結城友奈は勇者である〜無限の造花〜   作:タンスの人

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年越して、さらには年号も変わったので初投稿です。


園子って書くの難しい、難しくない?


戒めの世界

 青、桃、黄、橙、緑、紅、続いてまた青、紫、そして───赤。

 

 

 

 世界が崩れて、慣れた感覚がした。世界を崩したその炎が目の前をおおったかと思うとその光景が目に飛び込んできた。これは───、と考え始めたところで思考を中断する。今目の前に映る光景はその色だけではないのだ。

 

 

 

 赤いひらひらしたものが右肩の上にゆっくりと着地する。もういいと言わんばかりに。

 

 途端世界がより鮮明になる。

 

 

 

 そこは黄昏の荒野。

 

 地面は平坦と言うには大きな凸凹か所々みられる。点々と雲が浮いている空はとっくに青を失い、太陽は白熱電球のような白から燃えるような夕焼けに移行している所のようだ。

 

 しかし特筆すべきはその終わりを連想させる光景ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 剣がある。

 

 

 

 

 

 

 

 剣がある。

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に剣がある。

 

 

 

 

 

 

 

 その後ろに、その両脇に、少し離れた斜め後ろに。

 

 

 

 

 

 

 

 それを観測している自分の周りに。

 

 

 

 

 

 

 

 前後左右ありとあらゆる方向、視線の先、場所に剣が刺さっている。

 

 

 

 

 

 

 

 わかるだけでもまっすぐで諸刃の剣に反りが特徴の日本刀─小太刀、大太刀、短刀などから持つだけでも苦労しそうなゲームにでてきそうな大きい大剣、刀身が異様に細長い剣、岩を削ったような斧剣、水晶でできているような剣、三日月のような刀身の剣、白と黒で同じ形状の西洋の剣、先程まで自分が使っていたのと似ている剣、更には記憶に焼き付いている斧剣まである。

 

 ここは、と独りごちる。

 

 この世界はどこか樹海に似ている。

 

 特に世界が切り替わる瞬間が特に。

 

 ふと声がした。意趣返しと言わんばかりに。

 

 

 

「個と世界、空想と現実、」

 

 

 

 既にズタボロのはずの身体は芯でも入ったかのように真っ直ぐで。

 

 

 

「内と外を入れ替え、」

 

 

 

 その足取りはこの異様な世界を慣れ親しんだ通学路を通るように悠々と軽く。

 

 

 

「現実世界を心の在り方で塗りつぶす魔術の最奥にして大禁呪」

 

 

 

 頭からは血が流れ、裂けた服からは所々血で滲んだ痛々しい傷が覗かせていようと。

 

 

 

「────────固有結界。これは歴代の、そしてこの”高嶋士郎”の世界だ」

 

 

 

 その不屈の意思を携えたその眼差しは突き刺すように目の前の敵を見定めて、ゆっくりと2振りのの剣へと両の手を伸ばす。

 

 ────自分もよく知るあの斧剣へと。

 

 

 

「ふざけるだろ? こんなのを三百年も継承してきてんだぜ。こんなみすぼらしい心象風景をよ。押し付けられる側にもなれってんだ」

 

 

 

 剣を抜き、そして構え、おどけたような口調で自嘲気味に放つのその言葉はどこか哀愁を感じさせる。

 

 

 

「これ、は」

 

 

 

 トップシークレットの文献より固有結界についての知識は園子は知っている。けれど本物を見るのも初めてだし、固有と名についている以上樹海のそれと全てが同じとは言いきれない。故に彼のこの魔術が世界をつくる他にどんな固有のものを持つのか考察しなくてはならないだろう。

 

 少なくとも聡明な彼女ならそうした。

 

 

 

 しかし園子にはこの大量の剣が刺さったこの世界よりも重要な事があった。先程からこの世界を舞っている無数の花びら。

 

 

 

 ──彼は言ったではないか。

 

 

 

 ──この世界は三百年間受け継いだ、そして自分の心象世界だと。

 

 

 

 そしてこの花びらと花弁は分かるだけでも桔梗に朝顔、薔薇、桜。

 

 そして先程から右肩に乗っている牡丹の花。

 

 これは全て記録に残る歴代の勇者たちのシンボルとなる花たちだ。

 

 つまりこの意味は──────

 

 

 

(────あぁ。やっぱりどんなに偽っても本心は昔のまま、なんだね)

 

 

 

 無愛想に冷たく振舞っていても、結局中身は昔のまま。

 

 勇者が傷つき戦う事をおかしいと、それを讃えるのはおかしいと、なんとかしてやれないかと、そう悩んでいた頃のまま。

 

 その事実がどこか嬉しくて、頬が緩みそうになる。

 

 けれど同時に悲しくもあった。彼は本心を殺して真逆の行動をしている。その他多くの有象無象よりも大切な人達数人をとれず、心でその痛みに咽び泣きながら表面はなんでもないように振舞っている。正義の味方なんかをやっている。こんな世界(本心)を展開しておきながら、それでも自分を騙し続ける。それが分かってしまう園子にとって苦しいのだ。自分は彼をそこまで追い詰めるためにこの身を削ってまで戦った訳では無いのだから。

 

 しかも彼は言ったところで聞き入れてくれない。ならもう方法はひとつしかあるまい。

 

 だから彼女は決意する。どんなことをしても彼に本心を解放させてあげると。

 

 数分後の運命も知らないで。

 

 ─────────────────────

 

 

 

 十数振りもの武器が、標的に向かい飛翔していく。けれどその悉くは撃ち落とされ、弾かれ、防がれる。

 無数の剣達に阻まれ、彼女の武器は何一つ向かってくる相手の進路を制限することすら叶わない。先程までの圧倒が嘘のようになっている。

 今や手数の多さは逆転した。

 

「──くっ!」

 

「ウオォォ、オラァッ!」

 

 10mくらいから跳躍して身体を捻らせ車輪のように剣戟を浴びせる。

 先程まで彼女の移動手段であり、戦闘の要だった複数の武器は全て幾千もの剣に阻まれ使えない。咄嗟に手元の槍を振りかぶり、備える。

 

 ガキンッ! と。

 

 前方斜め上からの放たれた左右の手で順手と逆手に持たれた斧剣と下段より大きく振った槍が互いの勢いを殺し合った。

 一瞬互いの動きが止まる。

 

 刹那互いの目が合う。

 

 園子には目には先程とは違い余裕がなかった。

 士郎には目には絶対倒すという意思があった。

 

(さっきと全然、違う)

 

 一つ一つの武器は自分のそれと比べると幾分か劣ってはいるが、数が違いすぎる。

それこそ、この固有結界の狙いである。

 

 彼の戦法は至ってシンプル。結界の展開前まではひとつの武器で勢いを相殺できなかった。ならその数十倍の数の武器を用意して勢いを相殺すればいい。

 そして現にそれは有効だった。

 霊力で動かしていようと、1度勢いを完全に殺されればもう一度加速させるには時間がかかる。

 結果として相手に接近を許してしまい、受けに回るハメになる。

 そしてそれは両足と片腕を使えない彼女にとって痛い所だった。それらを補うため複数の武器は機動と攻撃に使っていたが今や固有結界の無数の剣によって、彼女の元へ馳せ参じることが難しくなっている。

 故に彼女は自分から攻めることが自ら難しく、受けに回る他ない。せめてもの救いは相殺することにしか周りの武器を使っていないことか。

 

(おさ、れる)

 

 こちらのアドバンテージを既に崩され、頼みの綱の近接戦は彼の得意な一撃離脱のスタイルに翻弄されている。特に周りの剣に彼女の飛び道具を悉く封じられているのに対し、相手は弓で色々飛ばしてながら接近してくる。精霊バリアで傷つきはしないが勢いだけは殺せない。機動力のないリボンによる移動とも射撃によりジリジリと同じ場に固定されていく。逃げられない。

 

 そしてついに周囲に刺さっている剣を使い始めた。動きののろい彼女には槍で対応する間もなく精霊バリアで防ぐしか手立てがない。

 

 そしてついにその瞬間。

 

 無数の剣戟の嵐の中に。

 

 複数の精霊を使役している乃木園子に。

 

 死角などない隻眼の勇者に。

 

 ついに死角(認知しきれない点)ができる。

 

 そこを逃す士郎ではない。懐から─予め用意しておいたのだろうか─紫の稲妻の様な刃をした短刀を取り出し園子のもとへ潜り込むように跳躍する。

 

「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)

 

 激しい動きとは裏腹にとても落ち着いた声音だった。それは勝利を確信していたからなのか、これで終わるからなのか、分からない。しかしこれが彼の切り札であったことは疑いようはない。

 

 破戒すべき全ての符。

 殺傷能力は勇者の礼装を貫通する程のものではないが、あらゆる魔術を破戒し初期化することが出来る。神と人の契約を破戒しきることはできないが、人の手により紡がれた、精霊と人のそれならば瞬く間に初期化してみせよう。有効なのは2世紀以上前に証明されているのだから。刃は障壁を薄ガラスのように突き破り園子の身体へ真っ直ぐと。

 

「────あ」

 

 それがどちらから漏れたものか。

 

 切っ先が胸に突き立てられるのと同時に世界が白く染った。

 

 




リメイクして再投稿するかも。
いつ?HAHAHA




未定ですごめんなさい。そもそもこれがひと段落する所まで続くかわかんないのです。
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