その拳の勢いを片手のみで殺した巧の姿がそこにあったからだ。

自分を見下したように見つめる巧に対して、唇を噛み悔しさを露わにする。

 

「おやめください、ライザーさま。 兵藤一誠さまもご自重ください」

 

凛とした声が巧とライザーの動きを止める。

その声の持ち主、グレイフィアは二人を声のみで圧倒し、ライザーも先ほどまで炎のように燃えていた怒りを押さえ込み、ソファーに音を立てて座り込んだ。

巧もソファーに座ったライザーとこの場の空気からまだ話し合いが終わらないであろう事を覚悟し、再び壁際まで戻る。

 

「こうなる事は旦那さま方も想定内でした。

リアス様がそこまでご自分の意見を貫き通したいのならレーティング・ゲームにて決着をつけるのはどうでしょうか?」

 

グレイフィアの提案に巧とアーシアを除いたすべての者が驚きを顔に露わにする。

 

「……」

 

レーティング・ゲームとは何かを聞きたい巧とアーシアだったが雰囲気的にそんな事を聞く空気ではなかった。

口を開く事のできない二人の為に朱乃と祐斗は二人に説明を入れる。

 

「爵位持ちの貴族の悪魔が互いの眷属を戦わせるチェスに似たゲームだよ」

 

「これが…私たちが悪魔に転生する際に利用した悪魔の駒がチェスの駒に似てる理由ですわ」

 

巧とアーシアはぼんやりとだが、ある程度の理解をしてこの話を聞く。

 

「なあ、リアス。 君の眷属はこれで全員かい?」

 

「ええ…そうだけど?」

 

ライザーは立ち上がって、巧たちを見回してリアスに質問をする。

その目からは嘲笑を感じさせるもので、その視線を浴びている巧は目の前のバカを殴り飛ばしたくなったのを無理やり押し込めた。

 

「ハッハッハッ!! こちらの半分にも満たないな。俺はゲームを何度も経験しているし、勝ち星も多い。その上、眷属でさえもこちらを上回っていないとは」

 

大口を開けて笑い越えをあげるライザー。

リアスはそんな大口を開けているライザーの口内にタバスコを打ち込んでやろうか、と思ってしまいほどだ。

笑い声を止めたライザーは指と指を合わせ、快音を響かせる。

地面からはフェニックス家の物と思われる紋章が床に広がり、そこから先ほどの炎と同じ物が出現する。

今度、転送されてきたのは一人や二人ではなく、十五人もの悪魔。

 

「はっ??」

 

巧の間の抜けた声が皆の耳に聞こえた。

が、それも仕方のない事だった。

現れた十五人の悪魔は皆、年齢の違いはあれど全員が美女、美少女と呼べる綺麗な顔立ちをした者たちだった。

 

「……リアス、こいつらは何だ」

 

巧はリアスの元まで歩き、近づいてから耳元で囁く様にこの場に現れた女性たちについて質問を行う。

なお、ライザーはリアスに近づいてから尚且つ、キスを出来そうな距離にまで近づく巧に怒りの視線をぶつけていた。

 

「彼女達はライザーの眷属よ。…見てわかる様にそれだけの関係とは思えないのだけどね」

 

リアスの視線に促され、ライザーに視線を向ける。

確かに主従関係だけでなく、それ以上の関係もあるであろう事を巧は理解した。

 

「お前も苦労してたんだな…」

 

「心配してくれてありがとう、イッセー」

 

こんな男が婚約者ではさすがにリアスが辛い事を感じ、珍しく優しい言葉をかける。

優しい言葉をかけられたリアスは巧の口からそんな事が聞けるとは思っていなかった様で、心からの笑顔で返す。

 

「おいっ! さっきから見てれば、俺のリアスにどれだけ近づいてるんだ!! 下級悪魔如きがっっ!!!」

 

二人のやり取りを見て声を荒げるライザー。

自分には見せない様な美しく、優しい笑顔を唯の眷属悪魔で立場から考えれば自分には遠く及ばないと決めつけている巧に見せる事に対して腹を立てた様だ。

 

「こいつと結婚するんのに他の女を作んのかよ」

 

ライザーの怒りを無視して、そのまま言葉をぶつける巧。

その目から、巧の力の片鱗を見せつけられたライザーは体が巧に対して危険と判断をする様なシグナルが発せられる。

 

ーーぶざけるなっっ!! 俺は、フェニックスだ!!

なんであんなクソ餓鬼一人に怯える必要があるんだっ!

 

体のシグナルを無視して、湧き上がりそうな巧に対する恐怖心に無理やり蓋をする。

足を移動させて、巧とにらみ合う。

 

「さっきの質問、答えてやる。そうだ。よく言うだろ? 英雄、色を好むってな。まさかお前……羨ましいのか??」

 

睨み合った状態のライザーからは巧の怒りを駆り立てる様な言葉ばかりが出てくる。

最後に巧を見下した目と表情を作る。

その際にはライザーの背後にいた、自身の眷属達も巧に向けて嘲笑を向けられていた。

 

「バカッ!! 俺はな、お前みたいに適当なのが男として許せないんだよ!!何が英雄だ! 唯のスケコマシじゃねえか!!」

 

巧は自分に彼女がいない事に関して多少のコンプレックスを持っていた為に何股をかける事を堂々と言うライザーに怒りとすこしばかりの嫉妬があり、それが表に出て、すこしばかり焦った口調での返答となる。

 

「何だと…っ?? 口を謹めよ、下級悪魔。

さっきから何なんだ、貴様は俺に恨みでもあるのか!?」

 

スケコマシ…と呼ばれた事に怒りが爆発し、ライザーもつかさず声を荒げて返答を行う。

ライザーの言葉を聞いた巧はすこしばかり落ち着いた表情を見せる。

 

「ああ。 あんたは面が気に食わない。小学生の時、俺を勝手に班長にした奴に似てる」

 

『プッ!』

 

巧の思わぬ返答にグレモリー眷属はアーシアを除いて全員がその場で吹き出した。

リアスは口を押さえてその場で膝をつき、祐斗は一人壁ドンを行いその表情を隠し、小猫は今にも笑い出しそうな顔で自分の持っていたお菓子を口に詰め込み笑いを堪え、朱乃は先ほどまでの作り笑顔が消えて、本心からウフフといつ間の笑みをこぼす。

なおグレイフィアは体はまっすぐ保っていたが、顔だけは下を向けて笑いと戦っていた…。

 

「きっ、貴様ァァァ!!! ミラッ!あの男の口を塞げっ!今すぐだぁ!!」

 

ライザーの叫びと命令に反応し、十五人もの眷属の中から一人の少女が飛び出した。

ライザーに巧への攻撃を指示された少女、ミラは中華風の服装と髪型で、その手には棍棒を持ち巧に向かって行く。

 

ーー何よ、あの男構えも何もない。

よくあれでライザー様に楯突いたものね。

 

自分が攻撃しようと、突進してくるのが見えているにもかかわらずに全くの動きも見せない巧を見て、見下したような気持ちで攻撃に移ろうとしている。

 

ミラの持つ棍棒はそのリーチの長さで素手の巧よりも間合いは大きい。

だからこそ、その間合いを利用し、巧の間合いが届かずに尚且つ自分の間合いが届くギリギリの位置での攻撃に移ろうとした。

 

「なっ!?」

 

攻撃に移ろうとしたミラは驚きの声を上げる。

突如、自分の体が突進の勢いをなくしてその場で静止をしていた事に気付いた。

自分の体が動かない事に恐怖し、棍棒と共に後ろに後退し距離を取ろうとするが棍棒は何かにくっついているようにその場で固まっていたように感じる。

 

ーー何っ!? 何なのよ!!

 

全く訳のわからない現象にミラは困惑し、思わず涙を流そしそうになる。

自分の涙腺から弱さと恐怖を表した水滴が溢れる。

その刹那ーーー

 

「おい」

 

自分の耳に聞こえたのはひどくぶっきらぼうで乱暴な声。

けれども今のミラにはその声がひどく優しく聞こえた。

 

「あっ…。あんた」

 

「いきなり何すんだよ。あぶねぇだろう」

 

自分に声をかけたのは先ほどの攻撃対象だった男、乾巧。

巧は棍棒の先端を片手のみで握り、その動きと持ち主であるミラの動きをも止めた。

 

「貴様…。唯のクズではないみたいだな。ミラの攻撃を片手で止めるとは…」

 

ミラの後ろにいたライザーは巧の動きを見て、認識を改めた。

その目で巧を警戒し、そしてまた観察していた。

 

ーーこのガキ…実戦慣れしてやがる。

それもゲームじゃない、本物の殺し合いを…。警戒するのはリアスでも雷の巫女でもない。あのガキか…。まぁ、いざとなればあの手で勝てばいい。王を取れば勝ちなのだからな。

 

 

ライザーは心中でゲームに勝利するある手を想像し、下衆な笑みを浮かべ、巧はその笑みを見て不思議と拳を握りしめていた。

 

「ミラ、下がれ。 今日のところはここまでだ。それじゃあな、愛しいリアス。それにクソガキ、おまえはこの俺が直々に潰してやる。そのふざけた口を二度と聞けないようにしてやる」

 

ライザーはミラを下がらせて、リアスには甘い声を掛け、巧には敵意を剥き出しにした辛辣な言葉をぶつける。

 

「待ってください、ライザーさま。 …あんた、名前は?」

 

ライザーはそのまま冥界に転移しようと再び魔法陣を開こうとするがミラの声で押し止まる。

ライザーもミラの行動を許可し、すこしばかり時間を与えることにした。

ミラはライザーに頭を下げた後、巧に視線を向けて、名前を問いただす。

 

「おまえに教える必要ねぇだろ。 さっさと帰れ」

 

ミラの待ち望んだ返答とは全く逆の返答に少し泣きそうになりはじめる。

巧はミラの質問を一蹴し、部室から出て行こうとするがその頭に向けて、リアスは軽く頭を叩く。

 

 

「何すんだよお前っ!!」

 

「敵とはいえ、女の子なのよ。もっと愛想よく…は無理だけどせめて名前くらいは教えてあげなさい。部長…いえ、主人の命令よ」

 

リアスのあまりにも理不尽な命令。

巧はそんなの知るかっ!と返そうと考え、そのまま無視して立ち去ろうとしたが、再びハリセンを振り被るリアスが見え、かかとに火花が散りそうになる程の速さと勢いを持ってその場で回れ右を行う。

 

「………いっ、兵藤一誠」

 

数えるほどしか乾巧の名前も名乗ったことはないが、それでもまだこっちの方が勝っていた為に癖で乾巧と名乗りそうになったのを押し殺し、兵藤一誠の名を呼ぶ。

 

「なら、兵藤一誠っ!覚悟しなさいっ!!

あんたを倒して……私に跪かせてやるっ!!」

 

ミラはそう言って、再び先ほどいた自分の場所に戻る。

再びライザーとその眷属たちは炎に包まれ、今度こそ本当に冥界に帰還した。

 

「やっと終わった…」

 

面倒事が終わり、巧は最寄りのソファーに座りこんで、この一件が終わってもまだ面倒事がある事を思い出し、ソファーに崩れるように座り込んだ。

 




感想や評価をお待ちしております。

次回は明日になります。
こんな風に早く投稿できるのはあと少しだけだ…。
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