結城友奈は勇者である〜無限の造花〜   作:タンスの人

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続くゾ〜


5話 憂鬱

 左目の精霊は完全に祓得た訳では無く発動した術式を壊すだけに終わった。

  しかし、もうそれを知覚できる。故にある程度ジャミングを応急処置として施す。あとは工房で本格的な処置するだけ。

  すぐ魔術をフルに使い、パルクールしながら学校へ戻った。人に見られたかもしれないが事態が事態なので、そうも言ってられない。端末を開きながら先を急ぐ。

 端末には、4人の勇者の位置座標が表示されている。

 

(1ヶ所にまだ固まっているということはか4人とも屋上か。まぁ授業中に抜けたのだから、終わるまで待機するつもりか。都合が良い。面倒な言い訳は考えなくていいか。勇者には暗示効き難いから楽でいい。チャイムなる前に終わらせねぇと)

 

  学校が見えてきた。裏門から入る

  軽量化をかけ、身体強化。無論跳び上がりいきなり教室に突っ込むわけには行かないので、教室には1階から入りつつ階段は壁キックで駆け上がる。

  着いた。

  授業中ではあるが躊躇いなくドアを開ける開ける。

  教室は消えた生徒のことで騒いでおり、先生が話をしている。隣のクラスも同様だ。

  そしてその本人が教室に入ってきた。当然誰もが注目する。魔術師は目立つのは嫌う傾向にあるが、今回はこれを逆手に取り暗示を発動する。何をするか。それはいたってシンプル。後天的に付属させたランクの低い、それでいて一般人にはに有効な暗示の魔眼。

  しかし低ランク故に、見ただけで発動とはいかない。

  割と厳しいその発動条件は目を見ること。

  クラス全員の視線はおもに顔に注目している今。

  条件はクリアした。

 

『俺がいきなり消えることに違和感を覚えず、誰にも話すな』

 

  囁くようにつぶやく。しかし元々鎮まりかえっていた教室なのではっきりと皆の耳に届く。

  元々暗示は投影を除けば1番得意なのだ。

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

 あれから何事もなかったように時は進む。次の授業が始まり、そして下校。勇者たちは放課後も残っている。4人で話したそうだったので、士郎があらかじめ察して帰った形である。

 

 同級生と別れ、未だなれない我が家へ一人歩きながら考える。ここ最近1人だと気分が落ち込んでしまう。思考も引き摺られてネガティブになる。今日の事が、引き摺っているのだろう。

 特に乃木園子とのあの別れ方は胸が気持ちの良いものを残すようなものではなかった。

 戦略的にも彼女との関係的にも。

 

 乃木園子は特別だ。元々かなりの天才肌で祀られている今でも大赦の切り札とまで言われている。というのも霊的欠損を持つ人間は霊的、つまり神秘に対し敏感になる。故に精霊が増えたこともあり、神秘、神威を体現する勇者としては五体満足の時よりもかなり強くなっている。

  さらに身体の殆どを神に捧げ、神の遣いを大量に使役できるほどの神樹とのパスを持つ彼女はある意味この世で最も根源に近い人間と言えよう。魔術師としてのキャパシティは彼女の方が上なのは間違いない。

  その証左として、今日魔術のまのじも知らない筈の彼女が、昔見ただけであとは手探りで本職──へっぽこではあるが──出し抜くという事が起きた。前回と同じ逃走方法ではもう対応されるだろう。

  それに彼女は2年前から言ってるではないか、お話を聞かせて欲しいと。その並々ならぬ才能と絡み合う執念は自然に消えてくれることは無い。仮に術中にハマれば万にひとつも勝ち目はないし。

 

(かと言って降参してすべて話すのはダメだ。

 でも精霊を憑かされてしまっていた以上、どこまで知っていて、誤魔化しきれるか。

 最悪我が一族の目的にして悲願すら知られていたら力づくで阻止されてしまうよなあ。まあ、反応からしてそれはなさそうだけど。

 ────ああでも精霊ごとに特殊な能力がある以上強制自白的な能力があったらヤバいな)

 

  その手の能力には連綿と今代まで受け継がれてきた魔術刻印、そしてそこに付随する歴代の執念(呪い)による耐性があるが、それがメインではないからどこまで持つかは厳しい。

  本来魔術刻印はその代の成果を確実に安全に継承するためにある。そのため持ち主が継承する前に死なないようにと生存補助機能も付いている。その一環として持ち主の身体に悪影響を及ぼすものを弾く役割もある。

  しかし、普通の魔術は割とへっぽこな一族であるためその機能もへっぽこ。

 

(だから才能の塊たるお嬢相手だとかなり怪しいんだよな、これ)

 

  そんなどうしようもない理由もある。

 

  でもそれに頼るしかない。

  自分の行動は他者を勝手に基準にした自己満足なのは2年前に思い知らされている。それでも進むと決めたのだ。その他者だろうと止まる気はない。

 犯してしまった罪を帳消しにできるようなそんな何かを残さなくてはならないから。

 

 

 自分がまだ三ノ輪銀に惚れている『高嶋士郎』でいられるうちに。

 

 

 




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