超次元インフィニット ネプテューヌ・ストラトス 作:友(ユウ)
前回の事件から1ヶ月後。
「シオーン! シオーン、どこー?」
プラネタワーの居住スペースのリビングでネプテューヌが紫苑の名を呼びながら探し回っている。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
通り掛かったネプギアが声を掛ける。
「あ、ネプギア! シオン知らない?」
「シオンさん? 朝に少し出かけるって言ってたけど…………昼までには戻るって言ってたよ」
「え~! シオン居ないの~!」
ネプギアの言葉にネプテューヌがぶー垂れる。
「折角一緒にゲームしようと思ったのに………」
本当に残念そうな表情でそう漏らすネプテューヌ。
「………………」
そんなネプテューヌをネプギアが少し怪訝そうな表情で見つめていた。
その後、丁度訪問していたアイエフとコンパにネプギアは相談を持ち掛けた。
「ネプ子の様子がおかしい?」
アイエフがネプギアから相談された事を口にする。
そのネプテューヌは、いつも通りソファーに寝っ転がりながらゲームに勤しんでいる。
「…………そうは見えないけど………」
「いつも通りのねぷねぷです」
いつも通りのネプテューヌの姿にアイエフとコンパは首を傾げる。
まあ、これがいつも通りの光景なのも問題あるだろうが………
「あ、いえ………元気が無いとか、そう言ったことじゃないんです…………ただ、気の所為かもしれませんが………最近のお姉ちゃん、妙にシオンさんの事を気にしてる節があって…………」
「ああ、そう言う事………」
ネプギアの言葉に、アイエフが納得いったとばかりに相槌を打つ。
再びアイエフはネプテューヌを見る。
「確かに最近ネプ子はシオンに付いて回ってるわよね」
アイエフはここ1ヶ月のネプテューヌの行動を思い返す。
前にも増して紫苑に抱き着くことが多くなったり、一緒にゲームで遊ぼうと誘うことが毎日のように繰り返されていたり。
何もしない時でもネプテューヌは紫苑の傍に居ようとしていた。
「何ででしょうか………?」
ネプギアは首を傾げる。
そんなネプギアの反応にアイエフは呆れたような表情をして、
「まあ、ほぼ間違いなくネプ子はシオンの事意識してるわね………」
そう呟く。
「シオ君と一緒に居る時のねぷねぷ、とっても嬉しそうですぅ!」
コンパも笑顔でそう言う。
「え? それって…………」
2人の言わんとしていることに気付いたネプギアは声を漏らした。
「当の本人は自覚が無いみたいだけど…………ネプ子、完璧にシオンに惚れてるわね」
アイエフは頬杖を突きながらネプテューヌを見る。
「お姉ちゃんがシオンさんに…………」
ネプギアが呆気にとられたような表情をする。
「でも………」
アイエフは少し視線を落として意味ありげに呟く。
「私が最近気になってるのはシオンの方なのよ………」
「シオンさんがどうかしたんですか?」
「コンパは気付いてたかもしれないけど、シオンはもっと前から………多分ゲイムギョウ界に来てそう時間も経ってない頃からネプ子に気があったと思うの…………」
「えっ!? そうなんですか!?」
全く気付いていなかったネプギアは驚愕の声を漏らす。
「シオ君、ずっとねぷねぷのこと気にしてたです」
コンパもアイエフの言葉に同意する。
「だけど………最近のシオンはネプ子の事避けてるみたいなのよ………」
アイエフは目を伏せながら語る。
「えっ、ど、どうして………?」
「分からないけど、あの事件の後ぐらいからかしらね………シオンがネプ子の事を避けるようになったのは…………」
そう話していると、部屋の扉が開いて紫苑が帰ってきた。
「ただいまっと………」
紫苑がそう言うと、
「お帰りシオン!」
ネプテューヌがゲームをほっぽり出して一目散に紫苑を出迎えた。
その様子を見て、
「惚れてる………?」
「惚れてるわね」
「惚れてるですぅ」
三者とも同じ結論を零した。
「ねえ、シオン。どこ行ってたの?」
「ああ……………ちょっと不動産屋にな………」
「えっ………?」
紫苑の口から出てきた思いがけない言葉にネプテューヌが声を漏らした。
「何でそんな所に………?」
「まあ…………そろそろ教会を出ていこうかと思ってな………」
紫苑は少し言いにくそうにそう言う。
「「「!?」」」
その言葉に傍らで聞いていたネプギア、アイエフ、コンパは驚愕の表情になり、
「ど、どうして…………!?」
ネプテューヌが何とかそう聞いた。
「どうしてって…………俺が元々教会に保護されてたのも、俺の生活基盤が安定するまでって話だったし…………クエスト熟してれば報酬で十分に暮らせることが分かったからさ、そろそろ自立しようと思って……………いつまでも教会の世話になるのも迷惑だろ?」
紫苑は冷静にそう言うと、
「迷惑なんかじゃないよ!」
ネプテューヌが叫んだ。
「迷惑だなんてこれっぽっちも思って無いからさ、これからも一緒に住もうよ!」
ネプテューヌは駄々を捏ねるようにそう言う。
「そうは言っても何時までも穀潰しで居るのは自分のプライドが許さないって言うか………」
「だったら生活費だけでも教会に納めればいいよ! シオンが出ていくことないじゃん!」
紫苑がああ言えば、ネプテューヌもこう言って食い下がる。
不毛とも思える言い合いが少しの間続いた後、
「何だよ………! 俺が出ていったってネプテューヌには関係ないだろ!?」
「ッ!?」
その言葉は、ネプテューヌの心を深く抉った。
ネプテューヌは瞳に涙を滲ませ、
「シオンの馬鹿っ!!」
そう叫んで奥の部屋に駆け込んで閉じこもってしまった。
すると、
「ちょっとシオン! 今のはいくらなんでも酷いわよ!!」
アイエフが我慢できずに叱るように叫んだ。
「…………なんだよ………? 俺が何処に行こうと勝手だろ!? お前達には関係ない!」
紫苑もムキになって言い返す。
「関係ないって何よ! 私達は仲間じゃない! それに気付いて無いの!? ネプ子はアンタの事を…………!」
アイエフがそう言いかけた時、
「……………気付いてたさ…………そんな事………!」
紫苑は顔を逸らしながら両手の拳を握りしめながら何かに耐えるように震えている。
「だったら如何して!? アンタだってネプ子の事好きなんでしょ!? 嬉しくないの!?」
「嬉しくないわけないだろ………! 嬉しいさ…………嬉し過ぎて堪らないよ………!」
アイエフの言葉を肯定しているが、紫苑は何かを我慢する様に震えているのは変わらない。
「なら、何でネプ子を突き放すようなことを言ったのよ………!?」
アイエフは紫苑の言動を追求する。
「…………………アイツは女神で……………俺は所詮唯の人間なんだ…………!」
紫苑は声を絞り出すように言った。
「シオン………?」
「俺じゃあ………アイツの隣には立てない…………背中を護る事すら出来ない…………1ヶ月前の事件で分かったんだ……………俺じゃあ………アイツを護れない…………いつか必ず………俺はあいつの足を引っ張ってしまう時が来る…………アイツの隣に立てるのは…………ネプギアだけだ…………」
そう言いながら紫苑はネプギアを見る。
その表情に、ネプギアは戸惑いの感情を浮かべた。
「ッ…………でも! あの時シオンさんが居なかったら………!」
ネプギアはそう言うが、
「何も変わらなかったさ………」
「えっ?」
「俺が居なくたって………お前達ならきっと何とか出来たはずだ…………俺がしたことなんて、余計な口を出して………必死にその場を引っ掻き回しただけだ…………むしろ余計に状況を悪くしただけかもな………」
「そんなことありません! シオンさんがあの時アドバイスをくれなかったら、私達はきっと変身できてなかったです!」
ネプギアはそういうものの、
「お前たちは自分を卑下し過ぎだな…………お前たちは、自分達で思っているほど弱くは無い…………俺が口を出さなくても………間違いなく自分で答えに辿り着いてたさ…………」
紫苑はそう言ってネプギアの言葉を受け入れようとしない。
「それにだ…………例え俺とアイツが結ばれたとしても…………アイツは長い時を生きる女神で…………俺は精々80歳前後までしか生きられない人間だ。間違いなく…………俺はあいつを1人残して先に死ぬ…………子供ができるかどうかも分からないしな…………そうなれば、長くいた分だけアイツは深く傷つくだろう…………女神を続けていけるかもわからないぐらいに…………だったら、関係が深くなる前に多少傷付けてでも関係を切っておいた方が、傷も小さくて済む…………」
紫苑は少し悲しそうな表情で微笑む。
「アンタは…………それでいいの…………?」
アイエフは問いかける。
「…………それがアイツの為だ…………」
紫苑はそう言うと踵を返して部屋の出入り口に向かう。
「何処に行くのよ?」
「クエストを受けてくる。昼飯は要らない」
そう言って紫苑は部屋を出ていってしまった。
紫苑はプラネテューヌ近郊の森でモンスター討伐のクエストを受けていた。
「はぁあああああああああああっ!!」
紫苑はまるで八つ当たりするかのように力尽くで刀を振った。
いつもの様なキレのある動きは見る影も無く、素人が強引に剣を振っているような戦いだった。
「はぁ………はぁ………!」
いつもならこの程度で息を吐くほど疲労はしないはずだが、無駄に力を使い過ぎている今の紫苑は体力の消耗が激しかった。
とは言え、唯の雑魚モンスターが相手だったので特に危なげなく討伐には成功している。
「……………くっ!」
紫苑は自分で自分がイラついていることを自覚していた。
クエストの規定討伐数に達した紫苑はやや乱暴に刀を鞘に納め、その場を離れようとする。
だがその時、
「フッフッフ………」
怪しい笑い声と共に、紫苑の目の前にローブで身を包んだ怪しい人物が姿を現した。
「お前は…………!」
「久しいな小僧………!」
ローブの隙間から見えた顔は、
「マジェコンヌ………!?」
1ヶ月前にネプテューヌ達を苦しめたマジェコンヌだった。
紫苑が刀を抜こうとする瞬間、
「はっ!」
それよりも早くマジェコンヌが踏み込んできて紫苑を吹き飛ばす。
「がはっ!?」
紫苑は木に叩きつけられ、意識が朦朧としてくる。
「心配するな。今すぐ殺そうという訳じゃない…………お前には女神を誘き出す『餌』になって貰わなければならないからな……………ククク………」
意識が闇に落ちる寸前、紫苑はマジェコンヌのそんな言葉を聞いた。
「……………ネプ………テューヌ……………」
紫苑は最後までネプテューヌの事を心配してその名を呟いた。
その頃、ネプテューヌは自室のベッドの上で膝を抱えて蹲っていた。
「………………シオンの馬鹿…………」
ポツリと呟く。
もう何度目にあるかも分からない彼女の呟き。
だが、
「ッ……………!?」
彼女は突然得体のしれない不安感に襲われた。
「えっ? 何………今の嫌な感じは…………?」
何故か居ても立ってもいられなくなる。
その時だった。
「ネプ子!!」
アイエフが焦りを隠せない表情で部屋に駆け込んできた。
「あいちゃん………?」
「大変よ! シオンが………!」
「シオン!?」
その名が出たことで思わず叫ぶネプテューヌ。
そして、アイエフがスマホを取り出し、その画像を見せる。
その瞬間、
「シオン!」
ネプテューヌが悲痛な声を上げる。
その画面には、何処かの崖の中腹にある横に伸びた木に括りつけられたロープが紫苑の右手首に巻き付いており、空中に宙吊りにされている紫苑の姿が写っていた。
しかも、紫苑は痛めつけられたのかボロボロであり、意識がないのかぐったりとしていた。
「あいちゃん!?」
「突然知らないアドレスから送られてきたの。ご丁寧に場所の座標とネプ子に1人で来るように伝言を付けてね」
「ッ!」
ネプテューヌは座標を確認すると一目散に部屋から飛び出そうとする。
「待ちなさい! ネプ子!」
アイエフがネプテューヌの肩を掴んで引き留める。
「離して! シオンが、シオンが………!」
「落ち着きなさい! これは十中八九罠よ! 無暗に飛び込んでも相手の思う壺よ!!」
アイエフはそう言って自制させようとする。
「離してあいちゃん! シオンを……シオンを助けなきゃ!」
しかし、ネプテューヌは取り乱して全く話を聞こうとしない。
(ネプ子がこんなにも取り乱すなんて………)
アイエフは内心信じられなかった。
変身前のネプテューヌは普段から自己主張が激しく、ボケや馬鹿などのおふざけをやることはあっても、その本質は女神化した後と同じように冷静で取り乱すことなど無かった筈だ。
いや、女神化することでネプテューヌの本質である冷静さが前面にでて、あのようなクールな性格になっているのかもしれない。
そのネプテューヌがここまで取り乱して紫苑を助けに行こうとしている。
(ネプ子………アンタそこまでシオンの事を…………)
本来ならネプテューヌをここで行かせるのは得策ではない。
平時のネプテューヌですらもちろんの事、今の取り乱した状態では尚更だ。
しかし、
「…………………」
これ以上ネプテューヌを引き留めることはアイエフにはできなかった。
手の力が緩み、ネプテューヌはアイエフを振り切ってテラスへと飛び出す。
それと同時に光に包まれて女神化する。
「シオン………すぐ行くわ!」
送られた座標に向けて飛び立った。
その頃、紫苑は崖の中ほどの所で宙吊りにされている状態で目を覚ました。
「…………うっ………!」
身体の所々に痛みが走り、紫苑は声を漏らす。
「目が覚めたか?」
紫苑が声のした方に目を向けると、崖の途中に飛び出た小さな岩場に立つマジェコンヌの姿があった。
紫苑は視線だけで周りの状況を確認する。
今いる場所は断崖絶壁の中腹。
上ることは不可能であり、下には川が流れている。
川幅と色からしてそれなりの深さがあるようなので、最悪ここから落ちても死にはしないだろうと紫苑は判断する。
「俺を攫った目的は何だ?」
紫苑がそう聞くと、マジェコンヌは見下すような笑みを浮かべ、
「理由は2つ。1つは女神を誘き出すための『餌』。もう一つは前回の屈辱を晴らすためのお礼参りと言った所だ」
そう言ったマジェコンヌに対し、紫苑は視線を鋭くする。
その後視線を落として息を吐いた。
(………………結果的に嫌われといて正解だったか………)
「残念だけど、アイツは来ないよ」
「何………?」
紫苑の言葉にマジェコンヌは訝し気な声を漏らす。
「残念ながら直前にアイツとは喧嘩してね………嫌われたと思………」
「来た!」
「えっ!?」
嫌われたと思うぜと言いかけた所でマジェコンヌが上げた声を聞いて紫苑は驚愕する。
マジェコンヌの視線を紫苑が追うと、こちらに向かって飛翔してくるパープルハートの姿があった。
「何で………?」
酷い事を言ったのに何故来たのかと紫苑は思った。
「シオン!」
パープルハートが紫苑から少し離れた所で一旦滞空し、その姿を視界に捉える。
痛めつけられてボロボロの紫苑の姿を見て、パープルハートは表情を取り繕う事すらせずに焦りを露にする。
すると、
「久しいな、プラネテューヌの女神………」
マジェコンヌがパープルハートに話しかける。
「あなたは………!」
「そう………以前、貴様たちに屈辱を味合わされた………マジェコンヌ様だ…………!」
腰に片手を当て、尊大な態度で名乗るマジェコンヌ
「あなたがシオンを………! シオンを放しなさい! 人質なんて取らなくても私は逃げも隠れもしないわ!」
「なに、この小僧にも屈辱を味遭わされたのでね…………腹いせに人質として使わせてもらっただけだ」
「そんな理由で………!」
パープルハートは怒りを露にし、刀剣を構える。
「シオンは返してもらうわ!」
パープルハートはそう叫びながら紫苑に向かって行く。
だが、
「来るな! こいつは罠だ!!」
紫苑は必死に叫ぶ。
だがそれでもパープルハートは止まろうとしない。
「来るなって言ってるだろ!?」
声を荒げる紫苑。
その瞬間、崖の上から鳥型のモンスターが3体襲い掛かってきた。
パープルハートはすぐにそれに気付くと、
「この程度で!」
一瞬にして3体を切り裂く。
「この程度で私を倒せると思っているのかしら?」
パープルハートは余裕の態度でそう言う。
しかし、
「フッ………!」
マジェコンヌは口元に笑みを浮かべると、
何か小さな欠片を放り投げた。
それはパープルハートを挟んで崖の反対側に放物線を描いて飛び、パープルハートの背中の後ろに達すると、
「これは………!」
前の時と同じように、崖に設置された同じような欠片同士が共鳴し、パープルハートを結界に閉じ込めた。
「これは………アンチクリスタルの………!」
早くも影響が出始め、力を失い始めるパープルハート。
「フッフッフ…………同じ手に2度も掛かるとは馬鹿な女神だ」
マジェコンヌは嘲笑を浮かべながらパープルハートを見据える。
「でも………アンチクリスタルの1つはあの時に…………」
「ああ。完全なアンチクリスタルの1つはあの時粉々に砕け散った。だが、あと3つ残っていたことを忘れてはいないか?」
「ッ!?」
「女神1人の力を封じるだけならアンチクリスタルが一つあれば事足りる。よって、アンチクリスタルの1つを4つに分け、結界用に使ったのだ」
「く…………!」
「だが安心しろ。アンチクリスタル1つでは女神の力を封じることは出来てもあの時の様に殺すことは出来ない」
「………私捕まえてどうしようって言うの?」
「さて、それはその時のお楽しみだ」
パープルハートは徐々に力が抜けていく中、チラリと視線を紫苑へ向けた。
紫苑は悔しそうに歯を食いしばっている。
何もできないのが悔しいのだろう。
パープルハートは残された力で刀剣を握り込むと、
「はっ!」
紫苑へ向けて投擲した。
「ん?」
その行動にマジェコンヌは声を漏らす。
投擲された刀剣は一直線に紫苑へ向かい、
「なっ!?」
紫苑を吊るしていたロープを切断した。
「ネプテューヌ!?」
落下しながら紫苑は叫ぶ。
「シオン…………どうか無事でいて…………」
苦しそうな表情を押し隠しながら、パープルハートは微笑んだ。
「ネプテューヌーーーーーーーッ!!」
その表情を見た紫苑は、パープルハートに手を伸ばしながら叫んだ。
紫苑はそのまま落下し、水柱を立てて川に飲み込まれる。
「小僧を逃がしたか………まあいい、そちらの方が面白くなりそうだ。フハハハハハハッ!!」
マジェコンヌは高笑いを上げながら流されていく紫苑を見送った。
その夜。
プラネタワーの居住スペースでは、ネプギア、アイエフ、コンパ、イストワールがネプテューヌの帰りを待っていた。
「お姉ちゃん………」
ネプギアは窓から外を眺めながら呟く。
その表情は不安に彩られている。
「遅いわね………2人共………」
「心配ですぅ………」
アイエフとコンパもそう漏らす。
「何かあったのでしょうか………?」
イストワールも不安な表情を隠せない。
「「「「…………………………………」」」」
4人が沈黙に包まれたとき、部屋の扉が開いた。
そこから現れたのは、
「はぁ………はぁ………!」
壁に手をつきながら苦しそうな息を吐いた満身創痍の紫苑だった。
「「「「シオン(さん)(君)!!」」」」
全員が驚愕しながら紫苑の名を呼ぶ。
紫苑はその場で崩れるように膝を着いた。
「シオン! 酷い怪我………! コンパ! 早く手当てを!」
「はいですぅ!」
コンパは急いで救急箱を取りに行く。
紫苑はその間ずっと拳を握って震えており、
「すまない…………!」
そう声を絞り出した。
「ネプテューヌが…………攫われた………!」
その驚愕の事実を。
コンパの治療を受けながら、紫苑は事の経緯を説明していた。
クエストの最中にマジェコンヌの襲撃を受けて捕まった事。
助けに来たパープルハートがアンチクリスタルの結界により捕らわれた事。
パープルハートが最後の力でロープを切って自分を逃がしてくれたことを。
話し終えた紫苑は、再び握り拳を作って震える。
「すまない…………ネプテューヌが捕まったのは………俺の所為だ…………」
紫苑は懺悔をするようにそう言う。
「そんな! シオンさんの所為じゃ………!」
ネプギアが慌てて否定しようとするが、
「………俺がもっと早く…………ネプテューヌの元を去っていれば………こんな事にはならなかったんだ…………未練がましく少しでも長く傍に居ようとしたから…………!」
「そんな事今更言っても仕方ないわ。それに、ネプ子がそんなの望むわけないわ………」
「例えそうだとしても…………俺は自分が許せない…………!」
握りしめる拳からは爪が皮膚に食い込み、血が滲んでいた。
「ああ! シオ君駄目ですよぅ、もっと自分を大切にするですぅ………!」
それに気付いたコンパは紫苑の手を取って治療を始める。
「とにかく、紫苑は早く怪我を直すことね。でないと、ネプ子の居場所が分かったところで一緒に連れていけないわ」
それを聞くと、紫苑は身体の力を抜き、
「………………わかった」
小さく頷いた。
すると、
「……………すまない、少し眠る。1人にしてくれないか?」
「それは構わないけど、監視はしておくからね。あなたの事だから抜け出して1人でネプ子を探しに行きかねないから………」
「………わかっている」
その様子を見て、少なくとも抜け出す気が無い事を確認したアイエフたちは部屋を出る。
紫苑は1人になると、
「………………ネプテューヌは命に代えても必ず助け出す…………!」
そう心に誓う。
「そして…………」
もう一つ、
「アイツの前から…………いなくなろう…………」
悲しき決意と共に……………
その頃、とある場所でマジェコンヌは捕らえたパープルハートに対し、何か儀式の様な事を行っていた。
パープルハートは意識が無いのか拘束された状態でぐったりとしている。
「ククク……………プラネテューヌの女神…………貴様には相応しい役割を与えてやろう………」
マジェコンヌは笑いを零しながらそう呟いた。