超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第39話 緑の女神候補生(グリーンシスター)

 

 

 

紫苑達がゲイムギョウ界に戻ってきてから数日が経った。

そんなある日。

 

「シオンさん、ベールさん達が到着しました」

 

仕事をしていた紫苑にイストワールがそう伝えてくる。

 

「お、やっと来たか」

 

紫苑は仕事を中断して立ち上がり、居住エリアに向かう。

そこには、

 

「あ! お兄ちゃん!」

 

「翡翠………無事だったか」

 

ベールと共にいる翡翠の姿があった。

翡翠に声を掛け、ベールに向き直る。

 

「ベール、翡翠を保護してくれてありがとう」

 

「いいえ。礼には及びませんわ。だってヒスイちゃんは“妹”ですもの」

 

ベールは笑みを浮かべながらそう言う。

 

「…………………そうか」

 

妹呼びについては、ベールのいつもの事かと紫苑はスルーした。

 

「翡翠ちゃーん!」

 

「あ、刀奈ちゃん! 皆!」

 

そこに刀奈達が現れ、翡翠に駆け寄っていく。

 

「良かった! 翡翠ちゃんだけ1人で逸れたみたいだったから心配してたの」

 

「うん。最初は心細かったけど、すぐにベール姉さんに保護して貰ったから平気だったよ」

 

「………ベール姉さん?」

 

簪が首を傾げる。

 

「あはは」

 

簪の言葉に翡翠は笑ってごまかす。

暫く談笑を続けた跡、

 

「あっ、もうこんな時間。 そろそろクエストに行かないと」

 

シャルロットがそう言う。

 

「えっ? 皆クエスト受けてるの?」

 

翡翠がそう聞く。

 

「ああ。我々は戦姫だからな。この国の脅威を取り除くのは我々の義務だ」

 

ラウラが誇らしげにそう言う。

 

「ん~~~」

 

翡翠はその言葉を聞くと、少し考える仕草をして、

 

「ねえ、私も付いて行っていいかな?」

 

「えっ? 私達は別に構わないけど…………」

 

刀奈はそう言いながら紫苑に目配せする。

 

「……………まあ、お前達が居るのなら心配ないだろう」

 

そう言って紫苑は許可を出す。

 

「あはっ! じゃあ私も一緒にいくね!」

 

翡翠は嬉しそうにそう言った。

 

 

 

プラネテューヌ近郊の森にやってきた翡翠、刀奈、簪、シャルロット、ラウラ。

 

「そう言えば翡翠ちゃんって、プラネテューヌに来るまでに数日かかったけど何してたの?」

 

刀奈が唐突にそう尋ねる。

 

「あはは、ベール姉さんに気に入られちゃって、暫く抱き枕状態で離してくれなかったから………かな?」

 

翡翠はそう答える。

 

「確かに私達が見てる前でも翡翠にベッタリだったけど、何でだろう?」

 

シャルロットが疑問を口にする。

 

「ベール姉さんは4人の中で唯一妹である女神候補生が居なかったの。だからベール姉さんはネプお姉ちゃん達をずっと羨ましいと思ってたから」

 

「…………そこに翡翠さんが現れて強引に妹認定された?」

 

簪がそう推測する。

 

「強引………ってわけじゃないけどね…………寧ろ私が望んだから………かな?」

 

その言葉に、翡翠は曖昧に呟いた。

 

「?」

 

ラウラは首を傾げる。

すると、何かに気付いたように振り向いた。

 

「モンスターだ! 警戒しろ!」

 

その言葉に全員が気を引き締める。

出てきたのはスライヌ3匹にヒールスライヌ、ウルフが1匹ずつ。

 

「この程度なら楽勝ね」

 

「油断は禁物………」

 

「よーし! やるよ!」

 

「手早く終わらせる!」

 

4人が戦姫の武具を具現する。

基本的にこの4人の陣形は、槍を使う刀奈が前衛で、残り3人が後方からの射撃で援護する形だ。

 

「ハッ!」

 

刀奈が飛び込みながら回復役であるヒールスライヌを貫く。

ヒールスライヌは光となって消え、攻撃後の刀奈にスライヌ達が飛び掛かろうとした所を残りの3人が撃ち抜く。

しかしその時、4人に予想外の事が起きた。

残っていたウルフが突然駆け出し、4人を飛び越えたかと思うと、翡翠に向かって飛び掛かったのだ。

 

「翡翠ちゃん!?」

 

「危ない!」

 

「早くISを!」

 

それぞれが翡翠に呼びかける。

しかし翡翠はISを展開する素振りを見せずに口元に薄く笑みを浮かべると、右腕を振りかぶった。

そして、

 

「はぁあああああああっ!!」

 

飛び掛かってくるウルフに対し、アッパーカットで迎撃したのだ。

食らいつこうとして開いていた顎を下から打ち上げられ、強引に閉じられると同時にその勢いで空中に投げ出されるウルフ。

そのままウルフは空中で光になって消えた。

 

「「「「へっ?」」」」

 

4人は思わず素っ頓狂な声を漏らした。

雑魚モンスターとは言え、自分と同じぐらいの体重がありそうなウルフを翡翠は片手で打ち上げたのだ。

義手で殴りつけたとはいえ、それがおかしい事に4人は気付いていた。

 

「ひ、翡翠ちゃん………? なんかものすごーく強くなってない………?」

 

刀奈が何とかそう尋ねる。

 

「えへへっ!」

 

翡翠は笑う。

すると、

 

「ねえ、今気付いたんだけど、翡翠の義手って替えたの?」

 

シャルロットがそう聞いた。

今までの翡翠の義手は無骨な紺色だったのだが、今の翡翠の見えている部分の義手は、鮮やかなエメラルドグリーンに輝いている。

 

「ふふっ、それはね…………」

 

翡翠は笑みを浮かべる。

その時、森の木々を掻き分けて巨大なモンスターが姿を現す。

 

「グォオオオオオオオオッ!!」

 

それは茶色の鱗を持つ竜型のボス級モンスター、エンシェントドラゴン。

奇しくもそれが今回の彼女達の討伐モンスターだった。

 

「こいつが依頼のモンスターね!」

 

「流石にボス級というだけあって他のモンスターとは格が違うようだな!」

 

刀奈とラウラが気を引き締める。

 

「なら、最初から全力で行く………!」

 

簪がエンシェントドラゴンを見据え、

 

「じゃあ、変身だよ!」

 

シャルロットの言葉に全員が頷いた。

それぞれが武器を構え、

 

「「「「シェア…………!」」」」

 

言霊と共に武器を放とうとした瞬間、それよりも早くエンシェントドラゴンに向かって飛び込む影があった。

 

「どっせぇえええええええいっ!!」

 

翡翠がエンシェントドラゴンの頭部に向かって跳躍し、鋼鉄の右腕で殴りかかったのだ。

鋼鉄の拳がエンシェントドラゴンの頭部に叩き込まれる。

 

「グォァァァッ!?」

 

エンシェントドラゴンは叫び声をあげながら後ろに倒れる。

 

「「「「!?」」」」

 

それを見ていた戦姫4人は目を丸くして驚いていた。

翡翠は地面に着地すると、

 

「いくよ、変・身!!」

 

翡翠の身体が光を放つ。

黒い髪が翠の髪へ。

白いレオタードのようなボディスーツを身に纏い、妖精のような光の翼が背中に現れる。

翠の髪が首の後ろで纏められ、エメラルドグリーンの鋼鉄の腕が美しく輝く。

 

「グリーンシスター、ヒスイ! ここに推参です!!」

 

リーンボックスの女神候補生がここに現れた。

 

「ひ、翡翠ちゃん…………?」

 

刀奈の呆然とした呟きに僅かに目配せすると小さく笑みを浮かべると、表情を引き締めてエンシェントドラゴンに向き直る。

エンシェントドラゴンが起き上がり、ヒスイに向かってその剛腕を振りかぶると、

 

「グォオオオオオオオオオッ!!」

 

咆哮をあげながら翡翠に向かって殴りかかってきた。

しかし次の瞬間、

 

「グォアッ!?」

 

その腕が振り下ろされるより早く、鋼鉄の拳がエンシェントドラゴンの腹部にめり込んでいた。

ヒスイは一瞬にしてエンシェントドラゴンの懐に飛び込み、その拳を叩き込んでいた。

その拳の威力でエンシェントドラゴンは後ろに向かって勢いよく飛んでいく。

そのまま地面に叩きつけられるかと思われたが、次の瞬間空高く打ち上げられた。

ヒスイが一瞬にして追いつき、アッパーで打ち上げたのだ。

宙を舞うエンシェントドラゴン。

さらに次の瞬間、翡翠は空高く舞い上がり、一瞬でエンシェントドラゴンの高さを追い越すと、勢いを付けて急降下。

エンシェントドラゴンに拳を叩き込むと、そのまま地面に向かって一直線。

エンシェントドラゴンを直接地面に叩きつけた。

断末魔の叫びを上げる暇もなく消滅するエンシェントドラゴン。

それを確認して立ち上がったヒスイの足元には地面との激突時に出来たクレーターがくっきりと残っていた。

 

「「「「ポカーン……………」」」」

 

言葉通りポカーンとしていた4人に向き直ると、ニコッと笑みを浮かべ、

 

「サプライズ大成功!」

 

満面の笑みでピースサインをするのだった。

 

 

 

 

 

「……………で? なーんで翡翠がリーンボックスの女神候補生になってるんだよ?」

 

戻ってきた刀奈達から報告を聞いた紫苑がベールに問いかける。

 

「何故も何も、ヒスイちゃんがそうなることを望んだからですわ」

 

事も無げにベールは答える。

 

「元々ヒスイさんは女神の資質を持っていたようですね。リーンボックスのシェアクリスタルに近付いた事で、その資質が一気に開花したと思われます」

 

イストワールが推測を口にする。

 

「まあ、我が妹ながら予想外の事をしてくれる………」

 

紫苑は半分呆れた様に呟く。

そこでふと翡翠の悩みを思い出した。

 

「そういや、翡翠も女神になったって事は、あいつの悩みも解消されたって事だな」

 

「ほえ? ヒスイちゃんの悩み?」

 

ネプテューヌが首を傾げる。

 

「ああ。刀奈達が戦姫になったから、翡翠だけ寿命の関係で先に死ぬって事を気にしてたみたいでさ……………酷い時には俺に戦姫にしてくれって迫ってきた時もあった………それは流石に止めたが………」

 

「それはまた………」

 

ネプテューヌもそれには若干の冷や汗を流す。

すると、カップで紅茶を飲んでいたイストワールがカップを皿に置くと、

 

「別にヒスイさんを戦姫にしても宜しかったのではないでしょうか?」

 

とんでもない事を口にした。

 

「ぶっ!? 何言ってるんだイストワール!? 俺と翡翠は血の繋がった兄妹だぞ!!」

 

紫苑は吹き出しながらもイストワールの言葉に突っ込む。

 

「いえ、現在のシオンさんの肉体は、守護者の物として再構成されています。その魂や心はシオンさんのモノであり、姿形は以前のままですが、実際その肉体は以前とは別物と言ってもよいでしょう」

 

「へっ?」

 

初めて聞く事実に紫苑は素っ頓狂な声を漏らす。

 

「じゃあなんだ? 今の翡翠と俺には、血の繋がりは無いに等しいと?」

 

「医学的には赤の他人と言って良いでしょう。とはいえ、それで家族の絆が失われるとは思いませんが」

 

イストワールはそう言うと、再びカップを口に付ける。

 

「おおっ! じゃあシオンは合法的にヒスイちゃんと禁断の兄妹愛を繰り広げることが出来るんだね!」

 

ネプテューヌが悪ノリしてそう言う。

 

「やんねーからな!!」

 

流石にそれは紫苑も強く否定した。

 

 

 

 






第39話です。
まあ、前回よりは上手く書けたと思う。
とりあえず翡翠の活躍の回。
そして実は翡翠との兄妹愛は可能だったというどうでもいい設定が暴露されたり。
フリじゃないからね(大真面目)
さて、次は如何しようか?
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