超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
ロムとラムが紫苑達と合流してから暫くして。
夜、紫苑は寮の廊下を自分の部屋に向かって歩いていた。
因みに今日は部屋には誰も居ない。
プルルートやピーシェは、今日は翡翠達の部屋にお泊りだ。
なので紫苑は、今日は珍しく1人で寝ることになる。
と、思っていたのだが、
「ん?」
自室の扉の取っ手に手を掛けた所で扉の向こう側にいる気配に気付く。
「……………………楯無、帰ってきたのか…………」
ここまで自分に気配を気取らせないという事と、自室に居てもおかしくない人物からそう推測する紫苑。
そこで紫苑は、今までのパターンから楯無がどうやって自分を出迎えようとしているのかも想像がついた。
「……………………………………」
紫苑は少し思案すると、一旦ドアノブから手を離し、ある事をしてから再びドアノブに手を掛け、扉を開いた。
すると、
「おかえりなさい、あなた。ご飯にする? お風呂にする? それとも、わ・た・し?」
既に3度目となる楯無の裸(水着)エプロン。
だが、
「……………そうか」
聞こえてきたその声に楯無はハッとなる。
何故なら、聞こえてきたその声はいつもの若干高めの紫苑の声とは違い、声変わりを終えた成人男性の声だったからだ。
更に150cmほどしかなく、何時も見下ろしていた身長は自分を超え、逆に見上げる形になっていた。
「…………え? え……え………………?」
楯無が困惑した声を漏らす。
すると、
「それなら……………お前を頂こうか……………!」
「えっ? ひゃっ…………!?」
目の前の男性…………プロテクターを解除したバーニングナイトは扉を閉めると楯無の肩を押し、楯無は後退るがやがてベッドに足を引っかけてベッドの上に仰向けに倒れる。
「え? あの…………紫苑さん…………?」
「なんだ?」
楯無が困惑しながらそう言うと、バーニングナイトは楯無に圧し掛かるような体勢になる。
「な、何で大きくなってるんですか…………?」
「そういえばお前にこの姿を見せるのは初めてか……………まあ、プルルートやピーシェの『女神化』と似たようなモノだ」
そう答えながらも顔を徐々に楯無に近付けていく。
「えあっ…………し、紫苑さん………………ま、待って……………」
楯無は頬を赤らめながら制止を呼びかける。
だが、
「誘ってきたのはお前だろう?」
「ッ………………!」
その言葉に何も言えなくなってしまう楯無。
やがて楯無の視界が彼の顔で一杯になり、
「…………な、なら最後に一つだけ……………!」
「なんだ………?」
楯無は顔を赤らめながら目尻に涙を浮かべ、
「その…………は、初めてだから……………優しくしてね……………?」
そう言うと身体から力を抜き、目を閉じた。
完全にバーニングナイトを受け入れる体勢だ。
そんな彼女に対し、バーニングナイトは……………
「…………………アホ!」
「きゃん!?」
その額に軽くデコピンを喰らわせた。
吃驚して軽い悲鳴を上げる楯無。
予想外の事に楯無が目を開けると、自分から身体を離し、立ち上がった彼の姿。
「……………とまあ、調子に乗り過ぎるとこんな目にも逢いかねないから、人を揶揄う時は程々にな?」
そう言いながら既に平静を装う彼の姿に、受け入れる覚悟を決めていた楯無はやるせない怒りが沸き上がり、目尻に涙を浮かべながらプルプルと震え、
「紫苑さんの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
楯無の絶叫が木霊した。
翌日。
「…………………………………」
紫苑は朝から楯無にジト~っと睨まれている。
「あ~……………まあ、昨日は悪かったよ。すまん」
一応、非は自分にあると感じているのか謝罪を口にする紫苑。
とは言え、それで機嫌が直る楯無ではない。
「…………………酷いよ紫苑さん…………乙女の純情を弄ぶなんて……………」
「昨日も言ったが、揶揄うためとはいえ誘ってきたのはお前だからな!」
「……………………………………紫苑さんなら良かったんだけどな」
最後にボソッと呟いた言葉は紫苑には届かなかった。
その後もジト~っと紫苑を睨み続ける楯無。
紫苑は一度溜息を吐き、
「…………はあ、どうすれば許してくれるんだ?」
このままでは埒が明かないと思った紫苑はそう言って妥協案を求める。
すると、楯無は待ってましたと言わんばかりに笑みを浮かべ、
「…………紫苑さんってさぁ~、私が居ない間にプルちゃん達とプールやデートに行ったらしいわよね~?」
「ん? まあ、プールに行った事は事実だし、デートと言うか買い物には行ったな」
「ずるいです!」
「は?」
「プルちゃん達ばっかりズルイです! 私もどこか連れてってください!」
突然の楯無の言葉に紫苑は軽く驚く。
「いや、どこか連れてけって言われてもな……………」
すると、楯無は一枚のチラシを突き付けるように紫苑に見せた。
「ここに行きましょう!」
楯無の言葉に紫苑はチラシをよく読むと、
「篠ノ之神社の夏祭り…………………………ん? 篠ノ之?」
聞き覚えのある名前に紫苑は声を漏らした。
「紫苑さんの思った通り、ここは篠ノ之 箒ちゃんの実家がやってる神社だよ。それで丁度今日がお祭りの日なの!」
「それで、俺に連れてけと…………?」
「ダメ……………?」
瞳を若干潤ませながらそう言ってくる楯無に紫苑は溜息を吐き、
「行くのは良いが、その場合はプルルート達も一緒だぞ。お前だけ連れて行ってあいつらを置いてったらどうなるか…………………」
「あ………あはは……………それは仕方ないね」
楯無は乾いた笑いでそれを了承した。
日が暮れたころ。
紫苑はその野の神社の入り口の前で待ち惚けを喰らっていた。
「遅いな…………」
既に約束の時間から30分が過ぎている。
何故か女子メンバーは全員楯無に連れて行かれこの場には紫苑1人だ。
それから少しして、
「ゴメン紫苑さん、お待たせ~!」
楯無の声が聞こえ、紫苑はそちらに振り向く。
すると、
「おお…………!」
紫苑は軽く驚いた声を漏らした。
何故なら、そこには色とりどりの浴衣を着た楯無たちが並んでいたからだ。
楯無は水色に白の水玉模様が描かれている浴衣を。
プルルートは明るい紫色に花柄の浴衣を着ており、ネプギアは薄い紫色に白のラインが入っている浴衣を着て、更にいつもはストレートに流している髪を浴衣に似合うように結い上げている。
ユニは黒に金の刺繍が施された浴衣を、ロムとラムはそれぞれ青とピンクの浴衣を着ている。
ピーシェは薄い黄色の浴衣を、翡翠は翠色に花柄の浴衣を、最後のラウラは藍色にピンクのラインと花柄が描かれた浴衣を着ていた。
「皆のこういう格好は新鮮だな…………似合ってるぞ」
紫苑は素直な感想を漏らす。
ゲイムギョウ界組は素直に喜びの笑みを浮かべ、楯無とラウラは顔を赤くしていた。
それから一行は紫苑と楯無、翡翠の案内で各所の出店を見て回った。
「わぁ~、綺麗~!」
「シオン! これ何?」
まずロムとラムが興味を示したのは桶の中で泳ぎ回る金魚。
「ああ、こいつは金魚すくいって言うんだ」
「簡単に言うと、破れやすい網を使って何匹金魚をすくえるかって遊びだよ」
紫苑と翡翠がそう説明する。
「ねえ、やって見せてよ!」
ラムがそうせがむ。
「ああ、いいぞ。それなりにやったことがあるからな」
紫苑はそう言って店主にお金を払うと網とお椀を受け取って桶の前に座り込むと、
「よっと………!」
素早い動きで水面に近い金魚をすくって椀に入れる。
「「わぁっ!」」
声を漏らすロムとラム。
「ほいっと………!」
続けて2匹目。
「ほいさっと………!」
今度は2匹を同時にすくう。
更に5匹目、6匹目と金魚をすくうと、
「っと、こんな感じだ。網が破れたらゲームーバーだからな」
そう言うとロムとラムにそれぞれ網を渡す。
ロムとラムは水中の金魚をじーっと見ていると、
「えいっ!」
「そこっ!」
2人はほぼ同時に水中に網を突っ込んだ。
しかもかなり乱暴に。
そんな事をすれば、
「「ああっ!?」」
当然ながら網は水の抵抗に耐えきれずに破れてしまった。
2人が残念そうにしていると、
「ははっ、初めてならそんなもんさ。ほれ、俺が取った奴をやるから」
紫苑は自分がとったものを店主に頼んで分けてもらう。
それぞれロムとラム、更にラウラも欲しがったため、2匹ずつを3袋に分けてもらった。
ロムとラムは笑顔で受け取り、ラウラは…………
「か、可憐だ…………!」
頬を赤らめながら金魚を眺めていた。
その後もたこ焼きを買って食べたり、わたあめを食べたり、かき氷を買ったり…………
それぞれが祭りを満喫していた。
すると、
「あれ? 紫苑?」
聞き覚えのある男性の声が聞こえた。
呼ばれた紫苑が振り返ると、
「一夏………?」
箒と赤毛の少女を伴った一夏が立っていた。
「よお、奇遇だな!」
一夏は気軽に声を掛けてくる。
「一夏………お前謹慎解けたのか?」
「まあな。夏休み最後の週だけは千冬姉も勘弁してくれたよ」
「そうか…………」
「それにしても、知らない顔が増えてるな?」
「ああ、黒髪がユニ。こっちの双子がロムとラムだ。ネプギアと同じような立場と思ってくれ」
「ふ~ん。あ、そうそう、こっちも紹介しとくよ」
一夏はそう言うと赤毛の少女を紹介してくる。
「この子は五反田 蘭。俺の中学の時の友達の妹だよ。蘭、こいつがもう1人の男性IS操縦者の月影 紫苑だ」
「は、初めまして、五反田 蘭といいます。一夏さんにはいつもお世話になってます!」
「月影 紫苑だ。これでも17歳だが特に気にしなくていい」
「17歳!?」
「その反応にももう慣れたな…………」
紫苑の年齢を聞いて驚く反応を見せる蘭と、溜息を吐きながらそう言う紫苑。
すると、
「そうだ、せっかく会ったんだし、このまま一緒に回らないか?」
突然一夏がそんな事を言う。
すると、後ろの箒と蘭が慌てた表情を見せた。
「せっかくのご厚意だが遠慮しておく。ただでさえこちらは10人の大所帯だ。そこにまた3人も増えたら身動きが取れなくなる」
紫苑がそう言うと、箒と蘭はホッとした表情を見せた。
だが、
「そう言うなよ。折角会ったんだしさ」
一夏がそう言うと、
「い、一夏! 断ろうとしている者を無理に誘うのは良くないぞ!?」
「そ、そうです! お連れさんにも迷惑でしょうし!」
2人は必死に一夏に引き下がる様に言う。
「なんでだよ? 皆で回った方が楽しいだろ?」
一夏のその言葉を聞くと、紫苑は何となく一夏の心情を察した。
(なるほど。こいつは自分が間違ってるとはこれっぽっちも考えてないわけか…………更に精神年齢が小学生や中学前半で止まってるっぽいから、2人の気持ちにも全く気付いていないと…………)
紫苑は少し話しただけで蘭が一夏に好意を抱いていることに気付いていた。
「もう一度言うが、こっちはこれ以上人数が増えると行動に支障が出る。悪いが別々で見回ってくれ」
「なんだよ? 冷たい奴だな」
紫苑の言葉に一夏はそう返す。
「何とでも言ってくれ。こちらにはお前と一緒に行動する気はない」
紫苑はそう言い残して皆を伴って立ち去った。
やがて箒が舞う神楽舞も終わり、祭りの最後の打ち上げ花火が行われていた。
紫苑達も、人の少ない穴場を見つけ、そこで花火を鑑賞している。
「「「「「わぁ~~~~~!」」」」」
ゲイムギョウ界組は花火を見て息を零している。
すると、彼女達から少し離れた所で花火を見ていた紫苑の腕に楯無が腕を絡めてきた。
「なんだ? 楯無」
「だって、少し位紫苑さんと恋人らしい事してみたかったんだもん」
「……………………」
その言葉を聞くと、紫苑は暫く黙り込み、
「………………刀奈」
「えっ? は、はい…………!」
楯無は突然本名を呼ばれ、驚きながら返事をした。
「俺は一夏のような鈍感じゃない。お前の気持ちにも気付いているつもりだ」
「あ、あうう……………」
楯無は顔を真っ赤にする。
「俺は、俺を本気で好きでいてくれる奴を拒むつもりは無い。だが、俺はいつかこの世界から居なくなる身だ。だから、俺に付いてくるという事は、この世界を捨てることと同義だ。お前は、それでも俺を好きでいるのか?」
「そ、それは…………」
「その覚悟が無いなら俺の事は忘れた方が良い。ラウラの奴は普通に何処まででもついて来そうだからな」
「………………………」
「まだ迷っているなら早めに決めることだ。そんな中途半端な状態でいると、いざ別れる時に辛くなるだけだぞ」
紫苑の言葉に楯無は俯く。
「私は……………」
「俺から言えることは1つだけだ。自分が後悔しない選択を選べ」
「後悔しない選択…………」
「少なくとも、俺はお前に対しては好意を持っていると言っていいだろう。後はお前次第だ」
「こ、好意…………」
恥じらいもなくそう言い切る紫苑に楯無は頬を赤くした。
2人の会話は花火の音により他のメンバーには聞こえていない。
楯無はどの様な答えを出すのか。
それはまだ誰にも分からない。
そう、楯無自身にも………………
第27話の完成。
若干グダグダしてるかもしれない。
楯無さんが合流したので夏祭り編をやってみました。
さて、次回からいよいよ二学期。
次も頑張ります。
と、その前にリクエストの結果ですが、とりあえず複数回答有で全部集計した結果、前回と同じく2と3が優勢です。
なので2と3、序に前回のあとがきでも言った『一部ヒロインが離れる』(今考えてるのはシャルロットのみ)で、決選投票を行います。
詳しくは活動報告で。
あと、本日は時間が無いので返信はお休みさせていただきます。