超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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選択肢
>【紫苑の所へ行かない】




Bルート
第15話 迷子と落ちてきた女神(〇〇〇―〇)


 

 

 

 

 

 

 

「…………やっぱりダメ。戻ってこれる保証がないなら行けないよ………」

 

ネプテューヌはそう言って首を振る。

 

「それに………この国を放ってネプギアに押し付けちゃったら、きっとシオンにも怒られちゃうし………」

 

「ネプ子………」

 

「皆、ありがとう…………私の為にここまでしてくれて…………それと心配かけてごめんね。もう、大丈夫だから…………」

 

ネプテューヌは少し寂しそうに笑う。

 

「それに信じてるから………シオンはきっと、私の所に戻って来てくれるって…………」

 

それはネプテューヌの嘘偽りなき本心。

 

「だからそれまで…………皆に支えて欲しいな」

 

「お姉ちゃん…………」

 

「はぁ………分かったわよ。アンタがそう言うならちゃんと手伝ってあげる。けど、もう無茶は止めなさいよ。見てられないんだから………」

 

「私もお手伝いするです!」

 

それぞれが頷く。

 

ネプテューヌは窓から空を見上げ、

 

「信じてるからね………シオン」

 

願うようにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

クラス対抗戦から10日後。

 

「うぐっ……………」

 

紫苑はベッドで目を覚ました。

 

「こ、ここは……………?」

 

紫苑は首だけで周りを確認する。

 

「………医療室か…………」

 

IS学園の一区画にある、最先端の病院と同等の設備が整えられている場所だ。

 

「お、俺は……………ッ!」

 

意識が覚醒したばかりで記憶が混乱していたが、徐々に気絶する前の事を思い出していき、

 

「翡翠ッ…………! ぐっ!?」

 

勢い良く身体を起こすと同時に痛みが走り、紫苑は腹を押さえるように蹲るが、

 

「ぐぅぅっ………! ひ、翡翠…………!」

 

痛みを堪えて紫苑は立ち上がり、壁に手を着きながら歩き出す。

 

「はぁ………はぁ………ぐっ!」

 

息を切らせながら時折激しく襲ってくる痛みを堪え、紫苑は廊下に出ると校舎の出口に向かって歩き始める。

すると、

 

「おい、紫苑!? 何やってるんだよ!?」

 

紫苑の様子を見に来たのか、一夏、箒、セシリア、鈴音の4人と出くわし、4人は慌てて紫苑に駆け寄るとその身体を支える。

 

「何やってるんですか!?」

 

「なんて無茶な事を!」

 

「アンタ自分の状況分かってんの!?」

 

箒、セシリア、鈴音がそれぞれ声を掛ける。

 

「ぐ………離せ………! あいつを………翡翠を助けないと………!」

 

支えてくれる手を振り解こうとしながら紫苑は更に前へ歩き出そうとする。

 

「紫苑! 気持ちは分かるが今は………!」

 

「それ以上動くと本当に死ぬわよアンタ!」

 

一夏と鈴音がそう言って止めようとするが、紫苑は止まらずに歩き続けようとする。

 

「離せ………! 俺は……………今度こそアイツを……………! 例え俺が死んだとしても…………!」

 

今の紫苑は翡翠に会ったことで、焦り、混乱、必死………あらゆる感情がごちゃ混ぜになり、正常な判断が出来ない状態だった。

このままでは、本当に死ぬまで止まらない可能性がある。

しかし、それも仕方ないだろう。

大切な家族を想って必死になる者を止められるのは、その者にとって同等以上に大切な存在の声だけなのだから。

故に、

 

「ああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

突如として聞こえた幼い少女のその声に、紫苑は反応した。

同じように突然聞こえた声に驚いた一夏達も振り返る。

 

「ああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

そこには彼らを指差しながら大声で叫ぶ、明るい茶髪の5歳位の女の子だった。

 

「だ、誰この子?」

 

「さ、さあ………?」

 

「どこから迷い込んだんでしょう?」

 

鈴音が困惑したように少女を指差し、箒とセシリアが同じように困惑しながら声を漏らす。

すると、次の瞬間その少女は驚愕の一言を言い放った。

 

「ぱぱーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

「「「「パパぁっ!?」」」」

 

自分達を指差しながらパパ呼ばわりする少女に一夏達は驚愕する。

すると、

 

「ピーシェ…………!?」

 

紫苑が目を見開き、驚愕した表情で少女に応えた。

 

「「「「ピーシェぇっ!?」」」」

 

その少女の名を口にした紫苑に再び驚愕する一夏達。

すると、

 

「ぱぱっ………!!」

 

その少女―――ピーシェ―――が紫苑に向かって駆け出してくる。

 

「ピーシェ………!」

 

先程まで説得しても止まらなかった紫苑が足を止め、逆にピーシェの方に歩き出そうとしていた。

 

「ぱぱぁっ………!」

 

ピーシェは一直線に紫苑へ向かってくる。

その姿は本当に父親へ駆け寄ろうとしている少女の様。

そして、もうすぐ感動的に抱擁を交わすかと思われた。

その時、

 

「……………はっ!」

 

紫苑の脳裏に戦慄が走る。

瞬間、紫苑は咄嗟に一夏の襟首を掴む。

 

「へっ?」

 

一夏は素っ頓狂な声を漏らすが、

 

「すまん一夏!」

 

一夏を自分の前、即ちピーシェとの直線状に一夏を設置し、紫苑は僅かにその直線状からズレる様に移動した。

ピーシェの前に引っ張り出された一夏は思わず飛び込んでくるピーシェを受け止めようとして……………

 

「とおっ!」

 

ピーシェの強烈な全身ぶちかましを腹部に受けた。

 

「ぐふぉぁっ…………!?(ぐふぉぁっ…………!?)(ぐふぉぁっ…………!?)(ぐふぉぁっ…………!?)

 

何故かその瞬間、一夏の絵柄が格闘マンガっぽくなり、一夏の声にエコーが掛かる。

一夏はそのぶちかましに耐えきれずに後ろに吹っ飛び、ゴロゴロと数回回転して床にバッタリと倒れた。

当然ながら、一夏は完全に目を回している。

 

「きゃぁあああああああああっ!? 一夏さぁぁぁぁぁぁんっ!?」

 

「い、一夏ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「ちょ、今吹っ飛んだわよ!? どんな力してんのこの子!?」

 

悲鳴を上げる箒達。

 

「うゆ?」

 

いつもの紫苑なら受け止めてくれると思っていたピーシェは吹き飛んだ一夏に首を傾げる。

すると、その頭にポンと手が置かれ、

 

「すまんピーシェ。俺はいま結構な重傷でな…………お前の一撃を受けるとマジで死にかねないんだ。俺に対するスキンシップは自粛してほしい」

 

言い聞かせるように紫苑が言った。

 

「うん、ぱぱ!」

 

分かっているのか分かってないのかピーシェは元気よく頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………で? 一体誰なんだその子は?」

 

あの後医療室に連れ戻された紫苑はベッドで上半身を起こした状態で座っており、その膝の上にはピーシェが乗っかっている。

そして、紫苑が目を覚ましたという報告を受けて、千冬と真耶が医療室に来たのだが、見知らぬ少女がいて、しかも紫苑をパパと呼ぶものだから、状況を理解できない千冬が紫苑に説明を求めていた。

 

「あ~っと…………とりあえず、この子の名前はピーシェです。ピーシェ、ご挨拶」

 

すると、ピーシェはシオンの膝の上で腰に手を当てながら胸を張り、

 

「ぴーだよ!」

 

元気な声でそう言った。

 

「…………で? お前の事をパパと呼んでいるらしいが、お前の本当の子供と言う事などはないだろう?」

 

紫苑の年齢とピーシェの年齢を踏まえて千冬はそう断言する。

 

「ええ、まあ…………ピーシェは3年近く前に迷子だった所を保護して暫く一緒に暮らしたことがありまして………その時によく世話を焼いていたのでいつの間にか懐かれまして、それ以来パパと呼ばれるようになったんですよ」

 

そう言う紫苑は懐かしさとピーシェに会えた喜びで微笑みを浮かべていた。

パパ呼ばわりも満更ではないらしい。

 

「……………あと、その子は一体どこから迷い込んできた?」

 

千冬がそう聞くと、

 

「迷い込んできた………ではなく、突然現れた…………と言った方が正確でしょうね」

 

「突然現れた………? どういうことだ?」

 

「織斑先生は、俺が最初にIS学園に現れた時に言った事を覚えていますか?」

 

「最初に言った事……………? まさか、異世界が如何とかという話か?」

 

「はい。簡単に言えば、ピーシェも異世界の住人です。原因は分かりませんが、俺と同じようにこっちに転移してきてしまったんでしょう………」

 

「いや………しかしだな…………異世界などと言う話は……………」

 

「じゃあ聞きますが、俺はともかくとして、ピーシェみたいな小さい子供が故意かそうでないかは別として、IS学園に迷い込んで気付かないほど、IS学園の警備はザルですか?」

 

「む……………?」

 

それを言われると千冬は押し黙ってしまう。

IS学園の警備システムは世界でも最新のものが取り入れられており、単純に迷子が迷い込んできたぐらいなら直ぐに気付く筈なのだ。

それがあっさりと警戒網を潜り抜けて割と深部にある医療室まで気付かれずに迷い込むなど偶然でもありえない。

 

「でしたら、この施設内に突然現れた………って言う事ならそれもあり得ると思うんですけど?」

 

因みにIS学園は島にあるので、この島に来るルートは限られており、この島に来るだけでも唯の迷子が歩いてこれる…………なんてことは絶対に無い。

まあ厳密にいえばピーシェはただの子供ではないのだが、その頭の中身は5歳児とさほど変わりがないので問題ないだろう。

 

「だ、だが…………」

 

千冬は流石に信じられないようだが…………

 

「な、なあ、話が見えないんだが、異世界ってどういう事だ?」

 

一夏が紫苑にそう質問する。

 

「ん? 簡単に言えば、俺は元々この世界の生まれなんだが、IS学園に入学する1週間前までこの世界とは違う別の世界にいたんだよ。で、何が原因かは分からないが、こっちの世界に戻ってきちまったんだ。ピーシェともその異世界で出会ったんだよ」

 

厳密にいえば、ピーシェは更に別次元の世界の住人なのだが、そこまで話すと話が分かり辛くなるため黙っていた。

 

「べ、別の世界!?」

 

「そんなのが存在するの!?」

 

一夏と鈴音が驚いた声を上げる。

 

「ああ。因みにゲイムギョウ界って世界だ」

 

「ゲーム業界?」

 

セシリアが首を傾げる。

 

「ゲ・イ・ム・ギョウ界な?」

 

セシリアの間違いを訂正する紫苑。

 

「因みにその世界にあるプラネテューヌって国が、俺が身を寄せていた国で、今の俺の故郷だ」

 

ハッキリとそう言う。

 

「前も言ったが話が突拍子過ぎる。信じるに値する確証が無い」

 

千冬がそう言う。

 

「まあ、そうなんですけど……………ああ、そう言えばインベントリが使えましたね」

 

紫苑はそう言うと右手に刀をコールする。

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

「い、今どこから出したんだ!?」

 

「ISの量子化とは別物でしたわね………」

 

驚く一同。

 

「これはインベントリって奴です。まあゲームでよくあるアイテムボックスみたいなもんですね。ゲイムギョウ界じゃ有り触れたものなんですけど、こっちの世界にはこんなのありませんよね?」

 

そう言って紫苑は刀を収納する。

 

「む………う…………まあいい。とりあえずは、その話が本当だという仮定で話を進めよう」

 

千冬は半信半疑だが話を進めることにした。

 

「その子供が本当に異世界から来たのだとしたら、今のその子には身寄りが無いという事だな?」

 

「そうなりますね。できれば俺と一緒に住まわせたいんですけど…………ピーシェを抑えられる人材は限られますし…………」

 

「まあ、身寄りのない子供を放り出す程我々も鬼ではないが…………少なくともそれはお前の怪我が治ってからの話だな…………」

 

千冬は一呼吸置くと、

 

「そして、話は変わるがお前が眠っている間に一夏達から報告を聞いた。あの時現れたのは本当にお前の妹だったのか…………?」

 

千冬の言葉に、紫苑は俯くが、

 

「……………はい、間違いありません」

 

そうハッキリと言った。

 

「紫苑………その………なんていうかさ…………」

 

「その………き、気を落とさないでください………!」

 

「妹さんの事は………」

 

「えっと………その………」

 

一夏達4人が紫苑を励まそうとしているが、うまく言葉が出てこない。

気持ちは嬉しいが、逆にその事で妹の事を思い出し、紫苑の気持ちがどんどんとネガティブに傾いていこうとしていた。

すると、

 

「うゆ…………? ぱぱ、どうしたの?」

 

ピーシェが心配そうな表情を向けていた。

 

「ああ………死んだと思っていた俺の妹が生きていたんだ…………」

 

「ぱぱのいもーと?」

 

「そうだ…………その妹が………悪い奴らに捕まっているんだ…………」

 

紫苑はピーシェにも分かり易く説明する。

すると、

 

「…………たすける!」

 

「えっ?」

 

ピーシェが突然叫んだ。

 

「ぴー、たすける!」

 

真剣な表情でそう言うピーシェ。

ピーシェは紫苑の妹を助けると言っているのだ。

その言葉に一瞬呆気にとられる紫苑。

しかし、すぐにその真意を読み取ると、紫苑は微笑んだ。

 

「ああ………その通りだな…………捕まっているなら、助ければいいんだ…………」

 

紫苑はピーシェを優しく抱きしめる。

 

「ありがとうピーシェ。もう大丈夫だ…………そして妹を助ける時には、手伝ってくれるか?」

 

「うん! ぴー、手伝う!」

 

紫苑の言葉に迷わず応えるピーシェ。

紫苑はピーシェの前向きな心に救われたことに感謝を込めて、ギュッと抱きしめた。

少ししてピーシェから離れると、紫苑は千冬に向き直った。

 

「織斑先生、お願いがあります」

 

紫苑は真剣な表情で口を開いた。

 

「俺に、ISを貸してください。そして、それを自由にカスタマイズ出来る権利も」

 

そう言いながら頭を下げる紫苑。

 

「…………………………」

 

それを黙って見つめる千冬。

 

「ずっととは言いません。せめて翡翠を助け出すその時まで………!」

 

頭を下げ続けながら、そう言う紫苑。

 

「……………男性IS操縦者のデータは我々にも貴重なものだ」

 

「えっ?」

 

「何より、お前にISを専用機に近い待遇で貸し出すという話は初めからあった。まあ、言った所で断られるのが目に見えていたからお前まで話は通さなかったがな…………」

 

「織斑先生……………」

 

「ラファールを1機貸し出すように手配しておく。それと、後でデータを渡すからお前が望むカスタマイズの草案を作っておけ。その位なら寝たままでも出来るだろう。お前が完治するまでには仕上げるようにはしておこう」

 

「ありがとうございます…………!」

 

「ただし、稼働データの提出義務は発生する。その位は我慢しろ」

 

「はい」

 

千冬の言葉に紫苑は頷く。

 

「さて、ひとまず解散だ! 月影はこのまま身体を休めておけ、織斑達は寮の部屋へ戻れ! その子供は…………」

 

「ぴー、ぱぱといる!」

 

ピーシェは紫苑にしがみ付いて離れようとしない。

 

「まあ、今日ぐらいは一緒に居てやれ」

 

「了解です」

 

そう言って千冬は部屋の出口へと向かう。

すると出入り口の前で立ち止まり、

 

「お前の怪我は本来なら全治2か月以上の重体だ。死んでいてもおかしくなかった。大人しくベッドで寝ておけよ」

 

「は、はい…………」

 

その事実を聞き、我ながら無茶をしたと反省する紫苑。

自分が死んでいればネプテューヌも死んでいたのだ。

一時とは言えその事を忘れていた自分を恥じる。

目の前にいるピーシェの頭を撫でながら心を落ち着け、ひとまず体を休めようと思うのだった。

 

 

 

 

 

廊下を歩く千冬に、傍らにいる真耶が話しかけた。

 

「よろしかったのですか先輩? あの得体のしれない子を置いておいて………」

 

「異世界云々はまだ半信半疑だが、月影の知り合いだという事には嘘はあるまい。それに、あの子は本当に月影の事を父親として慕っている」

 

「まあ、それは私も否定しません。あんなに純粋な目をした子供が怪しいとは思えませんし」

 

「それに、月影の精神の安定の為にもあの子は必要だ。聞けば、重傷にも関わらず、月影は飛び出そうとして、一夏達が説得しても止まる様子が無かったと聞く。本当に死ぬまで止まりそうもなかった雰囲気の月影が止まったのは、あの子が現れたお陰だとも………おそらく、あの子は月影にとって妹と同じぐらい大切な存在なのだろう」

 

「そうですね。あの子を見る月影君の目は、本当に父親のようでしたよ」

 

「……………時に山田君。月影の怪我の様子はどうだ?」

 

千冬が突然話を変えた。

 

「………………正直信じられません。抉られた腕と足の筋肉は後遺症が残る心配が無いほどに治癒………いえ、再生が始まっています。それに、内臓や骨へのダメージの回復も、常人の倍以上のスピードで回復していってます。本来なら一ヶ月はベッドの上から動けない筈だったのに、無茶したとはいえ、もう歩き回ってましたからね」

 

「……………どう思う?」

 

「体質…………と言えばそれまでかもしれませんが、月影君の場合、如何にもその括りを超えてしまっているようにも思えます」

 

「生徒が無事だったことは喜ぶべきだが、また一つ月影に謎が増えてしまったな」

 

「そうですね……………それでも、月影君が悪い子とは思えませんよ?」

 

「それは私も分かっている…………」

 

千冬は真耶の言葉に言われるまでも無いと言わんばかりにぶっきらぼうに答え、そのまま歩いていった。

 

 

 

 

 

 

それから一ヶ月近くの時が流れ、紫苑の怪我もほぼ完治に近付き、間もなく復学できる頃になった6月初頭。

既に出歩けるようになっていた紫苑は、一夏に昼ご飯に誘われた。

その際、

 

「3人目の男性IS操縦者?」

 

「ああ、今日の朝転校してきたんだ。いやー、助かったぜ! お前が怪我で休んでるから、女子の注目が全部俺に集まってたからさ」

 

「そりゃご愁傷様」

 

「で、昼に屋上で皆誘って昼飯にしようと思うんだ。シャルルも………ああ、今言った転校生な。そのシャルルもまだこの学園に慣れてないだろうからさ、一緒に食って親睦を深めようと思うんだ」

 

「まあ、そう言う事なら構わんが………」

 

「よし、この後屋上に集合な。いやぁ、箒が昼飯誘ってくれて助かったぜ。皆で食べた方がうまいもんな!」

 

「………って、おい、それって」

 

「じゃあ、早く来いよ!」

 

一夏は紫苑の話を聞かずに行ってしまう。

 

「…………箒、ご愁傷様」

 

折角勇気を振り絞った恋する少女にそう言葉を贈ったのだった。

 

 

 

 

そして屋上。

 

「…………どういうことだ?」

 

「ん?」

 

箒が開口一番にそう呟いた。

 

「天気がいいから屋上で食べるって話だったろ?」

 

「そうでなくてはな…………」

 

不機嫌そうな箒を見て、

紫苑はやっぱりかと苦笑する。

要は箒は、一夏と『2人きり』で食事がしたかったのだ。

その為に弁当を作ってきたのだが、相変わらず鈍感の一夏はそれを理解せず、『皆で食べた方が楽しい』という個人的な考えで知り合いを誘いまくって今に至るのである。

紫苑はピーシェを伴って一夏達に合流する。

すると、

 

「おう、来たか紫苑。紹介するぜ。こっちが3人目の男性IS操縦者のシャルルだ」

 

一夏はそう言って隣にいる金髪の生徒を紹介する。

 

「君が月影君だね。僕はシャルル・デュノア。よろしくね」

 

「…………月影 紫苑だ。こちらこそよろしく頼む」

 

紫苑はそう言ってシャルルと挨拶を交わす。

だが、

 

(…………ほんとに男か、こいつ?)

 

シャルルの体格と雰囲気を見て違和感を感じていた。

 

(まあ、男でも女でもどっちでも構わんが…………)

 

紫苑はそう思うと、

 

「あと、こっちはピーシェだ」

 

傍らにいたピーシェを紹介する。

 

「ぴーだよ!」

 

ピーシェは片手を上げて元気よくあいさつする。

 

「うん、よろしくねピーシェちゃん。僕の事はシャルルって呼んで」

 

「しゃるろ………?」

 

ピーシェは首を傾げる。

 

「シャ・ル・ルだよ」

 

「う~………しゃるろ!」

 

ピーシェは上手く発音できないらしい。

 

「あはは、少し難しかったかな? いいよ、しゃるろで」

 

名前を上手く呼べなかったピーシェに対してシャルルは笑ってその呼び方でいい事を了承する。

少々騒がしいランチタイムが終わり、残りの時間で雑談をしていると、

 

「それでいきなり空から山田先生が降って来てさ。正直死ぬかと思ったぜ」

 

今日の授業での出来事を語る一夏。

 

「おほほ…………その時一夏さんは山田先生の豊満な乳房を鷲掴みにしていましたけどね……………!」

 

セシリアが異様なプレッシャーを放ちながらそう言う。

 

「そうねぇ…………相変わらずのラッキースケベ体質で安心したわ」

 

鈴音も顔は笑っているが目が笑っていない。

 

「な、何だよラッキースケベ体質って………!? 普通は空から人が落ちてくるなんて思わないだろう!?」

 

「そうねぇ………アンタの場合、あり得ないことがありえない風に重なって不埒な事をするんだもんねぇ…………」

 

鈴音は氷の様な眼で一夏を見続ける。

 

「空から人が落ちてきて直撃…………ね………」

 

紫苑は思わず呟く。

紫苑は過去3度その状況を目撃している。

しかもその下敷きになったのは3回ともノワールだ。(1回は別世界のノワールだが)

 

「あ~も~! 人が空から降ってきて直撃なんてもう2度と無いだろうからもういいだろ!?」

 

一夏は思わず叫んでその話を終わらせようとした。

 

「どいてどいて~~~~~~…………!」

 

「……………………一夏、白式を展開しろ」

 

「へっ?」

 

突然の紫苑の言葉に一夏は素っ頓狂な声を漏らす。

 

「死ぬぞ…………!」

 

「はっ?」

 

更に意味不明な言葉に一夏は声を漏らすが、

 

「どいて~~~~~~~~~~~~~っ!!」

 

何故か空から声が聞こえてくる。

一同が上を向くと、

 

「どいてぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!」

 

一直線にこちらに向かって落ちてくる少女の姿。

 

「のわぁあああああああああああああああああああああああああああああああっ!!??」

 

そして、その少女は狙ったように一夏に直撃した。

墜落の衝撃で砂煙が舞う。

 

「い、一夏さぁぁぁぁぁぁんっ!?」

 

「ちょ、今直撃!?」

 

「一夏ぁっ!? 無事か!?」

 

「い、一夏っ!?」

 

それぞれが慌てて様子を伺う。

砂煙が晴れてくると、

 

「う………うぐぐ…………」

 

地面に倒れて痙攣したようにピクピクと体を震わせている白式を纏った一夏。

ギリギリ展開が間に合ったらしく、生きてはいる様だ。

しかしそれよりも、

 

「あぁ、痛~い~…………」

 

一夏を下敷きにしている少女に全員の意識が集中した。

 

「だ、誰ですの…………?」

 

セシリアが思わず問いかける。

 

「ん~? あぁ~! あたしぃ~?」

 

自分に問いかけられているのだと気付いた少女がハッとしたように間延びした声で返事をする。

そしてゆったりとした動作で立ち上がる。

青みがかった腰まで届く紫の髪を三つ編みにした少女は笑みを浮かべ、

 

「あたしは~、プルルートっていうの~! プラネテューヌの~、女神だよ~!」

 

「「「「…………………ええええええええええっ!?」」」」

 

いきなり『女神』発言した少女に箒達は盛大に驚く。

だが、

 

「あーーーーーーっ! ぷるると!」

 

ピーシェが少女を指差して叫んだ。

すると、

 

「あ~! ピーシェちゃんだ~! 探したよ~?」

 

その少女もピーシェに笑みを向けて歩み寄る。

更に、

 

「久し振りだな、プルルート」

 

紫苑もそう声を掛けた。

 

「あ~! シオン君だ~! 久しぶり~!」

 

紫苑にも笑顔を向ける少女、もといプルルート。

箒達が困惑する中、プルルートはニッコリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 






はい、Bルートの始まりです。
いきなりピーシェとプルルートが来ると予想できた人はいたでしょうか?
Bルートは紫苑からネプテューヌに会いに行くパターンになるので、暫くネプテューヌ達は出番ありません(多分)
そして思い付きで紫苑がピーシェのパパに。
さて、連休が終わってしまったのでまた週末更新に戻ります。
序に鮎掛けも始まりますので更新頻度は下がると思いますが、週一は更新したいと思ってます。
では、次もお楽しみに。

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