炎の中歩いている。/炎は生の存在を許さない。
戦いには慣れている。/迫り来る有象無象。
痛みを我慢して。/回路を発起させて。
飛びそうな自我を繋ぎとめて。/牡丹の声が脳に反芻される。
消えそうな思い出を噛み締めて。/消えない知らない散り行く花が舞う。
情報の激流の中を進み最善手を打ち続ける。/後悔の記録からから希望への道を探す
身体を機械にして。/鉄の造花は永遠に決して散ることは無い
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偽・勇者御記より抜粋
部活動してるのはただボランティアがしたい訳では無い。部長と同じで、他の理由がいくつかある。上にそうしろと言われたからそうしているだけ。養子に出された先の家族は既に死んでおり戸籍上はまさに天涯孤独なので他の家で暮らせと言われても大した抵抗感はなかった。今度こそ、という意気込みもあったから。
──まぁ、でも。まさか生家にもどって暮らしながら、鷲尾、いや今は■■■■か、がいる部活に入ることになるとは。気まずいなぁ。
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4月上旬。中学生の準備シーズン時に大赦からの指令があった。実家に戻り地元の中学に通ってとある部活に入れ、というものだった。
尚、そのルールは、
一、勇者たちがお役目に集中できるように障害となり得るものを排除すること。
二、勇者が戦えなくなった時、もしくはお役目を放棄した際にのみお役目を代行することを許可する。(尚、戦況が悪化の一途を辿る場合は上記を破棄し、戦闘に参加してもよい)
三、大赦、並びに全人類への反逆の意があれば直ちに報告、速やかに勇者に変身前に拘束すること。
四、上記第三項において、勇者化により拘束が不可能であると判断できる場合において人的、社会的被害が出る前にそれを撃破、拘束すること。不可能である場合殺害を許可する。手段は問わない。
五、上記全項のうちどれかの条件に該当しない場合、工房外での魔術の使用、及びバーデックスとの交戦を許可しないものとする。
六、此度の任務の口外を禁ず。例外はない。
七、第二項における条件が満たされた際、素顔を晒してでの戦闘を禁ず。直ちに仮面を投影、着用して臨むこと。
というもの。約一年後の話だというのに気が早い気がしないでもない。
かなり簡略されており長ったらしい文章でないが、忘れてたですませにくいのがキツい。特に第五項には悩まされる。
戦闘の縛りは意味不としか言えない。大赦としては万が一のことを考えているのだろう。勇者と違い自分は替えはきかないとしても石橋を叩きすぎである。
そもそも今まで使いなれてるのは、高嶋の当主が代々受け継いできた工房で、それは四国にある個人が持てる唯一の工房であり、生家から遠くはなれた大赦本部近く。自らの手で改造しかしたことしかない士郎がこんなところで新しく工房を作るとか無理なのだ。
協力者を探そうにも魔術は基本隠匿するもの。魔術回路のない向こうの親家族は頼れないし、そもそも四国において魔術師はもう士郎しかいない。(定義的には士郎も怪しいが)
いちいち家に帰るのが馬鹿らしいので、大赦の晴信さんに相談したら、いつでも大赦の工房に来れるように送迎しようか?、とか提案された。乗せられた・・・
そんなこんなで承諾して、決まる引っ越し事情。
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いつまでこの家にいたかは覚えていない。
物心つく前に養子先に行ったから。あいつと入れ替わりで。
だからか、懐かしさというのはあまり感じない。もはや他人の、民泊に泊まる気分だ。これからしばらく寝泊まりする家だというのに異物感が拭えない。
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赤の他人のような血の繋がった両親と再会は大赦の中でも兄貴分みたいな人を交えてのものだった。
場所は家がオーナーをやってる料亭。魔術を知らない──黙認してる方が正しい──親戚筋の人が経営している。
両親は時間よりも早くに着いていて、奥に通された時は緊張していた。
大赦の命令とはいえ、2歳の時に養子にだした息子と約10年ぶりに会うのだ。彼らは恨み言の1つや2つは来るものと覚悟しているのだろう。目の前の男の子にとって自分たちは、顔もろくに覚えていない妹のみを
今でも2歳の彼を養子に送る時の光景が蘇る。
必死に泣き喚き、行きたくない、行きたくないという少年を無理矢理送り出したあの時の光景は今でも頭にこびりついて離れない。
でも覚悟していたことは何一つ起こらなかった。恨み言は愚か皮肉すら飛んでこない。
大赦より時たま息子は利口で冷静な子に育っていると聞いてはいた。だからキッチリ教育されているから抑えていると最初は思っていた。
でも違う。反応がかなり薄い。抑えているでも、ましてや両親との再会に言葉が出ないわけでも、緊張してるわけですらもない。
無関心。そう無関心すぎるのだ。他愛ない世間話に適当に相槌をうつのみ。振れば話はするが、積極的に話そうとはせず、自分の世界に入っている。隣に座る仮面の人も苦笑いしてるのが感ぜられた。
だからなのか、大赦からの使いが気を利かし、帰っていった。
個室には3人きり。会話はもちろん続かない。『士郎』学校はどう?、と話をつなげる。
しかしそれは地雷であることにすぐ気づいた。この春から遠く離れた我が家に住み讃岐中に入学するのだ。小学校の同級生とはおさらばなのである。
案の定本人は苦虫を噛み潰した顔をしている。でもこれは名前を呼ばれた時からその嫌悪感はあった。
しかしすぐ顔は真顔に戻り、ええ問題ありません、と返事する。
未だ敬語である。それが彼と両親との間にある絶対的な壁、いや溝を示唆していたことは誰の目にも明らかだった。
だが、悲しむ資格はない、これは自分たちの自業自得でもあるのだから。
だけれども会話はそれでも続かない。
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あのあと食事についての会話だけ少しして済ませ、家に戻り必要なものをまとめて、結城家に行った。
「貴方が今日から家族になる士郎くんだよね、初めまして!結城友奈です!」
妹の方に初めてあった。
両親からは予め言われているとはいえ年頃の女の子にとって、同年代の奴を兄弟として同じ屋根の下で暮らせ、なんてあまりにも受け入れ難いとおもっていたのに。
だから割と猫被りでない好意的な受け入れ方には驚いた。
(明るい子だな、やりづらいかも)
第一印象はこんなところだった。彼女に抱く複雑な感情を含めても嫌いには慣れそうにない。
部屋に案内された。勉強机と本棚とベッドがあるシンプルな部屋であった。あとはダンボールに色々詰まっている。先に送っておいたのだ。費用は大赦が出してくれたらしい。
ダンボールの中身を色々出したりしてると手伝いながら色々質問さられた。あまり初対面の人と自発的に喋るのは─業務的な会話はともかく─苦手で質問してもらうのは楽だ。適当に答えながら部屋を整理する。
彼女はとても楽しそうに質問の返事を聞いている。こいつ人たらしの片鱗が垣間見た気がした。
まぁ、こいつとは喋りやすい。この家での暮らしが少し楽になりそうだ。
────こいつゲームやるかな。
最初抱いていた複雑なそれは既に鳴りを潜めていた。
この家の全員は友奈と自分はトレードした関係ということを覚えていない、ということは今は置いておこう。
東郷美森が来たのはその1週間後くらい。