超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第13話 幼馴染の転校生(チャイニーズ)

 

 

 

 

「では、1年1組代表は、織斑 一夏君に決定です。 あ、1繋がりでいい感じですね」

 

真耶が笑顔でそう言った。

クラスの女子達も大いに盛り上がる。

すると、一夏が手を挙げた。

 

「先生、質問です」

 

一夏が発言する。

 

「はい、織斑君」

 

「俺は昨日の試合で負けたのですが、何故クラス代表になっているのでしょうか?」

 

「それは…………」

 

「それはわたくしが辞退したからですわ!」

 

真耶の言葉を遮って、セシリアが立ち上がりながら発言した。

 

「まあ、勝負は貴方の負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然の事。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のない事ですわ」

 

「……………………」

 

一夏は事実負けたので反論できない。

 

「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして…………“一夏さん”にクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実戦が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんもの」

 

(………………なんか取って付けたような理由だな…………)

 

第三者視点で見ていた紫苑はセシリアのワザとらしい仕草で言われた言葉に疑問を持つ。

 

「いやあ、セシリア分かってるね!」

 

「やっぱり世界で2人だけしかいない男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとね!」

 

「私達は貴重な経験を積める。他のクラスの子に情報が売れる。一粒で二度おいしいね織斑君は」

 

「……………………」

 

個人情報を簡単に売ろうとするクラスメイトに紫苑は呆れる。

 

「そ、それでですわね」

 

セシリアは一度咳ばらいをすると、何処か落ち着かない雰囲気で顎に手を当てるポーズをとって言葉を続けた。

 

「わたくしのような優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を…………」

 

(ああ…………そう言う事ね…………)

 

そこまで聞いてセシリアの真意に気付いた紫苑は内心納得半分、呆れ半分の溜息を漏らす。

すると、

 

「生憎だが一夏の教官は足りている。 “私が”、直接頼まれたからな」

 

セシリアの言葉を遮って箒が机を叩きながら立ち上がり、そう言った。

妙に『私が』を強調したことにも紫苑は気付いている。

 

(…………修羅場って奴か…………)

 

1人納得する紫苑。

 

「あら、あなたはCランクの篠ノ之さん。 Aランクのわたくしになにか御用ですか?」

 

セシリアが余裕を見せてそう聞く。

 

「ラ、ランクは関係ない! 頼まれたのは私だ! 一夏がどうしてもと懇願するからだ!」

 

「えっ? 箒ってCランクなのか?」

 

「だ、だからランクは関係ないと言っている!」

 

言い争いを続ける2人だが、

 

「座れ、馬鹿共」

 

千冬が言い争っていた2人の頭を出席簿で叩いて黙らせる。

ついでに馬鹿な事を考えていた一夏の頭も叩いておく。

 

「お前たちのランクなどゴミだ。 私からしたらどれも平等にひよっこだ。 まだ殻もやぶれていない段階で優劣をつけようとするな」

 

元世界一の言葉の前には反論は無意味。

言い争っていた2人は大人しく席に着く。

 

「とにかくクラス代表は織斑 一夏。 依存はないな?」

 

「「「「「「「「「「はーい」」」」」」」」」」

 

クラスの女子生徒達の声が唱和した。

 

 

 

 

 

 

少し時間が流れて4月下旬。

今日も授業は恙無く進んでいく。

相変わらず紫苑は授業自体は真面目に受けているが、ISに関することに対してはやる気の無い態度は変わらない。

それでもサボっているわけでは無いので理由を知っている千冬や真耶は何も言わなかった。

まあ、本日の専用機持ちのセシリアと一夏によるISの実践で一夏がグラウンドに思いっきり墜落して大穴を空けたというハプニングがあったぐらいだ。

因みに一夏がその穴を埋める際、紫苑に救いを求める眼を向けてきたので紫苑は昼飯を奢ることを条件に手伝ってやったりした。

その夜。

紫苑は、日課の鍛練を終え、一夏のクラス代表就任パーティーに出席する(というか、男1人はキツイという理由で一夏に泣き付かれた)ため、寮の食堂へ向かっていた。

すると、

 

「本校舎一階総合事務受付………って、だからそれ何処にあんのよ?」

 

聞き慣れない女子の声が聞こえた。

 

「ん?」

 

紫苑がそちらに顔を向けると、正面ゲートの方から髪型をツインテールにした、身長が紫苑と同じぐらいの女子がブツブツと呟きながら歩いてきた。

 

(こんな時間に正面ゲートから?)

 

紫苑がその事を怪訝に思っていると、紫苑に見られていたことに気付いたのか、その少女は紫苑の方を向いた。

すると、その少女は小走りで駆け寄ってきて、

 

「丁度良かった! あなたここの生徒よね? 本校舎一階総合事務受付って何処にあるか教えてくれないかしら?」

 

そんな事を言った。

 

「ああ………それなら………」

 

と、紫苑が答えようとしたところで、

 

「って…………アンタ男!?」

 

遠目からでは気付かなかったのか、今気付いたと言わんばかりにその少女は紫苑を指差しながら叫んだ。

 

「……………そうだが」

 

「にしては、アンタちっさいわね。遠目から見たら小柄な女の子かと思ったわよ」

 

「……………同じぐらいの背丈の奴に小さいとか言われたくない」

 

紫苑は溜息を吐きながらそう言う。

 

「う、煩いわね! 私はまだこれからよ!」

 

「…………そうだな、頑張れ」

 

「……………そこは『俺もだー』っていう所じゃないの?」

 

普通に応援されたことに肩透かしを食らった少女はそう言う。

 

「……………俺はこれでも17歳で、尚且つ訳ありで14歳で成長止まったからこれ以上身長が伸びることはねーんだよ」

 

少し哀愁を漂わせながらそう言う紫苑。

内心で老化もしないが、と付け加える。

 

「って、あんたそれで17歳!?」

 

既にその反応にも慣れ始めた紫苑は溜息を吐くだけで何も言わなかった。

 

「それで、総合事務受付だったよな? それならこっちだ」

 

これ以上身長と年齢の事で突っ込まれたくなかった紫苑は強引に話を切り替え案内を始める。

 

「あっ、ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

慌てて追いかけてくる少女。

と、その時、

 

「だから………でだな………」

 

通り掛けにあるISの訓練施設から数人の生徒が出てきた。

少女は最初に聞こえた女子生徒の声には何の反応も示さなかったのだが、

 

「だからそのイメージが分からないんだよ」

 

「ッ!?」

 

続けて聞こえてきた“男子生徒”の声に激しく反応した。

 

「ん?」

 

紫苑は少女の妙な反応を気配で気付いて振り返ると、少女は足を止めてたった今出てきた男子生徒………一夏を見て固まっていた。

 

「…………どうした?」

 

紫苑は少女に声を掛けるが、少女は反応しない。

そして、ふらりと何かに引かれるように一夏の方へ一歩足を進め、

 

「いち…………」

 

やや裏返った声で一夏に声を掛けようとして、

 

「一夏、何時になったらイメージを掴めるのだ。先週からずっと同じところで詰まっているぞ」

 

「あのなあ、お前の説明が独特過ぎるんだよ。なんだよ、『くいって感じ』って?」

 

「…………くいって感じだ」

 

「だからそれがわからないって言って………おい、待てって箒!」

 

何故か足を止め、黙って2人を見送った。

紫苑は、

 

(箒って、絶対に指導者に向いてないな…………あれで分かったらマジで天才だぞ………)

 

2人の会話を聞いてそんな事を思っていた。

すると、止まっていた少女から妙な気迫を感じ、紫苑が振り向くと、

 

「ねえ………!」

 

「な、なんだ………?」

 

声が低くなり、明らかに不機嫌ですと言わんばかりの表情で彼女は口を開く。

 

「今の………一夏と一緒にいた女の子って………誰…………!?」

 

「箒の事か………? 一夏の幼馴染って聞いてるけど………って、一夏の事は知ってるのか?」

 

少女の言葉遣いから、少なくとも唯の知り合い以上の関係だと紫苑は推測する。

 

「ふぅん……………あの子が………………」

 

紫苑の質問には答えず不機嫌オーラを出し続ける少女は、そのまま一夏に声を掛けることは無く、紫苑に総合事務受付に案内する様に促す。

紫苑はそこまで案内すると、口だけの礼を言われ、少女は既に紫苑の事など眼中に無いとばかりにズカズカと受付へ向かって行った。

 

 

 

 

 

 

「というわけでっ! 織斑君クラス代表決定おめでとう!」

 

「「「「「「「「「「おめでと~!」」」」」」」」」」

 

パパパァンというけたたましい音が鳴り響き、クラッカーが乱射される。

 

「………………………」

 

で、このパーティーの主役である一夏はと言うと、ゲンナリした顔で席に座ってコップを掲げていた。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよね~。 同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

そんな事を言うクラスメイト。

因みに先程から相槌を打っている生徒は2組の生徒だったりする。

 

「人気者だな一夏」

 

箒が不機嫌そうに一夏に話しかけている。

 

「…………本当にそう思うか?」

 

「ふん」

 

「……………………」

 

その様子を眺めながら、鈍感だな一夏と他人事のように思う紫苑。

実際他人事である。

すると、

 

「はいはーい! 新聞部でーす! 話題の新入生、織斑 一夏君と月影 紫苑さんに特別インタビューをしに来ました!」

 

突然の言葉におお~っと食堂内が盛り上がる。

 

「あ、私は2年の黛 薫子。 よろしくね。 新聞部副部長やってまーす。 はいこれ名刺」

 

差し出された名刺を一夏と紫苑は流れ的に受け取ってしまう。

 

「ではではずばり織斑君! クラス対抗戦への意気込みを、どうぞ!」

 

ボイスレコーダーを突きだしながら一夏に迫る薫子と名乗った女子生徒。

 

「え~っと………まあ、なんというか、頑張ります」

 

「えー? もっといいコメントちょうだいよ~。 俺に触ると火傷するぜ、みたいなキメ台詞とか!」

 

「自分不器用ですから」

 

「うわ、前時代的!」

 

「じゃあ、まあ、適当に捏造しておくから良いとして………」

 

薫子はくるりと振り返って紫苑に迫ってきた。

 

「月影さんも何かコメント頂戴?」

 

すると、

 

「……………とりあえず何か質問してくれ。答えられることだったら答える」

 

そう返した。

 

「う~ん………そうだなぁ……………」

 

薫子は数ある質問の中からこれだというものを選び始める。

そして、

 

「………じゃあ、彼女はいますか?」

 

その瞬間、食堂に居た全員が紫苑に集中した。

 

「????」

 

いや、一夏だけは何が起こったか理解していないが。

 

「……………彼女と言うか…………永遠を誓い合った相手ならいるぞ」

 

紫苑は特に恥ずかしがりもせず、淡々とそう答えた。

紫苑にとってネプテューヌとの関係は何も後ろめたい事は無いため、堂々と言い切れる。

ぶっちゃけプラネテューヌの国民ほぼ全員の前で告白したようなものなので、今更クラスメイト所か生徒全員に知られようが紫苑にとっては大したことではないのだ。

その言葉を言った瞬間、わっと食堂全体が盛り上がる。

 

「嘘っ! 月影さん彼女いるの!?」

 

「いえっ! 永遠を誓い合った相手がいるといったわ!」

 

「じゃあ、婚約者!?」

 

等々言葉が飛び交う。

 

(……………婚約者っつーか、夫婦って言ってもいいんだがな……………)

 

そう思う紫苑だが、この日本でそんなことを言えばめんどくさい事になる事間違いないので紫苑は黙っている。

きゃーきゃー騒ぐクラスメイト達を紫苑は半ば呆れた目で見ている。

 

(…………よく考えれば、俺って14歳で結婚したことになるのか?)

 

今更ながらそんな考えが浮かぶ紫苑。

 

(まあ、ネプテューヌも見た目は俺と同年代だし、女神に年齢はあって無い様なものだから、守護者になった俺にもそれは適用されるだろ…………多分)

 

何故か考えが明後日の方に突っ走っていったので、紫苑は気を取り直した。

 

「これは捏造しなくても大丈夫だね! いいネタありがとっ!」

 

薫子はそう言うと、

 

「あ、序にセシリアちゃんもコメント頂戴」

 

「序ってどういうことですの!?」

 

薫子のセリフにセシリアが思わず突っ込む。

 

「コホン。 わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですね」

 

一度咳払いし、しかし満更でもなさそうな雰囲気のセシリア。

 

「ではまず、わたくしがどのように…………」

 

と、セシリアが言いかけたところで、

 

「ああ、長そうだからいいや。 写真だけちょうだい」

 

そんな理由で中断する薫子。

 

「さ、最後まで聞きなさい!」

 

セシリアは叫ぶが、

 

「いいよ、適当にねつ造しておくから。 よし、織斑君に惚れちゃったことにしよう」

 

「なっ、な、ななっ………」

 

薫子の言葉で真っ赤になるセシリア。

 

(当たってるよ、それ)

 

見事に図星を突かれたことを見抜く紫苑。

 

「何を馬鹿な事を」

 

突然一夏がそう言った。

一夏はセシリアを援護したつもりだったのだが、

 

「え、そうかなー?」

 

「そ、そうですわ! 何をもって馬鹿としているのかしら!?」

 

セシリアもそのセリフは我慢ならなかったのか薫子の言葉に続くようにそう言った。

一夏は何故自分が怒られるのか分かってない表情で首を傾げる。

 

(ああ、一夏って所謂超鈍感で唐変木なのか)

 

一夏の事をまた一つ理解する紫苑。

 

「だ、大体あなたは………」

 

「はいはい、とりあえず3人並んでね。 写真撮るから」

 

「えっ?」

 

「注目の専用機持ちと男子生徒だからねー。 3人一緒にもらうよ」

 

「そ、そうですか………そうですわね」

 

セシリアは一夏と一緒に写真を取れることに舞い上がっている様だ。

すると、

 

「俺はパス。俺は専用機持ちじゃないし…………何よりそういう写真は美男美女2人の方が絵になるだろ」

 

紫苑は最もらしい事を言って辞退する。

 

「う~ん………それもそうだね~………言っちゃ悪いけど月影さんって背が低くて一夏君達と一緒に撮るにはアンバランスだし」

 

「…………………」

 

自分で言っといてあれだが密かに傷つく紫苑。

その間に薫子はセシリアと一夏を握手させ、撮影準備に入る。

 

「それじゃあ撮るよー。 35×51÷24は~?」

 

「え? え~と、………2」

 

「ぶー、74.375でしたー」

 

一夏の答えにそう言いながらシャッターを切る薫子。

 

(何か意味あるのかその計算)

 

せめて最後の桁は2で終わる計算しろと紫苑は内心突っ込む。

すると、

 

「何で全員入ってるんだ?」

 

一夏が呟く。

そう、今の瞬間に紫苑を覗くクラスメイトが全員集結していた。

さり気に不機嫌なはずの箒もいる。

凄まじい女子高生の行動力である。

 

「あ、あなた達ねー!」

 

折角のツーショット写真が台無しになった事に思わず叫ぶセシリアだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「織斑君、おはよー。 ねえ、転校生の噂聞いた?」

 

紫苑が教室に入ると、クラスメイトが一夏に話しかけている所だった。

 

「転校生? 今の時期に?」

 

「そう、なんでも中国の代表候補生なんだってさ」

 

「ふーん」

 

(……………中国の転校生………もしかして昨日の女の子か?)

 

その話を耳にして、紫苑は昨日案内した少女を思い出す。

 

「あら、わたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」

 

「このクラスに転入してくるわけではないのだろう? 騒ぐほどの事でもあるまい」

 

「どんな奴なんだろうな?」

 

「む………気になるのか?」

 

「ん? ああ、少しは」

 

「ふん………」

 

「そうだね。 頑張ってね織斑君!」

 

「フリーパスの為にもね!」

 

「今の所、専用機持ちのクラス代表って1組と4組だけだから、余裕だよ」

 

楽しそうに話す女子達の話を遠巻きに聞いている紫苑。

その時、

 

「その情報、古いよ」

 

教室の入り口から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「鈴……? お前、鈴か?」

 

一夏が驚いたように呟く。

 

「そうよ。 中国代表候補生、凰 鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

紫苑がそちらを見ると、思った通り昨日の少女―――鈴音―――が腕を組み、片膝を立ててドアにもたれ掛かりながらそう宣言していた。

すると、

 

「何格好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」

 

「んなっ……!? なんてことを言うのよ、アンタは!」

 

(一夏………もう少し空気読んでやれよ………)

 

紫苑は呆れたように内心呟く。

そう思っていると、

 

「おい」

 

後ろから突然声を掛けられたので、鈴音は不機嫌そうに振り返り、

 

「何よ!?」

 

振り向き様に文句を言おうとした。

だが…………

 

パァンと言う音と共に、鈴音の頭に出席簿が炸裂した。

 

「もうSHRの時間だ。 教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん………」

 

そう、現れたのは千冬だったのだ。

 

「織斑先生と呼べ。 さっさと戻れ、そして入口を塞ぐな。 邪魔だ」

 

「す、すみません………」

 

流石に千冬には逆らえないのか、謝りながらドアの前を退く鈴音。

 

「また後で来るからね! 逃げないでよ! 一夏!」

 

そう言い残して鈴音は去ろうとするが、

 

「さっさと戻れ!」

 

「は、はいっ!」

 

千冬の一喝に、最後まで格好つけることが出来なかった。

因みにこの授業中、一夏と鈴音の関係を気にしていた箒とセシリアが授業に集中できず、何発も出席簿アタックを喰らっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ってたわよ! 一夏!」

 

昼、紫苑と一緒に学食にやってきた一夏の目の前に立ち塞がる鈴音。

 

「とりあえずそこ退いてくれ。食券出せないし普通に通行の邪魔だぞ」

 

動じないのか空気を読まないのか、一夏はそう言う。

 

「う、煩いわね! 分かってるわよ!」

 

慌てて避ける鈴音の手には、ラーメンが乗ったお盆がある。

 

「伸びるぞ」

 

「わ、分かってるわよ! 大体アンタを待ってたんでしょうが! なんで早く来ないのよ!」

 

一夏はその台詞に理不尽を感じている様だが、

 

(少しは察してやれよ………一夏)

 

鈴音も箒やセシリアと同じだという事に気付き、内心溜息を吐いた。

その後、何だかんだで席に着くと、

 

「鈴、何時日本に帰って来たんだ? おばさん元気か? いつ代表候補生になったんだ?」

 

「質問ばっかしないでよ。 アンタこそ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見たときびっくりしたじゃない」

 

はた目から見て仲のいいやり取りを交わす2人に遂に耐えきれなくなったのか、

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが…………」

 

「そうですわ! 一夏さん、まさかこちらの方と、つ、付き合ってらっしゃるの!?」

 

箒とセシリアがそう問いかけた。

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

 

「そうだぞ。 何でそんな話になるんだ…………? ただの幼馴染だよ」

 

一夏の言葉に思わず睨み付ける鈴音。

 

「………? 何睨んでるんだ?」

 

「何でもないわよ!」

 

なぜ鈴音が怒っているのか理解してない一夏。

 

「幼馴染?」

 

幼馴染と聞いて箒が怪訝そうな漏らした。

 

「ああ。 箒が引っ越したのは小4の終わりだったろ? 鈴が転校してきたのは小5の頭だよ。 で、中2の終わりに国に帰ったから、会うのは1年ちょっと振りだな」

 

箒にそう説明すると、一夏は鈴音に向き直り、

 

「で、こっちが箒。 ほら、、前に話しただろ? 小学校からの幼馴染で、俺の通ってた剣術道場の娘」

 

鈴音に箒を紹介する。

 

「ふうん、そうなんだ」

 

じろじろと箒を見る鈴。

逆に箒も負けまいと睨み返している。

 

「初めまして。 これからよろしくね」

 

「ああ。 こちらこそ」

 

穏やかに挨拶を交わす2人だが、2人の間で火花が散ったように見えたのは気の所為では無いだろう。

すると、

 

「ンンンッ! わたくしの存在を忘れてもらっては困りますわ。 中国代表候補生、凰 鈴音さん?」

 

セシリアが自己主張する様に咳ばらいをすると、そう発言する。

 

「……誰?」

 

「なっ!? わ、わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存じないの!?」

 

「うん。 あたし他の国とか興味ないし」

 

「な、な、なっ………!?」

 

セシリアは怒りで顔を赤く染めている。

 

「い、い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」

 

「そ。 でも戦ったらあたしが勝つよ。 悪いけど強いもん」

 

自信たっぷりにそう言う鈴音。

 

「い、言ってくれますわね……」

 

拳を握りしめながら対抗心を燃やすセシリア。

すると、

 

「………で、そっちのアンタは………」

 

鈴音は一緒に居た紫苑を覗き込むように見る。

 

「ああ、こっちはもう一人の男性IS操縦者の…………」

 

「あっ! 昨日の!」

 

一夏が紫苑を紹介しようとした所で鈴音が声を上げた。

 

「あれ? 紫苑の事知ってるのか?」

 

「昨日迷ってた所を受付まで送り届けただけだ」

 

紫苑は一夏の言葉にそう言う。

 

「あ~、昨日は悪かったわね。碌に礼も言わずに行っちゃって…………ここで改めてお礼を言うわ。ありがとう」

 

「どういたしまして………」

 

「え~っと………そう言えば名前聞いて無かったわね」

 

鈴音は紫苑の事を名前で呼ぼうとしたが、まだ聞いてないことを思い出した。

 

「月影 紫苑。歳は昨日も言ったが17歳だ。だからと言って敬語を使う必要は無いし、呼び捨てで呼んでも構わない」

 

「そう、じゃあ紫苑って呼ばせてもらうわ。私の事は鈴でいいわよ」

 

「分かった。これからよろしく頼む、鈴」

 

「オッケー、紫苑」

 

サバサバした性格の鈴は、年上の紫苑にも臆することなくタメ口で話すことに決めたようだ。

その後は、女三人寄れば姦しいというか、不毛な戦い(口喧嘩)が繰り広げられただけなので割合しておこう。

 

 

 

 

 

 

夜。

紫苑が鍛練を終えて寮の廊下を自室に向かって歩いていると、

 

「最っっっ低!! 女の子との約束をちゃんと覚えていないなんて、男の風上にも置けない奴! 犬に噛まれて死ねっ!!」

 

一夏の部屋からそんな大声が聞こえたかと思うと、一夏の部屋の扉が勢いよく開いて鈴音が飛び出してくる。

その際、紫苑とすれ違うが、

 

「……………………………」

 

その瞳から涙が零れていたのを紫苑は見逃さなかった・

思わず足を止めた紫苑は、走り去る鈴音の背中を見て、

 

「………………………やれやれ」

 

そう呟いて今来た道を引き返した。

 

 

 

鈴音は、寮の玄関近くにある休憩所の椅子に座って俯いていた。

 

「一夏の馬鹿…………」

 

呟く鈴音。

すると、

 

「……………ほれ」

 

そんな声と共に、目の前にハンカチが差し出された。

 

「えっ…………?」

 

鈴音が声を漏らして顔を上げると、そこに居たのは紫苑。

 

「し、紫苑…………なんで………」

 

何でここにいるのかと聞こうとしたとき、

 

「泣いてる女の子を放っておくほどろくでなしの男じゃないつもりだ」

 

そう言ってハンカチを差し出し続ける。

 

「あ、ありがと……………」

 

鈴音は素直にハンカチを受け取ると、涙を拭き、

 

「グスッ…………チーンッ!!」

 

あろうことか鼻までかんだ。

 

「………………そのハンカチはお前にやるから、返さなくていいぞ」

 

文句を言わなかった紫苑は褒められていいだろう。

鈴音が顔を上げると、今度は無言で缶に入ったミルクティーが差し出される。

 

「俺が適当に買ったものだから、好みじゃなかったらすまん」

 

「…………………ありがと」

 

鈴音は再び小さくお礼を言った。

紫苑はそのまま鈴音の隣に座り、自分の手に持っていた缶コーヒーのタブを開ける。

 

「で? 今度は一夏は何をやったんだ?」

 

そう尋ねた。

 

「そ、それは…………」

 

鈴音は言い淀む。

 

「別に無理に聞き出すつもりは無いが、吐き出した方が楽になることもあるぞ…………安心しろ、誰かに言いふらすつもりは無い」

 

無理に踏み込もうとはせず、一定の距離を保って話を聞こうとする紫苑に、鈴音は不思議と好感をもった。

 

「……………聞いてくれる?」

 

鈴音はポツリポツリと話し出した。

簡単にまとめると、鈴音は過去中国に帰ることになったとき、一夏と約束したらしい。

その内容が『料理が上達したら、毎日わたしの酢豚を食べてくれる?』という、要は『毎日私の味噌汁を~』というプロポーズの言葉を鈴音が自分なりにアレンジしたものだ。

それを一夏は、『鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を奢ってくれる』と間違って覚えていたらしく、鈴音は思わず一夏の頬を引っ叩いて罵声を浴びせて飛び出してきてしまったという事だ。

それを最後まで黙って聞いていた紫苑は、

 

「………………………なるほど」

 

内容は理解したと頷きながら呟く。

ただ、

 

「なあ、一つ質問なんだが…………」

 

気になったことがある紫苑は鈴音に問いかける。

 

「何よ………?」

 

「昔の一夏は今ほど鈍感じゃなかったのか?」

 

「ッ…………! そ、それは……………」

 

「どうなんだ………?」

 

「………………体育館裏に呼び出されて、『付き合ってください』と勇気を振り絞って告白した女の子に、『いいぜ………………買い物位』…………って言って無自覚に振るぐらいには鈍感だったわ…………」

 

「重症だな…………」

 

予想以上の一夏の鈍感さに紫苑は呆れる。

 

「それには同感…………」

 

鈴音も思わず頷いてしまう。

 

「でだ。そこまで鈍感な一夏に対して、『毎日私の味噌汁を~』という原典のままでも正しく伝わるかどうか怪しいのに、それをアレンジして更に分かり辛くした約束を、一夏が正しく意味を理解して受け止められると思うか? 因みに俺でも最初聞いた時は「んっ?」って一瞬だが首をひねったぞ。まあ、すぐに気付いたが………」

 

「そ、それは………………」

 

「確かに女の子の想いを理解できない一夏も悪いが、一夏の事をよく理解しているにも関わらず、分かり辛い言い方でそれを伝えようとした鈴にも、少なからず原因があると思うが?」

 

「う、ううっ…………で、でもっ……………」

 

「自分は一夏と仲が良いから、自分の気持ちは言わなくても分かってくれる、とでも思っていたか?」

 

「うぐっ…………!」

 

「それは自惚れという奴だ。俺も一夏とはこの学園に入ってからの短い付き合いだが、アイツの恋愛に対する異常な鈍感さはそれなりに理解してるつもりだぞ」

 

「じゃ、じゃあどうすれば良かったのよ!?」

 

「あそこまで鈍感な奴相手だと、ド直球に『好きだ』と告白するしかないんじゃないか…………? いや、それだけだと『友達として』とか受け取りそうだから、『1人の異性として好き』もしくは、『愛してる』とハッキリ言う位しか思いつかんな」

 

「そっ、そんな事言えるわけっ………!?」

 

「言葉にしないと伝わらないこともある。人生の先輩からのアドバイスだ」

 

「……………………」

 

「まあ、今の所一夏に引かれているのはお前を覗いて箒とセシリアの2人だけだし、その2人もお前と一緒でド直球に想いを伝えられるタイプじゃないから今すぐ関係が進展することは無いと思うが、それほどうかうかしてられないぞ」

 

紫苑はそう言って残った缶コーヒーを飲み干す。

 

「まあ、とりあえずは今すぐじゃなくていいから一夏を許してやることだな。喧嘩したままなのはお前も望むところじゃないだろう?」

 

「う、うん…………」

 

「なら、今日はもう寝た方が良い。一度寝て起きれば案外スッキリすることもある」

 

「………………………」

 

鈴音は少し俯いていたが、顔を上げると半分ぐらい残っていたミルクティーを一気に飲み干した。

それから戻したその顔は、どこかスッキリとした表情だった。

 

「はーっ! 何か言われた通り吐き出したらスッキリした! 紫苑、ありがとね。相談に乗ってくれて!」

 

鈴音は笑みを浮かべてそう言う。

 

「元気が出たのなら何よりだ」

 

紫苑がそう言うと、鈴音がジッと自分を見つめていることに気付いた。

 

「何だ?」

 

紫苑がそう聞くと、

 

「紫苑ってさ………結構いい男だよね!」

 

「は?」

 

「もし紫苑が今より背が高くて一夏より先に出会ってたら、惚れてたかも!」

 

鈴音は突然そんな事を言った。

紫苑は苦笑し、

 

「そいつは残念! 俺には永遠を誓い合った相手がいるからそれは無理だ」

 

「あははっ! そうなんだ!」

 

紫苑の言葉に鈴音は笑う。

 

「だけど、これだけは言えるわ」

 

「ん?」

 

「アンタが好きになって、アンタを好きになった相手は、きっと幸せになるわ!」

 

「そうかい、そう言って貰えるのは嬉しいね」

 

紫苑も笑みを浮かべる。

 

「じゃ、私はこれで!」

 

鈴音は先程まで落ち込んでいた態度が嘘のような軽い足取りでその場を離れた。

紫苑はそれを見送ると、

 

「…………………で、覗き見はシュミが悪いぞ?」

 

壁の柱の陰に向かって紫苑はそう言う。

 

「あら? バレてた?」

 

その言葉と共に、柱の影から楯無が現れる。

楯無は紫苑に歩み寄ると、

 

「優しいのね、紫苑さん?」

 

「聞いてたと思うが、泣いてる女の子を放っておけるほどろくでなしの男じゃないつもりだ」

 

「フフッ………そうですね。ねえ紫苑さん」

 

「何だ?」

 

「さっきの紫苑さん、まるで妹を慰めるお兄ちゃんみたいでしたよ?」

 

「そうか…………そうかもな…………」

 

紫苑は目を瞑って軽く笑う。

紫苑の脳裏には、妹の翡翠を慰めていた時の事が思い出されていた。

 

 

 

 

 

 




13話です。
今回はあまり盛り上がりが無かったかな?
色々と工夫してみましたが………
結果、テンプレが行き過ぎて盗作と言われないか心配です。
まあ、自分の過去作から多少?台詞をコピペしてますが…………
とりあえず次回は紫苑にまさかの急展開の予定。
お楽しみに。
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