超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第41話 トンネルを抜けたら、そこは未来都市(プラネテューヌ)でした

 

 

 

 

 

 

 

「ななな……………?」

 

バスの運転手は、空いた口が塞がらなかった。

いつもよりも長いトンネルを抜けたと思ったら、突然辺り一面の草原であり、草原の背景には未来的な都市が広がる。

生徒達も、窓から見える景色が普通ではないことに気付き、騒めき出す。

そして紫苑は、他の皆とは別の意味で外の景色に釘付けだった。

 

「こ、ここは………まさか……………!」

 

「紫苑………?」

 

隣にいたラウラが紫苑の様子がおかしいことに気付き、声を漏らす。

すると、

 

「全員落ち着け!」

 

千冬の一喝が響いた。

その一喝で騒めいていた車内が静かになる。

 

「全員そのまま聞け。現在我々は未知の現象に巻き込まれ、見知らぬ場所にいる様だ」

 

千冬のその言葉で生徒達が僅かに騒めく。

携帯のGPS機能やマップ機能などで現在位置を調べたが出てこなかった。

寧ろ携帯が圏外である。

 

「静かに! 異常事態であるからこそ冷静さを失うな! 大丈夫だ、この私が居るのだからな」

 

千冬は自身の持つカリスマ性を存分に発揮し、その影響で生徒達は落ち着いていく。

紫苑は、生徒達が落ち着いたところで発言しようと手を挙げようとした時、

 

「きゃぁあああああああああああああっ!!」

 

突然生徒の1人が悲鳴を上げた。

 

「何事だ!?」

 

千冬が問いかけると、その生徒は窓の外を見て狼狽えていた。

それに釣られて他の生徒や千冬も窓の外を見ると、

 

「グルルル…………!」

 

このバスの半分ぐらいの大きさがありそうな巨大な狼らしき生物が唸り声をあげていた。

 

「な、なんだアレは!?」

 

一夏が声を上げる。

 

「「「「「「「「「きゃぁあああああああああああああっ!!!」」」」」」」」」」

 

生徒達の悲鳴で車内が騒然となる。

それを皮切りに、

 

「グルァアッ!!」

 

その巨大な狼が飛び掛かってきた。

鋭い爪の前足によってバスの側面が凹み、更に車体の表面が切り裂かれる。

その衝撃で更に混乱に陥る車内。

するとその狼は身体全体をバスに押し付け、押し始めた。

傾いていくバス。

 

「全員! 何かに掴まれ!!」

 

千冬が体を支えながら咄嗟に指示を飛ばす。

車内が悲鳴に包まれながら横転する。

横転したバスの上に登り、窓から中の様子を伺う狼。

その様子を見て怯える生徒達。

 

「くっ! 専用機持ち! 応戦を…………!」

 

千冬がそう指示を飛ばそうとした時、

 

「フッ………!」

 

銀閃が奔ってバスの窓枠が切り裂かれると共に、紫苑が飛び出した。

 

「グルァ?」

 

その狼が何事かと視線を向けた瞬間、

 

「はぁあああああああああっ!!」

 

紫苑がすり抜けざまに狼の首目掛けて刀を一閃。

狼が光の粒子となって砕け散った。

紫苑はそれを確認して刀を鞘に納めると、

 

「皆、大丈夫か!?」

 

皆に声を掛ける。

倒れたバスから生徒や運転手が這う這うの体で這い出てくると、

 

「怪我人や気分の悪くなった者はいるか?」

 

千冬が生徒達を集めて確認すると、チラホラと手が上がる。

流石に訳の分からない所にいきなり飛ばされた上に、怪物に襲われたら精神的にもひとたまりも無いだろう。

 

「平気な者は、気分の悪い者や怪我人に手を貸せ。専用機持ちは周囲の警戒! その間に私と山田先生で今後の方針を決める!」

 

千冬がそう宣言した時、

 

「あ、その事について提案があります。発言しても………?」

 

紫苑が挙手をしながら千冬に訊ねる。

 

「ふむ………許可する。言ってみろ」

 

千冬が許可を出す。

 

「では……………皆! いきなり見知らぬ場所に来て混乱していると思う! だけど安心してほしい! ここの事は俺は良く知っている!」

 

紫苑の言葉に千冬や真耶を含めた全員が騒めく。

 

「本当か? 月影」

 

千冬が代表して確認の言葉を投げかける。

 

「はい。元の場所に戻れるかは別の話ですが、皆の安全と衣食住を保証することは出来ます」

 

「ふむ……………」

 

「この場所は安全とは言い難いので詳しい話をするのは安全な場所に移動してからになりますが……………俺を信じてくれるのなら、このまま俺の指示で安全な場所まで移動したいのですが?」

 

紫苑の言葉に千冬は少し思案するが、

 

「…………………いいだろう。指揮権をお前に委ねる。全員を無事に安全な場所まで送り届けてくれ」

 

千冬は紫苑にそう頼んだ。

 

「了解しました」

 

紫苑は生徒達に向き直ると、

 

「と、言う訳でここからは俺の指示に従って欲しい。安心してくれ、無事に皆を安全な場所まで連れて行く…………約束する!」

 

生徒達は不安が拭えないようだったが、右も左も分からない状況では紫苑の言葉に従うしか選択肢は無い。

 

「まず注意しなければいけない事は、この世界にはさっきみたいな怪物………『モンスター』が存在する。まあ、この辺に生息しているモンスターは弱い方だからISでも十分に対処は可能だから安心してくれ。ただ、偶に危険種や接触禁止種のように強さの桁が違うモンスターが出てくるときもあるから、こちらから無暗に手を出すような真似はしない事………特に一夏」

 

「な、何だよ?」

 

名指しされた一夏は不機嫌そうに応える。

 

「お前が一番暴走しそうだから、特に言っておく。勝手な真似はするなよ………!」

 

「なっ……………!?」

 

一夏がその言葉に反論しようとした所で、

 

「一夏! 月影の指示に従え! お前の勝手な行動が生徒達全員を危険晒す可能性もあるのだ!」

 

「うっ………わ、わかったよ…………」

 

千冬の言葉で一夏は渋々と頷く。

そこで再び紫苑は口を開き、

 

「とりあえず目指す場所はあそこに見える都市だ。多分、一時間ぐらい歩けば着くかな………? 移動は皆で一塊になってその周りを専用機持ちが護衛する形にする。まず、俺とラウラが先頭」

 

「了解した!」

 

紫苑の言葉にラウラは迷いなく返事を返す。

 

「箒とシャルロットが両翼」

 

「わかった」

 

「任せて!」

 

2人も頷く。

 

「一夏は後方で背面の警戒」

 

「……………ッ!」

 

一夏は軽く舌打ちしながらそっぽを向く。

 

「セシリアは上空で全周囲警戒と、襲撃があった時の援護」

 

「分かりましたわ」

 

セシリアも返事を返す。

 

「よし! それじゃあすぐに移動だ!」

 

紫苑の言葉でIS学園1年1組の大移動が始まった。

 

 

 

 

移動を開始して暫くすると、

 

「「「ぬ~~~~ら~~~~~!」」」

 

彼らの目の前に3匹のスライヌが現れた。

 

「ねえねえ、つっきー。あれ何~?」

 

クラスメイトの1人である布仏 本音が紫苑に訊ねる。

本音は更識家の従者の家系であり、簪の侍女をしているため、簪と付き合う事が多くなった紫苑も、彼女と話す機会も必然的に多くなったのだ。

 

「あれはスライヌだな。この世界じゃ一番ポピュラーなモンスターだ。まあ、戦闘力は大したことは無いが、色々と迷惑をかけるモンスターだから討伐対象だ」

 

「「「ぬ~~~ら~~~~~~~!!」」」

 

紫苑がそう言う傍から飛び掛かってくるスライヌ達。

だが、

 

「…………はっ!」

 

紫苑が一瞬で抜刀。

居合抜きの如く3匹纏めて真っ二つにして、光の粒子に帰す。

 

「おお~~~! つっきー凄い!」

 

本音はパタパタと袖の長い両手で拍手をする。

音は鳴っていないが。

その後も大したモンスターの襲撃は無く、順調に道程を進んでいた。

 

 

 

 

 

「くーちゃん、大丈夫?」

 

「はい、束様」

 

小高い丘を登る最中、束が傍らにいるクロエに声を掛ける。

クロエは疲れからか少し息を乱しているが笑みを浮かべて返事を返す。

 

「よし、ここを登り切れば…………」

 

紫苑は越えれば都市の門が見える丘を登り切った。

そして、次の瞬間紫苑の眼に飛び込んできたのは、

 

「ッ…………!」

 

門の周りを包囲する様に集まる無数のモンスターの群れと、それを必死に防ごうと奮戦するプラネテューヌの衛兵たちであった。

 

「これは……………!?」

 

その光景を見て声を漏らす千冬。

それと同時に生徒達に動揺が広がる。

 

「ああ、心配しなくてもここではそう珍しい事では無いです。当然ですがモンスターが徘徊してるという事は街も襲われる可能性がありますから……………ですが、ここまで大規模な襲撃は滅多にありませんが……………上位危険種もいるか…………」

 

紫苑は様子を伺いつつモンスター達の情報を集める。

 

「ネプテューヌはいない…………? あいつが国民を見捨てるとは思わないし、クエストか何かで国を空けてるのか…………?」

 

紫苑はそう推測する。

 

「上位危険種も居るという事は衛兵たちだけでは荷が重いな…………」

 

そう判断すると、

 

「とりあえず皆はこの場で待機しててくれ! 一先ずこの騒動を片付ける!」

 

紫苑はそう言うと前に進み出ると目を瞑った。

 

(……………プルルートは近くには居ない…………だが同じ世界には居る………リンクの感覚からすると、ルウィー辺りか…………? この距離ではプルルートとシェアリンクすることは不可能…………だけど…………!)

 

紫苑は目を見開くと同時に叫んだ。

 

「シェアリンク!」

 

その瞬間、紫苑の魂はリンクの結び付きを強める。

だが、相手はプルルートではない。

この地の………プラネテューヌのシェアクリスタルを介し、ネプテューヌへとリンクを繋げる。

その瞬間流れ込むネプテューヌの力。

 

(ああ…………この感覚………久しぶりのネプテューヌの………プラネテューヌの人々のシェアだ…………!)

 

久しく感じていなかった人々のシェアの感覚に、紫苑は感動に近い感覚を覚える。

突き出した右手に光が集まり、剣と化す。

続けて紫苑はその剣を空へと投げ放った。

 

「シェアライズ!!」

 

回転しながら宙を舞っていた剣が向きを変え、紫苑に一直線に向かってくる。

紫苑は両手を横に広げてそのまま剣に胸を貫かれた。

その瞬間を目撃した生徒達が悲鳴を上げる。

だが、それと同時に紫苑は炎に包まれ火柱が立つ。

少しするとその火柱は四散し、赤いプロテクターを纏った青年、バーニングナイトが姿を現す。

バーニングナイトはその場で飛び上がり宙に浮くと、背後に円陣を発生させてそれに足を着けるとそれを蹴り、一気に飛び出した。

それを見送る千冬。

 

「どうでもいいがあの変身の仕方はどうにかならんのか? 何度見ても心臓に悪いぞ…………」

 

「「「「「「「「「「ごもっとも!」」」」」」」」」」

 

その言葉に生徒全員の気持ちは一致した。

 

 

 

 

 

 

 

 

プラネテューヌの衛兵たちは、稀にみるモンスターの大襲撃に押され気味だった。

 

「くそっ! こいつら何匹いるんだ!?」

 

「倒しても倒してもキリがない!」

 

モンスターの多さに思わず愚痴が出る衛兵たち。

 

「女神様がいないこんな時に!」

 

その時、小型の狼型モンスターが飛び掛かってきて、衛兵の1人が押し倒される。

 

「うわぁっ!?」

 

「せ、先輩!」

 

喉元に食らいつこうとする狼のモンスターの顎をライフルの銃身で必死に防ぐ先輩衛兵。

 

「先輩! 今助け……うわっ!?」

 

後輩衛兵が助けに入ろうとした所、別のモンスターが襲い掛かって来て後輩衛兵が足止めされてしまう。

 

「後輩!? くうっ………!」

 

後輩衛兵に気を取られた瞬間、押し込まれもう少しで喉元に食らいつかれそうになる先輩衛兵。

だがその時、

 

「邪魔よっ!」

 

X字に閃光が奔り先輩衛兵を襲っていた狼が切り裂かれる。

更に、

 

「えいですっ!」

 

後輩衛兵を襲っていたモンスターにでっかい注射器が突き刺さり、得体のしれない薬品が注ぎ込まれ、モンスターが消滅する。

 

「大丈夫!?」

 

先輩衛兵を助けたのは両手にカタールを装備し、緑のリボンを付けた少女。

後輩衛兵を助けたのはピンク色の髪にのほほんとした雰囲気を振りまく巨大な注射器を持った少女。

 

「アイエフさん! コンパさん! 助かりました!」

 

礼をいう先輩衛兵。

 

「お礼は後よ! もう少し頑張って! ネプ子が出払ってていない今、この国を護れるのは私達しかいないのよ!」

 

「「はい!」」

 

アイエフの言葉に衛兵たちは返事を返す。

それを聞くと、アイエフとコンパは再びモンスター達に向かって行く。

再び戦闘を再開する衛兵の2人。

だが、状況は中々好転しない。

 

「くそっ……! こいつら………!」

 

悔しそうに声を漏らす先輩衛兵。

すると、

 

「……………こんな時、騎士様が居てくれたら………」

 

後輩衛兵が思わず弱音を零した。

 

「言うな! 騎士様が行方不明になって一番辛いのは女神様なんだ! その女神様があんなにも健気に頑張っていらっしゃる! 俺達の役目は、騎士様が戻ってくる時まで女神様を支えなきゃいけないんだ!」

 

「先輩………!」

 

「だから、女神様の留守を預かる俺達がこの国を護らなきゃいけないんだよ!」

 

「先輩………はい!」

 

武器を持つ手に力を籠める後輩衛兵。

 

「とはいえ………このままじゃ埒が明かない………」

 

先輩衛兵は、ふとこの群れのボスであろう上位危険種のモンスターを見つめる。

そのモンスターは、宙を泳ぐクジラの様なホエールタイプのモンスターだった。

 

「…………後輩、援護を頼めるか………?」

 

「…………先輩? まさか!」

 

「ボスを倒せばこの群れは退く筈だ。俺が奴を倒す!」

 

「無茶です! 相手は上位危険種なんですよ!? 危険すぎます!」

 

「無茶でも何でもやるしかないんだ! 俺が命に代えても奴を倒して見せる!」

 

「ですが…………!」

 

「後輩………頼む…………!」

 

「………………分かりました」

 

「よし…………! ならば………」

 

「ですが………! 僕もお供します! 先輩!」

 

「なっ!? 後輩!?」

 

「僕もこの国を護る兵の1人です! それに、1人よりも2人の方が確率は高い筈です!」

 

「後輩…………フッ、一丁前な口を利きやがって…………!」

 

後輩衛兵の言葉に先輩衛兵はニヤリと笑う。

 

「ならば行くぞ! 後輩!」

 

「はい! 先輩!」

 

そう言うと、2人はボスモンスターに向けて突喊する。

 

「「うおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

ライフルを連射しながらボスモンスターに突撃していく。

 

「ちょ、あんた達! 何やってるの!?」

 

それに気付いたアイエフが叫んだ。

 

「ボスを倒せばこいつらは退く筈です!」

 

「奴は我々が命に代えても倒して見せます!」

 

2人はそう叫んで立ち止まろうとはしない。

 

「馬鹿な真似は止めなさい!」

 

「ダメですぅ~!」

 

アイエフとコンパは叫ぶ。

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

2人の衛兵はボスモンスターに向けて攻撃を続ける。

しかし、無情にもボスモンスターには大したダメージを与えられていなかった。

 

「うぉおおおおおっ! この戦いで生き残ったら、僕、あの子に告白するんだぁああああっ!!」

 

「プラネテューヌ衛兵の誇りを見せてやる!!」

 

「ちょっ!? こんな時に盛大に死亡フラグ立てなくても………!」

 

衛兵たちのセリフに思わずツッコミを入れるアイエフ。

そんな衛兵たちに向かってボスモンスターが攻撃体勢に入った。

それでも2人の衛兵は逃げようとはしない。

そして遂にボスモンスターによって2人の衛兵の命が失われようとした………

その瞬間、

 

「その心意気は認めるが………そんな事をアイツは望んでいない」

 

そんな声が聞こえた瞬間、ボスモンスターが横殴りに吹き飛ばされ、多数の雑魚モンスターを巻き込みながら大地を転がる。

 

「あ………ああ…………!」

 

「あ、あなたは…………!」

 

2人の前に降り立つのは、赤きプロテクターを纏った騎士。

そのまま彼はボスモンスターの方に左手を翳すと三重の魔方陣が現れ、

 

「マジカルエフェクト 『バーンエクスプロード』!!」

 

言霊を唱えた瞬間、ボスモンスターを中心に巨大な魔法陣がモンスターの群れの足元に広がる。

次の瞬間、無数の爆発が起きてモンスターの大半を吹き飛ばした。

その出来事に静まり返る戦っていた他の衛兵達。

すると、

 

「女神パープルハートの守護者、騎士バーニングナイト。たった今プラネテューヌに帰還した!」

 

バーニングナイトがそう宣言した瞬間、爆発的な歓声に包まれた。

 

「騎士様!」

 

「騎士様だ!」

 

「バーニングナイト様が帰ってきた!!」

 

次々とバーニングナイトを称え、歓喜する声が飛び交う。

 

「シオン!」

 

「シオ君!」

 

アイエフとコンパがバーニングナイトに駆け寄る。

 

「アイエフ、コンパ」

 

2人に声を掛けるバーニングナイト。

 

「シオン! 無事だったのね!」

 

「ああ、心配かけて済まなかった。俺は大丈夫だ」

 

アイエフの言葉にそう返すバーニングナイト。

 

「シオ君! おかえりですぅ~!」

 

「ああ。ただいまコンパ」

 

コンパも嬉しそうにそう言った。

すると、

 

「2人とも、ネプテューヌはどうしたんだ?」

 

姿を見せないネプテューヌの事を尋ねると、

 

「ああ、ネプ子は今、ベール様の要請でリーンボックスに応援に行ってるわ。何でもベール様1人じゃ手古摺りそうな接触禁止種が現れたらしくて、ネプ子に応援を要請したの」

 

「なるほど………」

 

アイエフの言葉に納得すると、バーニングナイトは先程の爆心地に視線を向ける。

爆煙が晴れていくと、ボスモンスターはかなりのダメージを負っていたがまだ生きていた。

バーニングナイトは片手剣を構えると、

 

「お前達は撃ち漏らしを頼む。ボスは俺がやる」

 

「分かったわ」

 

「はいですぅ!」

 

バーニングナイトの言葉に迷いなく頷くアイエフとコンパ。

彼に任せれば大丈夫だと2人も分かっているのだ。

ボスモンスターはダメージを受けながらもバーニングナイトに向かってくる。

それに対しバーニングナイトは、

 

「フレイムアサルト…………!」

 

そう呟くと一気に飛翔し、無数の乱撃を加え、ボスモンスターを宙に浮かす。

そして上段に振りかぶると、宙に浮いたボスモンスターを地上に向かって斬り付けるように飛翔し、地上に激突した勢いでバウントさせ、もう一度宙に浮かせると今度はそのまま上空へ向かって切り上げ続ける。

そして、ある程度の高さに来たところで一気に斬り抜いた。

更に蓄積された炎エネルギーが爆発を起こし、ボスモンスターが木っ端微塵になる。

そして、ボスモンスターがやられた事に気付いた他のモンスター達が逃げ出し始めた。

 

「やった! やったぞ! 騎士様がモンスターを倒してくれたぞ!」

 

衛兵の1人が喜びの声を上げる。

 

「被害はどの位だ?」

 

バーニングナイトが問いかけると、

 

「はい! 負傷者は多数居ますが、幸運にも死者はいません! これも騎士様が駆け付けてくださったお陰です!」

 

報告する衛兵も喜びを隠せない。

 

「そうか………すまなかったな。計らずとも、少し長すぎる里帰りになってしまった」

 

「いいえ! そんな事はありません!」

 

すると、衛兵が敬礼をしながら直立する。

 

「騎士様! よくぞ………よくぞお戻りになられました! 我ら一同、騎士様のお帰りを心よりお待ち申しておりました!」

 

その衛兵に続いて、その場に居た全員の衛兵が同時に敬礼する。

 

「女神様もこれで安心されることでしょう! では、私は国民達にこの事を知らせに行って参ります!」

 

そう言うと、衛兵は踵を返して駆け出していく。

バーニングナイトはそれを見送ると変身を解き、紫苑に戻る。

その格好はIS学園の制服のままだ。

 

「珍しい格好ねシオン。何処かの制服?」

 

「白い制服ですぅ」

 

アイエフとコンパが歩み寄ってくる。

 

「ああ、その事について、ちょっと問題と言うか、おまけが付いてきたと言うか…………」

 

紫苑はクラスメイト達が待機している丘へ、アイエフとコンパ、そして数人の衛兵を連れて向かいつつ説明を行う。

元の世界へ戻っていたこと。

IS学園に入学していたこと。

修学旅行のバスごとこちらの世界へ来てしまった事などを掻い摘んで説明した。

そして、皆の所へ辿り着くと、

 

「お待たせしました」

 

「………ああ」

 

千冬は紫苑と一緒に来たアイエフとコンパ、衛兵に僅かに警戒する仕草を見せる。

すると、衛兵が前に出て、

 

「あなた方がIS学園の生徒、及び教師の方々ですね? 我々はプラネテューヌの教会に務めるものです! 騎士様の命により、あなた方が帰還されるまでの間は、我々プラネテューヌの教会があなた方の生活、安全を保障したします!」

 

敬礼しながらそう宣言した。

その言葉にやや呆気にとられる千冬。

 

「いや………それはありがたいがそちらにとっては我々は得体のしれぬ集団だろう? そんな簡単に受け入れていいのか?」

 

千冬が聞き返すと、

 

「問題ありません。あなた方の身元は騎士様によって保障されています」

 

「騎士様?」

 

衛兵の言葉に千冬は訝しむ。

 

「俺の事ですよ」

 

その疑問に答えたのは紫苑だった。

 

「はい。シオン様………騎士バーニングナイト様が保証されているのなら、問題ありません」

 

「…………………」

 

若干呆気にとられた表情をする千冬。

 

「とりあえず街の中へ。ここも完全に安全とは言い難いですから」

 

紫苑の言葉で一行は移動を始め、プラネテューヌの門を潜る。

すると、そこには未来都市と言える光景が広がっていた。

 

「わああ……………」

 

思わず息を漏らす生徒達。

それぞれがその光景に見入っている。

更に、

 

「うぉおおおおおお! 何なんだいここは!? この束さんの頭脳を持ってしても理解できないものが幾つもあるよ! おおお! どれもこれも、束さんの知識欲を刺激するぅぅぅぅっ!!」

 

一番はしゃいでいるのは束であった。

色々なものに興味を向け、走り回っている。

 

「束様………とても楽しそうです」

 

クロエがそんな束を見て微笑む。

そんな皆に向かって、

 

「ようこそ、“革新する紫の大地”『プラネテューヌ』へ」

 

紫苑がそう言った。

 

「革新する………?」

 

「紫の大地………?」

 

箒とセシリアが声を漏らした。

 

「ああ。この国はこの世界にある4つの国の中で一番技術が発達している国なんだ。この国を代々治めてきた女神が先進的な思想を持つ者が多かったのが理由らしいけど………」

 

紫苑が説明しながら再び移動を開始する。

 

「何処へ行くのだ?」

 

千冬が尋ねると、

 

「とりあえずこの街の中心にある、あのプラネタワーに行きます。あそこが教会も兼ねているので、そこで今後の説明をします」

 

千冬は遠くに見えるプラネタワーを見つめる。

 

「随分と遠いな………」

 

そう漏らす千冬。

 

「大丈夫です。ちゃんと移動手段はありますから」

 

紫苑はそう言うと、近くにある歩道橋の登り口のようなところを登っていく。

そこを登りきると、円状のリングが宙に浮いて、連続して並んでいる光景があった。

しかし、足場は途中で途切れており、千冬や生徒達から見たそれは、行き止まりにしか見えない。

 

「月影、ここは…………?」

 

千冬は訊ねるが、紫苑、アイエフ、コンパはそのまま歩みを止める事無く途切れた足場から一歩踏み出した。

 

「月影っ……!?」

 

千冬達は一瞬慌てたが、紫苑達が踏み出した足の先に六角形の足場が出現し、宙に浮いたまま前に進んでいく。

紫苑は後ろを振り返り、

 

「大丈夫ですから付いてきてください」

 

皆にそう呼びかける。

生徒達はやや不安そうにしていたが、

 

「こ、ここは先生として私が………!」

 

真耶が皆の手本になる様に歩き出す。

しかし、足場が途切れているところまで来ると、どうしても不安になるのか、一瞬立ち止まり、躊躇する。

 

「ううう…………!」

 

真耶は躊躇しながらも一歩を踏み出そうとして、

 

「紫苑! 置いて行くな!」

 

その横を全く躊躇せずにラウラが駆けていった。

しかもラウラは出来た足場から更に足を踏み出しても、その先にも足場が出来ることを意図せずに証明していた。

それを見て、漸く安心したのかぞろぞろと生徒達が通路へ踏み出していく。

勇気を出して引き受けた役目をあっさりとラウラに掻っ攫われた真耶は哀愁を漂わせながら項垂れていた。

そして、

 

「おおおおおおおっ!!?? これも凄い!! どんな原理!? 技術は!? 動力は!?」

 

周りの目を気にせずに這いつくばりながら足場を観察していた。

 

「姉さん…………」

 

その束の姿に箒は流石に恥ずかしくなり顔を赤くして項垂れていた。

 

 

 

そのまま彼女達が進んでいくと、

 

「きしさまー!」

 

少女の声が聞こえる。

見れば、下の道路で幼い少女が紫苑に向かって手を振っていた。

紫苑も軽く手を振り返す。

すると、

 

「騎士様……?」

 

「見て! 騎士様よ!」

 

「騎士様―!!」

 

「バーニングナイト様!」

 

まるで波紋が広がる様に紫苑を称える声が広がっていく。

 

「騎士様が帰ってきた!」

 

「おお! これでもう安心じゃ! 女神様もご安心なされるじゃろう!」

 

「ありがたやありがたや…………」

 

老若男女問わず、紫苑に向かって歓声や歓喜の声を上げる者。

挙句には拝む者まで出てきている。

それらの人々に紫苑は手を振って応えていた。

 

「す、凄い人気だね………月影君」

 

シャルロットがその様子を見て思わず呟く。

 

「まあ、信仰を集めるのも俺の仕事の内だからな」

 

そう言いながら一行はプラネタワーに向かって進んでいく。

次々に歓声を受けながら応えていく紫苑に、一夏は面白く無さそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

やがて教会であるプラネタワーに到着し、中へ入ると、

 

「「「「「「「「「「おかえりなさいませ! バーニングナイト様!」」」」」」」」」」

 

教会の職員たちが一斉に紫苑を出迎えた。

その迫力に一瞬驚く生徒達。

紫苑やアイエフ、コンパは平然としていた。

すると、

 

「シオンさん!」

 

宙に浮いた本に座る妖精のような小さな女性、イストワールが紫苑の元へ飛んでくる。

 

「イストワール」

 

紫苑も答える。

 

「おかえりなさいシオンさん。ご無事で何よりです」

 

「ああ、ただいま。イストワール」

 

イストワールは労いの言葉をかけ、紫苑もそれに応える。

そしてイストワールはIS学園の生徒達に向き直り、

 

「そしてあなた方がIS学園の生徒さんと教師さん達ですね? 私はイストワールと申します。このプラネテューヌ教会の『教祖』を務めております。以後お見知りおきを」

 

イストワールがそう言って頭を下げると、

 

「「「「「「「「「カワイイ!!」」」」」」」」」」

 

生徒達の大半が声を上げた。

 

「はい?」

 

イストワールは困惑の声を上げる。

妖精のような姿のイストワールは十代女子の心にクリティカルヒットしたらしい。

イストワールを間近で見ようと彼女に迫る。

その迫力にイストワールがたじろいでいると、

 

「静まれ! 話が進まん!」

 

千冬の一括で生徒達が大人しくなる。

 

「申し訳ない。生徒達が失礼をした」

 

イストワールの佇まいから、彼女を相当な権力者と判断した千冬は生徒達を黙らせ、改めて礼儀正しく応じる。

 

「いえ………元気のいい生徒さんたちですね」

 

イストワールは笑って見せる。

イストワールも佇まいを直すと、

 

「それでは、現在皆様が置かれている状況を説明します」

 

イストワールが説明を始める。

この世界がゲイムギョウ界と呼ばれる地球とは別の世界だという事。

この国が4つある国の1つ、『プラネテューヌ』である事。

現状帰る手段は無い事。

帰る手段が見つかるまでの間、衣食住は保証し、国内での行動も制限しないという事を説明した。

 

「聞くところによると、皆様は修学旅行に行く途中だったとか…………突然の事で不安になっているかもしれませんが、よろしければこのプラネテューヌを修学旅行先だと思って寛いでください」

 

イストワールはそう言うと、

 

「それでは皆様が寝泊まりするホテルへご案内します。あ、費用については心配いりません。教会で全て負担させていただきます」

 

「何から何まで申し訳ありません」

 

千冬は頭を下げる。

 

「いえいえ、困ったときはお互い様です」

 

イストワールがそう言うと、紫苑が思いついたように口を開いた。

 

「そうだ、イストワール」

 

「はい、何でしょうかシオンさん?」

 

「俺のポケットマネーから自由に使えるお金として生徒達に1人辺り10000Bit位ずつ渡しといてくれ。流石にお金がないと楽しめるのにも限度があるからな」

 

「いえ、その程度なら教会が…………」

 

「いや、これはあくまで俺の厚意だ。そこまで国民の税金を使う訳にはいかないさ。それに、クラス全員や先生達を含めても50万ぐらいだ。その程度なら問題ない」

 

「月影………」

 

「まあ、そう言う事なんで是非ともこの国を満喫していってください」

 

「…………その厚意に甘えさせてもらうとしよう」

 

千冬は大人しく提案を受け入れた。

 

「………………それからセシリア」

 

突然紫苑はセシリアを呼び止めた。

 

「な、何ですの月影さん? 名指しで………」

 

すると紫苑はいたずらっ子のような笑みを浮かべ、

 

「この国が大したことが無いかどうかは自分の目で確かめてくれ」

 

「え……………………? あっ!」

 

一瞬紫苑の言葉の意味が分からなかったセシリアだったが、よく考えてみてその心当たりに思い当たった。

それは入学したばかりの時、クラス代表を決める際、セシリアが一夏や紫苑と口論(紫苑は無視していたが)になり、紫苑の故郷………即ちプラネテューヌを大したことの無い国だろうと馬鹿にしたことがあったのだ。

その時は紫苑はスルーしていたように思っていたのだが、しっかりとその事は覚えていたらしい。

 

「ほ、本人も言われるまで思い出さなかった事を掘り返さないでくださいまし!」

 

セシリアは慌ててそう言う。

紫苑はくくくと笑うと、生徒達とは別れ、教会の奥に向かって行く。

 

「紫苑?」

 

ラウラが声を掛けると、

 

「戻ってきたからには俺にも仕事があるからな。半年以上ほったらかしにしてたんだ。どれだけ溜まっているのやら………?」

 

紫苑はやれやれといった表情で首を振る。

 

「そう言う訳でイストワール。皆の案内は頼んだ」

 

「はい、承りました」

 

イストワールは了承し、紫苑は教会の奥へと消える。

 

「それではこれから皆様をホテルへご案内します。色々あってお疲れでしょうから今日はごゆっくりお休みください。街に出る際の注意事項や月影さんからのお金の配布は明日という事で」

 

「重ね重ね感謝します」

 

「いえいえ」

 

イストワールはアイエフ、コンパを伴って生徒達をホテルへ案内していった。

 

 

 

 

 

 








第41話の完成。
プラネテューヌに来た。
だがネプテューヌと再会するといつから勘違いしていた!?
とまあ、プラネテューヌには戻って来ましたがネプテューヌは出張?でいませんでした(爆)
まあストレートに再会させることも考えたのですが、自分なりにはこうした方が面白いんじゃないかという事で再会は見送り。
次回はラステイション編になります。
お楽しみに。




では恒例のNGシーン。





「「「ぬ~~~~ら~~~~~!」」」

彼らの目の前に3匹のスライヌが現れた。

「ねえねえ、つっきー。あれ何~?」

クラスメイトの1人である布仏 本音が紫苑に訊ねる。
本音は更識家の従者の家系であり、簪の侍女をしているため、簪と付き合う事が多くなった紫苑も、彼女と話す機会も必然的に多くなったのだ。

「あれはスライヌだな。この世界じゃ一番ポピュラーなモンスターだ。まあ、戦闘力は大したことは無いが、色々と迷惑をかけるモンスターだから討伐対象だ」

「「「ぬ~~~ら~~~~~~~!!」」」

おや? スライヌ達の様子が…………
突然振るえだすスライヌ。
そして、中央の一匹が回転したかと思うとその下からはナイスバディな女性の身体が。
ただし顔がスライヌのままで、身体すべてが水色なので違和感が半端ない。

「さあお嬢ちゃん達、この私とイイコトしましょ?」

その名はスライヌレディ。

「「「「「「「「「うぇえええええええええええええええっ!?」」」」」」」」」」

生徒達は思わず叫び声を上げた。






二番煎じですみません。
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