超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
戦いの後、紫苑は一夏の事を含めた一連の出来事を千冬へと話した。
「そ…………んな…………一夏が………………」
千冬はショックを受けた表情で呆然となる。
「織斑先生!」
傍に居た真耶がふらつく千冬を支えた。
すると、突然紫苑は千冬に対して頭を下げた。
「すみません、織斑先生…………一夏があんな行動に走ったのも、俺が一夏を追い詰めてしまった結果です……………謝って済む問題ではありませんが…………申し訳ありませんでした……………」
紫苑の言う通り謝って済む問題ではない。
だが、それでも紫苑は頭を下げずにはいられなかった。
すると、
「い、いや、謝るな月影…………! 確かにお前にも厳しい言い方はあったのかもしれんが、それでも決して間違った事を言っていたわけでは無かった。それに、私自身も一夏がそこまで追い詰められていたことに気付かなかった時点で同罪だ」
「織斑先生…………………」
「少なくとも、一夏が無事であったことは素直に喜ぶべきことだ。あとは、殴ってでも一夏を連れ戻すだけだ」
千冬の言葉に、紫苑は頭を上げる。
「その役目は、俺に任せてください」
「ああ、その後は私の仕事だ。頼んだぞ」
紫苑の言葉に千冬は頷いた。
某所。
「くそぉっ!!」
一夏が声を荒げながら足元に転がっているガラクタを蹴っ飛ばした。
「くそっ! くそっ! くそぉっ!!」
ガンガンと八つ当たりする様にガラクタを連続で踏みつける。
「あの子、放っておいていいの?」
その様子を遠巻きに見ていたスコールが、マジェコンヌに問いかける。
「構わんさ。奴の力の源は怒りや憎しみといった負の感情。それが高まれば高まるほど奴の力も増す」
マジェコンヌはさも当然と言わんばかりにそう答える。
しかし、一夏の様子を見続けていたスコールは、
「……………それで? あの子の『力のリスク』は何?」
「ッ……………何の事だ?」
マジェコンヌはスコールの言葉に目を細めるが、とぼけて見せる。
「とぼけないで。私達やあなたを圧倒した相手を一時とは言え追い詰めたほどの力なのよ。それほどの力がリスクなしで手に入るとは到底思えないわ」
「フフ……………」
マジェコンヌはスコールに対して感心が混じった笑みを零す。
「鋭いな。やはり貴様は奴と違って愚か者ではないらしい」
マジェコンヌは一夏を一瞥すると、再びスコールに向き直る。
「あのオータムの小娘が私に力を求めてこなかった事も、お前の入れ知恵だろう?」
「ええ。あの子は私の恋人。むざむざと使い潰される訳にはいかないわ」
「ククク…………心配せずともあの小娘では『破壊者』になる為の怒りも憎悪も足りん。気性は荒いがその分心の内に秘める負の感情が流れ出てしまっている。それでは『破壊者』になることは不可能だ」
「そう………一先ずは安心ね。それで………? 先ほど言ったリスクについての回答をまだ聞いていないのだけど?」
「知りたいか…………? ならばヒントをやろう。先程も言ったが『破壊者』の力の源は怒りや憎悪といった負の感情。心が黒く染まれば染まるほどその力は増す。そして、『破壊者』が生み出す剣はその心を具現化したものだと言っていい」
「…………………ッ!? まさかっ………!? その剣が破壊された時には…………!」
「フフフ…………」
マジェコンヌの言葉の意味に気付いたスコールがハッとして声を上げる。
「その事をあの子は………?」
スコールの問いにマジェコンヌはニヤッと笑うだけだったが、それだけでスコールは察した。
「知らないみたいね……………」
「ならばどうする? 奴に教えるか?」
マジェコンヌがそう聞くと、
「………いいえ。『力』に手を出したのはあの子の意思であり責任。そこまで面倒を見る義務も義理も無いわ」
「そうか」
スコールの言葉にマジェコンヌは興味無さげに頷くと再び一夏を見る。
「ククク………ここまで愚かな奴を見ていると滑稽だな…………」
マジェコンヌは怪しい笑いを零した。
プラネテューヌにある喫茶店で、セシリアと鈴を始めとして、刀奈達いつものメンバーがお茶会を開いていた。
「結局セシリアや鈴も織斑君から離れたんだね」
シャルロットがそう言うと、
「流石に民間人の少女に手を挙げようとしたことは許されることではありません。その理由も自己中心的で身勝手だとすれば、100年の恋も冷めますわ」
「人は追い詰められれば本性を現すって言うけど、あいつの本性があんなのだなんて思いもしなかったわよ!」
「要は、あのような幼子に言い負かされた事に腹を立てただけだからな」
セシリアと鈴音がそう言い、箒が付け足す。
「一夏君は、根は真っすぐな子だったからね。道を踏み外した時にちゃんと修正出来てればよかったんだけど…………そのまま突っ走っちゃったから………ゴメンね」
少なからず一夏の教育係を担っていた刀奈が申し訳なさそうに言う。
「そんな! 楯無さんが謝ることはありません! 楯無さんや紫苑の忠告を聞かなかったのはあいつです! 自分のプライドばかり優先して、意地になって反抗してたから………!」
「それでも………その事を踏まえて道を誤らないようにしなければいけなかった事に対しては、私にも責任があるわ」
「お姉ちゃん…………」
「奴は基本的に自分が間違ってないと思い込んでいる。確かに客観的に見て奴がしてきた行動は、『正義』に準ずると言ってもいいだろう」
ラウラがそう言うと、
「強大な敵に臆さず立ち向かい、仲間の事は放っておかない。これだけ聞けば典型的な正義のヒーロー」
簪はそう言うが、紫苑に見せているような憧れの感情は全くない。
「前者は『力』が無ければただの無謀。後者は行き過ぎれば単なるお節介………大きなお世話、だね」
簪の言葉に自身に覚えのある経験を踏まえてそう言うシャルロット。
その言葉に簪はこくりと頷く。
「織斑君はその線引きが出来ていなかった。自分の力を必要以上に過信………ううん、勘違いしていた上に、無責任に人の心にズカズカと入り込んでくる。しかも、それを善意でやっているから歯止めが効かない分、悪意を持ってやるよりも質が悪い」
「耳が痛いなぁ………」
簪の言葉に、それでコロリといってしまったシャルロットが声を漏らす。
「言うなれば、織斑君は『
「それは分かりますわ。だからこそ自分が絶対に間違っていないと言い切れたのですわね。自分の『正義』こそ世界の『正義』。そう思っていたからこそ『自分が正義』だと世迷いごとを仰られた」
「…………………だからこそ…………紫苑さんとは相容れることが出来なかった…………」
刀奈がポツリと呟く。
「そうだな………織斑の奴を『
「ああ。紫苑は現実から目を逸らすことはしない。その全てを受け止め、そこから可能な限り最良の選択をしようとする」
「でも、一夏君は自分の理想を決して曲げない。自分の理想の姿を追い求め、絶対に妥協を許さなかった。それ故に、自分を護ってくれた織斑先生を理想の姿として追い求めた」
「……………でも、千冬さんを目指していた割には全く見当違いの方向に行ってたわよね?」
「それは、一夏君が理想としたのは『現実の織斑 千冬』じゃなくて、一夏君が幼いころから積み上げてきた理想の織斑先生のイメージを元にした、『
「あぁ…………何となくわかったわ」
鈴音は呆れた様に納得した。
「だから以前紫苑さんと試合をした時に、紫苑さんに指摘された『現実の織斑 千冬』と『
「間違った方向へ進んでしまえば、その修正も難しい………ということですわね」
刀奈の言葉をセシリアが続ける。
その言葉に刀奈は軽く俯く。
暫く沈黙が流れたが、
「あ~も~! やめやめ! こんな時まであいつの話をしてもしょうがないわ!」
鈴音がその場の雰囲気を変えるように大きめの声で言った。
すると、
「ところでさ、アンタ達は紫苑とはどうなのよ?」
今までとは話が180°方向転換した話題を鈴音は繰り出した。
「ど、如何って…………」
簪が赤くなってどもる。
「だから、何処まで進んだのって聞いてるの?」
「ふむ、そう言えば鈴はあの場にいなかったのだな。とりあえず、ネプテューヌには許しを貰って紫苑の妻になることは承諾してもらったぞ」
ラウラが恥じらいもせずに堂々と言った。
「ぶふっ!?」
予想以上の言葉に鈴音は噴き出す。
「は、早いわね…………もうそんなところまでいってるの…………」
「まあ、実際に紫苑さんと結婚するのはもっとこの国に馴染んで私達もある程度貢献出来るようになってからね。ぽっと出の女がいきなり『守護者』である紫苑さんの妻になったら少なからずこの国のシェアにも影響が出ると思うから」
刀奈がそう言う。
「う~ん…………前から思ってたんだけどさ、3人はそれでいいの?」
鈴音がそう尋ねる。
「「「?」」」
刀奈、簪、ラウラの3人は首を傾げる。
「いや、だからいくら紫苑が好きでも、既に紫苑にはネプ子やプルルートって言う奥さんがいるじゃない…………その、3番目以降でも不満は無いの?」
「ああ、そういう事。まあ、確かに全く不満は無いといえば嘘になるし、独占欲だってあるわ」
刀奈が正直にそう言う。
「でもね、そんな事が如何でもよくなるぐらい私達は紫苑さんの事が好きになっちゃったの。日本じゃ許されない事でも、こちらの世界なら紫苑さんと一緒に居られる。私の想いを受け取って貰える…………こんなに嬉しいことは無いわ」
「だ、だけど…………1番には…………」
「確かに1番にはなれん。紫苑は出会った時からネプテューヌが1番だと公言していたからな。だが、それが如何したというのだ?」
「えっ?」
「確かに紫苑の中ではネプテューヌが1番だ。2番目はプルルートだろう。我々は3番目以降だ」
「だ、だったら………」
鈴音が何か言おうとした時、
「そもそも、鈴は勘違いをしてる…………」
簪が発言する。
「えっ?」
「確かにネプテューヌが1番。これは絶対に覆らない。だけど、だからといって2番目以降をぞんざいにしてるわけじゃない。ちゃんと私達と向き合って、私達の好意を受け取って、その上で私達に好意を持ってくれてる。ちゃんと紫苑さんは紫苑さんなりに真剣なんだよ」
「簪……………」
「はぁ、羨ましいですわね。お互いに信頼し合い、繋がりが感じ取れる関係………わたくしもそのような恋がしてみたかったですわ」
「織斑君は鈍感だったからねぇ…………」
セシリアの言葉にシャルロットがしみじみと呟く。
「ほんと、あいつの鈍感さはもう病気だと思えるぐらいよ。まあ、今思えば助かったけど………」
「ワザとやっているのではと思う事が多々あったからな…………」
「同感」
一夏の話を止めるために話を変えたのに結局また一夏の話に戻っていると気付いたのはこの少しあとの事だった。
あとがき
今回もインターミッション系のお話。
特に盛り上がりなく終わってしまった。
リアルでちょいとショックなことがあってテンションダウン中なのも理由の1つ。
という訳で今回の返信はお休みします。
後NGシーンも…………