超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第44話 トンネルを抜けたら、そこは緑の国(リーンボックス)でした

 

 

 

 

 

3組のバスは、何故か丘の上に居た。

周りは自然に溢れ、草原が広がり、森や緑に覆われた山々が見える。

反対側には海が広がり、その海沿いには大きな都市が見えた。

 

「えっ? 何………? 何が起きたの………?」

 

翡翠がバスの窓からその光景を見ながら声を漏らす。

辺りは雄大な大自然。

海沿いの都市は近代的……………というより近未来的でありながら自然との調和は崩しておらず、違和感が無い。

 

「…………あの街………もしかして…………」

 

翡翠の隣にいたネプギアが驚愕の表情をしながら呟いた。

 

「ギアちゃん?」

 

気になった翡翠が尋ねるが、ネプギアは突如として席を立ち、

 

「扉を開けてください!」

 

運転手にそう呼びかける。

 

「えっ? いや、しかし……………」

 

運転手にとってはここは見知らぬ地。

安全かどうかも分からないのに乗客を降ろすことに抵抗があった。

しかし、

 

「早く!」

 

「あ、ああ」

 

ネプギアの勢いに押され、運転手は思わず扉を開く操作をしてしまった。

ネプギアはすぐにバスから駆け下りると草原を走って街が一望できる場所まで駆けていく。

その場所まで辿り着くと、ネプギアはその街を見回した。

 

「ギアちゃん、どうしたの!?」

 

後ろから翡翠が追いかけて来てネプギアに問いかける。

 

「やっぱり……………ここは……………」

 

「ギアちゃん?」

 

翡翠が再度問いかけると、

 

「あの街………リーンボックス…………」

 

「リーン………ボックス?」

 

ネプギアの言葉を反復する翡翠。

 

「うん…………ゲイムギョウ界にある、ベールさんが治めている国だよ」

 

ネプギアがそう言うと、

 

「ゲイムギョウ界って…………ええっ!? ここってゲイムギョウ界なの!?」

 

「うん、間違いないよ。リーンボックスには何度も来たことがあるし」

 

「そうなんだ…………」

 

そこまで言うと、翡翠は気付いたように辺りをキョロキョロと見回し、

 

「そう言えば、他のバスは見当たらないね」

 

その言葉にネプギアも辺りを見回す。

 

「本当だ…………ここにいるのは3組のバスだけみたい」

 

「…………お兄ちゃん達、大丈夫かな?」

 

「少なくともゲイムギョウ界にいるのならさほど心配しなくても良いと思うけど…………運よくそれぞれのバスにはゲイムギョウ界の関係者が乗ってるから」

 

ネプギアはそう言うと再びリーンボックスの街並みを見つめる。

 

「一先ず今はリーンボックスに向かおう! この辺りにもモンスターは居るから………!」

 

そう言って翡翠にバスに戻る様に促す。

バスに向かうネプギアの足取りが妙に軽い様に見えたのは、翡翠の気の所為では無いだろう。

 

 

 

 

ネプギアの案内でリーンボックスの入国の門へ辿り着くバス。

この間にもモンスターの襲撃が3度ほどあったが、ネプギアが変身するまでもなくビームソードによる一閃と、翡翠の義手に内蔵されたビームガンによって撃退されていた。

バスが門の前に辿り着くと、当然ながらリーンボックスの衛兵に呼び止められた。

 

「お待ちください! あなた方は何処の国の所属ですか?」

 

運転手は返答に困ってしまうが、

 

「待ってください!」

 

後ろの窓からネプギアが顔を出した。

その顔を見た衛兵に驚愕の表情が浮かぶ。

 

「あ、あなたはもしや………!? ネプギア様!?」

 

その衛兵が驚きながら叫ぶ。

 

「はい。プラネテューヌの女神候補生のネプギアです」

 

「い、いつお戻りに!?」

 

「つい先ほどです。それで、ベールさんは居ますか?」

 

その言葉に衛兵は慌てて佇まいを直すと敬礼し、

 

「ハッ! グリーンハート様は只今パープルハート様と共にモンスターの討伐に行っておられます!」

 

「ッ!? お姉ちゃんもいるんですか!?」

 

ネプギアはその言葉を聞くと思わず聞き返した。

 

「はい。今朝方出発されたので早ければもうすぐお戻りになられるかと…………」

 

「そ、そうですか……………!」

 

ネプギアは嬉しそうな表情を隠せずにそう言う。

 

「………して、ネプギア様。このバスに乗っておられる方々は…………?」

 

衛兵が話を戻してIS学園の生徒達の事を尋ねる。

 

「それは……………」

 

ネプギアは衛兵に説明を始めた。

先程まで紫苑が元居た世界にいた事。

そこで紫苑や他の女神候補生達と一緒にIS学園で世話になっていたこと。

そのIS学園の修学旅行へ行く際中、何故かこの付近に転移してしまった事を説明した。

 

「そうですか…………正直信じられない事ばかりですが、こうやってネプギア様が無事にお戻りになられたことは事実。一先ず教会に連絡を入れておきますので、皆様はとりあえずそちらへ…………」

 

「わかりました。ありがとうございます」

 

入局の許可を貰ってリーンボックスの街中を進むバス。

その窓から見える光景は、まるでSF映画の世界に入り込んだような光景で、生徒達も目を輝かせている。

すると、

 

「ギアちゃん」

 

翡翠がネプギアに話しかけた。

 

「何? ヒスイちゃん」

 

「ギアちゃんって、本当に高い役職の人だったんだね」

 

「え?」

 

「だって、さっきの兵士さんが敬語で話してたし、しかも『様』付けまでされてたから………」

 

「あはは………私はあまり気にしてないんだけど………確かに女神候補生だけど、この国の女神候補生じゃないし……………」

 

ネプギアは苦笑する。

 

「そう言えばさ、ゲイムギョウ界には4つの国があるんだよね?」

 

「うん、そうだよ。私のお姉ちゃんが治める『プラネテューヌ』。ユニちゃんのお姉ちゃんのノワールさんが治める『ラステイション』。ロムちゃんとラムちゃんのお姉ちゃんのブランさんが治める『ルウィー』。そしてここ、ベールさんが治める『リーンボックス』の4つの国だよ」

 

「それで気になったんだけどさ、この国には女神候補生は居ないの?」

 

「あ~、うん………この国には居ないんだ。お陰でベールさんは私達を見て妹が欲しいって嘆いてるけど…………」

 

翡翠の言葉にネプギアは再び苦笑する。

 

「そ、そうなんだ………」

 

翡翠の中では妹が欲しくて嘆く女神って何だろう?と困惑している。

そのまま暫くバスが進んでいくと、何処からか、わぁあああああああっ!!、と大歓声が聞こえてくる。生徒達が何だろうとその声が聞こえてきた方を向くと、そこには野球場やサッカー会場のように大きなイベント会場があり、そこから聞こえてきた。

 

「凄い歓声………何かのイベントかな?」

 

翡翠がその会場を見上げながら呟く。

 

『♪~~~♪~~~♪♪~♪♪~♪~♪~♪~♪♪♪~♪♪~~♪♪~~♪♪~~♪♪♪~~~~』

 

すると、その会場から音楽と一緒に歌が聞こえてきた。

その歌に生徒達は聞き惚れる。

 

「綺麗な歌声…………」

 

翡翠もその例に漏れずその歌に聞き入っている。

 

「この歌…………5pbさん………」

 

「ファイブ………ピービー……?」

 

ネプギアの呟きに翡翠が声を漏らす。

 

「うん。リーンボックスを代表する歌姫で、ゲイムギョウ界でも大人気のアイドル歌手だよ」

 

「へ~………! うん、この歌ならそれも頷けるかな…………」

 

やがて一曲が終わると、

 

『みんな~! ありがとう~! 今、他の国では女神候補生の子達が行方不明になったり大変な事になってるけど、今日は皆を呼び戻すぐらいの気持ちで歌うね!』

 

その言葉に歓声が大きくなる。

だが、

 

「あ、あはは…………」

 

ネプギアは苦笑しながら頬を掻いていた。

5pbの意気込みは嬉しく思うが、当の本人がここにいれば苦笑いしか出てこない。

 

「と、とりあえず先に進みましょう!」

 

ネプギアは先を促す。

だがその時、街中にサイレンが響き渡った。

 

「な、何このサイレン!?」

 

「これは………モンスターの襲撃です! しかも、サイレンが鳴るって事は相当な群れか、もしくは強力な個体がいるか…………!」

 

ネプギアは立ち上がると、

 

「皆さんはこのまま近くの衛兵の誘導に従って避難を!」

 

「ギ、ギアちゃんは!?」

 

「私は………この国を護ります!」

 

ネプギアはそう言うとバスから駆け下りると変身し、そのまま空へと飛び立った。

 

 

 

 

 

モンスターは鳥型などの翼を持つモンスターの群れで、海の方からリーンボックスの街へ向かってきていた。

100匹以上の群れであり、その中には複数の危険種や上位危険種の姿もある。

しかも間の悪い事に、5pbのライブ会場は海沿いにあった。

 

『皆さん! 落ち着いて! 落ち着いて避難を!』

 

水色のロングストレートの髪にヘッドフォンを付けた少女、5pbが空中に浮かぶ足場から観客たちに避難を呼びかけるが、幸か不幸か彼女は大人気の歌手であり、そのライブには数万人………いや、10万人を超えるファンが詰めかけている。

その十数万人が集まるライブ会場はモンスター達の格好の標的であり、同時に避難も困難だった。

 

「キェエエエエエエエエッ!!」

 

大型の鳥型モンスターが鳴き声を上げながらライブ会場に急降下してくる。

その標的は空中の足場にいる5pb。

 

『ッ…………!?』

 

避難を呼び掛けていた5pbはそのモンスターに気付くが、既にかなり近い距離まで接近していた。

そのまま彼女は鳥型モンスターの鋭い爪に引き裂かれるかと思われた瞬間…………

5pbの後方からピンク色のビームが放たれ、そのモンスターを一撃で消し飛ばした。

 

『………今のは?』

 

5pbが足場に座り込みながら後ろを振り返ると、

 

「やらせはしません!」

 

変身したネプギアが飛翔しながらビームを連射する。

そのビームは更に近付いてきたモンスター達を撃ち抜き、消滅させる。

 

『ネプギアさん!?』

 

5pbは思わず声を上げる。

その言葉に観客が騒めき、ネプギアを見上げた。

 

「おい! あれ!」

 

「あ、あれってプラネテューヌのネプギア様!?」

 

「本当に戻ってきたのか!?」

 

ネプギアは5pbを背に庇うように立ちはだかる。

 

「5pbさん、大丈夫ですか!?」

 

「う、うん! でもネプギアさん、どうして………」

 

「話は後です! 今は避難を!」

 

ネプギアはそう言ってモンスターの群れに向かって飛翔する。

 

「やぁあああああああっ!!」

 

ネプギアはビームを放ち、近付いてくるモンスターはビームソードで切り裂く。

だが、

 

「あっ!」

 

数が多いため、ネプギアの攻撃の合間をすり抜けて、2匹の小型モンスターがライブ会場へ向かって行く。

 

「行かせない!」

 

ネプギアが後方に円陣を発生させて通り過ぎていったモンスター達を追おうとした。

その時、

 

「ギアちゃん! こっちは任せて!」

 

「えっ?」

 

ネプギアが声を漏らした瞬間、ドン!ドン!と2発の銃声が鳴り響き、その2匹のモンスターは消滅する。

見れば、翡翠がISを展開し、スナイパーライフルを構えて5pbの前に浮遊していた。

 

「ヒスイちゃん!?」

 

「あ、あなたは…………?」

 

翡翠の登場に驚くネプギアと5pb。

 

「ギアちゃん! 私も戦う!」

 

「ヒスイちゃん!? でも………!」

 

「いくらギアちゃんでも、あれだけの数を相手にこの場の全員を1人で守り切るのは無理だよ。でも、ギアちゃんはこの国の人達を護りたいんだよね? だから私も戦うよ。この国の人達を護るために!」

 

翡翠はそう言いながらスナイパーライフルを持つ反対の手にアサルトライフルを展開し、近付いてきた小型モンスターを蜂の巣にして消滅させる。

 

「ヒスイちゃん…………! 分かったよ! でも、無理はしないでね!」

 

ネプギアはそう言ってモンスター達との戦闘を再開する。

 

「はぁあああああっ!! ミラージュダンス!!」

 

ネプギアは必殺技で危険種である大型の鳥モンスターを切り裂き、消滅させる。

 

「そこっ!!」

 

翡翠はスナイパーライフルを放ち、ネプギアを避けて近付いてくる小型の鳥モンスターを的確に撃ち抜き、近付けさせないようにする。

その間にも観客の避難は進んでいるが、十数万人規模の避難は正直難しい。

下手をすれば、避難時の混乱で死傷者が出る可能性もある。

被害を抑えるためには、少しでも早くモンスターを全滅させる。

それしか方法は無かった。

その時、

 

「ギィエエエッ!?」

 

ネプギアに切り裂かれた鳥型モンスターの1体が最後の足掻きとばかりに口から火球を放った。

そのモンスターは危険種であり、その火球には相当の威力が込められている。

その火球があろうことか眼下の観客たちへ向かっていたのだ。

 

「「「「「「「「「「きゃぁああああああああああっ!?」」」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「うわぁああああああああああっ!?」」」」」」」」」

 

悲鳴を上げる観客達。

 

「いけない!」

 

ネプギアは何とかカバーに行こうとするが、ネプギアの位置からでは間に合わない。

その時、

 

「やらせない!!」

 

翡翠が瞬時加速(イグニッション・ブースト)を使ってその間に割り込んだ。

火球が直撃し、爆発に呑まれる翡翠。

 

「ヒスイちゃん!?」

 

悲痛な声を上げるネプギア。

 

「くうっ…………!」

 

爆炎の中から翡翠は落下していき、落下先の地面にいた観客達が円を作る様に避けると翡翠はその真ん中辺りに墜落した。

 

「くっ………ううっ………!」

 

翡翠はダメージに身を捩りながらも身体を起こす。

そのまま機体の状態を確認する。

 

「く…………シールドエネルギーが半分以上持ってかれた…………!」

 

危険種の攻撃だけあってかなりの威力だ。

すると、観客の1人が翡翠に駆け寄る。

 

「だ、大丈夫………!? あなた、私達の盾に…………」

 

そう言いながら翡翠を心配そうに見つめる女性。

 

「だ、大丈夫です…………!」

 

そう言いながら翡翠が起き上がろうとすると、空から小型モンスターが観客達に襲い掛かろうとしていた。

 

「ッ………! させないっ!」

 

翡翠は右手のスナイパーライフルを地面に座り込んだまま構え、発砲する。

モンスターは観客に襲い掛かる寸前に消滅する。

 

「はあ………はあ…………!」

 

翡翠は息を吐きながら立ち上がり、

 

「護って見せる…………!」

 

再度気を引き締めて空を見上げる。

 

「あなた………どうしてそこまで………?」

 

女性が翡翠に向かって尋ねる。

なぜそこまで必死になって自分達を護ろうとしているのか。

 

「理由なんてありません…………ただ、私がここにいる人たちを護りたいと思った………それだけです!」

 

翡翠はそう言うと再び空へと飛翔する。

 

「たぁあああああああっ!!」

 

翡翠は右手にスナイパーライフルを、左手にアサルトライフルを持ち、モンスターを観客達に近付かせないように弾幕を張る。

だがその時、

 

「「ッ!?」」

 

ネプギアと翡翠は同時に気付く。

今戦っている群れとは別の群れがリーンボックスの街に向かっていることに。

2人は知らなかったが、当然ながらモンスターから街を護るためにこの国の軍が出撃し、防衛線を張っていた。

しかし、想像以上にモンスターの攻撃が激しく、防衛線を抜けた群れが居たのだ。

その群れは10匹ほどの群れだったが、その群れを率いていたのは上位危険種。

もし街中で暴れれば、衛兵だけではかなりの被害が出るだろう。

 

「私が行く!」

 

翡翠が即座にそう言った。

 

「ヒスイちゃん!?」

 

「この場からギアちゃんが離れるわけにはいかない! なら私が行かないと!」

 

「でも………!」

 

翡翠のISも先程の攻撃でかなりのダメージを負っている。

だがそれでも、

 

「それでも誰かが行かなきゃ!」

 

翡翠はそう言ってその群れへと飛んでいく。

 

「ヒスイちゃん………」

 

ネプギアは心配そうに見送るが、翡翠の言う通りこの場を護るしかなかった。

 

 

 

 

 

「追いついた!」

 

モンスターはかなり街の内部まで進んでいたが空中を移動していたために街に被害は無い。

 

「ここで食い止めないと!」

 

翡翠はスナイパーライフルを構えて発砲する。

2発、3発と弾丸を放っていき、その同数の小型モンスターが消滅していく。

すると、大型の鳥モンスターが翡翠の方を向き、

 

「クェエエエエエエエエエエッ!!」

 

咆哮を上げるように一鳴きすると、周りの小型モンスター達が向きを変えて一斉に翡翠に襲い掛かる。

 

「くっ……!」

 

翡翠は迎撃の為にスナイパーライフルを放つが、3回目の引き金を引いた時、カキンと軽い音が鳴った。

 

「ッ!? 弾切れっ………!?」

 

タイミングの悪さに翡翠は一瞬気がそっちに逸れてしまった。

小型モンスターはまだ5匹残っている。

それが一斉に襲い掛かってきた。

翡翠はスナイパーライフルを収納して左手のアサルトライフルを構えて引き金を引く。

だが、1匹はその弾丸で蜂の巣にされたが、残りの4匹が鋭い嘴で一直線に突いてくる。

 

「くうっ!?」

 

シールドバリアで翡翠は守られるが、その分のシールドエネルギーは確実に減っている。

 

「このっ………!」

 

翡翠は振り返って小型モンスターに銃口を向ける。

だがその瞬間、大きな影が翡翠を覆った。

 

「ッ…………!」

 

翡翠が咄嗟に首だけで振り返ると、上位危険種である大型の鳥モンスターが足の鋭い爪で襲い掛かってきた。

 

「きゃあっ!?」

 

翡翠は慌てて回避行動を取るが、その足の爪が肩部の装甲を捉え、容易く握りつぶされる。

翡翠自身にダメージは無いが、その上位危険種は絶対防御をも貫く力があるとの証明だった。

 

「…………だからって………負けないもん!」

 

翡翠は右手にグレネードランチャーを展開し、上位危険種に向けて放つ。

グレネードは上位危険種に直撃して爆発を起こす。

しかし、無傷という訳ではないが、ダメージは低い。

 

「ギェエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

それでも痛い事には違いないのか、その上位危険種は怒りの籠った鳴き声を上げる。

 

「ううっ………!?」

 

その威嚇に翡翠は一瞬尻込みしそうになった。

だが、

 

「うあああああああああああっ!!!」

 

翡翠は恐怖を振り払うように大声を出すと、キッと戦意を失っていない瞳で上位危険種を睨み付ける。

 

「負けない…………お前なんかに、負けるもんか!!」

 

翡翠はグレネードとアサルトライフルを構え、それを連射する。

翡翠は気付いて無かったが、この一連の出来事はライブ中継としてリーンボックス中に放送されていた。

何故なら、元々5pbのライブが国中に放送される手筈であり、そのままモンスター襲撃の生中継として放送されていたからだ。

そして、国中の人々がネプギア、そして翡翠の戦いを目撃していた。

ネプギアは友好国の女神候補生であり、国の危機に戦ってくれることはまだこの国の人々も分かっている。

だが、翡翠は女神とは関係の無い少女。

そんな少女がリーンボックスを護ろうとしている姿は、多くの人々の心にある願いを持たせることになった。

 

「てやぁあああああああっ!!」

 

翡翠の攻撃に残っていた小型モンスターは全滅するが、

 

「ギィエエエッ!!」

 

上位危険種は爆発の中を突っ切ってきて翡翠に接近する。

上位危険種は再びその爪で翡翠に襲い掛かるが、

 

「これを持って行って!」

 

翡翠は右手のグレネードランチャーを押し付けるようにその上位危険種の足に掴ませる。

翡翠は即座に離れながらアサルトライフルを構え、

 

「ここっ!!」

 

そのグレネードランチャーに向かって発砲した。

グレネードランチャーが弾丸に撃ち抜かれ、爆発を起こす。

 

「ギィヤァアアアアアアアアッ!?」

 

がっちりと掴んでいたのが災いしたのか、上位危険種のグレネードランチャーを掴んでいた方の足が吹き飛んでいた。

 

「フフン………どんなもんですか!」

 

得意げに笑みを浮かべる翡翠。

 

「ギィィィァアアアアアアアッ!!」

 

一方、今まで以上の怒りを翡翠に向ける上位危険種。

その目には怒りの炎が燃えているようだった。

翼を力強く羽ばたかせ、暴風を巻き起こす。

 

「くっ!」

 

翡翠は咄嗟に体勢を安定させようとしたが、

 

「グェエエエエエエエエエッ!!!」

 

その一瞬の隙を突いて上位危険種が一気に接近していた。

 

「なっ!?」

 

上位危険種はまるで翡翠を空中で轢くように翡翠を撥ね飛ばす。

 

「きゃぁあああああっ!?」

 

翡翠は大きく吹き飛ばされ、上位危険種は戦闘機がバレルロールする様に急上昇して翡翠の上空に来ると、そのまま垂直に落下する様に翡翠に向かって突進した。

 

「あああああああっ!?」

 

その一撃は翡翠を木の葉のように空中に舞い踊らせる。

翡翠は何とか姿勢制御をして空中に静止する。

だがISの装甲は罅だらけで破片を撒き散らせ、武器も手放してしまった。

再び上位危険種の大型鳥モンスターは旋回してくる。

 

「キェエエエエエエエエッ!!」

 

大きな鳴き声を上げながら、その嘴を大きく広げた。

翡翠の身体を喰い千切るつもりなのだろう。

実際、ISの絶対防御を貫く力があるため、まともに受けてしまえばその通りになってしまう。

 

「………………………」

 

翡翠は意識が朦朧としているのか空中に静止したまま動かない。

上位危険種は好機と見たのか迷わずに嘴を広げたまま翡翠に襲い掛かった。

勢い良く嘴が閉じられ、

 

「ギッ…………?」

 

そのモンスターは目を見開いた。

嘴には何も挟まってはいない。

しかし、モンスターの目の前。

いや、モンスターの頭部に翡翠が右手の義手を添えていた。

翡翠は嘴が閉じられる瞬間、残されたエネルギーで瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動。

嘴を躱すと同時にモンスターの頭部に接近したのだ。

 

「これが私の最後の攻撃…………!」

 

翡翠は右腕の義手のパネルにある番号を入力する。

 

「キィェエエエエエエエエエエエッ!?」

 

上位危険種も本能的に危険を察知したのか翡翠を振り払おうと頭を振る。

だが、翡翠の右手はしっかりとその頭の毛を掴んでおり、決して離さなかった。

 

「リミッター解除! スタン!!」

 

「ギャアアアアアアアアッ!!??」

 

その瞬間、翡翠の右腕から強力な雷撃が放たれ、上位危険種を痙攣させた。

上位危険種は白目を剝き、力無く墜落していく。

 

「はぁ………はぁ………うっ……!」

 

翡翠は咄嗟にモンスターから手を離して距離を取っていたが、すぐに限界を迎えて気を失い、同じように真っ逆さまに堕ちていく。

翡翠はそのまま、真下にあった貴族の屋敷の様な大きな建物の屋根を突き破ってその中に墜落した。

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、接触危険種の討伐を終えたパープルハートとグリーンハートがリーンボックスへの帰路に着いていた。

 

「今日は助かりましたわ、ネプテューヌ。やはりわたくし1人だけでは、もう少し手古摺っていた所ですわ」

 

「役に立てたのなら良かったわ。今、ノワールやブランに頼るわけにはいかないしね………」

 

「ユニちゃんやロムちゃん、ラムちゃんの事ですわね?」

 

「ええ。私はシオンと連絡が取れて、シオンもネプギアも無事だって事が分かってるから大丈夫だけど、あの2人はかなり無理してるから……………ッ!?」

 

その瞬間パープルハートは何かに気付いたのように空中で立ち止まった。

 

「どうしましたの? ネプテューヌ」

 

グリーンハートも立ち止まってパープルハートに問いかける。

すると、パープルハートは胸に手を当て、

 

「シオンが……………」

 

「えっ?」

 

「シオンが居る…………!」

 

パープルハートは今まで希薄だった紫苑との繋がりが強く結びついた事を感じ取っていた。

この時、プラネテューヌでは紫苑がシェアリンクを使った瞬間であった。

 

「シオンが…………シオンが戻ってきた………!」

 

パープルハートは涙を浮かべながらそう呟いた。

 

「シオンさんが………?」

 

グリーンハートが尋ねようとした時、持っていた通信機に着信の合図が入る。

 

「はい。こちらベールですわ」

 

グリーンハートが通信に応える。

すると、

 

「なんですって!?」

 

驚いたように声を上げた。

 

「ええ、それで……………えっ!? ネプギアちゃんが!?」

 

「ネプギア?」

 

グリーンハートの言葉にパープルハートも反応する。

 

「了解しましたわ。すぐに向かいます!」

 

そう言って通信を切る。

 

「何があったの!? 今、ネプギアって………」

 

「時間がありません。向かいながら説明しますわ!」

 

グリーンハートはそう言うと勢いよく飛び立つ。

 

「ちょ、待ちなさい!」

 

パープルハートも慌てて後を追う。

 

「何があったのベール!?」

 

追いついたパープルハートが問いかける。

 

「現在、リーンボックスに大規模なモンスターの群れが押し寄せているそうですの」

 

「なんですって!?」

 

「いくつかの群れが防衛線を突破し、街中への侵入を許してしまったそうです。ですが、そこで突然ネプギアちゃんが現れて街を防衛してくれているそうです」

 

「ネプギアが!?」

 

「ええ………ネプギアちゃんが戻って来てくれたことは喜ばしい事ですが、モンスターの数が多いそうです。一刻も早く向かいますわ!」

 

「了解よ!」

 

「全く、舐めた真似をしてくれますわね。女神の居ぬ間のなんとやら………ですわね!」

 

2人は飛行スピードを上げ、リーンボックスへと急いだ。

 

 

 

 

 

墜落した翡翠は、不思議な部屋の中に倒れていた。

ISは強制解除され、頭からも血を流していて、気を失っているのか動く気配が無い。

真っ黒な空間に幾何学模様が浮かび上がり、その中央にエメラルドグリーンに輝く結晶体があった。

翡翠が墜落した場所は、シェアクリスタルの間。

翡翠が墜落した建物は、この国の教会だったのだ。

シェアクリスタルは国の人々の信仰心や願いをシェアエナジーに変え、女神の力に変える不思議な結晶だ。

そして、現在そのシェアクリスタルに2つの願いが集まっていた。

1つはネプギアの活躍を見た人々が思った、この国にも女神候補生を………新たな女神の誕生を祈る願い。

しかし、女神の誕生には莫大なシェアエナジーの量が必要となる為、悲しくもその願いが叶えられるほどのシェアは無かった。

だが、ここで1つの例外が起こった。

それは、シェアクリスタルに集まったもう一つの願い。

ネプギアとは別に、必死にこの国を護ろうとする翡翠の姿。その姿を見た人々が祈ったもう一つの願い。

それは、

 

『あの少女が、この国の女神候補生だったなら…………』

 

その願いが1つの奇跡を産んだ。

女神を0から生み出すほどのシェアはこの国には無い。

しかし、女神の誕生を願う祈りと、翡翠が女神であったならと願う祈り。

その2つの願いが重なって相乗効果を生み、新たな女神の誕生に必要なシェアの量に限りなく近づいたのだ。

しかし、それで女神が生まれるわけでは無い。

今回に限って、女神の誕生には条件があった。

それは……………

翡翠の身体がシェアの光で包まれる。

 

「う……………」

 

その光に導かれるように翡翠は目を覚ました。

 

「なんだろう…………この光………………とてもあったかい…………!」

 

そう口にする翡翠。

そして、その光の源を無意識に感じ取った。

 

「これは…………この国の人達の願いや祈り…………? こんなにあったかいんだ…………」

 

翡翠は目を瞑ってその温もりに浸る。

 

「この国の人達は…………こんなにあったかい心を持ってるんだ……………私は…………そんなあったかい心を持ってるこの国の人達を………………護りたい!」

 

翡翠の心に芽生える確かな想い。

翡翠は目を開けてシェアクリスタルを見上げる。

 

「私に護らせて…………この国の人達を…………このあったかい心を…………皆の願いを!」

 

その思いこそが、今回の女神の誕生に必要な最後のトリガー。

人々の願いと翡翠自身の確固たる決意。

それらが重なった時、新たな女神が誕生する。

シェアの光に包まれた翡翠が立ち上がった。

そして顔を上げ、目を見開いたその瞳に女神の証が浮かび上がった。

翡翠の身体が光を放つ。

黒く、長いストレートの髪が透き通る翠へと変わり、首の後ろで纏められる。

瞳は紫へと変化し、白いレオタードの様なボディースーツを身に纏う。

右腕の義手もエメラルドグリーンへと変化し、付属品であったその義手はこの瞬間を持って完全に翡翠の一部へと存在を変えた。

背中には細長い菱形の妖精のような2対の光の羽。

リーンボックスの女神候補生『グリーンシスター』ヒスイが誕生した。

 

 

 

 

教会の入り口付近では衛兵が先程の大型の鳥モンスターである上位危険種に発砲していた。

先程は気絶しただけで、完全には倒せていなかったのだ。

 

「撃て撃てー! これ以上教会に近付けさせるなー!」

 

衛兵の隊長が叫ぶ。

 

「くそう! あいつ、まだ動きやがる!」

 

「どんだけタフな奴なんだ!?」

 

部下の衛兵達も愚痴を零しながら攻撃を続ける。

その時、そのモンスターが口を開き、火球を放った。

 

「うわあっ!?」

 

衛兵は咄嗟に避けるが爆風に煽られ、地面に倒れる。

 

「相棒! 逃げろ!」

 

もう1人の衛兵が叫ぶ。

 

「え?」

 

その衛兵が見上げると、モンスターが頭を仰け反らせている。

そして次の瞬間、鋭い嘴を槍のように振り下ろしてきた。

 

「ひっ!?」

 

衛兵は思わず悲鳴を漏らす。

 

「あ、相棒~!!」

 

最早間に合わない。

誰もがそう思った。

しかし、

ドシィッ!と重く受け止める音が聞こえたかと思うと、その嘴は止められていた。

 

「え……………?」

 

襲われていた衛兵が恐る恐る顔を上げると、その目に飛び込んできたのは風に靡く翠の髪。

 

「グ、グリーンハート様!?」

 

その衛兵には、一瞬その人物がこの国の女神であるグリーンハートに見えた。

だが、モンスターの嘴を止めていたのは槍ではなくエメラルドグリーンに輝く鋼の腕。

 

「この国の人達は…………私が護る!!」

 

その言葉と共にモンスターが押し返される。

目の前にいたのはグリーンハートよりも一回り小さな少女。

しかし、その姿に輝く羽。

何よりもその瞳に浮かぶ女神の証。

その全てが目の前の少女が女神であることを物語っていた。

 

「あ、あなたは…………?」

 

思わず問いかける衛兵。

すると、

 

「女神候補生! 『グリーンシスター』ヒスイ! ここに推参です!!」

 

「女神………候補生………?」

 

「はい! 先ほど女神になったばかりの新米女神です!」

 

ヒスイは元気よくそういう。

 

「こ、この国にもとうとう女神候補生が…………」

 

衛兵達が驚く中、モンスターが起き上がる。

 

「こいつは私に任せてください。あなた達は怪我人の救助を!」

 

「わ、分かりました!」

 

そう言いながら退散する衛兵。

ヒスイはモンスターを見上げる。

 

「グゥゥゥゥ…………!」

 

モンスターも敵意の籠った瞳でヒスイを見下ろす。

すると、ヒスイが右腕を掲げた。

 

「…………悪いけど、まだこの力に慣れてないんだ…………だから、手加減できないよ!?」

 

ヒスイがそう言うと、その右腕が巨大化していく。

 

「ギガンティック……………!」

 

ヒスイが自身の身の丈以上に巨大化した右腕を振りかぶり、モンスターに向かって突進すると同時に繰り出した。

 

「………フィスト!!!」

 

一瞬でモンスターの懐に飛び込んだスピードと拳の力が合わさり、凄まじい威力を発揮した。

 

「グェエエエエエッ!?」

 

ヒスイの動きを追えなかったモンスターは何が起きたかも分からずに胴体に巨大な拳をめり込ませ、貫く衝撃がその巨体を吹き飛ばした。

そのまま光となって消滅する。

その光景に、おおっ!と騒めく衛兵達。

だが、翡翠は未だ戦っているであろうネプギアの居るライブ会場の方を見つめ、

 

「今行くよ、ギアちゃん!」

 

後方に円陣を発生させ、それを足場に一気に飛翔した。

 

 

 

 

 

「くっ! やぁああああああっ!!」

 

ネプギアはモンスター達の猛攻を前に奮戦していた。

だが、多勢に無勢。

遂にモンスターの通過を許してしまい、ライブ会場にモンスターが降り立つ。

しかもそのモンスターは危険種であり、一般人が襲われれば一溜りもない。

ネプギアは何とかそのモンスターの方へ行こうとしたが、他のモンスターに邪魔され接近できない。

 

「邪魔しないで!」

 

ネプギアは小型モンスターを切り払うが、その危険種のモンスターは攻撃態勢に入っていた。

 

「ダメぇええええええっ!!」

 

ネプギアは必死に手を伸ばして叫ぶ。

しかし、そんな事でモンスターが止まるはずもなく、

 

「どっせぇぇぇぇぇぇいっ!!」

 

上空から勢いよく急降下してきた翠の閃光に思い切り叩きのめされ地面が陥没する程に叩きつけられた。

そのまま光となって消滅する危険種モンスター。

 

「えっ………?」

 

ネプギアは思わず声を漏らす。

 

「遅れてごめん、ギアちゃん」

 

上空から落下してきた人物は翠の髪を靡かせながらネプギアを見上げ、そう言う。

 

「え? だ、誰?」

 

思わず問いかけるネプギア。

 

「私だよ私。翡翠だよ」

 

「ええっ!? ヒスイちゃん!?」

 

その言葉に思わず驚愕の声を上げるネプギア。

 

「でも………その姿は一体…………?」

 

「詳しい話は後にするけど、私も女神になったって事だよ!」

 

ネプギアの問いかけにそう返すヒスイ。

 

「今は皆を護る事が先だよ! 来るよ、ギアちゃん!」

 

「う、うん!」

 

少し釈然としないがヒスイの言う通りなのでモンスターの迎撃に集中するネプギア。

 

「「はぁあああああああああっ!!」」

 

2人同時に飛び出すヒスイとネプギア。

ネプギアが巧みな剣技とビームによる射撃を使い分けるのに対し、ヒスイは猛スピードでモンスターに接近し、重い一撃を喰らわせて即座に次のモンスターへと飛ぶヒット&アウェイを繰り返してモンスターを倒していく。

 

「ヒスイちゃん………凄い………!」

 

その光景にネプギアは思わず声を漏らす。

だが、その瞬間前方から上位危険種である大型モンスターが襲い掛かってきた。

ネプギアは咄嗟に構えたが、同時に後ろからも危険種が迫っていた。

 

「後ろからも………!?」

 

前後同時の挟み撃ち。

ネプギアは仕方なく多少のダメージ覚悟で防御態勢を取る。

しかしその瞬間、

 

「クロスコンビネーション!!」

 

「レイニーラトナピュラ!!」

 

パープルハートとグリーンハートが必殺技でネプギアに襲い掛かってきたモンスターを消滅させた。

ネプギアは2人に気付くと、

 

「お姉ちゃん! ベールさん!」

 

嬉しそうに声を上げた。

 

「ネプギア!!」

 

パープルハートは振り返りながらネプギアの名を呼ぶ。

 

「お姉ちゃん!!」

 

戦闘中にも関わらず、思わずパープルハートの胸に飛び込むネプギア。

 

「ネプギア………無事で本当に良かった………」

 

パープルハートはネプギアを抱きしめながら涙を滲ませる。

 

「お姉ちゃん…………!」

 

ネプギアも涙を流しながらその胸の温もりを感じていた。

しかし今は戦闘中。

 

「お2人とも、お気持ちは分からなくもありませんが、感動の再会は後にしてくださいまし。来ますわよ!」

 

大分減ったとはいえ、まだモンスターは残っている。

グリーンハートが槍を構え、

 

「それにしてもネプギアちゃん、これだけの数を相手によくぞ1人で……………」

 

感心する様にそう呟いた。

すると、

 

「あ、ううん。1人じゃないよ」

 

「え? それってどういう…………?」

 

パープルハートが尋ねようとした時、危険種が迫ってくる。

3人が身構えた時、

 

「せぇえええええええええいっ!!」

 

真上から巨大な鋼の拳が危険種に叩き込まれ、吹き飛ばされながら消滅する。

 

「「え?」」

 

パープルハートとグリーンハートは同時に声を漏らす。

その視線の先にはヒスイの姿。

 

「あ、あなたは…………?」

 

グリーンハートが問いかけると、ヒスイはパープルハートとグリーンハートに気付き、

 

「あっ! この国の女神様とネプお姉ちゃんですね? 初めまして! 私、月影 紫苑の妹の月影 翡翠です! この度、この国の女神候補生、『グリーンシスター』ヒスイとなりました! 以後、よろしくお願いしまーす!」

 

ヒスイは可愛らしく敬礼しながらそう言う。

すると、グリーンハートが突然俯き、プルプルと震え出す。

 

「…………? あの………」

 

グリーンハートの様子に怪訝に思ったヒスイが顔を覗き込もうとした瞬間、

 

「もがっ……………!?」

 

その豊満な胸に押し付けられるようにヒスイはグリーンハートに抱きしめられた。

 

「遂に………! 遂にわたくしにも妹が生まれましたのね!!!」

 

喜びを隠せずに思いっきりヒスイを抱きしめるグリーンハート。

 

「モ………モガモガ……………(お………大きい………)」

 

顔を豊満な胸に押し付けられたヒスイはそんな事を思っていた。

すると、

 

「ちょっと! 何言ってるのベール!?」

 

パープルハートがそう言うと同時にグリーンハートの腕からヒスイを奪い取ると、同じようにその胸に抱きしめた。

 

「今の話聞いてたの? この子はシオンの妹………つまり、私の『義妹』よ!!」

 

「むぐっ…………!?(こ、こっちも中々…………)」

 

パープルハートの胸の感触にもそんな感想を漏らすヒスイ。

 

「いいえ! 先ほどこの子は名乗りましたわ! この国の女神候補生『グリーンシスター』だと! つまり、この子は既にこの国に帰属していると宣言しました! つまりわたくしの妹ですわ!」

 

「何言ってるの!? いくら国に帰属しようと血の繋がりは断ち切れないわ! この子はシオンの妹に変わりはない以上、私の義妹よ!」

 

「わたくしのですわ!」

 

「いいえ! 私よ!」

 

至近距離で睨み合う2人。

 

「あ、あの~、お姉ちゃん? ベールさん?」

 

途中から蚊帳の外だったネプギアが遠慮がちに声を掛ける。

 

「何? ネプギア?」

 

「何ですの? ネプギアちゃん?」

 

2人がネプギアの方を向くと、

 

「ヒスイちゃんが…………」

 

ネプギアが胸元を指差すように指示す。

 

「「え…………?」」

 

2人が同時に胸元を見ると、

 

「むぐ~………! むぐ~………!」

 

2人の胸に板挟みにされ、窒息寸前のヒスイがジタバタと暴れていた。

 

「「あら、失礼」」

 

2人は同時に離れ、

 

「ぶはっ!」

 

ヒスイはようやく呼吸を確保する。

 

「ですが、ヒスイちゃんは渡しませんよ!」

 

「まだ言うのベール!」

 

再び睨み合う2人。

だが、

 

「ストップです!」

 

ヒスイが両者を止める。

 

「私にとってはどっちもお姉ちゃんなんですから喧嘩しないでください!」

 

そう言うヒスイ。

 

「どっちも姉………ですか」

 

「………まあ、それが妥当な所かしら?」

 

渋々といった様子だが、両者は納得する。

とりあえず2人の争いが収まったことにヒスイはホッとし、

 

「それではこれからよろしくお願いしますね! ネプお姉ちゃん! ベール姉さん!」

 

「フフッ! よろしくねヒスイちゃん!」

 

その言葉にパープルハートはすぐに返事を返したが、グリーンハートは再びプルプルと震えており、

 

「ね・え・さ・ん! これもまたお姉ちゃんとは違った甘美な響きですわ!」

 

どうやらグリーンハートの喜びが限界を突破したらしい。

クネクネと見悶えている。

 

「あの、3人とも? まだモンスターが残ってるから早くしてくれると嬉しいかな………?」

 

そう言いながらネプギアがビームガンでモンスターを撃ち抜いている。

因みにネプギアは3人が漫才している間、ずっと1人でモンスターから観客達を護っていた。

パープルハートとグリーンハートは誤魔化すように咳ばらいをすると、

 

「皆様、一気に決めますわよ!」

 

グリーンハートは気を引き締めて皆に呼びかけながら自分の横に魔法陣を発生させる。

 

「いつでもいいわよ!」

 

パープルハートは手を空へと掲げ、上空に巨大な剣を生み出す。

 

「狙いは外しません!」

 

ネプギアはビームガンにエネルギーをチャージし、

 

「私だって!」

 

ヒスイが右手を握り込むと、その右手に風が集まっていく。

そして次の瞬間、

 

「シレットスピアー!!」

 

グリーンハートの生み出した魔法陣から巨大な槍が飛び出し、

 

「32式エクスブレイド!!」

 

パープルハートの生み出した巨大な剣が放たれた。

 

「マルチプルビームランチャー!!」

 

ネプギアが強力な砲撃を放ち、

 

「トルネードスマッシュ!!」

 

ヒスイの繰り出した拳から竜巻が放たれた。

4人の女神の攻撃は雑魚モンスターに耐えきれるはずもなく、一瞬にしてモンスターを全滅させた。

その光景に、歓声を上げる観客達。

それは女神達を称えると同時に、ヒスイをこの国へ受け入れる歓迎の声であった。

ヒスイはそんな人たちを見下ろして改めて思う。

 

「………私はヒスイ………『グリーンシスター』ヒスイ………この国の女神候補生です!」

 

まるで宣言する様に名乗りを上げた。

 

 

 

 

 







第44話です。
長くなることは覚悟してたけど思った以上に長くなった!
さて、まさかまさかの翡翠ちゃん。
リーンボックスの女神候補生へ転職?です。
翡翠の名前を初期に考えた紅という名前から翡翠に変えたのはこのネタを思いついたからです。
まあ、気付いた人も多いんじゃないんでしょうか?
因みに技の名前は全て思いつき。
あとはネプテューヌとネプギアの再会ですかね。
オマケに妹争奪戦勃発。
まあ、両者引き分けって感じで。
さて、次回は…………どうしましょう(爆)
その前にそろそろダンまちの方を更新せねば………





本日のNGシーン





「はい。こちらベールですわ」

グリーンハートが通信に応える。
すると、

「なんですって!?」

驚いたように声を上げた。

「ネプテューヌシリーズの最新作、『勇者ネプテューヌ』が12月に発売延期ですって!?」

「ベール………それもう2ヶ月前の情報よ…………」

パープルハートが思わず突っ込んだ。

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