超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
マジェコンヌを退け、旅館に向けて帰還している一同。
因みにISが壊れてしまったラウラはバーニングナイトにお姫様抱っこされている。
その理由として、ある意味一番苦労したのはラウラで、それを労う為にと翡翠から半ば強引にラウラを押し付けられたのだ。
まあバーニングナイトにしても頑張ったラウラを労う事に異存は無く普通に受け取った。
若干アイリスハートの眼が何か言いたげではあったが……………
その道中、
「………………………」
ラウラはバーニングナイトに抱かれて顔を若干赤くしながらも、ジッと彼の顔を見上げていた。
バーニングナイトはそれに気付くと、
「ん? どうかしたのか?」
飛行を続けながら顔だけをラウラの方に向け、そう尋ねる。
「あ、いや、何でもない…………」
ラウラはハッとなって顔を逸らす。
もしこれが一夏なら言葉通りに受け取って聞き流していただろう。
だが、彼はそこまで鈍感では無かった。
「気になることがあるのなら遠慮せずに言ってくれ。出来る限り意に沿えるようにはする」
彼がそう言うと、ラウラはおずおずと向き直り、
「そ、そうか…………なら、個人的な願いではあるのだが…………その、素顔を見て見たい………と思ってな…………」
遠慮がちにそう言う。
バーニングナイトは一瞬きょとんとすると、フッと口元に笑みを浮かべ、
「お安い御用だ」
そう言ってプロテクターのヘッドギアを解除した。
ヘッドギアが消えて、その素顔が露になる。
元の姿の時に残っていた幼さは見る影もなく、だがそれでいてしっかりと紫苑の面影を残し、瞳に女神の証を浮かび上がらせた彼の顔にラウラは目を奪われた。
「感想は?」
そう尋ねるバーニングナイト。
「あ………いや、その…………ほ、惚れ直したぞ…………」
顔を赤くしながらラウラはそう呟いた。
「そうか……………」
慌てるラウラを見て、バーニングナイトは静かに笑う。
そのままラウラは恥ずかしさからか一言も喋らず、黙っているだけだった。
旅館に到着すると、一同は中庭へと降りる。
バーニングナイトはラウラを降ろし、他の面々も女神化やISを解除した。
すると、
「さあ、千冬姉に報告に行こうぜ!」
一夏が明るい声でそう言う。
だが、
「待て」
「ん?」
バーニングナイトは変身を解除せずに一夏に呼びかけながら歩み寄った。
呼び止められた一夏はバーニングナイトに向き直る。
「何だよ?」
一夏は呼び止められる理由に思い当たることが無いのか怪訝そうに聞く。
バーニングナイトは一夏の前で立ち止まると、
「プルルートに聞いたが、マジェコンヌに戦いを挑む提案をしたのはお前か?」
「あ、ああ…………そうだけど……………」
バーニングナイトになって自分よりも背が高くなった紫苑の姿に、一夏は圧迫感を感じてややどもり気味に頷く。
「そうか……………」
バーニングナイトはそう呟く。
そして次の瞬間、
「……………ふっ!」
「ぐっ!?」
「「「「ッ!?」」」」
突然バーニングナイトは一夏の頬を殴りつけた。
バーニングナイトにとっては軽く、だが、ただの人間にとってはかなりの威力の拳を受けた一夏は後ろに吹き飛び地面に倒れる。
「ッ…………! 何しやがる!?」
突然殴られた一夏は起き上がってバーニングナイトに向かって叫んだ。
「………………何故殴られたのか、本当に分からないのか?」
そう静かに聞き返すバーニングナイト。
「何っ…………ぐっ!?」
一夏は思わず掴みかかろうとしたが、再び殴られ吹き飛ばされる。
「「「「一夏(さん)!」」」」
箒、セシリア、鈴音、シャルロットの4人が一夏に駆け寄る。
「ちょっと! いきなり殴る事ないじゃない!」
鈴音が食って掛かる。
「そいつが自分の仕出かしたことの重大さに気付いて無いからだ」
対して、バーニングナイトは淡々と告げる。
バーニングナイトは倒れている一夏を見下ろすと、
「一夏………何故お前はラウラに止められていたにも関わらずマジェコンヌに戦いを挑んだ?」
そう質問した。
「何故って………早く倒さないとあいつがパワーアップするって言ってたからだ!」
一夏は叫びながら答える。
「なるほど。確かに一理ある………だが、パワーアップする前でも、何か勝算があったのか? ハッキリ言ってパワーアップする前でも、専用機が5機掛かりだろうと俺にはマジェコンヌに敵うとは思えなかった」
「確かに実力では劣っていたのかもしれない! だけど、皆の力を合わせれば俺の『零落白夜』を叩き込む隙ぐらい作れるはずだ!」
それを聞くと、バーニングナイトは溜息を吐いた。
「それでどうなる?」
「えっ…………?」
「仮に『零落白夜』がマジェコンヌに届いたとしてどうなるんだ?」
「そ、そんなの大ダメージを与えられるに決まって…………」
バーニングナイトの言葉に一夏はそう答えるが、バーニングナイトは呆れた様に顔に手を当てる。
「お前は『零落白夜』が何故IS相手に大ダメージを与えられるのか理解しているのか?」
「えっ?」
一夏は分かっていない様な声を漏らす。
「分かっていない様だな………?」
バーニングナイトは視線をラウラに移すと、
「ラウラは俺の言っている意味が分かるか?」
「当然だ。教官と同じ
ラウラは自信を持って頷く。
「なら説明を頼む」
「簡単な話だ。『零落白夜』がIS相手に大ダメージを与えられるのは、相手の防御シールドを無効化し、絶対防御を発動させるからだ。操縦者の命を守る絶対防御は発動に大量のシールドエネルギーを消費する。故に、『零落白夜』によって斬りつけられたISは絶対防御を一撃毎に発動させるため、あっという間にシールドエネルギーを失ってしまう。しかし、逆を言えば『シールドエネルギーを持たない相手には何の意味も無い能力』だ」
「えっ…………?」
ラウラの言葉に一夏は呆然とした声を漏らす。
「ラウラの言う通りだ。マジェコンヌ相手には、一夏の雪片は低出力のレーザーソードに過ぎない」
「だ、だけど、あいつはISの福音を使っていたんじゃ…………」
「確かにマジェコンヌの元の強さにISの強さが上乗せ………いや、更に増幅されて上乗せされていただろう」
「だったら………!」
「なら聞くが、あいつは防御シールドを使っていたか?」
「それは…………でも、『零落白夜』を受けて無事なんて事…………」
未だ認めようとしない一夏にバーニングナイトはネプギアに視線を向ける。
「ネプギア、お前の剣を見せてみろ」
「あ、はい」
ネプギアは頷くとその手にビームソードの柄をコールする。
ネプギアがそれに刃を形成すると、
「ッ…………!」
ラウラが僅かに声を漏らした。
「それが如何したんだよ?」
一夏がそう呟く。
すると、
「いや、これは雪片の刃や、シュヴァルツェア・レーゲンのプラズマブレードとは似て非なる物だ」
ラウラがそう言う。
「そうですわね………言葉では言い表すことが難しいですが、この世界の技術よりも『先』の技術で作られたものです」
セシリアはその技術力に注目し、
「そうね………何て言うか…………洗練されてるって言うのかしら?」
鈴音は直感的にその違いを察し、
「ISの光学兵器がIS自体のエネルギーを使わなきゃいけないことに対して、これはこれだけで一つの武器として完成してる…………それって凄い事だよ!」
シャルロットは興奮気味に言い、
「この武器が名刀とするなら、ISの武器は鈍らという事か………」
箒はやや悔し気にそう言う。
「これはプラネテューヌでは標準と言っていい武装だ。だが、これを使ったとしても、マジェコンヌにまともなダメージを与えるのは難しい。これは言ったとは思うが、マジェコンヌは女神の力に匹敵する実力を持つ。それにさらにISの力が上乗せされた相手に、お前達は本当に勝てると思っていたのか!?」
「「「「……………………」」」」
バーニングナイトの言葉に、4人は俯いてしまう。
「何だよ皆して………!? 俺達の行為が否定されたんだぞ! 悔しくないのかよ!?」
一夏の物言いに、バーニングナイトは更に呆れる。
「一夏、俺は悔しいとか悔しく無いとか、そんな事を言ってるんじゃない。お前が言い出したことがどれだけ危険で、どれだけの人数を危険に晒したと思ってると聞いているんだ!」
「そ、そりゃラウラがヤバかったことは認めるけど……………」
「ラウラだけか?」
「な、何だよ………? 結局誰もやられなかっただろ?」
「それは結果論だ。仮に俺が目覚めなかった………いや、目覚めるのが後数秒でも遅かったら、ラウラの命は無かったんだぞ!」
「う…………」
「ラウラだけじゃない。もしマジェコンヌが最初から本気だったら、今頃全員やられてたんだぞ!」
「た、例え負けたとしても、またリベンジすれば………!」
その言葉にバーニングナイトは反射的に一夏を殴りつけた。
「ぐあっ!?」
吹き飛んだ一夏にバーニングナイトは口を開く。
「お前は…………『実戦』の意味を何も理解していなかったんだな…………?」
「えっ…………?」
「『実戦』の敗北は、イコール死と言い換えても良い。運よく生き残れる場合もあるが、負けた全員が生き残れるのは稀だ」
「ッ………………!」
「まあそれはいい。結果的には全員生き残ったんだからな…………だけどな、それ以上に大事なことがある。一夏、お前はマジェコンヌを相手に『殺す気』で仕掛けたのか?」
「えっ? そ、そんな事出来るわけ……………」
「ふざけるな!」
バーニングナイトは一夏の答えに一喝する。
「格上の相手に対して………本気で死ぬかもしれない戦いに挑むのに…………お前はその程度の覚悟で戦いに臨んだのか!?」
バーニングナイトは再び一夏を殴りつける。
「ぐっ………!」
「『手加減』は、相手を超える実力と技量を持ってこそ出来る上級者向けの技術だ。それを格上の………マジェコンヌ相手に使おうとするとは……………お前は仲間を殺したいのか!?」
「なっ!? そんなわけあるか!!」
「お前のやっていることはそういう事だ! 唯でさえ勝ち目の薄い戦いに仲間達を引っ張り出し、挙句に一緒に行かなかったラウラや翡翠、ネプギアとピーシェまで巻き込んだ! お前の勝手な行動は、多くの人間を危険に晒したんだ!」
「そんな…………俺はただ……紫苑の仇を討ちたくて……………」
「ハッキリ言おう。大きなお世話だ」
「ッ………………!?」
バーニングナイトの言葉に一夏は目を見開いてショックを受けた表情をする。
「俺が負傷したのは俺が俺の意思でネプギアを護る為に起こした行動の結果だ。その事に対してネプギアにはもちろん、マジェコンヌにも恨み言を言うつもりは無い。恨むとすれば、自分の未熟さに対してだ。それに翡翠やネプギア、ピーシェやプルルート、それからラウラの誰か1人でも俺の仇を討ってくれとでも頼んだのか!?」
「う………………」
バーニングナイトは更に厳しい眼で一夏を睨み付けると、
「ここで言っておく。もしこの戦いで翡翠、ネプギア、プルルート、ピーシェ、ラウラの内、誰か1人でも犠牲になっていたら俺はお前を許さなかった。どんな状況だろうとお前を殺していたぞ!」
「ひっ!?」
バーニングナイトの本気の殺気に一夏はたじろぐ。
「そこまでにしておけ」
その声と共に、千冬と真耶が現れる。
「諸君! ご苦労だった…………! と、言いたいところだが、貴様たちが仕出かしたことは重大な命令違反だ。織斑、篠ノ之、オルコット、凰、デュノアの5名は、帰ったらすぐに反省文の提出だ。懲罰用の特別トレーニングも用意してある。覚悟しておけ」
「「「「はい………」」」」
4人は大人しく返事をしたが、
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 何で俺達だけ………!」
一夏が文句を言いたげにバーニングナイト達の方を見る。
「馬鹿者! そいつらは私の命令でお前達を撤退させるために出撃したのだ。お前達が指示に従わずに撤退しなかったから、済し崩し的に一緒に戦っただけの話だ。違反など何一つしていない」
一夏を黙らせる千冬。
千冬は背を向けると、
「ただまあ…………全員、よく無事に戻ってきた………今日はゆっくり休め」
千冬はそう言うと恥ずかしさからか足早に立ち去った。
バーニングナイトもこれ以上言う気にはなれず、変身を解いて紫苑に戻る。
すると、
「くっ………」
紫苑はふらつき、何とか踏ん張ってその場に留まる。
「「お兄ちゃん!?」」
翡翠とネプギアが駆け寄る。
2人が肩を貸すと、
「大丈夫だ………久々の変身で少し疲れただけだ…………」
紫苑はそう言って笑って見せる。
「ただ、部屋まで支えてくれると助かる。今は休みたい」
「うん」
「わかったよ、お兄ちゃん」
2人は返事をして肩を支えながら歩き出そうとする。
すると、
「一夏」
最後に紫苑が声を掛ける。
「お前は感情に振り回される節がある。感情のままに行動することは悪い事とは言わないが、それによって起こるリスクも少しは考えろ」
そう言い残して紫苑は2人に連れられてその場を去る。
プルルートとピーシェ、ラウラもその後を追った。
紫苑が部屋で横になると、
「えへへ~!」
その横にプルルートがポフッと倒れる様に横になる。
「プ、プルお姉様? 突然何を?」
翡翠が慌てたように聞くと、
「え~? あたしとシオン君は~、もう夫婦になったんだから~、一緒に寝てもおかしくないよね~?」
「ぴーもねる!」
ピーシェが飛び込むように紫苑とプルルートの間に入り込む。
「いいよ~、一緒に寝よ~」
プルルートはそう言ってピーシェを紫苑と挟み込むように軽く抱く。
翡翠が呆然とそれを見ていると、
「えっと…………じゃあ、私も久しぶりにお兄ちゃんと一緒に寝たいな」
ネプギアがそう言うと、紫苑を挟んでプルルートとは反対側の位置に横になる。
「ギアちゃんまで!?」
「む、むう…………ならば私も失礼して…………」
ラウラが顔を赤くしながら紫苑の頭の傍で丸くなるように横になる。
「ラウラちゃん!?」
ラウラの行動にも翡翠は思わず叫んだ。
それから暫くして………………
紫苑の周りで眠る5人の姿があった。
それと同じ頃、
「一体ここはどこなのよーーーーーーーーーーっ!!??」
とある場所で叫ぶ黒髪の少女。
更に別の場所では、
「こ、ここって何処なのかな? ……ちゃん?」
「わ、わかんない。お姉ちゃんとも逸れちゃったみたいだし…………」
2人のよく似た少女が困惑する様に佇んでいた。
第24話です。
短いけど事後処理だけなので勘弁を。
つーか、一夏アンチが加速した。
どうしよう?
さて、色々叩かれてしまった一夏君とは別にのほほんと寝る紫苑達。
因みに最後に出てきたのは誰だか分かります?
それでは次も頑張ります。