超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
シャルロットの問題が解決した翌日。
シャルロットはラウラと一緒に登校し、教室に入る。
「おはよう!」
シャルロットは教室にいるクラスメイトに挨拶する。
「あっ、おはよう、デュノア…………さん?」
クラスメイトは挨拶を返すが、その声は困惑したように語尾が小さくなっていく。
何故なら、
「ど、どうしたのデュノアさん!? 髪の毛………!?」
クラスメイトの言った通り、シャルロットの腰の上まであった長い金髪は、首のあたりでバッサリと切り落とされていた。
「あ、うん………ちょっとね…………変かな?」
シャルロットは後ろを振り向いてクラスメイトに後姿を見せるように聞く。
すると、
「ううん、そんな事ないよ! 長い金髪も良かったけど、短髪もよく似合ってるよ!」
クラスメイト達は揃って否定する。
「よかった………昨日ラウラに切って貰ったんだ。まあ、サバイバルナイフで切られるとは思わなかったけど…………」
「私が一番使い慣れた刃物といえばナイフなのでな。それ以外ではうまく切る自信が無かったのだ」
ズバッと言い切るラウラ。
「あはは…………」
苦笑するシャルロット。
すると、
「皆、おはよ!」
一夏が入室してきて皆に声を掛けた。
「あっ、織斑君! おはよう!」
クラスメイト達は嬉しそうに挨拶を返す。
「シャルとラウラもおはよう!」
一夏は片手をあげて2人に近付いてくる。
「…………おはよう」
「フン…………」
シャルロットは少し間を空けた後に返事を返し、ラウラは鼻を鳴らす。
「………………?」
2人の態度に若干の違和感を覚えた一夏は首を傾げるが、
「………あれ? シャル髪切ったのか?」
「…………………うん」
「勿体ねえなぁ…………綺麗な髪だったのに」
一夏は残念そうに言う。
「そう……………」
シャルロットは一夏の言葉には大した反応を見せずに自分の席に着いた。
「どうしたんだよシャル? なんか素っ気ないぞ?」
一夏はそう尋ねる。
「気の所為じゃないかな?」
シャルロットは表面上だけの愛想笑いを浮かべてそう言った。
すると、
「…………やっぱ気の所為か! 悪い、変に勘繰っちまって………!」
一夏はまるで気にしなかったかのように機嫌を直してクラスメイト達と談笑を始める。
「………………はぁ。やっぱり織斑君って人の表面上だけしか見てないんだね……………そんな人に惚れてたなんて、つくづく自分で自分が恥ずかしいよ………黒歴史だよ……………!」
シャルロットは軽く頭を抱える。
シャルロットの心情の変化に一夏は僅かに気付いたようだが、シャルロットが表面上だけの愛想笑いを浮かべただけで簡単にその疑問を捨て去ってしまったのだ。
「救いようがないな、あいつは…………」
ラウラも呆れた様に呟く。
すると、紫苑が入室して来た。
「あっ、月影君。おはよう!」
「ああ、おはよう」
クラスメイトに挨拶され、紫苑は返事を返す。
すると、紫苑の視線が一夏と合い、
「ッ…………!」
一夏は歯を食いしばるようにして紫苑を睨み付ける。
紫苑は内心やれやれと肩を竦めるが、顔には出さずに自分の席へと座った。
それを見た一夏は無視されたと思って益々紫苑を睨み付けるのだが、その程度の威圧など紫苑にとっては可愛いものでしかなかった。
その日の放課後。
楯無による一夏の特訓が開始されていた。
因みに一夏を煽るという名目で紫苑も観客席で一夏の特訓を眺めている。
まずは、一夏の操縦技術を上げるためにマニュアル制御による『シューター・フロー』の
これは、PICをマニュアル制御にして、2人が円状に動き回りながら互いに射撃を行うという訓練方法で、本来は射撃型の訓練だが、同時に機体制御能力も必要になってくるため、それを向上させるためにこの訓練を行っている。
尚、一夏が始める前に手本としてセシリアとシャルロットがこの
現在一夏が訓練を行っているが、当然ながら初めてで高度な操縦技術を熟せるわけもなく、何度も墜落していた。
一方同じ頃、翡翠、ネプギア、ユニ、ロム、ラムはIS学園を探検していた。
正確には暇を持て余したロムとラムが探検したいと言い出し、翡翠、ネプギア、ユニの3人がお目付け役として付いているのだ。
「ロムちゃん! 早く早く!」
「待って! ラムちゃん!」
ロムとラムは、人通りが殆ど無くなった夕方の廊下を走り回っていた。
「ロムちゃん、ラムちゃん、あんまり走り回ると危ないよ!」
ネプギアが慌てたようにそれを追う。
「はぁ………ロムもラムも子供なんだから………」
呆れた様に言うユニ。
「アハハ…………ご苦労様」
苦笑する翡翠。
すると、
「あっ! 何この扉!?」
「何だろう………?」
ロムとラムが周りの部屋の扉よりも大きな扉の前で立ち止まる。
「ねえ、この扉って何!?」
ラムにそう言われ、翡翠は部屋の名前が明示してある看板を読む。
「ここは整備室だね…………ISの整備をするところだよ」
翡翠がそう言うと、
「へぇ~、面白そう!」
ラムが興味ありげにそう言う。
「じゃあ、少し覗いていこっか? だけど、他の人がいたら邪魔しちゃダメだよ?」
「「は~い!」」
ロムとラムは揃って返事をすると、翡翠が扉の前に立ち、自動ドアが開く。
部屋の中は照明が点いて無かったので薄暗く、誰も居ないように思えた。
ロムとラムは部屋の中に駆け込んでいき、興味深そうに辺りを眺めた。
「へ~、こんな風になってるんだ…………!」
「すごいね~」
ロムとラムの故郷であるルウィーは、別名『夢見る白の大地』と呼ばれ、現代日本と比べるとファンタジー的な要素が強く、こういった場には中々お目にかかれないので嬉しそうだ。
とは言っても、先進的な国であるプラネテューヌや工業が盛んなラステイションに比べれば何歩も見劣りするのだが、好奇心旺盛な2人にはそんな事は関係が無く、珍しそうに見学している。
すると、
「……………………?」
翡翠がピピピッという電子音が聞こえてきたことに気付いた。
よく見ると整備室の一番奥のエリアに明かりが灯っており、誰かが作業している。
翡翠は邪魔しないようにロムとラムに注意しようとしたが、
「…………………あれ?」
作業している生徒の髪の色に見覚えがあった。
それは綺麗な水色。
「…………………刀奈ちゃん?」
翡翠は思わず声を漏らした。
「ッ!?」
すると、驚いたようにその生徒は大袈裟な素振りで翡翠に振り返った。
こちらを振り向いた生徒は楯無では無かった。
楯無と同じ水色の髪。
綺麗なルビー色の瞳。
顔の作りもよく似ている。
しかし、楯無が凛々しさを感じさせる吊り気味の目なのに対し、目の前の少女はメガネを掛けており、どちらかと言えば気弱さを感じさせる垂れ気味の目。
髪もよく見れば外に跳ねている楯無とは逆で内側に向いている。
そして、その少女は翡翠にも見覚えがあった。
「あれ…………? あなたって…………もしかして刀奈ちゃんの妹の…………名前は確か…………そう! 簪ちゃん!」
翡翠は思い出したと言わんばかりにそう言う。
「…………………翡翠…………さん…………?」
その少女――簪――も翡翠の事を思い出したようにそう呟いた。
「うん! 久しぶりだね。簪ちゃんもIS学園に居たんだ」
「は、はい…………1年4組に在籍しています」
「そっか」
翡翠は笑みを浮かべる。
「知り合い?」
ネプギアが翡翠に問いかける。
「うん。刀奈ちゃんの妹で更識 簪ちゃんだよ」
「そうなんだ。初めまして、ネプギアです。ヒスイちゃんとは義姉妹の関係だよ」
「私はユニ。よろしくね」
「私、ロムっていいます………その、よろしくお願いします………」
「私はラムよ。これからよろしく!」
女神候補生の面々が自己紹介をする。
「あ、は、はい…………よろしく………お願いします………」
簪は戸惑いながらも返事を返す。
「それで、簪ちゃんはこんな所で何やってたの…………? これって、IS? もしかして専用機!?」
翡翠は簪に何故ここに居るのかを尋ねようとした時、簪の前にある未完成のISに目が行く。
「でも、これって作りかけだよね? メンテナンスにしてはちょっとバラし過ぎだし………」
ネプギアがそう言う。
「あ………うん…………これは、私の専用機…………本当なら、もっと早く完成していた筈の機体…………」
簪はISの表面に手を触れながら、少し俯いてそう呟く簪。
「何か訳ありみたいね?」
ユニがそう察する。
「ッ……………………」
簪はますます俯いてしまう。
そんな簪を見かねたのか、
「簪ちゃん、悩みがあるんだったら聞くよ?」
翡翠がそう言う。
「…………これは、私の問題ですから…………」
簪はそう言って口を紡ごうとしたが、
「それは違います!」
ネプギアが強く否定した。
「自分の問題だからって、自分だけで解決しなきゃいけないなんてことは、絶対に無いんです! 少なくとも、私はあなたの悩みを聞いて、解決してあげたいと思ってます!」
ネプギアが続けてそう言うと、
「そうね。ここで会ったのも何かの縁だし………」
ユニも、
「お願いです………! 悩みを聞かせてください………!」
ロムも、
「話すだけでも楽になるって事もあるんじゃない?」
ラムも、それぞれが簪に対して言葉を掛ける。
「どうして……………? 会ったばかりの私に対して…………」
簪はそんな彼女達に対して困惑の表情を見せた。
「私達、困っている人を見ると、放っておけない性分なんです」
「まあ、候補生とは言え『女神』だしね」
「私達はあなたを助けたいんです」
「私達で出来ることなら力になるよ!」
4人の純粋な言葉。
簪は『更識』という特殊な家の出という事もあり、人の心の裏………『悪意』には敏感だ。
だが、目の前の4人………翡翠も含めれば5人の少女達からは欠片もそんなものは感じられない。
彼女達の純粋な想いに人見知りである簪も警戒心を持ち続けることは出来なかった。
「……………私は…………日本の代表候補生なんです」
簪はポツリと話し出す。
「『あの人』に追い着きたくて………努力して…………実力が認められて、専用機が与えられることが決定した…………」
「そうなんだ。凄いね、簪ちゃん」
翡翠は簪を純粋に称賛した。
だが、その簪の表情が目に見えて暗くなる。
「私の専用機の開発を受け持った所は『倉持技研』っていう研究所…………でも…………私の専用機の開発が始まって少しした時、ある『特殊事例』が発生した」
「特殊事例?」
ユニが反復する。
「そう。それが、世界初の『男性IS操縦者』の発見…………」
「一夏君の事だね」
翡翠の言葉に簪は頷く。
「その報告を聞いた日本政府はすぐに彼の専用機の開発を命令。その白羽の矢が立ったのが私の専用機を開発していた『倉持技研』だった…………」
「って、それってもしかして!?」
そこまで聞いたユニは話の先が読めたのか声を荒げる。
「多分あなたの思っている通り…………『倉持技研』は彼の専用機の開発を急ピッチで進めるために私の専用機の開発を無期限で凍結。スタッフを全員彼の専用機の開発に回した。だから私は製作途中だったこの機体を譲って貰って自分で完成させ………………」
「バッカじゃないの!!??」
簪が言い終わる前に、ユニが怒った顔で叫んだ。
「えっ!?」
突然叫ばれたために思わず驚いてしまう簪。
「何を考えてるのよ政府もその開発元も!? 開発スタッフを少し引き抜いて完成が遅れるならともかく、全員引き抜いて開発を完全に凍結しちゃうってどういう事よ!? 確かに世界初って事は大きな理由よ! だけど、それだけでカンザシの努力を無かったも同然にするなんて馬鹿としか言いようが無いわよ! 実力が認められているカンザシと世界初の男性操縦者だけど初心者で潜在能力も未知数のイチカ! 2人を比べて全部イチカの方にチップをつぎ込むなんて博打にも程があるでしょう!? せめてイチカの操縦者としての方向性がハッキリするまで専用機なんて作るべきじゃなかったわよ! 専用機を開発してもそれが操縦者に合って無かったら本末転倒じゃない! そのデータ取りの間にカンザシの専用機を完成させておけば良かったのに! ああもう! 考えただけでイライラする!! 私のお姉ちゃんなら絶対にそんな馬鹿な選択なんてしなかったのに!!」
不満をぶちまけるユニ。
そこでハッとして、顔を赤くする。
「あ、ごめん……………思わず…………」
ユニは縮こまって謝る。
しかし、簪は首を振った。
「ううん…………そんな風に言ってくれた人は初めてだったから…………その、嬉しかった」
簪は小さくそう言う。
すると、
「ねえカンザシちゃん。カンザシちゃんは自分でこの機体を完成させようとしてるんだよね?」
ネプギアが簪に問いかける。
「う、うん…………」
「じゃあ、私にもその手伝いをさせてくれないかな?」
続けて言われたネプギアの言葉。
「あ、いいわね。それ」
それにユニも賛同し、
「私も………役に立てるか分からないけど………お手伝いさせてください!」
「私も!」
ロムとラムもそう言う。
そんな彼女達を見て簪は、
「……………気持ちは嬉しい………でも、この機体は私1人で作り上げたいの………」
そう言ってやんわりと否定した。
「どうして?」
翡翠が聞き返すと、
「私が追い付きたい『あの人』も、1人で自分の機体をくみ上げたから…………だから、『あの人』に追いつくためにも私はこの機体を自分で完成させなきゃいけない…………!」
簪は思い詰めたような表情でそう言い切った。
だが、
「………………それは違うよ、簪ちゃん」
翡翠が口を開く。
「お兄ちゃんが言ってた。『『仲間』とはその者が持つ『強さ』の一部だからだ』って…………『仲間』や『友達』に頼ることは決して恥じゃないし、自分が出来ないことを誰かにやって貰う事も間違ってるわけじゃない。第一、もしお兄ちゃんに『仲間』が居なかったら、私は今頃ここには居なかったよ?」
「だ、だけど……………私とあなた達とは…………何の関係も……………」
簪がそう言いかけると、
「私はもう、カンザシちゃんの事は『友達』だと思ってるよ」
「ッ!?」
ネプギアの言葉に簪は驚愕の表情を見せる。
「友………達…………?」
「うん!」
簪の言葉にハッキリと頷くネプギア。
「そうね。もう『友達』なんだし、『友達』を手伝いたいと思うのは当然よね?」
「ユニ………さん………」
「ユニでいいわよ。『友達』なんだし」
「私も………ロムって呼んでください」
「私もラムでいいよ」
ユニ、ロム、ラムがそう言うと、
「もちろん、私の事もネプギアって呼んでください」
「ネプギア………ユニ…………ロム………ラム……………」
「「「「は~い!」」」」
全員が笑顔で答える。
「翡翠さん………」
簪は視線を翡翠へ向けると、
「…………うん」
翡翠は笑顔で頷く。
簪は皆に向き直ると、
「…………………皆………お願い…………この子を完成させるために、力を貸して………!」
そう言って頭を下げた。
「「「「もちろん!」」」」
その言葉にも、4人は揃って答えた。
ここに、妹達の新たな絆が結ばれた。
第29話の完成。
とりあえずチャレンジとして、シャルロットの髪をバッサリと切ってみた。
多分これについては反対も多数いると思いますので、余りにも反対が多ければ修正します。
一夏の特訓については盛り上がりが無いので省略(爆)
そして満を持して登場した簪。
妹達の邂逅です。
そして、打鉄弐式の魔改造開始。
とりあえず『夢現』はビームナギナタ(ネプギア)にして、『春雷』は大型ビームランチャー(ユニ)になって、『山嵐』は冷凍ホーミングレーザー(ロム、ラム)にでもするかな。
上のカッコ内は武装のイメージキャラです。
ぶっちゃけ割と真面目にヤル気です。
ともかく次もお楽しみに