超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第30話 学園祭の灰被り姫(シンデレラ)

 

 

 

 

翡翠やネプギア達が簪と出会ってから暫くの時が経ち。

今日は学園祭当日。

紫苑の所属する1年1組の出し物はラウラが発案した『御奉仕喫茶』である。

女子生徒はメイド服で、男子生徒の一夏は執事服で接客するのだ。

因みに紫苑は背が低く、執事服が様にならないという理由で裏方に回っている。

尚、紫苑の料理の腕はプロ級だったのでむしろこれで正解だったりする。

やはりIS学園に2人しかいない男子生徒の1人であり、見た目はイケメンである一夏が執事として接客するという事は大きなアドバンテージであり、開始時間から長蛇の列が出来ていた。

忙しい時間が過ぎていく中、客の中にはチャイナドレスを着た鈴音の姿もあり、一夏に御奉仕してもらっていて顔が真っ赤になっていた。

それから更に暫くして紫苑が休憩時間に入り、何処かに行こうと厨房となっているエリアから出てきた時だった。

一夏がスーツを着たオレンジ色の髪の女性に何やら押し切られそうになっている。

すると、それを見かねたのかクラスメイトの鷹月 静寐が口添えし、何とかその場を脱することが出来た。

そのオレンジ色の髪の女性は、やや悔しそうな表情をした後席を立ち、教室の出口へと向かって行く。

その際に気になって見ていた紫苑の前を通り過ぎるが、

 

「ッ…………………!」

 

常人では纏えない狂気のようなモノを感じ取り、紫苑は外面上は平静を装いながら彼女を目で追う。

すると、

 

「流石紫苑さん。気付いたみたいね」

 

後ろから突然声がした。

 

「…………楯無か」

 

紫苑は驚きもせずに振り返る。

そこには何故かメイド服を身に纏った楯無の姿。

 

「………まあ、服装には突っ込むつもりは無いが、今の女は一体何者だ?」

 

「ぶ~! こういう時は褒めなきゃダメなんですよ」

 

楯無が剥れる。

 

「お前は元々美人なんだし、何を着ても似合うから一々褒める必要は無いだろ?」

 

「ッ………!?」

 

紫苑の一言に楯無の顔が真っ赤に染まる。

 

「え、えっと………紫苑さん? 私の事………美人だって思うんですか?」

 

「ん? お前が美人じゃなかったら世界の8割以上の女は美人じゃないと思うが………?」

 

「そ、そうですか…………」

 

暗に超美人と言われた楯無は恥ずかしくなって縮こまる。

そんな楯無を見て紫苑は内心苦笑すると、

 

「それで、さっきの女は一体何者なんだ?」

 

紫苑は話を戻してそう問いかける。

 

「えっ? あ、はい! おそらく先程の女性は一夏君の白式を狙ってる犯罪組織の一員だと思います。ですが、まだ手出しはしないでください。泳がせて尻尾を見せるのを待つつもりなので…………」

 

「了解した」

 

「それで紫苑さん。この後生徒会の出し物があるので、紫苑さんも協力してください!」

 

「…………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑が連れられるままについて来たのは、第四アリーナに作られた劇場セット。

そこに紫苑と、そして一夏が王子様の衣装を着せられて部隊の上に放り出された。

演劇の内容は『シンデレラ』。

しかし紫苑は、あの悪戯好きの楯無が普通のシンデレラで満足するはずが無いと確信を持っていた。

 

『さあ幕開けよ!』

 

楯無のアナウンスとともにセットの幕が上がる。

 

『むかしむかし、あるところにシンデレラという少女がいました』

 

出だしはよくある普通のテンプレ。

 

『否! それはもう名前ではない。幾多の舞踏会を潜り抜け、群がる敵兵を薙ぎ倒し、灰燼を纏う事さえ厭わぬ地上最強の兵士達。彼女らを呼ぶに相応しい称号…………それが『灰被り姫(シンデレラ)』!』

 

しかし続くナレーションはテンプレを跡形もなくぶっ壊したとんでもないものだった。

楯無はノリノリでナレーションを続ける。

 

『今宵もまた、血に飢えたシンデレラ達の夜が始まる。2人の王子の冠に隠された隣国の軍事機密を狙い、舞踏会という名の死地に少女たちが舞い踊る!!』

 

「はあっ!?」

 

一夏は意味が分からず困惑する声を上げ、紫苑は予想を斜め上にぶっ飛んだ楯無の行動に軽く頭を抱えた。

するとその時、

 

「もらったぁぁぁぁっ!!」

 

いきなりの叫びと共に、白地に銀の装飾が施されたシンデレラ・ドレスを纏った鈴音が城の舞台セットの2階から飛び降りて来て、手に持った青龍刀で一夏に斬りかかった。

 

「のわっ!?」

 

反射的に一夏がその一撃を躱す。

鈴音は即座に体勢を立て直すと、

 

「その王冠、寄越しなさいよ!」

 

そう言って手で自分に寄越すようにジェスチャーをする鈴音。

 

「王冠?」

 

一夏が首を傾げる。

その時、レーザーサイトが一夏の王冠を捉えようとしており、一夏が首を傾げた瞬間に弾丸が飛来し、王冠を掠る。

 

「うわっ!? スナイパーライフル!? ってことは、セシリア!?」

 

一夏は慌てて遮蔽物に隠れる。

次々と銃弾が撃ち込まれ、一夏が身動きが取れなくなっていると、

 

「一夏、こっちだ…………!」

 

テラスの下にある茂みの影から箒が手を振っていた。

 

「箒!」

 

一夏はテラスから飛び降り、箒の元へ急ぐ。

 

「箒、助かったぜ」

 

「すぐに追ってくる。私が食い止めている間に逃げろ」

 

「分かった! サンキュー!」

 

そう言って立ち去ろうとする一夏。

すると、

 

「あっ、す、少し待て…………!」

 

箒はそう言って一夏を呼び止める。

 

「ん? 何だ?」

 

一夏は一度立ち止まって振り返る。

すると、箒は一夏に手を伸ばそうとして躊躇する仕草を見せ、

 

「…………いや、何でもない。呼び止めて済まなかった」

 

何も求めずに早く行くように促した。

 

「…………?」

 

一夏は首を傾げたが、

 

「もしかして、箒もこの王冠が欲しいのか?」

 

「えっ………? あ、いや…………」

 

箒は躊躇していたが、

 

「なんだよ、それならそうと言ってくれればいいだろ?」

 

一夏はそう笑いながら頭上の王冠に手を伸ばす。

その時、

 

『王子様にとって国とはすべて。 その重要機密が隠された王冠を失うと、自責の念によって電流が流れます』

 

一夏が王冠を外す瞬間を狙ったように、楯無のアナウンスが流れる。

 

「はい?」

 

一夏は流れるままに王冠を外してしまう。

その瞬間、

 

「ぎゃああああああああああっ!?」

 

バリバリという音と共に、一夏の身体に電流が流れる。

 

「い、一夏!?」

 

電流が収まると服の所々からプスプスと煙が上がっている。

一夏はピクピクと痙攣していた。

 

「な………な………な………なんじゃこりゃぁーーー!!」

 

一夏が叫ぶ。

 

『ああ! なんということでしょう! 王子様の国を想う心はそれほどまでに重いのか! しかし、私達には見守ることしかできません! なんということでしょう!』

 

「2回言わなくていいですよ!」

 

楯無のアナウンスに一夏が突っ込む。

 

「す、すまん箒! そういうことだから!」

 

一夏はそう言うと、王冠を被り直し、脱兎のごとく逃げ出す。

その様子を眺めていた紫苑は、

 

(あの様子だと、王冠を取ったシンデレラには、何らかのご褒美があるって所か。それで楯無の事だ。あの3人が居るという事は…………それにしても、何で箒は王冠を強請らなかったんだ?)

 

紫苑が疑問に思っていると、紫苑の背後から音もなく影が忍び寄り、

 

「はぁああああああっ!!」

 

一気に紫苑に襲い掛かった。

だが、ガキィィィィッという甲高い音と共に、その影が両手に持っていたナイフが一本の刀によって止められる。

刀は紫苑が瞬時にコールしたものだ。

 

「くっ!?」

 

紫苑に襲い掛かった影…………シンデレラ・ドレスを身に纏ったラウラが悔しそうな声を漏らす。

ラウラは即座に飛び退いて距離を取った。

 

「やっぱりお前が来たか………」

 

紫苑はラウラに振り返りながらそう言う。

 

「紫苑…………今だけはお前と敵対させてもらうぞ………!」

 

ラウラは両手のナイフを逆手にして構える。

 

「王冠にどんなご褒美が付いているのか知らないが、好き好んで電流を受けたくないんでね。抵抗させてもらうぞ………!」

 

紫苑も霞の構えを取る。

 

「「……………………」」

 

一瞬睨み合うと、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

ラウラが地を滑るような低い体勢で駆け出した。

2本のナイフを使い、常人では一撃も止められない様な素早い斬撃を繰り出す。

だが、紫苑はその全てを的確に見切り、小回りが利く筈のナイフの連撃を全て防ぎきって見せる。

 

「チィッ!」

 

ラウラは舌打ちした。

 

「接近戦で俺に勝てると思っているのか?」

 

紫苑は自信をもって、それでいて油断をしていない声でそう言う。

 

「………………」

 

ラウラは険しい表情で紫苑を見ていたが、突如フッと不敵な笑みを浮かべると、

 

「私とてお前から易々と王冠を奪えるなどと思っていないさ…………1人ならな!」

 

ラウラがそう言った瞬間、紫苑の背筋に悪寒が走り、即座にその場を飛び退いた。

その一瞬後に、先ほどまで紫苑が居た場所に無数の銃弾が撃ち込まれる。

弾はゴム弾の様だが、紫苑は何事かとラウラから気を逸らさずに視線を銃弾が来たであろう方向に向けると、

 

「援護は任せて! ラウラ!」

 

「シャルロットか!」

 

他の皆と同じくドレス姿になったシャルロットがアサルトライフルを構えていた。

 

「行くぞ、シャルロット!」

 

「オーケー!」

 

ラウラの掛け声にシャルロットが応えると、ラウラが再び突撃する体勢に入る。

紫苑がそちらに集中しようとした瞬間、

 

「………くっ!」

 

シャルロットが発砲、紫苑は回避行動を取る。

しかし、

 

「読み通りだ!」

 

回避先を読んだラウラが紫苑にナイフを振るう。

 

「チッ………!」

 

紫苑は刀でナイフを防御するが、ラウラは逆のナイフを順手に持ち替えて紫苑に向かって突き出す。

 

「ッ…………!」

 

紫苑は後ろに飛び退いてその攻撃を回避するが。

 

「逃がさないよ!」

 

シャルロットが再び発砲し、銃弾の嵐が紫苑を襲う。

紫苑は即座に地面を蹴ってシャルロットの射線軸上から隠れられる遮蔽物に身を隠した。

 

「あの2人が組むと、やはり厄介だな…………」

 

紫苑はそう零す。

 

「紫苑! 確かにお前は強い。一対一でお前に勝てる者などそうは居まい。 だが、お前はずば抜けた技量を持ってはいるが、身体能力自体はあくまで『人としては高い』レベルだ。織斑教官のように『人の限界を超えた』身体能力を持っているわけでは無い。そして、お前は剣が間に合う攻撃ならどの様な攻撃でも受け流してしまうが、逆を言えば剣が間に合わねければ防げない。それならば、マシンガンやアサルトライフルのフルオートは防げまい。それに2人掛かりで掛かればその分集中力は分散される。思い切った行動もとり辛かろう」

 

ラウラはそう言い放つ。

 

「……………正解だ。『今の俺』はただの人間。銃弾を見切る動体視力もなければ、音速を出して走れるわけでもない」

 

紫苑は内心、シェアリンクやシェアライズを使えば話は別だが………と思ってはいたが、流石にそれを使うのは大人げない気がしたので自重している。

紫苑は一度大きく息を吐く。

すると、突然ライトが落ち、

 

『2人のシンデレラの猛攻の前にピンチに陥る紫苑王子』

 

突然楯無のナレーションが始まる。

 

『しかし侮ることなかれ。紫苑王子には頼もしい味方がいる!』

 

そうして一筋のスポットライトが照らされ、そこにいた人物を浮かび上がらせる。

それは、

 

『それは紫苑王子の婚約者、プルルート姫!』

 

「えへへ~」

 

シンデレラ・ドレスよりも豪華な衣装を着たプルルートがそこに立っていた。

しかし、サイズが大きいのかそのドレスはダボダボだ。

 

『そして姫と王子を守る6人の親衛隊!』

 

更に6つのスポットライトが照らされ、紫苑の前に立つ6人の人物を浮かび上がらせた。

それは、

 

「わ、我らは王子と姫の親衛隊!」

 

白銀の鎧を着たネプギアが、派手な装飾の剣を掲げて言い放つ。

しかし、恥ずかしいのかその顔は真っ赤である。

 

「お、御二方をお守りするのが我らの使命………………! 何で私がこんな事…………

 

続いて黒い鎧を纏ったユニが長い槍を構えながら台詞を言う。

その後に小さく本音が出ているが。

 

「2人に手を出そうとする人は、誰だろうと許しません!」

 

白いローブを纏って杖を持ったロムと、

 

「さあ、覚悟しなさい!」

 

黒いトンガリ帽子とローブを纏い、杖を構えたラム。

この2人はノリノリで芝居をしている。

 

「やっちゃうぞーー!!」

 

そして、道着を着てボクシンググローブをその手に付けているピーシェ。

お芝居を理解しているのだろうか?

 

「お兄ちゃん………じゃなかった、王子達は命に代えてもお守りします!」

 

侍の格好をした翡翠。

最早統一性が無い。

 

「ぬぅ……………!」

 

戦力的に差があり過ぎると判断したのか、ラウラとシャルロットは攻めあぐねる。

すると再び照明が点き、どこからともなく地響きが近づいてくる。

 

『さあ! 只今からフリーエントリー組の参加です! みなさん王子の王冠目指して頑張ってください!』

 

観客の希望者がシンデレラとして舞台に乗り込んできた。

 

「織斑君! 大人しくしなさい!」

 

「私と幸せになりましょう、王子様!」

 

「そいつを………よこせぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

シンデレラの大群が一夏に迫る。

 

「うわぁああああああああああっ!!」

 

叫び声を上げながら逃げる一夏。

そして、その大群は紫苑にも迫っていた。

しかし、

 

(なるほど、場を混乱させてあの女が動きやすい状況を作ったのか…………)

 

紫苑は場の混乱とは裏腹に、とても冷静に状況を把握していた。

すると、

 

「月影君! 王冠を私に頂戴!」

 

「可愛い王子様! 私をつまらない現実から夢の世界に目覚めさせて!」

 

「ひと夏のアバンチュールをいざ!」

 

次々と女生徒が紫苑に群がってくる。

その勢いはネプギア達もタジタジになるほどだ。

しかし、

 

『ああ! 無数のシンデレラ達に囲まれ、絶体絶命の王子たち! ですが、大人しい様に見えて嫉妬深いプルルート姫の怒りが頂点に達した時、彼女は本性を現すのです!!』

 

楯無のナレーションがそう言った時、紫苑はまさかと動揺する。

再び照明が全て落ちて、辺りが闇に包まれた。

そして、プルルートが居た場所で光が発生する。

 

「おいおい…………」

 

紫苑は思わずゲンナリとした声を漏らす。

その光が収まると同時に照明が点き、

 

「シオン君を狙うなんて、いけない子猫ちゃん達ね?」

 

先程のダボダボのドレスのサイズがピッタリになる程に背が高くなり、スタイルも良くなったプルルート………否、アイリスハート。

しかもその手には鞭を持っている。

そのアイリスハートが周りの女生徒を眺めながら妖艶な声で話しかける。

その声を聞いた瞬間、ゾクゾクと背筋に悪寒が走る紫苑を狙っていた女生徒達。

まあ、他の生徒達には、暗くなっている間に入れ替わったと思われているだろう。

 

「本気ならともかく、物珍しいってだけでシオン君に近付こうなんて、たっちゃんが許しても、このアタシが許しはしないわ!」

 

アイリスハートがそう言うと、鞭を一度床に叩きつけ、

 

「さあ、お仕置きタイムの、は・じ・ま・り・よぉ~~!!」

 

その言葉が切っ掛けとなり、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す女生徒達。

その場は更なる混乱に包まれる。

 

「アーーーーッハッハッハッハッハ!」

 

アイリスハートの笑い声と共に、鞭の叩く音が響き渡る。

因みに女生徒の目の前に振り下ろしてはいるが、当ててはいない。

しかし、アイリスハートの見た目とその喋り方、そして行動に普通の女生徒達は恐怖に耐えられない。

その中でアイリスハートの事を知っているラウラとシャルロットは、

 

「ラウラ、どうする?」

 

「ここは一旦退くべきだな。戦略的撤退だ」

 

「私も賛成………!」

 

2人は意見が一致し、この場は退くことに決める。

アイリスハートと女生徒の悲鳴が響き渡る中、紫苑は一夏の動きに注目していた。

そして、女生徒から逃げ回る一夏が突如として開いたハッチからセットの下に引きずり込まれるのを目撃した。

 

「来たか………」

 

紫苑はそう呟くと気配を消し、誰に悟られることも無くそのハッチを開けてセットの下に飛び降りて行った。

 

 

 

 

 






第30話の完成。
学園祭をお送りしました。
シンデレラには紫苑だけではなく翡翠や女神候補生たちにも登場してもらいました。
オマケに女神様も登場。
これで場が混乱しないはずが無い。
そんで原作通りに一夏君は舞台下に引きずり込まれていきました。
さて、次回はどうなるのか!?
今日で盆休みが終わりなので次回からまた週一更新に戻ります。


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