超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第42話 愚かなる天才(フール)

 

 

 

 

刀奈と賭け試合をすることになった春万。

 

「それで? 勝負の方法は何にする? 生身でもISでもどっちでもいいけど? あ、参考までに言っておくけど、私、これでもロシアの国家代表だから」

 

「ッ…………!」

 

その言葉を聞くと、春万は一瞬躊躇し、

 

「………生身だ」

 

生身での戦いを選択した。

流石に自信家の春万も現役の国家代表相手には分が悪いと判断したのだろう。

 

「ん、了解」

 

刀奈は気負うことなく返事を返すと、部活で使われている道場に向かう。

道場に入ると、紫苑が腕を組んで壁にもたれ掛かっていた。

春万は紫苑に気付くと訝しむ目を向ける。

すると、それに気付いたのか、

 

「紫苑さんは立会人よ。まあ必要かは分からないけど一応ね」

 

刀奈がそう説明する。

刀奈はそのまま道場の中央辺りで振り返ると、

 

「さて、ルールはどんな手を使っても良いから君が私を一度でも手足以外の身体の一部を床に着けさせたら君の勝ち。私は君に参ったと言わせる、もしくは君が気絶したら私の勝ち………でいいかしら?」

 

「ッ!? 何処まで俺を馬鹿にすれば気が済む!?」

 

「別に馬鹿にしてるつもりは無いよ? 君と私の力の差を比べてこの位のハンデで少しはいい勝負ができるかなってぐらい。むしろ君が勝てる可能性を少しでもあげてるんだから感謝してほしいなぁ。逆にチャンスって思えば? 君が勝てば私は君のモノになるんだし」

 

刀奈は平然とそう言う。

紫苑はその言葉を聞いた瞬間ピクリと反応したが何も言わなかった。

 

「………………いいだろう。後で後悔しても知らないし、撤回もしないからな!」

 

「うん。君こそ私が勝ったらちゃんとコーチを受けて貰うからね」

 

春万の言葉に刀奈はニコッと笑って言い返す。

そこまで言うと紫苑が動き出し、2人の中央まで歩いてくると手を掲げる。

そして振り下ろすと同時に、

 

「始め!」

 

開始の合図が出される。

 

「はぁあああああっ!」

 

春万が先手必勝とばかりに駆け出し、鋭いパンチを繰り出す。

その動きは流石天才と言われるだけあり、並や少し腕の立つ程度の相手なら一撃でノックダウンさせるほどだ。

しかし、

 

「甘いっ!」

 

「なっ!?」

 

相手は並では無かった。

先程と同じように視界が一回転し、背中から道場の床に叩きつけられる。

春万の拳を受け流すと同時に足を払い、勢いを利用して前方宙返りをさせるように投げ飛ばしたのだ。

 

「がはっ!?」

 

背中から床に落ちた春万は咳き込む。

 

「確かに天才って自負するだけあって中々の動きだけど、それでも一般人の域を出てないかなぁ?」

 

刀奈は春万の顔を覗き込むようにそう言う。

すると、

 

「このっ………! 舐めるな!」

 

春万は倒れた状態から手を軸に水面蹴りで刀奈の足を狙う。

 

「よっと………」

 

だが、刀奈は軽く後ろに飛んでそれを躱す。

 

「くそっ!」

 

春万は素早く起き上がって刀奈に向かう。

左右の拳と蹴りのコンビネーションで刀奈を狙うが、刀奈はそれを余裕の表情で躱していく。

 

「フフッ、型通りの堅実な戦い方だね。確かに試合ならかなりいい所まで行くと思うけど…………」

 

刀奈が余裕の表情でそう言った次の瞬間、

 

「フッ!!」

 

「ぐはっ!?」

 

瞬間的に刀奈が懐に飛び込み、春万の腹に掌底を食らわしていた。

 

「『実戦』じゃまだまだ甘いよ」

 

崩れ落ちる春万に刀奈はそう言う。

 

「うげぇ………ゲホッ! ゲホッ!」

 

吐きそうになるほど咳き込む春万。

 

「まだやる?」

 

春万を見下ろすようにそう言う刀奈。

それが見下されたように見えた春万は、

 

「…………参った………」

 

降参の意を、

 

「………何て言うと思ったか!?」

 

示さなかった。

起き上がると同時に殴りかかる春万。

だが、

 

「なっ!?」

 

最初と同じように投げ飛ばされ、再び背中から床に落ちる。

 

「がはっ!?」

 

「何が何でも勝とうとするその姿勢は称賛するけど、そんな子供騙しのような騙し討ちは通用しないよ」

 

刀奈はそう言いながらまだ立ち上がろうとする春万を見つめる。

 

「まだ諦めない?」

 

「当たり前だ!」

 

再び向かって行く春万。

だが、同じように返り討ちに遭う。

それを何度も繰り返し、息も絶え絶えになった時、

 

「はぁ………はぁ…………何でだ………? 何でても足も出ない………? いつもならもうとっくに…………」

 

「もうとっくに相手を超えられてる筈だ………かな?」

 

春万の言葉を先読みしたように刀奈が言う。

 

「ッ………!」

 

「確かに君は天才の中の天才だよ。例え相手よりも劣っていようと、競い合う中であっという間に相手の動きを研究し、それに対する自分の動きを即座にモノにできる。普通の人が一生懸命努力して辿り着ける領域に、君は一試合で辿り着けるほどの才能を持ってる」

 

「ああそうさ! 俺は選ばれた人間なんだ! 他の凡人達とは違う!」

 

春万は現実を否定する様にそう叫ぶ。

 

「だけど、その才能はあくまで『競い合える』相手の場合」

 

「何っ!?」

 

「今現在の君の実力を遥かに凌駕する相手には、君の才能は無意味なのよ」

 

「な………に…………?」

 

「簡単に言えば、君はゲームなんかで言う経験値100倍のスキルを持ってるんだけど、得られる経験値が0ならそのスキルも意味が無いよね?」

 

「……………………」

 

「それから始めから相手を侮るのも悪い癖。君の実力の80%の相手に50%以下の実力で挑んでも勝てるわけないよね? それが鈴ちゃんとの初戦の結果」

 

「そんな筈はない! 俺は鈴とあまり実力の変わらないセシリアには勝ったんだ!」

 

「それは逆にセシリアちゃんが君を侮ってたからだよ。最初、君はセシリアちゃんの20%位の実力しか持っていなかった。それに対し、セシリアちゃんは40%位の力で君を倒そうとした。でも、すぐに君の実力が追いついて来たから徐々に本気になっていったんだけど、本気になるのが遅すぎて君を成長させる時間を与えてしまった事がセシリアちゃんの敗因だね。もし、セシリアちゃんが最初から侮らずに100%の力で君と戦ってたら、多分セシリアちゃんが勝ってたね」

 

刀奈は言い聞かせるようにそう言った。

それに対し、春万は俯き、

 

「…………違う………違う、違う! 俺は天才なんだ! 努力なんてしなくても勝てるんだ! この俺が、負けるはずないんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

感情のままに拳を振り被った。

それは本来なら刀奈にとって悠々と躱せるものだったが、突如としてその拳に光が収束する。

 

「ッ………………! シェアリンク……………!」

 

刀奈はそれに気付いた瞬間小声で呟く。

次の瞬間、春万の腕に白式の装甲が部分展開されて生身の人間が反応できない速度で拳が振るわれた。

 

「くっ…………!」

 

刀奈は腕をクロスさせて防御するが、その威力は刀奈を大きく後ろへ吹き飛ばす。

 

「ははぁっ! 見たかっ!!」

 

春万はそれを見て勝利を確信し、笑みを見せる。

だが、

 

「……………よっと」

 

刀奈は空中で宙返りして体勢を整えると、難無く足から床に着地した。

 

「なっ!?」

 

それには春万も驚愕の声を漏らす。

着地した際にしゃがんだ刀奈はゆっくり立ち上がると俯き気味に春万を見据える。

 

「……………ねえ、春万君…………」

 

刀奈はゆっくりと口を開いた。

 

「ッ………!?」

 

その様子に、春万は背筋に悪寒を感じる。

 

「確かに私はどんな手を使ってもいいって言ったよ? ルール違反だなんて言う気は無いけどさ…………………君には、モラルって言うものが無いの…………?」

 

「うあっ………!」

 

刀奈の前髪の影から覗く眼光に、春万は後退る。

 

「今の一撃…………私が生身の人間だったら良くて両腕の粉砕骨折…………当たり所が悪ければ死んでた可能性が高いよ? 私が戦姫だってことを踏まえて今の一撃を繰り出したのならともかく、さっきの君は感情のままにISを使ってた…………ただ自分が気に食わないってだけでね…………!」

 

「そ、それは……………!」

 

「確かに君は力を持つ人だよ? だけど、その危険性を考えずに振り回せばそれは『暴力』にしかならない…………力を振るわないならともかく、力を振るうにはそれ相応の責任を持たなきゃいけない…………君には、その責任が無さすぎる………!」

 

刀奈は拳を握りしめる。

 

「ううっ…………!」

 

「君には少し、お仕置きが必要だね…………」

 

「ちょ、ま、待って…………」

 

「待たない………!」

 

春万が静止を呼びかけるが、刀奈はそれに応じず、一瞬で春万との距離を詰めた。

 

「ま…………!」

 

「反省しなさい!」

 

戦姫の身体能力を発揮して、一瞬にして無数の連撃が叩き込まれる。

 

「うぎゃぁああああああああああああああっ!!!???」

 

春万の悲鳴が響いた。

 

 

 

 

刀奈の制裁が終わった後、春万は言うまでも無く気絶していた。

しかし、手加減は絶妙なもので、そのケガは一週間程度で治るものだ。

すると、紫苑が刀奈に歩み寄ってきた。

 

「お疲れさん」

 

「あはは、ちょーっとやり過ぎた気がしないでもないですけど」

 

刀奈は自覚があるのか苦笑いを浮かべる。

 

「別に良いだろ? こいつには徹底的に上下関係を認識させとかないとな」

 

「そうですか」

 

刀奈はホッとする。

すると、

 

「………でだ」

 

紫苑が言葉を続けながら光に包まれ、アーマーを纏っていないバーニングナイトの姿になる。

 

「さっきの負けたら君のモノになる発言について詳しく聞きたいんだが?」

 

背が高くなったことにより刀奈を見下ろすバーニングナイトは凄みを見せながら刀奈に迫る。

 

「え、えっと………それは春万君に賭け勝負を受けさせるために…………」

 

刀奈がそう気まずそうにそう言うと、

 

「お前が負けるとは微塵も思っていなかったが、人の女を勝手に賭けの景品にされるのは良い気がしないな……………それが例え本人だとしても…………!」

 

「し、紫苑さん…………!」

 

俺の女発言に刀奈は顔を赤くする。

 

「忘れるな………? お前はもう俺の(戦姫)なんだからな」

 

「は……はい…………」

 

その言葉に刀奈は顔を赤くしたまま頷くしかなかった。

 

 

 

 

 





第42話です。
やっぱりバトルは書いてて楽しい。
って言うか一方的ですけどね。
あんまり人数多いと内容が薄くなりそうな気がしたので今回は3名。
紫苑も最後以外は空気でした。
次は特訓風景ですけど春万はちゃんと言う事聞くのか!?
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