超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス   作:友(ユウ)

67 / 110
第2話 これまでの経緯(ヒストリー)

 

 

 

 

紫苑と一夏は、束に案内されて島の地下にある秘密ラボに案内されていた。

その道中に、マドカと一緒に居たスコールとオータムとも自己紹介を済ませている。

 

「それでいっくん。いっくんは今までどこにいたの?」

 

束が気になっていたことを尋ねる。

 

「えっと…………正直信じられない話だと思うんですが聞いてください。俺は、あの第2回モンドグロッソ決勝戦の寸前に突然誘拐されました」

 

「うん。それはこっちでも把握してる。でも、犯人達を捕まえても、いっくんの行方だけがわからなかった」

 

束の言葉に、一夏は軽く頬を掻くと、

 

「まあ、それは当然ですね。俺はあの瞬間、この世界から居なくなったんですから」

 

「………………どういう意味?」

 

意味が分からなかった束が声を漏らす。

 

「言葉通りの意味です。俺はあの時、この世界とは違う別次元の世界に跳ばされたんですよ」

 

「「「「別次元の世界!?」」」」

 

一夏の言葉に驚愕する束、スコール、オータム、マドカ。

すると、

 

「…………余りにも突拍子過ぎて信じられないわね」

 

スコールがそう漏らす。

 

「まあ、それが普通の反応ですけど…………どうやって証明するかな…………?」

 

一夏が悩んでいると、

 

「とりあえず、この刀の構造を調べてみてくれ。一応、向こうの世界でも業物の分類に入る」

 

紫苑がインベントリから刀をコールしながら言った。

 

「「「「…………………………!?」」」」

 

すると、目を丸くして驚く4人。

 

「…………ん? どうした?」

 

紫苑が首を傾げると、

 

「…………今、何処から取り出したんだよ?」

 

オータムがポカンとした顔をしながら言う。

 

「何処からって………普通にインベントリから………って、ああ! そう言えばこっちの世界にはこんなものなかったか!」

 

紫苑が思い出したように頷く。

 

「こいつはインベントリって言って…………まあ、ゲームで言う所のアイテムボックス……………分かり易く言えば、異空間に物を収納できる技能だ。ゲイムギョウ界じゃ普通に使えてたから忘れてたよ」

 

紫苑は苦笑しながらそう説明する。

 

「こっちの世界でも使えるようになったのは、多分、俺達が向こうの世界の住人になったからなんだろうな…………」

 

一夏もしみじみと呟いた。

 

「って言うか、これで証明になるか?」

 

一夏が改めてスコールに問いかけると、

 

「え、ええ…………」

 

若干呆気にとられた顔でスコールは頷く。

 

「今のはISの量子変換とは全く別物だったからね。少なくとも、今の地球上で同じことをすることは不可能だよ」

 

束がそう補足した。

 

「でも、ついでだからその刀の構造も調べさせて♪」

 

束は紫苑の手からパパッと刀を受け取ると機械を通してスキャンしていく。

すると、

 

「何これ!?」

 

束が驚いた声を上げた。

 

「この剣を構成してる金属の分子配列は今の地球の科学技術じゃ絶対に不可能だよ! この剣なら、この大きさで今のISのブレードとも互角以上に撃ちあえるよ!」

 

束は興奮した面持ちで言う。

 

「プラネテューヌの技術力は地球の十歩以上先を行ってるからな」

 

紫苑が誇らしげに言うと、

 

「地球じゃIS関係だけが突出してるけど、プラネテューヌは一般の生活レベルにまで高い技術力が使われてるしな」

 

一夏も同感だとばかりに頷いた。

 

「そんなに凄い場所なの!? くぅ~~~! 束さんも行ってみたい!」

 

束は話を聞いて興奮気味だ。

 

「まあ、機会があれば招待するのも吝かじゃないけど…………」

 

「ホント!?」

 

束はキラキラとした目を紫苑に向ける。

 

「あ、ああ…………機会があれば………だけど…………」

 

紫苑は若干引き気味になりながらも頷いた。

 

「楽しみにしてるね!」

 

束は満足そうに笑った。

 

 

 

 

暫くして束が落ち着いた後、説明を再開する一夏。

 

「………で、話を続けますけど、そのゲイムギョウ界に飛ばされた俺は、とある『女神』に保護されました」

 

「「「「女神………!?」」」」

 

再び驚きの声を上げる4人。

 

「はい。ゲイムギョウ界には4つの国があり、それぞれの国を守護する『守護女神』が存在するんです。簡単に言えば、『守護女神』は人々の信仰心を力に変えて国を守護する役目があります。後は、総理大臣や大統領みたいに国の運営や政治なんかもやってますね」

 

「…………女神が政治?」

 

オータムがイメージに合わないと言わんばかりに怪訝な顔をする。

 

「まあ、その辺はさて置き、俺は『ルウィー』という国の女神の『ブラン』に保護されたんだ。ハッキリ言って、その時の俺は何が何だかわからなかったから、保護してくれて本当に助かったよ……………それで、ルウィーで暮らす内に、モンスター討伐なんかも受けたりした…………初めてクエストをクリアした時に感謝の言葉を言われた時は、本当に嬉しかったよ…………」

 

「いっくん……………」

 

一夏の嬉しそうな言葉に、一夏の辛い過去を知る束は優しい微笑みを浮かべるが、

 

「いや、今モンスター討伐とか聞き捨てならない言葉が聞こえたんだが…………?」

 

マドカが束がスルーしたキーワードを口にする。

 

「ゲイムギョウ界はこっちで言う所のRPGみたいな世界でな。普通に人を襲う怪物………モンスターが存在してるんだよ。そういうモンスターを定期的に討伐する依頼がクエストって言ってギルドで貼り出されてるから、一夏はそういう依頼を受けてその対価の報奨金を貰う事で生活基盤を作ってたって事だ。まあ、俺もそうだったが」

 

紫苑が補足する。

 

「そんなのを受けて兄さんは大丈夫だったのか!?」

 

マドカが思わず問いかける。

 

「まあ、俺が受けてたのは討伐依頼の中でも少し腕があればクリアできる簡単な奴だったし………それでも怪我は絶えなかったけどな」

 

一夏は懐かしそうに笑いながら言った。

 

「兄さんは苦しくなかったのか?」

 

「苦しくなかった………といえば嘘になるけど、それ以上にクエストを成し遂げた後の感謝の言葉がとても嬉しかったんだ…………この場所でなら、地球と違って俺の存在を認めてくれる…………そんな気がしてさ」

 

「兄さん…………」

 

「で、その少し後だったよな。俺と紫苑が初めて会ったのは」

 

「そうだな。ブランから俺の同郷らしき人物を保護したって連絡を受けてネプテューヌと一緒にルウィーまで行ったんだ。まさか、あの織斑 千冬の弟だとは思わなかったけど」

 

「それで初めて会った時はお互いの意見の食い違いから喧嘩になったんだよな?」

 

「さらっと事実を捻じ曲げるな。一方的にお前が食いついてきただけだっただろう?」

 

「…………認めたくないものだな。若さゆえの過ちというものは……………」

 

「カッコいい事言って誤魔化そうとするな!」

 

「とまあ、色々あって紫苑に勝負を挑んだんだが、あっさりとコテンパンにされてな。悔しくて努力しながら何度も挑んだんだよ」

 

「まあ、一夏が俺を気に入らなかった事も分からんでも無かったからな。気が済むまでとことん付き合ってやることにしたんだ………………1年間も挑まれるとは思って無かったけどな」

 

「ははは! 今思えば懐かしいよな! だけど、ある時気付いたんだ。紫苑は、俺をちゃんと見て剣を合わせてくれてるって」

 

「俺はお前を『織斑千冬の弟』として相手していたつもりは一度として無いんだがな」

 

「それに気付くのに1年かかったって事だな。まあ、それからはお互いに蟠りも無くなって、切磋琢磨し合う関係になったんだ」

 

「へ~、しーくんとねー」

 

いつの間にか紫苑の名前も愛称呼びになっている束。

 

「それで、今から半年ぐらい前だったかな…………ルウィーに強力なモンスターが現れたんだ。そのモンスターは女神であるブランですら苦戦する程で、他国の女神にも応援を要請したけど、それまで時間を稼げるかすら危うい所だった。ピンチになるブランを見て、いても立っても居られなくなった俺は思わず飛び出して、瀕死の重傷を負った」

 

「「えっ!?」」

 

束とマドカが驚愕する様に叫んだ。

 

「女神ですらまともに喰らえば危険な一撃。ただの人間だった俺には掠っただけでも致命的だった。正直、普通だったらあのまま死んでいた」

 

「ちょっ!? どうやって助かったのさ!?」

 

束が思わず問いかける。

 

「ブランはイチかバチかで俺を『守護者』とする儀式を行った」

 

一夏は束たちを心配させないために詳しい話はせず、儀式と表現した。

 

「『守護者』?」

 

「ああ。『守護者』って言うのは女神と力と生命を共有する男性の事で、女神を護る騎士であり、同時に伴侶でもある」

 

「伴侶!?」

 

紫苑の言葉に驚愕の声を漏らす束。

 

「伴侶って事は、いっくんは…………その…………」

 

「ええ、まあ…………俺とブランは結婚してるってことになります……………」

 

「ええっ!?」

 

「因みに俺も違う国の女神の守護者だ」

 

「うええっ!?」

 

紫苑がついでとばかりに言う。

 

「最近の若い子は進んでるのねぇ…………」

 

スコールがしみじみと呟く。

 

「ついでに言うと、一夏は更に2人の嫁を娶ってる」

 

「うおいっ!? それ今言う必要あるのか!?」

 

紫苑の言葉に一夏が突っ込む。

 

「いっくーーーーーーーーーん!?」

 

思わず叫ぶ束。

 

「説明しなさいいっくん! お嫁さんが3人もいるなんて、束さんはいっくんをそんな子に育てた覚えはありません!!」

 

一気に一夏に詰め寄る束。

 

「あ、あのですね。ゲイムギョウ界では女性の方が出生率が高いので重婚が認められてるんです…………だから浮気してるって訳じゃ…………」

 

一夏はしどろもどろになりなりながら説明する。

 

「いっくん! まだ未成年の身でありながら3人も養ってけると思ってるの!? 大人の世界を甘く見ちゃいけないよ!!」

 

「いや、守護者になった時点で年齢はあって無い様なものですし………国のトップの伴侶って事ですからちゃんと仕事すればそれなりに高給取りですよ。と、言うより嫁さん全員働いてますから生活には全く問題が無いです………寧ろ裕福に暮らしてます」

 

「年齢はあって無いようなモノ…………?」

 

一夏の言葉にマドカが反応した。

 

「え? ああ、なんて説明するかな………? 守護女神は人々の信仰心がある限り力を持ち続け、その命は寿命を迎えることが無い。つまりは『不老』ってことなんだ。そして、女神と生命を共有している守護者もそれに当てはまる」

 

「つまり………兄さんも『不老』だと………?」

 

「ああ。因みに『不老』って事は『成長』も止まるって事だから、成長期の途中で守護者になった俺は、この通り15歳男子にしては160cmというやや小柄な身長なんだ」

 

「……………って事は、そいつも?」

 

オータムが紫苑を見る。

 

「俺は14歳でまともな成長期を迎える前に守護者になった。だから身長150㎝で止まったままなんだよ。因みに歳はこれでも17歳だ」

 

「17歳!?」

 

オータムが派手に驚く。

 

「私や兄さんよりも年上だったのか…………」

 

マドカは若干驚きを口にした。

 

「身長にはこれ以上突っ込まないでくれ。これでも気にしてるんだ」

 

紫苑はやや哀愁を漂わせた。

 

 

 

 

 

 

大まかな身の上話が終わると、

 

「そう言えば束さん。千冬姉と春万は今は如何してます?」

 

一夏がそう問いかけた。

 

「フフッ! やっぱり気になる?」

 

「まあ、家族ですから」

 

束の言葉にそう返す一夏。

 

「ちーちゃんは、今はIS学園で教師をやってるよ」

 

「…………千冬姉が…………教師…………?」

 

一夏は私生活がズボラな姉が教師をやっているのが信じられない様だ。

 

「それで…………弟の方なんだけど……………」

 

束は少し言葉を濁した後、驚愕の事実を口にした。

 

「春万がISを動かした!?」

 

一夏が驚愕して叫ぶ。

 

「うん。それで、世界初の男性IS操縦者として、今度IS学園に入学することになってる」

 

「……………でも、どうして春万がISを……………」

 

「私の仮説だけど、弟の方はちーちゃんの遺伝子情報を元にXY染色体因子を持たせた、いわば男になったちーちゃんとも言い換えれる。だから、ISコアがコアネットワークによる情報共有で、弟の方をちーちゃんと誤認しているのかもしれないね。多分だけど、単一能力(ワンオフアビリティ)が発現したら、『零落白夜』が使えるようになるんじゃないかな?」

 

「なるほど…………」

 

「……………………会いに行く?」

 

束が一夏に問いかけた。

 

「……………………………」

 

一夏は俯く。

正直、春万はともかくとして、千冬には会って安心させたいという思いはある。

しかし、一夏はこの世界に留まるつもりは無く、チャンスがあればゲイムギョウ界に『帰る』と決心していた。

ならば、このまま会わずにいた方が良いのかもしれない。

そう考えていた。

すると、

 

「一夏、会って来いよ」

 

紫苑が一夏に呼びかけた。

 

「紫苑……………」

 

「確かに俺もお前も、この世界に残るつもりは無い。けどな、だからと言って家族に会わない理由にはならないと思うぞ。たとえ離れ離れになろうとも、家族が『生きて』いる。それだけで心は救われる筈だ」

 

一夏は紫苑が妹を失っていることを知っている。

その為、後悔しないように行動しろと言っている紫苑の気持ちに申し訳ない気持ちで一杯だった。

だが、

 

「あ、家族で思い出したけど、君の妹さんも今年IS学園に入学するよ」

 

「…………………………え?」

 

束の何気ない一言に、紫苑は珍しく呆気にとられ、声を漏らした。

 

「ま、待て…………何を言ってるんだ…………? 妹は…………翡翠はあの時、テロに巻き込まれて…………………」

 

紫苑はあまりの衝撃にしどろもどろになりながら当時の状況について語る。

すると、

 

「えっと…………確かに右腕を失って、重傷を負ってたけど、奇跡的に一命は取り留めたんだよ。1年位前まで昏睡状態でつい最近までリハビリに励んでたから1年遅れたけど今年から新入生として入学するんだよ」

 

「……………翡翠が……………生きてる?」

 

紫苑が信じられないと言った表情で呟く。

 

「うん。それは間違いないよ。妹さんの面倒は、日本の対暗部用暗部である『更識家』が見てくれてたみたいだね」

 

「更識家………………刀奈の家か……………」

 

呆然となりながらも、更識と聞いて妹の友達の事を思い出す紫苑。

すると、突然力が抜けた様に膝を着く。

 

「し、紫苑!?」

 

一夏が慌てて声を掛けた。

すると、

 

「良かった……………翡翠が生きていて…………本当に良かった……………!」

 

涙を滲ませながら天を仰ぎ、嬉しさからそう呟いた。

その言葉を聞いて一夏は微笑み、

 

「良かったな。紫苑」

 

そう声を掛けた。

 

 

 

 

 

少しして、紫苑は涙を拭い、

 

「すみません。少し取り乱しました………」

 

そう言って立ち上がる。

 

「ん、仕方ないよ。嬉しかったんだよね?」

 

「はい」

 

束の言葉に紫苑は頷く。

それから一呼吸置くと、

 

「束さん、俺をIS学園に行かせてもらう事は出来ませんか? もちろん生徒として通わせろなんてことは言いません。雑用係でも何でも…………翡翠に会えるのなら………!」

 

紫苑は束にそう言う。

 

「ん~、私が口を出せばある程度融通は利くと思うけど………………」

 

束は少し悩む仕草をすると、

 

「………あ、そうだ!」

 

何かを閃いたようにハッとなった。

 

「いっくん、しーくん、ちょっとこっち来て」

 

束がそう言いながら奥の方の研究室へと歩いていく。

 

「「…………?」」

 

一夏と紫苑は互いに首を傾げながら束の後を付いて行く。

研究室の扉を潜ると、そこには作りかけのISが3機鎮座していた。

 

「IS…………」

 

一夏が呟く。

 

「2人とも、どれでもいいからこの子達に触ってくれないかな?」

 

「えっ? でも、俺達男ですけど………」

 

「いいからいいから」

 

束に催促され、紫苑と一夏はそれぞれのISの前に立つと手を伸ばす。

そして、それぞれが触れた瞬間、淡く輝きながらISが起動した。

 

「「ッ!?」」

 

紫苑と一夏は僅かに驚く。

 

「思った通り!」

 

束が声を上げる。

 

「なっ!? 束さん、どうして…………!?」

 

一夏が思わず問いかける。

 

「半分勘みたいなものだけど、君達って女神の力を共有してるんでしょ? だから、もしかしたらISを動かせるんじゃないかなって思ったんだよ」

 

束はそう説明した。

すると、

 

「これで2人ともIS学園に入学しても大丈夫だね!」

 

「いや、俺達ゲイムギョウ界に帰れる時が来たら帰るつもりなんですけど………」

 

「その時のことはその時が来てから考えようか!」

 

天才らしからぬ物言いに一夏は思わず項垂れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は夢を見ていた。

過去の記憶の夢。

少女が犯してしまった過ちの過去。

 

『お兄ちゃん!』

 

少女が兄に呼びかける。

 

『馬鹿ッ! 何で戻ってきた!? 早く逃げッ………!?』

 

兄は少女に振り返りながら切羽詰まった表情で叫ぼうとした。

だがその瞬間、兄がISの『打鉄』を纏った女に殴り飛ばされる。

 

『お兄ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!』

 

その瞬間を目撃してしまった少女は兄に手を伸ばしながら駆け寄ろうとした。

その伸ばした右腕が灼熱の熱さに似た激痛と共に千切れ、鮮血と共に宙を舞う。

そのまま少女の視界は闇に閉ざされた。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!?」

 

少女がベッドから飛び起きる様に目を覚ます。

少女の体中は汗でベトベトだった。

 

「はぁ………はぁ…………!」

 

少女は荒い息を吐きながら無意識に伸ばしていた右腕を降ろす。

その右腕には二の腕から先が無い。

それは3年も前に失ったもの。

大好きな兄と一緒に。

テロ事件唯一の生存者である少女は瓦礫に埋もれていて重傷ながらも一命を取り留めた。

少女は1年前まで昏睡状態で眠っていた。

目を覚ました時、兄を失ったショックで絶望に苛まれた。

しかも、その原因のほんの一部とはいえ自分が関わっていたことが更なる絶望を与えた。

そんな少女を今まで支えてきたのは、

 

「大丈夫? 翡翠ちゃん?」

 

荒い息を吐く少女――翡翠の傍に寄り添う水色の髪の少女。

 

「…………刀奈ちゃん…………」

 

更識 楯無――本名、刀奈がそっと翡翠の肩を抱く。

 

「またあの夢を見たの?」

 

「…………………うん」

 

翡翠はグッと左手を握りしめる。

 

「…………絶対に…………絶対に殺してやるんだ……………あの女を…………!」

 

その口から紡がれる憎悪に満ちた言葉。

 

「翡翠ちゃん……………」

 

刀奈はそんな翡翠を悲しそうに見つめながらもその言葉を否定しなかった。

兄を…………紫苑を失った翡翠にとって、復讐こそが今彼女が生きている唯一の支えと言っていい。

非常に不安定な精神状況の翡翠から唯一の生きる目的を否定することなど刀奈には出来なかった。

 

「……………今は眠ろう? もうすぐ翡翠ちゃんもIS学園に入学だから…………」

 

「うん…………やっと………やっと『力』が手に入るんだ…………お兄ちゃんの仇を討つ『力』を……………!」

 

翡翠のIS適性ランクは最上級のSランク。

昏睡状態から目覚めた1年でリハビリをしながらもISに関する知識や、戦闘訓練も行っており、現在では並の代表候補生を凌ぐ実力を持っている。

その為、IS学園に入学すると共に専用機が与えられることになっており、翡翠もそれを待ち望んでいた。

 

「……………うん…………そうだね…………」

 

刀奈は一瞬悲しそうな眼をするが、すぐに微笑んで翡翠をそっとベッドに横たえる。

 

「だけど……………今は眠ろう? 今だけは……………」

 

刀奈は翡翠の頭を撫でながらそう言うと、翡翠はすぐに寝息を立て始めた。

先程とは違い、穏やかな寝顔を見せる翡翠。

そんな翡翠を撫で続ける刀奈。

 

「………………紫苑さん…………お願いです…………このままじゃ翡翠ちゃんが………………助けてください……………………紫苑さん…………………!」

 

復讐の道を歩んでいく翡翠の未来を嘆くように、届かない願いを翡翠の兄へと懇願する様に呟く刀奈。

しかし、届かない筈の願いが叶えられる未来は、そう遠くは無かった。

 

 

 

 

 





はい、EXルート第2話です。
本当ならもうちょっと行きたかったんですけど、昨日突然休日出勤が入って執筆時間が削られてしまったのでここまでです。
今回は一夏と紫苑の近況報告と、後は翡翠の現状ですね。
このルートでは翡翠は攫われたわけでは無く、瓦礫に埋もれていて紫苑は翡翠に気付かずにゲイムギョウ界に転移してしまったという設定です。
逆に翡翠も紫苑が死んでしまったと思っております。
その為現状は復讐心に取りつかれております。
さて、次回はいよいよ一夏がIS学園に……………
ついでにその時思わぬキャラが出てきます。
あの作品のキャラをあんな設定にしてこんな風に出します。(予想出来たらマジ凄い)
それではお楽しみに。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。