超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

58 / 110
第50話 一夏の選ぶ(ロード)

 

 

 

マジェコンヌ達を退けたその夜。

一夏は宿泊施設をコッソリと抜け出し、夜の街を歩いていた。

 

「………………くそっ!」

 

一夏は苛立ちをぶつける様に足元の小石を蹴っ飛ばした。

時折空間モニターに映し出されるニュースや情報番組などには、紫苑の帰還を喜ぶ人々や、ネプテューヌと紫苑がどれだけ仲が良いかなどが報道されている。

それを見て、更に苛立ちを募らせる一夏。

 

「何でだ………!? 何で紫苑の奴ばっかりがチヤホヤされるんだ…………!? 俺だって頑張ってるのに………!」

 

思わず悪態を吐く一夏。

 

「俺にも力があれば……………! 俺にも紫苑みたいな力があればネプテューヌさんを守れる………! そうだ………! 紫苑なんかよりも、ずっと上手く守れる………! 俺の方が正しいって証明できるのに…………!」

 

一夏は右手を握りしめながら視線をその手に向ける。

それと同時に、右腕の手首に付けられている白式の待機状態が目に入った。

 

「…………何がISだ………!? 何が地球最強の兵器だよ………!? 何の役にも立ってねえじゃねえか………!!」

 

遂には苛立ちを白式にぶつけ始める一夏。

すると、何を思ったか白式の待機状態をおもむろに外すと、

 

「このっ…………! 役立たず!!」

 

地面に叩きつけるように投げ捨てた。

甲高い音を鳴り響かせながら数回バウンドして一夏の数m先に転がる白式。

その時だった。

 

「力が欲しいか?」

 

突如として声が聞こえた。

 

「ッ…………!?」

 

思わず身構える一夏。

 

「力が欲しいか?」

 

同じ問いを繰り返す声。

 

「だ、誰だ!?」

 

一夏が叫ぶと、

 

「フフフフ…………」

 

薄笑いと共に、路地裏の影から一つの影が歩み寄ってきた。

 

「お前は………!」

 

路地裏から現れた影は、マジェコンヌだった。

 

「小僧。力が欲しいか?」

 

再び問いかけるマジェコンヌ。

 

「な、何を…………!?」

 

一夏は慌てて否定しようとしたが、

 

「強がるな。力が欲しいのだろう? 他者を圧倒する力が?」

 

「ち、違…………」

 

「そう、女神を…………いや、あの守護者を超える力が………!」

 

「ッ! 紫苑を…………超える力…………」

 

否定しようとする一夏だが、紫苑の事を仄めかされた事でその気持ちに揺らぎが生じる。

そして、その揺らぎをあざとく見逃さなかったマジェコンヌは目を光らせる。

 

「フッ…………お前の気持ちは良く分かる。何故あの守護者の小僧ばかりが評価されるのか?」

 

「……………………」

 

「何故必死になっている自分が認められないのか?」

 

「………………そうだ」

 

「何故あの女神の隣にいるのが自分ではないのか?」

 

「………………そうだ………!」

 

「何故『正しい』筈の自分がこんなにも責められなければいけないのか?」

 

「………………その通りだ!」

 

マジェコンヌの言葉を遂に肯定してしまう一夏。

 

「ああ! その通りだよ! 何で努力してる俺は認められないのに、何もしてない紫苑ばかり認められるんだ!? あいつなんて、才能に頼り切ってるだけじゃないか!? それなのにシャルも箒も、挙句に千冬姉さえも紫苑の事ばかり認めて………! 俺にも紫苑の様な才能が………力さえあればもっと上手く出来るのに!」

 

一夏は思いの内をさらけ出す。

マジェコンヌはその言葉を内心嘲笑いながら聞いていた。

 

(つくづく御目出度い思考を持つ小僧だ。守護者の小僧がどれだけの修羅場をくぐって来たのかも知らずに…………物事の表面だけしか見ていない愚か者だとは思っていたが、ここまでとはな)

 

マジェコンヌは紫苑達とは敵対してはいるが、その実力は敵なりに認めているので、その事を全く分かっていない一夏の事を滑稽な奴だとしか思っていなかった。

 

(まあ、今は好都合か…………)

 

マジェコンヌはそんな内心をおくびにも出さずに口を開く。

 

「ならば私の元へ来い…………そうすればお前に『力』をやろう」

 

そう言いながら一夏に手を差し伸べるマジェコンヌ。

一夏は一瞬手を伸ばしそうになったが、

 

「…………ッ! ふざけるな! 悪党に縋るほど落ちぶれちゃいない!」

 

その誘惑を何とか振り切ってそう叫ぶ。

だが、マジェコンヌは薄い笑みを崩さずに、

 

「いいのか? このまま認められないままで…………?」

 

「ッ!?」

 

マジェコンヌの言葉で一夏の心は容易く揺らぐ。

 

「認められない人生を歩むなど、貴様はそれでいいのか?」

 

「………………ううっ!」

 

「『力』があればそんな心配はない。『力』さえあれば認められる。目の前の理不尽に屈することもなければ…………」

 

「…………………ッ!」

 

「あの守護者の小僧にでかい顔をされることもない……………」

 

「……………………!」

 

「何より、あの女神を手に入れることも夢では無い」

 

「ッ!」

 

マジェコンヌの言葉の1つ1つが一夏の心に染みを広げるように侵食していく。

 

「ネプテューヌさんを…………俺のモノに…………?」

 

一夏がポツリと零したその呟きを聞いたマジェコンヌはニヤリと笑う。

 

「そうだ。欲しくは無いか? あの女神を? あの体を蹂躙し、自分の色に染めたくはないか?」

 

「ネプテューヌさんの体を……………!?」

 

思わずその光景を想像し、息が荒くなる一夏。

 

「はぁ………! はぁ………!」

 

マジェコンヌは最後の仕上げとばかりに再び手を差し伸べ、言った。

 

「『力』があればそれも叶う。もう一度言う。私と共に来るのなら『力』をやろう。あの守護者にも勝る『力』をな」

 

「う………ああっ…………!」

 

一夏は最後の一線で揺れ動いていた。

一夏にも最後の良心があるのだ。

すると、マジェコンヌはつまらなそうな顔をして、

 

「フン、私の見込み違いだったか……………貴様がそれを望むのならそれもいい。貴様はこのまま『負け犬』の人生を歩むといい」

 

マジェコンヌはそう言いながら踵を返した。

 

「『負け犬』………………ッ!?」

 

その言葉が、一夏の最後の良心を打ち砕いた。

 

「ま………………待ってくれ!」

 

踵を返したマジェコンヌの背に向かって一夏は呼び止めた。

マジェコンヌは計画通りと言わんばかりに口元を吊り上げ、振り返る。

 

「どうした?」

 

「………………本当に…………本当に『力』をくれるんだな?」

 

「ああ、もちろんだとも! 守護者すら上回る『力』をお前にやろう!」

 

一夏の問いかけに、マジェコンヌは間髪入れずハッキリと答える。

 

「…………………わかった。俺に『力』をくれ!」

 

一夏は悪魔(マジェコンヌ)の提案を受け入れた。

マジェコンヌは再び一夏に右手を差し出し、一夏もまたその手を取るために右手を伸ばそうとした。

だが、その右手が突然誰かに掴まれたように動かなくなってしまう。

それと同時に、

 

「駄目………!」

 

一夏に耳に聞き覚えのある声が響いた。

気付けば一夏はいつだったかと同じように一面が水に覆われた不思議な場所にいた。

そして、マジェコンヌに差し出そうとした右手には白い髪の少女が縋り付くようにその手を掴んで止めていた。

 

「その手を取っちゃ駄目………! 今ならまだ戻れる! 戻ってきて!」

 

その少女は懇願する様に必死に一夏に呼びかける。

 

「…………………………」

 

一夏は少しその少女を見下ろした後、

 

「………………あっ!?」

 

乱暴にその手を振り払った。

無言でその少女に背を向ける一夏。

そのまま歩み出そうとする一夏に、

 

「駄目ぇっ!」

 

少女は駆け出し、再びその手に縋り付こうとしたが、

 

「煩いんだよ!」

 

「きゃあっ!?」

 

パァンと乾いた音と共に、少女が後ろ向きに倒れる。

一夏の振り払った手の甲が少女の頬に当たったのだ。

一夏は倒れる少女を見下して、

 

「俺には『力』が必要だ………! 必要なんだよ………!!」

 

そう言い放ち、今度こそ完全にその背を向けた。

 

「行っちゃ駄目ぇっ!!」

 

少女は必死に呼びかけるが、一夏は僅かな躊躇すら見せずに歩き始め、その場から消えた。

 

「ううっ…………!」

 

その場には、一夏を止められなかった事を悔やみ、項垂れながら涙を流す少女だけが残された。

 

 

 

意識が現実に戻ってきた一夏は、先ほどまでの事が無かったかのようにマジェコンヌの手を取った。

 

「よくぞ選んでくれた」

 

マジェコンヌは怪しい笑みを浮かべながら歓迎の言葉を言う。

 

「……………約束は守れよ」

 

「ああ、もちろんわかっている。『力』をお前に与えよう」

 

マジェコンヌの言葉に一夏は頷く。

 

(………………『力』が手に入ったらその『力』で紫苑を倒す。そして、皆に俺の方が上だと………『正しい』と分からせることができたら、その時にその『力』でこの(マジェコンヌ)を倒せばいい)

 

一夏は内心でそう考えていた。

だが、

 

(…………などと考えているのだろうが…………フッ、浅はかな奴め。その程度の考え見抜けないとでも思っているのか!)

 

その程度のたくらみはマジェコンヌにはお見通しだった。

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

IS学園の生徒達が宿泊していたホテルでは朝から騒然となっていた。

一夏が行方不明なのだ。

朝食の時間になっても一夏は現れず、部屋に様子を見に行ったセシリアが一夏の姿が無いことに気付き、今回の事態が発覚した。

千冬は即座に紫苑に連絡を取って捜査を依頼。

また、白式の反応を捉えたのでその場に赴いたが、そこには待機状態の白式が転がっているだけだった。

紫苑が周囲の監視カメラの映像を解析した結果、一夏が自分から白式の待機状態を外し、地面に投げつけるところまでは映っていたが、その後は何かジャミングが掛けられていたらしく、何も映っていなかった。

 

「監視カメラの映像を見るに、一夏は自分から白式を外した後、何者かと出会い、抵抗する間もなく連れ去られた……………もしくは………いや、まさかな………」

 

紫苑は監視カメラの映像を見ながらそう判断する。

 

「一夏は無事なのか!?」

 

千冬が焦った表情で問いかけると、

 

「争った形跡や血痕も無いことから、少なくともあの場で致命傷を負った可能性は少ないと思います。多分、目的が合って連れ去られたんだと思います。犯人としては、十中八九マジェコンヌだとは思いますが………」

 

「そうか…………」

 

一夏が命を失った可能性は低いと聞いて、とりあえずは安堵の息を漏らす千冬。

 

「あと、犯人がマジェコンヌと仮定して、一夏を攫った目的が分からんのだが…………」

 

紫苑がそう言うと、

 

「また人質に使うとかそういう事の為に攫ったんじゃないの?」

 

ネプテューヌがそう言うと、

 

「いや…………織斑先生には悪いかもしれないが、俺と一夏の仲は良いとは言えない。ぶっちゃけ悪い。そして、その事はマジェコンヌも知っている筈なんだ。つまりは一夏の人質としての価値はあまり高くはない。俺に対する人質としてなら、刀奈や簪、ラウラ辺りを狙うのがベターのはずだ」

 

紫苑の現在の優先順位は、頂点にネプテューヌで次点にプルルート。

次いで刀奈、簪、ラウラの3人や、翡翠、ネプギア、ピーシェといった家族が来るため、女神であるネプテューヌやプルルート、翡翠、ネプギア、ピーシェと比べれば、刀奈達3人は比較的狙いやすいといえる。

マジェコンヌはそこまで詳しい紫苑の優先順位を知るはずは無いだろうが、それでも一夏を狙うよりかは、刀奈達の方が人質としての価値が高い事は承知している筈なのだ。

 

「だが、それでも一夏を狙ったのが気になってな…………」

 

紫苑はそう呟くと一夏が誘拐された理由を考えるが一向に答えは出ない。

 

「一先ず私達で情報収集を行います。イチカさんの行方が分かった時には必ずお伝えします」

 

イストワールの言葉に、

 

「お願いします………!」

 

千冬は頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 








第50話です。
少し短いですがキリが良かったので。
一夏闇堕ちの回。
本人は色々考えがあったようですがマジェコンヌにはお見通し。
挙句の果てに止めようとした白式ちゃんを叩いて捨てちゃう始末。
白式ちゃんに対して早く一夏を見捨てなさいと言う声がチラホラあったのですが、むしろ一夏から白式ちゃんを捨てるという選択があったことに皆様は気付いていたでしょうか?
因みに作者は今回の話を書くまでこれっぽっちも気付いていなかったり(核爆)。
さて、一夏の未来は闇の中。
では次回も頑張ります。
今週のNGシーンは内容が重すぎるので無理でした。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。