超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第20話 最後の思い出(サマーメモリー)

 

 

 

 

 

紫苑と一夏の決闘から10日ほど経った。

今日は臨海学校前の最後の週末の休みであり、紫苑にとってもIS学園で過ごす最後の休日となる。

紫苑達は、朝に集まってイストワールに定期報告をして、ゲートの準備状況が予定通り進んでいることを聞いた。

通信を終えると、

 

「シオン、今日が最後の休日らしいけど、こっちの世界で何か心残りは無い?」

 

アイエフがそう聞いてくる。

すると紫苑は、

 

「心残りと言うほどでもないけど、やっておきたい事があるから、今日は翡翠と出かける予定だぞ」

 

「シオン何処か出掛けるの? 私達も付いてって良い?」

 

ネプテューヌが期待に満ちた目を向けてくる。

 

「まあついてくることは良いけど……………別に楽しい所じゃないぞ?」

 

「………? 何処に行くの?」

 

「ああ、それは……………」

 

 

 

 

 

 

 

IS学園から電車で移動すること約2時間。

紫苑達は小高い丘の上にあるとある場所に来ていた。

そこは…………

 

「シオン…………ここってお墓よね?」

 

アイエフの言う通り、そこは長方形の石柱で出来た墓石がが立ち並ぶ墓地であった。

 

「ああ」

 

紫苑は頷いて墓地の中を歩いていく。

紫苑の手にはバケツや草取り、ブラシなどの掃除道具が。

翡翠の手には途中の店で買った花束が携えられていた。

紫苑は墓地の一角にある、長い間手入れがされていなかったのか雑草が生え、表面にコケが無数に生えた墓石の前で立ち止まった。

 

「まあ、3年間もほったらかしになってればこんなもんか………」

 

紫苑はその墓石を見てそうボヤいた。

 

「このお墓って…………」

 

コンパが不思議そうに呟くと、

 

「俺達の両親と………爺ちゃんと婆ちゃんの墓だ…………」

 

紫苑が遠い目で呟く。

 

「シオンの家族の…………」

 

流石のネプテューヌも、それを聞いてふざける気にはなれないらしい。

 

「さて、まずは綺麗にするか」

 

「うん」

 

紫苑の言葉に翡翠が頷き、

 

「私達も手伝うよ!」

 

「ええ」

 

「はいですぅ」

 

ネプテューヌ、アイエフ、コンパも墓掃除に加わった。

 

 

 

 

それから更に2時間ほどして…………

 

「ふう~~…………! やっときれいになったね!」

 

ネプテューヌの言う通り、雑草やコケだらけだった墓石は、見違えるように綺麗になっていた。

墓石の表面もしっかりと雑巾で磨かれており、ピカピカである。

紫苑達は最後に買ってきた花を活け、蝋燭と線香を立てた。

紫苑と翡翠は静かに合掌して目を瞑り、それを見たネプテューヌ達もそれに倣って同じように合掌して目を瞑った。

暫くして、

 

「…………父さん、母さん………爺ちゃん、婆ちゃん……………3年も放っておいてごめん…………ちょっと、色々あってさ…………」

 

紫苑は語り掛けるように呟く。

 

「翡翠が連れ去られて…………俺は異世界に飛ばされちゃって…………色々あったけど、今はこうして翡翠と一緒に居るよ」

 

「お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃん………久しぶり………翡翠だよ。私にとっては少し辛い3年間だったけど、ちゃんとお兄ちゃんが助けてくれたから、こうして無事だよ」

 

翡翠も同じようにお墓に話しかける。

 

「突然だけど………こうやってお墓参りに来れるのは、これできっと最後だと思う………もうすぐ俺達、ゲイムギョウ界って世界に行って、そこで暮らすことに決めたんだ…………」

 

「お父さんたちは心配するかもしれないけど、お兄ちゃんと一緒に頑張っていくから、きっと大丈夫だよ!」

 

紫苑も翡翠も微笑みながらそう語る。

すると、紫苑はネプテューヌを墓の前に連れて来て、

 

「それから紹介するよ……………この子はネプテューヌって言って、俺の大切な人。ビックリするかもしれないけど、ゲイムギョウ界じゃ俺達結婚してるんだ」

 

「初めまして! ネプテューヌだよ! よろしく!」

 

いつもの三本指のピースサインを決める。

 

「ネプ子…………墓前なんだからもう少し慎みなさいよ……………」

 

アイエフが呆れるように言う。

 

「え~? でもシオンの家族にも元気な姿を見せた方が良いでしょ?」

 

ネプテューヌがそう言うと、

 

「ああ、お前はそれでいいんだ」

 

紫苑が微笑む。

 

「………………じゃあ、もう行くよ…………大丈夫、これからも頑張っていくから………」

 

紫苑はそう言い残し、踵を返して墓前の前から立ち去り、翡翠やネプテューヌ達も後へ続く。

少し進んだ後、

 

「……………ん?」

 

何となく気配を感じたネプテューヌが後ろを振り返る。

すると、先ほどまで誰も居なかった墓石の両横に立つ、2組の男女の姿。

 

「…………………!」

 

ネプテューヌは思わず目を見開く。

片方は40代~50代ほどの夫婦と思われる男女。

もう片方は老夫婦と思われる年老いた男女だった。

その4人は半透明に透けており、老夫婦は優しく微笑み、もう一組の夫婦の妻の方は軽く手を振っている。

 

「あ………………」

 

ネプテューヌが思わず声を漏らしたとき、

 

「ネプテューヌ! 何やってるんだ!?」

 

紫苑が声を掛けてきて、ネプテューヌは一旦紫苑を見る。

その後にもう一度墓の方を振り返ったが、そこにはもう誰も居なかった。

 

「………………ううん、何でもない!」

 

ネプテューヌは紫苑にそう呼びかけると、もう一度墓の方に向き直り、微笑んでから一礼した。

その後すぐに踵を返し、紫苑達の後を追う。

夏の日差しが照り返し、墓石が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後……………

臨海学校へ出発の日の朝。

 

「……………この部屋も、今日で最後か……………」

 

紫苑は感慨深そうに呟く。

望まずに戻ってきたこの世界だが、たったの数ヶ月とは言え暮らしてきたこの部屋には多少の愛着は湧いている。

その部屋は、元々あまり私物は無かったが綺麗に片付けられており、紫苑の物は何も無い。

とは言え紫苑の手にも何も荷物は無い。

全部インベントリの中に収納してあるので紫苑は手ぶらで行けるのだ。

その時、部屋の扉が開き、

 

「お兄ちゃん、準備できた?」

 

廊下から翡翠が顔を出す。

 

「ああ……………」

 

紫苑は部屋を出て、もう一度部屋の中を見回してから扉を閉めた。

 

「……………行くか!」

 

「うん!」

 

紫苑の言葉に翡翠は頷き、部屋の前を後にした。

 

 

 

途中ネプテューヌ達と合流し、玄関に向かう紫苑達。

既に他の生徒達はバスの所に集まっているのか周りには誰も居ない。

紫苑達が玄関を出た所で、紫苑はふと気配を感じた。

 

「………ん?」

 

玄関の傍の木の影。

そこに誰かが居た。

紫苑がそちらを向くと、その陰からゆっくりと1人の少女が姿を見せた。

 

「……………紫苑さん」

 

「楯無…………」

 

木の影から現れたのは楯無だった。

その表情は、何かを躊躇しているかの様だ。

恐らく、姿を見せることも迷った上での行動だったのだろう。

楯無は何かを言い出しそうな仕草をしながらやはり言えないと止めてしまう行動を何度か繰り返す。

すると、

 

「私達は先に行ってるわね」

 

アイエフがそう言ってコンパと一緒に先に向かう。

ネプテューヌは一旦紫苑に歩み寄ると、

 

「シオン、ちゃんと応えてあげなきゃだめだよ! まあ、私としてはあの子は本気みたいだし、シオンが望むなら構わないよ」

 

そう言い残してアイエフとコンパの後を追う。

翡翠は楯無に駆け寄ると、そのまま正面から抱き着いた。

 

「刀奈ちゃん!」

 

「翡翠ちゃん…………」

 

「これでお別れかもしれないけど、私達、ずっと友達だからね!」

 

「…………うん!」

 

抱き合いながら言葉を交わす2人。

2人が離れようとした時、

 

「……………頑張って」

 

翡翠が楯無の耳元で囁いた。

 

「えっ…………?」

 

楯無が驚いた顔をしていると、

 

「時間も無いから私はこれで!」

 

翡翠は楯無から離れると、最後に手を振ってネプテューヌ達の後を追うように駆け出した。

それを見送り、2人残された紫苑と楯無は見つめ合う。

楯無はそれでもまだ何かを躊躇していたが、

 

「あ~…………なんだ? 最後にお前に会えて良かったよ。せめて挨拶だけはしておきたかったからさ」

 

紫苑からそう切り出した。

 

「色々と世話になったな…………ありがとう」

 

紫苑はそう言う。

 

「いえ、そんな…………私はお礼を言われるような事は何も……………」

 

「俺が危険人物じゃないって事を何度も織斑先生に証明しようとしてたろ?」

 

「ッ…………!?」

 

その言葉に楯無は息を呑んだ。

 

「俺が早々に織斑先生から警戒心を解かれたのはお前のお陰だ。改めて礼を言う…………」

 

紫苑は楯無に対して頭を下げた。

 

「後は、何だかんだで知り合いが傍に居たのは俺としても精神的に助かった。短い間だったが…………お前との生活も、まあ、楽しかったよ」

 

そう言って紫苑は笑みを見せた。

 

「紫苑………さん…………」

 

「俺が伝えたかったのはこれだけだ。じゃあ………元気でな………」

 

紫苑はそう言って踵を返そうとした。

その時、

 

「………紫苑さん!」

 

楯無がハッキリとした口調で紫苑を呼んだ。

 

「…………………」

 

無言で楯無に向き直る紫苑。

 

「わ、私は……………私は……………」

 

楯無は何度か言い淀み、

 

「私は…………紫苑さんが好きです!」

 

遂にその想いを口にした。

 

「………………そうか」

 

「こんな事言われて、迷惑だって事は分かってます! 紫苑さんにはあの人が居るって…………! だけど、このまま何も言わずにお別れするのはきっと後悔すると思ったから…………だから…………!」

 

「………………ありがとう」

 

楯無の言葉に紫苑はまずそう言った。

 

「その気持ちは正直嬉しい。俺も楯無の事は嫌いじゃない………むしろ好きなんだろう………」

 

「…………………」

 

「だけど、俺が一番好きで愛しているのはネプテューヌだ。これは揺るぎの無い事実だ」

 

「…………はい」

 

改めて言われるとショックなのか、楯無は沈んだ表情で俯いてしまう。

紫苑はその様子を見てしばらく沈黙した後軽く溜息を吐き、

 

「………でだ。ここからが本題なんだが……………お前は、この世界を捨てるつもりはあるか?」

 

「えっ?」

 

思わぬ言葉に楯無は驚いた表情で声を漏らす。

紫苑は頭を掻きながら少し言いづらそうにして、

 

「あ~、まあ~、何と言うか…………日本に住む人間からすれば不純に聞こえるかもしれないが、ゲイムギョウ界では何故か女性の方が出生率が高くてな…………その所為で一夫多妻が認められているんだ………」

 

その言葉に、楯無は軽く目を見開いた。

 

「つまり、お前が俺達と一緒にゲイムギョウ界に来て、尚且つ2番目である事を許容できるなら…………お前の想いを受け取ることが出来るんだが…………」

 

紫苑はやや言いにくそうにそう言うと、

 

「…………………………」

 

楯無は目を瞑ってやや俯き、考える仕草をした。

暫くして目を開き、紫苑を見つめると、

 

「…………………それは出来ません」

 

首を横に振りながらそう答えた。

 

「………………まあ、そりゃ当然だな。自分でも最低な事言ってるって自覚はある」

 

紫苑は自嘲するような笑みを浮かべてそう言う。

だが、

 

「あ、いえ、違うんです!」

 

楯無は慌てた仕草で紫苑の言葉を否定した。

 

「紫苑さんが悪いんじゃないんです。もし私が普通の家の生まれだったら………きっと喜んでついて行ったと思います」

 

楯無はそう言って一呼吸置く。

 

「それなら何故?」

 

紫苑が尋ねると、

 

「紫苑さんも知っての通り、私の家は対暗部用暗部…………裏の世界に関わる家柄です……………そして、今の私は『楯無』の名を継ぐ更識家の当主……………もし私がすべてを捨てて紫苑さんについて行ったとしたら、当主の座は妹に移るでしょう……………私はあの子にそんな辛い重荷を背負わせて自分だけが幸せになるなんて事、出来そうにありませんから…………」

 

「…………………そうか」

 

楯無は何でもないようにそう言っているが葛藤の末の選択だという事は、紫苑にも分かっていた。

楯無は後ろを振り向く。

 

「これ以上話していると、決心が鈍りそうですから、この辺りにしておきますね。それでは紫苑さん、お元気で……………」

 

「わかった……………じゃあな………“刀奈”」

 

「ッ…………!」

 

紫苑は最後に楯無の本当名で別れを告げる。

紫苑はそのまま踵を返し、一度も振り返ることなくその場を後にした。

 

 

 

その場に残された楯無………いや、刀奈は、

 

「…………っく…………ヒック………紫苑………さん…………!」

 

その場に膝を着き、涙を流す。

すると、

 

「………………姉…………さん………………?」

 

刀奈に歩み寄る1つの人影があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑が暫く歩くと、ネプテューヌ達が待っていた。

 

「もういいの?」

 

「ああ」

 

ネプテューヌの言葉に紫苑が頷く。

 

「行こう」

 

彼らはバスに直行し、最後のIS学園を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今11時でーす! 夕方まは自由行動! 夕食に遅れないように旅館に戻ること! いいですねー!?」

 

「「「「「「「「「「は~~~~~~い!!」」」」」」」」」」」

 

真耶の呼びかけに、生徒達が答える。

我先にと砂浜に駆けだす。

7月の太陽が照りつけ、目の前には青い海が広がる。

臨海学校1日目は終日自由行動だ。

生徒達は持参した水着を着て、はしゃぎ回る。

大勢の生徒達が海の遊びを始める中、突如としてざわりと一角がどよめいた。

そのどよめきが広がり、他の生徒達も何事かとその大本に意識が向く。

するとそこには、

 

「この姿で水着になるのは、R-18アイランド以来かしらね?」

 

「俺はそこに行ってないから知らんが…………というか、この姿は長く持たないんじゃなかったのか?」

 

「あら? プロセッサユニットを展開しなければエネルギー消費は抑えられるから遊ぶ程度は可能よ」

 

「いつ調べたんだよ…………」

 

何故か変身した姿で水着を着て腕を組んでいるパープルハートとバーニングナイト。

バーニングナイトもヘッドギアを外しているのでその素顔は露になっている。

要は大人な美男美女のカップルなので他の生徒達の注目を集めまくっているのだ。

彼らの事を知るセシリアや鈴音達は…………

 

「う、羨ましいほどにお似合いのカップルですわね…………」

 

「前にも思ったけど、ネプ子の奴、なんであんなに胸が大きくなっているのよ!?」

 

セシリアは切望の眼差しを向け、鈴音は巨乳になったネプテューヌ…………パープルハートに対し恨みがましい視線を向ける。

 

「あはは………女神になると皆胸が大きくなるのかな?」

 

シャルロットはそう苦笑し、

 

「………………………」

 

ラウラはバスタオルグルグル巻きの状態で何も言わない。

 

「もしそうだとしたら羨まし過ぎるじゃない! ネプ子! 私にも女神のなり方教えなさい!!」

 

胸の大きさにコンプレックスを持つ鈴音は馬鹿な事(本人にとっては死活問題)を叫びながらパープルハートに向かっていく。

因みにその結果は、

 

「女神になったからと言って胸が大きくなるとは限らないわよ。全然変わらない人も居るし、逆に小さくなる子もいるわ」

 

の言葉であっさりと引き下がった。

因みにその後、ビーチバレーが行われたのだが、パープルハート、バーニングナイト、翡翠チームの圧勝だったことだけ記しておこう。

 

 

 

 

 

 

翌日。

問題が無ければ今日の昼頃には次元ゲートが開かれる予定であり、紫苑は今日の授業には出席せず、ネプテューヌ達と行動を共にし、ゲイムギョウ界へ帰還するはずだった。

だが、

 

「すまん月影。最後にお前達の力を借りたい」

 

千冬のその言葉で、物語は最終局面へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 






第20話です。
とりあえず今回は墓参りと楯無の決着ですね。
墓参りはとりあえず入れようと思っていた事。
楯無についてはこのルートでは失恋にしておきました。
まあ、所謂好感度が足りない状態だったわけです。
あと、一夫多妻制は自分か勝手に盛り込んだオリジナル設定なので悪しからず。
女性の出生率が高い云々は、アニメに出てきたのってモブを含めて殆ど女でしたから。
男(雄?)として出てきたのって、ネズミとロリコンとオカマだけだったので、男が圧倒的に少ないのかな?と。
さて、おそらく次回がAルート最終話。
それでは次回『ありふれた最終話(ノーマルエンド)』をお楽しみに。
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