超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第19話 解き放たれる(マイ マインド)

 

 

 

 

 

 

一連の騒動の後、紫苑達は千冬達への報告の為にピットに戻ってきたのだが…………

 

「ミナサン、テイコーハイタシマセン。ドノヨーナシツモンニモ、セーカクニオコタエシマス、マス、マス、マス」

 

今にもウィーンウィーンとモーター音を響かせそうな角ばったロボットのような動きで、更にアクセントの無い合成音声のような言葉でそう言ったのは、例の女だ。

 

「………………………………」

 

紫苑は予想通りの結果に呆れた表情となり、

 

「「「「「「「ガタガタブルブル……………」」」」」」」

 

その元凶となった行為を目撃した一夏、シャルル、セシリア、鈴音、ラウラ、そして翡翠プラス真耶の7人は恐怖の余り震えている。

 

「フフーン…………」

 

鼻歌を歌いながら上機嫌で笑みを浮かべる変身したプルルートことアイリスハート。

 

「ぱぱ、よかったね!」

 

純粋に翡翠を助け出したことを喜ぶピーシェことイエローハート。

だが、

 

「その姿でパパ呼ばわりは色々と拙いからやめてくれ…………」

 

イエローハートの言葉に紫苑は軽く頭を抱える。

すると、

 

「あ~………お前達」

 

気丈にも千冬が声を掛けてきた。

だが、その頬に一筋の冷や汗が流れていたのは決して見間違いなどでは無いだろう。

 

「とりあえずご苦労だった。ラウラのISについては不明な点が多いが、それは後程調査する」

 

「は、はい…………」

 

ラウラは何とか返事を返す。

すると千冬は紫苑の方へ向き直ると、

 

「そして月影、妹を助けられて良かったな」

 

「はい!」

 

紫苑は嬉しそうに頷く。

そのまま視線を後方にいる翡翠に移し、

 

「お前が月影の妹だな?」

 

「は、はい! 月影 翡翠です! この度はご迷惑をお掛けしたようで!」

 

翡翠はそう言いながら頭を下げる。

尚、翡翠が纏っていたISは右腕の義手の手の甲にあるエメラルドのような宝石となっていた。

 

「そう硬くなる必要は無い。心配せずとも、お前に責任を求めたりはせんさ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「まあ、テロ組織の所に居た話はあとで多少は聞くかもしれんが…………」

 

「ソノコトニツイテハ、ワタクシカラスベテ、セツメイサセテイタダキマス。セツ……メイ……セツ………メイ………」

 

「その必要も無さそうだな」

 

最早質問に答えるだけの機械と化した女を見て、千冬は頭を押さえる。

 

「それにしても…………」

 

千冬の視線がアイリスハートとイエローハートの方へ向く。

それと同時に、その場の全員(一人除く)の視線が集中した。

 

「あらぁ? 何かしらぁ?」

 

「な~に~?」

 

2人が応えると、

 

「お前たちは一体どうなったんだ?」

 

千冬がそう問いかける。

 

「ああ、その説明をする前に………」

 

紫苑はそう言うと、ある方向を向き、

 

「出て来いよ、楯無!」

 

そう呼びかけた。

すると、楯無にしては遠慮がちに姿を見せる。

 

「あ………」

 

楯無は翡翠に声を掛けようとしているのか、若干の戸惑いを見せる。

翡翠は楯無を見ると、

 

「………………もしかして、刀奈ちゃん?」

 

「…………うん…………ひさしぶり………翡翠ちゃん………」

 

チラチラと翡翠と紫苑を交互に見るように、視線を合わせたり外したりを繰り返しながら楯無は歩み寄ってくる。

ある程度まで近付いてくると、楯無は遂に我慢できなくなったように駆け出し、

 

「翡翠ちゃん!」

 

跳び付くように翡翠を抱きしめた。

 

「翡翠ちゃん! よかったよぉ~! 生きててよかったよぉ~!」

 

子供の様に泣き出す楯無。

 

「刀奈ちゃん…………ゴメンね、心配かけて…………」

 

抱き着いてくる楯無の温もりを感じるように目を瞑りながら、翡翠は左腕で楯無を抱き返した。

 

 

 

暫くして落ち着いたのか、楯無は恥ずかしそうに翡翠から離れる。

 

「あ、あははは………恥ずかしい所を見せちゃったわね………」

 

顔を少し赤くしながら乾いた笑いで誤魔化そうとする楯無。

すると、

 

「でもぉ~、泣いてるたっちゃんも可愛かったわよぉ~?」

 

アイリスハートが妖艶な笑みを浮かべた。

ゾクリと背中に悪寒が走る楯無。

 

「プ、プルちゃんも随分とイメチェンしたのね?」

 

「ウフフ。どうかしらぁ?」

 

「え、ええ…………似合ってるわよ………………怖いぐらいに…………」

 

流石の楯無もアイリスハートの恐ろしさを身に染みたのかいつもの様にからかうつもりは無いらしい。

 

「何か言ったぁ?」

 

「何でもない何でもない! 何も言って無いです!」

 

慌てて否定する楯無。

 

「じゃ、じゃあ、紫苑さん! プルちゃんとピーシェちゃんに起きた事の説明をお願いします!」

 

楯無は逃げる様に話を変える。

紫苑はやれやれと思いつつ、

 

「じゃあ、説明しますけど、プルルートとピーシェの変化は、『女神化』と呼ばれる変身です」

 

「『女神化』…………?」

 

「確かにプルルートさんは『女神』だと以前仰っていましたが…………」

 

「それって普通の人間より身体能力が高いだけじゃなかったの?」

 

箒、セシリア、鈴音が順に言葉を漏らす。

 

「まあ、素の状態でも高いスペックを誇るのは確かなんだが…………『女神』の真価は『女神化』してこそ発揮される。変身すると、見た通りISを超える戦闘力を発揮するし、中には性格がかなり大きく変わる女神もいる」

 

紫苑がそう言うと、全員の視線がアイリスハートに集中する。

 

「納得………」

 

一夏が呟く。

 

「なんて言うか…………女王様的な?」

 

シャルルがそう言うと、

 

「ふふふ、違うわよシャルちゃん」

 

「えっ?」

 

突然アイリスハートがシャルに詰め寄り、

 

「あたしの事はね、女王様でなくてぇ、め・が・み・さ・ま♪ ここ、重要なポイントだから覚えておいてね?」

 

「は、はい! 女神様!」

 

「はい、お利口さま」

 

鋭い眼光に有無を言わさず返事を返したシャルル。

 

「うう~、底冷えする眼光だったよ~…………」

 

泣きそうになるシャルル。

 

「まあ、ここまで変わる女神はプルルート以外じゃ1人しかいないから気にしなくてもいい。ピーシェは言葉使いがハッキリしただけでそこまで性格の変化は無いだろう?」

 

「うゆ?」

 

自分の名前が出た事に首を傾げるイエローハート。

 

「まあ、そうね…………」

 

鈴音が呟く。

ただしその目線はたゆんと揺れるその巨乳を射殺さんばかりに睨み付けている。

すると、

 

「ねえねえ、お兄ちゃん…………」

 

翡翠が遠慮がちに紫苑の制服の袖を引っ張る。

 

「ん? どうした翡翠?」

 

紫苑が振り向くと、

 

「さっきから言ってる『女神』って何の事?」

 

翡翠がそう尋ねてきた。

 

「ああ、すまん。お前は知らなかったな」

 

「私もだ」

 

ラウラが主張する様に言う。

 

「かいつまんで言うとだな、3年前のあのテロ事件の直後、俺は異世界に飛ばされたんだ」

 

「異世界?」

 

「ああ。その世界、『ゲイムギョウ界』って言うんだが、その世界には4つの国と、それらの国を守護する『守護女神』が存在するんだ」

 

「そのような世界があるのか!?」

 

ラウラが驚愕の表情を浮かべる。

 

「ああ。その時の俺は、翡翠が殺されたと思っていて絶望の中にいた。生きる気力も無くし、死んでもいいとさえ思っていた…………」

 

「お兄ちゃん…………」

 

紫苑の言葉に切なそうな表情を浮かべる翡翠。

 

「でもそんなとき、俺は1人の『女神』に出会った。その女神こそ、ゲイムギョウ界の国の中の一つ、『プラネテューヌ』を治める女神、『ネプテューヌ』だった」

 

紫苑がそこまで言ったとき、

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

セシリアが声を上げた。

 

「何だ?」

 

「プラネテューヌとは、確かプルルートさんが治める国では無かったのですか?」

 

セシリアがそう問いかけると、

 

「前も言ったけど、プルルートが治めるプラネテューヌは俺が居たゲイムギョウ界とは別の次元のゲイムギョウ界にあるプラネテューヌだ。だから、俺が居たプラネテューヌを治めているのは別の女神なんだよ」

 

「そうそう。あたしのプラネテューヌとねぷちゃんのプラネテューヌは別だからそこんとこ間違えないでねぇ?」

 

アイリスハートも付け足す。

 

「それで、ネプテューヌに言われたんだよ。『生きていれば、そりゃ辛い事や悲しい事も沢山あるよ! でも、同じぐらい嬉しい事や楽しい事も一杯あるんだから!』ってね。最初は特に何とも思って無かった………そう思ってたんだが、不思議とその言葉が心に残って、俺は自ら死のうと思う考えがおこらなくなった」

 

その言葉に、ホッと息を吐く翡翠。

楯無も真剣にその話を聞いている様だ。

 

「それから色々あって、ネプテューヌのお陰で俺は立ち直れたんだ」

 

紫苑は懐かしさに笑みを浮かべてそう言った。

 

「そうだったんだ…………」

 

「まあ何の因果か今年の入学式の直前に次元転移に巻き込まれてこの世界に戻ってきちまったんだが、俺は必ずあの世界に帰る。そう決めている」

 

「『帰る』?」

 

「ああ。俺にとって、故郷は既に『プラネテューヌ』なんだ。翡翠にとっては複雑かもしれないが、あの世界に帰れるチャンスが来たら、俺は何が何でも帰るつもりだ」

 

「それは当然よねぇ~。なんて言ったてシオン君はねぷちゃんの『守護者』だもんねぇ~?」

 

アイリスハートがそう言うと、紫苑はげっ、と拙そうな表情をした。

 

「『守護者』…………?」

 

「また新しい単語が出てきたわね?」

 

箒と鈴音が呟く。

 

「あ~、その、なんだ? 『守護者』って言うのは………」

 

紫苑が何とか誤魔化そうと言葉を選んでいると、

 

「簡単に言っちゃえば、『守護者』って言うのは女神を護る騎士であり、同時に伴侶でもある男の人の事よ」

 

アイリスハートがズバッと言ってしまった。

 

「騎士…………はともかく『伴侶』?」

 

「『伴侶』………ということは即ち………?」

 

鈴音とセシリアがその意味を理解していこうとすると、

 

「つまりシオン君はねぷちゃんと結婚してるってこと♪」

 

アイリスハートが楽しそうな笑顔でそう言った。

 

「「「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええっ!!!???」」」」」」」」

 

ほぼ全員は盛大に驚き、紫苑は言わんこっちゃないと溜息を吐いた。

 

「「お、お兄ちゃん(紫苑さん)、結婚してたの………?」」

 

翡翠と楯無が驚愕の表情を浮かべている。

いや、楯無に関してはどこかショックを受けたような感情が混じっている。

 

「まあな…………日本でそんな事言えば問題になると分かってるから黙ってたが…………」

 

その言葉に呆然と紫苑を見る一同。

すると、

 

「それにしても、ねぷちゃんが羨ましいわ~。シオン君みたいな『守護者』が居て………」

 

アイリスハートが突然そんな事を言う。

 

「その内お前にも『守護者』になる奴が現れるかもしれないだろ?」

 

紫苑がそう言うと、

 

「まあ、『守護者』になって欲しい人はいるんだけどねぇ………」

 

「そりゃ初耳だな? いったい誰だ?」

 

紫苑が興味本位で尋ねると、

 

「フフッ…………それはねぇ…………」

 

アイリスハートは意味ありげに妖艶な笑みを浮かべると、

 

「………シオン君よぉ」

 

「……………………」

 

その言葉を聞いて無言になる紫苑。

 

「あんまり驚いて無いわねぇ………」

 

「まさかとは思ってたけどな…………」

 

長い沈黙の後、溜息を吐きながら紫苑は呟く。

 

「フフッ、シオン君はアタシにとって特別なの。他のお友達はみーんなアタシのものよ。誰も壊したりしないし、壊させたりしないわ」

 

「凄い独占欲ね…………」

 

鈴音が冷や汗を流しながら呟く。

 

「ある意味、皆愛されてるって事じゃないかな…………?」

 

シャルルもそう言う。

 

「その通りよ。だけどシオン君だけは別よ。シオン君をアタシの物にしたいけど、アタシもまたシオン君の物になりたいと思ってるのよ」

 

その言葉を聞くと、多くの女性陣が顔を真っ赤にする。

 

「な、ななな、何を言っているのですかプルルートさん!?」

 

「しゅ、しゅしゅ、淑女がそのような事をいうものではありませんわ!」

 

箒とセシリアが叫ぶ。

 

「ふふふ、初心で可愛いわねぇ。だけど、本当に欲しいものがあるなら、躊躇してたらチャンスを逃しちゃうかもしれないわよぉ~?」

 

全く動じないプルルート。

 

「っていうか! さっきの話が本当なら紫苑ってもう結婚してるんでしょ!? 人の夫に手を出すって、一体どういうつもりよ!?」

 

鈴音が叫んだ。

 

「何のことぉ~?」

 

アイリスハートは鈴音の言葉の意味が分かってないのか首を傾げる。

 

「あ~、プルルート。こっちの世界の多くの国は、一夫一妻が当然なんだよ」

 

紫苑がそう説明する。

 

「そうなのぉ~。けどざぁ~んねん。ゲイムギョウ界じゃ複数の奥さんを貰ってもいいのよぉ~」

 

その言葉に驚愕して目を見開くメンバー。

だが、楯無とラウラだけは、他の皆と別の意味で目を見開いた事は本人以外知る由もない。

 

「そうだとしても、俺はネプテューヌに黙って他の女と関係を持つつもりは無いからな」

 

紫苑は先手を取るようにそう言う。

 

「シオン君のいけずぅ~…………………まあでも、アタシもねぷちゃんに黙ってアタシの物にしちゃうのは性に合わないしねぇ…………」

 

「今更なんだが、何時まで変身してるつもりなんだ? 山田先生なんてさっきからビビって一言も発してないんだが?」

 

紫苑は真耶を見ると、カタカタと震えながら顔を引きつらせている。

 

「せっかちねぇ…………」

 

「ピーシェも元に戻れ」

 

「はーい!」

 

イエローハートは返事をすると光に包まれて元の幼女の姿に戻る。

 

「プルルートも早く戻ってくれ」

 

「はぁ~い。でもぉ、ちょっとそのまえにぃ~……………」

 

アイリスハートはそう言いながら視線を翡翠に向け、

 

「すこ~しいいかしら、ヒスイちゃぁ~ん?」

 

「ふぇっ!?」

 

その手を掴んだ。

 

「お、おいプルルート、何するつもりだ?」

 

「心配しなくても大丈夫よぉ~。ちょぉ~っとお願いするだけだからぁ~」

 

「いや、心配しかないんだが!?」

 

紫苑はアイリスハートを引き留めようと…………

 

「ピーシェちゃぁん。シオン君に思いっきり甘えちゃいなさぁい」

 

「あい! とおっ!!」

 

アイリスハートの言葉で嬉しそうに紫苑に飛び掛かるピーシェ。

 

「ぐおっ!?」

 

紫苑は上手く衝撃を受け流すが、その場で耐えれる筈も無く後ろに倒れる。

 

「きゃはは! ぱぱーっ!」

 

倒れた紫苑に対し、ピーシェは嬉しそうに抱き着く。

その間に翡翠はアイリスハートに引っ張られていき、部屋の見えない所に連れていかれる。

それから少しして、

 

「おまたせ~!」

 

間延びした声で、元の少女の姿に戻ったプルルートが姿を見せる。

その後に翡翠も続いて出てきた。

外観的には何も変化はないようだが、

 

「な、何やってたんだ?」

 

紫苑が恐る恐る尋ねる。

 

「え~? 何もしてないよ~。ただ~、もっと仲良くなれる様に~、お願いしてただけ~。ね~、ヒスイちゃん~?」

 

プルルートがそう言いながら翡翠を見ると、

 

「は、はい! プルお姉様!」

 

翡翠が背筋をピンと伸ばしてそう返事をした。

 

「はい?」

 

翡翠のプルルートの呼び方に疑問を覚え、

 

「おねえさま………?」

 

翡翠の言葉を反復する紫苑。

 

「プルお姉様はプルお姉様です!」

 

翡翠は恐怖から逃れるような必死さでそう宣言する。

 

「うん~、これからもよろしくね~、ヒスイちゃん~?」

 

「は、はい! よろしくお願いします! プルお姉様!!」

 

「………………」

 

その様子を見て絶句する紫苑。

 

(プルルートの奴、外堀から埋めてきやがった…………!)

 

プルルートの強かさに内心戦慄した紫苑だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ドイツ国内軍施設

現在この場所では、『シュヴァルツェ・ハーゼ』――通称『黒ウサギ隊』が訓練をしていた。

この部隊はラウラが隊長を務めている部隊なのだが、ドイツ国内のIS機の内、3機を保有する優秀で最強の部隊なのだが、人間関係に多大な問題があった。

主にラウラと隊員達の間の問題が。

すると、副隊長であるクラリッサ・ハルフォーフの元に通信が届いた。

 

「受諾。クラリッサ・ハルフォーフ大尉です」

 

空間ディスプレイが投影され、ラウラの姿が映る。

 

『こちら、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐だ』

 

そう答えたラウラの姿を見た近くの隊員が若干嫌そうな表情を浮かべた。

それを気にせず、クラリッサは応答した。

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ隊長。何か問題が起きたのですか?」

 

『いや、問題は起きていない。これは、私の個人的な通信だと思ってくれ。クラリッサ、部隊員は全員揃っているか?』

 

「はい。クラリッサ・ハルフォーフ大尉以下『シュヴァルツェ・ハーゼ』部隊員に欠員はありません」

 

『そうか…………クラリッサ、訓練は一旦中断してくれて構わない。全員を集めてくれ』

 

「……了解しました!」

 

クラリッサはラウラの言葉に返事を返すと、『訓練中断・緊急招集』を伝える。

流石軍人と言うべきか、あっという間にモニターの前に整列し、背筋を伸ばす隊員達。

 

「全員集合いたしました!」

 

クラリッサを筆頭に敬礼する。

 

『うむ、ご苦労。楽にしてくれ』

 

ラウラは答礼を返しながらそう言うと、部隊員たちは肩の力を若干抜く。

だが、その内心では、どのような無茶を言い渡されるか冷や汗ものだった。

だが、

 

『お前達…………』

 

ラウラは映像越しに部隊員達を一通り見回すと、

 

『今まですまなかった…………』

 

ラウラは深々と頭を下げた。

その行動に、思わず動揺する隊員達。

 

「た、隊長!? 一体何を………!?」

 

ラウラの行動が信じられず、思わずクラリッサは聞き返した。

 

『…………私は今まで1人で戦っている気でいた。1人でも戦えると思い込んでいた…………だが、それは間違いだったことに気付いたのだ…………今まで勝利してきた私の隣には………いつもお前たちの姿があったことに今更ながらに気付いた……………それなのに私はお前たちに冷たい態度を取り続けてしまった。だから………すまなかった…………』

 

もう一度頭を下げるラウラ。

その言葉に部隊員達は驚愕してラウラを見つめていた。

 

『このような不甲斐ない隊長だが…………これからも私に付いてきてくれるか?』

 

顔を上げて問いかけられた言葉に、部隊員達は一呼吸置くと一斉に敬礼し、

 

「我ら『シュヴァルツェ・ハーゼ』。いつまでも隊長と共に」

 

クラリッサが代表してそう答えた。

 

『……………ありがとう。これからもよろしく頼む』

 

部隊内の不和が解消された瞬間だった。

すると、

 

『………で、でだ………ここからは私の個人的な相談なんだが……………』

 

突如雰囲気が変わり、若干落ち着かない様子を見せるラウラにクラリッサたちは不思議に思う。

そして、

 

『………その………き、気になる男の気を引くにはどうしたらいい…………?』

 

顔を真っ赤にしながら驚愕の一言を放った。

 

「……………は? 隊長、今何と?」

 

聞き間違いかと耳を疑ったクラリッサが聞き返す。

 

『だっ、だから、気になる男の気を引くにはどうしたら良いと言ったのだ! 何度も言わせるな恥ずかしい……・…!』

 

顔を赤くしながらそっぽを向くラウラの姿に、全員がハートを撃ち抜かれた。

今の部隊委員の想いは一つ。

 

((((((((((今私達の目の前にいる、この可愛い生き物は何だ? これがあのラウラ・ボーデヴィッヒ隊長なのか?))))))))))

 

隊員たちが驚愕する中、

 

「し、失礼ですが隊長。その気になる男とは、もしや織斑教官の弟の…………」

 

『い、いや、織斑 一夏ではない…………もう1人の方だ………』

 

「そうですか………その者について何か情報は?」

 

『そ、そうだな…………そ、そう言えば、祖国では結婚していると言っていた………』

 

「なっ!? で、ですが、結婚しているとなるとその間に入るのはかなり困難かと…………」

 

『そ、それについては大丈夫だと思う………その男の祖国では、一夫多妻が認められているらしい』

 

「ほう! それはそれは…………!」

 

その言葉を聞いた時、クラリッサの目がキュピーンと光ったような気がした。

 

「お任せください隊長! 隊長の初恋、この私が見事成就させてみせましょう!」

 

力強く拳を握るクラリッサ。

 

『頼もしいなクラリッサ』

 

「はっ! ではまず………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

「………今日は皆さんに……転校生を紹介します………」

 

真耶が歯切れ悪くそういう。

それと共に、教室に入ってくる1人の少女。

それは、

 

「シャルロット・デュノアです。 皆さん、改めてよろしくお願いします!」

 

女子の制服を纏っているが、間違いなくシャルルであった。

 

「え~っと、デュノア君は、デュノアさんって事でした……」

 

真耶の言葉に、

 

「は?」

 

箒が声を漏らす。

 

(やっぱりな…………)

 

逆に納得した紫苑。

それを切っ掛けにクラスメイトが、ざわつき出す。

 

「えっ? じゃあデュノア君って女?」

 

「おかしいと思った。 美少年じゃなくて、美少女だったわけね」

 

「って織斑君! 同室だから知らないってことは……」

 

「ちょっと待って! 昨日って男子が大浴場使ったわよね!?」

 

その瞬間、ドガァンという音と共に教室の壁を破壊して、ISを纏った鈴音が現れる。

 

「いぃぃぃぃぃちぃぃぃぃぃぃぃかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

怒りの形相で鈴音が衝撃砲を発射しようとする。

 

「ちょっと待て! 俺死ぬ! 絶対死ぬぅぅぅぅぅっ!!」

 

一夏の叫びも空しく、衝撃砲が発射される。

 

一夏は覚悟して目を瞑る。

 

しかし、

 

「あれ? 死んでない………?」

 

一夏が目を開けると、目の前には、AICで鈴音の衝撃砲を防いだラウラの姿。

 

「ラウラ! 助かったぜ、サンキュー……」

 

一夏がそう言うと、ラウラは一夏に向き直り、

 

「今まで迷惑をかけた詫びだ。すまなかった」

 

素直に頭を下げるラウラ。

 

「あ、ああ…………」

 

少し呆気にとられる一夏。

すると、ラウラは振り向いて紫苑の方へ向くと、

 

「月影 紫苑!」

 

紫苑の名を呼んだ。

 

「………何だ?」

 

紫苑は何の用かと内心首を傾げていると、

 

「さ、3番目でも愛人でも構わん! 私を! お前のハーレムに入れてくれ!!」

 

紫苑を以てしても全く予想もしていなかった核爆弾を投下された。

 

「「「「「「「「「「えええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!!?????」」」」」」」」」」

 

当然ながら、教室は混沌に包まれるのだった。

 

 

 

 

 

尚、この1週間後に翡翠が3組へ編入したことをここに記しておこう。

 

 

 

 

 





はい、19話の完成です。
ちょいと難産でした。
説明とラウラの和解ですね。
あと翡翠の調教(!?)
因みに翡翠が3組なのは一応理由があるので後々お待ちを。
かなり後ですが…………
さて、次回からは臨海学校編。
お楽しみに。

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