超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
ネプテューヌ達との再会から暫くして……………
1週間で怪我を完治させた紫苑は千冬たちに微妙な顔で見られたがとりあえず学生として授業に復帰している。
アイエフは用務員として働いており、その真面目振りから中々好印象で見られている。
コンパは保険医としており、その持ち前ののほほんとした雰囲気と丁寧な治療は女子生徒達からも人気が高い。
特に布仏 本音という同じくのほほんとした雰囲気の女子生徒とは気が合うらしく、学食などで一緒に居る時に、5割増しさせたのほほんとした雰囲気を振りまいている。
そしてネプテューヌは……………………
「おおっと! 危ない危ない………! よし、ここっ!」
紫苑の部屋のベッドに寝っ転がりながら相も変わらずゲームに勤しんでいたりする。
因みにこのゲームだが、援助されている生活費から出した金で新たに買ったものだ。
その為に自炊等で今月の食費を浮かさなければならなくなったのだが、紫苑にとってはいつもの事なので、それほど苦では無かったりする。
それと楯無なのだが、紫苑が怪我を完治させてこの部屋に戻ってきた時には、既に部屋を引き払って居なかった。
なんでも、既に監視の必要性は無くなったから、という理由らしい。
なので、ネプテューヌは本来宛がわれている筈の部屋があるのだが、そこには殆ど戻らず、紫苑の部屋に入り浸っている。
まあ紫苑としては一緒に居られることも、授業中でも特に問題を起こすことなくゲームに集中してくれていることもありがたい事だ。
そんな日々が流れ……………
ある日、教室内では一つの噂で持ちきりだった。
「ねえ、あの噂聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「何々? 何の話?」
「学年別トーナメントで優勝すると、織斑君か月影君と付き合えるんだって」
「そうなの!?」
「マジ!?」
それぞれが言葉を漏らす。
因みに、噂の元は先日、箒が一夏に向かって、「優勝したら付き合ってもらう」という言葉を偶々聞いた女子生徒が流したことであり、噂の中で尾ひれが引っ付いて何故か紫苑もその噂の中に盛り込まれていた。
すると、一夏と紫苑が教室内に入ってくる。
「おはよう! 何盛り上がってるんだ?」
一夏が挨拶と共にそう尋ねると、
「「「「「「「「「「なんでもないよ」」」」」」」」」」
声を揃えてそう言われる。
一夏は首を傾げたが、すぐに千冬と真耶がやってきてHRを始める。
「ええとですね。 今日は転校生を紹介します。 しかも2名です」
真耶の言葉に、教室がざわめく。
そして、教室のドアが開き、2人の転校生が入室して来た。
「失礼します」
「……………」
クラスに入ってきた転校生を見たとたん、教室が静まり返る。
何故なら、入ってきた転校生の内1人が、男子の制服を身に纏っていたからだ。
「シャルル・デュノアです。 フランスから来ました。 この国では不慣れなことも多いかと思いますが、皆さんよろしくお願いします」
シャルルと名乗った男子の制服を着た金髪の転校生は笑顔でそう一礼した。
「お、男…………?」
誰かが呟く。
「はい。 こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を……」
その言葉に答えるように、シャルルがそう言いかけたその時、
「きゃ………」
誰かが声を漏らす。
そして次の瞬間、
「「「「「「「「「「きゃぁあああああああああああああああああああああっ!!」」」」」」」」」
歓喜の叫びが、クラス中に響き渡った。
「男子! 3人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形! 守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれて良かった~~~~~!」
女子生徒達が黄色い声を上げる中、紫苑は訝しむ様な視線をシャルルに向けていた。
(アイツ本当に男か?)
内心そう思う紫苑。
(声も高いし、顔も中性的からやや女子寄り。体格も線の細い男って言うよりも女っぽいし……………)
次々と男子にしては違和感を感じるところを挙げていく紫苑。
「あー、騒ぐな。 静かにしろ」
すると、鬱陶しそうに千冬がぼやく。
「み、皆さんお静かに! まだ自己紹介が終わってませんから~!」
真耶が必死に宥めようとそう言う。
もう一人の転校生は、長い銀髪に、左目には黒眼帯。
冷たい雰囲気を纏うその少女の印象は、『軍人』とも言うべきものだった。
「…………………」
その本人は、先程から一言も喋っていない。
ただ、騒ぐクラスメイトを、腕を組んで下らなそうに見ているだけだ。
しかし、
「……挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
千冬の一言で、いきなり佇まいを直して素直に返事をするラウラと呼ばれた転校生。
「ここではそう呼ぶな。 もう私は教官ではないし、ここではお前も一般生徒だ。 私の事は織斑先生と呼べ」
「了解しました」
そう言うと、ラウラはクラスメイト達に向き直り、
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
それだけ言って黙り込むラウラと名乗った少女。
「あ、あの………以上ですか?」
「以上だ」
真耶の問いかけにラウラは短く即答する。
その対応に冷や汗を流す真耶。
と、その時ラウラと一夏の目が合った。
すると、
「ッ! 貴様が……」
ラウラがつかつかと一夏の前まで歩いていき、
バシンッ、と乾いた音が響いた。
ラウラが一夏の頬に平手を見舞ったのだ。
「う?」
一夏は一瞬、何が起きたのか分からず呆然としていた。
「私は認めない。 貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
ラウラはそう言い放つ。
「いきなり何しやがる!」
我に返った一夏はそう叫ぶが、
「フン……」
ラウラは一夏を無視し、つかつかと歩いて行き、空いている席に座ると、腕を組んで目を閉じ、微動だにしなくなる。
「あー………ゴホンゴホン! ではHRを終わる。 各人はすぐに着替えて第二グラウンドへ集合。 今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。 解散!」
一夏は腑に落ちなかったが、千冬がそう言ってHRを終了させたため、我慢するほかない。
何故ならば、すぐにこの部屋で女子が着替えを始めるからだ。
「おい、織斑、月影。 デュノアの面倒を見てやれ。 同じ男子だろう」
すると、シャルルが一夏の前に行き、
「君が織斑君? 初めまして。 僕は………」
「ああ、いいから。 とにかく移動が先だ。 女子が着替え始めるから」
一夏に自己紹介をしようとすると、一夏がそう言って中断させ、シャルルの手を取ると、
「ひゃっ?」
シャルルが軽く驚いた反応を見せる。
その反応に対し、やはり怪訝な目を向ける紫苑。
「紫苑、行くぜ」
「………ああ」
シャルルに対し、ますます疑惑が深まる紫苑だったが、とりあえず授業に遅れるわけにはいかないので返事をして揃って教室を出る。。
その道中で、一夏はシャルルに説明を始めた。
「とりあえず男子は空いているアリーナの更衣室で着替え。 これから実習の度にこの移動だから、早めに慣れてくれ」
「う、うん………」
やや困惑していたシャルルが頷く。
すると、
「ああっ! 転校生発見!」
「しかも織斑君と月影君も一緒!」
同学年の他クラスだけでなく、2、3年のクラスからも男子転校生の噂を聞きつけた生徒達がやってきたのだ。
「いたっ! こっちよ!」
「者共、出会え出会えい!」
まるで武家屋敷のような掛け声をする生徒達。
「織斑君や月影君の黒髪もいいけど、金髪っていうのもいいわね」
「しかも瞳はエメラルド!」
「きゃああっ! 見て見て! 織斑君とデュノア君! 手繋いでる!」
「日本に生まれてよかった! ありがとうお母さん! 今年の母の日は河原の花以外のをあげるね!」
叫びながら3人を追ってくる生徒達。
「な、何? 何で皆騒いでるの?」
状況が飲み込めないシャルルが一夏に説明を求める。
「そりゃ、男子が俺達だけだからだろ」
「………?」
言われたことが理解できないのか、首を傾げるシャルル。
(……………それを理解できないのか?)
「いや、普通に珍しいだろ? ISを操縦できる男って今の所俺達しかいないんだろ?」
一夏がそう言うと、
「あっ! ……ああ、うん。 そうだね」
シャルルは忘れていたことを思い出したかのように慌てるそぶりを見せた。
「それに、ここの女子達って、男子と極端に接触が少ないから、ウーパールーパー状態なんだよ」
「ウー……何?」
「20世紀の珍獣。 昔日本で流行ったんだと」
「ふうん」
そう言いながらも追いかけてくる女子達から必死で逃げる3人。
捕まったら質問攻めで、授業に遅れることは確実だろう。
遅刻するのは追いかけている生徒達も同じだろうが、教師は同じではない。
何せ、紫苑達の担任は千冬なのだ。
もし遅れたりすれば、千冬から容赦ない制裁が下るだろう。
そうならない為に、一夏は必死で逃げ続ける。
だが、何時先回りしたのか、大勢の女子生徒が更衣室への最短距離の道を塞いでいた。
「げっ!?」
一夏は声を漏らすが、
「じゃあ一夏、後は頑張れ。授業に遅れないようにしろよ」
紫苑はそう言うとあろうことか道を塞いでいる女子たちに向かって加速する。
「って、紫苑!?」
紫苑の行動に驚愕する一夏。
「来るわよ皆!」
「捕獲準備!」
「来なさい月影君!」
「逃がさないわ!」
自分達の方に向かってくる紫苑に対し、数で攻めて捕まえようとする女子達。
その時、
「……………シェアリンク」
紫苑はボソッと呟き、ネプテューヌとのリンクの結び付きを強め、身体能力を上げる。
次の瞬間、紫苑は地面を蹴り、
「えっ!?」
「嘘ッ!?」
連続前方宙返りを決めながら女子の頭上を通過する。
そのまま女子達の後方にシュタっと着地すると、そのまま何事も無かったかのように駆けだした。
「「「「「「「「「「…………………………」」」」」」」」」」
その様子をポカーンと眺める一夏を含めた一同。
だが、一夏が一瞬早く我に返り、逃走を再開したのだった。
「では、本日から格闘及び射撃を含む実戦訓練を開始する」
「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」
結局一夏達は少し遅れて到着し、千冬の出席簿アタックの餌食となっていた。
とはいえ、そんな事は関係なしに授業は進む。
「まずは戦闘を実演してもらおう。 凰! オルコット!」
「はい!」
「はい!」
千冬に指名され、鈴音とセシリアは返事をする。
「専用機持ちならすぐに始められるだろう。 前に出ろ!」
千冬にそう言われ、
「めんどいなぁ………何で私が………」
「はぁ~、なんかこういうのは、見世物のようで気が進みませんわね………」
2人はぶつくさ言いつつ前に出る。
そのまま千冬の傍を通りすぎるとき、
「お前たち少しはやる気を出せ。 あいつにいいところを見せられるぞ」
一夏に視線を向けつつそう小声で言った。
「「はっ!」」
それに気付いた2人は態度を一転、
「やはりここはイギリス代表候補生、わたくしセシリア・オルコットの出番ですわね!」
「実力の違いを見せる良い機会よね。 専用機持ちの」
やる気満々にそう言った。
その様子に、
「今、先生なんて言ったの?」
シャルルが一夏に尋ねる。
「俺が知るかよ……」
一夏はそう言うが、
「簡単に予想できるけどな…………」
一夏とは反対の方向を向いて、紫苑が呟いた。
「それでお相手は? 鈴さんの相手でも構いませんが?」
「フフン。 こっちのセリフ。 返り討ちよ」
セシリアと鈴が牽制し合う
「慌てるな、馬鹿共。 対戦相手は………」
千冬がそう言いかけたところで、キィィィィィィィィンという何処からか空気を切り裂く音が聞こえた。
「ああああああああああああああああああああああああっ!!」
聞こえてきた声に空を見上げると、
「ああああああーーーーっ! 退いてくださいーーーーっ!!」
量産型IS『ラファール・リヴァイヴ』を纏った真耶が一直線に飛んできた。
しかも、様子を見るに操縦をミスって操作不能らしい。
そして、落下地点にはお約束のように一夏がいた。
その周りに居た女子生徒たちは蜘蛛の子を散らすように逃げて行く。
そして……………
「え? ………ああああああーーーっ!!??」
そのまま一夏に激突。
砂煙が舞う。
「………う~ん…………何かデジャヴ?」
空から降ってきた人に直撃するというパターンは既に過去3度遭遇しているので紫苑は特に動揺すること無くそう呟く。
因みに、その犠牲者は全てノワールだが。(内1回は別世界のノワールなので正確には違うが)
砂煙が晴れてくると、これまたお約束のように真耶を押し倒すような格好になっている一夏の姿。
しかも、一夏の右手は真耶の胸の上にある。
「あ、あの………織斑君……?」
「え………? あっ!」
頬を染める真耶に声をかけられ、自分の体勢に気付いた一夏が顔を赤らめる。
「こ、困ります……こんな……あ、でも………このままいけば織斑先生が義理のお姉さんってことで……それは、それでとても魅力的な……」
「うわっ!」
とんでもない方向に暴走する真耶から、慌てて一夏は離れる。
その瞬間、先程まで一夏がいた場所をビームが通り過ぎた。
「ッ!?」
一夏が恐る恐るそちらを向くと、額に青筋を浮かべたセシリアの姿。
「オホホ、残念ですわ。 外してしまいました」
満面の笑みを浮かべてそう言うセシリア。
(当たってたら死ぬって事理解してんのかね?)
嫉妬で軽率に生身の人間に向かってレーザーを撃ったセシリアに紫苑は疑問を覚える。
更に続けて、ガキィィィンと、何かが連結される音が聞こえる。
「いいっ!?」
一夏がそちらを向くと、2本の双天牙月を連結させ、振りかぶる鈴音の姿。
「一夏ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
鈴音は、躊躇いなく一夏に向けてそれを投擲した。
(だから直撃したら死ぬっての)
だが、紫苑はその心配はいしていなかった。
何故なら、回転しつつ一夏の首目掛けて投げられたそれはドン!ドン!と2発の銃弾により弾かれ、地面に刺さったのだった。
見れば、真耶がライフルを構えており、真耶が今の射撃を行ったのは一目瞭然だった。
「織斑君。 怪我はありませんか?」
真耶がいつも通りの笑顔で、ニッコリと尋ねてくる。
「は、はい………ありがとうございます」
助けられた一夏も含め、殆どの生徒が唖然としていた。
いつものドジな真耶からは想像できないような、見事な精密射撃であったからだ。
「山田先生は、元代表候補生だ。 今ぐらいの射撃なら造作もない」
「む、昔の事ですよ。 それに候補生止まりでしたし………」
千冬の褒め言葉に、真耶は照れたのかそう言う。
「さて小娘共、さっさと始めるぞ」
セシリアと鈴音に向かって千冬はそう言う。
「えっ? あの、2対1で?」
「いや、流石にそれは……」
セシリアと鈴音は遠慮しがちにそう言うが、
「安心しろ。 今のお前たちならすぐ負ける」
千冬はそう言った。
流石にその言葉にはカチンと来たのか表情を変える。
すると、千冬は手を上げ、
「では…………始めっ!!」
振り下ろすと共に開始の合図を出した。
上昇する3人。
模擬戦を開始すると、
「デュノア、山田先生が使っているISの解説をして見せろ」
千冬がシャルルにそう言う。
「あ、はい。 山田先生が使っているISは、デュノア社製『ラファール・リヴァイヴ』です。 第2世代開発最後期の機体ですが、そのスペックは、初期第3世代にも劣らない物です。 現在配備されている量産ISの中では、最後発でありながら、世界第3位のシェアを持ち、装備によって、格闘、射撃、防御といった、全タイプに切り替えが可能です」
丁度、シャルルの説明が終わった時、真耶の放ったグレネード弾が、セシリアと鈴音に直撃。
2人は地上に墜落した。
「ううっ………まさかこのわたくしが………」
「あんたねぇ………何面白いように回避先読まれてるのよ!」
「鈴さんこそ、無駄にバカスカと撃つからいけないのですわ!」
責任を擦り付け合う2人。
その時、真耶がゆっくりと地上に降りてくる。
「これで諸君にも、教員の実力は理解できただろう。 以後は敬意をもって接するように」
千冬はそう言うと、
「次はグループになって実習を行う。 リーダーは専用機持ちがやること。ただし、月影はラファールの組に入れ! では、分かれろ!」
千冬は紫苑のトラウマの事も考えてそう指示を出す。
それぞれのグループに分かれるが……………
「織斑君! 一緒に頑張ろ!」
「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ~!」
やはりと言うべきか一夏とシャルルの組に生徒が集中する。
そんな生徒たちの姿を見ていれば、千冬の雷が落ちるのも当然であった。
昼。
「おーい、紫苑!」
一夏が紫苑に声をかけてきた。
「一夏?」
紫苑が一夏に向き直ると、
「今日、屋上で飯食わねえか?」
そう言ってきた。
「別に構わないが…………ああ、ネプテューヌ達も一緒になるけどいいか?」
「おう。皆で食べた方が楽しいもんな!」
「それじゃあ、後で屋上に行くから」
「ああ」
そう言って紫苑は一旦一夏と別れると、ネプテューヌ達との合流に向かった。
そして屋上。
「…………どういうことだ?」
「ん?」
箒が開口一番にそう呟いた。
「天気がいいから屋上で食べるって話だったろ?」
「そうでなくてはな…………」
箒が呟きながら視線を横にズラすと、そこにはセシリア、鈴音、シャルル。
そして、今の反応で大方の事情を察した紫苑、ネプテューヌ、アイエフ、コンパが苦笑する姿があった。
「せっかくの昼飯だし、大勢で食った方がうまいだろ? それにシャルルは転校して来たばっかりで右も左も分からないだろうし…………」
「そ、それはそうだが……………」
箒の言葉で分かるだろうが、本来この昼食は箒が一夏を誘ったものであり、箒としては一夏と『2人きり』の昼食を過ごしたかったのだが、そこは全く空気を読まない一夏クオリティー。
シャルルを始めとして、セシリアや鈴、果ては紫苑にまで声を掛け、この通り2人きりとは程遠い賑やかなランチタイムとなってしまったのである。
「…………ねえシオン。イチカって、本当にホウキの気持ちに気付いて無いの?」
アイエフが小声で紫苑に訊ねる。
「信じられんかもしれんが本当だ。見ればわかるかもしれんが、箒と同じくセシリアや鈴の気持ちにも、全く気が付いてない」
「信じられないほどの鈍感ですぅ」
「っていうかさ、さっきから気になってたんだけど、あの金髪の子って、本当に男?」
やはりと言うべきか、ネプテューヌはシャルルの違和感に気付いたようだ。
「俺も怪しいとは思うが確証はない。とはいえ俺達に害が無ければ別に男だろうと女だろうと構わんが」
と、そこに
「何コソコソ話してるんだ?」
一夏が小声で話し合っている紫苑達に気付き、話しかけてきた。
「とりあえずこっち関係の話だ。話は終わったから早く飯を食おう」
一夏を誤魔化すために食事を催促する紫苑。
「それもそうだな………っと、そう言えばネプテューヌ達は初めて会うんだったよな。こっちはシャルル。新しくこの学園に来た転校生で、俺達と同じ男子だ」
「シャルル・デュノアです。よろしく」
シャルルは微笑みを浮かべながら自己紹介をする。
すると、
「私、ネプテューヌ! プラネテューヌの女神だよ!」
ネプテューヌが三本指のピースサインを決めながらそう言った。
「え? 女神…………?」
「あ~、気にするなシャルル。ネプテューヌの口癖みたいなものだからさ」
一夏が下手な誤魔化しでそう言う。
「えっ? う、うん…………」
シャルルも女神と言うのが信じられなかったのか、一夏の言葉に頷いてしまう。
「ぶ~。本当なのに………! まあいっか! よろしくね、しゃるるん!」
「しゃ、しゃるるん!? それ僕の事!?」
「そだよ。可愛いでしょ?」
「そ、そんな呼ばれ方をしたのは初めてだよ………」
初めての呼ばれ方に戸惑ったようだが、シャルルは特に嫌悪感を抱いてはいないようだ。
「私はアイエフよ」
「コンパですぅ!」
続けてアイエフとコンパも名乗る。
「こちらこそよろしくお願いします」
軽く会釈するシャルル。
一通り紹介が終わると、それぞれが弁当を広げ始めた。
因みに箒、セシリア、鈴音の間では既に火花が散っている。
「あの…………本当に僕が同席して良かったのかな?」
そんな3人の様子を見て、シャルルがそう漏らす。
「いやいや、男子同士仲良くしようぜ! 今日から部屋も一緒なんだしさ!」
一夏が笑いながらそう言うと、
「ありがとう………一夏って優しいね!」
シャルルが笑みを浮かべる。
その笑顔にドキリと動揺する一夏。
更に、
(……………今の笑顔………シャルルってやっぱり……………)
既にシャルルの性別に確信に近い推測を立てている紫苑。
「何照れてんのよ?」
一方、そんな一夏の様子を見て不機嫌になる鈴音。
「べ、別に照れてないぞ………!」
一夏はそう言うが説得力は全く無い。
すると、鈴音が持っていたタッパーの蓋を開けるとその中には、
「おっ! 酢豚だ!」
一夏が嬉しそうに声を上げる。
「そう、今朝作ったのよ。食べたいって言ってたでしょ?」
鈴音が自慢げにそう言うと、
「ンンッ!」
セシリアが自己主張する様に咳払いをする。
「一夏さん。わたくしも今朝は偶々偶然早く目が覚めまして、こういう物を用意してみましたの」
そう言って差し出されたのは、バスケットの中にとても綺麗に詰められたサンドイッチ。
見た目からしてとても美味しそうだ。
「イギリスにも美味しいものがあると納得していただきませんとね」
ただ、紫苑からすれば不自然なほどに綺麗で、料理本などに載っている写真の現物がそのままそこにあるかのような印象を受けた。
「へえ~、言うだけあるな。それじゃあこっちから…………」
しかし一夏は全く気にすろ素振りも見せず、見た目のままに美味しそうだと思ってたまごサンドに手を伸ばし、それを掴んで口に運ぶ。
すると、
「ッ!?」
一夏の顔が真っ青になる。
「いかが? どんどん召し上がってくださって構いませんわよ?」
セシリアは満面の笑みで一夏に勧める。
「あ、いや、その………」
一夏が戸惑っていると、
「ちょいと失礼」
紫苑がそう言って一夏の持っていた卵サンドの反対側の端を少し千切って口に運んだ。
「…………………………」
紫苑はそれを咀嚼し、その味をよく味わう。
その感想は、一言でいえばクソ不味い。
外観こそ綺麗だが、その中身は別物…………と言うより明らかに卵サンドには絶対に入らないであろう調味料や具の味がした。
「………………セシリア」
紫苑が重苦しい口調で呟く。
「は、はい………?」
セシリアが返事をすると、
「味見はしたか…………?」
「えっ? い、いえ………最初は一夏さんに味わってほしくて…………」
セシリアは顔を赤らめながらそう言うが、
「そうか……………気持ちも分からんことも無いが、本当においしいものを食べて欲しいと望む相手に料理を作る時は、必ず味見をすることをお勧めする。料理本の手順に自分なりのアレンジを加えた時や、完全な創作料理を作る時は尚更な…………」
「で、ですが、料理本の通りに作りましても、写真の様に綺麗にならないんですもの」
「それは当然だ。料理本の写真などには、更においしく見えるように写真を撮るときに手が加えられているんだ。料理本の通りに作っても、写真の通りに出来ることはまず無い」
「えっ!? そうだったんですの!?」
「ああ。だからまずは料理本の通りに作るところから始めると良い。残念ながら、今回の料理の評価は俺からすれば『もっと頑張りましょう』だ」
「は、はい…………」
論破されたセシリアは反省の態度を見せる。
「じゃ、じゃあ次は箒のを………」
一夏が話を切り替えるように箒に催促する。
「………私のはこれだ」
箒が弁当箱の蓋を開くと、その中にはご飯と弁当の代表的なおかずが敷き詰められた見事な料理があった。
「おお! 凄いな! どれも手が込んでそうだ!」
一夏が感心したようにそう言う。
「つ、ついでだついで! あくまで私が自分で食べるために時間を掛けただけだ」
箒は照れ隠しなのかそういう言い方をしてしまう。
「そうだとしても嬉しいぜ。箒、ありがとう」
「フ、フン…………!」
箒は顔を逸らすがその顔は妙に嬉しそうだ。
「そんじゃま、いっただっきまーす!」
一夏はそう言って唐揚げを口に運ぶ。
よく噛んで味わう一夏を、箒は緊張の眼差しで見つめていた。
そして、
「おお! 美味い! これってかなり手間がかかってないか!?」
その口から出た大絶賛に箒は顔を綻ばせ、味付けの説明をしていく。
すると、
「ねえねえシオン! 私達もお弁当早く!」
一夏達の騒動に気を取られ、紫苑はまだ弁当を広げていないことに気が付いた。
「ああ、悪い。今出すよ」
そう言って紫苑が後ろから前に出したのは大きめの三重の重箱。
それから4つに小分けされた保温容器だった。
紫苑がそれを広げると、
「うおお………! これもスゲェ…………!」
一夏が声を漏らす。
重箱には色とりどりのおかずの品々。
保温容器にはそれぞれ一人分ずつの温かいご飯が入っていた。
因みに紫苑の後ろにはまだクーラーボックスがあるが、それはまだ出さないようだ。
「悪いわねシオン。私達の分まで作って貰っちゃって」
「ありがとうですぅ」
アイエフとコンパがそう言う。
「別に大丈夫だよ。2人分作るのも4人分作るのも大して労力変わんないし」
紫苑はそう言って手を合わせる。
「それじゃ、いっただっきまーす!」
ネプテューヌがそう言うと、
「「「いただきます」」」
紫苑達も続くようにそう言った。
ネプテューヌは卵焼きに箸を伸ばし、口に頬張ると、
「ん~~~~~っ! やっぱりシオンの料理は美味しいね!」
本当に幸せそうな表情でそう言う。
「流石ね。また腕を上げたんじゃない?」
「美味しいですぅ!」
アイエフとコンパも絶賛する。
「む…………これは少し塩が多かったか?」
紫苑は紫苑で自分の料理の改善に余念がないらしい。
そんな風に本当に美味しそうに弁当を食べるので、
「な、なあ紫苑。俺も少し貰っていいか?」
味が気になるのか一夏がそう言ってくる。
「ああ、構わないぞ。他の皆も良ければどうぞ」
「じゃ、じゃあいただくわ」
紫苑の言葉に鈴音を筆頭にそれぞれが箸を伸ばす。
そしてそれを口に運ぶと、
「「「「「ッ!?」」」」」
全員が目を見開いた。
「何だこりゃ!? めっちゃ美味ぇ!!」
卵焼きを口に運んだ一夏が驚愕の表情でそう言うと、
「ホントだ! すごく美味しい!」
肉じゃがのジャガイモをフォークで刺して食べたシャルルが笑みを浮かべて絶賛し、
「な、何で唯の野菜炒めがこんなに美味しくなるのよ…………!」
鈴音が納得いかない表情で呟き、
「こ、こちらのハンバーグもとてもジューシーですわ!」
セシリアは上品に口に運んだものの、思わず口の中に食べ物が残ったまま感想を言い、
「ま、負けた……………!」
唐揚げを食べた箒は自分のものと比べて悔しそうに項垂れた。
「………………そこまで大袈裟に言う事か?」
紫苑としては、ネプテューヌに食べさせるものなのでいつも通り妥協はしなかったが、それでもそこまでオーバーリアクションを取るほどのものでは無いと思っていた。
「いやいや! 十分スゲーって!」
一夏がそう言う。
「まあ、褒められて悪い気はしないな」
大袈裟だと思いつつもそう言う紫苑。
すると、
「はい、シオン。あ~ん………」
ネプテューヌが箸で摘まんだ弁当のおかずを紫苑に差し出してくる。
「あ~………んっ………!」
紫苑はそれを躊躇なく受け入れた。
「「「なっ………!?」」」
箒、セシリア、鈴音が驚愕の声を漏らすが、紫苑は構わずに租借し、飲み込む。
「ああ、これってもしかして、日本ではカップルがする『はい、あ~ん』って奴なのかな? 仲睦まじいね~!」
傍で見ていたシャルルはそんな感想を零した。
すると、
「ネプテューヌ…………ナス嫌いな事は承知の上でおかずに入れていることは悪いと思うが、せめて人に押し付けるのは一口食べてからにして欲しいな…………これでも結構工夫してるんだぜ?」
「ううっ…………! だけど、ナスだけは駄目なの~! 臭いを嗅ぐだけで気分が………!」
「「「子供か!?」」」
ネプテューヌの『あ~ん』はただの嫌いな食べ物の押し付けだったことに、先ほど憧れのような感情を覚えていた3人は同時に突っ込んだ。
「相変わらずネプ子はナスが駄目なのね」
「あいちゃんも少し前まではナス嫌いだったですぅ」
「わ、私のはトラウマと言うか何と言うか…………今はちゃんと食べれるようになったわよ!」
「それもシオ君が美味しく料理してくれて、少しずつ慣らしていってようやくでしたですぅ」
コンパの言う通り、アイエフも少し前までナス嫌いだった。
因みに嫌いな理由として、ネプテューヌの様に味が駄目とかでは無く、アイエフは過去マジェコンヌに人質として捕まったことがあり、その際に嫌がらせとして生のナスをいくつも食わされたという壮絶な出来事があったのだ。
それがトラウマとなり、当初はナスを見るだけで取り乱す程であった。
それを紫苑が長い時間を掛けて少しずつナスの味に慣らしていき、最近になって、ようやく克服できたのだ。
因みに紫苑は同じメニューをネプテューヌに勧めたのだが、ネプテューヌのナス嫌いは改善されなかった。
賑わいを見せながら食事が進み、弁当箱が空になる。
すると、
「さて、最後は…………」
紫苑は呟くと後ろに置いてあったクーラーボックスに手を伸ばす。
その中から取り出したのは、
「ほら、デザートだ」
手作りのプリンであった。
「わ~い! プリンだ~!」
子供の様にはしゃぐネプテューヌ。
一口食べるたびに幸せそうな笑みを浮かべる。
「……………料理も出来て、デザートにも対応………」
それを見ていた鈴音が呟く。
「そう言えば、掃除もお手の物でしたわね………」
セシリアも呟く。
「家事スキルは高そうだな…………」
箒もやや悔しそうに紫苑を見た。
「……………こう見ると、紫苑ってかなりの優良物件よね?」
「……………既に既婚者ですが…………」
「……………主夫だな」
ネプテューヌが来てから紫苑の意外な一面を目の当たりにしてそのような感想を漏らすそれぞれ。
そんな事は露知らず、ネプテューヌは終始笑顔のままプリンを食べていた。
第16話の完成。
とりあえず今回はのほほんとした日常を。
さて、次回はどの様にシャルに絡ませようか…………(決まってますけど)
鈍感な一夏と違って既に色々と感付き始めている紫苑です。
目指せ、GW中にAルート完結(おそらく無理だが)
とりあえず次も頑張ります。