超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第31話 祭りの裏の襲撃者(テロリスト)

 

 

 

 

 

舞台の下に引きずり込まれた一夏は誰かに手を引かれ、アリーナの更衣室へと連れてこられていた。

 

「着きましたよ」

 

「はぁ、はぁ………どうも………」

 

息を切らせながらもお礼を言う一夏。

そこで初めて一夏は自分をここまで連れてきた人物を確認できた。

 

「あ、あれ? どうして巻上さんが……………」

 

一夏は困惑した声を漏らした。

一夏をここまで連れてきた人物は、御奉仕喫茶に客としてやってきて一夏にISの装備などを進めた巻上 礼子と名乗る女性だった。

だが、一夏は何故自分を助けてここまで連れて来てくれたのかが分からない。

すると、

 

「はい、この機会に白式を頂きたいと思いまして」

 

彼女はにこやかな笑顔のままそう言った。

 

「は…………?」

 

一夏は呆然として、素っ頓狂な声を漏らす。

 

「いいから寄越しやがれよ、ガキ」

 

「えっと………あの、冗談ですか?」

 

突然変わった口調と、変わらない笑顔とのギャップで一夏は思考が停止し、状況を把握できずにそんな馬鹿な事を聞いてしまう。

 

「冗談でてめえみてえなガキと話すかよ、マジでむかつくぜ」

 

その女性はそう言うと、一夏の腹を思い切り蹴飛ばした。

 

「ぐっ!?」

 

蹴飛ばされた一夏はロッカーに叩きつけられる。

 

「ゲホッ! ゲホッ! あ、あなたは一体………!?」

 

「あぁ? 私か? 企業の人間に成りすました謎の美女だよ。おら、嬉しいか?」

 

思わず問いかけた一夏にそう答えながら近付いた女性は、更に一夏に蹴りを加えようと足を振りかぶり、

 

「…………フッ!」

 

「ぶふっ!?」

 

気配無く駆けてきた紫苑の飛び蹴りを顔面に受けた。

紫苑の飛び蹴りを受けて女性は吹き飛び、ロッカーに激突して倒れる。

 

「なっ!? ま、巻上さん!?」

 

一夏はあろうことか吹き飛んだ女性に向かって心配するような声を上げた。

そして、その矛先は目の前の人物に向く。

 

「紫苑! 巻上さんになんて事を!? しかも顔を蹴るなんて!!」

 

一夏はよろよろと起き上がりながら叫ぶ。

紫苑は吹き飛ばした女性から意識を逸らさずに、溜息を吐く。

 

「この状況でそんな事を言えるお前を逆に感心するぞ…………」

 

「何っ!?」

 

一夏は敵意に似た感情を紫苑へ向ける。

一夏は以前の出来事も相まって紫苑に対する対抗心が際立っている。

すると、女性がゆらりと立ち上がり、

 

「あぁ~痛ぇ…………このガキ、よくもこの私の顔を思いっきり蹴りやがったなぁっ!」

 

先程までの笑顔が嘘のように狂気じみた表情を浮かべる女性。

 

「ま、巻上さん………?」

 

その表情に、一夏は更に困惑の感情を見せる。

そんな一夏を見かね、

 

「いい加減にその平和ボケした考えを改めろ一夏! 奴は『敵』だ!」

 

彼女から視線を逸らさずに紫苑はそう言った。

そこでようやく一夏も彼女の異常さに気付き、

 

「ッ………白式……!」

 

今更と思える状況でISを展開した。

すると、その女性はニヤリと笑い、

 

「待ってたぜ、そいつを使うのをよぉ!」

 

彼女の来ているスーツを突き破って背中から8本の装甲脚が飛び出す。

それぞれの先端には爪のような刃物が付いていた。

それはさながら蜘蛛の足の様だった。

 

「くらいやがれっ!!」

 

装甲脚の先端が割れるように開いて銃口が見える。

 

「ッ!?」

 

一夏は即座に床を蹴って天井に向かって緊急回避を行った。

一瞬後に一夏がいた場所にレーザーが着弾する。

 

「ほう……やるじゃねえか」

 

不意打ちを回避した一夏に称賛の言葉を贈る女。

勢い余って天井に激突した一夏は、

 

「何なんだよ! アンタは!?」

 

雪片を呼び出し、女性に斬りかかる。

その斬撃を後ろに跳んで躱した女性が言葉を続けた。

 

「ああん? 知らねーのかよ、悪の組織の1人だっつーの!」

 

「ふざけん………!」

 

「ふざけてねえっつーの! ガキが! 秘密結社『亡国機業(ファントム・タスク)』が一人、オータム様って言えばわかるかぁ!?」

 

その女―――オータム―――は調子に乗った口調で一夏を狙い続ける。

だがその瞬間、

 

「ッ!?」

 

背後に悪寒を感じ、装甲脚の数本を首の防御に回した。

それとほぼ同時に、ギィンっと金属が強くこすれ合う音が響き、オータムはたたらを踏む。

 

「なっ!?」

 

驚愕するオータム。

防御した装甲脚の1本に、装甲脚の太さの4分の1ほどまでの深さの切り傷が付いていた。

するとそこには刀を振り切った体勢の紫苑の姿。

 

「中々いい反応だ…………」

 

そう言いながら不敵な笑みを浮かべる紫苑。

 

「てめぇ………後ろからとはやってくれるじゃねえか…………!」

 

オータムは狂気の笑みを崩さずにそう言うが、一夏の時とは違い、その頬には冷や汗がたらりと流れていた。

オータムは誤魔化すようにその冷や汗を拭う。

オータムは紫苑を危険な障害と判断していた。

その時、

 

「手を出すな紫苑!!」

 

一夏が叫ぶ。

 

「あぁ?」

 

「…………………」

 

オータムは怪訝な表情で振り返り、紫苑は無言で一夏を見る。

 

「こいつは俺が倒す!」

 

一夏は雪片を構えてそう言い放つ。

 

「……………言っておくがこいつはお前よりも格上だぞ」

 

「うるせぇ! 俺は後ろから斬りかかるような卑怯者の手を借りるつもりなんてない! それに俺だって楯無さんの訓練を受けて成長してるんだ! こんな奴ぐらい俺1人で………!」

 

紫苑はその台詞を聞くと大きく溜息を吐く。

そして刀を鞘に納めると、

 

「………………好きにしろ」

 

戦闘態勢を解いて数歩下がる。

 

「ああん? いいのかよ? 2人掛かりならもしかしたら私に勝てるかもしれないぜぇ?」

 

オータムは余裕の表情でそう言うとISを完全に展開。

蜘蛛をイメージさせるIS『アラクネ』を纏う。

しかし、紫苑はそれに興味を持つような仕草は見せず、

 

「本人が1人でやりたいって言うんだ、好きにさせるさ。まあ、本気でヤバいと判断したら介入させてもらうがな」

 

紫苑はそう言いながらオータムが不意打ちで放ったレーザーを後ろに飛び退きながらの宙返りで躱し、オータムと一定の距離を取る。

 

「チッ!」

 

オータムが舌打ちすると、

 

「お前の相手は俺だ!」

 

後ろから一夏が呼びかける。

剣を正眼に構え、オータムの動きに備える。

 

「ハッ! 馬鹿正直な奴だな。私の目が奴に向いている隙に斬りかかれば、もしかしたら一撃当てられたかもしれないぜ?」

 

オータムは一夏を馬鹿にした口調でそう言う。

 

「馬鹿にするな! 俺はそんな卑怯な手は使わない!」

 

一夏はそう言い切るが、

 

「ハッ! 青い青い! そんなんじゃあこの先生き残れないぜ!」

 

オータムはそう言うと装甲脚の全ての銃口を一夏へと向け、レーザーを放つ。

 

「ッ!?」

 

一夏は天井に向かって回避するとその勢いのまま雪片を振りかぶってオータムに向かって斬りかかる。

 

「もらった!!」

 

「甘ぇ!」

 

一夏の必倒の意思を持って振るわれた一撃は、8本の装甲脚によって防がれる。

逆に弾き返された一夏は宙返りで何とか床に着地した。

しかし、一夏は負けじとすぐに突っ込み斬りかかる。

 

「でやぁああああっ!!」

 

「ハンッ!」

 

一夏の攻撃をオータムは装甲脚で防ぎ、更に別の装甲脚で反撃に転じる。

 

「くっ………!」

 

何度か切り結んだ一夏は一旦距離を取る。

 

(手数が多い………装甲も硬い………)

 

素人目でも相手の戦力を分析する一夏。

 

「だけど!」

 

一夏はタイミングを見計らい、一気に突っ込む。

だが、いくら分析した所で正面から突っ込むだけでは何も意味は無い。

 

「はぁああああああああっ!!」

 

「馬鹿め!」

 

飛び込んできた所を装甲脚で迎撃され、一夏は逆に吹き飛ばされた。

 

「ぐあぁっ!?」

 

ロッカーに叩きつけられ、苦悶の声を漏らす。

 

「オラオラァッ!」

 

オータムは一夏を狙って次々とレーザーを放つ。

 

「くっ………!」

 

一夏はそれを横に回避するが、オータムは射撃を止めずに方向を修正しながら次々と一夏を狙う。

一夏は堪らずオータムを中心とした円軌道で射撃を避けながら様子を伺う。

 

「……………敵の動きが…………これは………?」

 

だが、その時一夏は気付いた。

今の状況は、楯無と訓練した『シューターフロー』の状況と酷似していることに。

 

「間合いがつかめる!」

 

一夏は体勢を整え、何時でも反撃に転じられる体勢をとりながら円軌道を続ける。

 

「このガキ、ちょこまかと!」

 

オータムはアサルトライフルを呼び出してそれをフルオートで連射する。

一夏はその攻撃を体勢を崩すことなく避けていた。

自然と一夏の口元に笑みが浮かび、左手を握ったり開いたりしている。

訓練の成果が出ていることに味を占めたのだろう。

だが、

 

「そうそう、ついでに教えといてやるよ。第二回モンド・グロッソでお前を拉致したのはウチの組織だ! 感動のご対面だなぁ! ハハハ!」

 

その言葉を聞いた時、一夏の頭は一瞬にして沸点を超えた。

 

「だったらあの時の借りを返してやらぁ!!」

 

一夏は感情のままに真正面から瞬時加速(イグニッション・ブースト)で突っ込む。

だが、オータムはそれを見越していた。

 

「クク、やっぱガキだなぁ、おい。こんな真正面から突っ込んできやがって……よぉっ!」

 

突っ込んでくる一夏に向かって掌からエネルギーで出来た白い塊を放つ。

それは一夏の目の前で広がり、網となって一夏を絡めとった。

 

「くっ、このっ………!」

 

エネルギーワイヤーに絡めとられた一夏は振りほどこうともがくがビクともしない。

 

「ハハハ! 楽勝だぜ全くよぉ! クモの糸を甘く見てるからそうなるんだぜぇ?」

 

そんな一夏にニヤリと笑みを浮かべながらオータムが近付いていく。

オータムは糸を巧みに操って一夏を宙吊りにした。

すると、

 

「……………ここまでだな」

 

傍観に徹していた紫苑が動き出した。

 

「あぁ? そういやそうだったなぁ…………まだお前がいたんだ………!」

 

オータムが一夏に背を向け、紫苑に振り返る。

 

「待て! 俺はまだ負けてない!」

 

「はぁ? 何寝言ほざいてんだてめぇ? どっからどう見てもてめえの負けだろ?」

 

「まだだ! まだ俺は…………!」

 

オータムの言葉に一夏が言い返そうとした時、

 

「一夏………お前が認めたくなくても俺が声を掛けるまでにその糸から逃れられなかった時点でお前の『負け』だ…………」

 

「ぐ…………!」

 

強がろうとする一夏だが、未だに糸から逃れられていない現実の前に悔しそうな表情をする。

 

「わざわざ格上だと忠告しておいたにも関わらず真正面から挑めばそうなるのは当然だがな」

 

「お前は俺が成長してないって言いたいのか!?」

 

「違う。確かにお前は楯無の訓練を受けて成長した。それは俺も認めよう。だが、その成長分を踏まえたとしてもまだコイツの方が格上だと言ったんだ」

 

「ッ……………!」

 

紫苑の言葉に一夏は何も言えなくなってしまう。

すると、

 

「おしゃべりはお終いか?」

 

オータムが紫苑に銃口を向ける。

 

「そうだな…………そろそろ始めようか…………!」

 

紫苑はオータムを見据える。

 

「シェアリンク!」

 

紫苑は右手に機械を組み合わせたような大きめの片手剣を具現した。

 

「「………………………」」

 

一瞬互いに睨み合うと、

 

「喰らいやがれ!!」

 

オータムが装甲脚を広げ、レーザーを放とうとする。

 

「ッ……………!」

 

その瞬間、紫苑は前に出た。

シェアリンクによって上がった身体能力は、レーザーが放たれるよりも早く紫苑の身体を前に押し出す。

その一瞬後にレーザーが紫苑の居た所に集中するが、その時には既に紫苑は半分ほど間合いを詰めていた。

 

「ッ!?」

 

予想以上のスピードで迫ってきた紫苑に、オータムは驚愕しながらも掌を向けて紫苑をエネルギーワイヤーで拘束しようと塊を放った。

しかしその寸前、紫苑は地面を蹴って跳躍、その塊は虚しく空を切る。

その直後、紫苑は天井に足を付けたかと思うと一気に蹴り、オータムの頭上から斬りかかった。

 

「フッ………!」

 

その一閃はアラクネの装甲脚の1本を切り落とす。

 

「ぐっ………この野郎っ!」

 

オータムは残りの装甲脚で紫苑を狙うが、

 

「なっ!?」

 

紫苑は滑り込むようにアラクネの下に潜り込み、その攻撃を躱す。

オータムは慌てて下を確認しようとしたが、次の瞬間には紫苑が装甲脚の1本を切り落としながらアラクネの下から脱出する。

 

「くそがぁ!」

 

オータムは怒り狂いながら紫苑へ装甲脚の銃口を向けようとして、3発の銃声が鳴り響き、紫苑へ向けようとした装甲脚の銃口が破壊される。

見れば、紫苑が片手剣を銃へと変形させ、それをオータムに向かって構えていた。

 

「チィッ…………ただのガキじゃねえな…………」

 

オータムは紫苑の評価を更に上方修正させ、油断なく身構えた。

すると紫苑は再び銃を片手剣へと変形させると…………オータムの視界から消えた。

 

「なっ!?」

 

オータムが驚愕した瞬間、背後から銀閃が煌めき、装甲脚の1本が切り落とされる。

 

「こいつっ!」

 

オータムが振り向くが、そこには既に紫苑は居ない。

再び背後から銀閃が煌めき、装甲脚が切り落とされる。

 

「なぁっ!?」

 

紫苑は壁、天井、床。

あらゆる場所を足場にしながらオータムの意識を掻い潜り、次々と装甲脚を切り落としていく。

装甲脚が残り2本になったとき、紫苑が天井から斬りかかる。

その時、

 

「ハッ! ヤマが当たったぜ!」

 

偶然にも紫苑の姿をオータムが捉えた。

オータムは紫苑の攻撃を受け止めて反撃に移るために、2本の装甲脚を防御に回す。

だが、

 

「………アクス」

 

紫苑は片手剣を斧へと変形させると、

 

「はぁああああああああああああっ!!」

 

最大限に力を込めてその装甲脚に叩きつけた。

 

「なっ!? がぁあああああああっ!?」

 

今までの切り裂く攻撃とは違い、叩き割る攻撃に残った2本の装甲脚は耐えきれずに圧し折られる。

オータムは膝を着いた。

 

「くそがぁっ! 何故だ!? 何故ここまで動きが読まれる!?」

 

オータムは吐き捨てるように疑問をぶちまけた。

すると、紫苑がオータムの前に姿を見せ、

 

「俺が何も考えずに一夏を戦わせたと思っているのか?」

 

その言葉を聞いてオータムはハッとした。

 

「なっ!? じゃあ、奴を最初に戦わせたのは………!」

 

「お前の行動、性格、攻撃パターン、そして呼吸…………しっかりと見せてもらったぜ………!」

 

紫苑はニヤリと笑う。

 

「くっ…………まだだ!」

 

オータムは立ち上がりながら抗う姿勢を見せる。

だが、

 

「いや………もう終わりだ」

 

「何っ…………!?」

 

紫苑の言葉にオータムが声を漏らした時、

 

「そうね…………もう終わらせましょう」

 

この場に4人目の声が響いた。

 

「なっ!?」

 

オータムが驚いて振り返ると、そこには水色のISを纏った楯無の姿。

 

「全く紫苑さんてば、折角の私の専用機のお披露目なのにこれじゃあ台無しじゃないですか……………フッ!」

 

楯無がおどけた態度でそう言いながらも手に持ったランスを振りかぶり、一閃した。

オータムは咄嗟に飛び退いたが、胸部装甲に一筋の傷が出来る。

 

「あら、浅かったかしら? そのIS、中々の機動性を持ってるのね?」

 

「な、何だてめえは!?」

 

「私の名は更識 楯無。そしてIS『霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)』よ!」

 

オータムの言葉に楯無はランスを構えて答える。

 

「ぐっ………今ここで殺してやらぁ!!」

 

オータムはアサルトライフルを楯無に向けて発砲する。

だが、楯無の前に水が集まり、弾丸を弾いた。

 

「うふふ、何て言う悪役発言かしら。これじゃあ私が勝つのは必然ね」

 

「くそっ! ガキが、調子付くなぁっ!!」

 

オータムはアサルトライフルを捨てると両手にカタールを呼び出し、楯無に接近戦を挑もうと飛び込んできた。

だが、

 

「俺を忘れるなよ」

 

楯無の前に紫苑が立ちはだかり、突き出されたカタールを片手剣の一閃にて叩き落す。

更に紫苑はその勢いのまま回転し、回し蹴りをオータムの頭に叩き込む。

 

「がっ!?」

 

オータムが怯み、その隙に更に紫苑はもう一回転。

勢いの付いた斬撃をお見舞いした。

 

「シューティングスラッシュ!!」

 

オータムは咄嗟に反対の手のカタールで防御しようとしたが、腕部装甲ごと切り落とされ、たじろぎながら後退する。

 

「フ…………カタールの使い方がお粗末だな。俺の知るカタール使いなら、今ぐらいの攻撃なら凌げるぞ」

 

紫苑は自分の知るカタール使いの少女―――アイエフ―――とオータムの技量の差をそう評する。

 

「ちっくしょう………………!」

 

フルフェイス型のバイザーの下でオータムは悔しそうな表情を浮かべると、天井を突き破って逃走を試みた。

 

 

 

 

 

 

脱出したオータムは舞台セットの上をよろけながらも速足でこの場を離れようとする。

既に避難命令が出ているのか、客席に生徒達の姿は無い。

しかし、

 

「あらぁ~? もう帰っちゃうのぉ~?」

 

妖艶な声が響く。

それはオータムの前に立ち塞がったプロセッサユニットを展開したアイリスハート。

 

「なっ!?」

 

その事に驚愕した瞬間、オータムの身体の自由が奪われた。

 

「こ、こいつは………AICか!?」

 

「その通りだ。『亡国機業(ファントム・タスク)』」

 

オータムの言葉に、背後からラウラが正解だと言わんばかりに答えた。

ラウラは右手を前に翳し、AICを発動している。

更に、オータムの両サイドから銃口と剣の切っ先が突きつけられた。

 

「往生際が悪いよ!」

 

「観念するんだな!」

 

アサルトライフルを突き付けたシャルロットと、刀を突き付けた箒がそう言い放つ。

オータムの進退が極まり、打つ手はもう無いと思われた時、アリーナの天井を突き破ってレーザーが降り注いだ。

 

「「ッ!?」」

 

「♪~」

 

箒とシャルロットは咄嗟に飛び退くが、アイリスハートは涼しい顔で爆風の余波に煽られている。

ラウラはその場でAICを切らさないように耐えたが、天井に空いた穴から一機のISが舞い降りてきた。

それはイギリスで開発されている筈の新型のBT2号機『サイレント・ゼフィルス』

 

「増援!? オルコットと凰が突破されたのか!」

 

ラウラが驚愕するが、そのISはラウラの近くへと降り立ち、光るナイフを抜いた。

ラウラは攻撃に備えたが、サイレント・ゼフィルスは突っ込んできたかと思うとナイフでオータムを捉えていたAICを破壊した。

 

「なっ!?」

 

その事に驚愕するラウラ。

すると、

 

「その程度か? ドイツの『遺伝子強化素体(アドヴァンスド)』」

 

サイレント・ゼフィルスの操縦者がそう呟いた。

その言葉を聞いてラウラは別の意味で驚愕の表情を浮かべ、

 

「貴様、何故それを知っている?」

 

ラウラは思わず問いかけたが、

 

「言う必要は無い」

 

サイレント・ゼフィルスの操縦者はそう淡々と答えるとオータムに向き直り、

 

「迎撃態勢が整い過ぎた。帰投するぞ、オータム」

 

同じように感情の籠っていない声で淡々と告げる。

すると、オータムは悔しそうな表情をしながらも腕部装甲を消すと、ISの下半身を乗り捨て、コアだけを抜き出すとサイレント・ゼフィルスの操縦者に掴まる。

するとサイレント・ゼフィルスは6機のビットを射出すると足止めの為に無数のレーザーを放ち、その隙に天井の穴から飛び出す。

残されたアラクネの下半身はその場に残されたが、そのアラクネからまるでカウントダウンのような電子音が鳴り響いており、

 

「これは拙いわねぇ~?」

 

アイリスハートが余り切羽詰まっていない表情でそう言いながら連節剣を鞭のように振り回し、アラクネに絡みつかせる。

 

「ハッ!」

 

そのまま上に振り上げるとアラクネが宙に放り投げられ、

 

「ピーシェちゃ~ん!」

 

アイリスハートがそう呼びかけた瞬間、何処からともなく変身したピーシェことイエローハートがそのアラクネに向かって飛んでいき、

 

「ヴァルキリーファーーーーング!!」

 

アラクネを思い切り殴り飛ばした。

アラクネは吹き飛ばされ、アリーナの天井に激突。

その瞬間に大爆発を起こし、アリーナの天井に大穴を開けた。

 

「……………遅かったか………」

 

一夏を助けた後文句を言ってきた一夏を何とか宥めた紫苑が穴から出てきたが、既にオータムたちは遥か彼方だった。

 

 

 

 

 

 

 

尚、学園祭の一夏争奪戦の結果だが、楯無が生徒会の出し物『シンデレラ』(?)にフリーエントリー組として参加する条件を『生徒会への投票』としていたために生徒会の圧勝だった。

これにより一夏は生徒会の副会長の座に就いた(就かされた)のだが、各部への助っ人として貸し出されることになり、一夏は頭を抱えることとなった。

 

 

 

 

 

 











第31話の完成。
とりあえずオータム戦です。
一夏君頑張りましたが原作と同じくとっ捕まりました。
しかも紫苑が楯無の見せ場を半分以上奪ってしまうという暴挙に。
今更だが紫苑の俺Thuee感が半端なくなってきた。
最強ではない筈なのに……………
というより、ISの最強ランクがぶっ飛び過ぎだという理由もあるんですがね。
あと女神も………
とりあえず次も頑張ります。
後、リクエストですが今の所2(一夏ヒロインが全員一夏から離れる)が9票、3(一夏ヒロインの一部が離れる)が14票で3がリード中です。
このままだと3で決定なのですが、この流れで行くとシャルロット(確定)と箒(未確定)が離れそうです。
多分、次かその次の話で締め切りますのでご意見ある人は活動報告までお願いします。




↓に何となく思いついたオマケNGシーン






サイレント・ゼフィルスは6機のビットを射出すると足止めの為に無数のレーザーを放ち、その隙に天井の穴から飛び出す。
残されたアラクネの下半身はその場に残されたが、そのアラクネからまるでカウントダウンのような電子音が鳴り響いており、

「これは拙いわねぇ~?」

アイリスハートが余り切羽詰まっていない表情でそう言いながら連節剣を鞭のように振り回し、アラクネに絡みつかせる。

「ハッ!」

そのまま上に振り上げるとアラクネが宙に放り投げられ、

「ピーシェちゃ~ん!」

アイリスハートがそう呼びかけた瞬間、何処からともなく変身したピーシェことイエローハートがそのアラクネに向かって飛んでいき、

「ヴァルキリーファーーーーング!!」

アラクネを思い切り殴り飛ばした。
吹き飛んだアラクネは丁度サイレント・ゼフィルスが飛び出していった穴から外へ飛び出し………………撤退中のサイレント・ゼフィルスのすぐ傍へ。

「「……………あ(汗)」」

サイレント・ゼフィルスの操縦者とオータムが声を漏らした瞬間、
―――ドゴォォォォォォォォォォォン
と大爆発に呑まれた。

「「「「「あ…………(汗)」」」」」

それを目撃した一同は思わず声を漏らした。
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