超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
「うっ……………!」
意識を失っていた紫苑はとある所で目を覚ました。
「ここは…………」
紫苑は身を起こすと、自分がベッドに寝かされていることに気付く。
「俺は…………そうだ、あの時『打鉄』を見て……………」
その事を思い出し、再び吐き気を催すが、
「…………ぐっ!」
紫苑は無理矢理飲み込んでそれを抑える。
紫苑は再び今の自分の置かれている状況を考える。
「…………ISがあるって事は………………」
紫苑は辺りを見渡す。
医療機器が所々に置かれているが、それはプラネテューヌの基準から判断すると、時代遅れの代物だ。
だが、紫苑はその事に納得することが出来た。
何故なら、
「…………戻ってきちまったってことか……………」
帰れる保証の無かった世界。
いや、既に紫苑は帰る方法があっても帰るつもりは無かった。
ネプテューヌの守護者となったあの日から、紫苑の故郷はこの世界では無く、ゲイムギョウ界のプラネテューヌなのだから。
すると、部屋の入り口の方から人の気配が足音と共に近付いてくる。
紫苑は警戒心を強めながら心の中で身構える。
すると、入り口の扉が開き、
「目が覚めたようだな…………」
1人の女性が入室してきた。
その女性は腰まで届く長い黒髪を首の後ろで束ね、ビシッとしたスーツを着ている。
紫苑はその女性を見た瞬間、目を見開いた。
何故なら、その女性はこの世界の住人であるなら一度はテレビで見たことがある人物だったからだ。
その女性の名は、
「……………織斑……………千冬……………」
第一回
だが、紫苑が驚いたのはそれとは別の理由もあった。
「いきなり殺気を向けてくるとはどういうつもりだ?」
その女性―――千冬は冷静な口調でそう聞く。
紫苑は無意識の内に殺気を出してしまったことに気付き、昂った気持ちを抑えた。
「……………すみません。今の俺の状況が分からないので少し警戒心が過敏になってました…………」
紫苑はそう答える。
「……………率直に聞く。お前は何者だ? 何故あんな所にいた?」
その質問に、
「名前は月影 紫苑。17歳です」
「17?」
千冬は怪訝そうな表情で紫苑を見る。
「そんな顔で見ないでください。俺だって気にしてるんです」
紫苑は溜息を吐いて、顔を逸らす。
「そ、そうか………すまなかった」
そんな紫苑の反応に、千冬は少し困った表情を浮かべた。
「最後の質問に関しては、ここが何処だかわからない上に、気付いたらあそこに居たとしか言えないんですが………」
「………………………」
千冬は再び訝しむ様な表情を紫苑に向ける。
「ここはIS学園だ。そんな事も知らなかったのか?」
「IS学園? ああ、IS操縦者の養成学校の…………これっぽちも興味なかったんで名前だけしか知りませんが…………」
「…………ならば何故この学園に来た?」
「さっきも言ったように気付いたらあそこに居た、としか言えません」
「どういう意味だ……………!?」
千冬の声色に威圧感が混じる。
「そうですね…………説明が難しいんですけど、簡単に言うなら、俺は今まで異世界に居て、事故に巻き込まれてこちらの世界に戻って来てしまい、戻ってきた時に偶々出てきた場所があそこだったったってだけですが…………」
「異世界だと? ふざけているのか?」
「少なくとも、俺はこの世界からすれば3年前のIS関連イベントのテロ事件で行方不明、もしくは死亡扱いになってると思います。それからの俺の動向は一切分かっていないと思いますが?」
「……………………」
千冬は紫苑を睨み付ける。
「まあ、当然信じられませんよね。それだったら謎の組織に誘拐されて戦闘訓練を受けさせられ、組織の手駒として利用されていて、ISかもしくは技術データを盗むためにこの学園に潜入しに来たって言った方がまだ説得力ありますから」
紫苑は肩を竦める。
「どちらも信憑性に欠けるな………前者は言うまでも無く突拍子が無さすぎる。後者については訓練を受けて派遣されたものがそんな軽々しく目的を喋るわけがない」
「ご尤も」
千冬はのらりくらり躱そうとする紫苑に対し溜息を吐き、
「お前のこれからの処遇だが、お前にはIS学園に入学してもらう」
「は?」
千冬の言葉に紫苑は素っ頓狂な声を漏らした。
「いやいやいや、何でそんな話になるんですか? 俺は男ですよ」
「…………まさか気付いていなかったのか?」
「何を?」
「お前はISを起動させたのだぞ?」
「はいぃっ!?」
「世界で2人目の男性IS操縦者だ。多少の黒い部分があろうとも貴重なデータには違いない。よってお前には監視の元、IS学園に通ってもらう」
「……………断った場合は?」
「お前の話が本当なら、既にお前は死亡扱いなのだろう? すなわち死人をどう扱おうが誰も関与しないという事だ」
「つまりは実験動物の可能性が大ってわけね」
「さて、そこはお前の判断に任せる」
「ま、身の安全の為にはIS学園に入るのが最善か…………死ぬわけにもいかないしな」
自分が死ねばネプテューヌも死んでしまうため、紫苑はどんなことをしても生き延びることを決意していた。
「懸命だな。だが、怪しい動きを見せた時には…………」
「容赦なく処分が下るってわけか………了解しました」
千冬の言葉に素直に頷く紫苑。
「さて、本人の了承を得た所で、お前にはこれからテストを行ってもらう」
「唐突ですね」
「IS学園の入学式は一週間後だ。書類やら何やらの申請などもある。全く、せっかくの休日がパァだ」
「あ~~………なんかすみません」
「安心しろ、お前のやることはIS乗って一度試合をしてもらうだけだ。その後は最低限の学力をつけるための特別補修だがな」
「うへぇ…………」
それを聞いて露骨に嫌そうな声を漏らす紫苑。
何だかんだで最近の紫苑は、ネプテューヌに関すること以外は面倒くさがる傾向にある。
「それからお前の使用するISだが………」
「打鉄以外でお願いします。打鉄は嫌いなので」
「…………どういう判断基準なのかは分からんが、いいだろう。ラファール・リヴァイヴを用意しておく」
その後、千冬の案内の元、試合用のアリーナのピットに案内され、そこでもう1人の教師に出会った。
「初めまして。あなたが月影君ですね。私は山田 真耶と言います。今日の試合の対戦相手を務めさせてもらいます。よろしくね」
真耶と名乗った緑色の髪とメガネをかけた豊満な胸を持つ女教師が紫苑に挨拶する。
「月影 紫苑です。よろしくお願いします、先生」
紫苑は姿勢を正して頭を下げる。
「よし、では月影、ISを装着しろ!」
千冬はそこに鎮座しているラファール・リヴァイヴを指していった。
「ふう……………」
紫苑は一度深呼吸してそのラファール・リヴァイヴに振れる。
すると、キンっという音を立ててISが起動した。
「本当に起動させた………」
真耶が若干驚いた表情で声を漏らした。
話には聞いていたが、実際に目にした事で事実だと思い知ったようだ。
そんな中紫苑は、
(…………俺の中に流れる
そんな推測を立ててみた。
そんなことを考えていると、いつの間にか紫苑の身体にISが装着される。
紫苑は手を見て握ったり開いたりしていた。
(………………機体の反応に僅かなロスがあるな)
ちょっと動かしただけで、常人では気付かないほどの違和感に気付く紫苑。
「装着できたな? では月影、カタパルトから発進しろ。ISは身体の動きとイメージで操作する。あとは体で覚えろ!」
(なんつースパルタ)
内心そう思う紫苑。
それでも言われた通りカタパルトに移動すると、
「それじゃ、発進しまーす!」
若干気の抜ける発言でアリーナへ飛び出していく紫苑。
紫苑はぶっつけ本番で空中の姿勢制御を行ってみるが、
(……………感覚的にはバーニングナイトの飛行と似たようなもんか………)
そう思った通り、あっさりと成功させてみせる。
「驚いたな。発進直後に墜落しても仕方ないと思っていたのだが………」
「先輩…………」
千冬のあんまりな発言に冷や汗を流す真耶。
「と、とにかく私も行ってきますね?」
真耶もラファール・リヴァイヴを装着し、カタパルトから発進していく。
流石は教師と言うべきか、真耶も完璧な空中姿勢制御で紫苑の前に到着する。
「お待たせしました、月影君」
「いえ………」
真耶のほんわかとした雰囲気とは裏腹に、紫苑はその操縦技術の高さに注目していた。
話し方自体は優しく、母性に溢れた声色をしているが、その仕草には紫苑から見ても隙が少ない。
(なるほど………見た目の雰囲気に騙されると痛い目を見るって事か………)
紫苑は一度深呼吸して気を入れ直すと、真剣な表情で真耶を見た。
「ッ!?」
紫苑の雰囲気の変化に、反射的に身構える真耶。
(俺の気迫の変化に敏感に反応した………! 織斑先生も大概だったけど、この人も相当の実力者だな………!)
(この子………なんて目をしてるんですか………!? それにこの気迫…………代表候補生どころか、国家代表を相手にしている気になってしまいます…………!)
2人がそう思っていると、
『準備は良いな…………?』
スピーカーから千冬の声が流れる。
それから一呼吸置くと、
『それでは………始め!』
千冬の合図で紫苑は即座に動いた。
バーニングナイトの時に、背後に円陣を発生させ、一気に飛び出す感覚で前方に飛び出す。
「なっ!?
真耶は驚愕の表情を浮かべながらも機体を即座に横に移動させ、激突を避ける。
紫苑はそのまま真耶の横を通り過ぎるが、
「ここっ!」
姿勢制御で前方に宙返りするような動きで身体を反転させ、同時に右手にライフルを呼び出し、逆さまの状態で真耶に向かって引き金を引く。
「きゃっ!?」
真耶は予想外の攻撃を受け、軽い悲鳴を上げる。
しかし、即座に移動して追撃を躱す。
「まさかあそこから攻撃してくるなんて………!」
紫苑のとった行動に驚愕の声を漏らす真耶。
「本当にISの操縦は初めてなんですかね………?」
そうは思いつつも、真耶もアサルトライフルを呼び出して紫苑に向かって発砲する。
紫苑はそれに気付いて躱そうとしたが、反応が遅れて何発か貰ってしまう。
(くっ! 僅かな反応速度のズレが鬱陶しい!)
紫苑の感覚ではギリギリ躱せるはずだったのだが、僅かな反応速度の遅れによって攻撃を喰らってしまったのだ。
紫苑は真耶の周りを飛び回りながら紫苑は射撃を行うが、移動しながらの射撃は慣れていないため、命中率は頗る悪い。
(やっぱ停止様態からの射撃はともかく移動しながらは苦手だな…………)
遠距離からの撃ち合いは不利と判断して即座に射撃を止める。
(それにしても…………)
紫苑はISの性能を考えながら自分の現在の戦闘能力を大雑把に把握する。
(こいつの性能はバーニングナイトの3割ってところ…………んで、俺の精神状況は最悪っと……………)
紫苑は打鉄に触れた時の様に吐きはしなかったものの、今の気分は最悪と言っていい。
(変身前のシェアリンク状態と同レベルの戦闘能力が発揮できれば御の字って所か………)
現在の戦闘能力をそう評する紫苑。
(さて、今の状況で何処まで食い下がれるか…………というよりも、俺自身そこまで真剣じゃないからなぁ…………)
ハッキリ言って、紫苑にとって勝敗などどうでもよかった。
ただ、どの程度動かせるかだけ確認できれば、何かあったときの対処もやり易い。
その為だけの試合だ。
紫苑にとってISの試合などその程度の認識である。
(とはいえ………)
紫苑はチラリとピットの方を見る。
(露骨に手を抜くと織斑先生が黙っていないだろうしなぁ…………)
一度溜息を吐くと、右手にマシンガン、左手にショットガンを展開する。
(とりあえず、適当にやるだけやってみますか!)
紫苑は再び
その際に、マシンガンを撃ちながら真耶を牽制する。
真耶は上空に逃れ、アサルトライフルで反撃に移ろうとする。
紫苑は真耶を追うように正面から突撃した。
「正面からでは良い的ですよ!」
真耶は両手に展開したアサルトライフルをフルオートで乱射する。
「この程度でっ!」
だが、紫苑は強引に銃弾の真っただ中を突破する。
「嘘ッ!?」
紫苑は一旦真耶の上を取った。
(次の攻撃は………振り返ってマシンガンで牽制? それともグレネードでダメージを狙ってくる?)
真耶は紫苑の次の行動を予測する。
だが、
「えっ?」
紫苑の行動は真耶の予測したどれとも違っていた。
紫苑は真耶の上を取った状態から体勢を変えずに急降下してきた。
「おらぁあああああっ!!」
振り上げた片足を、真耶に向かって振り下ろす。
「か、踵落とし!?」
思いがけない攻撃し真耶は一瞬呆けてしまい、その攻撃をまともに喰らってしまう。
「きゃぁあああああああああっ!?」
真耶は悲鳴を上げながら地面に激突した。
当然ながらその際に紫苑のシールドエネルギーも減っているが、そんな事は気にもしていない。
「そこだぁっ!!」
紫苑は間髪入れず、真耶を追うように急降下しながらマシンガンとショットガンを乱射する。
銃弾が雨の様に真耶に降り注ぎ、真耶のシールドエネルギーをガリガリと削っていく。
紫苑はそのまま真耶に接近していき、
「がっ!?」
一発の銃声と共に吹き飛ばされた。
見れば、真耶が倒れた状態でスナイパーライフルを構えている。
更に、
「これもおまけです!」
反対側の手に展開したグレネードランチャーを連射する。
「ぐあああああああっ!?」
爆発に呑まれる紫苑。
「くっ…………調子に乗り過ぎたか…………」
紫苑は爆煙の中から飛び出し、一旦間合いを置いて呼吸を整える。
その間に真耶は立ち上がった。
「ま、まさか踵落としを使うなんて思ってもみませんでしたよ…………」
「まあ、意表を突くためでしたから………」
2人のシールドエネルギーは紫苑が残り1/4。
真耶が1/2と言った所だ。
スナイパーライフルとグレネードの直撃で紫苑のシールドエネルギーがかなり削られたらしい。
2人は再び相手を見据える。
そして同時に飛び出そうとした時、
『そこまで!』
スピーカーから千冬の声が響いた。
突然の終了の合図に2人は思わず転びそうになった。
『山田君、熱くなりすぎだ。この試合はどちらかのシールドエネルギーが半分を切った時点で終了の筈』
「あっ!」
真耶は忘れていたと言わんばかりに声を漏らした。
『試合の結果としては、先にシールドエネルギーが半分を切ったのは山田君の方………つまり月影の勝利とする。まあ、最後までやっていれば、おそらく山田君の勝ちだったとは思うが………』
真耶にフォローを入れるようにそう言う千冬。
紫苑にしてみれば試合の結果はどうでもよかったので気にしてはいなかった。
ピットに戻る2人。
ISを解除して千冬の元に集まると、
「さて、実際に相手をした山田君の意見を聞こう。月影の実力はどの程度だった?」
「はい、私が感じた印象では現在の代表候補のトップクラスに匹敵する実力を持っていると思います。ちゃんと訓練して腕を磨けば、国家代表も夢ではありませんね!」
真耶はウキウキとした表情でそう語る。
紫苑にしてみれば欠片も興味は無かったが。
「なるほど…………ところで月影、初めてISに乗った感想はどうだ?」
千冬はそう聞く。
普通の生徒ならば興奮して喜んだり、凄かったとか最高の気分でしたと言うのが当たり前なのだが……………
「最悪でした」
紫苑はきっぱりとそう言った。
「「………………………」」
その答えに2人は思わず沈黙する。
「IS学園に入学するために仕方なかったとはいえ、出来る事ならなるべく乗りたくはないですね」
今までの生徒とは真逆と言っていい発言に2人は面食らう。
「「………………………」」
暫くの沈黙が流れたが、
「とりあえず試験はこれで終了とする。それと月影、お前には今日から寮に入ってもらう。緊急だが強引に寮の部屋割りを変えた。その為、お前には女子と共に生活してもらう事になる」
「その相手が監視役ですか?」
紫苑の指摘に千冬が一瞬口籠る。
「…………隠しても仕方ないだろうから言うが、その通りだ。お前自身への疑惑は晴れていない。逆に今回の試験の結果によって、疑惑が増したと言っていいだろう」
「そうですか」
紫苑は何も問題ないといった態度だ。
「………………これが部屋の鍵だ。生活必需品については明日経費を渡すのでそれで買って来い。今日は我慢しろ」
「了解しました」
紫苑はそのカギを受け取るとその場は解散となった。
紫苑は案内板に従って寮に辿り着くと、指定された部屋の前に来る。
ドアノブに手を掛けて扉を開けようとしたところで部屋の中に僅かな気配を感じ取った。
紫苑は一旦手を離し、コンコンとドアをノックする。
「ん?」
返事がない事に首を傾げ、もう一度ノックするがやはり反応がない。
(気配を消してる…………って事は監視役って事で間違いないんだろうけど、何で気配を消してるんだ? 俺もギリギリまで気付かなかったし………)
紫苑はノックしても反応しないので、仕方ないと思いつつ扉を開けた。
すると、
「おかえりなさい! ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
水色の髪が外向きに跳ねたセミロングの髪型でルビー色の瞳を持った少女が何故か裸エプロンで出迎えていた。
「………………」
紫苑は無言で無反応。
「…………あれ?」
その少女は紫苑が何も反応しないことに首を傾げる。
すると、紫苑は歩き出すとその少女の横をスルーする様に通り過ぎ、ベッドのシーツを引っ掴むと、彼女に被せる様に投げつけた。
「わぷっ?」
頭からシーツを被せられ、声を漏らす少女。
「ハニートラップはお断りです」
そう言う紫苑。
「もーひっどーい! せっかくサービスしてあげようと思ったのに………」
その少女はシーツの隙間から胸元を強調させるような体勢でそう言ってくるが、
「悪いが結構だ」
紫苑はスッパリと一刀両断する。
その少女は紫苑の反応に不満そうな顔になり、
「む~………私って、そんなに魅力ない?」
先程の胸元強調+太腿覗かせと、更に上目遣いを重ねてそう聞いてくる。
普通の男子であれば理性の糸が切れて襲い掛かってもおかしくは無いのだが、
「悪いが俺には既に永遠を誓い合った相手がいるんだ。俺にとってはそいつ以上の女なんて存在しない。因みにこんな形でもガキじゃないからその程度の誘惑じゃ揺るがんぞ」
全く動じない紫苑に彼女は溜息を吐いた。
「はぁ………せっかく身体を張ったのに…………」
そう言って洗面所に引っ込むと制服を着て出てきた。
そうして向かい合うと、紫苑から切り出した。
「それで、お前が監視役でいいのか? 更識 刀奈」
紫苑はそう言った。
「ッ!? 何でその名前を!?」
彼女は明らかに動揺した面持ちで聞き返す。
「何度も家に遊びに来ていた妹の友達位覚えて当然だろう?」
そう、紫苑は彼女の事を知っていた。
妹の………翡翠の友達として、何度も家に遊びに来ていた女の子だ。
「じゃ、じゃあ、やっぱりあなたは紫苑さん………なんですか?」
驚愕の表情を浮かべて驚く彼女。
「言って信じるかは分からんが本物だぞ」
「いえ………その名前を知っている人は限られています…………本人の可能性は極めて高いです」
昔の癖か、彼女は敬語で話し出す。
「名前?」
「今の私の名前は、更識 楯無。日本の対暗部用暗部更識家の当主を継ぎ、楯無の名を襲名しました。その為、真名である刀奈という名は秘匿され、安易に外部に漏らすことが無いようにされています」
「なるほど、じゃあこれからは楯無って呼べばいいのか?」
「それでお願いします」
そこで彼女―――楯無は一呼吸置くと、
「それから、紫苑さんに聞きたいことがあります」
「何だ?」
「………………翡翠ちゃんは…………どうなったんですか?」
楯無は紫苑の右手首に付けられている花柄のプレスレットを見ながら辛そうに尋ねた。
彼女もほぼ確信しているのだろうが、紫苑の口から聞くまで信じたくなかったのだ。
「………………死んだ」
少しの沈黙の後、紫苑は答えた。
「そう………ですか………………」
明らかに気を落とした声色で呟く。
「より正確に言うなら、あの状況では死んだとしか思えない………だな」
「えっ?」
「俺はイベント会場に現れたISを纏った女に殴り飛ばされて気絶したんだ。それで目を覚ました後、見つかったのはこのブレスレットが付けられた右腕だけ。他は誰とも判断がつかない肉片と血の海が広がっていた…………」
「ッ……………!?」
紫苑の言葉に楯無が驚愕の表情を浮かべる。
「気絶する寸前には翡翠の右腕が銃弾に撃ち抜かれて鮮血をまき散らしながら宙を舞う光景だった…………助かる可能性は…………ほぼ0と言っていいだろう…………」
「ッ! 紫苑さん! 手が!」
楯無が慌てて叫ぶ。
紫苑は無意識の内に拳を強く握っており、その拳からは血が滲んでいた。
「ごめんなさい! もういいです! もうわかりましたから…………あなたは、本物の紫苑さんだって……………」
楯無は救急箱を持ってきて紫苑の手の平を治療していく。
「……………すまん、少しは吹っ切ったつもりだったんだが…………」
「仕方ありません。紫苑さんは翡翠ちゃんの事を大事にしてましたから…………」
楯無は治療を終え、包帯を巻く。
「…………ありがとう」
「いいえ」
楯無は笑って見せる。
「翡翠ちゃんの事は辛かったですけど…………紫苑さんが生きていてくれたのは嬉しいです」
「…………そうか」
紫苑も落ち着いたのか軽く笑って見せる。
「それじゃあ、改めてお久しぶりです、紫苑さん」
「ああ、久しぶりだな。楯無」
改めて挨拶を交わす2人。
楯無の言葉遣いも少しフランクになっていた。
「それにしても……………」
突然楯無は紫苑の事をじーっと見つめた。
「な、何だ…………?」
その視線に何か気圧される感覚を覚える紫苑。
すると、
「紫苑さん………背、全然伸びてませんね!」
楯無は笑って失礼な事を言った。
確かに紫苑の身長は150㎝前後しかない。
「ぐふっ!?」
紫苑の胸に言葉の剣が突き刺さった。
因みにその剣には『さんじゅうにしきえくすぶれいど』と書かれていたり…………
「し、仕方ないだろ! 14歳で成長止まったんだから…………!」
紫苑はそう言いながらそっぽを向いた。
まあ、成長しない代わりに老化もしないが………
「ぷっ…………! あははははははっ!」
楯無は笑う。
「やっと紫苑さんに一泡吹かせることが出来た!」
お色気作戦に無反応だったことを根に持っていたようだ。
「うるさい! もう身長の事は言うなよ!」
「きゃ~! 紫苑さんこわ~い!」
そう言いながら楯無は部屋を逃げるように出ていった。
「全く…………つーか、監視役が監視対象から目を離していいのか?」
紫苑はそう思ったが、楯無の気配は近くにはない。
本当に何処かへ行ったようだ。
「まあ、何かする気も無いけどさ…………」
紫苑は日が沈み、暗くなってきた外を見つめる。
「………………ネプテューヌ……………必ずお前の元に帰るからな………」
紫苑はそう呟き、目を瞑った。
「織斑先生………」
「更識か………」
部屋の外へ逃げて行った楯無は、千冬の元を訪れていた。
「何か分かったのか?」
「はい、彼が危険人物かどうかは情報が少ないので分かりませんが、彼は3年前に行方不明なった月影 紫苑本人で、ほぼ間違いないと思います」
「…………そうか」
「ですが…………」
「ん?」
「これは私の勘ですが、彼は危険人物ではないと思います」
「……………勘か………」
「勘です」
ハッキリと言い切る楯無。
「分かった。お前は念のために監視を続けろ。怪しい動きをしたら、すぐに知らせろよ」
「了解です」
楯無はそう言ったが、紫苑が何かを仕出かすとは欠片も思ってはいなかった。
週一投稿とか前話で言っときながら、半日で書き上げてしまった。
一度書き出したら止まらなかった…………
今回いきなり楯無が出ましたが、楯無はISキャラの中では一番のお気に入りキャラなので優遇されます(爆)
なので早速主人公と知り合い設定。
更に言えば、(話の流れにもよるが)ヒロインに昇格する可能性も無きにしも非ず。
とりあえず次回からISの原作に入ります。
お楽しみに(してる人はいるのか?)
感想無いと流石に寂しい。
だれか感想プリーズ!!(切実)