超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第3話 プラネテューヌの女神(ネプテューヌ)

 

 

 

 

 

友好条約の式典から1ヶ月。

未来に思いを馳せ微笑んでいたイストワールの表情は苦悶に歪んでいた。

その理由は、

 

「ネプテューヌさん! 全然女神の仕事してないじゃないですか!!」

 

叫ぶイストワールの前で寝転がりながらゲームに勤しむネプテューヌの姿だった。

 

「聞いてるんですか!?」

 

「ふぇ? まぁ………所謂一つの………平和ボケ?」

 

イストワールの言葉にも、全く反省の色を見せないネプテューヌ。

 

「ネプテューヌさん! 女神には色々とお仕事が…………」

 

イストワールがそう言いかけた所で、

 

「お姉ちゃーん! お茶入ったよ」

 

「ッ!?」

 

ネプギアがお茶を持って入室してきた事に驚愕するイストワール。

 

「サンキューネプギア! 対戦プレイやろっか!」

 

「うん!」

 

ネプギアは普段真面目だが、姉であるネプテューヌを慕っていることもあり、ネプテューヌの言葉で行動はかなり左右される。

 

「ネプギアさんまで…………!」

 

怒りに震えるイストワール。

 

「いい加減に……………!」

 

そして爆発した。

 

「してくださーーーーーーーーーーい!!!」

 

叫びながらゲーム機の電源コードを直接引っこ抜いた。

 

「ねぷっ!? それダメって説明書に書いてあるのに!」

 

イストワールの行動にネプテューヌは注意するが、

 

「………わっ!?」

 

ゲームのアダプターはプラグ側に重量が偏っている仕様であり、それを勢いよく引っこ抜いたイストワールはハンマー投げのようにグルグルと振り回されていたため、ネプテューヌは慌てて姿勢を低くして避ける。

 

「読者の皆は真似しないでね!」

 

誰に言っているのかそんなことを言うネプテューヌ。

再びアダプターが迫ってきたため再度避けるネプテューヌ。

すると、部屋の扉が開き、

 

「ただい………ま゛っ!?」

 

入室してきた紫苑の顔面に直撃した。

 

「「「あ…………」」」

 

思わず揃って声を漏らした3人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたた……………」

 

鼻の頭に絆創膏を張った紫苑が顔を摩る。

 

「ごめんなさいごめんなさい!」

 

イストワールは先程から何度も謝っている。

 

「もういいよイストワール。大した怪我じゃなかったんだからさ」

 

「本当にすみません…………」

 

イストワールはしゅんとなる。

 

「んで? いったい何が原因であんなことになったんだ?」

 

紫苑がそう聞くと、しゅんとしていた雰囲気から一転、ガーッと捲し立てた。

 

「そうです! このシェアクリスタルを見てください!」

 

因みにここはシェアクリスタルの間で、不思議な空間の中央にシェアクリスタルが浮かんでいた。

そのシェアクリスタルは神秘的な輝きを放っている。

 

「シェアクリスタルがどうかしたんですか?」

 

ネプギアが尋ねた。

 

「シェアクリスタルに集まる我が国のシェアエナジーの量が、最近全く増えていないんです! むしろ僅かですが減っています!」

 

イストワールが力説するが、

 

「え~? 減ってるって言ってもちょっとでしょ? 心配すること無くな~い?」

 

ネプテューヌは危機感0でそう言う。

 

「無くないです!! シェアの源が何かご存じでしょう!?」

 

「は~……………」

 

「国民の皆さんの女神を信じる心………ですよね?」

 

ネプテューヌの代わりにネプギアが答える。

 

「そう! つまりシェアが増えていないということは、ネプテューヌさんを心から信じる人が増えていないという事です!」

 

イストワールが険しい表情でそう言う。

 

「え~? 嫌われるようなことした覚えないよ~?」

 

ネプテューヌはそう言うが、

 

「ん~………好かれるような事も、最近してないかも?」

 

「うっ…………!」

 

ネプギアの言葉にネプテューヌは若干ショックを受ける。

 

「それに! シェアが減ってないことも、誰のお陰が分かっているんですか!?」

 

イストワールは続ける。

 

「え~~……? 私の人徳?」

 

ネプテューヌは割と真面目にそう答えたが、

 

「違います!」

 

イストワールは額に青筋を浮かべながら力強く否定する。

 

「シェアの量が何とか横這いを保っているのは、ここ一ヶ月ほぼ毎日シオンさんが教会からの使いという名目でクエストを熟しているからです!!」

 

「いや、まあ、居候の身だし少し位は手伝った方が良いんじゃないかと…………」

 

イストワールの言葉に紫苑はそう言う。

 

「そうだったんだ~! じゃあ、これからもシオンに任せていれば平気だね!」

 

ネプテューヌがここぞとばかりにそう言うと、

 

「何バカなこと言っているんですか!? ネプテューヌさん!! いくらシオンさんが頑張っているといっても、ネプテューヌさん本人が働かなければシェアは増加しません! それ以前にシオンさんは女神ではなくただの人間です! ただの人間のシオンさんがこのペースでクエストを熟し続けていれば、そう遠くない内に体を壊してしまいます!」

 

イストワールがものすごい剣幕で捲し立てる。

 

「ま、まあまあイストワール………俺ならしばらくは大丈夫だから………疲れたらちゃんと休養は取るし…………」

 

紫苑はそう言ってイストワールを宥めると、

 

「ほらほら! シオンもこう言ってることだし!」

 

ネプテューヌはお説教から逃れようと紫苑の言葉に便乗する。

 

「シオンさん! あまりネプテューヌさんを甘やかさないでください!」

 

イストワールは紫苑にも注意を促す。

すると、

 

「イストワール様の言う通りよ、シオン」

 

その言葉と共に、アイエフとコンパがシェアクリスタルの間に入室してきた。

 

「すみませんイストワール様。話し声が聞こえたものでつい………」

 

「アイエフさんとコンパさんなら別に………」

 

謝るアイエフをイストワールは気にしていないという意を伝える。

 

「あいちゃんまでいーすんの味方するの!? こんぱは違うよね?」

 

アイエフに裏切られたと言わんばかりにネプテューヌはコンパに縋るが、

 

「ねぷねぷ、これ見るです」

 

そう言ってコンパは一枚のチラシを見せる。

 

「えっ………? 女神……要らない………」

 

「がっ!?」

 

ネプテューヌが内容を読み上げるとイストワールは衝撃を受けて脱力する。

 

「こういう人たちにねぷねぷの事を分かってもらうには、お仕事、もっと頑張らないとです!」

 

口調はいつも通りだが言葉にはできない凄みをみせるコンパの言葉にネプテューヌはたじろいだ。

 

「うわぁああっ! これぞ四面楚歌! 私大ピンチ!」

 

反省の色を見せないネプテューヌの言葉にイストワールの口元がヒクついた。

 

「ピンチなのはこの国の方です! そもそも女神とは国民の為に努力しなければならないのです! 女神が大きな力を持っているのはその為なんですよ…………!」

 

始まるイストワールの説教にネプテューヌは、

 

(あ~あ。お説教やだな~………どうにかして逃げられないかな~………)

 

と、反省ゼロの態度でそのような事を思っていた。

そして、

 

(…………あ、そうだ!)

 

良い事思いついたと言わんばかりにポンッと手を打つと、

 

「私ぃ、女神の心得を教わってくるよ!」

 

ビシッと指を指してそんな事を言った。

 

「えっ…………? 教わるって…………誰にです?」

 

イストワールは予想していない言葉に呆気にとられた声を漏らす。

 

「ん~と…………ノワール!」

 

「「「ええっ!?」」」

 

「ラステイションの、ノワール!」

 

その鶴の一声でラステイションへ行くこととなった。

 

 

 

 

 

 

数日後、ラステイションの教会。

 

「ねえ…………よくわからないんだけど…………」

 

ラステイションの女神であるノワールが苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべている。

その理由は、

 

「どうしてお隣の国の女神がウチの教会で寝てるのかしら!?」

 

展望デッキの真ん中にビーチチェアを置き、そこで惰眠をむさぼるネプテューヌの姿であった。

一緒に居るアイエフに至ってはバツの悪そうな表情だ。

 

「んあ? 構わずにお仕事して~。私気にしないから~」

 

「私が気にするわよ!!」

 

ネプテューヌの言葉にノワールが怒鳴る。

 

「ごめんなさいノワールさん。お姉ちゃ~ん…………」

 

ネプギアが謝りながらネプテューヌを起こそうと身体を揺するが、

 

「いいじゃ~ん………」

 

ネプテューヌは起きようとしない。

 

「女神の心得を聞くんじゃ………」

 

ネプギアがそう言いかけるが、

 

「悪いけどお断りよ」

 

ノワールがきっぱりとそう言った。

 

「私、敵に塩を送る気なんてないから」

 

ノワールは突き放すような言い方をする。

 

「え~、敵は違うでしょ~? 友好条約を結んだんだから、もう仲間………」

 

「シェアを奪い合う関係に変わりは無いんだから、敵よ!」

 

「も~! そう言う可愛くない言い方するから友達いないとか言われちゃうんだよ~!」

 

「なっ!?」

 

ネプテューヌの言葉にノワールは激しく動揺した。

 

「と、友達ぐらいいるわよ!」

 

たじろぎながらもそう返すノワール。

 

「へ~、誰? 何処の何さん?」

 

眼を輝かせながら詰め寄るネプテューヌ。

 

「え、えっと………それは………」

 

ノワールは、その問いの返答に困る表情を見せる。

と、その時エレベーターの扉が開き、

 

「お姉ちゃん、この書類、終わったよ」

 

そう言いながらノワールの妹のユニが書類の束を抱えながら現れた。

 

「あ、お疲れ様ユニ。そこに置いといて」

 

ノワールはそれだけ言うと再びネプテューヌに向き直ろうとしたが、

 

「あ、あのね………!」

 

ユニに呼び止められ、

 

「今回結構早かったでしょ? 私、結構頑張ったんだ………」

 

ユニはただ尊敬する姉に褒めて欲しくてそう言っただけだったのだが、

 

「まあそうね…………普通レベルにはなったかしら」

 

ノワールの返事は素っ気ないものだった。

ノワールはすぐにネプテューヌに振り返り、口論を続ける。

ユニは目に見えてガッカリした表情になり、書類を机の上に置いてトボトボとエレベーターの扉へ向かう。

丁度その時エレベーターの扉が開き紫苑が出てくるが、ユニは顔を俯かせたまま紫苑と擦れ違う。

 

「?」

 

紫苑はそんなユニが気になって振り返るが、ユニはそのままエレベーターに乗って出ていった。

紫苑はユニの事が少し気になったが、その前にネプテューヌと言い合っているノワールに声を掛ける。

 

「ノワール、頼まれたクエスト終わったぞ」

 

「あ、シオン、ご苦労様。仕事が早くて助かるわ」

 

ノワールはそう返す。

 

「あれ~? シオン、どこ行ってたの?」

 

ネプテューヌは首を傾げる。

 

「アンタねえ…………一緒に連れてきた人の動向ぐらい確認しときなさいよ! シオンには簡単なクエストを熟してもらってるの! 女神が出張るほどじゃないけど一般人にはキツイ討伐依頼が結構あるから、そういうのをシオンに手伝ってもらってるのよ! っていうか、そうじゃなきゃ惰眠を貪るだけのアンタをここに置いておくわけないじゃない!」

 

「あ~、そうなんだ~。シオン、ご苦労様~」

 

のほほんとしたネプテューヌにノワールは呆れる。

 

「はぁ…………シオン、真面目にウチの国に来ない? 少なくともネプテューヌの下に居るよりかは優遇するわよ」

 

「あ、あはは………」

 

思わぬ勧誘に紫苑は苦笑する。

 

「ぶ~。シオンは私の国の国民だぞ~!」

 

「そのセリフはシオンに正当な報酬を与えてから言いなさい。どうせアンタが教会でゴロゴロしてる間にシオンが代わりにクエスト熟してたんでしょ? それでクエストの報酬以外の見返りは無し………と」

 

「うっ………!」

 

明確な図星にネプテューヌはたじろぐ。

 

「そんな扱いだからシェアが減るのよ! 優秀な人物を正当に評価して、正当な報酬を与える! それは女神でなくとも人の上に立つ人物なら当然の事よ!」

 

「ま、まあまあ………その代わりに俺は教会に居候させてもらってるし…………」

 

紫苑はそう言ってノワールを宥めようとするが、

 

「例えそうだとしても、貴方には正当な報酬を受け取る権利があるわ! 少なくともあなたの働きは追加報酬を与えるぐらいには評価されるべきものよ!」

 

ノワールは頑として譲らない。

 

「と、とりあえず俺は現状に不満は無いから…………その辺はまた後でイストワールと相談するよ」

 

これ以上話すと泥沼に嵌ると思った紫苑は、強引に話を切った。

 

 

 

 

尚、先ほど元気の無かったユニはネプギアのお陰で無事に元気が出た模様であった。

 

 

 

 

 

その後、何とかやる気を出したネプテューヌだったが、女神の心得その①『書類の整理から』では、書類を散らかすだけで碌に役には立たず、アイエフの発案でクエストを受け、その中で女神の心得を教えてもらう事となった。

その道中、

 

「今回のモンスター退治は2ヶ所。ラスーネ高原と近くのトゥルーネ洞窟。どっちも難易度はそう高くないんだけど…………」

 

「お姉ちゃん………」

 

ノワールが歩きながら説明をしていたが、その途中でユニが口を挟む。

 

「何?」

 

「シオン以外誰も聞いてない…………」

 

その言葉にノワールが振り向けば、アイエフは疲れて座り込んでいるコンパを気にしていて、ネプテューヌは看板を見ながら馬鹿を言ってネプギアに突っ込まれている。

 

「あ~、説明は俺が聞いとくんでお気になさらず…………」

 

紫苑はそう言ったが、それをノワールが許容できるはずもなく、

 

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

当然ながら爆発した。

 

 

 

 

移動を再開した一行だったが、今度はノワールが最後尾に付いていた。

その訳は、

 

「ペース落ちてる」

 

そう言いながら前を歩くネプテューヌを後ろから木の枝で突っつく。

 

「もう! ノワールってば真面目なんだから!」

 

思わず文句を言うネプテューヌ。

 

「悪い?」

 

「いっつもそれだと疲れちゃわない?」

 

「疲れることぐらいなんてことないわ。私はもっともっといい国を作りたいの」

 

「そりゃあ私も良い国作りたいけど…………それよりも私は楽しい方が良いな」

 

「あなたは楽しみ過ぎなの!」

 

ノワールがそう言ったとき、前方から騒めく声が聞こえてくる。

クエストの依頼を出した村の村民がノワール達の到着を待ちわびていたのだ。

ノワールはそれを確認すると、

 

「あっ! いけない!」

 

何か思い出したようにハッとなり、

 

「アクセス!」

 

光に包まれ変身を開始した。

 

「え~~!? 変身今やっちゃう!?」

 

ネプテューヌが信じられない様な声を上げた。

やがて光が収まると、銀髪に翡翠の瞳を持つ女神ブラックハートがそこに居た。

 

「これが女神化か…………」

 

変身を始めて目の前で見た紫苑は感慨深そうに呟く。

 

「女神の心得その2。国民には威厳を感じさせることよ」

 

そうネプテューヌに言ってブラックハートは村民たちの方へ飛んでいく。

それを見てネプテューヌが一言。

 

「目の前で変身しても威厳とか無くね?」

 

 

 

 

 

一行はラスーネ高原に案内されると、そこには視界一杯に広がる草原と、そこに大量にいる犬顔のスライム型のモンスター『スライヌ』が所狭しと飛び跳ねている光景だった。

 

「ここがラスーネ高原ね」

 

「ええ、スライヌが大量発生しているので困っているんですわ」

 

「わかりました。お隣の国のネプテューヌさんとネプギアさんが対処してくれるそうです」

 

「ねぷっ!? いきなり振る!?」

 

「私達がやるんですか?」

 

いきなり話を振られた2人は驚く。

そんな2人に、

 

「心得その3。活躍をアピールすべし」

 

ブラックハートが小さく呟く。

 

「広報用に撮影しといてあげるね」

 

ユニがそう言いながらネプギアのスカートのポケットから小型パソコンのNギアを抜き出す。

 

「面倒くさいなぁ……………」

 

ネプテューヌがそうボヤくが、

 

「ま、スライヌくらいヒノキの棒でも倒せるからね!」

 

そう言って屈伸、背伸びと軽く体を解し、前方に2転回。

更にそのまま3回転宙返りを余裕で決めた。

女神の身体能力の無駄遣いだが、ネプテューヌは太刀をコールし、刀身を鞘から引き抜くと同時に鞘を投げ捨てる。

 

「やっちゃおっか! ネプギア!」

 

「うん! お姉ちゃん!」

 

ネプギアもビームソードをコールし、ネプテューヌの横に並ぶ。

2人は同時に駆け出し、それぞれ別のスライヌへ向かった。

 

「てやぁああああっ!!」

 

ネプテューヌがスライヌに斬りかかり、一太刀でスライヌは消滅する。

続いてネプギアもビームソードを振りかぶり、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

こちらも一太刀でスライヌを倒す。

 

「流石ネプギア! 我が妹よ!」

 

ネプテューヌがお馴染みの三本指のピースサインを決めながらネプギアを褒める。

ネプギアも嬉しそうな顔で頷く。

 

「うん! あっ………!」

 

だが、大量のスライヌが異変を察知したのか迫ってくる。

2人は武器を構えなおし、

 

「ちぇすとーーーーーーーーっ!!」

 

「本気で行きます!!」

 

スライヌの大群に立ち向かった。

その様子をNギアのカメラモードで撮影していたユニは、2人の活躍を嬉しそうに見た後ブラックハートの表情を窺ったが、その本人の表情は険しいままだ。

 

「…………………」

 

ユニはその様子に不満げな表情を浮かべる。

すると、

 

「数が多すぎるわね」

 

「私達も手伝うです! あいちゃん!」

 

「そうね!」

 

アイエフとコンパが2人の応援の為に駆け出す。

 

「あっ…………」

 

ブラックハートが声を漏らすが、2人はそのまま駆けていく。

因みに同時に紫苑も無言で駆け出していた。

 

「あいちゃん! こんぱ! シオン!」

 

3人に気付いたネプテューヌが嬉しそうな声を上げ、ネプギアも笑顔で振り向いた。

と、そこへ、

 

「きゃっ!」

 

ネプギアの頬へスライヌが跳び付き、ネプギアは軽い悲鳴を上げる。

その間にアイエフは両手にカタールと呼ばれる手の甲に装備する短剣をコールし、コンパは大きな注射器を呼び出す。

紫苑も刀をコールし腰に携えると、紫苑はスライヌに向けて加速し、すれ違いざまに抜刀すると共に居合抜きで真っ二つにした。

因みにネプテューヌとは違い、鞘は捨てずに腰に携えたままである。

アイエフは複数のスライヌに飛び掛かり、両手の一振りで一気に切り裂き、コンパは注射器の針をスライヌに向けて突き刺し、謎の薬品を注入して消滅させる。

精神的にはコンパの攻撃が一番痛そうである。

3人の加勢で調子付いたネプテューヌは、

 

「まさに百人力! 勝ったも同ぜ…………」

 

勝ったも同然と言おうとしたその言葉が途中で止まった。

何故なら、

 

「「「「「「「「「「ぬららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららららら!!」」」」」」」」」」

 

数えるのも馬鹿らしくなるほどの大量のスライヌが現れ、5人に襲い掛かって来たからだ。

それを見たユニは、

 

「お姉ちゃん、私達も手伝ってあげた方が………」

 

ブラックハートにそう進言してみるが、

 

「ダメよ。ここはあの子達だけでやることに意味があるの」

 

ブラックハートにそう言われ、即座に却下される。

ユニはネプテューヌ達を心配そうな表情で見つめた。

その大量のスライヌに襲われたネプテューヌ達は、

 

「ひゃあっ! 変なとこ触るな!」

 

「気持ち悪いですぅ~…………」

 

「そんな所………入ってきちゃダメぇ~!」

 

「うひゃひゃひゃ! 笑い死ぬ! 助けてぇ!!」

 

何・故・か・服の中に入り込もうとするスライヌ達に悪戦苦闘する。

何故かネプテューヌだけは各所を舐め回されて笑い転げているが。

因みに紫苑はいち早く気配を察知し、一旦安全圏まで退避していたりする。

 

「うひゃひゃひゃ! お願いシオン! 助けて! あひゃひゃ!」

 

ネプテューヌは笑いながらも紫苑に助けを求める。

当の紫苑は、

 

「助けてって言われてもな…………目のやり場に困るって言うか…………」

 

何気にエロい状況に陥っている4人を直視することが出来ずに頬を染めながら目を逸らしている。

年頃の紫苑にとって、この状況は少々刺激が強かった。

 

「も、もう限界! あっひゃっひゃ! お願い! 見ないように助けてぇ!」

 

ネプテューヌはそう叫ぶ。

 

「…………心眼で助けろとか、難しい事を簡単に言うなよ……………」

 

紫苑は溜息を吐きながらそう呟く。

 

「“無理”じゃなくて、“難しい”だけなんだ…………」

 

ユニは少し呆れた声色でそう言った。

すると紫苑は、

 

「とりあえずやるけど、あまり動かないでくれよ。心眼で戦うなんて実戦じゃ初めてなんだからな!」

 

そう言うと紫苑は目を瞑り、気配を頼りに駆け出す。

 

「ッ……………フッ!」

 

気配を頼りに紫苑は刀を振るう。

アイエフの服に張り付いていたスライヌが切り裂かれる。

 

「はっ! せいっ!」

 

コンパの胸元に入ろうとしていたスライヌと、ネプギアのスカートの中に潜り込もうとしていたスライヌが真っ二つになる。

 

「はぁああああああああっ!!」

 

ネプテューヌの周囲に居たスライヌが纏めて切り裂かれる。

そのまま紫苑はスライムの大群の真っただ中に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

それから暫く。

全てのスライヌを倒し終えた紫苑は刀を鞘に納め、鍔鳴りを響かせた。

ネプテューヌ達は、スライヌの執拗な責めにぐったりして地面に倒れたり座り込んだりしている。

 

「うあ~………暫くゼリーとか肉まんとか見たくない~………」

 

そうボヤくネプテューヌ。

そんなネプテューヌにブラックハートが近付き、

 

「どうして女神化しないの!? 変身すればスライヌくらい………!」

 

「まあ、ほら。何とかなったし………」

 

変身しなかったことを咎められ、ネプテューヌははぐらかそうとするが、

 

「他の人に何とかしてもらったんでしょ!? 半分以上はシオンが倒してたじゃない! そんなんだからシェアが…………!」

 

そこまで言った所でブラックハートはあっと気付いたように口を噤む。

 

「精々休んどきなさい! あとは私一人でやるから!」

 

ブラックハートはそう言うとネプテューヌに背を向け、

 

「トゥルーネ洞窟へ案内して!」

 

そう村人に呼びかけた。

それを聞いたユニが、

 

「あ、あたしも………!」

 

そう進言する。

しかし、

 

「大丈夫よ。ユニはネプギア達を介抱してあげて」

 

そう言って村人と一緒にその場を去ってしまう。

 

「も~、ノワールってば短気なんだから~」

 

ネプテューヌはそうボヤくとユニに向き直り、

 

「あっ、ユニちゃん。写真取れた?」

 

そう言って写真を見せるように促す。

ネプテューヌがNギアを受け取り、写真を観覧しているとネプギアの写真が気に入ったのか、

 

「お~! かっわいい~! 私のメアドにも送っちゃえっと!」

 

画面をタッチして写真を送信する。

因みにこのワンタッチが後にある騒ぎを起こすことになるのだが今のネプテューヌには知る由もない。

 

 

 

 

トゥルーネ洞窟に来たブラックハートは次々とモンスターを倒していた。

女神化した力の前に、雑魚モンスターなど敵ではない。

洞窟の最深部まで来たブラックハートに襲い掛かってくるモンスターが途切れた為、ブラックハートは辺りを窺う。

 

「行き止まりか……………打ち止めね」

 

ブラックハートはそう言って身を翻しながら引き返そうとした時、

 

「……………グルルルルル!」

 

「…………ッ!」

 

唸り声が聞こえ、ブラックハートは振り返る。

すると、最深部のさらに奥の暗闇の中から全長5mほどの巨大な竜のモンスターが現れた。

 

「エンシェントドラゴン!?」

 

ブラックハートにエンシェントドラゴンと呼ばれた竜のモンスターは、大きな地響きを響かせながらブラックハートの前に着地する。

次の瞬間、

 

「グルワァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 

咆哮を上げながらエンシェントドラゴンが巨大な腕で殴りかかって来る。

地面を砕くほどの威力を持つその攻撃を、ブラックハートは飛び退くことで避けた。

 

「中々強そうじゃない!」

 

エンシェントドラゴンはモンスターの中でも上級に入る強さのモンスターだが、それでも女神の力の前では大した相手ではない。

ブラックハートは攻撃後の大きな隙を突き、

 

「貰った!」

 

頭を狙い、一撃で決めるつもりで剣を大きく振りかぶる。

だがその時、隠れていたのか兜を被った二足歩行の猫の様な小型の獣型モンスターがエンシェントドラゴンの頭に降り立つ。

 

「はっ!?」

 

ブラックハートは寸前で気付くが、大きく振りかぶっていたブラックハートの腹部目掛け、そのモンスターは体当たりを仕掛けた。

 

「がはっ!?」

 

小さいとはいえモンスター。

不意打ちだったことも相まって、その一撃でブラックハートは大きく吹き飛ばされた。

地面に叩きつけられるブラックハート。

だがそれでも女神であるブラックハートには致命傷にはなりえない為、ブラックハートはすぐに身を起こすが、

 

「ッ…………!?」

 

ブラックハートは突如として身体に異変を感じる。

突如として身体から力が抜けていき、勝手に女神化が解除されてしまった。

 

「なっ…………?」

 

突然の事態にノワールは困惑する。

ノワールは気付かなかったが、ノワールの背後の岩場には赤黒い水晶の様な石が怪しい輝きを放っていた。

困惑していたノワールの前にエンシェントドラゴンが立ち塞がり、ノワールは恐怖を感じる。

 

「あ…………ああ……………」

 

何故か力が入らない為、まともに動くことが出来ない。

エンシェントドラゴンがノワール襲い掛かろうとした。

その時、

 

「どっせぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

何処からともなくネプテューヌがエンシェントドラゴンの側頭部に飛び蹴りをかまし、エンシェントドラゴンを蹴り倒す。

 

「やっほーい!」

 

ネプテューヌは地面に着地してお気楽に声を掛ける。

 

「あ、あなた………!」

 

「はれ? 何で変身戻ってんの?」

 

ノワールを見たネプテューヌは疑問を口にする。

 

「わかんないけど、突然………………ネプテューヌ!!」

 

答えようとしたノワールだったが、襲い掛かってくるエンシェントドラゴンに気付き、声を張り上げた。

 

「ッ…………♪」

 

だがネプテューヌは余裕の表情を浮かべたままエンシェントドラゴンの一撃を太刀で受け止める。

その光景に驚愕するノワール。

 

「ノワール! 変身ってのはさ、こういう時に使うんだよっ!!」

 

その言葉と共にネプテューヌは力を込めてエンシェントドラゴンの腕を弾き返す。

その瞬間、

 

「刮目せよ!!」

 

ネプテューヌは光に包まれた。

小柄な少女の姿だったネプテューヌは、美しき女性の姿へと変化を遂げる。

 

「女神の力、見せてあげるわ!」

 

刀剣を構えた女神、パープルハートがそう言い放つ。

だがその時、

 

「動くな! ネプテューヌ!」

 

そんな叫び声が聞こえた瞬間、飛んできた刀がパープルハートの顔のすぐ横を通り過ぎた。

 

「!?」

 

パープルハートは一瞬何事かと面食らうが、すぐ背後で突き刺さる音が聞こえた。

パープルハートが視線だけを後ろにやると、そこには先程ブラックハートに不意打ちをした獣型モンスターが刀によって串刺しにされており消滅した所だった。

パープルハートはすぐに視線を戻して刀が飛んできたであろう方向に目をやると、そこには何かを投擲した体勢の紫苑がいた。

それを確認するとパープルハートは微笑み、

 

「助かったわ………こっちは私に任せて!」

 

そう言ってエンシェントドラゴンに向き直る。

パープルハートは背後に光の円陣を発生させると、それを足場にして勢いよくエンシェントドラゴンに向けて飛び掛かった。

パープルハートはエンシェントドラゴンが反応できない速度で剣を振るう。

並の刃物は通さないであろうエンシェントドラゴンの皮膚を、パープルハートは苦も無く切り裂いていく。

 

「クロスコンビネーション!!」

 

計3度の斬撃がエンシェントドラゴンの耐久力を削り取り、衝撃と共に消滅させた。

エンシェントドラゴン消滅時の光の欠片が舞い散る中、ノワールは我に返り、

 

「た、助けてくれなくたって、一人で出来たわよ」

 

強がりを言いながらそっぽを向く。

 

「でしょうね」

 

しかし、パープルハートはその言葉を否定せずにノワールの横に降り立つ。

 

「でも、助け合うのが仲間だわ」

 

パープルハートは諭すようにそう言う。

 

「別に仲間だなんて………」

 

「どうして今日はこの辺りを選んだの?」

 

ノワールの言葉に被せる様にパープルハートが質問する。

 

「それは! 早く帰って欲しかったから…………」

 

「私が活躍すれば、噂は国境越しにプラネテューヌに伝わる」

 

「ッ!」

 

「そうなれば、私はシェアを回復できる」

 

その言葉が図星だったのか、ノワールは言葉に詰まる。

 

(へぇ………この場所を選んだことに、そんな理由があったのか………)

 

そんな2人を眺めながら、紫苑は先程投げて地面に突き刺さっていた刀を回収する。

 

「…………ありがとう、ノワール」

 

パープルハートはそう言うと同時に光に包まれ、ネプテューヌに戻った。

すると、

 

「でも~! やられそうになってた女神の事も、ばっちり報告しなきゃね!」

 

先程までのいい雰囲気をぶち壊すノリでネプテューヌがそう言う。

 

「ええっ!? それは黙ってて!」

 

だが、ネプテューヌは構わずに駆け出し、

 

「お~い! みんな~!」

 

「ちょっとぉっ!! ネプテューヌ~!!」

 

慌ててノワールも後を追う。

その場に残された紫苑は、

 

「やっぱギャップが凄いな、ネプテューヌは…………」

 

女神化の前と後での性格の違いに、そんな感想を零しながら苦笑する紫苑。

紫苑は刀を鞘に納め、出口に向かおうとした時、

 

「…………………ん?」

 

先程までノワールのいた場所の近くの岩場に、赤黒い水晶の様な石がある事に気付いた。

暫くそれを見ていた紫苑だったが、ゲイムギョウ界に来てまだ日が浅かったため、こういう石もあるんだろうとさほど気にせず、踵を返してその場を離れた。

 

 

その後、その石を回収した者がいた事を知る者は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

一連の騒動の後、プラネテューヌに戻ったネプテューヌ達。

プラネテューヌのシェアクリスタルは、シェアが回復したため強い輝きを放っていた。

 

「凄い………!」

 

感心するイストワールに、得意げになるネプテューヌだったが、

 

「流石はノワールさん!」

 

「ねぷぅっ!?」

 

その言葉にネプテューヌはズッコケる。

 

「そこは流石私、でしょう!?」

 

「ネプテューヌさんの功績かどうかは、まだ私疑ってます」

 

「いーすん何気に酷~い!」

 

と、その時、

 

「きゃぁあああああああああああっ!?」

 

ネプギアの悲鳴が突然響いた。

2人が駆け付けると、

 

「ネプギア~? どうしたの?」

 

「お、お姉ちゃん………私の変な写真が…………ネットに…………」

 

パソコンの前で震えた声を上げるネプギア。

ネプテューヌがディスプレイを覗き込むと、そこにはスライヌに集られ、何気にエロい状況に陥っているネプギアの写真が映っていた。

 

「おおっ! 私のメアド向けに送った写真!」

 

見覚えのあった写真にネプテューヌはそう言った。

 

「ネプギア! 可愛いよネプギア!」

 

「恥ずかしいよ~………!」

 

絶賛するネプテューヌに対し、顔を赤くするネプギア。

 

「ネプ子、送り先間違えたんじゃ………」

 

「まさかそんな」

 

アイエフがそう指摘し、ネプテューヌはあり得ないとばかりに軽い雰囲気でNギアの送信履歴を確認した所、

 

「あ…………国民向けのメルマガアドレスに…………」

 

「やっぱり………」

 

予想が的中し、呆れるアイエフ。

 

「でもコメント、何だが好評ですぅ~」

 

「「へぇ~」」

 

コメント欄を覗き込むと、

 

「ビジュアルショック」

 

「へっ?」

 

コンパの言葉にネプギアが声を漏らす。

 

「脳天直撃」

 

「は?」

 

ネプテューヌの言葉。

 

「まだまだいけるぜプラネテューヌ………支持されてるわね」

 

「ええっ!?」

 

更にアイエフの言葉。

 

「悲しい男の性か………」

 

紫苑が呆れたように声を漏らす。

 

「もしかして、シェアが急に伸びたのは………」

 

イストワールが気付いたように呟く。

 

「この写真が原因…………? 凄いじゃんネプギア~!」

 

「そ、そうかな~?」

 

ネプテューヌの言葉に困惑するネプギア。

 

「ってことは~! この写真を更に公開すれば~!」

 

「へっ!?」

 

ネプテューヌが良い事思いついたと言わんばかりにそう言うとNギアを操作しようとする。

 

「ネプギア、シェアの為だよネプギア!」

 

「えっ? ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?」

 

そんな様子を見て、イストワールが深いため息を吐く。

 

「この国の行く末がいろんな意味で心配です」

 

「あ~、何と言うか…………お疲れ様?」

 

紫苑は何とかフォローしようとする。

 

「はぁ………ありがとうございます。シオンさん」

 

2人は苦笑しつつネプテューヌ達を見つめた。

 

 

 

 

 

 

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