超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
突如として現れた重傷を負った束。
すぐさま医療区画に運ばれ、治療が施された。
暫くして、治療室の前で待っていた箒の前に、医師から説明を受けた千冬が現れた。
「千冬さん! 姉さんは…………!?」
箒がいの一番に千冬に詰め寄る。
すると、
「心配するな。かなり酷い怪我だが命に別状はない。安静にしていれば数日で目を覚ますだろうとのことだ」
「そ、そうですか……………」
千冬の言葉に箒はあからさまにホッと息を吐いた。
「とりあえず、今日は部屋に戻れ。何が起きたのか知るためにも束が目を覚まさなければ前に進まん」
「……………わかりました」
箒は一瞬心配そうな視線を治療室へと向けたが素直に頷き、自室へと戻っていった。
それから数日後。
整備室にて、
「ついに完成したね…………」
ネプギアが感慨深そうに呟く。
「…………うん。やっと……………これも皆のお陰。本当にありがとう」
簪がそう礼を言う。
その言葉に笑顔になる女神候補生達と翡翠。
彼女達の前には、たった今完成したばかりの水色に輝くIS。
簪の専用機、『打鉄弐式』だ。
因みに外見こそ当初とさほど変わりは無いが、その中身は(主にネプギアが)ゲイムギョウ界の技術力をかなり詰め込んでおり、紫苑が釘を刺した事もあってそれなりに自重してはいるが、それを踏まえてもかなりのハイスペックな機体となっている。
すると、
「皆、ご苦労さん」
部屋の入り口から紫苑が入ってきた。
その手には売店で購入したと思われる菓子や飲み物が入った買い物袋。
紫苑は彼女達が簪の手伝いをしていると知ってから度々こうやって差し入れを持ってきていたのだ。
お陰で簪とは名前で呼び合える程度の中にはなっている。
「あっ、お兄ちゃん!」
ネプギアが嬉しそうに声を上げる。
紫苑が皆の前に歩いてくると、完成していたISを見上げる。
「ついに完成したのか?」
「うん…………これでやっと『あの人』に追いつける…………!」
簪は静かに………それでいて確かな決意を感じさせる声で呟く。
「……………『追いつける』………か……………」
紫苑は簪の言葉を反復する。
「紫苑さん……………?」
その言葉が気になった簪が声を漏らす。
「『追いつきたい』とは言っても……………『追い抜きたい』とは言わないんだな…………」
「えっ?」
紫苑は簪を見ながら言う。
簪と付き合いが出来てしばらく、簪はよく口癖のように『あの人に追いつきたい』という事を呟いていた。
「…………今更だから聞くが………簪が追い付きたい『あの人』っていうのは、『楯無』の事なんだろう?」
「………………………」
紫苑の言葉に簪が俯く。
それは肯定していることと同義だった。
「……………なんかお前を見てると、昔の俺とネプギアを思い出すな」
「えっ……………?」
紫苑は簪を見ると何処か懐かしそうな顔をする。
「………………お前は…………『刀奈』が大好きなんだな」
紫苑は確信を持った声色でそう言う。
「ッ…………………!」
簪は目を見開き、驚きの表情を露にした。
「『刀奈』が大好きだから……………置いて行かれたくないから…………そこまで必死になって『楯無』に追いつこうとしている……………その姿は昔の俺を思い出させる」
「紫苑さん…………」
紫苑も『守護者』となる前にネプテューヌの隣に立とうとしていた。
せめて背中ぐらいは護れる存在になりたかった。
だが、
「でも……………俺はそこで諦めようとした」
『女神』との絶対的な力の差を痛感し、紫苑はネプテューヌの前から消えようとした。
「その点お前は今でも諦めずに困難に立ち向かおうとしている……………お前は『強い』な、簪」
「ッ!?」
その言葉に驚愕する簪。
自分が『強い』などと欠片も思っていなかったからだ。
「そして同時に、お前は『楯無』を追い抜くことを無意識に拒絶している。その理由は………ネプギアならわかるだろう?」
紫苑はそう言ってネプギアに視線を向ける。
「うん………私も昔はそうだった…………ずっとずっと、お姉ちゃんに憧れていたくて………護られる存在でいいって…………弱いままの私でいいって思ってた」
「あ……………」
簪はネプギアの言葉に感じるものがあったのか声を漏らす。
「お前も………そうなんじゃないのか?」
その瞬間、簪の脳裏にフラッシュバックのようにとある記憶が蘇る。
『あなたは何もしなくていいの。私が全部してあげるから。だから、あなたは――――無能なままでいなさいな』
その言葉は楯無と簪の間の溝が、より深まった言葉。
この言葉を切っ掛けに2人の仲はより疎遠となった。
だが、簪には楯無が何を言いたかったのか分かっている。
それが分かるぐらい、簪にとって楯無は大好きな姉なのだ。
即ち、
『
こういう事だ。
だが、簪にとってその言葉は楯無に置いて行かれた気がしたのだ。
でも、自分を置いてどこか手の届かない所へ行ってしまった気がした。
だから簪は置いてかれまいと必死に努力し、楯無の隣に立てる存在になろうとしていた。
その中で楯無との差を痛感して少々卑屈になっていたが…………
そしてようやく努力が認められ、専用機が貰える事になり、漸く楯無の背中が見えてきたと思ったとたんに専用機の開発が凍結になったのだ。
塞ぎこむのも仕方ないだろう。
だが、
「姉さん…………」
簪は思わず呟いた。
「お前と楯無の間にどんな事があったのかは知らないし、無理に聞こうとも思わない。けど、仲直りしたいって言うのなら、協力するのは吝かじゃないぜ」
紫苑の言葉に簪はハッと顔を上げる。
「でも………どうやって…………」
再び簪は顔を俯かせるが、
「そんなの簡単だ。一度全力でぶつかってみればいい。その中でお前が溜めこんでいるモノも全部吐き出せばそれで解決だ」
「あ…………」
紫苑の言葉に簪は少し呆気にとられた顔で紫苑を見た。
すると、
「だけど、タテナシって意外とヘタレな所もあるからカンザシに向き合えって言っても何だかんだ理由を付けて逃げるんじゃないの?」
ユニが横からそう言う。
「あー! それあり得るかも!」
「うん………」
ラムとロムも同意する。
「あはは…………否定できないや………」
翡翠も苦笑した。
「そこは俺に任せてくれ。何か理由を付けて呼び出すさ」
紫苑がそう言うと、
「あとはお前の気持ち次第だが?」
簪に向かってそう聞く。
「……………………………」
簪はしばらく目を瞑って考えていたが、やがて眼を開けると、
「……………お願い………します………!」
決意を持って頷いた。
その日の夜、紫苑は自室で楯無に話を振っていた。
「えっ? 私と勝負してみたい?」
楯無が驚いたような声を漏らす。
「そんなに驚く様な事か?」
紫苑がそう聞くと、
「いえ、紫苑さんは以前ISに関して勝敗には全く興味が無いと言っていたので………」
紫苑はそう言えばそうだったなと頬を掻く。
「まあ、翡翠が生きていたお陰で前ほどの嫌悪感は無くなったな。少なくとも、学園最強の相手に自分が何処まで通用するか試したくなるほどには………な?」
紫苑はそう言いながら好戦的な笑みを浮かべる。
その笑いに感化されたのか、
「フフッ、いいでしょう! この私、生徒会長更識 楯無が最強の称号の持ち主であることを見せてあげるわ!」
楯無も不敵な笑みを浮かべてそう言い放った。
翌日。
楯無は紫苑に指定されたアリーナのピットに来ていた。
だが、そこには紫苑の姿は無い。
「あれ? 紫苑さんどこ行ったんだろ? もうアリーナの中にいるのかな?」
楯無はそう判断すると、ISを展開してカタパルトからアリーナ内へと飛翔する。
楯無がアリーナの中央辺りに着地して辺りを見渡すが紫苑の姿は無い。
だが、
「待ってたよ。姉さん…………!」
「ッ!?」
聞こえたその声に、楯無は慌てたように反対側のピットの出入り口を見上げた。
そこには、ISスーツを身に纏った簪が決意の籠った表情で佇んでいる。
「か、簪ちゃん…………!?」
楯無は明らかに戸惑った表情を見せた。
すると、
「楯無」
別方向から紫苑の声が聞こえ、楯無は思わず振り向いた。
そこには、プルルート、ピーシェ、ネプギア、ユニ、ロム、ラム、翡翠、ラウラと共に観客席にいる紫苑の姿。
「紫苑さん! これは一体………!?」
楯無が紫苑に説明を求めると、
「騙すような真似をしてすまん。だが、こうでもしないとお前は簪と向き合わなかっただろう?」
「そ、それは……………」
紫苑が謝りながらそう言うと、楯無は図星なのかバツの悪そうな表情で視線を逸らす。
「簪はお前と向き合う事を覚悟した。だからお前も覚悟を決めて簪と向き合ってやれ」
「……………簪ちゃん」
紫苑の言葉と共に、楯無は簪を見上げる。
すると簪は右手を前に出し、
「来て、『打鉄弐式・改』」
中指に嵌められているクリスタルの指輪が輝いた。
簪が粒子の輝きに包まれ、ISを纏っていく。
水色のISを身に纏った簪は楯無の居るアリーナ中央に降り立ち、向かい合った。
「簪ちゃん…………専用機、完成してたのね…………」
少し驚いた表情を見せる楯無。
「この子は私だけの力じゃない。翡翠さんやネプギア達…………皆の協力があって完成した私達のIS」
簪は真剣な眼で楯無を見る。
(あの簪ちゃんが、あんな眼をするなんて…………)
楯無の中では簪は暗く、頼りない雰囲気があった。
だが、今の簪からはそんな雰囲気は感じられない。
(この短い期間の間に、何かあったのかな?)
楯無は視線だけをネプギア達に向ける。
(何かあったとすればあの子達………それから……………紫苑さん、かな?)
楯無は視線を簪に戻すと、簪の視線を真っすぐ受け止める。
(覚悟を決めて簪ちゃんと向き合え…………か。確かに何度も向き合おうと思っていたけど踏ん切りがつかなくて結局今までズルズルと引き延ばしてきた…………紫苑さんが嘘をついてまで私をここまで連れて来なきゃ、簪ちゃんと向き合うことは出来なかったでしょうね)
楯無は内心溜息を吐いた。
(妹一人と向き合う事も出来ないなんて、最強の称号が聞いて笑っちゃうわね)
そこまで思って楯無も腹を括った。
右手に連節剣『ラスティ―・ネイル』を展開。
「来なさい簪ちゃん! あなたの姉がいる高みを見せてあげる!」
簪に向かって構える。
「……………私はもう、姉さんから逃げたくない…………!」
簪は右手を横に伸ばすと長い棒状の武器を展開し、両手持ちでそれを構える。
それを見て楯無は怪訝に思った。
(どういう事? 設計段階では簪ちゃんの『打鉄弐式』の近接武器は、高周波ブレードの薙刀『夢現』だったはず……………なのにあれには、“刃が無い”?)
楯無の思った通り、簪の持つ武器に刃は無く、ただの金属で出来た長い棒に思えた。
だが、
「『
簪が呟くと、その棒の先端からエネルギーが放出され、ピンク色の刃を形成する。
「エネルギーブレード………!」
楯無は目を見開いて驚きを露にする。
「いくよ………姉さん………!」
その言葉を聞いて楯無は気を取り直し、
「来なさい…………!」
剣状にした『ラスティー・ネイル』を構える。
「「…………………………」」
2人が一瞬睨み合った後、
「「はぁあああああああっ!!」」
同時に飛び出し、それぞれの武器を振りかぶる。
そして同時に振り下ろされたそれらがぶつかり合った。
その瞬間、
「なっ!?」
声を漏らしたのは楯無だった。
楯無の持つ剣が、ピンク色のエネルギーブレードによって、まるで温めたナイフでバターを溶かしながら切り裂いていくかのように接触部分から溶けていく。
「はあっ!」
簪の気合の入った声と共に楯無の剣が一気に切り裂かれた。
楯無は瞬間的に剣を手放し、簪から距離を取る。
「ただのエネルギーブレードじゃない!? まさか、ビーム!?」
ISのエネルギーブレードと言えば、一夏の白式の雪片やラウラのシュヴァルツェア・レーゲンのプラズマブレードがあるが、現行のISの近接武器を一瞬にして切断することなどできない。
実際に紫苑も量産機の実体剣で雪片と何度か切り結んだことはあるが、普通に打ち合えていた。
しかし、今簪が使っている物は、それらの物よりも遥かに高出力だ。
「ッ!」
楯無は『ミステリアス・レイディ』のメイン武装であるランスを呼び出し、切っ先を簪へ向ける。
その瞬間、ランスに内蔵された4連装ガトリングガンが火を噴いた。
だが、それと同時に簪は『夢現・紫』を持った右手を前に出し、あろうことかそれを手放した。
しかしその瞬間、『夢現・紫』はその場に留まって高速回転を始め、弾丸を弾き返していく。
「嘘っ!? 何そのマンガやアニメみたいな防ぎ方!?」
楯無は声を上げて驚く。
「PICを応用して、武器をプログラムされた通りに動くようにした。これなら、操縦者出来ない動きも再現できる。流石にグレネードみたいな爆発系は防げないけど、ガトリングやアサルトライフルぐらいなら防げる」
簪の言葉に楯無は内心感心していた。
だが、
「もちろん私の武器はこれだけじゃない」
簪が『夢現・紫』を量子変換でしまうと、代わりに黒い色をした大型のガンランチャー系の武器が展開された。
「『
簪はそれを楯無へ向ける。
「………発射!」
銃口から放たれたのは紛れもないビーム。
「ッ……………!?」
楯無は咄嗟に前方に水を集め、防御態勢を取る。
水の膜にビームが直撃し、その表面を蒸発させていく。
「くっ!」
楯無は声を漏らすが水の膜は何とかその役割を果たし、簪の攻撃を防ぎ切った。
「この水の防御で何とか防ぎきれる位なんて……………」
セシリアのレーザーライフルよりも遥かに高い出力に楯無は驚愕する。
だが、突如として簪の持つビームランチャーの銃口が展開した。
「えっ?」
そこに集中するエネルギーの光を見て楯無は冷や汗を流した。
「まずっ!」
楯無は水の防御を展開したまま回避行動を取った。
その瞬間、
「最大出力、『エクスマルチブラスター』!」
先程の砲撃よりも3倍ぐらいの太さがありそうな極太ビームが放たれた。
「嘘ッ!?」
楯無は予め回避行動を取っていたので直撃は受けなかったが、水の盾には掠った。
すると、掠った部分とその周囲の水は一瞬にして蒸発し、そのビームはそのまま後方のアリーナのシールドへ。
そして、シールドが破れそうになりそうなほどの轟音を立ててシールドを揺るがした。
「なんて威力…………」
楯無は驚愕しているが、ネプギアが自重していなければアリーナのシールドを軽く貫通する代物になっていたという事を彼女は知らない。
それはともかく、一見楯無の防戦一方に見える展開。
しかし、
「ねえ、簪ちゃん………熱くない?」
「ッ!?」
その言葉に簪はハッとした。
当然楯無のISの事もある程度調べてある。
楯無の使う『ミステリアス・レイディ』の武装には、アクア・ナノマシンと呼ばれるISのエネルギーを伝達するナノマシンを含む水がある。
先程簪の攻撃を防いだ水がそれだが、その形状は液体だけに留まらない。
簪の周囲には水蒸気が集まっている。
その事に簪が気付いた瞬間、楯無がパチンとフィンガースナップを打ち鳴らした。
それを合図に水蒸気に含まれていたアクア・ナノマシンが一斉に熱を放出。
水分を一気に気化させることで水蒸気爆発を引き起こした。
「きゃぁああっ!?」
簪は思わず悲鳴を上げる。
『
その様子を見て、
「ほう、流石楯無。武器の威力に押されたように見えてしっかりと攻撃の準備を進めていたのか」
紫苑は感心する声を漏らす。
少しすると、簪は爆煙の中から飛び出してきた。
「シールドエネルギーは3分の1削られたけど、機体損傷は軽微。各武装にも問題は無い。まだいける!」
簪は即座に機体状況を確認すると楯無へ視線を向ける。
「ッ!?」
その瞬間驚愕した。
何故なら、
「「「「「「「「「「さあ簪ちゃん。本物の私はどれかわかるかしら?」」」」」」」」」」
そこには『10人』の楯無がいたからだ。
勿論本物は1人。
残りは全て水で作った偽物だ。
だが、水で作った偽物とは言え侮れない。
下手に攻撃して外せば、『
「…………………………」
簪は無言でビームランチャーを収納する。
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
楯無達は怪訝な表情をしたが、
「………………本物を見つける必要は無い」
簪はそう言いながら空間パネルを展開。
素早い手付きでそれを操作していく。
すると、簪の両脇にあった大型の非固定部位が展開。
本来ならそこには8連装ミサイルランチャーが計6門あり、合計48発のミサイルが発射できるものだったのだが、ミサイルの発射口の代わりにあったものは、レンズの様な透明な円形の物体。
「全部打ち落とす」
簪がパネルを操作し、10人の楯無全員をロックオンする。
「『
簪が操作を完了すると、先ほどのレンズの様な場所から白く輝く光線が放たれた。
48発の光線は、光線とは思えない鋭角な軌跡を描きながら楯無へと迫る。
それぞれの楯無は回避行動を取ろうとするが、1人辺り5発の追ってくる光線が迫る中、完全に躱し切れるものではない。
楯無の1人の腕に光線が掠める。
その瞬間、掠った部位から凍り始めた。
凍ったことで動きが鈍り、そのまま光線が殺到し、楯無の1人は完全に氷漬けになる。
その一瞬後、粉々に砕け散って氷の粒を撒き散らせた。
「こ、これって………?」
楯無の1人が唖然とした表情で呟く。
「『山嵐・白』。冷凍ホーミングレーザーだよ」
「そ、そんな武装が!?」
驚愕しながらも楯無が1人、また1人と氷漬けになっていき、粉々になっていく。
遂に残り1人となり、その楯無が本物であることは一目瞭然だ。
すると楯無は避け切るのが難しいと判断したのか、その場で立ち止まって大きめの水球を作り出すと自信に向かってくる4発のレーザーに向けて放った。
水は当然凍り付くが、同時にレーザーも防ぐことが出来る。
水は完全に凍り付き、同時に砕けてキラキラと破片を舞い散らせた。
「……………簪ちゃん」
楯無は簪を見据える。
「…………姉さん」
簪も楯無を見上げた。
楯無はランスを構えると、ランスに水を纏わせて突っ込んできた。
簪も即座に『夢現・紫』を展開。
迎え撃つ。
「はぁああああああっ!!」
「やぁあああああああっ!!」
切り結ぶ2人。
楯無の蒼流旋は常に流動している超高周波振動の水を纏っているため、例えビームの刃でも一瞬で突破されることは無い。
そして、楯無は鍔迫り合いは行わず、打ち合いを挑むことによってビーム刃への接触時間を最短に保っていた。
そして、その斬り合いで優勢なのは楯無だった。
簪も食らいついてはいるが、僅かな隙を突かれ、一撃、また一撃とダメージを蓄積されていく。
簪のシールドエネルギーが残り3分の1を切ったが、楯無のシールドエネルギーはほとんど減ってはいなかった。
押されているようには見えてはいたが、機体へのダメージは殆ど無かったからだ。
(やっぱり姉さんは凄い…………機体性能も武器もこっちの方が上の筈なのに、攻撃が届かない………!)
簪は楯無の凄さを再認識していた。
「だけどっ!」
簪はより強く武器を振り、楯無の蒼流旋を弾いた。
「ッ!?」
「絶対に………追いつく!」
簪は突きを放つ体勢になる。
楯無は即座に体勢を立て直し、簪の攻撃に対処できる状態になった。
すると、
「スキルプログラム作動………」
簪が呟く。
「狂瀾怒濤の槍、『レイニーラトナピュラ』!!」
その瞬間、例えISを纏っていたとしても、とても出すことの出来ない速度で突きの連撃が放たれた。
「なっ!?」
楯無が驚愕の声を漏らす。
楯無は咄嗟に防御態勢を取るが、無数の連撃の前にシールドエネルギーが瞬く間に削られていく。
時間としては僅か5秒ほどの出来事。
だが、その間に楯無のシールドエネルギーは半分以上減らされていた。
「…………『レイニーラトナピュラ』って………ベールの技じゃねえか!」
紫苑が思わず突っ込んだ。
「うん、カンザシちゃんの薙刀は槍に形状が近いから、ベールさんの戦い方を参考にしてみたんだ」
ネプギアがそう言う。
「まあ、本家本元に比べれば、威力、速度、攻撃回数、全てが半分程度だが………」
とは言え、楯無にとっては強烈な攻撃だっただろう。
「か、簪ちゃん…………今のは…………?」
「これもさっきの防御と理屈は一緒。普段動かすための補助に使われているPICを、“身体を動かすために”使ったの…………元の発想はロムちゃんとラムちゃんが格闘ゲームで遊んでいるときに何げなく言った『このゲームの必殺技ってISで再現できないのかな?』って一言。プログラム1つで決まった動きを身体にさせる。状況によっては非常に使える切り札になる…………もちろんデメリットもある。プログラムによって動きが決められているから、何度も使えば見切られやすい事。後は………身体を無理矢理動かしている分、身体への負担が大きいから乱用は出来ないって所かな」
簪はそう言いながら若干震えている右腕を見る。
今の技を放ったことで右腕を中心に大きな負荷がかかったのだ。
「あら? そんな事堂々と言っちゃっていいの?」
「構わない。姉さんなら言わなくてもすぐに気付いた」
「あら、光栄ね」
お互いのシールドエネルギーは、簪が3分の1弱。
楯無が3分の1強。
楯無の方が優勢とは言え、『夢現・紫』の攻撃力を考えればあまり差は無いと考えていいだろう。
再び2人は構える。
「姉さん!」
「簪ちゃん!」
お互いを呼びながら再び向かって行く。
再び切り結びを始める2人。
だが、先ほどの技を警戒してか、楯無は積極的な攻撃を控えており、状況は膠着状態になっていた。
しかしそれでも互いの攻撃は少しずつ決まっている。
攻撃が当てる回数は楯無の方が多いが、威力は簪の方が上の為、シールドエネルギーの減り方は互角だ。
すると、
「姉さん!」
簪が一撃を放つと共に叫んだ。
「私、強くなったよ!」
「!?」
簪の言葉に楯無は驚愕する。
「だからもう、私を置いて行かないで!」
自分の想いと共に一撃を放つ。
「お姉ちゃん!!」
虚を突かれた楯無はクリーンヒットを貰ってしまい、シールドエネルギーを大きく削られる。
後一撃でも喰らえばゼロになるだろう。
だが、ガシッと左手で簪の突き出した薙刀の柄の部分を掴む。
「強くなったね、簪ちゃん」
そう言って顔を上げた楯無は、優しい微笑みを浮かべていた。
「お姉ちゃん………」
「やっぱりあなたは、私の自慢の妹よ」
楯無も自分の想いを口にする。
「今までごめんね、簪ちゃん」
その言葉を聞いて、思わず涙ぐむ簪。
「…………だけど」
楯無はそう言いながらもランスを簪へ向ける。
そのランスには、防御に使っていた水も全て攻撃へと転換した『ミステリアス・レイディ』の切り札。
「そう簡単に勝ちは譲らないから」
楯無はいたずらっ子の様な笑みを浮かべる。
「あはは。流石お姉ちゃん………!」
簪も可笑しそうに笑う。
そして、
「『ミストルティンの槍』!」
至近距離で放たれたそれは、楯無も巻き込んで大爆発を起こした。
その結果は、両者シールドエネルギーゼロの引き分け。
それを見ていた紫苑は、
「やれやれ、ここは勝ちを譲ってやっても良かっただろうに………楯無も負けず嫌いだな」
そう呆れた様に呟いた。
第34話の完成。
更識姉妹にスポットを当てすぎて前回に現れた束や一夏のその後が書けなかった。
ぶっちゃけ昨日の休みが休日出勤で潰れてしまったという理由なんですけどね。
さて、今回は魔改造打鉄弐式が登場しました。
恐らく現行ISでは最強の性能を持っているかと…………
以前あとがきでも書いた通り、ビーム薙刀にビームランチャーに、冷凍ホーミングレーザーを装備させときました。
それぞれネプギア、ユニ、ロムラムをイメージした武装なんですが(ユニとかまんま)、リーンボックスをイメージさせる武装が無かったので、技としてぶっこんどきました。
PICなら何でもありだからこの位出来るよね?
では、既に恒例になりつつある本日のNGシーンをば。
「強くなったね、簪ちゃん」
そう言って顔を上げた楯無は、優しい微笑みを浮かべていた。
「お姉ちゃん………」
「やっぱりあなたは、私の自慢の妹よ」
楯無も自分の想いを口にする。
「今までごめんね、簪ちゃん」
その言葉を聞いて、思わず涙ぐむ簪。
「……………小学生の時、冷蔵庫にあった簪ちゃんのプリンを食べたの私なの!」
「へっ?」
「幼稚園の時も簪ちゃんの好きなお人形壊しちゃったのも私だし、中学生の時の………!」
「…………………………」
姉妹の溝がより深まった一件となってしまった。