超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

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第5話 少年の想い(マイ ハート)

 

 

 

 

 

 

変身したネプギアの力は凄まじいものだった。

 

「ミラージュダンス!!」

 

変身したことで使えるようになった必殺技で、モンスターを破竹の勢いで殲滅していくネプギア。

ユニやロム、ラム、アイエフ、コンパ、紫苑もそれぞれがモンスターを討伐していく。

全てのモンスターを倒した一行は、遂に女神が捕らえられている結界の場所まで辿り着いた。

 

「お姉ちゃん!」

 

ネプギア達が捕らわれているネプテューヌ達に呼びかける。

 

「ネプギア!」

 

それに気付いたネプテューヌが叫ぶ。

 

「ネプギア、変身出来たんだね!」

 

「うん、すぐに助けてあげるからね!」

 

そう言葉を交わした時、

 

「さあどうかな?」

 

その場に女の声が響いた。

 

「ッ!?」

 

ネプギアが声のした方を向くと、マジェコンヌが見下すような態度でそこに立っていた。

 

「フッフッフ………よく来たな妹たち。私の名は『マジェコンヌ』。4人の小娘たちが支配する世界に、混沌という福音を………」

 

「コンパちゅわ~ん! 会いたかったっチュ!」

 

マジェコンヌが不遜な態度で名乗り口上を述べている最中に、ワレチューがコンパに向かって熱い視線を送りながら呼びかけた。

 

「へっ? あ、はいですぅ~…………」

 

いきなり呼びかけられたコンパは困った表情をしながら返事をする。

 

「オイコラァ!! 邪魔をするな!」

 

「チュ!」

 

怒鳴るマジェコンヌにワレチューはそっぽを向く。

 

「どうしてこんなことをするんですか!? いったい何の目的で!?」

 

「フッフ………教えてやろう。私が求めているのは女神を必要としない新しい『秩序』。誰もが支配者になりうる世界だ!」

 

「それって、あなたが支配者になろうとしているだけじゃないですか!」

 

「私より強い者が現れればその者が支配者となる………これこそ平等な世界だ。違うか?」

 

「何もっともらしい事言ってんのよ! ようするに女神の力が羨ましいんでしょ!?」

 

ユニが叫ぶ。

 

「フッ、そのように思っていた頃もあったかもしれんなぁ………だが今は違う………何故なら!」

 

マジェコンヌの目が怪しく輝くと、赤紫の光に包まれ、姿を変えていく。

 

「私自身が女神の力を宿しているからだ!」

 

そう言い放つマジェコンヌ。

背中には悪魔を彷彿とさせるような刺々しい翼を持ち、手には両側に刃の付いた槍状の武器を持っている。

 

「変身!?」

 

「あの人は女神じゃないのに!?」

 

マジェコンヌが変身したことに驚くネプギア達。

マジェコンヌはニヤリと笑みを浮かべると、手に持った武器が刀剣状に変化する。

そして、ネプギアに向かって斬りかかった。

 

「クロスコンビネーション!!」

 

マジェコンヌが放った技にネプギアは驚愕して動きを止めてしまい、直撃を受ける。

 

「きゃあああっ!?」

 

地面に叩きつけられるネプギア。

 

「嘘!? 私の必殺技!?」

 

結界で捕らわれていたネプテューヌも驚きで声を上げた。

ネプギアは何とか身を起こすと、

 

「どうして………その技を!?」

 

その言葉にマジェコンヌは自慢げな笑みを浮かべると、

 

「フッフッフ………私には他人をコピーする能力があってな………遂には女神の技までも、わがものにしたという事だ!」

 

そう言い放った。

 

「そんな事、出来るわけない!」

 

ネプギアは思わず否定の言葉を口にするが、

 

「だがそうなのさ!」

 

マジェコンヌは見せつけるように、武器を巨大なアクスに変化させると大きく振りかぶり、

 

「テンツェリントロンベ!!」

 

強力なアクスの一撃を放つ。

これは本来変身したブランの、ホワイトハートの技だ。

吹き飛ばされたネプギアは再び地面に叩きつけられる。

地面に倒れたネプギアにマジェコンヌはゆっくりと歩み寄り、アクスを振り上げる。

その時、

 

「止めて!」

 

「ん?」

 

声が響いてマジェコンヌが振り返る。

そこには、ロムとラムがいた。

 

「ネプギアに酷い事しないで!」

 

ラムがそう叫ぶが、

 

「ガキはおしゃぶりでも咥えてな!」

 

バカにした表情で2人の懇願を切って捨てる。

それからネプギアに向き直ると、

 

「はぁっ!」

 

「きゃあっ!」

 

容赦なくアクスを振り下ろす。

マジェコンヌは何度もアクスをネプギアに叩きつけ、その度にネプギアの悲鳴が響く。

その光景に思わず目を逸らしてしまう2人だったが、

 

「ロム、ラム………」

 

「シオン………」

 

「シオンさん………」

 

いつの間にか紫苑が2人の傍に来て語り掛けた。

 

「目を逸らしたくなる気持ちは分かる………でも、訓練をしていた時にも言ったはずだ」

 

「…………目を瞑っても、敵は待ってくれない…………!」

 

「敵を見て………対策を瞬時に判断する…………!」

 

その言葉を思い出し、2人は今の状況をしっかりと目に移す。

容赦なくアクスを何度も振り下ろすマジェコンヌに、辛そうな表情でそれに耐えるネプギア。

 

「…………私、あの人嫌い………!」

 

ロムがそう口にする。

 

「うん! 私も、大っ嫌い!!」

 

ラムも力強く同意する。

2人は手を繋ぐと、

 

「やっつける………!」

 

「私達2人で!」

 

大人しい2人が真に戦うことを決意した時、2人の身体から光があふれる。

 

「ん?」

 

それに気付いたマジェコンヌが攻撃を中断して振り返った。

 

「ロム………ラム………?」

 

捕らわれていたブランもそれに気付いた時、2人が変身した。

2人は白色にピンクのラインが入ったボディースーツに身を包み、ロムは水色の髪にピンクの瞳に。

ラムは反対にピンクの髪に水色の瞳へと変化した。

その手には大きな杖も持っている。

 

「絶対許さない!」

 

「覚悟しなさい!」

 

2人はそう言い放つ。

 

「あん? ガキが2人変身した所で………」

 

マジェコンヌが見下しながらそう言いかけた時、2人は宙に舞い上がりながら同時に杖を構え、

 

「はぁああああああっ! アイスコフィン!!」

 

大きな氷塊を生み出してそれを放った。

 

「ぬあっ!?」

 

思った以上の攻撃にマジェコンヌは声を漏らす。

 

「「やったぁ!」」

 

2人は揃って嬉しそうな声を上げるが、

 

「まだだ! 油断するな!」

 

紫苑が叫んだ瞬間、氷塊が砕けた際の氷塵の中からマジェコンヌが飛び出し、直剣に変えた武器を回転しながら薙ぎ払った。

 

「レイシーズダンス!!」

 

「「きゃあああっ!?」」

 

本来はノワールの変身したブラックハートの技。

それを油断していた2人はもろに受けて吹き飛ばされる

 

「ロムちゃん! ラムちゃん!」

 

2人のお陰で持ち直したネプギアが飛び立ちながらビームガンを放つ。

その攻撃はマジェコンヌに命中するが、爆煙の中からはたいしたダメージを受けていないと思われるマジェコンヌの姿があった。

 

「フッフッフ……………反撃させてもらうぞ?」

 

マジェコンヌがそう言った瞬間、翼の先を構成していた無数の非固定部位が射出され、それぞれに意思があるかのように飛び回る。

そして、その先から閃光が放たれた。

 

「「きゃあっ!」」

 

ロムとラムは何とか防ぐが、威力の高さで吹き飛ばされ、

 

「くっ………きゃっ!」

 

ネプギアは執拗な攻撃の前に回避が精一杯で反撃に移れない。

 

「フフフ………」

 

そんな様子を余裕の表情で見下ろすマジェコンヌ。

そのマジェコンヌに、ユニがライフルの標準を合わせようとしていた。

だが、その手先は震えており、まともに標準を合わせることが出来ない。

 

(私一人だけ変身できないなんて…………)

 

ユニはネプギア、ロム、ラムと次々と変身を可能にした3人に対し、劣等感を感じていた。

 

(お姉ちゃんだって、見てるのに………)

 

そう思った瞬間、震えていた銃口がピタリと止まった。

 

「えっ?」

 

いや、銃身を誰かに掴まれたのだ。

それは、

 

「シオン………」

 

紫苑だった。

 

「ユニ、お前の冷静でよく考えてから行動する所はお前の長所だ。でも、それが逆にお前の枷にもなっている」

 

「え?」

 

「なまじ頭の良いお前は、自分の行動で起こるその後の評価にまで考えが及んでしまう。その所為で思い切った行動を自制しているんだ」

 

「それは……………」

 

身に覚えのあるユニは何も言えない。

 

「だから、偶には後の事なんか考えずに目の前の事に全力で取り組んでみるのも悪くは無いんじゃないか?」

 

「…………目の前の事を………全力で…………」

 

ユニの目の前ではネプギアが無数の攻撃の前に追い詰められていく。

 

「…………そうだ、今は!」

 

ユニはライフルを構えなおす。

 

(変身出来ないことは仕方ない! なら、今出来ることを全力でやるだけよ!)

 

ユニは飛び回る非固定部位に狙いを定める。

 

「当たれ当たれ当たれぇー!!」

 

ライフルを連射するユニ。

 

「ユニ………」

 

ユニの必死な姿を見て、何か思う所があったのか呟くノワール。

小さく素早い非固定部位にはなかなか当たらなかったが、ユニの放った一発が遂に非固定部位の1つを捉え、破壊する。

 

「何っ?」

 

その事に驚くマジェコンヌ。

 

「よしっ!」

 

一機撃墜したことで自信が付いたのか、ユニの集中力は更に増す。

 

(そうよユニ、標的の事だけ考えるの…………)

 

ターゲットスコープを覗き込み、飛び回る非固定部位に狙いを定める。

既に先程まで考えていた後の評価など頭になかった。

 

(………見える!)

 

ユニは高速で飛び回る非固定部位の動きを完全に見切っていた。

ユニは気付いていないが、その瞳には女神の証が浮かび上がっている。

タイミングを合わせて引き金を引く。

放たれた3発の弾丸は全て2機以上を纏めて撃ち抜いた。

 

「!?」

 

驚いたマジェコンヌの視線の先には、銀髪をツインテールでカール状にした、変身してブラックシスターとなったユニがいた。

ユニは手に持った大型のビームランチャーを構え、

 

「エクスマルチブラスター!!」

 

強力な砲撃を放った。

 

「ぬあああっ!?」

 

その砲撃はマジェコンヌを掠め、マジェコンヌは余波で吹き飛ばされる。

 

「迷いは無いわ。あるのは覚悟だけ!」

 

ユニは自分の思いを口にする。

 

「ユニちゃん、かっこいいー!」

 

ネプギアがユニを尊敬の眼差しで見あげる。

 

「えあっ………? って、変身してる?」

 

ネプギアの言葉にユニは頬を赤くして照れた仕草をするが、その際に初めて自分が変身していることに気付いた。

 

「やったね! ユニちゃん!」

 

「すごーい!」

 

ラムとロムもユニを褒める。

 

「ま、まあ当然ね! 主役は最後に登場するんだから!」

 

変身したことに気付かなかった事を誤魔化すようにユニはそう言う。

 

「うん! そうだね!」

 

そんなユニの言葉にも純粋に笑顔で返すネプギア。

 

「ユニ………!」

 

「皆、素晴らしいですわ!」

 

ホッとするノワールと、褒めたたえるベール。

全員が変身できたことで捕らわれていた女神達にも希望が見えてきたのだろう。

だが、その時、結界の下方に溜まっていた黒い液体のようなものから無数の手の形をしたものが沸き上がるように出現し、女神達の身体に絡みついていく。

 

「!?」

 

「何なの?」

 

「わわっ!?」

 

「こ、これは!?」

 

突然の事態に女神達は困惑するが、結界の傍に居たワレチューがタイマーを見て、

 

「ま、予定通りっチュね」

 

こうなることがさも当然だったと言わんばかりにニヤリと笑った。

その様子を目撃したネプギア達も困惑している。

 

「何なの………あれ?」

 

「わかんない………!」

 

その時、

 

「アンチエナジーはああやって女神を殺すのさ!」

 

マジェコンヌはそう言うと武器を槍へと変化させ、

 

「レイニーラトナピュラ!!」

 

ベールの変身したグリーンハートの技である無数の神速の突きを放つ。

 

「「「「きゃぁあああああああああああっ!?」」」」

 

4人の女神候補生たちは纏めて吹き飛ばされる。

捕らわれていた女神達にも異変が起き始めた。

 

「冷たい………」

 

「わたくし………もう感覚がありませんわ………」

 

「えええええっ!?」

 

ブランとベールの言葉にネプテューヌが驚愕する。

結界下方に溜まるアンチエナジーに近いブランとベールには影響が出始めていたのだ。

 

「そうね………麻痺し始めてる………」

 

ブランも力無くそう言う。

 

「全身を絡めとられる前に、何とかしなきゃ………」

 

ノワールはそう言うが、具体的な対策は何もない。

そんな女神達の傍らで、

 

「それじゃ、オイラはここいらで…………」

 

ワレチューは荷物を纏めて退散しようとしていた。

だがその時、

 

「おいクソネズミ…………!」

 

ドスの利いた低い声色でその言葉が聞こえたと同時にワレチューの頬に硬くて冷たい物が当てられた。

 

「チュ!?」

 

突然の事にワレチューは驚き、荷物を取り落としてしまう。

 

「逃げたら殺す! ふざけても殺す! 黙っていても殺す! 分かったらゆっくりとこっちを向け………!」

 

ワレチューの頬に当てられたのは刀の切っ先。

そして、刀を持つ人物はシオンだった。

だが、その表情は前髪に隠れて伺うことは出来ない。

 

「は、はん。下手な脅しっチュね…………お前みたいな甘々なガキンチョに殺しなんて真似が出来るはずが………」

 

ワレチューは動揺を押し隠し、余裕の表情を取り繕って紫苑に振り向く。

しかし、

 

「チュッ!?」

 

ワレチューはたじろいだ。

紫苑は氷の様な冷たい目でワレチューを見下ろしていたからだ。

 

「あの結界の原理とかそう言うのはどうでもいい………! あの結界の止め方………もしくは破壊の方法を吐け…………今すぐにだ! 言わなければ殺す!」

 

紫苑は殺気を放ちながらそう言う

それでもワレチューは気丈に振る舞い、

 

「そ、そんな怖い目をしたって無駄っチュよ………! オイラはこれでもそれなりの修羅場を潜り抜けてきた悪っチュ! その言葉が本気かどうかなんてすぐに………」

 

ワレチューがそう言ったとき、刀の切っ先がワレチューの頬から離れる。

ワレチューが何事かと思って刀の切っ先を目で追うと、刀を振りかぶった紫苑がかなりの剣速で横薙ぎに振るった。

 

「ヂュッ!?」

 

剣を目で追っていたワレチューは反射的に身を屈めた。

その瞬間、紫苑の刃はワレチューのすぐ頭上を………先程までワレチューの首があった所を通過した。

 

恐る恐る顔を上げたワレチューは、

 

「あ、危ないっチュね! 今の避けてなかったら首が飛んでたところっチュよ! 脅しならもっと上手くやれっチュ! 殺す気っチュか!?」

 

命の危険だったせいか、紫苑に文句を言う。

だが、

 

「ああ………殺す気だ………!」

 

平然と紫苑は答えた。

 

「避けられる程度に剣速を抑えたが、避けなかったら殺しても構わないという気で剣を振った」

 

紫苑は再びワレチューに切っ先を突きつける。

 

「次は外さない…………確実に殺す………!」

 

先程と同じ、氷の様な冷たい目で紫苑はワレチューを見下ろしながら言う。

 

(こ、こいつガチっチュ! マジで下手な事言えば即あの世行きっチュ………!)

 

ここに来て、初めて紫苑が本気だということに気付くワレチュー。

恐怖からワレチューは後退るが、一歩下がるごとに紫苑も一歩進み出て間合いを空けることを許さない。

ワレチューは2歩3歩と後退るが、背中に岩があってそれ以上下がれなくなってしまう。

 

「チュ、チュ~~~~~~~!」

 

ワレチューは首を横に振ってやめろと表現するが、紫苑はゆっくりと刀を振りかぶった。

 

「ダメだよ! シオン!」

 

紫苑の行動に気付いたネプテューヌが止めさせようと声を上げる。

それを聞いたワレチューが助かったと言わんばかりの表情で、

 

「ほ、ほら、女神もそう言ってるっチュよ…………ここでオイラを殺したら、間違いなく女神に嫌われるっチュ。それでも良いっチュか?」

 

ワレチューは幾分か余裕の戻ってきた態度でそう言う。

だが、

 

「………………………嫌われたっていい………!」

 

紫苑がポツリと呟く。

 

「チュッ!?」

 

「シオン!?」

 

予想外の紫苑の言葉にワレチューとネプテューヌが驚愕する。

 

「嫌われたっていい……………この手を血で汚そうとも構わない………! それで護れるのなら…………! あんな思いは……もう2度と…………!」

 

絞り出すような紫苑の言葉。

両親を失い、妹を失った紫苑は、失う事をとても恐れていた。

ネプテューヌ達を護るためならどんな事でもする覚悟だ。

当然、殺すことすらも今の紫苑なら迷わずに選ぶだろう。

 

「シオン…………」

 

紫苑の過去を知るネプテューヌにとって、紫苑の気持ちも良くわかる。

だが、それでも紫苑に殺しはさせたくないと思っていた。

紫苑の振り上げた刀が僅かに後ろに揺れる。

振り下ろす寸前の予兆だ。

 

「シオン! 駄目っ!!」

 

ネプテューヌが叫ぶが、紫苑は構わずに刀を振り下ろした。

その瞬間、

 

「ヂュ~~~~~ッ!! あ、あの結界は4つのアンチクリスタルを起点に作り出されているっチュ! だから、何処か1か所でもアンチクリスタルを破壊すれば結界は解除される筈っチュ!」

 

恐怖に耐えきれなくなったワレチューが口を割った。

ワレチューの額の寸前で寸止めされた刀の切っ先。

 

「オイ! ネズミぃ!!」

 

それを聞いていたマジェコンヌが口を割ってしまったワレチューに向かって怒鳴った。

 

「煩いっチュ! このガキマジっチュ! 今喋らなかったら確実に殺されていたっチュよ!!」

 

ワレチューは逆ギレする様に叫んだ。

すると、

 

「アンチクリスタルの破壊の方法は!?」

 

紫苑は質問を続ける。

 

「そ、それは知らないっチュ!」

 

紫苑はズイと切っ先を近付ける。

 

「ヂュ~~~~ッ!! ホントっチュ! ホントに知らないっチュ! アンチクリスタルについてはオイラよりもあのオバハンの方が詳しいっチュ!」

 

ワレチューは首を振りながら必死に知らないことをアピールする。

紫苑がワレチューを睨み続けていると、

 

「ネプ子! イストワール様からのメッセージがあるの!」

 

アイエフが結界に駆け寄っており、ネプテューヌに呼びかけていた。

 

「あいちゃん………! うん!」

 

アイエフはイストワールに通信を繋ぐ。

 

『皆さん………大変な事が分かりました。アンチクリスタルの力は、皆さんとシェアクリスタルとのリンクの邪魔をするだけでは無い様なのです。行き場を失ったシェアエナジーをアンチエナジーと言うものに変える働きもあるみたいで、密度の濃いアンチエナジーは女神の命を奪うと言われています』

 

「で、どうすればいいのーっ!?」

 

『今の所、対処法は分かりません。せめて3日あれば………』

 

その時、

 

「ベール!!」

 

ネプテューヌが叫ぶ。

ベールが液体化したアンチエナジーに沈みそうになり、ネプテューヌは必死に手を伸ばす。

 

「ネプ………テューヌ…………」

 

ベールも何とかネプテューヌに手を伸ばし、2人は何とか手を繋ぐが、それと同時にベールは意識を失ってしまう。

 

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

ネプテューヌの悲鳴が響く。

 

「くっ………ノワー………ル………」

 

同じようにブランもアンチエナジーに飲み込まれそうになっており、ノワールに向かって手を伸ばす。

 

「ッ………ブラン………!」

 

ノワールも必死に手を伸ばしブランの手を取るが、ブランもまた意識を失いアンチエナジーの中に沈んでいく。

 

「ッ!?」

 

紫苑が女神達に気を取られた一瞬の隙を突いて、ワレチューはその場から逃げ出す。

 

「チッ!」

 

紫苑は舌打ちするが、すぐにワレチューの事よりもネプテューヌ達を優先する。

紫苑は駆け出し、

 

「はぁああああああああっ!!」

 

ワレチューから聞き出した通り、起点となっているアンチクリスタルの一つに向けて斬りかかった。

だが、ガキィンと甲高い音を立てて紫苑の刀は止まってしまう。

何故なら、起点となるアンチクリスタルも結界で覆われているからだ。

そして紫苑は今の一撃で理解してしまった。

理解できてしまった。

自分の力ではこの結界を破ることが出来ないことに。

別のアンチクリスタルの場所でも、アイエフとコンパが拳銃や注射器で結界の破壊を試みようとしているが芳しくないのは明らかだ。

その間にも、

 

「………いや…………ネプ………テューヌ…………」

 

ノワールがアンチエナジーに沈み、

 

「ノワー…………ル………」

 

ネプテューヌも飲み込まれようとしていた。

紫苑は焦る気持ちを抑えて結界に手を当てながら考える。

 

(落ち着け………! そして考えろ………! どうすればこの結界を破れる………? 俺の力では無理………アイエフやコンパでも無理…………ネプギア達なら………? いや、ネプテューヌ達の力が封じられていることから、同じシェアエナジーが力の源であるネプギア達でも結果は同じだ…………ならどうすれば…………)

 

紫苑は焦りを抑えられそうにない。

その時、

 

「ハッハッハ! お前たちの姉の命もあと僅かだ! 大人しく姉の最期を見届けるが良い!」

 

高笑いしながらそう言うマジェコンヌ。

そんなマジェコンヌを見た時、

 

「ッ!」

 

紫苑の脳裏に閃きが走った。

 

(アンチエナジーを力の源にしている奴なら、もしかしたら!)

 

思い立った紫苑は叫んだ。

 

「おい! 紫おばさん!」

 

「あん?」

 

「さっきから見てればみっとも無いんだよ! 執拗にネプギア達を痛めつけて、そんなにネプギア達の若さが羨ましいか!?」

 

「何だと!?」

 

「シ、シオンさん………?」

 

「いきなり何言ってるのよアイツ………」

 

突然マジェコンヌを煽りだした紫苑にネプギア達が困惑する。

 

「おお! 図星を突かれて怒ったか? ほら、眉間に皴が増えたぜ! これじゃあ紫おばさんじゃなくて、紫ババアだな!」

 

ピキリっとマジェコンヌは額に青筋を浮かべる。

 

「マジェコンヌ様だ! 誰がババアだ!」

 

「マザコング? マザコンのゴリラでマザコングか? お似合いの名前だな!」

 

その瞬間、ブチッと堪忍袋の緒が切れる音が聞こえた気がした。

 

「この小僧がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

マジェコンヌはネプギア達を放っておいて紫苑に一直線に向かっていく。

 

「シオンさん!」

 

「駄目! 逃げなさい!」

 

ネプギアとユニが叫ぶ。

だが、

 

(かかった!)

 

紫苑は内心そう叫び、刀を霞の構えで構える。

 

「死ねぇええええええええええっ!!」

 

マジェコンヌは槍となっている武器をシオンに向けて突き出す。

迫るマジェコンヌに対して、紫苑は極限まで集中していた。

 

(チャンスは一度………一瞬のみ………!)

 

紫苑は迫りくる槍の切っ先を見据え、

 

(今!)

 

「はぁああああああああああっ!!」

 

紫苑はその槍へ向けて刀を突き出した。

次の瞬間、バキィィィンと言う音と共に紫苑の刀が砕け散る。

 

「シオンさん!」

 

ネプギアは焦った表情で叫んだ。

だが、

 

「なっ!?」

 

驚愕の声を漏らしたのはマジェコンヌだった。

 

「女神と同等の力を持つお前の攻撃を受け止めることは、俺には出来ない。だけどな………」

 

紫苑がそう言葉を放つ。

 

「攻撃を僅かに逸らすだけなら、そう難しい事じゃないんだよ!」

 

マジェコンヌが突き出した槍の切っ先は紫苑によって僅かに逸らされ、結界を突き破ってアンチクリスタルに直撃していた。

罅が広がり、砕け散るアンチクリスタル。

 

「しまった!?」

 

焦った表情になるマジェコンヌ。

その瞬間結界の一部が消失し、液体化したアンチエナジーが外に流れ出る。

紫苑はその場を飛び退いて一時的に退避した。

すると、マジェコンヌがわなわなと震え、

 

「この小僧! よくもこのマジェコンヌ様の計画を台無しにしてくれたな!」

 

そう叫びながら紫苑に襲い掛かろうと刀剣状にした武器を振りかぶる。

 

「ッ!」

 

丸腰の紫苑に抗う術は無く、絶体絶命だった。

だが、

 

「くっ!?」

 

マジェコンヌの前方を掠めるように砲撃が通過する。

見れば、ユニがビームランチャーを構えていた。

 

「やるわねシオン。見直したわ!」

 

ユニがそう言う。

続けてネプギアがビームガンを連射し、マジェコンヌをシオンの傍から引き離す。

 

「今の内に、お姉ちゃんたちを!」

 

ロムとラムも追撃で氷塊を放つ。

 

「早く! 今の内に!」

 

「お姉ちゃんたちをお願い!」

 

4人がマジェコンヌに向かっていく。

紫苑はアンチエナジーがすべて流れて出たことを確認して結界があった場所に駆け込む。

そこには力なく横たわる4人の女神の姿があった。

 

「ネプテューヌ!」

 

紫苑はすぐにネプテューヌに駆け寄り、抱き起す。

 

「ネプテューヌ! しっかりしろ! ネプテューヌ!!」

 

紫苑はネプテューヌを揺さぶる。

すると、

 

「ううっ…………」

 

ネプテューヌが僅かに目を開ける。

 

「ネプテューヌ! 大丈夫か!?」

 

紫苑が問いかけると、

 

「あ………シオン…………皆は………?」

 

ネプテューヌは自分の事よりも他の3人の女神の事を心配していた。

紫苑が振り返ると、アイエフとコンパが他の3人を介抱していた。

 

「大丈夫よ! 意識は失ってるけど3人とも生きてるわ!」

 

アイエフがそう言う。

 

「大丈夫だ。3人とも無事だよ」

 

紫苑がそう言うと、ネプテューヌは明らかにホッとした表情になった。

 

「そっか………良かったぁ………」

 

そう笑みを浮かべるネプテューヌ。

 

「ネプテューヌ、動けるか?」

 

紫苑がそう尋ねると、ネプテューヌは身体を動かそうとする。

しかし、僅かに身動ぎするだけで身体に力が入らないようだ。

 

「駄目みたい………多分、まだアンチクリスタルの影響が抜けきってない所為だと思う。まだシェアが感じられないや」

 

命の危機は脱したものの、まだその影響はネプテューヌ達の身体に残っている様だ。

 

「ならば好都合!」

 

いつの間にか、背後にマジェコンヌが接近していた。

ネプテューヌ達が動けないことに気付いたマジェコンヌがネプギア達の攻撃を掻い潜って向かってきたのだ。

 

「アンチエナジーでじわじわと殺すつもりだったが、力を失っている今なら直接殺すことも容易い!」

 

マジェコンヌは刀剣を振りかぶった。

 

「お姉ちゃん! シオンさん!」

 

ネプギアは叫びながら駆け付けようとするが間に合わない。

 

「死ねっ!!」

 

マジェコンヌが刀剣を振り下ろす。

その瞬間、紫苑は咄嗟にネプテューヌを胸に抱きしめるようにしながら覆い被さり、ネプテューヌを庇う体勢になった。

 

「シオッ…………!」

 

シオンと叫ぶ前にその胸に抱きしめられるネプテューヌ。

振り下ろされる凶刃。

もう一瞬後には紫苑の命は容易く刈り取られるであろう。

ネプテューヌにはその一瞬がとても長く感じられた。

だが、それは紫苑の命が失われるからだけではなかった。

 

(何だろう? この気持ち…………)

 

ネプテューヌは自分の胸の内に沸き上がる想いを感じた。

 

(それに、シオンから流れてくるこのあったかい『何か』は…………シオンのシェア………? ううんそれだけじゃない………もっと違う何か………何かは分からないけど…………力が沸き上がってくる………!)

 

ネプテューヌの瞳に女神の証が浮かび上がった。

マジェコンヌの刃が紫苑を切り裂く寸前、ガキィィィンと甲高い音を響かせてマジェコンヌの剣が止められた。

 

「何ッ!?」

 

驚愕するマジェコンヌ。

マジェコンヌの剣を止めたのは、

 

「シオンはやらせないわ!」

 

いつの間にか変身し、紫苑を正面から抱きしめるようにしながら護ったパープルハートの刀剣だった。

 

「馬鹿な!? 貴様は力を失っていた筈では!?」

 

驚愕の表情で狼狽えるマジェコンヌ。

 

「あ…………!」

 

いつの間にか逆に抱きしめられていた紫苑は、そのことに気付いて顔を赤くしながらパープルハートから離れた。

すると、

 

「ありがとうシオン。あなたのシェアが、私に力を取り戻させてくれたわ」

 

パープルハートが言った。

 

「俺のシェア?」

 

「ええ………感じるわ。あなたから直接流れてきた、温かいあなたのシェアを………」

 

パープルハートは自分の胸に手を当てながら目を瞑ってその温もりに浸るような仕草をする。

 

「馬鹿な! シェアクリスタルを介さずにシェアの受け渡しだと!? そんなことが出来るわけが!?」

 

「ええ、私も聞いた事は無いわ。でも、それは確かな事実。この身体に流れるシオンのシェアがそれを証明してるわ!」

 

パープルハートは一度紫苑に向き直ると、

 

「よく頑張ったわ、シオン。後は私達に任せて!」

 

パープルハートは背中に光の翼を発生させる。

 

「シオンは命を懸けて私達を救ってくれた! だから今度は私がシオンを護る番よ!」

 

そう言ってパープルハートは空へ飛び立つ。

 

「お姉ちゃん!」

 

ネプギアが嬉しそうな声を上げる。

 

「心配かけたわね、ネプギア。ここからは一緒に戦うわよ!」

 

「うん! サポートは任せて!!」

 

パープルハートの言葉にネプギアはそう言うが、

 

「いいえ、サポートは私。決めるのはあなた達よ」

 

パープルハートはそう言った。

 

「えっ?」

 

ネプギアは困惑した声を漏らす。

 

「変身は出来たけど、今私が引き出せる力は半分が精々と言った所…………いいえ、シオン1人のシェアだけでここまで力を引き出せるだけでも奇跡みたいなものだからこれ以上は高望みが過ぎるというものね。そう言うわけだから、止めはあなた達に任せるわ!」

 

ネプギアは一瞬迷ったようだが、

 

「うん!」

 

最終的には力強く頷いた。

 

「行くわよ!」

 

パープルハートがマジェコンヌに向かって飛翔する。

 

「おのれっ!」

 

マジェコンヌも刀剣を振り上げた。

そして、

 

「「クロスコンビネーション!!」」

 

同時に同じ必殺技を放った。

刀剣同士が激突した瞬間、激しい衝撃が巻き起こる。

 

「くっ………!」

 

半分しか力を引き出せないパープルハートは若干打ち負けるものの、何とか相殺に成功する。

更に、その反動を利用してその場を離れた瞬間、

 

「なっ!?」

 

「くらいなさい!!」

 

パープルハートの姿によって死角になっていた場所でユニがビームランチャーを構えており、砲撃を放った。

 

「ぐあああっ!?」

 

マジェコンヌは避けようとしたものの、間に合わずに片翼に被弾し、大きく体勢を崩す。

更に、

 

「「えぇぇぇぇぇぇいっ!!」」

 

ロムとラムが先程よりも巨大で星形をした氷塊を生み出し、それを放った。

体勢を崩していたマジェコンヌはそれを避けることが出来ず、直撃を受ける。

 

「うわぁああああああっ!?」

 

大きく吹き飛ばされるマジェコンヌ。

地面に叩きつけられ動きが止まった。

そこへネプギアが接近し、銃剣を構える。

 

「これで終わりです!!」

 

渾身のビームを放つネプギア。

 

「うあああああああああああああああああああっ!!!」

 

マジェコンヌは叫び声を上げながら爆発に呑まれた。

誰が見ても、致命的な一撃。

だがそれでもネプギアは油断しなかった。

紫苑から教えられた戦いの心構え。

勝利を確信した瞬間こそ最大の隙となる。

それを覚えていたからこそ、ネプギアは油断せずに着弾点を見据える。

爆煙が晴れていくと、

 

「はぁ………はぁ………!」

 

満身創痍ながらもその足で立つマジェコンヌの姿があった。

マジェコンヌは憎々し気な表情を浮かべると、

 

「女神の妹共………そして小僧!! この屈辱、忘れはせんぞ!!」

 

ネプギア達、そして紫苑を睨むと背を向けて飛び立った。

 

「あっ!? 逃げた!」

 

「待ちなさい!」

 

ラムが叫び、ユニが追いかけようとしたが、

 

「待って! 深追いは禁物よ………」

 

パープルハートによって自制させられる。

 

「それよりも今は…………」

 

そういいながらパープルハートが眼下に視線を向けると、気を失っていたノワール、ブラン、ベールの3人が起き上がろうとしている所だった。

丁度その時、朝日が大地を照らしていく。

3人が彼女たちを見上げると、一目散に飛び出したのはロムとラム。

2人はブランに飛びつく。

 

「お姉ちゃん! 会いたかったよ~!」

 

「良かった………!」

 

2人はブランに抱き着きながら泣き出す。

 

「子供みたいに泣かないの…………ゴメンね。心配かけて………」

 

ブランからも2人を抱きしめた。

一方、ユニもノワールと向かい合っていた。

 

「あ………あの………ゴメンね、お姉ちゃん………遅くなって………」

 

ユニは何と言っていいのか分からず、所々どもりながらそう言った。

 

「何謝ってんのよ? 大分成長したじゃない…………ありがとう」

 

「あ………」

 

初めて言われたノワール()からユニ()への感謝の言葉。

認められたことが嬉しくて、ユニは涙を溢れさせる。

 

「お姉ちゃん………!」

 

ユニは我慢できずにノワールに抱き着いた。

ネプギアは改めてパープルハートと向かい合う。

 

「お姉ちゃん………私……私………」

 

「うん、頑張ったわね、ネプギア………これからはずっと、一緒に居るから………」

 

ネプギアは涙を流し、パープルハートに抱き着いた。

 

「お姉ちゃん………!」

 

空中で抱き合う2人。

そんな2人を手を翳しながら紫苑が見上げていた。

 

「随分と遠い所へ行っちまったな…………」

 

紫苑はポツリと呟く。

紫苑は今回の出来事で、女神との決定的な差を思い知った。

気持ち的な問題だが、紫苑は今までパープルハート………ネプテューヌが遠くにいると感じたことは無かった。

だがそれはネプギアが近くにいたからだ。

しかし、ネプギアが成長したことでネプテューヌを縛る枷が無くなった今、彼女はもっと遠い所へ飛んでいくだろう………

ネプギアと一緒に…………

 

「…………俺じゃあアイツの隣には立てない………か…………」

 

彼女の隣に立てるのはネプギアだけ。

それを理解してしまった。

紫苑は身体的な疲れも相まって、近くの岩場に背中を預けながら座り込む。

 

「それにしても…………」

 

朝日に照らされ、ネプギアを見つめながら優しく微笑むパープルハートを紫苑は見上げた。

 

「…………やっぱり………綺麗………だな…………」

 

紫苑は一気に襲ってきた猛烈な眠気に抗う事はせず、そのまま意識を落とした。

 

 

 

一方、そんな姉妹達の再会を涙を潤ませながら見ているのは、唯一妹の居ないベール。

その涙は、姉妹たちが無事に再会できたことを喜ぶ歓喜の涙。

そして、ほんの少しの寂しさを含んだ涙だった。

 

「あ…………」

 

すると、そんなベールに気付いたネプギアがパープルハートから離れてベールへと近づいていく。

 

「ベールさん」

 

そしてそのままベールを抱きしめた。

 

「お疲れさまでした」

 

労いの言葉を掛けるネプギア。

一瞬驚愕に目を見開くベールだったが、

 

「…………ありがとう」

 

ベールからもネプギアを抱きしめ返した。

そんな様子を見て、パープルハートが仕方ないとばかりに溜息を吐く。

 

「まったく…………今日だけだからね、ベール」

 

そう言って今回だけは許しを出すパープルハート。

 

「あっ! そうだわ! シオンは………」

 

パープルハートは今回の勝利の立役者と言っていい紫苑の姿を探す。

紫苑は岩場に背を預けながら座り込んでいた。

 

「シオン!」

 

パープルハートが呼びかけながら近付くが、紫苑は反応しない。

 

「シオン………?」

 

パープルハートが様子を伺うと、紫苑はすやすやと寝息を立てていた。

 

「こんな所で寝るなんて………」

 

パープルハートは呆れたような表情をしてから、紫苑を起こそうと紫苑の肩に手を伸ばす。

しかし、

 

「寝かせといてあげなさい、ネプ子」

 

アイエフとコンパが近付いてきた。

 

「あいちゃん………こんぱ………?」

 

パープルハートは一瞬何故と考える。

 

「シオン、丸1日以上ぶっ通しで戦っていたみたいだから………」

 

その言葉にパープルハートは目を見開く。

 

「シオ君、一杯一杯頑張ってたです!」

 

コンパも力強く肯定する。

 

「じゃ、じゃあ、2日前の夜に1人で戦いを挑んでいたのは………やっぱりシオン?」

 

「ええ。シオンは私達が到着するまでにモンスターを半分近く倒してくれていたの。そうじゃなかったら、もしかしたら間に合わなかったかもしれないわ」

 

「シオン………」

 

再び紫苑に視線を向けるパープルハート。

あどけない寝顔を浮かべるシオンに、パープルハートは微笑みを浮かべ、

 

「ありがとう………シオン」

 

改めてお礼を重ねた。

その胸に生まれた想いに、気付かないままに……………

 

 

 

 

 

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