超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第32話 次回への閑話(インターミッション)

 

 

 

 

とあるホテル。

そこで学園を襲撃したオータムは苛立ちを隠せずにいた。

 

「くそっ! 何だってんだあのガキは!?」

 

近くにあった椅子を思わず蹴り倒す。

 

「騒ぐな、見苦しい」

 

もう一人、サイレント・ゼフィルスの操縦者である黒髪の少女が冷徹に呟く。

 

「ああっ!?」

 

その物言いにオータムが食って掛かろうとするが、

 

「やめなさいオータム。煩いわよ」

 

バスルームから出てきた金髪の美しい女性だった。

 

「スコール………! だけど!」

 

「怒ってばかりいると老けるわよ、落ち着きなさいオータム」

 

スコールと呼ばれた金髪の女性はバスローブ姿のままソファーに腰を下ろす。

 

「だけどよ………! 信じられるか? あのガキは“ISを使わずに”この私を圧倒したんだぞ………!」

 

スコールに言われて落ち着きは取り戻したものの、未だ狼狽を隠せずにオータムは言う。

 

「確かにそれは異常よね…………いくら私でも戦闘記録が無ければ耳を疑っていた所よ」

 

スコールがやや思案するような仕草をする。

 

「とりあえず今回の失態はあなたの所為では無いわ。相手の戦力が予想以上だった。次はそれを踏まえて作戦を練らないとね」

 

スコールはそう言うと、

 

「…………それにしても、その少年は何者なのかしら…………? 織斑 一夏ではないもう1人の男性IS操縦者。名前は確か月影 紫苑…………専用機も与えられてなかったからさほど重要にマークしていたわけでは無いけど…………」

 

そう呟いた時だった。

 

「ククク…………知りたいか?」

 

この場にいる3人以外の声がその場に響いた。

 

「ッ!? 誰っ!?」

 

スコールは即座に立ち上がって声がした方に振り向き、警戒態勢を取る。

オータムと黒髪の少女も身構えている。

すると部屋の隅、月明かりからも影になっている真っ暗な所からカツカツと足音を響かせ、1人の人物が姿を見せた。

 

「何者なの…………?」

 

スコールが平静を装いながら問いかける。

 

「私の名はマジェコンヌ。この世界とは別の次元の世界から来た………」

 

その人物は余裕の笑みを浮かべながら、自信たっぷりに名を名乗って口上を続けようとして、

 

「そしてオイラはワレチュー。ネズミ界No.3のマスコットっチュ!」

 

いつの間にか足元に居たネズミの名乗りによって止められた。

因みに彼が言うネズミ界のNo.1とNo.2は、恐らく世界的に超有名な某黒ネズミと、ポケットなモンスター界の某電気ネズミなのだろうが、彼が本当にNo.3なのかは定かではない。

むしろ灰猫とコンビを組んでいる某茶ネズミ(むしろこっちがNo.2?)の存在もあるのでその時点で彼がNo.3である可能性は低い。

 

「おいネズミ………! 何故お前は毎度毎度私の名乗りの邪魔をする!?」

 

マジェコンヌはこめかみをヒクつかせ、ワレチューに向かって怒鳴る。

 

「煩いっチュね………オバハンの口上は長くて困るっチュよ」

 

目の前で行われる漫才に3人は固まった………わけでは無く、

 

「ネ、ネズミが…………喋った………?」

 

オータムが唖然とした表情で呟く。

それに気付いたワレチューが、

 

「何チュか? ネズミが喋ったら悪いっチュか!?」

 

不機嫌そうにそう言う。

 

「それ以前に何でネズミが喋る!?」

 

オータムが怒鳴るように叫んだ。

 

「煩いっチュね…………これだから田舎者は…………」

 

やれやれと言わんばかりに首を横に振りながら呆れた様で肩を竦めつつ両手の掌を上へ向ける。

 

「誰が田舎者だコラァッ!!」

 

そんなワレチューの様子にオータムは完全に頭に血が上る。

 

「待ちなさい、オータム」

 

そんなオータムとは逆に、スコールは冷静に状況把握に努める。

相手がどの程度の実力者かは分からないが、こちらにはサイレント・ゼフィルスという手札がこちらにはある。

数の上でも、実際の戦力でも自分達に分があると踏んでいたスコールは余裕を持って口を開いた。

 

「あなたが誰かは知らないのだけれど、用件は何かしら? そんな精巧なネズミのロボットなんて作って…………」

 

「オイラはロボットじゃないっチュ! 勿論中の人なんて居ないっチュよ!」

 

スコールの言葉に思わず口をだすワレチュー。

 

「ネズミ! お前は黙っていろ!」

 

マジェコンヌはそう言うとスコールに向き直る。

 

「何、お前達にこの私が手を貸してやろうかと思ってな…………」

 

マジェコンヌはニヤリと笑いながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亡国機業(ファントム・タスク)の襲撃から少しの時が経った。

IS学園は既に平静を取り戻し、いつも通りの日常が繰り返されている。

そんな中、紫苑は放課後に翡翠と女神候補生達を尾行していた。

最近、この5人は放課後になると何処かに行っているらしく姿を見せないことが多い。

5人の話では新しい友達が出来たという話だが、紫苑は少し心配になってこうして後をつけているのだ。

紫苑は気配を消しているので5人にはもちろんバレていない。

紫苑が尾行を続けていると、5人はあるアリーナに入っていくところを目撃した。

 

「飛行訓練用のアリーナ………? あいつらこんな所で何してるんだ?」

 

翡翠はともかくとして、ISと直接関わる事の無い女神候補生達がどうしてこんな所に来るのかと首を傾げる。

紫苑が後を追ってそのアリーナに入ると、1機のISがカタパルトから飛び立った所だった。

 

「あれは…………?」

 

その水色を基調としたISを目で追う。

遠目に見て操縦者はハッキリとは分からないが、水色の髪を持った少女の様だ。

 

「…………楯無? いや違うな………誰だ?」

 

紫苑は疑問を口にするが、ここに来た本来の目的を思い出し、辺りを見渡す。

すると、先ほどISが飛び立っていったカタパルトの近くに5人が固まっているのに気付いた。

紫苑は彼女達に近付いていき、

 

「お前達、こんな所で何やってるんだ?」

 

そう声を掛けた。

 

「あっ、お兄ちゃん」

 

翡翠が反応する。

見れば、ネプギアとユニが空間ディスプレイを開き、表示されるISのデータを読み取っていた。

 

「これは…………あのISの?」

 

紫苑は空を飛ぶISを見上げながらそう聞く。

 

「うん、そうだよ」

 

ネプギアが答える。

 

「彼女は?」

 

紫苑が操縦者のことについて尋ねると、

 

「あの子は更識 簪ちゃん。刀奈ちゃんの妹だよ」

 

翡翠がそう答える。

 

「楯無の妹………そう言えば、昔妹がいるって言ってたな。なるほど、彼女がそうなのか…………それで、お前達は何をしてるんだ?」

 

簪の事を聞いて納得する紫苑だったが、今度は翡翠達が何をしているのかを訊ねる。

 

「あ~、それはね…………」

 

翡翠は簪から聞いた、彼女の専用機の開発元が一夏の白式と同じ『倉持技研』で、白式の開発を優先した所為で彼女の専用機の開発が凍結、完成しなかったこと、その未完成のISを受け取って簪が1人で完成させようとしていたこと。

そして、知り合った自分やネプギア達が彼女を手伝っていることを話した。

 

「…………………一夏は疫病神にでも取りつかれているのか?」

 

紫苑は呆れた様にそう言った。

 

「あ~、うん…………否定できないかも………」

 

翡翠は困った様に苦笑を浮かべる。

実際一夏の周りでは一夏が原因となって起こる事件が連発している。

否定できる要素が無かった。

紫苑は溜息を吐きながら飛び回るISを見上げる。

 

「へぇ、中々いい動きじゃないか」

 

紫苑はそう素直に称賛する。

 

「まだ今回は試験飛行だけどね。細かいバグやエラーが幾つか出てるからそれを全部修正しないと…………」

 

ネプギアがそう言いながら空間パネルを操作する。

 

「今の所、大きな問題は無し。機体の方向性は間違ってないと思う」

 

ユニもネプギアと一緒に操作しながら意見を言う。

一方、飛行試験をしている簪も逐一機体データを確認しながら飛行を続けていた。

 

「姿勢保持スラスター問題なし。展開時のポイントを調整。PIC干渉領域からズラしてグラビティヘッドを機体前方6cmに調整。それから、脚部スラスターバランスを4マイナスで再点火」

 

空間パネルを操作しながら微調整を加えていく簪。

だがその時、脚部スラスターが一瞬消えた事に紫苑は気付いた。

 

「ッ…………!」

 

嫌な予感がした紫苑は、一瞬でISを展開すると突然飛び出す。

 

「えっ? お兄ちゃん!?」

 

突然の紫苑の行動に翡翠達が驚いた瞬間、ネプギア達が見ていた空間モニターにエラーを示すコードが警告音と共に表示され、簪のISの脚部スラスターが爆発を起こした。

 

「簪ちゃん!?」

 

翡翠が叫ぶ。

 

「何が起きたの!?」

 

ユニがネプギアに怒鳴るように確認する。

ネプギアはモニターを操作し、

 

「これは…………エネルギー伝達回路に異常!? 復旧………出来ない!? カンザシちゃん!」

 

ネプギアの視線の先では、空中でバランスを崩し、墜落していく簪の姿。

 

「ッ…………!? 反動制御が利かない!? どうして!?」

 

簪も必死に機体制御を取り戻そうとするが、機体は操作不能のまま墜ちていく。

 

「…………………ッ!」

 

徐々に近付いてくる地面に簪は墜落を覚悟して目を瞑った。

だがその時、抱えられた感覚がしたと思うと体勢が立て直され、自分に負担がかからないようにうまく制動を掛けながらブレーキが掛けられ、そのまま地面に到達する。

 

「………………………?」

 

簪は恐る恐る目を開ける。

するとそこには、

 

「大丈夫だったか?」

 

自分を抱き上げた真紅のラファールを纏った少年の姿。

 

「あ………は、はい…………」

 

簪は呆然としながらも返事をする。

すると、

 

「お兄ちゃーん! 簪ちゃーん!」

 

翡翠がISを纏って駆け付け、ネプギア達も走って追いかけてきた。

 

「簪ちゃん! 大丈夫だった!?」

 

翡翠が心配そうに簪に声を掛ける。

 

「だ、大丈夫………この人のお陰…………」

 

簪はゆっくりと地面に降ろされると自分の足で立つ。

 

「あ、あの………あなたは………?」

 

簪は遠慮がちにそう尋ねた。

 

「直接会うのは初めてだな。俺は月影 紫苑。翡翠の兄でもう1人の男性IS操縦者だ」

 

そう名乗る紫苑。

 

「あなたが…………」

 

簪が声を漏らすと、

 

「それにしても…………」

 

紫苑はそう言いながら翡翠達に向き直る。

 

「翡翠…………お前もISを持ってるんだから試験飛行の時に一緒に飛んで有事の際に備えたらどうだ?」

 

「あ…………」

 

翡翠は今気付いたとばかりに声を漏らす。

 

「ご、ごめんなさい…………」

 

「今回は偶々俺が居たから良かったものの、下手をすれば大怪我じゃすまなかった可能性もあるんだぞ?」

 

「は、はい………その通りです」

 

翡翠は縮こまるように紫苑の注意を受ける。

 

「あとネプギア」

 

「は、はい………!?」

 

「…………翡翠の義手の時みたいにやり過ぎるなよ」

 

「はい…………」

 

魔改造も程々にと釘を刺されたネプギアは小さく返事をする。

 

「あはは…………」

 

ユニは苦笑していた。

何故なら、メカオタのネプギアを始め、純粋故に止まる事を知らないロムとラム。

更に簪もアニオタで、最近はアニメを一緒に見ることも多くなり、ロムやラムがヒーローアニメやロボットアニメの武装を再現してほしいと言い出して、更にそれを再現できてしまうネプギアがノリノリで実行しようとしていたので、流石にこの世界の技術水準を大きく上回ってしまうためにユニが必死で止めていた。

ネプギアは普段常識人だが、メカの事になると何故かブレーキが利かなくなるので、今回紫苑が釘を刺してくれたことにユニは内心ホッとしていた。

 

「まあ、機械関係で俺に手伝えることは無いが………悩みがあるなら聞くぐらいは出来る…………姉妹関係の不仲とかな?」

 

「ッ…………!?」

 

簪は僅かに反応するが紫苑は背を向ける。

 

「無理に話を聞く気は無いが…………相談してくれたら出来る限りは力になろう」

 

紫苑はそう言ったがあくまでこれは紫苑の推測だった。

紫苑は今まで楯無から余り妹の話を聞いてはいなかった。

楯無の性格なら、仲の良い妹がいるなら必ず自慢して来る筈なのだ。

それをしないという事は、姉妹間の仲に問題があると紫苑は推測していた。

ただ、その推測が外れているとは思っていなかったが。

紫苑はそう言うとピットの入り口まで飛んでいき、アリーナの外へと出て行った。

 

「……………………」

 

呆然としていた簪だったが、

 

「とりあえず、今回の試験飛行で問題点が幾つか分かったから、これからはそこを中心に調整するわよ。あとネプギア。武装の話だけど、シオンが言った通り程々にしなさいよね?」

 

ユニの言葉にネプギアが苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紫苑が自室に戻ってくると、

 

「あ~、お帰り~」

 

プルルートが声を掛ける。

 

「ああ、ただいま」

 

紫苑が応えて部屋に入ると、

 

「あ、月影君」

 

「邪魔している」

 

何故かシャルロットとラウラが部屋にいた。

 

「2人ともいたのか? 何の用なんだ?」

 

紫苑が問いかけながら歩み寄ると、

 

「フフフ………呼んだのは私よ、紫苑さん」

 

2人の正面には楯無がベッドに腰かけていてそう言った。

 

「正確にはシャルロットちゃんを、だけどね」

 

「私………ですか?」

 

「ええ」

 

楯無は頷くと言葉を続けた。

 

「前に話したシャルロットちゃんの問題の事だけど………」

 

「ッ………!」

 

楯無の言葉にシャルロットは気を引き締める。

 

「紫苑さん達がデュノア社長の真の狙いを推測してたじゃない?」

 

「ああ」

 

「それが………どうかしたんですか?」

 

楯無の言葉に紫苑が頷き、シャルロットが訝しむように聞き返す。

 

「そんなに警戒しないでシャルロットちゃん…………私も話を聞いて納得したんだけど、推測は何処まで行っても推測でしかないじゃない? それじゃあシャルロットちゃんも本当の意味で安心は出来ないでしょ?」

 

「それは………否定しませんが、私はお父さんを信じています……」

 

シャルロットはハッキリとそう言う。

しかもその視線は楯無を睨み付けるように見ている。

 

「だからそんなに怖い顔をしないでってば。だから私がウチの伝手を使ってデュノア社の状況を探って貰ったのよ」

 

「ッ…………!」

 

「結果から言えば、紫苑さん達の推測通りだったわ。シャルロットちゃんの暗殺計画………とまでは行かないけど、そう言う話が持ち上がっているという話は事実だったみたいよ」

 

「や、やっぱりそうだったんですか………! やっぱりお父さんは、私を護る為に………!」

 

シャルロットが安心したように脱力する。

 

「そうなんだけど…………その事を調べているうちに、1つ気になる情報を耳にしたの」

 

「気になる情報………ですか?」

 

「ええ。それはデュノア社長の正妻、ロゼンダ・デュノア夫人の事よ」

 

「ッ…………!? あの人が……どうかしたんですか………?」

 

その名を聞いて、やや警戒心が露になるシャルロット。

シャルロットにとって、彼女は初めて会った時に『泥棒猫の娘が!』という言葉と共に殴られている。

そうなるのも当然だろう。

 

「その人………どうやら子供が産めない身体みたいなのよ」

 

「えっ…………………!?」

 

その言葉を聞いた瞬間、シャルロットは絶句した。

そしてそれと同時に納得もしてしまった。

何故ロゼンダがあれ程怒りを露にして自分を殴ったのか。

なぜ自分が殴られなければならなかったのか。

その事で今まで少なからず彼女を恨んでいた。

だがその事実を知った時、同じ女としてその恨みは綺麗サッパリ消えてしまった。

 

「………………………そっか………それなら私が殴られるのも仕方ないね」

 

顔を上げたシャルロットはそう言いながら笑みを浮かべていた。

無理して浮かべた笑顔ではない。

今までの心に刺さっていた棘が綺麗に抜けたために浮かべた笑みだった。

 

「む? 何故そんな話になるのだ?」

 

女としての経験に乏しいラウラは何故シャルロットがロゼンダを許したのか理解できない様だ。

 

「ラウラにもきっとわかる時が来るよ。多分、そう遠くない内にね」

 

シャルロットは意味ありげに紫苑に視線を向けながらそう言う。

 

「そうなのだろうか?」

 

ラウラは首を傾げた。

 

「フフッ………」

 

シャルロットは笑みを浮かべてラウラの頭を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某国某所にある篠ノ之 束の研究所(ラボ)

本来そこは誰も知らず、例え見つけたとしても迎撃システムによって侵入者はあっという間に撃退されてしまう、いうなれば世界一安全な研究所。

だが、現在その場所は炎の海に呑まれていた。

 

「ううっ………何なんだよ…………あいつ…………」

 

「束様、しっかり………!」

 

そして現在、この研究所(ラボ)の主である束は頭から血を流しながら傍らにいる銀髪の少女に支えられ、おぼつかない足取りでこの研究所(ラボ)を脱出しようとしていた。

事の始まりは突然だった。

この研究所(ラボ)に侵入者を知らせる警報が鳴り、迎撃システムが作動した。

その時点では、例え侵入者がISを持っていようと容易く撃退できるだろうと油断していた。

だが、結果は御覧の通り迎撃システムはあっという間に突破され、研究所(ラボ)は火の海に。

とは言え、主要なコンピューターや製作途中だった無人機などが無傷な所を見ると、侵入者の目的が研究施設そのものであることは明白だ。

勿論束も黙って見ていただけではなく、自分から侵入者の撃退に動いた。

束は一見頭でっかちのインテリに思えるが、その実身体能力もオーバースペックであり、生身でISを圧倒する規格外でもある。

だが、その束をもってしても侵入者には手も足も出なかった。

 

「束様、もう少しです………!」

 

束は重傷を負い、銀髪の少女―――クロエ・クロニクル―――の機転によって何とか難を逃れ、こうして脱出の為に緊急脱出用のポッドのあるエリアまで這うように辿り着いたのだが…………

 

「そ、そんな…………!」

 

クロエが絶望的な声を漏らした。

2人で使える脱出用のポッドが予備も含めて全て破壊されていたからだ。

 

「何か………何か使えるものは………!?」

 

クロエは無事なものが無いか辺りを見渡す。

その時、

 

「………ッ!」

 

エリアの隅にある人参型のロケットが目に入った。

どうやら束のおふざけで作った人参のデザインのお陰で犯人も見逃してくれたようだ。

だが、問題が一つ。

このロケットは1人用。

束が余りにも無駄を省き過ぎたために無理に入るスペースもない。

クロエが迷ったのも一瞬だった。

クロエは束を壁に寄りかからせると、パネルを操作し、人参ロケットを開く。

その中に束を寝かせると、クロエはパネルを操作し、人参ロケットを閉じる。

それが閉じる寸前、

 

「く、くーちゃ………」

 

束が意識が朦朧とする中、クロエに手を伸ばそうとしていたが、クロエは黙って人参ロケットを閉じた。

その時、時間稼ぎの為に降ろした隔壁が爆発と共に破壊される。

 

「ッ!?」

 

クロエは素早くパネルを操作してロケットの射出先を決定する。

その目的地はIS学園。

 

「束様………どうかご無事で………!」

 

ロケットの発射ボタンを押し、人参ロケットが発射される。

それを小さく笑みを浮かべて見送るクロエ。

 

「フン、片方は逃がしたか………まさかあのようなふざけた物がロケットだったとは………」

 

揺らめく炎の中から現れたのは、変身したマジェコンヌ。

 

「まあいい。この研究所共々貴様もこの私が大いに利用してやろう」

 

クロエに手を伸ばすマジェコンヌ。

 

「束様……………」

 

その言葉を最後に、クロエの意識は闇に堕ちた。

 

 

 

 

 

「くーちゃん…………」

 

人参ロケットの中で束も限界を迎えたのか、束も意識を失った。

 

 

 

 

 






第32話の完成。
今回は色々と伏線の回でした。
マジェさんがファントム・タスクと接触。
しかも束さんのラボを襲撃。
クロエが捕らわれの身に。
紫苑と簪も会いましたし僅かなフラグも立ちました。
そんでリクエストですが、2が追い上げて来て13票。
3が15票です。
次回で恐らく決定となります。
因みに例え2になったとしても、全員が離れる切っ掛けになる話は考えてますので問題は無いです。
むしろ今回の話の中にその伏線が盛り込まれていたり。
ともかく次も頑張ります。







本日のNGシーン



「結果から言えば、紫苑さん達の推測通りだったわ。シャルロットちゃんの暗殺計画………とまでは行かないけど、そう言う話が持ち上がっているという話は事実だったみたいよ」

「や、やっぱりそうだったんですか………! やっぱりお父さんは、私を護る為に………!」

シャルロットが安心したように脱力する。

「そうなんだけど…………その事を調べているうちに、1つ気になる情報を耳にしたの」

「気になる情報………ですか?」

「ええ。それはデュノア社長の正妻、ロゼンダ・デュノア夫人の事よ」

「ッ…………!? あの人が……どうかしたんですか………?」

その名を聞いて、やや警戒心が露になるシャルロット。
シャルロットにとって、彼女は初めて会った時に『泥棒猫の娘が!』という言葉と共に殴られている。
そうなるのも当然だろう。

「その人……………………………………………………………………寝取られ属性らしいのよ!」

「………………………………………………はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!??」

シャルロットの素っ頓狂な声が響いた。



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