といきたいが、先に謝っておきます
園子ファン方々、すみません
沈黙が続く。なにか話そうにも頭が真っ白だ。昔から予想外の出来事には弱いがらここまでとは思わなかった。
しかし沈黙は彼女によって破られた。
「ねぇ、……私たちみたいに、今度は勇者部が散華のことを知らされないまま戦わせられるの?」
その声音は静かな怒気をはらんでいた。
その質問の答えを彼女は分かりきっていた。
けれど、違うと彼が言ってくれるのをきたいしていたのもしれない。
自然と頭は戦闘用に切り替わる。
つまりこれは命をかけた場になると本能が判断したのだろう。
彼女に今まで何も明かさなかったのだ。ましてや彼女にとって自分は見後手な偽善で満開を生み出した元凶とも言える。結果的に人類は存続出来たが、彼女たちの体の機能は虫食いのように奪われてしまった。憎く思うことはあれども、信頼なんて元から無いも同然だろう。
「ああ、そうだ」
先程の未熟さはどこへ行ったのか。大赦の役員達と同じ感情を押し殺し、何も悟らせない、感じない機械のように答えた。
これは分かりきった事実。簡単にバレる嘘はつかない。意味が無い。故に即答。
「ああ、そっか…。変わってしまったんだね君は。取り返しのつかないところまで」
動揺していた時と自身の質問を答える時の落差をみて、自分のよく知る高嶋士郎はいなくなったと理解した。
名家の家の息女として教育を受けてる彼女が珍しく負の感情をあらわにした。
彼女は、今まで接してきてた相手が、少し心配していた知り合いが、そして少し気になっていた男の子が自分を、自分たちを人類守護の道具としか見てなかった、という失望を抱いている。
しかし弁解をする気は無い。資格はない。
すべて話せば彼女はわかってくれる、という甘えがあることを士郎は自覚していた。
だから───
「変わるも何もこれは真理だ。多くを救うために少数を犠牲にする。人類に群れるという特性が出来てからある常識だ。というか、今まで散々その少数の犠牲の上に成り立っている当たり前の生活って奴を謳歌しておきながら、自身がその少数になったら被害者ぶるとか有り得ないんだけどな」
本心とは真逆のことをのたまうこの口は、相手の地雷をドロップキックをかますかのように相手をより効果的に挑発し、徹底的に自分を落とし込む。自分を最低最悪の人間と思わせるために。
「…………」
ますます彼女は怒りが露わになっている。
しかしそれは表面上の話。
心は波風ひとつ立っていない。ただどうしようもなくそこから温度が下がっていくということだけ。
「だからこそ、その大多数にいる俺たちはその犠牲を何一つ無駄にしないよう日夜頑張ってるのさ」
ここで真実を混ぜ込む。嘘を信じさせるのは真実を、それも相手がそう分かる類のものを混ぜ込むというのが上等テクニック。
「……そう、それがあなたの考えならなら私にも考えがあるんよ」
今までで最も不機嫌そうに言い放った。まるで、今から本気で叩きのめしてやる、と宣言するように。
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戦ってもいないヤツらが安全圏から今まで犠牲になっていった人たちを無駄にするな、と言う。
これほど実際に戦っている人たちを不快にさせるものはないだろう。そしてきっと、大赦は自分を戦わせる時はこれと同じことを言うのだろう。乃木園子はそう思っている。
だがしかし。
彼女がいま腹立たしいのはそれではない。
嘘をついたこと。自分にだけではなく、彼自身にも。彼女のひとつしか残ってないその慧眼は見抜いていたから。
真理だの常識だのぬかしておきながら、それに最も反感を抱いているのは自分だと気づいていながら、自分を押し殺していること。
だから、人にそうのたまっているのは結局自分に言い聞かせてるだけなのだと。
──このままでは彼が壊れてしまう。自分がやらなくてはならない。じぶんしかできない。じぶんのすきなかれをとりもどさなくては。止めれるのは自分しかいない。
だから彼女は強硬手段にでる─────
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乃木園子の雰囲気が変わった。なにか良くないものに。
話し合いは無駄と思い知ったのか、何かを仕掛けようとしてくる。少なくとも高嶋士郎はそう感じた。
頭が、身体が、刻印が、理性が警報をならす。
やばい最悪だ逃げろ、と。
確かにこの状況において彼にとって不利なのは明白。虎穴に入らずんば虎子を得ず、というが、しかし、この場合虎に大人しくして貰うため餌をやりに虎穴入るという無謀を犯している。
だが、そうと自覚していてもこれは予想外で想定外だった。
しかし、ここですくんでいても仕方ない。怯んでなんかいられない。だから逃げずに向かい合う、彼にはその意志があった。この場合曲げるべきものだった。
呪文のように己にそう唱えるように、彼女に話す。話そうとして────────
「私、今の貴方はのことは嫌い」
ようやく自分が相手の術中にまたもやハマってることに気づいた。
「自分を押し殺して罪悪感による義務感だけで動く君なんか」
(──あ。)
身体中縛られたように動かない。
「これでようやく、ゆっくり君の本心全部聞き出せるね。大丈夫。まだ精霊使うのにはまだ慣れてないけど─────────────
今まで散々約束を(割と一方的だったが)反故にし続けてきて怒っているのは分かるが、いきなりのこの変化は明らかにおかしい。
(そういえば精霊を手足の代わりとして使役してるって………、あ)
脳内には西暦において起きた、勇者システムの一部機能の副作用が頭に浮かんだ。
反英霊のコピーを精霊という格まで落とし込み明確な意思を持たぬ力の塊にして、人の身に降ろし、その力を行使する切り札。
初代高嶋─衛宮士郎を参考に発明され、この魔術刻印の原型となったシステム。
そしてその副作用は負の感情を増幅させる、疑心暗鬼を深めるなどの精神汚染。
これには当時のほぼ全員の勇者が悩まされた。勿論己の祖先も。
その対策として、精霊を肉体ではなく武器に宿すという方式が採用された、ということも。
そして今の彼女は端末を持っておらず、死を防ぐための精霊しかいない。つまり生身のまま感覚を精霊とリンクし、使役してたということになる。
それが何を意味するか、考えるまでもなかった。
(下手な秘密主義が彼女をここまで追い詰めたのか、それとも───)
この副作用は精神力である程度カバーする事が出来る。しかしそれは一体までの話。
複数の精霊を同時に、正確にコントーロールしてするということは精神を殺すようなもの。
なまじ才能がある分、精神力の強い彼女がここまでになっていて自覚出来ていないこの状況がそれを物語っている。
(なるほど引き金を引いたのは俺、という訳か)
────そのうち慣れるから♡」
その
そしてその顔に見惚れていた。
だから反応に遅れてしまった。
樹海化がこの部屋が起きていることに。
無数の花びらが視界を覆う。
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そこは神域にして幾度も続いた決戦の場。
空は暗く、地を這い絡み合う巨大な根は白の上に明るい絵の具を飛び散らしたような見た目をしていた。
外縁部には細い木が絡まりできた壁があり、その奥には見せかけの世界を映し出している。
そして目を引くは中心に位置し、一際輝きと神気を放つ大樹。
樹海。何人もの勇者が命を落とした。
自身の想い人さえも。